(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】有機物微粒子の製造方法及び有機物微粒子の改質方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20240126BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20240126BHJP
C07D 209/28 20060101ALI20240126BHJP
C07D 471/04 20060101ALI20240126BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20240126BHJP
C07D 498/04 20060101ALI20240126BHJP
C08J 3/00 20060101ALI20240126BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20240126BHJP
C09B 67/10 20060101ALI20240126BHJP
C09B 67/16 20060101ALI20240126BHJP
C09B 67/48 20060101ALI20240126BHJP
C09B 67/50 20060101ALI20240126BHJP
C09B 47/04 20060101ALN20240126BHJP
C09B 48/00 20060101ALN20240126BHJP
C09B 57/00 20060101ALN20240126BHJP
【FI】
B01J19/00 N
B01J19/00 321
B82Y40/00
C07D209/28
C07D471/04 112X
C07D487/04 137
C07D498/04 111
C08J3/00
C08J3/12 Z
C09B67/10
C09B67/16
C09B67/48 Z
C09B67/50 A
C09B47/04
C09B48/00 A
C09B57/00 Z
(21)【出願番号】P 2020082708
(22)【出願日】2020-05-08
(62)【分割の表示】P 2016564870の分割
【原出願日】2015-12-15
【審査請求日】2020-06-05
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2014253490
(32)【優先日】2014-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015021639
(32)【優先日】2015-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015079626
(32)【優先日】2015-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015238452
(32)【優先日】2015-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】595111804
【氏名又は名称】エム・テクニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】榎村 眞一
(72)【発明者】
【氏名】荒木 加永子
(72)【発明者】
【氏名】本田 大介
【合議体】
【審判長】阪野 誠司
【審判官】宮崎 大輔
【審判官】関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-504311(JP,A)
【文献】特開2009-82902(JP,A)
【文献】国際公開第2009/008388(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B, B01J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象とする少なくともその一部が非晶質からなる有機物微粒子を用意する工程を備え、
上記有機物微粒子に対して溶解度が1μg/g以上1000μg/g以下の溶解性を示す溶媒に高分子界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤の少なくとも何れかひとつを含む界面活性剤を添加し、上記界面活性剤を添加した上記溶媒に上記有機物微粒子を作用させる有機物微粒子の製造方法であって、
上記界面活性剤を添加した上記溶媒に上記有機物微粒子を作用させることにより
、上記有機物微粒子の結晶化度を向上させる処理を行う工程を備え
、
上記界面活性剤を添加した上記溶媒に上記有機物微粒子を作用させた後の上記有機物微粒子の粒子径を(A)、上記界面活性剤を添加した上記溶媒に上記有機物微粒子を作用させる前の上記有機物微粒子の粒子径(B)としたとき、上記有機物微粒子の粒子径変化率((A)/(B))が1~4であることを特徴とする、有機物微粒子の製造方法。
【請求項2】
処理対象とする少なくともその一部が非晶質からなる有機物微粒子を用意する工程を備え、
上記有機物微粒子に対して溶解度が1μg/g以上1000μg/g以下の溶解性を示す溶媒に高分子界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤を添加し、上記界面活性剤を添加した上記溶媒に上記有機物微粒子を作用させる有機物微粒子の製造方法であって、
上記界面活性剤を添加した上記溶媒に上記有機物微粒子を作用させることにより
、上記有機物微粒子を結晶転移させる処理を行う工程を備え
、
上記界面活性剤を添加した上記溶媒に上記有機物微粒子を作用させた後の上記有機物微粒子の粒子径を(A)、上記界面活性剤を添加した上記溶媒に上記有機物微粒子を作用させる前の上記有機物微粒子の粒子径(B)としたとき、上記有機物微粒子の粒子径変化率((A)/(B))が1~4であることを特徴とする、有機物微粒子の製造方法。
【請求項3】
有機物微粒子の原料溶液と、上記有機物微粒子の原料溶液から少なくとも1種類の有機物微粒子を析出させるための析出溶媒Lとを混合し、少なくともその一部に非晶質を含む有機物微粒子(P1)を析出させる工程1および、
上記有機物微粒子に対して溶解度が1μg/g以上1000μg/g以下の溶解性を示す溶媒に高分子界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤の少なくとも何れかひとつを含む界面活性剤を添加した粒子性状制御溶液を調製し、上記工程1の後、上記有機物微粒子(P1)を、上記粒子性状制御溶液に作用させる工程2を含み、
上記粒子性状制御溶液に上記有機物微粒子(P1)を作用させた後の上記有機物微粒子の粒子径を(A)、上記粒子性状制御溶液に上記有機物微粒子(P1)を作用させる前の上記有機物微粒子の粒子径を(B)としたとき、上記有機物微粒子の粒子径変化率((A)/(B))が1~4であり、
上記工程2では、上記有機物微粒子(P1)の
結晶化度を向上させる及び/又は上記有機物微粒子(P1)を結晶転移させるように作用させることを特徴とする、有機物微粒子の製造方法。
【請求項4】
上記工程1で得られた上記有機物微粒子(P1)に対して、洗浄および/または溶媒置換を行う工程cを含み、
上記工程cで得られた有機物微粒子(P2)を上記粒子性状制御溶液に作用させることを特徴とする、請求項
3に記載の有機物微粒子の製造方法。
【請求項5】
上記有機物微粒子を上記界面活性剤を添加した上記溶媒に作用させる際に、又は上記有機物微粒子を上記粒子性状制御溶液に作用させる際に撹拌処理を行い、
撹拌エネルギーにより上記有機物微粒子、上記有機物微粒子(P1)あるいは上記有機物微粒子(P2)の性状を制御することを特徴とする、請求項1~
4のいずれかに記載の有機物微粒子の製造方法。
【請求項6】
上記有機物微粒子が生体摂取物であり、上記界面活性剤が水溶性窒素含有ビニル重合体、非イオン性セルロース誘導体、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、塩化ベンザルコニウムから選ばれる1種又は2種であることを特徴とする、請求項1~
5のいずれかに記載の有機物微粒子の製造方法。
【請求項7】
上記有機物微粒子が樹脂であり、上記界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることを特徴とする、請求項1~
5のいずれかに記載の有機物微粒子の製造方法。
【請求項8】
上記有機物微粒子が有機顔料であり、上記界面活性剤が高分子ブロック共重合体、水酸基含有カルボン酸エステル、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムから選ばれることを特徴とする、請求項1~
5の何れかに記載の有機物微粒子の製造方法。
【請求項9】
上記有機物微粒子が赤色有機顔料又は青色有機顔料であることを特徴とする、請求項
8に記載の有機物微粒子の製造方法。
【請求項10】
上記工程1が、
有機物微粒子の原料溶液と析出溶媒Lとを含む、少なくとも2種類の被処理流体を、
接近および離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する第1処理用面と第2処理用面との間に導入し、
第1処理用面と第2処理用面との間に付与される導入圧力により、第1処理用面と第2処理用面とを離反させる方向に作用する離反力を発生させ、
上記離反力によって、第1処理用面と第2処理用面との間を微小な間隔に保ちつつ、上記少なくとも2つの被処理流体を、上記微小な間隔に保たれた第1処理用面と第2処理用面との間で合流させ、
上記第1処理用面と第2処理用面との間を通過させることによって、薄膜流体を形成させ、上記薄膜流体中で被処理流体同士を反応させるマイクロリアクターで行われることを特徴とする、請求項
3または4に記載の有機物微粒子の製造方法。
【請求項11】
上記撹拌は、回転する撹拌翼を備えた撹拌機を用いて行われることを特徴とする、請求項
5に記載の有機物微粒子の製造方法。
【請求項12】
上記界面活性剤を添加した上記溶媒又は上記粒子性状制御溶液に、上記有機物微粒子を作用させる前後の上記有機物微粒子の粒子径が100nm以下であることを特徴とする請求項1~
11の何れかに記載の有機物微粒子の製造方法。
【請求項13】
上記有機物微粒子(P1)の粒子径が30nm以下であることを特徴とする請求項
3または4に記載の有機物微粒子の製造方法。
【請求項14】
上記溶媒に顔料誘導体を実質的に含まないことを特徴とする、請求項
8に記載の有機物微粒子の製造方法。
【請求項15】
有機物微粒子の改質方法であって、
処理対象とする少なくともその一部に非晶質を含む有機物微粒子を用意する工程1と、
上記有機物微粒子に対して溶解度が1μg/g以上1000μg/g以下の溶解性を示す溶媒に高分子界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤の少なくとも何れかひとつを含む界面活性剤を添加した粒子性状制御溶液を上記有機物微粒子に対して作用させる工程2と、を含み、
上記粒子性状制御溶液を上記有機物微粒子に対して作用させた後の上記有機物微粒子の粒子径を(A)、上記粒子性状制御溶液を上記有機物微粒子に対して作用させる前の上記有機物微粒子の粒子径を(B)としたとき、上記有機物微粒子の粒子径変化率((A)/(B))が1~4であり、
この工程2により上記有機物微粒子の結晶化度を向上させることによって、上記有機物微粒子を目的の設定条件と合致する結晶化度を備えたものに改質することを特徴とする、有機物微粒子の改質方法。
【請求項16】
有機物微粒子の改質方法であって、
処理対象とする少なくともその一部に非晶質を含む有機物微粒子を用意する工程1と、
上記有機物微粒子に対して溶解度が1μg/g以上1000μg/g以下の溶解性を示す溶媒に高分子界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤を添加した粒子性状制御溶液を上記有機物微粒子に対して作用させる工程2と、を含み、
