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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】製袋業者用の帯状フィルム製造方法
(51)【国際特許分類】
   B31B 70/81 20170101AFI20240126BHJP
   B65D 33/25 20060101ALI20240126BHJP
   B31B 155/00 20170101ALN20240126BHJP
   B31B 160/10 20170101ALN20240126BHJP
【FI】
B31B70/81
B65D33/25 A
B31B155:00
B31B160:10
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020067397
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021160325
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】511014471
【氏名又は名称】株式会社タチバナ・インダストリーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】野原 信広
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-118472(JP,A)
【文献】特開平07-112496(JP,A)
【文献】特開2015-048080(JP,A)
【文献】特開2001-232698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31B 70/81
B65D 33/25
B31B 155/00
B31B 160/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻き付けられた一方の係着部および他方の係着部を有するチャックテープを同時に引っ張り出す工程(A)と、前記引っ張り出す工程で引っ張り出された前記チャックテープを切断刃で所定寸法に切断する前に前記一方の係着部および他方の係着部の切断対象部位の物質を超音波方式で溶着させる切断対象部位溶着工程(B)と、前記切断対象部位溶着工程で溶着した切断対象部位の略中央部を溶断機の振動子による超音波溶断又は加工機のレーザのいずれかを用いて切断し、その両端部が潰された状態となる所定寸法のチャックテープ片を得るチャックテープ片取得工程(C)と、ロール状に巻き付けられた所定幅の包材フィルムを引っ張り出したその内面であって、該包材フィルムの左端及び右端と直交するように、前記切断後の所定寸法のチャックテープ片の両端を前記超音波方式で溶着させるチャックテープ片溶着工程(D)を含む、製袋業者用の帯状フィルム製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製袋業者用の帯状フィルム製造方法及び帯状フィルムに関し、特に、一方の係着部(例えば雄型ファスナー部)および他方の係着部(例えば雌型ファスナー部)を有するチャックテープを内装物投入用の開口部付近に備える平袋を製造するために用いられる製袋業者用の帯状フィルム製造方法及び帯状フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の実用新案登録第3167775号は出願人が貴庁に提案したものである。この特許文献1には、帯状フィルムXの一例が記載されている。図20は特許文献1の帯状フィルムXの概略説明図である。この図20に於いて、Xは帯状フィルムで、この図では帯状フィルムXの一部の内面1が見える。前記内面1には、帯状フィルムXの長手方向に所定間隔を有して一体的に複数のチャックテープが装着されている。説明の便宜上、この図では帯状フィルムXの一部の内面1の中央部にチャックテープを構成する一方の係着部5のテープ状基部5aが溶着手段(超音波)で溶着されていることを示す。一方の係着部5は、前記テープ状基部5aと、オスチャック5bとから成る。この一方の係着部5に他方の係着部6が係着する。他方の係着部6は、テープ状基部6aと、前記オスチャック5bに係脱自在に係合するメスチャック6bとから成る。前記オスチャック5bに前記メスチャック6bが係着すると、矢印で示すように一体的に合体する。
