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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20240126BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
H01L27/04 E
H01L27/04 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020022429
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021129009
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】399011195
【氏名又は名称】ザインエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100110582
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 昌聰
(72)【発明者】
【氏名】小勝 秀行
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-526901(JP,A)
【文献】特開2018-017605(JP,A)
【文献】特開2017-034792(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0000427(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0034404(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0033574(US,A1)
【文献】特開昭62-023127(JP,A)
【文献】特開2014-045004(JP,A)
【文献】特開2017-034065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/04
H01L 21/822
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号処理回路、複数のパッドおよび第1抵抗器を有し、前記複数のパッドのうちの第1パッドと第2パッドとが互いに短絡しておらず、前記第1パッドと基準電位供給端との間に前記第1抵抗器が設けられ、前記第2パッドが前記信号処理回路の信号入力端または信号出力端と接続されている半導体チップと、
前記半導体チップを搭載し、外部との間で信号を入力または出力する複数の端子を有するパッケージと、
を備え、
前記パッケージの前記複数の端子のうちの何れかの特定端子が、第1ボンディングワイヤにより前記第1パッドと接続され、第2ボンディングワイヤにより前記第2パッドと接続されている、
半導体装置。
【請求項2】
前記半導体チップは、前記第2パッドと基準電位供給端との間に設けられた第2抵抗器を有する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体チップは、前記第1パッドと前記第2パッドとの間に設けられた第3抵抗器を有する、
請求項1または2項に記載の半導体装置。
【請求項4】
信号処理回路および複数のパッドを有し、前記複数のパッドのうちの第1パッドと第2パッドとが互いに短絡しておらず、前記第2パッドが前記信号処理回路の信号入力端と接続されている半導体チップと、
前記半導体チップを搭載し、外部との間で信号を入力または出力する複数の端子を有するパッケージと、
前記パッケージの前記複数の端子のうちの何れかの特定端子と基準電位供給端との間に設けられた第4抵抗器と、
を備え、
前記パッケージの前記特定端子が、第1ボンディングワイヤにより前記第1パッドと接続され、第2ボンディングワイヤにより前記第2パッドと接続されている、
受信装置
【請求項5】
信号処理回路および複数のパッドを有し、前記複数のパッドのうちの第1パッドと第2パッドとが互いに短絡しておらず、前記第2パッドが前記信号処理回路の信号出力端と接続されている半導体チップと、
前記半導体チップを搭載し、外部との間で信号を入力または出力する複数の端子を有するパッケージと、
前記パッケージの前記複数の端子のうちの何れかの特定端子と基準電位供給端との間に設けられた第5抵抗器と、
を備え、
前記パッケージの前記特定端子が、第1ボンディングワイヤにより前記第1パッドと接続され、第2ボンディングワイヤにより前記第2パッドと接続されている、
送信装置
【請求項6】
前記半導体チップは、前記第1パッドと接続されたESD保護素子を有する、