上記粒子性状制御溶液を上記有機物微粒子に対して作用させた後の上記有機物微粒子の粒子径を(A)、上記粒子性状制御溶液を上記有機物微粒子に対して作用させる前の上記有機物微粒子の粒子径を(B)としたとき、上記有機物微粒子の粒子径変化率((A)/(B))が1~4であり、
この工程2により上記有機物微粒子の結晶型を変化させることによって、上記有機物微粒子を目的の設定条件と合致する結晶型を備えたものに改質することを特徴とする、有機物微粒子の改質方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物微粒子の製造方法及び有機物微粒子の改質方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の有機物を微粒子化、特にナノ微粒子化することで、その物性に新たな機能を発現させることが出来るため、有機物のナノ微粒子化技術は産業界全般にわたって重要なテーマとなっている。
【0003】
有機物ナノ微粒子は、数μm以上の固体と比べ、その極めて高い比表面積によって、反応性に富み、活性が高くなる等の機能の向上と共に、元々持つ特性を飛躍的に向上し得る材料として、幅広い技術分野への応用が期待されている。
【0004】
有機物ナノ微粒子として期待された特性を発揮するためには、粒子径の制御が必要であるが、一般に、有機物ナノ微粒子は溶媒中での溶解性が向上するため、再結晶化による粒子成長や粒子の粗大化、ネッキングが起こりやすいという問題がある。
【0005】
そのため、特許文献1のように、表面改質剤を含む貧溶媒中において粉砕処理を行うことにより、粒子サイズを維持した生体摂取物の製造方法が提案されており、特許文献9では、銅フタロシアニン等の青色有機顔料に有機溶媒を加えて乾式粉砕処理を行う有機顔料の製造方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、当該文献の様に機械的粉砕処理を行った場合には、粒子の結晶性が低下することが多く、溶媒中で粉砕後の粒子が凝集し、粒子が粗大化する問題が生じることがある。また、機械的粉砕手段としてはボールミルや、サンドミル、ビーズミルなどの媒体を用いた粉砕法をとることが多く、装置由来の不純物の混入を避けることが難しいこと、さらに目標粒子径にするために多大な時間や動力が必要となるなどの課題があった。
【0007】
また、特許文献2では、長期保存および/または高温暴露後に、粒子径の安定性および最小の結晶成長を示すナノ粒子組成物を製造するための方法として、表面安定化剤を添加し、粉砕処理を行うことや共沈法が開示されている。しかしながら、結晶性については結晶相として、または非晶質として存在するという記載にとどまり、結晶化度や結晶型の制御などの結晶性の制御については示されていない。また、特許文献10に示されている様な、有機顔料を溶解可能な良溶媒に溶解させた有機顔料溶液と、前記良溶媒よりも前記有機顔料に対する溶解度が低い貧溶媒とを混合することで有機顔料微粒子を析出させる方法で作製した有機物ナノ微粒子は、非晶質成分を含むことが多く、有機溶媒中で粗大化しやすいという問題点がある。
【0008】
有機物ナノ微粒子として期待された特性を発揮するためには、粒子径のみならず、結晶性や結晶型といった粒子の性状の制御が重要である。例えば、樹脂等の高分子化合物において、二次凝集の発生やすべり性という特性には、樹脂の結晶化度が強く影響している場合が多いことが知られている。そのため、特許文献3では、熱処置された樹脂微粒子として、ガラス転移温度以上融点以下の温度で熱処理を行うことにより、樹脂微粒子の結晶性を制御する手法が開示されている。しかしながら、この方法では、長時間の熱処理を行う必要があり、より簡便に結晶性を制御できる方法が求められていた。
【0009】
そこで、本願出願人によって提案された特許文献4、8では、対向して配設された接近・離反可能な少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する処理用面間の薄膜流体中で生体摂取物微粒子(特許文献4)あるいは有機顔料微粒子(特許文献8)を析出させている。これらによると、微細で均一な有機物ナノ微粒子が容易に製造できるようになり、加えて、析出される有機物ナノ微粒子の粒子径や結晶型の制御も可能となる。
【0010】
しかしながら、得られた有機物ナノ微粒子は、微細であるがゆえに、比表面積の増加に伴う溶解性向上の結果、粒子析出後、粒子中の非晶質部分の作用により、溶媒中で粗大な粒子に成長する場合や粒子のネッキングが生じる場合があった。
【0011】
また、微粒子を析出させた後、析出させた微粒子の粒子径を変化させずに、上記析出させた微粒子の結晶子径を変化させる技術としては、特許文献5の様に、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中にて析出させた粒子の核または結晶子を成長させることにより、均一かつ均質な粒子を得ること、具体的には、粒子が析出した後の流体を上記処理用面間から吐出させた後に、上記流体を管状容器に通す際の滞留時間や温度を調整することで、粒子の結晶子径を制御することが知られている。
【0012】
しかし、特許文献5では、滞留時間や温度によって粒子の結晶子径を制御しているものの、上記処理を行った後の粒子に関しては、依然、溶媒中での粗大化やネッキングを解決できなかった。
【0013】
また、特許文献6には、測定用の試料を作製するために、有機溶媒に分散剤を溶解した溶液に銅フタロシアニン粉末を投入して分散処理したことが示されているが、ここで用いられた銅フタロシアニン微粒子は、元々結晶性が極めて高く、有機物微粒子に対する溶媒ないしは分散剤の作用は本発明とまるで異なるものであり、測定目的で分散処理を行うものであるから、微粒子を改質したり、微粒子の性状を制御するものとは言えない。
【0014】
有機物の中でも、とりわけ、有機顔料の場合には、有機顔料の色特性が粒子径や結晶性等の粒子の性状に依存するため、有機顔料の用途の広がりにあわせて、有機顔料および有機顔料微粒子の性状を精密に制御することが望まれている。しかしながら、結晶成長を抑制するための決定打はなく、しばしば用いられている、有機顔料の誘導体と共に有機顔料をナノ粒子化する方法(特許文献7)では、誘導体特有の色が、実際に使用する有機顔料の発色に影響を与えるため、要求された色を発色させることが難しいという問題がある。
【0015】
以上のように、有機物微粒子は、生体摂取物、樹脂、顔料など種々のものが種々の分野で種々の用途で用いられているが、いずれの用途にあっても、粒子径や結晶化度等の粒子の性状が、その性能に与える影響は大きい。そのため、有機物微粒子の性状を精密に制御することが望まれていると共に、実際の有機物微粒子を利用するまでその性状の変化が抑制することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特表平8-501073号公報
【文献】特表2002-538199号公報
【文献】特開2007-291168号公報
【文献】再表2009-8391号公報
【文献】特開2014-23997号公報
【文献】特開2010-242104
【文献】国際公開WO2008/044519号公報パンフレット
【文献】特開2009-82902号公報
【文献】特開2004-244563号公報
【文献】特開2006-193681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
このように、本発明は、有機物微粒子本来の特性を活かすために、溶媒中での有機物微粒子の成長を抑制しつつ、結晶性を向上させる、あるいは結晶転移させることを可能とする、有機物微粒子の製造方法を提供することを課題とするものである。上記課題に対して、発明者は、試行錯誤の結果、少なくともその一部が非晶質からなる有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒に対して、有機物微粒子が上記溶媒の作用を受けることを防御する界面活性剤を溶媒に添加した粒子性状制御溶液を、有機物微粒子に作用させることで、有機物微粒子の粒子径を実質的に変更することなく、有機物微粒子の結晶化度を向上させるあるいは、有機物微粒子を結晶転移させることが可能であることを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0018】
すなわち、本発明は、少なくともその一部が非晶質からなる有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒に界面活性剤を添加し、上記溶媒に上記有機物微粒子を作用させることにより、上記有機物微粒子の粒子径を実質的に変更することなく、上記有機物微粒子の結晶化度を向上させることを特徴とする、有機物微粒子の製造方法に関する。
【0019】
また、本発明は、少なくともその一部が非晶質からなる有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒に界面活性剤を添加し、上記溶媒に上記有機物微粒子を作用させることにより、上記有機物微粒子の粒子径を実質的に変更することなく、上記有機物微粒子を結晶転移させることを特徴とする、有機物微粒子の製造方法に関する。
【0020】
また、本発明は、上記界面活性剤を添加した上記溶媒に、上記有機物微粒子を作用させる前後の上記有機物微粒子の粒子径変化率(界面活性剤処理後(A)/界面活性剤処理前(B))が1~4であることを特徴とする、有機物微粒子の製造方法に関する。
【0021】
また、本発明は、有機物微粒子の原料溶液と、上記有機物微粒子の原料溶液から少なくとも1種類の有機物微粒子を析出させるための析出溶媒Lとを混合し、有機物微粒子(P1)を析出させる工程1および、上記有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒に、上記有機物微粒子に対して成長抑制が可能な界面活性剤を添加した粒子性状制御溶液を調製し、上記有機物微粒子(P1)を、上記粒子性状制御溶液に作用させる工程2を含み、上記工程2は、上記有機物微粒子(P1)の粒子性状を制御するように作用させることを特徴とする、有機物微粒子の製造方法に関する。
【0022】
また、本発明は、上記工程2は、上記有機物微粒子(P1)の結晶化度と結晶型と粒子径との少なくともいずれか1つを変化させるように作用させることを特徴とする、有機物微粒子の製造方法に関する。
【0023】
また、本発明は、上記工程1で得られた上記有機物微粒子(P1)に対して、洗浄および/または溶媒置換を行う工程cを含み、上記工程cで得られた有機物微粒子(P2)を上記粒子性状制御溶液に作用させることを特徴とする、有機物微粒子の製造方法に関する。
【0024】
また、本発明は、上記有機物微粒子は、少なくともその一部分に非晶質を含むものであることを特徴とする、有機物微粒子の製造方法に関する。
【0025】
また、本発明は、上記有機物微粒子を上記溶媒に作用させる際に、又は上記有機物微粒子を上記粒子性状制御溶液に作用させる際に撹拌処理を行い、撹拌エネルギーにより上記有機物微粒子、上記有機物微粒子(P1)あるいは上記有機物微粒子(P2)の性状を制御することを特徴とする、有機物微粒子の製造方法に関する。
【0026】
また、本発明は、上記有機物微粒子が生体摂取物であることを特徴とする、有機物微粒子の製造方法に関する。
また、本発明は、上記有機物微粒子が樹脂であることを特徴とする、有機物微粒子の製造方法に関する。
また、本発明は、上記有機物微粒子が赤色有機顔料や青色有機顔料などの有機顔料であることを特徴とする、有機物微粒子の製造方法に関する。
【0027】