【0003】
しかして、前記オスチャック5bに前記メスチャック6bの各端面は、図示しない切断刃で切断したままの状態なので、両者の切断端面の縁は比較的鋭利状態であった。そこで、鋭利状態の切断端面を有する合成樹脂製の帯状フィルムXを利用して製袋機で製品を製作し、多数の該製品を包装体に梱包し或いは多数の製品(例えば12枚)を一つの包装体に重ねた状態で梱包して一般市場に流通させた時などに於いて、外的要因(例えば製品の側端部と包装体の内面との摩擦)により、図21で示すように製品(平袋)Yの左右の両側端部(〇印した箇所)が損傷(例えばピンホールの発生)する、或いは損傷する恐れがあった(図20及び図21の符号は特許文献1と同じ)。
【0004】
次に、特許文献2の要約には、「開封が容易で使い勝手のよいチャックテープ付き袋を提供すること(課題)」、及び「重ね合い一部に投入孔201を開口する状態に周縁を熱溶着して袋体200を構成する包材210の投入孔201の開口縁に、包材210の外面との間に投入孔201が開口する方向に対して反対方向へ操作口401を開口する作業空間402を区画する把手部400をそれぞれ連設する。開封時には、把手部400の操作口401から作業空間402内に指Fを挿入して把手部400を互いに離間する方向に引っ張って投入孔201の開口縁を開く状態に引っ張り力をチャックテープ300に作用させて互いの嵌合を解除させる。指Fを引っ掛けるようにするので滑ることなく開封できること(解決手段)」が記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献2のチャックテープ300及び包材210の構成を、図面を参照しながら読むと、該特許文献2には本発明の主たる課題及び解決手段(チャックテープ300の左右両端部を潰した状態にすること、他方の係着部及び他方の係着部を内面に備えた帯状フィルムを市場に流通させるための、帯状フィルム製造方法及び帯状フィルム)が全く記載され、或いは示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第3167775号公報
【文献】特開2007-253977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主たる目的は、特許文献1の問題点に鑑み、一方の係着部及び他方の係着部を内面に備えた帯状フィルムを市場に流通させることを意図し、前記一方の係着部及び他方の係着部を有する複数のチャックテープを備える合成樹脂製の帯状フィルムを製造するが、(a) フィルム製造業者が倉庫に帯状フィルムを保管してから製袋業者(顧客)へと流通させるまでの間のみならず、(b)帯状フィルムを購入した製袋業者が、該合成樹脂製の帯状フィルムXを利用して自己の製袋機で製品を製作し、かつ、多数の該製品を包装体に梱包し或いは多数の製品(例えば12枚)を一つの包装体に重ねた状態で梱包して一般市場に流通させた時などに於いて、外的要因(例えば製品の側端部と包装体の内面との摩擦)により、製品の両側端部が損傷(例えばピンホールの発生)することやその恐れを極力解消することである。第2の目的は、左右の両端部が潰れた状態の複数のチャックテープを包材フィルムの内面に備える合成樹脂製の帯状フィルムを合理的(効率的)に製造することである。
【0008】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の袋製造用の帯状フィルム製造方法は、ロール状に巻き付けられた一方の係着部および他方の係着部を有するチャックテープを同時に引っ張り出す工程(A)と、前記引っ張り出す工程で引っ張り出された前記チャックテープを切断刃で所定寸法に切断する前に前記一方の係着部および他方の係着部の切断対象部位の物質を超音波方式で溶着させる切断対象部位溶着工程(B)と、前記切断対象部位溶着工程で溶着した切断対象部位の略中央部を溶断機の振動子による超音波溶断又は加工機のレーザのいずれかを用いて切断し、その両端部が潰された状態となる所定寸法のチャックテープ片を得るチャックテープ片取得工程(C)と、ロール状に巻き付けられた所定幅の包材フィルムを引っ張り出したその内面であって、該包材フィルムの左端及び右端と直交するように、前記切断後の所定寸法のチャックテープ片の両端を前記超音波方式で溶着させるチャックテープ片溶着工程(D)を含む、製袋業者用の帯状フィルム製造方法(請求項1)。