請求項1~3の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体チップは、前記第1パッドと接続されたESD保護素子を有する、
請求項4に記載の受信装置。
【請求項8】
前記半導体チップは、前記第1パッドと接続されたESD保護素子を有する、
請求項5に記載の送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、一般に、トランジスタ等の多数の素子からなる信号処理回路および複数のパッドを有する半導体チップを、外部との間で信号を入力または出力する複数の端子を有するパッケージに搭載し、金または銅からなる細径のボンディングワイヤにより半導体チップのパッドとパッケージの端子とを互いに接続して構成される。
【0003】
ボンディングワイヤは寄生インダクタンスを有する。例えば、ボンディングワイヤの典型的な例としてワイヤ長を1mmとしワイヤ径を0.015mmとした場合、ボンディングワイヤの寄生インダクタンスは約0.92nHである。信号の周波数を10GHzとした場合、ボンディングワイヤのインピーダンスの絶対値は57.8Ω(=2π×10GHz×0.92nH)である。また、パッケージの端子に接続される信号伝送路の特性インピーダンスは例えば50Ωである。
【0004】
この例に示されるように、ボンディングワイヤのインピーダンスの絶対値(57.8Ω)は、信号伝送路の特性インピーダンス(50Ω)に対して無視できないほどの大きさであり、半導体チップ上の信号処理回路による信号処理の性能劣化の要因となる。信号処理回路が処理する信号の周波数が高いほど、その信号処理の性能はボンディングワイヤの寄生インダクタンスの影響を大きく受け易い。
【0005】
ボンディングワイヤの寄生インダクタンスの問題に対処する為の技術が幾つか知られている(特許文献1~3、非特許文献1)。また、ボンディングワイヤを用いることなく半導体チップのパッドと端子とを互いに電気的に接続することができるパッケージ(例えばWCSP(Wafer Level Chip Size Package))も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2010/0253435号明細書
【文献】米国特許第8427799号明細書
【文献】米国特許出願公開第2001/0015490号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】“what-when-how、In Depth Tutorials and Information、CircuitDesign (GPS) Part 9”,[online],[令和2年2月13日検索],インターネット<URL:http://what-when-how.com/gps-galileo-dual-rf-front-end-receiver-and-design-fabrication-and-test/circuit-design-gps-part-9/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来技術では、高速信号伝送におけるボンディングワイヤの寄生インダクタンスの影響を十分に低減することができない。また、ボンディングワイヤを用いることなく半導体チップを搭載することができるパッケージは、コストが高く、高い実装技術が必要とされることになる。
【0009】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、ボンディングワイヤの寄生インダクタンスの影響を低減することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体装置は、(1) 信号処理回路、複数のパッドおよび第1抵抗器を有し、複数のパッドのうちの第1パッドと第2パッドとが互いに短絡しておらず、第1パッドと基準電位供給端との間に第1抵抗器が設けられ、第2パッドが信号処理回路の信号入力端または信号出力端と接続されている半導体チップと、(2) 半導体チップを搭載し、外部との間で信号を入力または出力する複数の端子を有するパッケージと、を備える。パッケージの複数の端子のうちの何れかの特定端子が、第1ボンディングワイヤにより第1パッドと接続され、第2ボンディングワイヤにより第2パッドと接続されている。半導体チップは、第2パッドと基準電位供給端との間に設けられた第2抵抗器を有するのが好適である。また、半導体チップは、第1パッドと第2パッドとの間に設けられた第3抵抗器を有するのが好適である。
【0011】
