(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】親綱支柱
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20240126BHJP
【FI】
E04G21/32 D
(21)【出願番号】P 2020036851
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000136170
【氏名又は名称】株式会社ピカコーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】新 幸斗
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-155494(JP,A)
【文献】特開2011-247088(JP,A)
【文献】特開2010-095856(JP,A)
【文献】特開2013-227793(JP,A)
【文献】特開2021-29792(JP,A)
【文献】特開2001-231875(JP,A)
【文献】特開2009-61191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状の支柱本体(3)と、この支柱本体(3)の下部に装着されていて足場部材(T)に固定するクランプ(5)と、前記支柱本体(3)の上部に設けられていて親綱(P)を連結する第1親綱フック(6)と、前記クランプ(5)と第1親綱フック(6)との間で支柱本体(3)の中途部に設けられていて親綱(P)を連結する第2親綱フック(7)とを有
しており、
前記第1親綱フック(6)は、クランプ(5)からの高さが1.3~1.7mに設定され、前記第2親綱フック(7)は、クランプ(5)からの高さが0.7~1.2mに設定されていることを特徴とする親綱支柱。
【請求項2】
前記第2親綱フック(7)は、支柱本体(3)に水平方向から嵌脱可能に嵌合する嵌合部(7a)と、平面視略コ字又は略U字状に折曲してその両端を嵌合部(7a)に固着した棒材(7b)とを有し、嵌合部(7a)と棒材(7b)とで親綱挿通孔(9)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の親綱支柱。
【請求項3】
前記第1親綱フック(6)は、支柱本体(3)の頂部に上方から嵌脱可能に嵌合する嵌合部(6a)と、正面視略コ字又は略U字状に折曲してその両端を嵌合部(6a)に固着した棒材(6b)とを有し、嵌合部(6a)と棒材(6b)とで親綱挿通孔(9)が形成されて
いることを特徴とする請求項1又は2に記載の親綱支柱。
【請求項4】
前記第2親綱フック(7)は、平面視略コ字又は略U字状に折曲してその両端を支柱本体(3)に固着した棒材(7b)で形成されていることを特徴とする請求項
1に記載の親綱支柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所足場に親綱を張るための親綱支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場に仮設される高所足場には、所定間隔で複数本の親綱支柱を立設して、親綱支柱間に親綱を張り渡される。
このような親綱支柱は、特許文献1に開示されているように、支柱本体の下部にクランプを装着し、支柱本体の上部に親綱(綱自体又は綱端部に設けたフック)を連結する親綱フックを設け、支柱本体の中途部に持ち運び用ハンドルを設けており、前記クランプで足場板に固定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献の技術は、足場から1m前後の高さに親綱を堅牢に張り渡しておくことができ、作業員が命綱を親綱に取り付けて屈んで作業するときには、親綱は目線付近にあるので、命綱の連結の確認が容易で、連結の確実化も図れる。しかし、命綱の種類が、命綱を腰に取り付けるものから背中から出るハーネスタイプに変化してきており、ひとつの高さの親綱だけでは、命綱の連結の確実化を図るには不十分になってきている。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにした親綱支柱を提供することを目的とする。