また、本発明は、上記工程1が、有機物微粒子の原料溶液と析出溶媒Lとを含む、少なくとも2種類の被処理流体を、接近および離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する第1処理用面と第2処理用面との間に導入し、第1処理用面と第2処理用面との間に付与される導入圧力により、第1処理用面と第2処理用面とを離反させる方向に作用する離反力を発生させ、上記離反力によって、第1処理用面と第2処理用面との間を微小な間隔に保ちつつ、上記少なくとも2つの被処理流体を、上記微小な間隔に保たれた第1処理用面と第2処理用面との間で合流させ、上記第1処理用面と第2処理用面との間を通過させることによって、薄膜流体を形成させ、上記薄膜流体中で被処理流体同士を反応させるマイクロリアクターで行われることを特徴とする、有機物微粒子の製造方法に関する。
上記撹拌は、回転する撹拌翼を備えた撹拌機を用いて行うことができる。
【0028】
上記製造方法により得られた上記有機物微粒子の粒子径は、微粒子の利用用途などに応じて種々変更して実施することができるが、例えば、100nm以下や30nm以下のものとして実施することができる。例えば、上記界面活性剤を添加した上記有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒に、上記有機物微粒子を作用させる前後の上記有機物微粒子の粒子径が100nm以下であってもよく、上記有機物微粒子(P1)の粒子径が30nm以下であってもよい。
【0029】
また、本発明は、上記溶媒に顔料誘導体を実質的に含まないことを特徴とする、有機物微粒子の製造方法に関する。
【0030】
また、本発明は、有機物微粒子の粒子径を実質的に変更しない、有機物微粒子の改質方法であって、有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒に界面活性剤を添加した粒子性状制御溶液を上記有機物微粒子に対して作用させる工程を含み、この工程により上記有機物微粒子の結晶化度を向上させることによって、上記有機物微粒子を目的の設定条件と合致する結晶化度を備えたものに改質することを特徴とする、有機物微粒子の改質方法に関する。
【0031】
また、本発明は、有機物微粒子の粒子径を実質的に変更しない、有機物微粒子の改質方法であって、有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒に界面活性剤を添加した粒子性状制御溶液を上記有機物微粒子に対して作用させる工程を含み、この工程により上記有機物微粒子の結晶型を変化させることによって、上記有機物微粒子を目的の設定条件と合致する結晶型を備えたものに改質することを特徴とする、有機物微粒子の改質方法に関する。
【0032】
また、本発明は、上記工程の処理を行う前後の上記有機物微粒子の粒子径変化率(工程の処理後(A)/工程の処理前(B))が1~4であることを特徴とする有機物微粒子の改質方法に関する。
【0033】
また、本発明は、上記工程の処理を行う前の有機物微粒子は、少なくともその一部に非晶質を含むことを特徴とする、有機物微粒子の改質方法に関する。
【発明の効果】
【0034】
本発明の製造方法を用いることにより、有機物微粒子の粒子成長を抑制できるとともに、結晶型、結晶性が制御可能となり、有機物微粒子本来の性能がいかんなく発揮できる有機物微粒子を製造することができる。また、有機物微粒子の性状を精密に制御することにより、産業界の様々な要請に対応可能な有機物微粒子の製造方法を提供することができる。さらに、上記有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒中において、粒子の性状の制御を簡便に行うことができるため、一種の有機物微粒子から、目的に応じた特性を具備した様々な種類の有機物微粒子を作製することが可能となり、大幅にコストダウンを実現できる。
【0035】
特に、本発明の有機物微粒子の製造方法を析出させる粒子の結晶性制御が可能な強制薄膜型マイクロリアクターに適応することにより、マイクロリアクターから非晶質を含む有機物微粒子を析出させた後、更に微粒子の性状の制御を行うことができ、非常に多種多様な特性を具備する有機物微粒子を容易に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の実施の形態に係る処理工程の一例を示す図である。
【
図2】(A)は本発明の実施の形態に係る強制薄膜型マイクロリアクターの略断面図であり、(B)は本発明の他の実施の形態に係る強制薄膜型マイクロリアクターの略断面図である。
【
図3】
図2(A)(B)に示す強制薄膜型マイクロリアクターの第1処理用面の略平面図である。
【
図4】本発明の実施例A1、工程cにおいて得られたインドメタシン微粒子のTEM写真である。
【
図5】本発明の実施例A1、工程c並びに工程2において得られたインドメタシン微粒子のX線回折測定結果である。
【
図6】本発明の実施例A1、工程2において得られたインドメタシン微粒子のTEM写真である。
【
図7】本発明の実施例A2、工程2において得られたインドメタシン微粒子のTEM写真である。
【
図8】本発明の比較例A1、工程2において得られたインドメタシン微粒子のTEM写真である。
【
図9】本発明の実施例A3、工程c並びに工程2において得られたインドメタシン微粒子のX線回折測定結果である。
【
図10】本発明の実施例A3、工程2において得られたインドメタシン微粒子のTEM写真である。
【
図11】本発明の比較例A2、工程2において得られたインドメタシン微粒子のTEM写真である。
【
図12】本発明の実施例A4、工程cにおいて得られたインドメタシン微粒子のTEM写真である。
【
図13】本発明の実施例A4、工程c並びに工程2において得られたインドメタシン微粒子のX線回折測定結果である。
【
図14】本発明の実施例A4、工程2において得られたインドメタシン微粒子のTEM写真である。
【
図15】本発明の比較例A3、工程2において得られたインドメタシン微粒子のTEM写真である。
【
図16】本発明の実施例A5、工程cにおいて得られたクルクミン微粒子のTEM写真である。
【
図17】本発明の実施例A5並びに実施例A6の工程c、並びに工程2において得られたクルクミン微粒子のX線回折測定結果である。
【
図18】本発明の実施例A5、工程2において得られたクルクミン微粒子のTEM写真である。
【
図19】本発明の比較例A4、工程2において得られたクルクミン微粒子のTEM写真である。
【
図20】本発明の実施例A6、工程2において得られたクルクミン微粒子のTEM写真である。
【
図21】本発明の比較例A5、工程2において得られたクルクミン微粒子のTEM写真である。
【
図22】本発明の実施例A7、工程cにおいて得られたポリプロピレン微粒子のSEM写真である。
【
図23】本発明の実施例A7、工程c並びに工程2において得られたポリプロピレン微粒子のX線回折測定結果である。
【
図24】本発明の実施例A7、工程2において得られたポリプロピレン微粒子のSEM写真である。
【
図25】本発明の比較例A6、工程2において得られたポリプロピレン微粒子のSEM写真である。
【
図26】本発明の実施例A8、工程1において得られたピレノキシン微粒子のTEM写真である。
【
図27】本発明の実施例A8、工程2において得られたピレノキシン微粒子のTEM写真である。
【
図28】本発明の実施例A8、工程1(工程2処理前)と工程2において得られたピレノキシン微粒子のX線回折測定結果である。
【
図29】実施例Bの実験番号1-1の工程1において作製された本発明の赤色顔料ナノ粒子の透過電子顕微鏡(TEM)観察写真である。
【
図30】実施例Bの実験番号1-2の工程2において作製された本発明の赤色顔料ナノ粒子の透過電子顕微鏡(TEM)観察写真である。
【
図31】実施例Bの実験番号1-1の工程2において作製された本発明の赤色顔料ナノ粒子の透過電子顕微鏡(TEM)観察写真である。
【
図32】実施例Cの実験番号1-7の工程1(洗浄)後において得られた本発明の青色有機顔料微粒子の透過電子顕微鏡(TEM)観察写真である。
【
図33】実施例Cの実験番号1-7の工程1(洗浄)後において得られた本発明の青色有機顔料微粒子の透過電子顕微鏡(TEM)観察写真である。
【
図34】実施例Cの実験番号1-7の工程2(作用)後において得られた本発明の青色有機顔料微粒子の透過電子顕微鏡(TEM)観察写真である。
【
図35】実施例Cの実験番号1-7の工程2(作用)後において得られた本発明の青色有機顔料微粒子の透過電子顕微鏡(TEM)観察写真である。
【
図36】実施例Cの実験番号4-4において作製された青色有機顔料微粒子の透過電子顕微鏡(TEM)観察写真である。
【
図37】実施例Cの実験番号3-1において作製された青色有機顔料微粒子の透過電子顕微鏡(TEM)観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の様態は以下に記載の実施形態のみに限定するものではない。
【0038】
本発明において有機物とは、炭素を含む化合物で主に炭素と酸素から形成されるものであり、人工的に合成されたものでも天然物から抽出されたものでも特に限定されるものではない。例えば、医薬組成物や食品、食品添加物、健康食品などの生体摂取物や、合成樹脂、合成繊維、ゴムなどの高分子化合物、染料や顔料、塗料などを含む色素系化合物や香料、農薬などが挙げられる。また、本発明において有機物微粒子とは、上述の有機物の微粒子である。
【0039】
生体摂取物とは、生体に摂取する事を目的とするものであれば特に限定されないが、例えば医薬品における薬物のように生体内に吸収し、生体内での効果を発現させる事を目的とするものや、体内を通過させ、その後に排泄するものやドラッグデリバリーシステムにおける薬物成分の運搬用物質、または化粧料のように、生体皮膚に塗布するもの、及び食品と上記物質の中間体などが挙げられる。具体的には、医薬、医薬部外品、化粧品、食品、食品添加物、健康食品などに用いられる有機物をいう。本発明の生体摂取物としては、市販のものを使用してもよいし、新規に合成してもよい。
【0040】
上記生体摂取物の具体例としては、鎮痛薬、抗炎症薬、駆虫薬、抗不整脈薬、抗生物質、抗凝固薬、抗降圧薬、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬、抗悪性腫瘍薬、食欲抑制薬、抗肥満薬、、抗ムスカリン薬、抗ミコバクテリア薬、抗新生物薬、免疫抑制薬、抗甲状腺薬、抗菌薬、抗ウイルス薬、不安解消薬、アストリンゼン、アドレナリン性β受容体遮断薬、血液製剤、代用血漿、心筋変性力薬、コントラスト媒質、コルチコステロイド、咳抑制薬、診断薬、診断像形成薬、利尿薬、ドーパミン作用薬、止血薬、免疫薬、リピッド調節薬、筋肉弛緩薬、副交感神経刺激興奮薬、副甲状腺カルシトニン、ビホスホネート類、プロスタグランジン、放射性医薬、性ホルモン、抗アレルギー薬、興奮薬、食欲減退物質、交感神経興奮薬、甲状腺薬、血管拡張剤およびキサンチン類、白内障治療剤、副腎皮質ホルモン剤、アレルギー性鼻炎治療薬などの医薬組成物や、栄養薬効物質、食物サプリメント、ビタミン、ミネラル、ハーブなどの食物栄養補助剤、葉酸、脂肪酸、果実および野菜抽出物、ビタミン補給剤、ミネラル補給剤、ホスファチジルセリン、リポ酸、メラトニン、グルコサミン/コンドロイチン、アロエ・ベラ、グッグル、グルタミン、アミノ酸、緑茶、リコピンなどの食品または、食品添加物、ハーブ、植物栄養素、抗酸化剤、果実のフラボノイド成分、またコラーゲンやヒアルロン酸、アミノ酸、ビタミンC誘導体、ハイドロキノン類等の美容補助食品等が挙げられるが、これに限定されるものではない。好ましい性状としては、水に低溶解度で経口投与可能なものおよび注射剤として適用可能なものなどが挙げられる。
【0041】
医薬としては、ダナゾール、タクロリムス水和物、プロゲステロン、インドメタシン、クルクミン、トラニラスト、ベンズブロマロン、ナプロキセン、フェニトイン、カロテン、ピポサルファム、ピポサルファン、カプトテシン、アセトミノフェン、アセチルサリチル酸、アミオダロン、コレスチフミン、コレスチポール、クロモリンナトリウム、アルブテロール、スクラルフェート、スルファサラジン、ミノキシジル、テンパゼパム、アルプラゾラム、プロポキシフェン、オーラノフィン、エリスロマイシン、サイクロスポリン、アシクロビル、ガンシクロビア、エトポサイド、メファラン、メトトリキセート、ミノキサントロン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、メガステロール、タモキシフェン、メドロキシプロゲステロン、ナイスタチン、テルブタリン、アンホテリシンB、アスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナック、ケトプロフェン、フルビプロフェン、ジフルミサール、ジオスゲニン、シロスタゾール、トルブタミド、ペプチド、クロモグリク酸ナトリウム、ピレノキシンなどが挙げられる。
