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▶ 久永 洋一の特許一覧

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  • 特許-遮熱材、テント、及び遮熱材の製造方法 図1
  • 特許-遮熱材、テント、及び遮熱材の製造方法 図2
  • 特許-遮熱材、テント、及び遮熱材の製造方法 図3
  • 特許-遮熱材、テント、及び遮熱材の製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】遮熱材、テント、及び遮熱材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/027 20190101AFI20240126BHJP
   B32B 3/26 20060101ALI20240126BHJP
   E04H 15/54 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
B32B7/027
B32B3/26 A
E04H15/54
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019237792
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021104653
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】516077725
【氏名又は名称】久永 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】久永 洋一
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-251410(JP,A)
【文献】実開昭57-112513(JP,U)
【文献】特開2001-205758(JP,A)
【文献】特開2015-038299(JP,A)
【文献】特開昭63-005936(JP,A)
【文献】実開昭59-047450(JP,U)
【文献】登録実用新案第3069476(JP,U)
【文献】登録実用新案第3217537(JP,U)
【文献】特開2020-056274(JP,A)
【文献】特開2018-173106(JP,A)
【文献】韓国登録特許第2175506(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
E04H15/00-15/64
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮熱層により狭持された断熱層を含む積層構造からなる遮熱シートと、
該遮熱シートの表裏面を、空気層を介して被覆する外層シートと、を備える
遮熱材。
【請求項2】
前記断熱層は、気泡緩衝シート、該気泡緩衝シートの表裏面を狭持する保護シートからなり、
前記遮熱層は、前記断熱層を狭持するアルミシートからなる
請求項1に記載の遮熱材。
【請求項3】
該遮熱シートの外周縁と、前記外層シートが重なる部分を接合する周縁接合部を有する、
請求項1または請求項2に記載の遮熱材。
【請求項4】
前記外層シートの外周辺部に沿った第1の方向において所定の間隔で、前記外層シート、及び前記遮熱シートを積層方向に接合する第1の接合部と、
前記外層シートの外周辺部に沿った第1の方向と略直交する第2の方向において所定の間隔で、前記外層シート、及び前記遮熱シートを積層方向に接合する第2の接合部と、を有する
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の遮熱材。
【請求項5】
前記空気層には間隙材が介装されている
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の遮熱材。
【請求項6】
骨組み枠体と、
該骨組み枠体に設置されたテント用基布と、
前記テント用基布の内側であって、前記骨組み枠体の何れかの所定の位置に設置され、遮熱層により狭持された断熱層を含む積層構造からなる遮熱シート、及び該遮熱シートの表裏面を、空気層を介して被覆する外層シートを有する遮熱材と、を備える
テント。