本発明の半導体装置は、(1) 信号処理回路および複数のパッドを有し、複数のパッドのうちの第1パッドと第2パッドとが互いに短絡しておらず、第2パッドが信号処理回路の信号入力端と接続されている半導体チップと、(2) 半導体チップを搭載し、外部との間で信号を入力または出力する複数の端子を有するパッケージと、を備える。パッケージの複数の端子のうちの何れかの特定端子が、第1ボンディングワイヤにより第1パッドと接続され、第2ボンディングワイヤにより第2パッドと接続されている。本発明の受信装置は、この半導体装置と、パッケージの特定端子と基準電位供給端との間に設けられた第4抵抗器と、を備える。
【0012】
本発明の半導体装置は、(1) 信号処理回路および複数のパッドを有し、複数のパッドのうちの第1パッドと第2パッドとが互いに短絡しておらず、第2パッドが信号処理回路の信号出力端と接続されている半導体チップと、(2) 半導体チップを搭載し、外部との間で信号を入力または出力する複数の端子を有するパッケージと、を備える。パッケージの複数の端子のうちの何れかの特定端子が、第1ボンディングワイヤにより第1パッドと接続され、第2ボンディングワイヤにより第2パッドと接続されている。本発明の送信装置は、この半導体装置と、パッケージの特定端子と基準電位供給端との間に設けられた第5抵抗器と、を備える。
【0013】
本発明の半導体装置において、半導体チップは、第1パッドと接続されたESD保護素子を有するのが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ボンディングワイヤの寄生インダクタンスの影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1比較例の半導体装置211の構成を示す図である。
図2図2は、第1比較例の半導体装置212の構成を示す図である。
図3図3は、第2比較例の半導体装置221の構成を示す図である。
図4図4は、第2比較例の半導体装置222の構成を示す図である。
図5図5は、第1実施形態の半導体装置111の構成を示す図である。
図6図6は、第1実施形態の半導体装置112の構成を示す図である。
図7図7は、等価回路を示す図である。
図8図8は、第2実施形態の半導体装置121の構成を示す図である。
図9図9は、第2実施形態の半導体装置122の構成を示す図である。
図10図10は、第3実施形態の半導体装置131の構成を示す図である。
図11図11は、第3実施形態の半導体装置132の構成を示す図である。
図12図12は、第4実施形態の半導体装置141の構成を示す図である。
図13図13は、第4実施形態の半導体装置142の構成を示す図である。
図14図14は、第5実施形態の半導体装置151および第4抵抗器40を備える受信装置1の構成を示す図である。
図15図15は、第5実施形態の半導体装置152および第5抵抗器80を備える送信装置2の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0017】
以下では、比較例の構成について説明した後、実施形態の構成について説明する。また、各比較例および各実施形態において二つの態様を説明する。一方の態様は半導体チップの信号入力側に特徴を有するものであり、他方の態様は半導体チップの信号出力側に特徴を有するものである。
【0018】
(第1比較例)
図1は、第1比較例の半導体装置211の構成を示す図である。この半導体装置211は、半導体チップ10Xおよびパッケージ20を備え、信号伝送路3を伝送されて来た信号を受信するものである。
【0019】
半導体チップ10Xは、信号処理回路11、ESD保護素子12,13、複数のパッドおよび抵抗器16を有し、これらが半導体基板上に形成されている。信号処理回路11はトランジスタ等の多数の素子からなる。信号処理回路11は任意である。信号処理回路11は、例えば、論理回路、高周波差動アンプ、低ノイズアンプ、等である。信号処理回路11の信号入力端は、複数のパッドのうちの何れかのパッド14と接続されている。
【0020】
ESD保護素子12,13は、外部から侵入する静電気などのサージ電圧から信号処理回路11を保護したり信号処理回路11の誤動作を防止したりする為に設けられるものであって、例えばダイオードである。一方のESD保護素子12は、電源電位を供給する基準電位供給端とパッド14との間に設けられている。他方のESD保護素子13は、接地電位を供給する基準電位供給端とパッド14との間に設けられている。抵抗器16は、電源電位を供給する基準電位供給端とパッド14との間に設けられている。
【0021】
パッケージ20は、半導体チップ10Xを搭載し、外部との間で信号を入力または出力する複数の端子を有する。複数の端子のうちの何れかの端子21は、ボンディングワイヤ31によりパッド14と接続されている。また、端子21は、信号伝送路3と接続されている。様々な種類のパッケージが知られているが、パッケージ20は、半導体チップのパッドと端子との間の接続をボンディングワイヤにより行うものであれば任意である。