本発明は、親綱張り高さを複数高さにできるようにした親綱支柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における課題解決のための具体的手段は、筒形状の支柱本体3と、この支柱本体3の下部に装着されていて足場部材Tに固定するクランプ5と、前記支柱本体3の上部に設けられていて親綱Pを連結する第1親綱フック6と、前記クランプ5と第1親綱フック6との間で支柱本体3の中途部に設けられていて親綱Pを連結する第2親綱フック7とを有しており、前記第1親綱フック(6)は、クランプ(5)からの高さが1.3~1.7mに設定され、前記第2親綱フック(7)は、クランプ(5)からの高さが0.7~1.2mに設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1親綱フック以外に第2親綱フックを設けて、親綱張り高さを複数高さに設定できる。また、作業員がハーネスを装着して命綱が背中から出る場合は、第1親綱フック6に取り付けた1.3~1.7m高さの親綱Pに命綱を連結することができ、作業員が腰のベルトに命綱を取り付ける場合は、第2親綱フック7に取り付けた0.7~1.2m高さの親綱Pに命綱を連結することができ、各種高さの命綱を最適に近い高さの親綱に連結しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図7,8において、建設現場に仮設される高所足場には、足場部材Tに所定間隔で複数本の親綱支柱1を立設して、親綱支柱1間に親綱Pを張り渡される。各親綱支柱1には上下2カ所に親綱フック6,7が設けられている。
第1親綱フック6は足場部材Tから1.5m前後(又は1.3~1.7m)の高さに設定され、親綱Pの張り高さは、立った作業員の背中高さ又は目線の高さに近く、第2親綱フック7は足場部材Tから0.9m前後(又は0.7~1.2m)の高さに設定され、親綱Pの張り高さは、立った作業員の腰高さ又は屈んだ作業員の目線の高さに近い。
【0010】
図1~6に示す第1実施形態の親綱支柱1は、支柱本体3と、クランプ5と、第1親綱フック(上部親綱フック)6と、第2親綱フック(中間親綱フック)7とを有する。
支柱本体3は、断面四角形の筒体であって、アルミ押し出し成形、または板金を4角に屈曲して断面四角形の筒体に成形されており、クランプ5はアルミ製、または鉄製等で形成されており、このクランプ5に支柱本体3の下部が斜めにボルト固定されている。
【0011】
クランプ5は側面視コ字形状であって、足場部材Tの側縁部を上下から挟み、上側に螺合したクランプネジ11で足場部材Tを挟持することにより、足場部材Tに対して強固に固定される。
クランプ5の背面は支柱本体3の下部に添接されるが、この背面は垂直面から下より上が外側となる外向き傾斜しており、それにより、支柱本体3は上部が下部よりもクランプ5の真上から離れる方向に傾斜することになり、足場部材Tの上方空間で支柱本体3が障害物にならないようになっている。
【0012】
第1親綱フック6は、正面視略門形(コ字状)の嵌合部6aと、正面視略コ字状又は略U字状に折曲した棒材6bとを有する。嵌合部6aは支柱本体3の頂部に上方から嵌脱可能に嵌合され、ボルトBで固定されており、筒形状の支柱本体3の上端を塞いでいる。
棒材6bの中途部は、嵌合部6aの上面から離れていて、その間に親綱Pが通る親綱挿通孔9が形成されている。棒材6bの中途部は親綱Pを結束可能である。
【0013】
第2親綱フック7は、平面視コ字状(略門形)であって支柱本体3に水平方向から嵌脱可能に嵌合する嵌合部7aと、平面視略コ字又は略U字状に折曲してその両端を嵌合部7aに固着した棒材7bとを有し、嵌合部7aと棒材7bとで親綱挿通孔9が形成されている。
即ち、第2親綱フック7は第1親綱フック6を流用可能な形状であり、嵌合部7aを支柱本体3に対して上方から嵌合する代わりに水平方向から嵌合して、ボルトBで支柱本体3に固定している。前記第2親綱フック7は嵌合部7a、棒材7b及びを嵌合部7aのボルト孔の総てを第1親綱フック6と同一に形成してもよい。
【0014】
また、前記第1親綱フック6と第2親綱フック7とは、親綱Pを張り渡す強度は略同じであり、一方の親綱Pを主とし、他方の親綱Pを補助としてもよく、また、補助ロープを採用してもよい。
前記第2親綱フック7を固定するために、支柱本体3にはボルトB貫通用のボルト孔が形成されているが、支柱本体3の中途高さの複数箇所にボルト孔を形成しておけば、第2親綱フック7の高さを変更可能にしたり、第2親綱フック7を複数個設けたりすることができる。
