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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】RFIDインレイ
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20240126BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
G06K19/077 212
G06K19/077 280
H01L23/12 Q
H01L23/12 501F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019225960
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2021096540
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】597154128
【氏名又は名称】日本パッケージ・システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】真神 孝男
(72)【発明者】
【氏名】松野下 大治
【審査官】田中 啓介
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-168760(JP,A)
【文献】特開2004-334639(JP,A)
【文献】特開平04-130636(JP,A)
【文献】特開平05-291351(JP,A)
【文献】再公表特許第2009/035094(JP,A1)
【文献】特開2013-003720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K7/00-7/14
G06K17/00-19/18
H01L21/447-21/449
H01L21/60-21/607
H01L23/12-23/15
H01R12/00-12/91
H01R24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDインレイであって、
基材シートと、
前記基材シート上に配置された一対のICチップ実装パッドと、
前記ICチップ実装パッドに実装されたICチップと、
前記一対のICチップ実装パッドと前記ICチップとを接合するとともに前記ICチップ実装パッドと前記ICチップとを電気的に接続させるUV硬化型のACPと、
を備え、
前記一対のICチップ実装パッドの前記ACPの塗布範囲内には、前記基材シートに対して垂直方向から視て前記ICチップ実装パッドの面積を減少させる隙間が形成されていることを特徴とするRFIDインレイ。
【請求項2】
前記隙間は、前記垂直方向から視て矩形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のRFIDインレイ。
【請求項3】
前記隙間は、前記垂直方向から視て櫛状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のRFIDインレイ。
【請求項4】
前記隙間は、前記垂直方向から視て円状に形成されているとともに複数配置されていることを特徴とする請求項1記載のRFIDインレイ。
【請求項5】
前記隙間は、前記垂直方向から視て菱形状に形成されているとともに複数配置されていることを特徴とする請求項1記載のRFIDインレイ。
【請求項6】
前記一対のICチップ実装パッドは、アルミニウム製であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載のRFIDインレイ。
【請求項7】
前記一対のICチップ実装パッドに接続されたアンテナパターンをさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載のRFIDインレイ。
【請求項8】
前記RFIDインレイは、アンテナパターンに接続可能なストラップ状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載のRFIDインレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDインレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、商品管理、物流管理、入出管理又は品質管理等を目的としてRFID(Radio Frequency Identification)タグ、即ち無線通信による自動認識技術を利用したタグが利用されている。RFIDタグは、例えば、各種交通機関の交通系ICカードやアパレルの商品タグ等で実用化されている。RFIDタグを情報取得装置にかざすことにより、RFIDタグから情報が読み出されて、物品の識別等を行うことができる。