【請求項7】
前記骨組み枠体は、設置面から鉛直上方に向けて立設する支柱と、該支柱の上端で支持されて複数の基部部材から構成された底面部と、該底面部から鉛直上方に立設し複数の基部部材から構成された屋根部と、を有し
前記遮熱材は前記底面部の全面を閉塞するように設置面に対して略水平に配置された
請求項6に記載のテント。
【請求項8】
前記空気層には間隙材が介装されている
請求項6または請求項7に記載のテント。
【請求項9】
気泡緩衝シートの表裏面に保護シートを積層する工程と、
前記緩衝シートの表裏面に積層した保護シート上にアルミシートを積層する工程と、
前記保護シート、及びアルミシートからなる遮熱シートを、空気層を介して外層シートにより被覆して積層方向に逢着する工程と、を備える
遮熱材の製造方法。
【請求項10】
前記積層方向に逢着する工程は、
前記遮熱シートと前記外層シートの間に間隙材を介装する工程を有する
請求項9に記載の遮熱材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱材、テント、及び遮熱材の製造方法に関する。詳しくは、太陽光赤外線による輻射熱を効果的に反射させることにより、テント内の温度上昇を抑制することができる遮熱材、テント、及び遮熱材の製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、テントは各種のイベントにおける屋根付きスペースとして、或いは災害現場における仮設作業場として広く利用されている。このようなテントに使用される天幕(テント用基布)は、運搬や設置が容易であること、或いは保管時の省スペース化等の要請により、なるべく軽量でかつ薄手の材質から構成され、かつ風雨に耐え得る素材であることが好ましい。そのため、テント用基布の素材としてはナイロンやポリエステルの織物にコーティングを施して防水加工し、軽量化したものなどが使用される。
【0003】
一方で、軽量化を目的として薄手に構成されたテント用基布は、太陽光赤外線によるエネルギーを遮蔽する効果が低いためテント内部の温度が上昇するという問題があった。即ち、屋外からの輻射熱は、その大半がテント用基布を透過してテントの内側に侵入することになる。
【0004】
特に近年は、地球温暖化の傾向により、夏場の日射量が増える傾向にあり、従来のテントにおいては夏場での長時間の作業等に耐えられない可能性もあり、このような輻射熱のテント内側への侵入を防止し、テント内での温度上昇を抑制する技術の開発が強く求められていた。
【0005】
このような問題に対して、例えばテントの外側面、或いは内側面に断熱材を配置することで、テントの外側から内側に向かう熱の移動を遮断する方法が考えられる。ここで断熱材としては、例えば熱伝導率の小さい硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材が広く採用されているが、太陽光赤外線に直接晒されるテントにおいて、テント内外の温度差を一定に保つには、ある程度の厚みを有する断熱材を設置する必要がある。しかしながら、厚みのある断熱材を、別途テントに設置することは、その設置工数等を考慮すると現実的なものではない。
【0006】
この点、例えば特許文献1には、断熱効果を有するテント用基布が開示されている。具体的には、テント生地層と断熱塗料層を有し、断熱塗料はアルミノ珪酸ソーダガラス、顔料、樹脂、分散剤、及び粘着剤とを含む構成となっている。特許文献1によれば、テント用基布と断熱塗料層は一体のものとなっているため、断熱層を別途設置する必要性がなく、かつテント内外での熱移動を遮断し、テント内の温度上昇を抑制することができるものとなっている。
【0007】
ところで、前記した断熱材においては、熱そのものは断熱材の表面からその厚さに至るまでの間、断熱材に蓄熱されながら所定の伝導速度で移動する。断熱材に蓄熱された熱は、時間の経過とともに温度領域の低い方、即ちテント内側へと放射される。従って、短時間の使用であれば断熱材でもテント内部の温度上昇を抑制することができるが、長時間の使用では徐々にテント内部の温度が上昇をするため、断熱材による温度抑制効果には限定的なものとなっていた。
【0008】