【0010】
また本発明の袋製造用の帯状フィルム製造方法はロール状に巻き付けられた一方の係着部および他方の係着部を有するチャックテープを同時に引っ張り出す工程と、前記引っ張り出す工程で引っ張り出された前記チャックテープを所定寸法に切断して所定寸法のチャックテープ片を得るチャックテープ片取得するチャックテープ片取得工程と、前記チャックテープ片取得工程で得られた所定寸法のチャックテープ片の切断断面を含む両端部の物質を溶着させる切断対象部位溶着工程と、然る後に、ロール状に巻き付けられた所定幅の包材フィルムを引っ張り出したその内面に、前記両端部が潰された状態となった前記所定寸法のチャックテープ片の一方又は他方のいずれか一方の係着部を溶着させるチャックテープ片溶着工程を含むことを特徴とする(削除した請求項3)。
【0011】
また本発明の袋製造用の帯状フィルム製造方法は、ロール状に巻き付けられた一方の係着部(21)および他方の係着部(22)を有するチャックテープ(2A)を同時に引っ張り出す工程Aと、前記引っ張り出す工程で引っ張り出された前記チャックテープ(2A)を所定寸法に切断して所定寸法のチャックテープ片(2)を得るチャックテープ片取得するチャックテープ片取得工程(C1)と、前記チャックテープ片取得工程で得られた前記所定寸法のチャックテープ片を、所定幅の包材フィルムを引っ張り出したその内面(1a)に、該包材フィルムの長手方向に所定間隔を有して位置付けるチャックテープ片位置付け工程(C2)と、然る後に、前記チャックテープ片位置付け工程C2でセットされた前記所定寸法のチャックテープ片の切断断面を含む両端部(2a、2b)の物質を溶着させる切断対象部位溶着工程(B1)と、前記所定寸法のチャックテープ片(2)の一方又は他方のいずれか一方の係着部を溶着させるチャックテープ片溶着工程(D)を含むことを特徴とする(削除した請求項4)。
【0012】
さらに、物の発明としての袋製造用の帯状フィルムは、(A)袋製造用の帯状フィルムは、包材フィルムとしてのフィルム本体の内面に一方の係着部および他方の係着部を有する複数のチャックテープが、包材フィルムの長手方向に所定間隔を有して一体的に装着されており、(B)前記一方の係着部および他方の係着部の両端部は、超音波溶着により潰れた状態になっており、(C)前記両端部を除く一方の係着部および他方の係着部のその余の各部位は、お互いに係脱可能である、ことを特徴とする(削除した請求項5)。
【0013】
そして、前記請求項5に記載の袋製造用の帯状フィルムに於いて、複数のチャックテープは、前記フィルム本体の両側端部に直交するように、その一方の係着部又は他方の係着部のいずれか一方のテープ状基部(21a、22a)が前記フィルム本体の内面に溶着されていることを特徴とする(削除した請求項6)。
【0014】
ここでの「一方の係着部と他方の係着部」とは、互いに合わせた状態で外部から閉じる方向に物理的な力が加わったときに、互いに合体して袋体の開口部を閉じることができ、一方、前記開口部を閉じた状態で開く方向に物理的な力が加わったときに互いに離れて袋体の開口部を開くことができる一対の部材をいう。その典型例は、スライターを有する、有しないにかかわらず、一方の係着部が筋状の雄型ファスナー、他方の係着部が筋状の雌型ファスナーである。また、一方の係着部が面ファスナーであると共に他方の係着部も面ファスナーである(両面が係脱できる構造体のもの)。両面が係脱できる構造体の典型例はマジックテープ(登録商標)のようなものである。さらに、両面が係脱できる構造体には、公知又は新規を問わず、微細な毛糸状や編目状の物同士が面状態で絡み合う係脱部材も含まれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の方法で製造された合成樹脂製の帯状フィルムは、フィルム製造業者がロール状態にして倉庫に保管し、その後、製袋業者(顧客)へと流通するが、前記倉庫で管理乃至製袋業者(顧客)に着荷するまでの間のみならず、製袋業者(顧客)が、該合成樹脂製の帯状フィルムXを利用して自己の製袋機で製品を製作し、かつ、多数の該製品を包装体に梱包し或いは多数の製品(例えば12枚)を一つの包装体に重ねた状態で梱包して一般市場に流通させた時などに於いて、外的要因(例えば製品の側端部と包装体の内面との摩擦)により、製品の両側端部が損傷(例えばピンホールの発生)することやその恐れを極力解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1乃至図6は本発明の第1実施形態の帯状フィルムXの各説明図。