【0022】
信号伝送路3を伝送されて来てパッケージ20の端子21に到達した信号は、その端子21、ボンディングワイヤ31およびパッド14を経て信号処理回路11の信号入力端に入力される。抵抗器16は、信号伝送路3の特性インピーダンスと同程度の抵抗値を有する。静電気などのサージ電圧が端子21に入力された場合であっても、ESD保護素子12,13が設けられていることにより、信号処理回路11が保護され、信号処理回路11の誤動作が防止される。
【0023】
前述したとおり、一例として、信号の周波数は10GHzであり、ボンディングワイヤのインピーダンスの絶対値は57.8Ωであり、信号伝送路3の特性インピーダンスは50Ωであり、抵抗器16の抵抗値は50Ωである。ボンディングワイヤ31のインピーダンスの絶対値は、信号伝送路3の特性インピーダンスに対して無視できないほどの大きさであり、信号処理回路11による信号処理の性能劣化の要因となる。信号処理回路11が処理する信号の周波数が高いほど、その信号処理の性能はボンディングワイヤ31の寄生インダクタンスの影響を大きく受け易い。
【0024】
図2は、第1比較例の半導体装置212の構成を示す図である。この半導体装置212は、半導体チップ50Xおよびパッケージ60を備え、信号伝送路4へ信号を送出するものである。
【0025】
半導体チップ50Xは、信号処理回路51、ESD保護素子52,53、複数のパッドおよび抵抗器56を有し、これらが半導体基板上に形成されている。信号処理回路51はトランジスタ等の多数の素子からなる。信号処理回路51は任意である。信号処理回路51は、例えば、論理回路、高周波差動アンプ、低ノイズアンプ、等である。信号処理回路51の信号出力端は、複数のパッドのうちの何れかのパッド54と接続されている。
【0026】
ESD保護素子52,53は、外部から侵入する静電気などのサージ電圧から信号処理回路51を保護したり信号処理回路51の誤動作を防止したりする為に設けられるものであって、例えばダイオードである。一方のESD保護素子52は、電源電位を供給する基準電位供給端とパッド54との間に設けられている。他方のESD保護素子53は、接地電位を供給する基準電位供給端とパッド54との間に設けられている。抵抗器56は、電源電位を供給する基準電位供給端とパッド54との間に設けられている。
【0027】
パッケージ60は、半導体チップ50Xを搭載し、外部との間で信号を入力または出力する複数の端子を有する。複数の端子のうちの何れかの端子61は、ボンディングワイヤ71によりパッド54と接続されている。また、端子61は、信号伝送路4と接続されている。様々な種類のパッケージが知られているが、パッケージ60は、半導体チップのパッドと端子との間の接続をボンディングワイヤにより行うものであれば任意である。
【0028】
信号処理回路51の信号出力端から出力された信号は、パッド54、ボンディングワイヤ71および端子61を経て信号伝送路4へ送出される。抵抗器56は、信号伝送路4の特性インピーダンスと同程度の抵抗値を有する。静電気などのサージ電圧が端子61に入力された場合であっても、ESD保護素子52,53が設けられていることにより、信号処理回路51が保護され、信号処理回路51の誤動作が防止される。
【0029】
この半導体装置212も、半導体装置211と同様の問題を有する。すなわち、ボンディングワイヤ71のインピーダンスの絶対値は、信号伝送路4の特性インピーダンスに対して無視できないほどの大きさであり、信号処理回路51による信号処理の性能劣化の要因となる。信号処理回路51が処理する信号の周波数が高いほど、その信号処理の性能はボンディングワイヤ71の寄生インダクタンスの影響を大きく受け易い。
【0030】
(第2比較例)
図3は、第2比較例の半導体装置221の構成を示す図である。この半導体装置221は、半導体チップ10Yおよびパッケージ20を備え、信号伝送路3を伝送されて来た信号を受信するものである。第1比較例の半導体装置211の構成(図1)と比べると、第2比較例の半導体装置221の構成(図3)は、信号処理回路11の信号入力端が2つのパッド14,15に接続されている点で相違する。半導体チップ10Y上においてパッド14とパッド15とは互いに短絡している。パッケージ20の端子21は、ボンディングワイヤ31によりパッド14と接続され、ボンディングワイヤ32によりパッド15と接続されている。
【0031】
図4は、第2比較例の半導体装置222の構成を示す図である。この半導体装置222は、半導体チップ50Yおよびパッケージ60を備え、信号伝送路4へ信号を送出するものである。第1比較例の半導体装置212の構成(図2)と比べると、第2比較例の半導体装置222の構成(図4)は、信号処理回路51の信号出力端が2つのパッド54,55に接続されている点で相違する。半導体チップ50Y上においてパッド54とパッド55とは互いに短絡している。パッケージ60の端子61は、ボンディングワイヤ71によりパッド54と接続され、ボンディングワイヤ72によりパッド55と接続されている。