そこで近年においては、太陽光赤外線によるエネルギーを断熱するのではなく、太陽光赤外線による輻射熱を反射させる遮熱材が注目されており、特許文献2には、遮熱材を有するテント用基布が開示されている。係る発明において使用される遮熱材は、反射加工が施された繊維素材から構成されたシート、或いはシート生地の表面にアルミ箔を蒸着コーティングした構成からなり、太陽光赤外線を遮熱するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2015-137492号公報
【文献】実用新案登録第3163157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記した特許文献2に係る発明においては、太陽光赤外線による輻射熱の一部を反射することができるため、テント内の温度抑制効果を一定時間において維持することが可能となっている。
【0011】
しかしながら、特許文献2に係る発明の遮熱材は太陽光赤外線に直接晒されるとともに、1層、又は2層の薄層構造からなるため、太陽光赤外線による輻射熱の一部は熱伝導により遮熱材の内部に伝わり、テントの内側面に放熱されることが懸念される。従って、特許文献2に係る発明においても、テントの長時間の使用により、テント内部の温度が徐々に上昇する可能性がある。
【0012】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、太陽光赤外線による輻射熱を効果的に反射させることにより、テント内の温度上昇を抑制することができる遮熱材、テント、及び遮熱材の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するために、本発明の遮熱材は、遮熱層により狭持された断熱層を含む積層構造からなる遮熱シートと、該遮熱シートの表裏面を、空気層を介して被覆する外層シートとを備える。
【0014】
ここで、遮熱シートが、外層シートにより全体が被覆されていることにより、長年の使用に伴い遮熱シートの位置が移動したり、外層シートから外れたりすることを防止することができる。また、遮熱シートは、外部の環境に晒されることがないため、経年劣化を防止することができる。
【0015】
また、遮熱シートが、空気層を介して外層シートにより被覆されていることにより、太陽光赤外線による伝導熱、及び対流熱を空気層で抵抗させることができる。そのため、係る空気層が熱伝導抑止層として機能するため、遮熱材の遮熱効果に加えて、断熱効果としても機能させることができる。
【0016】
また、遮熱シートは、断熱層と、断熱層を狭持する遮熱層を有することにより、遮熱シートに遮熱効果とともに断熱効果も付与することができる。従って、例え遮熱層で太陽光赤外線による輻射熱の全てを反射することができない場合でも、断熱層により断熱することができる。そのため、遮熱材を設置対象物に適用した場合、設置対象物の内部への輻射熱の侵入を防止することができる。
【0017】
また、断熱層は、気泡緩衝シートと、気泡緩衝シートの表裏面を狭持する保護シートから構成されている場合には、気泡緩衝シートにより輻射熱を確実に断熱することができるため、遮熱層で反射されなかった輻射熱の移動を制限することができる。
【0018】
さらに、断熱効果を有する気泡緩衝シートが保護シートにより狭持されていることにより、気泡緩衝シートは保護シートにより所定の強度と耐久性が付与されるため、気泡緩衝シートの経年劣化を防止することができる。
【0019】
また、遮熱層は、断熱層を狭持するアルミシートからなる場合には、係るアルミシートにより太陽光赤外線による輻射熱を効果的に反射することができる。
【0020】
また、遮熱層は断熱層を狭持するように配置されていることにより、遮熱シートに入射した輻射熱は、まずは遮熱層である一方側のアルミシートで反射され、一方側のアルミシートで反射されずに遮熱シート内部に侵入した輻射熱は断熱層で断熱される。さらに、断熱層で断熱されずに移動した熱は他方側のアルミシートで反射される。以上により、遮熱材を設置対象物に適用した場合に、輻射熱の設置対象物内への移動を完全に防止することができる。
【0021】
また、外層シートは、遮熱シートの表裏面の全体を被覆し、遮熱シートの外周縁と、外層シートが重なる部分を接合する周縁接合部を有する場合には、外層シート、及び遮熱シートを、空気層を形成して一体化することができるため、設置対象物への配置が容易となる。