医薬部外品としては、歯磨き剤、薬用化粧品、育毛剤、口中清涼剤、口臭予防剤などがあげられる。
【0042】
化粧品としては、例えば、化粧水、乳液、美容液などの基礎化粧品、日焼け止め化粧品、メークアップ化粧品、頭髪化粧品、清浄化粧品、口唇化粧品、口腔化粧品、爪化粧品、アイライナー化粧品、入浴用化粧品などが挙げられる。
【0043】
食品もしくは食品添加物としては、ビタミンA・B・C・E等のビタミン類およびその誘導体、2アミノ酸類、カロテノイド、果実および植物抽出物などが挙げられる。
【0044】
健康食品としては、コエンザイムQ10、ビタミンA・B・C・E等のビタミン類およびその誘導体等、をあげることができる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0045】
本発明において樹脂とは、特に限定されるものではないが熱可塑性樹脂[ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂などの縮合系熱可塑性樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂などのビニル重合系熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、セルロース誘導体などの天然物由来樹脂、熱可塑性シリコーン樹脂など]、熱硬化性樹脂[例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂(シリコーンゴム、シリコーンワニス)]などが含まれる。これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。通常、熱可塑性樹脂、非水溶性樹脂(又は疎水性樹脂、非水溶性熱可塑性樹脂など)を好適に使用できる。
【0046】
ポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸成分、ジオール成分、オキシカルボン酸、ラクトン類を用いた種々の樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ1、4-シクロへキシルジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリC2-6アルキレン-アリレート系樹脂、C2-6アルキレン-アリレート単位を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステル(例えば、共重合成分が、オキシアルキレン単位を有するポリオキシC2-4アルキレングリコールやC6-12脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸などの非対称性芳香族ジカルボン酸などのコポリエステル)、ポリアリレート系樹脂、液晶性ポリエステルなどの芳香族ポリエステル系樹脂、ポリC2-6アルキレン-オギザレート、ポリC2-6アルキレン-サクシネート、ポリC2-6アルキレン-アジペートなどのポリC2-6アルキレングリコール-C2-10脂肪族ジカルボン酸エステル、ポリオキシカルボン酸系樹脂(例えば、ポリグリコール酸やポリ乳酸、グリコール酸-乳酸共重合体など)、ポリラクトン系樹脂(例えば、ポリカプロラクトンなどのポリC3-12ラクトン系樹脂など)、これらのコポリエステル(例えば、ポリカプロラクトン-ポリブチレンサクシネート共重合樹脂など)などが挙げられる。ポリエステル系樹脂はウレタン結合を含んでいてもよい。さらに、ポリエステル系樹脂は生分解性を有していてもよい。
【0047】
ポリアミド系樹脂としては、例えば、脂肪族ポリアミド系樹脂、脂環族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂などが挙げられ、通常、脂肪族ポリアミド系樹脂が使用される。これらのポリアミド系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。脂肪族ポリアミド系樹脂としては、脂肪族ジアミン成分(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC4-10アルキレンジアミン)と脂肪族ジカルボン酸成分(アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC4-20アルキレンジカルボン酸など)との縮合物(例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1212など)、ラクタム(ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタムなどのC4-20ラクタムなど)又はアミノカルボン酸(ω-アミノウンデカン酸などの炭素数C4-20アミノカルボン酸など)の単独又は共重合体(例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/11、ポリアミド6/12など)、これらのポリアミド成分が共重合したコポリアミド(例えば、ポリアミド66/11、ポリアミド66/12など)などが挙げられる。ポリアミド系樹脂のジカルボン酸成分はダイマー酸単位を含んでいてもよい。さらに、ポリアミド系樹脂は生分解性を有していてもよい。
【0048】
エーテル系樹脂、特にポリ(チオ)エーテル系樹脂としては、例えば、ポリオキシアルキレン系樹脂(安定化されたポリオキシメチレングリコール又はホモ又はコポリアセタール系樹脂、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体などのポリオキシC2-4アルキレングリコール)、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンエーテルケトン系樹脂、ポリスルフィド系樹脂(ポリフェニレンスルフィド又はその共重合体などのポリチオエーテル系樹脂)、ポリエーテルケトン系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン系樹脂を含む)などが含まれる。
【0049】
ポリオレフィン系樹脂には、α-C2-6オレフィンの単独又は共重合体、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン-1などのオレフィンの単独又は共重合体、オレフィンと共重合性単量体との共重合体[エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体など]が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0050】
ビニル系樹脂のうち、ハロゲンを含有するハロゲン含有ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン系樹脂、フッ素樹脂などが例示できる。
【0051】
また、その他のビニル系樹脂又はその誘導体としては、例えば、カルボン酸ビニルエステルの単独又は共重合体(ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体など)、これらのケン化物(ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系樹脂)、ケン化物(ビニルアルコール系樹脂)からの誘導体(例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール系樹脂など)などが例示できる。エチレン-ビニルアルコール共重合体において、エチレン含量は5~40重量%程度であってもよい。
【0052】
本発明は、有機顔料として提供され製造され得る種々の顔料に適用することができる。
【0053】
例えば、本発明の赤色顔料としては、市販のものを使用しても良いし、新規に合成しても良い。一例としてカラーインデックスにおいてC.I.Pigment Redに分類される顔料やC.I.Pigment VioletやC.I.Pigment Orangeに分類される顔料の一部が挙げられる。より具体的にはC.I.Pgment Red 122やC.I.Pgment Violet 19のようなキナリドン系顔料やC.I.Pgment Red 254やC.I.Pigment Orange73のようなジケトピロロピロール系顔料、C.I.Pigment Red 150やC.I.Pigment Red 170のようなナフトール系顔料やC.I.Pigment Red 123のようなペリレン系顔料やC.I.Pigment Red 144のようなアゾ系顔料が挙げられる。
【0054】
また、本発明は、青色有機顔料に対しても適用することができる。この青色有機顔料には、青色、紺色、シアン等の青系色の有機顔料が含まれる。
【0055】
本発明の青色有機顔料としては、市販のものを使用してもよいし、新規に合成してもよい。一例としてカラーインデックスにおいてC.I.PigmentBlueに分類される顔料をあげることができる。より具体的には、C.I.PigmentBlue-1、C.I.PigmentBlue-2、C.I.PigmentBlue-3、C.I.PigmentBlue-15、C.I.PigmentBlue-15:2、C.I.PigmentBlue-15:3、C.I.PigmentBlue-15:4、C.I.PigmentBlue-16、C.I.PigmentBlue-22、C.I.PigmentBlue-60、C.I.PigmentBlue-75等をあげることができる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0056】
本発明の有機顔料としては、複合フタロシアニン微粒子を用いることもできる。複合フタロシアニン微粒子は今日まで種々のものが提供され市販されているが、これを用いることもでき、新規に合成してもよい。
【0057】
特に、本願出願人は、結晶成長を抑制でき、求められる特性を満足する、顔料等の色材として最適な、ナノオーダー、好ましくは100nmオーダー以下の銅-チタニルフタロシアニン微粒子、銅-コバルトフタロシアニン微粒子、および、銅-チタニル-コバルトフタロシアニン微粒子などの複合フタロシアニン微粒子およびその製造方法を開発したが、この製造方法によって得られた複合フタロシアニン微粒子を用いることもできる。
【0058】
この新たな複合フタロシアニン微粒子について説明しておくと、この複合フタロシアニン微粒子の製造方法は、原料として、少なくとも銅フタロシアニンとチタニルフタロシアニンおよび/またはコバルトフタロシアニンとを、第1溶媒に溶解させて溶解液を調製する工程0、上記工程0で得られた溶解液と、上記原料に対して貧溶媒となる第2溶媒とを混合して複合フタロシアニンを析出させる工程1、および、上記工程1で得られた複合フタロシアニンに有機溶媒を作用させる工程2、を含むことを特徴とする。
【0059】
上記有機溶媒は、芳香族化合物系溶媒または複素環式化合物系溶媒であることが好ましく、例えば、上記有機溶媒が、スチレン、キシレン、トルエン、ベンゼン、クレゾール、クメン、テトラヒドロフランからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。α型銅フタロシアニンを、通常はより安定なβ型結晶構造等への結晶転移を誘起・促進する芳香族化合物系溶媒または脂環族化合物系溶媒を上記有機溶媒として用いることで、驚くべきことに、より安定なβ型結晶構造等への結晶転移することが抑制でき、また、結晶の成長を抑制することが可能となりうる。