【0003】
一般的なRFIDタグは、導電性ペースト印刷、巻線溶着加工、金属箔エッチング加工等によって形成された非接触通信用のアンテナを有するアンテナ基板にICチップを実装したRFDIインレイにオーバーシートを重ねてラミネートすることで得られる。
【0004】
ICチップは、アンテナ基板上に露出する接続パッドにICチップのバンプを接触させることで、アンテナに電気的に接続される。ICチップの実装は、熱硬化性の異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive paste, ACP)等を用いたフリップチップ実装方式等により行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図4に、一般的なRFIDインレイの製造工程を示す。
【0006】
まず、図4(a)に示すように、基材シート100の表面に一対のICチップ実装パッド101を形成する。基材シート100は、後述するファイナルボンド時の加熱に耐えうる耐熱性を有している。ICチップ実装パッド101は、平面から視て略矩形状に形成されている。
【0007】
次に、図4(b)に示すように、ディスペンサ102から一対のICチップ実装パッド101上にACP103を供給する。
【0008】
次に、図4(c)に示すように、第1のボンドヘッド104が、ICチップ105をACP103上に載置してICチップ105を軽く押し付ける(プリボンド)。
【0009】
その後、図4(d)に示すように、第2のボンドヘッド106が、離型紙107を介してICチップ105を所定時間高温で加熱することにより、ACP103を硬化させる(ファイナルボンド)。
【0010】
また、ICチップ105のバンプ108が、ICチップ実装パッド101に強く押し付けられてACP103の導電粒子が挟み込まれることにより、ICチップ105とICチップ実装パッド101とが電気的に接続される。なお、符号109は、バンプ108が加圧されたことにより基材シート100の裏面に浮き出たバンプ痕である。また、ファイナルボンドを実施する装置は、所定の硬化条件(例えば、2~3Nで加圧するとともに180℃で8秒加熱)を実現するために大掛かりな構成になり、プリボンドを実施する装置とは別に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2014-10473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図4に示すような方法でRFIDインレイを製造する場合、基材シート100には、高い耐熱性が要求される2軸延伸PETやPEN等を採用せざるを得ず、調達コストが高くなるという問題があった。また、ACP103を熱硬化させるために要する時間が長く、スループットが悪いという問題があった。
【0013】
そこで、RFIDインレイを安価且つ高スループットで製造するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係るRFIDインレイは、RFIDインレイであって、基材シートと、前記基材シート上に配置された一対のICチップ実装パッドと、前記ICチップ実装パッドに実装されたICチップと、前記一対のICチップ実装パッドと前記ICチップとを接合するとともに前記ICチップ実装パッドと前記ICチップとを電気的に接続させるUV硬化型のACPと、を備え、前記一対のICチップ実装パッドには、前記基材シートに対して垂直方向から視て前記ICチップ実装パッドの面積を減少させる隙間が形成されている。
【0015】
この構成によれば、ICチップ実装パッドの表面又はICチップの裏面でUV光が反射して、ACP全体が速やかに硬化されることにより、従来の熱硬化型ACPを用いる場合と比較して低温でACPを硬化させることができるため、基材シートに耐熱性が要求されず基材シートに安価な材料を選択することができる。また、ICチップ実装パッドに隙間が設けられた分だけICチップ実装パッドの側面の全長が延長されることにより、ACPがICチップ実装パッドに係合するアンカー効果が得られるため、ICチップを短時間で強固に接合することができる。さらに、従来のようなACPを熱硬化させる場合と比較して、ヒータ等の機器が不要となって、RFIDインレイの製造システムを簡便に構築することができる。
【0016】