【0022】
また、外層シートの外周辺部に沿った第1の方向において所定の間隔で、外層シート、遮熱シートを積層方向に接合する第1の接合部と、外層シートの外周辺部に沿った第1の方向と略直交する第2の方向において所定の間隔で、外層シート、遮熱シートを積層方向に接合する第2の接合部とを有する場合には、外層シート、及び遮熱シートを、平面視で方形状に逢着することができるため、外層シート、及び遮熱シートを強固に固定することができる。
【0023】
さらに、第1の接合部と第2の接合部により、多数の方形状の小区画が複数形成され、係る小区画内においては、断面視で外層シートと遮熱シートの間には確実に空気層を形成することができる。従って、遮熱シートの遮熱効果と断熱効果を十分に発揮することができる。
【0024】
また、空気層には間隙材が介装されている場合には、遮熱シートと外層シートの間には、確実に所定のクリアランスを確保して空気層を形成することができる。係る空気層は、前記した通り熱伝導抑止層として機能するため、遮熱材の遮熱効果に加えて、断熱効果としても機能させることができる。
【0025】
前記の目的を達成するために、本発明のテントは、骨組み枠体と、該骨組み枠体に設置されたテント用基布と、前記テント用基布の内側であって、前記骨組み枠体の何れかの所定の位置に設置され、遮熱層により狭持された断熱層を含む積層構造からなる遮熱シート、及び該遮熱シートの表裏面を、空気層を介して被覆する外層シートを有する遮熱材とを備える。
【0026】
ここで、テント用基布の内側であって、骨組み枠体の何れかの所定の位置に設置され、外層シートに空気層を介して狭持された遮熱シートを有する遮熱材を備えることにより、太陽光赤外線による輻射熱は遮熱材により反射されるため、テント内側への熱の移動を防止することができる。
【0027】
このとき、遮熱シートが、外層シートにより全体が被覆されていることにより、長年の使用に伴い遮熱シートの位置が移動したり、外層シートから外れたりすることを防止することができる。また、遮熱シートは、外部の環境に晒されることがないため、経年劣化を防止することができる。
【0028】
さらに、遮熱シートが、空気層を介して外層シートにより被覆されていることにより、太陽光赤外線による伝導熱、及び対流熱を空気層で抵抗させることができる。そのため、空気層が熱伝導抑止層として機能するため、遮熱材の遮熱効果に加えて、断熱効果としても機能させることができる。
【0029】
また、骨組み枠体は、設置面から鉛直上方に向けて立設する支柱と、支柱の上端で支持されて複数の基部部材から構成された底面部と、底面部から鉛直上方に立設し複数の基部部材から構成された屋根部とを有し、遮熱材は底面部の全面を閉塞するように設置面に対して略水平に配置されている場合には、遮熱シートの設置面積が大きくなるため遮熱効果を高めることができる。
【0030】
さらに、テントの下方から屋根部に向けて風圧が作用した場合でも、風圧がテント用基布に直接的に作用しないため、テントが風圧によりあおられることを防止することができる。
【0031】
前記の目的を達成するために、本発明の遮熱材の製造方法は、気泡緩衝シートの表裏面に保護シートを積層する工程と、前記緩衝シートの表裏面に積層した保護シート上にアルミシートを積層する工程と、前記保護シート、及びアルミシートからなる遮熱シートを、空気層を介して外層シートにより被覆して積層方向に逢着する工程とを備える。
【0032】
ここで、気泡緩衝シートの表裏面に保護シートを積層する工程を備えることにより、気泡緩衝シートにより断熱効果を得ることができるとともに、気泡緩衝シートの両面が保護シートにより狭持されるため、所定の強度と耐久性が付与されることにより、気泡緩衝シートの経年劣化を防止することができる。
【0033】
また、緩衝シートの表裏面に積層した保護シート上に、アルミシートを積層する工程を備えることにより、係るアルミシートにより遮熱効果を得ることができる。従って、アルミシート、及び気泡緩衝シートの積層構造により、遮熱効果と断熱効果の両機能を有することが可能となる。
【0034】
また、保護シート、及びアルミシートからなる遮熱シートを外層シートにより空気層を介して被覆して積層方向に逢着する工程を備えることにより、遮熱シートは、外層シートにより被覆されるため、外部の環境に晒されることがなく、劣化を防止することができる。