図7及び図8は第1実施形態の帯状フィルムを利用して出来上がった平袋の各説明図。図9乃至図13は第1実施形態の帯状フィルムの製造方法の各説明図。図14及び図15は本発明の第2実施形態の帯状フィルムの製造方法の各説明図。図16及び図17は本発明の第2実施形態の帯状フィルムの各説明図。図18及び図19は本発明の第3実施形態の帯状フィルムの製造方法の各説明図。
図1】第1実施形態の帯状フィルムXを構成するフィルム本体1と所定寸法のチャックテープ片2の斜視図(チャックテープ片をフィルム本体に溶着する前)。
図2図1に於いて、チャックテープ片2をフィルム本体1に溶着した帯状フィルムXの斜視図。
図3図2に於いて、帯状フィルムの内面に溶着されたチャックテープ片2の一端部2a(左端部が潰された状態)の説明図。
図4図2に於いて、フィルム本体1及びチャックテープ片2の中央部の拡大断面説明図。
図5図4に於いて、チャックテープ片2の両端部を除き、例えば略中央部2cを分離した場合の説明図。
図6】帯状フィルムXの外面の斜視図(便宜上、一部を省略)。
図7】第1実施形態の帯状フィルムXを利用して出来上がった平袋Zの要部の概略断面説明図。
図8】平袋Zの上端部を切り裂き、上端開口から内装物を投入した場合の説明図。
図9】第1実施形態の帯状フィルムXの製造方法を簡単なブロックで示した工程図。
図10】(a)ロール状チャックテープ2Aの外端部を引っ張り出す工程及びその後の切断対象部位溶着工程の概略説明図(一方の係着部21及び他方の係着部22を一条設けた場合)。(b)一方の係着部21及び他方の係着部22の物質が超音波方式により、一体的に融着状態となる旨の概念図。
図11図10に於いて、(a)切断対象部位の略中央部を溶断したチャックテープ片取得工程の概略説明図、(b)溶断されたチャックテープ片の端部を示す説明図。
図12】チャックテープ片溶着工程の説明図。
図13図12の13-13線拡大断面図。
図14】本発明の第2実施形態の帯状フィルムの製造方法をブロックで示した工程図。
図15】第2実施形態の引っ張り出す工程、切断対象部位溶着工程及びチャックテープ片取得工程を斜視で示した説明図。
図16】本発明の第2実施形態の帯状フィルムの説明であり、図1と同様の斜視図(一方の係着部21及び他方の係着部22を二条設けた場合)。
図17】第2実施形態の図2と同様の斜視図。
図18】本発明の第3実施形態の帯状フィルムの製造方法をブロックで示した工程図。
図19図18のブロックで示した各工程図の具体的な説明図。
図20】特許文献1に記載の帯状フィルムXの説明図。
図21】特許文献1の帯状フィルムXを用いて製品(平袋)Yを製造・販売した時に生ずる問題点を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1乃至図6は本発明の第1実施形態の帯状フィルムXの各説明図である。これらの図に於いて、Xは合成樹脂製の帯状フィルムで、この帯状フィルムXは、例えば図1及び図2で示すように、ロール状に巻き付けられた所定幅の包材フィルムとしてのフィルム本体1と、このフィルム本体1の左右の側端部と直交するように、かつ、該フィルム本体1の引っ張り出した方向に所定間隔離間してその内面に装着された複数のチャックテープ片2とから成る。なお、包材フィルムとしてのフィルム本体1は、単層又は複層(実施形態)のいずれであっても良い。
【0018】
複数のチャックテープ片2は、実施形態では、ロール状に巻き付けられた一方の係着部21および他方の係着部22を有するチャックテープ2Aを間欠的に所要量引っ張り出した後に、その張り出した部分の一部を、切断手段(例えば溶断機の振動子、切断機の切断刃等)を介して切断することにより得られた物である。なお、ここで「切断」には溶断機の振動子による超音波溶断、加工機のレーザ、これに類する機械器具(前記切断刃)等が含まれる。また実施形態の一方の係着部21は筋状の雄型ファスナー、他方の係着部22は筋状の雌型ファスナーであるが、前述したように、両面が係脱できる構造体のものであれば、その構造如何は問わない。一方の係着部21及び他方の係着部22は、操作性、係着力、封止性、耐久性等を考慮した構造体が望ましい。