また、本発明に係るRFIDインレイは、前記隙間が、前記垂直方向から視て略矩形状に形成されていることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係るRFIDインレイは、前記隙間が、前記垂直方向から視て櫛状に形成されていることが好ましい。
【0018】
また、本発明に係るRFIDインレイは、前記隙間が、前記垂直方向から視て略円状に形成されていることが好ましい。
【0019】
また、本発明に係るRFIDインレイは、前記隙間が、前記垂直方向から視て略菱形状に形成されていることが好ましい。
【0020】
また、本発明に係るRFIDインレイは、前記一対のICチップ実装パッドが、アルミニウム製であることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、ICチップ実装パッドの表面でUV光が反射し易いため、ACP全体の硬化を促進でき、且つ比較的安価にICチップ実装パッドを形成することができる。
【0022】
また、本発明に係るRFIDインレイは、前記ICチップ実装パッドに接続されたアンテナパターンをさらに備えていることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、ICチップ実装パッドにアンテナパターンが接続されたRFIDインレイを得ることができる。
【0024】
また、本発明に係るRFIDインレイは、アンテナパターンに接続可能なストラップ状に形成されていることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、所望のアンテナパターンに接続可能なストラップ状のCOF(chip on film)を得ることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、基材シートに耐熱性を必要としない安価な材料を選択することができ、ICチップを短時間で強固に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施形態に係るRFIDインレイの構造を示す断面図、ICチップ実装パッドの平面図及びその要部拡大図。
図2図1に示すRFIDインレイの製造手順を示す模式図。
図3】ICチップ実装パッドの変形例を示す模式図。
図4】従来のRFIDインレイの製造手順を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の各実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0035】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0036】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0037】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るRFIDインレイ1を模式的に示す縦断面図である。RFIDインレイ1は、基材シート2と、一対のICチップ実装パッド3と、ICチップ4と、ACP5と、を備えている。
【0038】
基材シート2は、例えばポリプロピレン(polypropylene)、ポリエチレン(polyethylene)又はセロファン製等である。これらは、従来の基材シートに用いられる2軸延伸PETやPEN等に比べると耐熱性は劣るものの、安価に調達可能な材料である。
【0039】
ICチップ実装パッド3は、基材シート2の表面側に設けられている。ICチップ実装パッド3は、例えばアルミニウム又は銅製等の導電材料である。ICチップ実装パッド3は、いかなる工法で作製されてもよく、例えば、スクリーン印刷工法、フォトソ/エッチング工法、スクリーン印刷/エッチング工法、グラビア印刷/エッチング工法、レーザーエッチング工法等により形成される。なお、平面から視たICチップ実装パッド3の形状は、如何なるものであっても構わない。一対のICチップ実装パッド3は、スリット3aを介して離間して配置されている。
【0040】
ICチップ4は、商品管理、物流管理、入出管理又は品質管理等の所望の目的に応じた識別情報を書き込むことが可能である。ICチップ4の裏面四隅には、金製のバンプ4aがそれぞれ立設されている。光を反射するようにバンプ4aの下部は、ICチップ実装パッド3内に沈み込んでいる。なお、符号33は、バンプ4aの沈み込みに応じて基材シート2の裏面が膨れたバンプ痕である。
【0041】