【0060】
上記工程0における上記原料の混合重量比(銅フタロシアニン/チタニルフタロシアニンおよび/または銅フタロシアニン/コバルトフタロシアニン)が1以上20未満であるものとして実施することができる。また、上記工程0において、チタニルフタロシアニンおよびコバルトフタロシアニンを、同時または順次溶解させて実施することができる。
【0061】
上記工程1は、本発明の上述の工程1と同様、少なくとも2つの被処理流体を反応させるマイクロリアクターを用いて行うことができる。
【0062】
また、工程1で得られた複合フタロシアニンと工程2で得られた複合フタロシアニンとが、同じ結晶型であるものとして実施することができる。即ち、工程2において、工程1で得られた複合フタロシアニンに有機溶媒を作用させても結晶転移が起こらないものである。また、上記有機溶媒には界面活性剤又は分散剤を添加する。
【0063】
上記複合フタロシアニン微粒子は、アスペクト比が1.1以上2.5以下であって、粒子径が5nm以上100nm以下であることが適当である。上記アスペクト比とは、銅-チタニルフタロシアニン微粒子等の各複合フタロシアニン微粒子における長辺と短辺の比率をいう。たとえば、その形状が直方体または直方体類似体と捉えうる場合には、3辺の中で最長辺と最短辺の比率をいう。または、その形状が球形または略球形の場合と捉えうる場合には、その最長径と最短径の比率を言う。また、たとえば、上記アスペクト比は、透過電子顕微鏡(TEM)観察によって、100個の粒子について長径と短径を測定した結果の平均値によって求めたものをいう。
【0064】
上記複合フタロシアニン微粒子の紫外可視領域における吸収スペクトルの655~700nmにおけるピークトップのAbs(a)と550~640nmにおけるピークトップのAbs(b)の相対値([Abs(a)]/[Abs(b)])が0.8以上であるものとして実施することができる。上記Absとは、ランベルト-ベールの法則に基づき紫外可視吸収スペクトル測定において算出される吸光度(Abspbance)のことをいい、ピークトップのAbsとは、特定波長の範囲内におけるAbs値の中で最大値のものをいう。
【0065】
本発明の界面活性剤としては、以下に示す、様々な市販品や、新規に合成したものを使用できる。特に限定されないが一例として、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤や各種ポリマーなどの分散剤などをあげることができる。用途により、使用できる界面活性剤に制限が生じる場合がある。例えば、生体摂取物に対しては生体への毒性などを考慮する必要がある。これに限定されるものではないが、ネオゲンR-K(第一工業製薬)のようなドデシルベンゼンスルホン酸系や、ソルスパース20000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース41090(以上、アビシア社製)、BYK108、ディスパービックBYK160、ディスパービックBYK161、ディスパービックBYK162、ディスパービックBYK163、ディスパービックBYK166、ディスパービックBYK170、ディスパービックBYK180、ディスパービックBYK181、ディスパービックBYK182、ディスパービックBYK183、ディスパービックBYK184、ディスパービックBYK190、ディスパービックBYK191、ディスパービックBYK192、ディスパービックBYK2000、ディスパービックBYK2001、ディスパービックBYK2163、ディスパービックBYK2164(以上、ビックケミー社製)、ポリマー100、ポリマー120、ポリマー150、ポリマー400、ポリマー401、ポリマー402、ポリマー403、ポリマー450、ポリマー451、ポリマー452、ポリマー453、EFKA-46、EFKA-47、EFKA-48、EFKA-49、EFKA-1501、EFKA-1502、EFKA-4540、EFKA-4550(以上、EFKAケミカル社製)、カオーセラ2000、ペレックスTG、ペレックスTR(以上、花王社製)、フローレンDOPA-158、フローレンDOPA-22、フローレンDOPA-17、フローレンG-700、フローレンTG-720W、フローレン-730W、フローレン-740W、フローレン-745W(以上、共栄社化学社製)、アジスパーPA111、アジスパーPB711、アジスパーPB811、アジスパーPB821、アジスパーPW911(以上、味の素社製)、ジョンクリル678、ジョンクリル679、ジョンクリル62(以上、ジョンソンポリマー社製)、ヒドロキシメチルセルロースやヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース類や、ポリビニルアルコールなどの高分子、ポリビニルピロリドンやレシチンやコレステロールなどのリン脂質、スルホニウム化合物、アラビアゴム・ガディガム等の植物性樹脂、ゼラチン、カゼイン、ホスファチド、デキストラン、グリセロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、グリセロールモノステアラート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、Span80、Span60、Span20などのソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、Tween80、Tween60、Tween40、Tween20などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ポリオキシエチレンステアラート、コロイド二酸化ケイ素、ホスファート、ドデシル硫酸ナトリウム、エチレンオキシドおよびホルムアルデヒドとの4-(1、1、3、3-テトラメチルブチル)-フェノール重合体、Lutrol F127、Lutrol F108、Futrol F 87、Futrol F68などのポロキサマー、ポロキサミン、荷電リン脂質、ジオクチルスルホスクシナート、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルアリールポリエーテルスルホナート、スクロースステアラートとスクロースジステアラートとの混合物、p-イソノニルフェノキシポリ-グリシドール、デカノイル-N-メチルグルカミド、n-デシルβ-D-グルコピラノシド、n-デシルβ-D-マルトピラノシド、n-ドデシルβ-D-グルコピラノシド、n-ドデシルβ-D-マルトシド、ヘプタノイル-N-メチルグルカミド、n-ヘプチルβ-D-グルコピラノシド、n-ヘプチルβ-D-チオグルコシド、n-ヘキシルβ-D-グルコピラノシド、ノナノイル-N-メチルグルカミド、n-ノイルβ-D-グルコピラノシド、オクタノイル-N-メチルグルカミド、n-オクチル-β-D-グルコピラノシド、オクチル β-D-チオグルコピラノシド、リゾチーム、PEG-リン脂質、PEG-コレステロール、PEG-コレステロール誘導体、PEG-ビタミンA、ならびにビニルアセタートとビニルピロリドンとのランダム共重合体、第四級アンモニウム化合物、ベンジル-ジ(2-クロロエチル)エチルアンモニウムブロミド、ココナッツトリメチルアンモニウムクロリド、ココナッツトリメチルアンモニウムブロミド、ココナッツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、ココナッツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、デシルトリエチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドブロミド、C12-15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、C12-15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドブロミド、ココナッツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、ココナッツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチルスルファート、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムブロミド、ラウリルジメチル(エテノキシ)4アンモニウムクロリド、ラウリルジメチル(エテノキシ)4アンモニウムブロミド、N-アルキル(C12-18)ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、N-アルキル(C14-18)ジメチル-ベンジルアンモニウムクロリド、N-テトラデシリドメチルベンジルアンモニウムクロリド一水和物、ジメチルジデシルアンモニウムクロリド、N-アルキルおよび(C12-14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウムクロリド、トリメチルアンモニウムハロゲン化物、アルキル-トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル-ジメチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、エトキシ化アルキルアミドアルキルジアルキルアンモニウム塩、エトキシ化トリアルキルアンモニウム塩、ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウムクロリド、N-ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、N-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム、クロリド一水和物、N-アルキル(C12-14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウムクロリド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、C12トリメチルアンモニウムブロミド、C15トリメチルアンモニウムブロミド、C17トリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ポリ-ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、ジメチルアンモニウムクロリド、アルキルジメチルアンモニウムハロゲン化物、トリセチルメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリエチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド、POLYQUAT10TM、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、コリンエステル、ステアルアルコニウムクロリド化合物、セチルピリジニウムブロミド、セチルピリジニウムクロリド、第四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物塩、MIRAPOLTM、ALKAQUATTM、アルキルピリジニウム塩、アミン、アミン塩、アミンオキシド、イミドアゾリニウム塩、プロトン化第四級アクリルアミド、メチル化第四級重合体などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