【0019】
ここで、図1及び図2を基準にしてフィルム本体1の構成を説明する。フィルム本体1は、例えば棒状軸3を介して又は介さないでロール状(反物状)に巻き付けられている。実施形態ではフィルム本体1は、棒状軸3にその一端部に相当する内端部4が巻き付けられ、一方、他端部に相当する外端部5は展開状態に引っ張り出されている。
【0020】
特に図示しないが、ロール状に巻き付けられているフィルム本体1は、例えばフィルム供給部を構成する前記棒状軸3の第一の水平位置から該棒状軸3と対向する第二の水平位置に設けられたフィルム巻取り部を構成する巻取り軸へとガイド部に案内されながら間欠的に移動する。したがって、前記フィルム巻取り部は、図示しない駆動手段(駆動モータ)を有し、該駆動手段の駆動は制御部によって制御されている。
【0021】
ここでは説明の便宜上、図1のフィルム本体1の張り出した部分の表面(図面上見える部分)を「内面1a」とし、一方、張り出した部分の裏面(図面上見えない部分)を「外面1b」とする。また符号6を張り出した部分の左端面部とし、一方、符号7を張り出した部分の右端面部とする。さらに、張り出した部分の内面1aに描いた仮想線の部位を「中央部8」とする。この中央部8の幅は、フィルム本体1の全幅の略三分の1弱乃至略二分の1弱であり、実施形態では、好ましくは略二分の1弱である。なお、この幅は発明の特定要件(限定条件)ではなく、製造業者が製造する袋の種類に対応して適宜幅となる。したがって、チャックテープ片2の長さも図面に示した寸法に限定されるものではない。
【0022】
チャックテープ2Aから得られた切断後の各「チャックテープ片2」は、それぞれ一方の係着部21および他方の係着部22を有しているが、各チャックテープ片2の左右両端部2a、2bは、前記一方の係着部21および他方の係着部22の切断対象部位{後述する図10の(b)のa-aの領域}であることから、実施形態では右両端部2a、2bの物質を超音波溶着より融着させることによって、いわば潰された状態となっている。
【0023】
しかして、実施形態では、一方の係着部21の基部21aの一部又は全部は、フィルム本体1の内面1aに超音波溶着(ここでは「超音波方式」ともいう)され、この一方の係着部21のオスチャック21bに対して、他方の係着部22のメスチャック22bが係合している。すなわち、一方の係着部21および他方の係着部22は、張り出した部分の内面1aに装着されているものの、内面1aに溶着(融着)されているのは一方の係着部21の基部21aであり、他方の係着部22の基部22aには、図2で示すようにフィルム本体1と他のフィルム又はフィルム本体1の左右端部6,7は溶着(融着)されていない。
【0024】
付言すると、他方の係着部22の基部22aは、本実施形態の帯状フィルムXを購入した袋製造業者が、左右端部6,7を他方の係着部22の基部22a側に折り返す工程、下端部溶着工程、上端部切断工程等を実施して、図7及び図8で示すように平袋Zを製造する。平袋Zの製造方法は、本発明の特定要件ではないので、割愛する(例えば特許文献1の図4)。
【0025】
なお、「超音波方式」について言及する。超音波方式とは、熱可塑性樹脂を微細な超音波振動と加圧力によって瞬時に溶融し、接合する加工技術である。超音波溶着が適用可能なプラスチックは熱可塑性樹脂(熱を加えると溶融する樹脂)に限られ、ウレタンやエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂には適用しない。例えば図1及び図10の(b)で示す超音波溶着機(超音波ウェルダー)10は、電気エネルギーを機械的振動エネルギーに変換し、また同時に加圧をかけることにより2つの熱可塑性樹脂パーツの接合面に強力な摩擦熱を発生させ、樹脂を溶融し結合させる。この超音波溶着と言える超音波方式を合成樹脂製袋の開口部に適用することができる旨は、例えば実開昭58-171848号の実用新案登録請求の範囲及び該明細書の第2頁3行目~第11行目、特許第4872398号の第6頁等に記載されている。
【0026】
すなわち、「超音波方式」によって、雄部材及びメス部材の各基部をフィルム基材或いはシート基材の内面に超音波シールをして融着すると、他の熱融着方式よりも接着力が高まる旨が記載されている。なお、実施形態の超音波溶着機(超音波ウェルダー)10は、圧力如何によっては溶着機能のみならず、溶断機能を有している。