ACP5は、ICチップ実装パッド3とICチップ4とを強固に接合するUV硬化型のACP(UV-ACP)である。ACP5としては、例えば、日本化学工業株式会社製のSMERF(登録商標)等である。
【0042】
ACP5内には、導電粒子5aが含まれているのが好ましい。導電粒子5aは、例えばAu/Ni被膜樹脂粒子又は金被膜Ni粒子等である。バンプ4aとICチップ実装パッド3との間に導電粒子5aが介在することにより、ICチップ実装パッド3とICチップ4とが良好に電気的に接続される。UV硬化型ACPは、常温~80℃程度で硬化するため、従来のような100℃以上を必要とする熱硬化型ACPと比べて、基材シート2へのダメージを低減することができる。また、UV硬化型ACPは、熱硬化型ACPと比べて短時間で硬化し、遮光状態であれば常温で保存することができる。
【0043】
次に、ICチップ実装パッド3について説明する。図1(b)、(c)に示すように、一対のICチップ実装パッド3は、基材シート2に対して垂直方向(図1の紙面垂直方向)から視て、ICチップ実装パッド3の一部を切り欠いてICチップ実装パッド3の面積を減少させる隙間3bが形成され、略コ字状に形成されている。これにより、ACP5が隙間3b内に充填された際にACP5に接触するICチップ実装パッド3の側面3cの範囲が拡大し、ACP5がICチップ実装パッド3に強固に係合するアンカー効果を奏している。なお、隙間3bの面積、即ちICチップ実装パッド3の切り欠き面積は、ICチップ4の面積に対して約5%以上に設定されるのが好ましい。
【0044】
なお、RFIDインレイ1は、図示しないアンテナパターンに接続されたものであっても、アンテナパターンと別に形成されてアンテナパターンに接続可能なストラップであっても構わない。
【0045】
次に、RFIDインレイ1の製造手順について、図2に基づいて説明する。
【0046】
まず、図2(a)に示すように、アルミニウム製のICチップ実装パッド3が表面側に形成された基材シート2を用意する。ICチップ実装パッド3が形成された基材シート2を作成する方法としては、例えば、圧延アルミを基材シート2と貼り合わせ、圧延アルミ上にレジストでパターンを形成し、エッチングしてICチップ実装パッド3を形成することが考えられるが、これに限定されるものではない。スリット3aの横寸法は、例えば150μmに設定され、隙間3bは、例えば150μm角に形成されている。
【0047】
次に、図2(b)に示すように、ACPディスペンサ10を用いて、バンプ4aの実装位置にACP5を塗布する。
【0048】
次に、図2(c)に示すように、カメラ11でACP5の塗布範囲を撮影し、ACP5が正常に塗布されているか否かを判定する。具体的な判定方法としては、後述する制御手段が、カメラ11が撮影した画像と予め記憶されたACP5が正常に塗布された場合の画像とを比較し、ACP5の塗布位置のズレ量が所定閾値以内であれば、ACP5の塗布が正常に行われたと判定する等が考えられるが、これに限定されるものではない。
【0049】
次に、図2(d)に示すように、第1のボンドヘッド12が、図示しないウエハからICチップ4を吸着保持して取り出し、さらに、ICチップ4を軽く押し付けるようにしてACP5上に載置する(プリボンド)。
【0050】
次に、図2(e)に示すように、第2のボンドヘッド13が、離型紙14を介してICチップ4をICチップ実装パッド3に向けて押圧するとともに、UVライト15が、基材シート2の裏面側からスリット3aに向けてUV光を照射してACP5を硬化させる(ファイナルボンド)。
【0051】
ファイナルボンドでは、例えば、第2のボンドヘッド13で約2~5Nで押圧し、UV光を0.1秒程度照射することでACP5を常温で硬化させることができる。このとき、基材シート2の裏面側から照射されたUV光は、基材シート2を透過してスリット3a及び隙間3bを介してACP5に達し、さらにICチップ4の裏面及びICチップ実装パッド3の表面で反射することにより、ACP5全体を短時間で硬化させる。なお、第2のボンドヘッド13の押圧により、バンプ4aの沈み込みに応じて基材シート2の裏面が膨れてバンプ痕2aが形成される。
【0052】
次に、図2(f)に示すように、カメラ11でACP5の広がり具合を撮影し、ICチップ4が正常に実装されているか否かを判定する。具体的な判定方法としては、後述する制御手段が、カメラ11が撮影した画像と予め記憶されたICチップ4が正常に塗布された場合の画像とを比較し、ICチップ4の実装に伴い拡散したACP5の範囲のズレ量が所定閾値以内であれば、ICチップ4の実装が正常に行われたと判定する等が考えられるが、これに限定されるものではない。
【0053】