【0032】
第2比較例では、半導体チップ上において信号処理回路の信号入力端または信号出力端は2つのパッドと接続されており、これら2つのパッドはパッケージの1つの端子と接続されている。すなわち、信号処理回路の信号入力端または信号出力端とパッケージの1つの端子とは、並列に設けられた2本のボンディングワイヤにより接続されている。これにより、第1比較例と比べて第2比較例では、ボンディングワイヤに起因する寄生インダクタンスの影響を低減することができる。しかし、ボンディングワイヤの寄生インダクタンスの影響の低減は十分ではない。
【0033】
(第1実施形態)
図5は、第1実施形態の半導体装置111の構成を示す図である。この半導体装置111は、半導体チップ10Aおよびパッケージ20を備え、信号伝送路3を伝送されて来た信号を受信するものである。
【0034】
半導体チップ10Aは、信号処理回路11、ESD保護素子12,13、複数のパッドおよび第1抵抗器16を有し、これらが半導体基板上に形成されている。半導体チップ10A上において複数のパッドのうちの第1パッド14と第2パッド15とは互いに短絡していない。信号処理回路11の信号入力端は、第2パッド15と接続されている。ESD保護素子12は、電源電位を供給する基準電位供給端と第1パッド14との間に設けられている。ESD保護素子13は、接地電位を供給する基準電位供給端と第1パッド14との間に設けられている。第1抵抗器16は、電源電位を供給する基準電位供給端と第1パッド14との間に設けられている。
【0035】
パッケージ20は、半導体チップ10Aを搭載し、外部との間で信号を入力または出力する複数の端子を有する。複数の端子のうちの何れかの特定端子21は、第1ボンディングワイヤ31により第1パッド14と接続され、第2ボンディングワイヤ32により第2パッド15と接続されている。また、端子21は、信号伝送路3と接続されている。
【0036】
信号伝送路3を伝送されて来てパッケージ20の端子21に到達した信号は、その端子21、第2ボンディングワイヤ32および第2パッド15を経て信号処理回路11の信号入力端に入力される。信号処理回路11の入力インピーダンスは、一般に、システムの特性インピーダンス(例えば50Ω)より十分に大きい。したがって、端子21に到達した信号は、そのまま信号処理回路11の信号入力端に伝達される。第1抵抗器16は、第1パッド14、第1ボンディングワイヤ31および端子21を介して信号伝送路3と接続されており、信号伝送路3の特性インピーダンスと同程度の抵抗値を有する。静電気などのサージ電圧が端子21に入力された場合であっても、ESD保護素子12,13が設けられていることにより、信号処理回路11が保護され、信号処理回路11の誤動作が防止される。なお、ESD保護素子12,13は設けられていなくてもよい。
【0037】
図6は、第1実施形態の半導体装置112の構成を示す図である。この半導体装置112は、半導体チップ50Aおよびパッケージ60を備え、信号伝送路4へ信号を送出するものである。
【0038】
半導体チップ50Aは、信号処理回路51、ESD保護素子52,53、複数のパッドおよび第1抵抗器56を有し、これらが半導体基板上に形成されている。半導体チップ50A上において複数のパッドのうちの第1パッド54と第2パッド55とは互いに短絡していない。信号処理回路51の信号出力端は、第2パッド55と接続されている。ESD保護素子52は、電源電位を供給する基準電位供給端と第1パッド54との間に設けられている。ESD保護素子53は、接地電位を供給する基準電位供給端と第1パッド54との間に設けられている。第1抵抗器56は、電源電位を供給する基準電位供給端と第1パッド54との間に設けられている。
【0039】
パッケージ60は、半導体チップ50Aを搭載し、外部との間で信号を入力または出力する複数の端子を有する。複数の端子のうちの何れかの端子61は、第1ボンディングワイヤ71により第1パッド54と接続され、第2ボンディングワイヤ72により第2パッド55と接続されている。また、端子61は、信号伝送路4と接続されている。
【0040】
信号処理回路51の信号出力端から出力された信号は、第2パッド55、第2ボンディングワイヤ72および端子61を経て信号伝送路4へ送出される。第1抵抗器56は、信号伝送路4の特性インピーダンスと同程度の抵抗値を有する。静電気などのサージ電圧が端子61に入力された場合であっても、ESD保護素子52,53が設けられていることにより、信号処理回路51が保護され、信号処理回路51の誤動作が防止される。なお、ESD保護素子52,53は設けられていなくてもよい。