【0027】
次に図3は、図2に於いて、帯状フィルムの内面に溶着されたチャックテープ片2の一端部2a(左端部が潰された状態)の説明図である。なお、他端部2b(右端部)も左端部と同様なので省略する。チャックテープ片2の一端部2a及び他端部2bの溶着幅は、例えば4mm、5mm、6mm、7mmなど数ミリ程度が好ましい。望ましくは6mm程度溶着する。チャックテープ片2の両端部2a、2bを潰した状態に溶着するのは、チャックテープ片2の両端部2a、2bを、普通一般の切断刃等で切断すると、その切断端面の縁部は鋭利状態となり、その鋭利状態の切断端面を有する合成樹脂製の帯状フィルムを利用して製袋機で製品を製作し、多数の該製品を包装体に梱包し或いは多数の製品を一つの包装体に重ねた状態で梱包して一般市場に流通させた時などに於いて、外的要因(例えば製品の側端部と包装体の内面との摩擦)により、製品の両側端部が損傷(例えばピンホールの発生)する恐れがある。であるから、帯状フィルムXの製造段階からチャックテープ片2の両端部2a、2bを潰した状態に溶着するのが望ましい。
【0028】
チャックテープ片2は、図4及び図5で示すように、一方の係着部21および他方の係着部22の左右両端部2a、2bは互いに融着しているももの、左右両端部2a、2bを除いたその余の部分2cは、分離可能である。付言すると、周知の如く、一方の係着部21は、基部21aとオスチャック21bを有する。一方、他方の係着部22も基部22aとメスチャック22bとを有する。そして、前記オスチャック21bとメスチャック22bは係着自在である。それ故に、図5はチャックテープ片2の両端部を除き、例えば略中央部2cを分離した場合の説明図である。
【0029】
次に図6は帯状フィルムXの外面の斜視図(便宜上、一部を省略)である。この外面1bには、特許文献1と同様に商号の略称、商標、図柄等の任意の標識や識別子を印刷しても良い。また図7は第1実施形態の帯状フィルムXを利用して出来上がった平袋Zの要部の概略断面説明図、図8は平袋Zの上端部を切り裂き、上端開口から内装物を投入した場合の説明図である。これらの図に於いて、Zは製品の一例としての平袋、MTは平袋Zの外面に印刷されている任意の標識、11は平袋Zに投入された内装物、12は平袋Zの上端開口、13は平袋Zから切断した上端部、14は識別子である。
【0030】
次に、図9乃至図13を参照にして第1実施形態の帯状フィルムXの製造方法を説明する。なお、製造方法を説明するにあたって、帯状フィルムXを構成する各部材や部位の用語と符号は、前述したものをそのまま援用し、重複する説明を割愛する。
図9は、第1実施形態の帯状フィルムXの製造方法を簡単なブロックで示した工程図である。この図に於いて、まずAはロール状に巻き付けられた一方の係着部21および他方の係着部22を有するチャックテープ2Aを同時に引っ張り出す工程である。
【0031】
次にBは前記引っ張り出す工程Aで引っ張り出された前記チャックテープ2Aを所定寸法に切断する前に前記一方の係着部21および他方の係着部22の切断対象部位の物質を、望ましくは超音波溶着機(超音波ウェルダー)10を用いて溶着させる切断対象部位溶着工程である。すなわち、図10の(a)はロール状チャックテープ2Aの外端部を引っ張り出す工程A及びその後の切断対象部位(a-aの領域)を溶着する切断対象部位溶着工程Bを示した概略説明図である。特に、図10の(b)は一方の係着部21及び他方の係着部22の物質が超音波方式(超音波ウェルダー10)により、その両端部2a、2bが一体的に融着状態となる旨の概念図である。
【0032】
次にCは前記切断対象部位溶着工程で溶着した切断対象部位の略中央部を切断し、その両端部が潰された状態となる所定寸法のチャックテープ片2を得るチャックテープ片取得工程である。この実施形態では、一方の係着部21及び他方の係着部22の両端部2a、2bが潰された状態となった後に、例えば溶断機の振動子による超音波溶断、加工機のレーザ、これに類する機械器具等で溶断する。
【0033】
付言すると、図11の(a)は仮想線の枠内の切断対象部位{a-aの領域}の略中央部を溶断したチャックテープ片取得工程C、及び(b)は溶断されたチャックテープ片2の端部を示す。