そして、図2(g)に示すように、リーダー16を用いて、UID(Unique ID)の読み取り検査を行い、バンプ4aが一対のICチップ実装パッド3に正常に接合されているか否かを確認する。
【0054】
なお、RFIDインレイ1を製造するシステムの動作は、図示しない制御手段によって制御される。制御手段は、制御システムを構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御手段は、例えばコンピュータであり、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御手段の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作するものにより実現されても良い。
【0055】
このようにして、本実施形態に係るRFIDインレイ1の製造方法では、隙間3bを設けてUV光が基材シート2を透過し易く、且つICチップ実装パッド3の表面及びICチップ4の裏面でUV光が反射し易く、ACP5全体が速やかに硬化されることにより、従来の熱硬化型ACPを用いる場合と比較して低温でACP5が硬化されるため、基材シート2に耐熱性を有さない安価な材料を選択することができる。
【0056】
また、ICチップ実装パッド3に隙間3bを設けた分だけ、ICチップ実装パッド3の側面3cの全長が長くなることにより、ACP5がICチップ実装パッド3に強固に係合するため、ICチップ4を短時間で接合することができる。
【0057】
さらに、従来のようなACPを熱硬化させる場合と比較して、ヒータ等の機器が不要となり、RFIDインレイ1の製造システムを簡便に構築することができる。
【0058】
上述した実施形態では、プリボンドとファイナルボンドとを別工程で行った場合を例に説明したが、バンプ4aとICチップ実装パッド3との接合を行えるだけの押圧力を確保できる第1のボンドヘッド12であれば、ICチップ4をACP5上に載置した際に、UV光を照射しても構わない。これにより、ファイナルボンドの工程を省略でき、RFIDインレイ1を製造するスループットを更に短縮することができる。
【0059】
さらに、ACP5を硬化させるUV光は、基材シート2の裏面側から基材シート2を透過する場合に限定されず、基材シート2の表面側から照射されても構わないし、基材シート2の表面側及び裏面側の双方から照射されても構わない。
【0060】
例えば、基材シート2の表面側からUV光を照射する場合には、基材シート2の裏面側から照射されたUV光が基材シート2を透過する場合と比べて、ACP5に直接照射されるため光量の減少が抑制され、且つICチップ実装パッド3の表面及びICチップ4の裏面を反射することにより、ICチップ4の裏側等のUV光が届きにくい箇所のACP5も硬化させることができる。
【0061】
また、基材シート2の表面側及び裏面側からそれぞれUV光を照射する場合には、基材シート2の表面側又は裏面側の一方のみからUV光を照射する場合と比べて、AVP5全体をさらに短時間で硬化させることができる。
【0062】
また、ICチップ実装パッド3の面積を減少させる隙間3bの形状は、ACP5が入り込んでアンカー効果を奏するものであれば如何なるものであっても構わない。例えば、隙間3bの形状は、図3(a)に示すような単一の略半円状であったり、図3(b)に示すようなスリット状の隙間3bを略櫛状に、すなわち多数の隙間3bを並列に配置するものであったり、図3(c)に示すような略円状の隙間3bを多数するものであったり、図3(d)に示すような略菱形状の隙間3bを多数配置するもの等であっても構わない。
【0063】
また、ACP5には、UV光を拡散する粒子が含まれていても構わない。これにより、ACP5内でのUV光の拡散が促進され、ACP5をさらに短時間で硬化させることができる。
【実施例
【0064】
次に、本発明を詳細な実施例に基づいて説明するが、本発明は後述する実施例に限定されるものではない。以下、上述した実施形態により得られたRFIDインレイ(以下、「実施例1~5」と称す)と、図4に示すような隙間を設けないICチップ実装パッドに紫外線硬化型のACPを用いて得られたRFIDインレイ(以下、「比較例1~3」と称す)とを比較して、ICチップ実装パッド3に形成された隙間3bによるアンカー効果について評価した。
【0065】
[サンプル製造方法]
・実施例1:図2に示すような略矩形状の隙間3bが形成されたアルミニウム製のICチップ実装パッド3を用いて、基材シート2の表面側からUV光を照射した。UV光の照射時間は0.1秒又は1秒、ICチップ4の接合時の押圧力は約2Nにそれぞれ設定した。
【0066】