【0035】
また、遮熱シートが、空気層を介して外層シートにより被覆されていることにより、太陽光赤外線による伝導熱、及び対流熱を空気層で抵抗させることができる。そのため、空気層が熱伝導抑止層として機能するため、断熱効果をさらに向上させることができることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る遮熱材、テント、及び遮熱材の製造方法は、太陽光赤外線による輻射熱を効果的に反射させることにより、テント内の温度上昇を抑制することができるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の実施形態に係る遮熱材を示し、(a)は全体外観図、(b)は断面図である。
図2】他の実施例に係る遮熱材を示し、(a)は全体外観図、(b)は断面図である。
図3】遮熱シートの構造を示す図であり、(a)は5層構造の遮熱シートの断面図、(b)は7層構造の遮熱シートの断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る遮熱材を適用したテントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0039】
まず、本発明の実施形態に係る遮熱材1について図1、及び図2に基づいて説明する。遮熱材1は、塩化ビニール製の2枚の外層シート2、係る外層シート2により全体が狭持された遮熱シート3から構成された略長方形状からなるものである。
【0040】
ここで、必ずしも、外層シート2は塩化ビニール製である必要はない。但し、遮熱材1は、後述する通り、テント用基布92に配置されるものであるため、ある程度の防水性、防火性を備える材料から構成されていることが好ましい。
【0041】
また、必ずしも、遮熱シート3は、2枚の外層シート2によりその全体が狭持された構造である必要はない。例えば袋状の外層シート2により遮熱シート3の全体が被覆された構成であってもよい。
【0042】
また、必ずしも、遮熱材1は長方形状である必要はない。遮熱材1の形状は、設置対象物の形状に応じて適宜変更することができる。
【0043】
外層シート2、及び遮熱シート3は図1(b)に示すように、空気層4を介してその周縁が積層方向に逢着されて一体化されている(この逢着部分を「周縁接合部6」という。)。空気層4には、間隙率の高い糸状の合成樹脂からなる間隙材5が介装されている。
【0044】
ここで、必ずしも、間隙材5は介装されている必要はない。但し、周縁接合部6による固定だけでは外層シート2の撓みにより空気層4が形成されない場合がある。そのため、外層シート2と遮熱シート3の間において、確実に空気層4を形成するには、間隙材5を介装することが好ましい。なお、間隙材5に代えて、例えば所定の材質からなるスペーサーを介装してもよい。
【0045】
空気層4は、略3~5mm程度の厚さであり、太陽光赤外線による伝導熱、及び対流熱を係る空気層4で抵抗させる機能を有している。この空気層4は、遮熱材1を設置対象物に設置した状態において、太陽光赤外線の照射を受ける熱源側は勿論のこと、室内側の何れにも形成することが好ましい。これにより、遮熱シート3で反射された輻射熱、及び遮熱シート3で反射されずに室内側に移動する伝導熱、及び対流熱は、係る空気層4にて抵抗させることができる。即ち、空気層4が熱伝導抑制層として機能する。
【0046】
ここで、必ずしも、空気層4の厚みとして3~5mm程度の厚さである必要はない。空気層4の厚みは、遮熱材1の設置対象物、設置環境等に応じて適宜変更することができる。
【0047】
また、必ずしも、外層シート2、及び遮熱シート3は図1に示すように周縁接合部6のみにより一体化されている必要はない。例えば図2に示すように、周縁接合部6に加えて、外層シート2の外周辺部に沿った第1の方向において所定の間隔で、外層シート2、及び遮熱シート3を積層方向に接合する第1の接合部7と、外層シート2の外周辺部に沿った第1の方向と略直交する第2の方向において所定の間隔で、外層シート2、遮熱シート3を積層方向に接合する第2の接合部8により平面視で縦横方向に逢着されていてもよい。
【0048】