【0034】
最後にDはロール状に巻き付けられた所定幅の包材フィルムを引っ張り出したその内面に、前記切断後の所定寸法のチャックテープ片の一方の取付け部を溶着させるチャックテープ片溶着工程で、図12はチャックテープ片溶着工程を概略的に示したものである。なお、図13図12の13-13線拡大断面図である。図12及び図13で明らかなように、実施形態のチャックテープ片溶着工程Dでは、左右一対の超音波方式(超音波ウェルダー10)により、所定幅の包材フィルムを引っ張り出したその内面であって、該包材フィルム3の左端6及び右端7と直交するように、前記切断後の所定寸法のチャックテープ片の両端を超音波方式で溶着させている。
【0035】
<付記1>
帯状フィルムの各製造方法の工程に於いて、溶着或いは融着技術に関して、超音波方式又は熱シール方式のいずれかを適宜に採用するが、実施レベルでは、前述した切断対象部位溶着工程及びチャック片両端をフィルムに融着する各工程は好ましくは超音波方式を用い、一方、前記チャック片両端を除くチャック片の略全体をロールフィルムに溶着する工程は好ましくは熱シール方式を用いている。
【実施例
【0036】
この欄では、図14及び図15を参照にした本発明の第2実施形態の帯状フィルムの製造方法を説明する。また図16及び図17を参照にして本発明の第2実施形態の帯状フィルムX1を説明する。さらに、図18及び図19を参照にして本発明の第3実施形態の帯状フィルムの製造方法を説明する。なお、これらの実施形態を説明するにあたって、第1実施形態の方法及び物の発明と同一の部分については、同一又は同様の符号を付し、重複する説明を省略する。また作用も同一なので、重複する説明を省略する。
【0037】
まず、第2実施形態の帯状フィルムX1の製造方法は、ロール状に巻き付けられた一方の係着部21および他方の係着部22を有するチャックテープ2Aを同時に引っ張り出す工程Aと、前記引っ張り出す工程で引っ張り出された前記チャックテープ2Aを所定寸法に切断して所定寸法のチャックテープ片2を得るチャックテープ片取得するチャックテープ片取得工程C1と、前記チャックテープ片取得工程で得られた所定寸法のチャックテープ片2の切断断面を含む両端部2a、2bの物質を溶着させる切断対象部位溶着工程B1と、然る後に、ロール状に巻き付けられた所定幅の包材フィルム1を引っ張り出したその内面1aに、前記両端部が潰された状態となった前記所定寸法のチャックテープ片2の一方の取付け部を溶着させるチャックテープ片溶着工程Dを含む。
【0038】
本発明の第2実施形態の帯状フィルムX1は、第1実施形態の帯状フィルムXの構成と基本的には同一であるが、包材フィルム1の内面1aに一方の係着部21及び他方の係着部22を二条設け点が相違する。このように構成しても本発明の課題を得ることができる。なお、帯状フィルムX1は、第1実施形態及び第2実施形態のいずれの製造方法で得られた物であっても良い。
【0039】
次に、図18及び図19は本発明の第3実施形態の帯状フィルムX2の製造方法の各説明図である。この帯状フィルムX2の製造方法は、ロール状に巻き付けられた一方の係着部21および他方の係着部22を有するチャックテープXを同時に引っ張り出す工程Aと、前記引っ張り出す工程で引っ張り出された前記チャックテープ2Aを所定寸法に切断して所定寸法のチャックテープ片2を得るチャックテープ片取得するチャックテープ片取得工程C1と、前記チャックテープ片取得工程C1で得られた前記所定寸法のチャックテープ片2を、所定幅の包材フィルムを引っ張り出したその内面1aに、該包材フィルムの長手方向に所定間隔を有して位置付ける、チャックテープ片位置付け工程C2と、然る後に、前記チャックテープ片位置付け工程C2でセットされた前記所定寸法のチャックテープ片2の切断断面を含む両端部2a、2bの物質を溶着させる切断対象部位溶着工程B1と、前記所定寸法のチャックテープ片2の一方の取付け部を溶着させるチャックテープ片溶着工程Dを含む。
【0040】
したがって、この第3実施形態の帯状フィルムX2の製造方法と第2実施形態の帯状フィルムX1とを比較すると、切断対象部位溶着工程B1の前段階にチャックテープ片位置付け工程C2が存在する点が主な相違点である。このような製造方法であっても、本発明の主な課題を達成することができる。
【0041】
<付記2>