これに限られるものではないが、例えば、有機物微粒子が実施例Aに示したインドメタシンやクルクミン、ピレノキシンなどの低分子の有機物である場合、水溶性窒素含有ビニル重合体や非イオン性セルロース誘導体などの高分子界面活性剤を用いることが好ましい。より具体的にはヒドロキシプロピルセルロースやヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。また、分散性の観点などからTween80やポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などのノニオン系の界面活性剤が効果をもつ場合もあり、高分子界面活性剤と併用することも好ましい。有機物微粒子が実施例BやCに示した顔料の有機物である場合、アクリル系ポリマーや高分子ブロック共重合物などの高分子系の界面活性剤や、水酸基含有カルボン酸エステルのような界面活性剤や、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムやドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの陰イオン界面活性剤などを用いることが好ましい。
【0067】
また本発明の有機物微粒子において、高分子界面活性剤であるブロック共重合体を用いても構わない。その場合、ブロック共重合体としては、アクリル系、メタクリル系ブロック共重合体、ポリスチレンと他の付加重合系または縮合重合系のブロック共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレンのブロックを有するブロック共重合体等が挙げられる。また、従来から知られているブロック共重合体を用いることもできるが、本発明に用いられるブロック共重合体は両親媒性であることが好ましい。具体的に好ましい形としては、疎水セグメントと有機酸あるいはそのイオン性塩ユニットを持つ親水セグメントからなるジブロック共重合体を挙げることができる。また、疎水セグメントと有機酸あるいはそのイオン性塩ユニットを持つ親水セグメントとさらに別のセグメントを有するトリブロック共重合体が好ましく用いられる。トリブロックの場合、疎水セグメント、非イオン性の親水セグメント、有機酸あるいはそのイオン性塩ユニットを持つ親水セグメントである形が好ましく用いられ、内包状態の安定化の意味でも好ましい。例えば前述したトリブロック共重合体を使用して、顔料物質などの有機物と、溶媒として水を使用して分散液を調製すると、顔料などの有機物をトリブロック共重合体が形成するミセル中に内包させることが可能である。また、その分散組成物の粒子の粒子径も非常に揃った均一なものとすることも可能である。さらにはその分散状態を極めて安定なものとすることも可能である。
【0068】
本発明の溶媒としては、有機物微粒子の原料を溶解させるためや、有機物微粒子の原料溶液から有機物微粒子を析出させるため、更には以下に記載する界面活性剤を添加することで有機物微粒子の性状を制御するために様々なものを用いることが出来る。それらの溶媒の一例としては、水(蒸留水、純水等)や、有機溶媒(アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ニトリル系溶媒、スルホキシド系溶媒、ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒、アミン系溶媒、イオン性溶液)を挙げることが出来る。これらの溶媒は、目的に応じて1種または2種以上の混合溶媒を選択して実施することができる。また、必要に応じて、酸性物質や塩基性物質を各種溶媒に加え、pHを調整することもできる。
【0069】
上記の溶媒についてさらに詳しく説明すると、アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール(PGME)などが挙げられ、さらにn-ブタノールなどの直鎖アルコール、2-ブタノール、tert-ブタノール等の分枝状アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の多価アルコール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。芳香族系溶媒としては、例えば、スチレン、トルエン、キシレン、フェノール、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、ピリジンなどが挙げられる。脂肪族系溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサンへプタン、オクタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。ニトリル系溶媒としては、例えば、アセトニトリルなどが挙げられる。スルホキシド系溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。ハロゲン系溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、ヨードホルムなどが挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などが挙げられる。イオン性液体としては、例えば、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム(BTMA)や1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムとPF6-(ヘキサフルオロリン酸イオン)との塩などが挙げられる。アミン系溶媒としては、例えば、ジメチルアミノエタノールやエチレンジアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。アミド系溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
【0070】
本発明における「有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒」とは、上記有機物微粒子と作用させてから、処理の完了までの間に、上記有機物微粒子の全てを完全に溶解する強い溶解性を示すものではなく、上記微粒子の性状に「変化」を与える程度の溶解性を示すものを意味する。以下、「一部溶解能を有する溶媒」とも称する。この「変化」とは、特に限定されないが、上記溶媒に上記有機物微粒子を作用させた際に、一部の上記有機物微粒子が成長し粗大化する現象や、有機物微粒子同士がネッキングを起こすなどの現象などを例示することができる。
【0071】
上記一部溶解能を有する溶媒に対する有機物微粒子の溶解度の一例としては、平均粒子径1000nmの有機物微粒子を用いて測定した場合において、1μg/g以上1000μg/g以下(1ppm以上1000ppm以下)であることが好ましく、1μg/g以上500μg/g以下(1ppm以上500ppm以下)であることがより好ましい。完全に溶解しないまでも、上記溶媒に対する有機物微粒子の溶解度が高すぎる場合には、粒子の成長や粒子の粗大化の程度が過度になるため、本発明への適用は困難である。
【0072】
なお、上記溶解度の測定にあたっては、平均粒子径1000nmの有機物微粒子を上記溶媒に作用させた後、開口径0.1~0.2μm程度のフィルターでろ過し、そのろ液をUV-Vis測定(可視・紫外分光測定)することによって、溶媒に溶解している有機物の濃度を算出する。濃度の算出にあたっては、上記濾液を蛍光や屈折率など他の検出方法で測定してもよい。
【0073】
また、有機物微粒子と一部溶解能を有する溶媒との組み合わせの一例として、有機物微粒子がインドメタシンやクルクミン、ピレノキシンである場合には、ペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカンのような直鎖のアルカンやシクロヘキサンのような環状アルカンや、水を上記溶媒として使用することが好ましい。また、一例として有機物微粒子がポリプロピレンである場合には、メチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒やトルエンやキシレンなどの芳香族系溶媒を上記溶媒として使用することが好ましい。
【0074】
一例として本発明の比較例Aの結果である
図8、
図11に見られる粒子は上記溶媒中において成長し、またネッキングを起こしている様子が確認される。このような状態となった場合には、その後分散処理を行っても粒子を分散することは不可能であり、有機物の微粒子化によって得られる特性(例えば、溶解性の向上などの物性変化、透明性の向上などの光特性の変化、新規反応などの化学特性変化など)を発揮することが非常に難しい。
【0075】
他の一例として本発明の実施例Bの実験番号1-1にて作製された赤色顔料であるPR254微粒子をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に投入した際のTEM観察結果を
図31に示す。また投入前のTEM観察結果を
図29に示す(界面活性剤水溶液に分散させたものである)。
図29に見られるPR254ナノ粒子に比べて、
図31に見られるPR254ナノ粒子はPGMEA中において成長し、またネッキングを起こしている様子が確認される。このような状態となった場合にはこの後分散処理を行ってもナノ粒子を分散することは不可能であり、微細な赤色顔料の特性を発揮することが非常に難しい。
【0076】
さらに他の一例として本発明の実施例Cの実験番号4-4(
図36)で作製された青色顔料である、銅-チタニル-コバルトフタロシアニン微粒子、あるいは実験番号3-1(
図37)で作製された青色顔料である銅フタロシアニン微粒子は、上記溶媒中において成長し、またネッキングを起こしている様子が確認される。このような状態となった場合には、その後分散処理を行っても粒子を分散することは不可能であり、青色有機顔料微粒子の特性を発揮することが非常に難しい。
【0077】
本発明においては、粒子性状制御溶液を作用させる前の有機物微粒子には、少なくともその一部に非晶質を含み、上記有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒を敢えて選択し、上記界面活性剤を添加、具体的には混合・溶解・分子分散させて調製した粒子性状制御溶液に有機物微粒子を作用させることが重要である。それによって、有機物微粒子の粒子径、結晶型や結晶性等の性状を制御することが出来る。
【0078】
粒子の性状を制御できる機構は明らかではないが、有機物微粒子の非晶質部位は固体中で分子配列がランダムであり、結晶質の部位に比べて分子間が密に接近しておらず、分子結合力も弱い。そのため、有機物微粒子の非晶質部位は、有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒の作用を受けて溶解が起こりやすく、成長やネッキングの起点となりやすいことが考えられる。
【0079】
有機物微粒子は、溶媒の影響や熱の影響を受け、溶媒中で一部溶解した場合、ネッキングや粒子成長を生じやすいものの、このような条件下で保管した場合、結晶化度の向上や結晶転移が同時に起こる場合がある。しかしながら、その際に有機物微粒子の一次粒子径が数十倍から数百倍以上への変化を伴う結果、このように粗大化してしまった有機物微粒子は、有機物微粒子としての期待された特性を失うことになる。本発明における界面活性剤の作用の一つは、上記有機物微粒子の成長を抑制、制御することにある。上記界面活性剤は、上記有機物微粒子(特にその非晶質の部位)が上記一部溶解能を有する溶媒の作用を受けて溶解することを抑制し、上記溶媒の有機物微粒子に対する、ネッキングや粒子成長といった作用を抑制、制御することが可能である。より詳しくは、界面活性剤の存在下では、一部溶解能を有する溶媒によって有機物微粒子の非晶質の部位が完全に溶解するまでにはいたらず、非晶質の部位のランダムな分子配列が変化して圧密化が生じることで、結晶化度の向上や結晶転移が生じると考えられる。
【0080】
さらに上記界面活性剤のもう一つの作用は、上記有機物微粒子の溶媒への溶解能の向上である。より詳しくは、界面活性剤が作用した粒子全体の濡れ性の向上である。つまり界面活性剤は、その種類と、組み合わせる上記溶媒の種類等によって、有機物微粒子に対して異なる性質を示すことを可能とする。上記有機物微粒子が一部溶解能を有する溶媒に、上記有機物微粒子の溶媒への溶解性を向上する界面活性剤を添加して粒子性状制御溶液を調製することも可能である。また、上記界面活性剤のさらなる作用は、上記有機物微粒子の結晶型転移変換時の鋳型、より詳しくは、有機物微粒子の粒子径に対する鋳型となり得る点である。