・実施例2:図2に示すような略矩形状の隙間3bが形成されたアルミニウム製のICチップ実装パッド3を用いて、基材シート2の裏面側からUV光を照射した。UV光の照射時間は0.1秒又は1秒、ICチップ4の接合時の押圧力は約2Nにそれぞれ設定した。
【0067】
・実施例3:図3(b)に示すような略櫛状の隙間3bが形成された銅製のICチップ実装パッド3を用いて、基材シート2の裏面側からUV光を照射した。UV光の照射時間は0.1秒又は1秒、ICチップ4の接合時の押圧力は約2Nにそれぞれ設定した。
【0068】
・実施例4:図3(c)に示すような略円状の隙間3bが多数形成された銅製のICチップ実装パッド3を用いて、基材シート2の裏面側からUV光を照射した。UV光の照射時間は0.1秒又は1秒、ICチップ4の接合時の押圧力は約2Nにそれぞれ設定した。
【0069】
・実施例5:図3(d)に示すような略菱形状の隙間3bが多数形成された銅製のICチップ実装パッド3を用いて、基材シート2の裏面側からUV光を照射した。UV光の照射時間は0.1秒又は1秒、ICチップ4の接合時の押圧力は約2Nにそれぞれ設定した。
【0070】
・比較例1:隙間を有しない略矩形状でアルミニウム製のICチップ実装パッドを用いて、基材シートの表面側からUV光を照射した。UV光の照射時間は0.1秒又は1秒、ICチップ4の接合時の押圧力は約2Nにそれぞれ設定した。
【0071】
・比較例2:隙間を有しない略矩形状でアルミニウム製のICチップ実装パッドを用いて、基材シートの裏面側からUV光を照射した。UV光の照射時間は0.1秒又は1秒、ICチップ4の接合時の押圧力は約2Nにそれぞれ設定した。
【0072】
・比較例3:隙間を有しない略矩形状で銅製のICチップ実装パッドを用いて、基材シートの裏面側からUV光を照射した。UV光の照射時間は0.1秒又は1秒、ICチップ4の接合時の押圧力は約2Nにそれぞれ設定した。
【0073】
表1は、上述した実施例1~5及び比較例1~3の製造方法における相違点をまとめたものである。
【0074】
【表1】
【0075】
[評価]
次に、実施例1~5及び比較例1~3について、シェア強度試験を行った結果を表2に示す。なお、試験内容は、以下の通りである。
【0076】
・シャア強度試験
実施例1~5及び比較例1~3について、MIL STD-883G等に準拠して、ボンディングテスタがICチップを水平方向に負荷をかけ、ICチップが剥離するときの単位面積当たりのせん断強度(シェア強度)を測定した。表2は、実施例1~5及び比較例1~3を、それぞれの単位面積当たりのせん断強度の大きさに応じて4つ指標に区分したものである。なお、表2中の「単位面積当たりのせん断強度の指標」とは、ICチップのサイズに係わらずせん断強度の良否を示すものであり、一般的に、10N/mm2以上が好ましく、20N/mm2以上がさらに好ましく、30N/mm2以上が特に好ましいとされている。
【0077】
【表2】
【0078】
表2によれば、実施例1は、比較例1と比べて、優れたシェア強度を示していることが分かる。実施例1は、短い照射時間で高いシェア強度を発揮し、優れた速接合性を示している。
【0079】
実施例2は、比較例2と比べて、優れたシェア強度を示していることが分かる。また、実施例2は、UV光の照射時間が長くなるにつれてシェア強度が向上していることから、UV光の照射時間を0.1~1秒の間で適宜選択することにより、所望のシェア強度を得ることがうかがえる。
【0080】
また、実施例1、2は、実施例3~5に比べて良好なシャア強度を示しているが、これは隙間3bの開口面積が大きく、UV光が透過し易いためと考えられる。
【0081】
さらに、実施例1、2は、比較的安価に調達可能なアルミニウム製のICチップ実装パッド3を採用している点も好ましい。
【0082】
また、実施例3~5については、比較例3と比べて、良好なシャア強度を示している。また、実施例3~5は、照射時間の長短にかかわらず、略一定のシェア強度を示している点で、スループットの改善が期待できる。これは、隙間3bがICチップ実装パッド3の略全面に形成されていることから、基材シート2を透過したUV光がACP5全体に拡散し易いためと考えらえる。
【0083】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0084】
1 :RFIDインレイ
2 :基材シート
3 :ICチップ実装パッド
3a:スリット
3b:隙間
3c:側面
4 :ICチップ
4a:バンプ
5 :ACP
5a:導電粒子
10:ACPディスペンサ
11:カメラ
12:第1のボンドヘッド
13:第2のボンドヘッド
14:離型紙
15:UVライト
16:リーダー
図1
図2
図3
図4