帯状フィルムX、X1、X2の材質は、例えば延伸したポリエチレンテレフタレート、延伸したポリプロピレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、キャストポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂にて形成された単層または多層のフィルムを用いることができる。
【0042】
また、これらの熱可塑性樹脂にて形成された単層または多層のフィルムに対して、アルミニウム蒸着層、アルミニウム箔などを蒸着ないし積層するようにしてもよく、このようにすることにより、フィルムに対してガスバリアー性や遮光性などの諸特性を付与することもできる。
【0043】
これに対して、チャックテープ2Aは、例えば互いに係脱可能に嵌合する他方の係着部21と一方の係着部22とを備えているが、該他方の係着部及び一方の係着部は、例えば成形性や包材との接着性となる熱溶着性を考慮して、例えば低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、あるいはこれらの共重合体などのポリオレフィン系樹脂などにて形成し、これらのポリオレフィン系樹脂を押出成形などの成形手段により連続的に成形することが好ましい。
【0044】
なお、他方の係着部21と一方の係着部22のオスチャック21bとメスチャック22bは溶着しない(互いに分離可能)であるが、それらの両端部2a、2bは、例えば超音波方式により、物理的に一体的に潰れた状態となる。また、帯状フィルムX、X1、X2を販売するフィルム販売業者が、製袋業者に該帯状フィルムX、X1、X2を販売(流通)させる場合には、該帯状フィルムX、X1、X2の内面に存在する複数のチャックテープをカバーする第2の帯状フィルム(ここでは図示しない)を重ねた状態にしても良い。要するに、製袋業者がフィルム販売業者から帯状フィルムX、X1、X2を購入した際に、製袋業者の作業ベイ(床面)に極力、フィルム印刷機、多数の溶着機を設置しなくても良い環境設定ができることが望ましい。
【0045】
以上の説明から、物の発明としての「帯状フィルムX、X1、X2」は、以下の構成から成る。
(A)袋製造用の帯状フィルムは、包材フィルムとしてのフィルム本体の内面1aに一方の係着部および他方の係着部を有する複数のチャックテープが、包材フィルムの長手方向に所定間隔を有して一体的に装着されており、
(B)前記一方の係着部および他方の係着部の両端部は、超音波溶着により潰れた状態になっており
(C)前記両端部を除く一方の係着部および他方の係着部のその余の各部位は、お互いに係脱自在である、
(D)袋製造用の帯状フィルム。
(E)上記袋製造用の帯状フィルムに於いて、複数のチャックテープは、前記フィルム本体の両側端部に直交するように、その一方の係着部又は他方の係着部のいずれか一方のテープ状基部が前記フィルム本体の内面1aに溶着されていることを特徴とする袋製造用の帯状フィルム。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、一方の係着部および他方の係着部を有するチャックテープを内装物投入用の開口部付近に備える平袋を製造する製袋業者のために用いられる
【符号の説明】
【0047】
X、X1、X2…帯状フィルム、
Z…製品(例えば平袋)、
1…フィルム本体、
1a…フィルム本体の内面、1b…フィルム本体の外面、
4…内端部、5…外端部、6…左端端部、7…右端面部、8…中央部、
2A…チャックテープ、
2…チャックテープ片、
2a、2b…チャックテープ片の両端部
21…一方の係着部、
22…他方の係着部、
21a、22a…基部、
21b…オスチャック、
22b…メスチャック、
A…引っ張り出す工程、
B、B1…切断対象部位溶着工程、
a-aの領域…切断対象部位、
C、C1…チャックテープ片取得工程、
C2…チャックテープ片位置付け工程、
D…チャックテープ片溶着工程、
10…超音波ウェルダー。
図1
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図4
図5
図6
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図10
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