このように、周縁接合部6に加えて、第1の接合部7と第2の接合部8により縦横方向に複数の接合部を有することで、前記したように遮熱材1の厚みに対する長さと幅が大きい場合に、間隙材5の偏りがなくなり、均一な大きさの空気層4を形成することができるため、遮熱材1の遮熱性、及び断熱性を高めることができる。
【0049】
次に図3を用いて遮熱シート3の構成について説明する。遮熱シート3は、主に遮熱層31と遮熱層31に狭持された断熱層32による積層構造となっている。遮熱層31は、主に高純度のアルミ箔からなるアルミシート31aから構成されている。断熱層32は、合成樹脂(例えばポリエチレン)からなる保護シート32aと、該保護シート32aに狭持され、空気が封入された複数の突起(符号を付さない)を有し、合成樹脂(例えばポリエチレン)からなる気泡緩衝シート32bから構成されている。そして、アルミシート31a、保護シート32a、及び気泡緩衝シート32bはそれぞれのシート間がプラズマ溶着されて一体的な5層の積層構造をなしている。
【0050】
ここで、必ずしも、遮熱シート3は5層の積層構造から構成されている必要はない。例えば断熱層32については、図3(b)に示すように、保護シート32aと気泡緩衝シート32bが交互に積層された5層構造からなり、最外層であるアルミシート31aを含めて7層の積層構造から構成されていてもよい。
【0051】
また、必ずしも、遮熱層31として高純度のアルミ箔を主原料とするアルミシート31aである必要はない。例えば遮熱材料として公知の銅、真鍮、白金等から適宜選択してもよい。但し、発明者が検討した結果では、アルミ箔を主原料とした場合の遮熱効果が最も高いことが確認されたため、遮熱効果を高めるという観点からも、アルミシート31aであることが好ましい。
【0052】
また、必ずしも、断熱層32として気泡緩衝シート32bである必要はない。例えば断熱材料として公知のウレタンフォーム、グラスウール、セルロースファイバー、ウール等から適宜選択してもよい。但し、気泡緩衝シート32bは、低コストで、取り扱いが容易であり、かつ薄厚であっても一定の断熱効果を発揮することができる。
【0053】
保護シート32aは、アルミシート31aと気泡緩衝シート32bの間に介装されることで、アルミシート31a、及び気泡緩衝シート32bに対して所定の強度と耐久性を付与することができる。従って、アルミシート31aと気泡緩衝シート32bの長年の使用による経年劣化を防止することができる。
【0054】
次に、本発明の実施形態に係る遮熱材1をテント9に適用した実施例について図4を用いて説明する。テント9は催事等で一般的に使用されるものであり、骨組み枠体91とテント用基布92から構成されている。
【0055】
ここで、必ずしも、本発明の実施形態に係る遮熱材1が適用されるテント9は、図4に示す形状のものに限定されるものではなく、様々なタイプのテントに適用することができる。
【0056】
骨組み枠体91は、設置面に設置される支柱91aと、支柱91aの鉛直方向上端で支持されて複数の基部部材から構成された底面部91bと、底面部91bから鉛直上方に立設し複数の基部部材から構成された屋根部91cから構成されている。
【0057】
遮熱材1のテント9への設置は、例えば図4に示すように、遮熱材1の四隅に取り付けた紐部材(図示しない)を骨組み枠体91の屋根部91cの基部部材(図4(a))、又は底面部91b(図4(b))の基部部材に結び付けて設置し、その後テント用基布92を底面部91b、及び屋根部91cの骨組み枠体を覆うように張設する。
【0058】
ここで、必ずしも、遮熱材1のテント9への設置方法として、前記した形態に限定されるものではない。例えば、遮熱材1をテント9の屋根部91cに設置する場合には、テント用基布92の表裏面の何れか一方に直接設置するようにしてもよい。
【0059】
次に、本発明の実施形態に係る遮熱材1の製造方法について説明する。
【0060】
[断熱層]
まず、気泡緩衝シート32bの表裏面に保護シート32aを溶着して3層の一体構造とする。なお、断熱層32として気泡緩衝シート32bを2枚使用する場合には、最外層が保護シート32aとなるように、保護シート32aと気泡緩衝シート32bを交互に積層して、全体として5層の一体構造とする。
【0061】
[遮熱層]