【0081】
本発明は、上記の作用を掛け合わせることで、有機物微粒子の成長を制御しながら、特に非晶質の部位を圧密化して結晶性を向上させることで、結晶型の転移や結晶性を制御したものであると考える。
【0082】
このように、本発明では、上記有機物微粒子に上記粒子性状制御溶液を作用させることで、有機物微粒子の粒子径や結晶性、結晶型といった粒子性状を制御するものである。上記作用とは具体的には、上記有機物微粒子と上記粒子性状制御溶液とを混合および/または撹拌、または単なる接触や吹付けなどの操作であり、溶媒や界面活性剤の種類、濃度や、処理温度や撹拌方法等の変更で有機物微粒子の性状を制御することが可能である。また、上記溶媒に下記酸性物質、塩基性物質または中性物質を含むことで上記一部溶解能を有する溶媒を調製することも可能である。
【0083】
これらの物質は特には限定されないが、酸性物質としては、王水、塩酸、硝酸、発煙硝酸、硫酸、発煙硫酸などの無機酸や、ギ酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸などの有機酸などが挙げられる。塩基性物質としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの金属酸化物、ナトリウムメトキシドやナトリウムイソプロポキシドのような金属アルコキシド、さらにトリエチルアミンやジエチルアミノエタノール、ジエチルアミンなどのアミン系化合物などをあげることができる。さらに上記酸性物質や塩基性物質の塩類を例としてあげられるような中性物質を混合してもよい。
【0084】
特に赤色有機顔料や青色有機顔料などの有機顔料の場合には、一般的に結晶成長を抑制するために使用されている顔料の誘導体を、含まずとも実施することができるため、誘導体特有の色が、実際に使用する有機顔料の発色に影響を与えることがないという利点も発揮させることができる。但し、このような誘導体を加えて実施することを妨げるものではない。
【0085】
なお、有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒に作用させる有機物微粒子の濃度は、特に限定されないが、0.001~90.00重量%、好ましくは0.001~50.00重量%、より好ましくは0.01~40.00重量%である。また、上記界面活性剤については上記有機物微粒子に対して0.01~500重量%、好ましくは0.1~300重量%、さらに好ましくは1.0~100重量%である。
【0086】
本発明において有機物微粒子の粒子径に特に限定はないが、有機物微粒子の粒子性状を制御する前の有機物微粒子の粒子径が好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。
【0087】
また青色有機顔料などの有機顔料にあっては、一次粒子径が500nm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは30nm以下の微小な粒子が特に好ましい。上記粒子あるいは微粒子の形状は特に限定されないが、例えば、略円柱状、略球状、略円盤状、略三角柱状、略四角柱状、略多面体状、楕円球状などの形態の粒体またはその集合体などであってもよい。
【0088】
なお、本発明の作用の前後の粒子径は、前述の上記有機物微粒子と上記粒子性状制御溶液とを混合および/または撹拌、または単なる接触や吹付けなどの操作を行う前と行った後との粒子径を言う。
【0089】
本発明において、有機物微粒子の粒子径を実質的に変更することがない範囲とは、界面活性剤を添加した有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒に、有機物微粒子を作用させる前後の有機物微粒子の粒子径変化率(界面活性剤処理後(A)/界面活性剤処理前(B))が1~4であることをいう。
【0090】
また、本発明は、有機物微粒子の原料溶液から有機物微粒子を析出させるための、少なくとも1種類の有機物微粒子の析出溶媒Lと、有機物微粒子の原料を溶解または分子分散させた有機物微粒子の原料溶液とを混合し、有機物微粒子(P1)を析出させる工程1を含む。有機物微粒子の原料は、上述した有機物を用いてもよいし、新規に合成してもよい。上記混合させる方法は、例えば特許文献5に記載の通り、強制薄膜型マイクロリアクターで混合させてもよいし、有機物微粒子における公知の方法を適宜用いることができる。有機物微粒子の原料を溶解または分子分散させることが可能な良溶媒と有機物微粒子の原料とを混合させて有機物微粒子の原料溶液を調製し、上記良溶媒よりも有機物に対する溶解度が低い溶媒を有機物微粒子の析出溶媒Lとすることで実施できる。また、有機物微粒子の原料溶液と有機物微粒子の析出溶媒Lとを混合する際の混合時のpHを調製することでも実施できる。必要に応じて上記溶媒と酸性物質または塩基性物質等を組み合わせることで調製することも可能である。
【0091】
また、本発明は、必要に応じて、上記工程1で得られた上記有機物微粒子(P1)に対して、洗浄および/または溶媒置換を行う工程cを含んでも良い。上記、洗浄および/または溶媒置換を行う工程cは、公知の手法を適宜用いることができる。特に限定されないが、有機物微粒子を含む液について、ろ過・遠心分離・限外ろ過等の操作によって、目的に応じた溶媒を選択することで、上記有機物微粒子の洗浄および/または溶媒置換を行うことが可能である。
【0092】
本発明は、上記有機物微粒子(P1)と上記粒子性状制御溶液とを作用させる工程2を含むことにより上記有機物微粒子の性状を制御することを特徴とする。上記性状の制御として、有機物微粒子の粒子径および/または有機物微粒子の結晶性を上げることができる。また、上記有機物微粒子の結晶性として、有機物微粒子の結晶化度をあげることができる。ここで言う、粒子の性状の制御とは、溶媒中における粒子の成長やネッキングを抑制できるものであれば上記内容に限定されることはなく、有機物微粒子が結晶転移する場合についても適用出来る。また、非晶質を含むよう結晶性を低く析出させることにより、工程2における結晶型や結晶化度等をより精度良く制御出来るため、本発明はより有効となる。
【0093】
また、本発明における、上記工程2における作用としては、例えば、混合させる工程、接触させる工程、吹き付ける工程などをあげることができる。また、本発明における、上記工程2では、上記作用させることを1回、または複数回(例えば、2回、3回、4回等)繰り返して行ってもよい。
【0094】
また、本発明における、上記工程2において、撹拌処理(以下、撹拌による分散処理、分散処理ともいう)を含む場合には、撹拌エネルギーにより上記有機物微粒子の性状を制御することができ、公知の撹拌装置や撹拌手段を用い、適宜撹拌エネルギーを制御する手法をあげることができる。なお、撹拌エネルギーに関しては、本願出願人による特開平04-114725号公報に詳述されている。
【0095】
本発明における撹拌の方法は特に限定されない。マグネティックスターラーと撹拌子を用いた方法でも構わないし、各種せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波式などの撹拌機や溶解機、乳化機、分散機、ホジナイザーなどを用いて実施することができる。一例としては、ウルトラタラックス(IKA製)、ポリトロン(キネマティカ製)、TKホモミキサー(プライミクス製)、エバラマイルダー(荏原製作所製)、TKホモミックラインフロー(プライミクス製)、コロイドミル(神鋼パンテック製)、スラッシャー(日本コークス工業製)、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機製)、キャビトロン(ユーロテック製)、ファインフローミル(太平洋機工製)などの連続式乳化機、クレアミックス(エム・テクニック製)、クレアミックスディゾルバー(エム・テクニック製)、クレアミックスダブルモーション(エム・テクニック製)、フィルミックス(プライミクス製)などのバッチ式もしくは連続式の装置をあげることができる。また、撹拌前もしくは撹拌後に一部マイクロウエーブ処理が有効な場合がある。
【0096】
粒子の成長は、粒子同士が凝集し、粒子表面が溶解することによる成長・粗大化と、分散媒中に溶解している成分から、粒子の粗大化が進む場合の二種がある。界面活性剤の効果は粒子表面を保護し成長を抑制することになるが、凝集体を形成していると効果的に機能を発揮できない場合がある。このため、撹拌による分散処理が有効になる。本方法では、界面活性剤と有機物微粒子に対して一部溶解能をもつ溶媒を均一に混合反応させるために、撹拌処理を行うことが好ましい。また、有機物微粒子を粒子性状制御溶液に作用させる際に、撹拌処理を行うことが好ましい。その際、撹拌エネルギーを与えることにより、界面活性剤と有機物微粒子に対して一部溶解能をもつ溶媒を効率よく有機物微粒子に作用させることが可能となる。上記工程2として、撹拌処理を含む場合には、撹拌エネルギーにより有機物微粒子の性状(結晶化度、結晶型、粒子径)を制御することができる。
【0097】
一例として、バッチ方式での有機物微粒子の製造工程(工程0~2)を
図1に沿って、以下に説明する。
(工程0)有機物微粒子の析出溶媒(A液:有機物微粒子の析出溶媒Lに相当する)および有機物微粒子の原料溶液(B液)を調製した。
(工程1)A液とB液の混合:A液をマグネティックスターラーおよび撹拌子を用いて撹拌しつつ、B液を投入し、有機物微粒子を析出させた。
(工程2)工程1で析出させた有機物微粒子のスラリー、ウエットケーキまたは乾燥粉体を粒子性状制御溶液に投入し、撹拌処理を行った。
なお、工程1で析出させた有機物微粒子を含むスラリーをろ過し、その後、洗浄液を用いて洗浄し(工程c)、有機物微粒子のウエットケーキ、あるいは真空乾燥法等の乾燥処理にて有機物微粒子の乾燥粉体を作製し、それを工程2の粒子性状制御溶液に投入し、撹拌処理を行っても良い。
【0098】
次に、後述するマイクロリアクターを用いた場合の有機物微粒子の製造工程(工程0~2)の一例を
図1に沿って、以下に説明する。
(工程0)有機物微粒子の析出溶媒(A液)および有機物微粒子の原料溶液(B液)を調製した。
(工程1)
図2(A)に示したマイクロリアクターを用いて有機物微粒子の原料溶液(B液)と有機物微粒子の析出溶媒(A液:有機物微粒子の析出溶媒Lに相当する)とを混合し、有機物微粒子を析出させた。なお、A液、B液としては以下の実施例に例示するものの他、特許文献8に記載のものなど、公知の混合、析出の例を適応することができる。
(工程2)工程1で析出させた有機物微粒子のスラリー、ウエットケーキまたは乾燥粉体を粒子性状制御溶液に投入し、撹拌処理を行った。
なお、工程1で析出させた有機物微粒子を含むスラリーをろ過し、その後、洗浄液を用いて洗浄し(工程c)、有機物微粒子のウエットケーキ、あるいは真空乾燥法等の乾燥処理にて有機物微粒子の乾燥粉体を作製し、それを工程2の粒子性状制御溶液に投入し、撹拌処理を行っても良い。
【0099】
なお、マイクロリアクターとしては、
図2に示す、特許文献4~特許文献6に記載の装置と同様のものを用いることができる。以下、マイクロリアクターについて詳述する。
図2(A)(B)、並びに
図3においてRは回転方向を示している。
【0100】
本実施の形態におけるマイクロリアクターは、対向する第1および第2の、2つの処理用部10、20を備え、第1処理用部10が回転する。両処理用部10、20の対向する面が、夫々処理用面となる。第1処理用部10は第1処理用面1を備え、第2処理用部20は第2処理用面2を備える、強制薄膜型マイクロリアクターである。
【0101】
両処理用面1、2は、各々被処理流体の流路d1、d2に接続され、被処理流体の流路の一部を構成する。この両処理用面1、2間の間隔は、通常は、1mm以下、例えば、0.1μmから50μm程度の微小間隔に調整される。これによって、この両処理用面1、2間を通過する被処理流体は、両処理用面1、2によって強制された強制薄膜流体となる。