【0041】
第1実施形態(図5図6)では、半導体チップ上において、信号処理回路の信号入力端または信号出力端は第2パッドと接続され、第1抵抗器は第1パッドと接続され、第1パッドと第2パッドとは互いに短絡していない。パッケージの1つの端子は、第1ボンディングワイヤにより第1パッドと接続され、第2ボンディングワイヤにより第2パッドと接続されている。
【0042】
この場合、第1ボンディングワイヤ、第2ボンディングワイヤ、第1パッド、第2パッド、第1抵抗器およびESD保護素子を含む回路部分は、図7に示されるような等価回路で表わされる。この等価回路の合成インピーダンスZは下記(1)式で表される。Lはボンディングワイヤのインダクタンス値であり、Cはパッド等と接地電位との間の容量値であり、Rは第1抵抗器の抵抗値であり、sはラプラス変換におけるs空間演算子である。
【0043】
【数1】

この(2)式においてsをjωに置き換えて角周波数ωで表現すると、合成インピーダンスZは下記(2)式で表される。jは虚数単位である。合成インピーダンスZの絶対値は下記(3)式で表される。ωRCの値は1と比べて十分に小さいとしてよいから、(3)式は下記(4)式で近似することができる。
【0044】
【数2】
【0045】
【数3】
【0046】
【数4】

この(4)式から分かるように、L=RCとすれば、合成インピーダンスZはRと等しくなる。或いは、LをRCに近い値にすれば、合成インピーダンスZはRに近い値になる。L、RおよびCの各値を適切に設定すればよい。例えば、L=1nH、R=50Ωとすると、C=400fFとすればよく、或いは、Cを400fFに近い値にすればよい。このようにすることにより、ボンディングワイヤの寄生インダクタンスの影響を低減することができる。
【0047】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態の半導体装置121の構成を示す図である。この半導体装置121は、半導体チップ10Bおよびパッケージ20を備え、信号伝送路3を伝送されて来た信号を受信するものである。第1実施形態における半導体チップ10Aと比較すると、第2実施形態における半導体チップ10Bは、第2抵抗器17を更に有する点で相違する。第2抵抗器17は、電源電位を供給する基準電位供給端と第2パッド15との間に設けられている。
【0048】
図9は、第2実施形態の半導体装置122の構成を示す図である。この半導体装置122は、半導体チップ50Bおよびパッケージ20を備え、信号伝送路4へ信号を送出するものである。第1実施形態における半導体チップ50Aと比較すると、第2実施形態における半導体チップ50Bは、第2抵抗器57を更に有する点で相違する。第2抵抗器57は、電源電位を供給する基準電位供給端と第2パッド55との間に設けられている。
【0049】
第2実施形態(図8図9)の構成では、第1抵抗器の抵抗値をR1とし、第2抵抗器の抵抗値をR2とし、信号伝送路の特性インピーダンスをZ0としたとき、下記(5)式が成り立つように(或いは近似的に成り立つように)することで、ボンディングワイヤの寄生インダクタンスの影響を低減することができる。第2実施形態では、R1,R2の双方をZ0より大きい値とすることができるので、第1実施形態(図5図6)と比べて、Cを小さくすることができ、Lが大きな値であっても、上記(4)式の成立(或いは近似的な成立)を容易化することができる。
【0050】
【数5】
【0051】
(第3実施形態)
図10は、第3実施形態の半導体装置131の構成を示す図である。この半導体装置131は、半導体チップ10Cおよびパッケージ20を備え、信号伝送路3を伝送されて来た信号を受信するものである。第1実施形態における半導体チップ10Aと比較すると、第3実施形態における半導体チップ10Cは、第3抵抗器18を更に有する点で相違する。第3抵抗器18は、第1パッド14と第2パッド15との間に設けられている。
【0052】
図11は、第3実施形態の半導体装置132の構成を示す図である。この半導体装置132は、半導体チップ50Cおよびパッケージ20を備え、信号伝送路4へ信号を送出するものである。第1実施形態における半導体チップ50Aと比較すると、第3実施形態における半導体チップ50Cは、第3抵抗器58を更に有する点で相違する。第3抵抗器58は、第1パッド54と第2パッド55との間に設けられている。
【0053】
第3実施形態(図10図11)の構成では、電源電位を供給する基準電位供給端と第1パッドとの間に設けられている第1抵抗器に加えて、第1パッドと第2パッドとの間に第3抵抗器が設けられている。ボンディングワイヤの寄生インダクタンスの影響に因り周波数特性が急峻になりすぎる場合であっても、第3抵抗器が設けられていることにより、その周波数特性を調整することができる。