断熱層32を挟み込むように、断熱層32の表裏面にアルミシート31aを溶着させる。このとき、気泡緩衝シート32bは保護シート32aを介してアルミシート31aと接触する。保護シート32aは、気泡緩衝シート32bとアルミシート31aに一定の剛性を付与するとともに、気泡緩衝シート32bとアルミシート31aが直接接触しないため、気泡緩衝シート32bの突起がアルミシート31aと接触することにより破断することを防止することができる。
【0062】
[遮熱材]
前記した遮熱層31と断熱層32を一体化した遮熱シート3を2枚の外層シート2により狭持し、その周縁を遮熱シート3、及び外層シート2の積層方向に逢着して一体化させる。このとき、遮熱シート3と外層シート2との間には一定の空間である空気層4が形成される。
【0063】
次に本発明の遮熱材1の有無による温度抑制効果を確認するため、遮熱材1をテント9に適用したうえで、屋外における確認試験を実施した。なお、確認試験に供したテント9としては以下の実施例1、実施例2、及び比較例である。
【0064】
なお、確認試験に供したテント9は幅が略280cm、長さが略180cm、支柱の高さが略200cm、屋根部91cの高さが略55cmの大きさである。また、各実施例で採用したテント用基布92は、2~3mm厚程度のポリエステル繊維の織物の表裏面を軟質な合成樹脂フィルムにより防水加工したものである。さらに、遮熱材1は、前記した通りの構成で、4mm厚程度の5層構造からなる遮熱シート3を、2~3mm厚の外層シート2で被覆したものである。外層シート2は、テント用基布92と同素材のものを採用した。
【0065】
温度の計測位置としては、テント9内の温度の計測は、テント9の平面視において略中心位置であって、設置面から略180cmの位置に取り付けた温度計により計測した。また、外気温の計測位置としては、テント9の内側に設置した温度計と略同一高さの位置となるように、テント9の外側近傍に設置した所定高さのポールに取り付けた温度計により計測した。
【0066】
[実施例1]
実施例1に係るテントは、本発明の実施形態に係る遮熱材1を図4(a)に示すように、テント9の骨組み枠体91の屋根部91cの全体に設置し、その上からテント用基布92を張設した構成である。
【0067】
[実施例2]
実施例2に係るテントは、本発明の実施形態に係る遮熱材1を図4(b)に示すように、テント9の骨組み枠体91の底面部91bの全体に、設置面と水平となるように張設した構成である。
【0068】
[比較例]
比較例に係るテントは、本発明の実施形態に係る遮熱材1を設置しない構成である。
【0069】
以上の実施例1、実施例2、及び比較例について、屋外での試験結果を表1、及び表2に示す。
【0070】
[表1]
【0071】
[表2]
【0072】
以上の試験結果より、計測時間内における各実施例の単純平均による気温は、実施例1が略25.5度、実施例2が25.6度、比較例が26.3度となった。従って、各計測時間において、遮熱材1を適用した実施例1、及び実施例2のテント9が、遮熱材1を設置しない比較例のテント9よりも温度抑制効果があることが確認できた。なお、実施例1と実施例2、即ち、遮熱材1の設置位置による温度抑制効果については、それほど大きな差は確認できなかった。
【0073】
但し、発明者が実施例1、実施例2に相当する模型を製作し、風洞試験を行った結果では、風速が所定以上になると、風圧を受けて実施例1のテント9は設置面から吹き飛ばされるのに対して、実施例2のテント9は安定した設置状態を保つことが確認できた。これは、底面部91bに遮熱材1を設置することで、テント9の屋根部91c内に風が入り込むことを防止し、テント9の全体が受ける風圧を低減できたことによるものと推測できる。
【0074】
以上、本発明に係る遮熱材、テント、及び遮熱材の製造方法は、太陽光赤外線による輻射熱を効果的に反射させることにより、テント内の温度上昇を抑制することができるものとなっている。
【符号の説明】
【0075】
1 遮熱材
2 外層シート
3 遮熱シート
31 遮熱層
31a アルミシート
32 断熱層
32a 保護シート
32b 気泡緩衝シート
4 空気層
5 間隙材
6 周縁接合部
7 第1の接合部
8 第2の接合部
9 テント
91 骨組み枠体
91a 支柱
91b 底面部
91c 屋根部
92 テント用基布
図1
図2
図3
図4