【0015】
支柱本体3の第1親綱フック6とクランプ5との間には、持ち運び用のハンドル12が設けられている。このハンドル12はクランク形状であって、両端部が留め具13によって回動可能に保持されており、ハンドル12は親綱支柱1の重心位置を跨ぐように配置されている。
図9~14に示す第2実施形態の親綱支柱1は、支柱本体3と、クランプ5と、第1親綱フック6と、第2親綱フック7と、ハンドル12とを有し、第2親綱フック7の形状が前記第1実施形態の親綱支柱1と相違する。
【0016】
第2実施形態の第2親綱フック7は、平面視略コ字又は略U字状に折曲してその両端を支柱本体3に固着した棒材7cで形成されている。この棒材7cは支柱本体3に溶接にて固着する必要があるが、形状がシンプルでかつ小さいので製作は簡単かつ安価になる。
前記実施形態1、2に示した親綱支柱1は、筒形状の支柱本体3と、この支柱本体3の下部に装着されていて足場部材Tに固定するクランプ5と、前記支柱本体3の上部に設けられていて親綱Pを連結する第1親綱フック6と、前記クランプ5と第1親綱フック6との間で支柱本体3の中途部に設けられていて親綱Pを連結する第2親綱フック7とを有するので、親綱Pを第1親綱フック6に連結して第1親綱フック6の高さに張り渡すことができ、それに加えて、親綱Pを第2親綱フック7に連結して第2親綱フック7の高さに張り渡すことができ、高所足場上での最適に近い複数高さの親綱に命綱を連結しておくことができ、命綱の連結の確実化を図ることができる。
【0017】
また、第1親綱フック6は、クランプ5からの高さが1.3~1.7mに設定され、前記第2親綱フック7は、クランプ5からの高さが0.7~1.2mに設定されているので、作業員がハーネスを装着して命綱が背中から出る場合は、第1親綱フック6に取り付けた1.3~1.7m高さの親綱Pに命綱を連結することができ、作業員が腰のベルトに命綱を取り付ける場合は、第2親綱フック7に取り付けた0.7~1.2m高さの親綱Pに命綱を連結することができ、各種高さの命綱を最適に近い高さの親綱に連結しておくことができる。
【0018】
さらに、第1親綱フック6は、支柱本体3の頂部に上方から嵌脱可能に嵌合する嵌合部6aと、平面視略コ字又は略U字状に折曲してその両端を嵌合部6aに固着した棒材6bとを有し、嵌合部6aと棒材6bとで親綱挿通孔9が形成されており、第2親綱フック7は、支柱本体3に水平方向から嵌脱可能に嵌合する嵌合部7aと、平面視略コ字又は略U字状に折曲してその両端を嵌合部7aに固着した棒材7bとを有し、嵌合部7aと棒材7bとで親綱挿通孔9が形成されているので、第1親綱フック6及び第2親綱フック7の製作、組み付けが簡単かつ容易にできる。
【0019】
さらにまた、第2親綱フック7は、平面視略コ字又は略U字状に折曲してその両端を支柱本体3に固着した棒材7cで形成されているので、第2親綱フック7の製作、組み付けが簡単かつ安価にできる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、部材の形状、構成及び組み合わせ等を変更したりすることもできる。
【0020】
例えば、第1親綱フック6及び第2親綱フック7は、棒材をリングに形成し、そのリングを嵌合部に溶着したものでもよい。
また、第1親綱フック6及び第2親綱フック7は、棒材でクエッションマーク形状の2本のフックを形成し、このフックを対向させかつ隙間をおいて嵌合部の2面に固定し、親綱Pの中間部を前記隙間を通して2本のフックに同時に係合できるように構成してもよい。
【0021】
支柱本体3の長さを、2m前後にしたり、支柱本体3の中途部に取り付ける親綱フックを、2個以上にしたりしてもよい。
本発明は、第2親綱フック7がクランプ5からの高さが0.7~1.2mに設定されている場合、それは従来技術と略同一の高さであるので、逆に、支柱本体3の長さを延長して、高所足場上から支柱本体3の頂部までを1.5m前後の長さに形成し、その長い支柱本体3の頂部に新たに第1親綱フック6を設けた、と認識することもできる。
【符号の説明】
【0022】
1 親綱支柱
3 支柱本体
5 クランプ
6 親綱フック
6a 嵌合部
6b 棒材
7 親綱フック
7a 嵌合部
7b 棒材
9 親綱挿通孔
11 クランプネジ
12 ハンドル
13 留め具
P 親綱
T 足場部材
B ボルト