【0054】
第3実施形態(図10図11)の構成では、第3抵抗器の抵抗値をR3とすると、合成インピーダンスZは下記(6)式で表される。この(6)式を角周波数ωで表すとともに、ωL/R3の値が1と比べて十分に小さく、ωRCの値が1と比べて十分に小さいとすると、(6)式は下記(7)式で近似することができる。合成インピーダンスZの絶対値は下記(8)式で表される。
【0055】
【数6】
【0056】
【数7】
【0057】
【数8】

一方、第1実施形態における前述の(4)式を変形すると下記(9)式のようになる。(8)式と(9)式とを比較すると、下記(10)式で表される因子の有無の点で相違している。この(10)式の値は1より小さいので、第1実施形態と比べて第3実施形態では、ボンディングワイヤの寄生インピーダンスの影響を容易に低減することができる。
【0058】
【数9】
【0059】
【数10】
【0060】
(第4実施形態)
図12は、第4実施形態の半導体装置141の構成を示す図である。この半導体装置141は、半導体チップ10Dおよびパッケージ20を備え、信号伝送路3を伝送されて来た信号を受信するものである。第2実施形態における半導体チップ10Bと比較すると、第4実施形態における半導体チップ10Dは、第3抵抗器18を更に有する点で相違する。第3抵抗器18は、第1パッド14と第2パッド15との間に設けられている。
【0061】
図13は、第4実施形態の半導体装置142の構成を示す図である。この半導体装置142は、半導体チップ50Dおよびパッケージ20を備え、信号伝送路4へ信号を送出するものである。第2実施形態における半導体チップ50Bと比較すると、第4実施形態における半導体チップ50Dは、第3抵抗器58を更に有する点で相違する。第3抵抗器58は、第1パッド54と第2パッド55との間に設けられている。
【0062】
第4実施形態(図12図13)の構成では、第2実施形態(図8図9)および第3実施形態(図10図11)の各構成が奏する作用効果が得られる。
【0063】
(第5実施形態)
図14は、第5実施形態の半導体装置151および第4抵抗器40を備える受信装置1の構成を示す図である。半導体装置151は、半導体チップ10Eおよびパッケージ20を備え、信号伝送路3を伝送されて来た信号を受信するものである。第1実施形態における半導体チップ10Aと比較すると、第5実施形態における半導体チップ10Eは、第1抵抗器16を有していない点で相違する。受信装置1は、半導体チップ内の第1抵抗器16に替えて、電源電位を供給する基準電位供給欄と端子21との間に設けられた第4抵抗器40を備えている。
【0064】
図15は、第5実施形態の半導体装置152および第5抵抗器80を備える送信装置2の構成を示す図である。半導体装置152は、半導体チップ50Eおよびパッケージ20を備え、信号伝送路4へ信号を送出するものである。第1実施形態における半導体チップ50Aと比較すると、第5実施形態における半導体チップ50Eは、第1抵抗器56を有していない点で相違する。送信装置2は、半導体チップ内の第1抵抗器56に替えて、電源電位を供給する基準電位供給欄と端子61との間に設けられた第5抵抗器80を備えている。
【0065】
第5実施形態(図14図15)の構成では、第1実施形態(図5図6)の構成が奏する作用効果が得られる。また、終端抵抗としての抵抗器40,80が半導体チップの外部に設けられているので、LVDS(Low voltage differential signaling)にも適用することが可能であり、また、好適な抵抗値を有する抵抗器40,80を選択して用いることが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…受信装置、2…送信装置、3,4…信号伝送路、10A~10E…半導体チップ、11…信号処理回路、12,13…ESD保護素子、14…第1パッド、15…第2パッド、16…第1抵抗器、17…第2抵抗器、18…第3抵抗器、20…パッケージ、21…端子、31…第1ボンディングワイヤ、32…第2ボンディングワイヤ、40…第4抵抗器、50A~50E…半導体チップ、51…信号処理回路、52,53…ESD保護素子、54…第1パッド、55…第2パッド、56…第1抵抗器、57…第2抵抗器、58…第3抵抗器、60…パッケージ、61…端子、71…第1ボンディングワイヤ、72…第2ボンディングワイヤ、80…第5抵抗器、111,112,121,122,131,132,141,142,151,152…半導体装置。
図1
図2
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