そして、この装置は、処理用面1、2間において、第1、第2の被処理流体を反応させて微粒子の析出を行う流体処理を行なう。
【0102】
より具体的に説明すると、上記装置は、上記の第1処理用部10を保持する第1ホルダ11と、第2処理用部20を保持する第2ホルダ21と、接面圧付与機構43と、回転駆動機構(図示せず)と、第1導入部d1と、第2導入部d2と、流体圧付与機構p1、p2とを備える。流体圧付与機構p1、p2には、コンプレッサやその他のポンプを採用することができる。
【0103】
上記実施の形態において、第1処理用部10、第2処理用部20はリング状のディスクである。第1、第2処理用部10、20の材質は、金属の他、カーボン、セラミック、焼結金属、耐磨耗鋼、サファイア、その他金属に硬化処理を施したものや、硬質材をライニングやコーティング、メッキなどを施工したものを採用することができる。上記実施の形態において、両処理用部10、20は、互いに対向する第1、第2の処理用面1、2が鏡面研磨されており、算術平均粗さは、0.01~1.0μmである。
【0104】
上記実施の形態において、第2ホルダ21が装置に固定されており、同じく装置に固定された回転駆動機構の回転軸に取り付けられた第1ホルダ11が回転し、この第1ホルダ11に支持された第1処理用部10が第2処理用部20に対して回転する。もちろん、第2処理用部20を回転させるようにしてもよく、双方を回転させるようにしてもよい。また、本発明において、上記回転速度は、例えば、350~3600rpmとすることができる。
【0105】
上記実施の形態では、第1処理用部10に対して、第2処理用部20が回転軸50の方向に接近・離反するもので、第2ホルダ21に設けられた収容部41に、第2処理用部20の処理用面2側と反対側の部位が出没可能に収容されている。ただし、これとは逆に、第1処理用部10が、第2処理用部20に対して接近・離反するものであってもよく、両処理用部10、20が互いに接近・離反するものであってもよい。
【0106】
上記収容部41は、第2処理用部20の、処理用面2側と反対側の部位を収容する凹部であり、環状に形成された溝である。この収容部41は、第2処理用部20の処理用面2側と反対側の部位を出没させ得る十分なクリアランスを持って、第2処理用部20を収容する。
【0107】
接面圧付与機構は、第1処理用部10の第1処理用面1と第2処理用部20の第2処理用面2とが接近する方向に押す力(以下、接面圧力という)を発生させるための機構である。この接面圧力と、流体圧力による両処理用面1、2間を離反させる力との均衡によって、両処理用面1、2間の間隔を所定の微小間隔に保ちつつ、nm単位ないしμm単位の微小な膜厚を有する薄膜流体を発生させる。上記実施の形態では、接面圧付与機構は、第2ホルダ21に設けられたスプリング43によって、第2処理用部20を第1処理用部10に向けて付勢することにより、接面圧力を付与する。また、流体圧付与機構p1により加圧された第1の被処理流体は、第1導入部d1から、両処理用部10、20の内側の空間に導入される。
【0108】
一方、流体圧付与機構p2により加圧された第2の被処理流体は、第2導入部d2から第2処理用部20の内部に設けられた通路を介して第2処理用面に形成された開口部d20から両処理用部10、20の内側の空間に導入される。
【0109】
開口部d20において、第1の被処理流体と第2の被処理流体とが合流し、混合する。その際、混合した被処理流体は、上記の微小な隙間を保持する両処理用面1、2によって強制された薄膜流体となり、環状の両処理用面1、2の外側に移動しようとする。第1処理用部10は回転しているので、混合された被処理流体は、環状の両処理用面1、2の内側から外側へ直線的に移動するのではなく、環状の半径方向への移動ベクトルと周方向への移動ベクトルとの合成ベクトルが被処理流体に作用して、内側から外側へ略渦巻き状に移動する。
【0110】
ここで、
図3に示すように、第1処理用部10の第1処理用面1には、第1処理用部10の中心側から外側に向けて、すなわち径方向について伸びる溝状の凹部13を形成してもかまわない。この凹部13の平面形状は、第1処理用面1上をカーブしてあるいは渦巻き状に伸びるものや、図示はしないが、真っ直ぐ外方向に伸びるもの、L字状などに屈曲あるいは湾曲するもの、連続したもの、断続するもの、枝分かれするものであってもよい。また、この凹部13は、第2処理用面2に形成するものとしても実施可能であり、第1および第2の処理用面1、2の双方に形成するものとしても実施可能である。この様な凹部13を形成することによりマイクロポンプ効果を得ることができ、被処理流体を第1および第2の処理用面1、2間に吸引することができる効果がある。
【0111】
上記凹部13の基端は第1処理用部10の内周に達することが望ましい。上記凹部13の先端は、第1処理用部面1の外周面側に向けて伸びるもので、その深さは、基端から先端に向かうにつれて、漸次減少するものとしている。この凹部13の先端と第1処理用面1の外周面との間には、凹部13のない平坦面が設けられている。
【0112】
上述の開口部d20は、第1処理用面1の平坦面と対向する位置に設けることが好ましい。これによって、層流条件下にて複数の被処理流体の混合と、微粒子の析出を行うことが可能となる。
【0113】
また、両処理用部10、20の外側に吐出した流体は、ベッセルvを介して、吐出液としてビーカーbに集められる。本発明の実施の形態においては、後述する様に、吐出液には、有機物微粒子が含まれる。
【0114】
なお、上記の被処理流体の種類とその流路の数は、
図2(A)の例Aでは、2つとしたが、3つ以上であってもよい。また、各処理用部に設けられる導入用の開口部は、その形状や大きさや数は特に制限はなく適宜変更して実施しうる。また、上記第1および第2の処理用面間1、2の直前あるいはさらに上流側に導入用の開口部を設けてもよい。
【0115】
本発明においては、処理用面1、2間にて上記処理を行うことができればよく、第1導入部d1より第2被処理流体を導入し、第2導入部d2より第1被処理流体を導入するものであってもよい。例えば、各流体における第1、第2という表現は、複数存在する流体の第n番目であるという、識別のための意味合いを持つに過ぎないものであり、上述の通り第3以上の流体も存在しうる。
【0116】
マイクロリアクターを用いた場合の有機物微粒子の製造工程(工程0~2)において、工程1と工程2とをマイクロリアクターを用いて連続して行ってもよい。具体的には、
図2(B)に示すように、第1導入部d1、第2導入部d2以外に第3導入部d3をマイクロリアクターに設け、例えば第1導入部d1から、第1流体として有機物微粒子の原料溶液を、第2導入部d2から第2流体として有機物微粒子の析出溶媒を、第3導入部d3から第3流体として粒子性状制御溶液をそれぞれ別々にマイクロリアクターに導入する。この場合、粒子性状制御溶液を導入する第3導入部d3は、第1導入部d1及び第2導入部d2の下流側に設け、より詳しくは、第3導入部d3の開口部d30を第2導入部d2の開口部d20の下流側に設けることによって、処理用面1、2間において析出させた有機物微粒子と粒子性状制御溶液とを作用させることができる。上記の3つの開口部(d10、d20及びd30)を備えたマイクロリアクターは、工程1と工程2とを連続して行う場合に適する。
【0117】
ただし、本発明に実施に際して、工程1をマイクロリアクターで行い、工程1以降の工程をマイクロリアクター外で行う場合、
図1(A)に示すように、少なくとの2つの開口部(d10、d20)を備えれば足りるが、処理用面1、2間において析出させた有機物微粒子に対して、上記薄膜流体中で表面処理を施す場合等に、3つ以上の開口部を備えたマイクロリアクターで工程1を実施することを妨げるものではない。
【0118】
特に上記マイクロリアクターを用いた場合には、本発明の有機物について微粒子として製造することが容易であり、有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒および有機物微粒子に対して成長抑制が可能な界面活性剤において処理する前後で、1000nm以下、好ましくは500nm以下とすることが可能である。さらに、上記マイクロリアクターであれば、析出された微粒子の結晶性の制御が比較的容易であることから、非晶質を含む結晶性が低い状態で析出させることにより、工程2における結晶型や結晶化度等をより精度良く制御することができる。このようなマイクロリアクターの具体例として、ULREA(エム・テクニック製)を挙げることができる。ただし本発明の有機物微粒子の製造については、マイクロリアクターを使用することに限定されるものではない。
【実施例】
【0119】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。しかし、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。以下の実施例において、A液とは、
図2(A)(B)に示す装置の第1導入部d1から導入される第1の被処理流体を指し、B液とは、同じく装置の第2導入部d2から導入される第2の被処理流体を指す。
【0120】
本願では、実施例A、実施例B、実施例Cの3つのグループに分けて各実施例を比較例と共に示す。
実施例Aは、生体摂取物及び樹脂のグループである。
実施例Bは、赤色有機顔料のグループである。
実施例Cは、青色有機顔料のグループである。
なお、明細書本文中においては、実施例の後に、A、B、Cのグループ記号を記載するが、表中及び図面中にはABCのグループ記号の記載を省略する。
【0121】
(実施例Aのグループ)
本発明に係る有機物微粒子の製造方法の一例として、実施例A1~4にインドメタシン、実施例A5、6にクルクミン、実施例A7にポリプロピレン、実施例A8にピレノキシンの各微粒子を取り上げて説明する。
【0122】
実施例Aにおいて、X線回折測定(XRD測定)には、粉末X線回折測定装置(製品名:X‘PertPRO MPD、PANalytical製)を使用した。測定条件は、測定範囲:10~60°、Cu対陰極、管電圧45kV、管電流40mA、走査速度16°/minである。
TEM観察には、透過型電子顕微鏡、JEM-2100(JEOL製)を用いた。観察条件としては、加速電圧を80kVとした。
SEM観察には、走査型電子顕微鏡、JFM-7500F(JEOL製)を用いた。観察条件としては、加速電圧1kVとした。
粒子径評価は、TEM観察もしくはSEM観察において25000倍の写真を用い、粒子50個の平均値を用いた。
なお、ここでいう結晶化度とは、結晶化した成分と非晶質をあわせた全体に対して結晶化した成分の割合のことである。
【0123】
(実施例A1:インドメタシン微粒子)
<工程0:有機物微粒子の析出溶媒(A液)と有機物微粒子の原料溶液(B液)の調製>
<有機物微粒子の析出溶媒(A液)の調製>
有機物微粒子の析出溶媒(A液)として、マグネティックスターラーを用い、0.1mol/Lの塩酸水溶液のインドメタシン析出溶媒を調製した。
【0124】
<有機物微粒子原料溶液(B液)の調製>
有機物微粒子原料溶液(B液)として、0.35mol/Lの炭酸水素ナトリウム水溶液に、結晶型がγ(ガンマ)型であるインドメタシンが0.2wt%、ポリビニルピロリドン(Kollidon 12PF(BASF製))が0.2wt%となるように混合した、インドメタシン原料溶液を調製した。高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM-2.2S、エム・テクニック製)を用い、ローター回転数15000rpmにて約35℃で30分撹拌することにより、均質なインドメタシン原料溶液を調製した。このように、複数成分を混合する場合や溶解する場合には高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(エム・テクニック製)を用いて調製することが望ましい。
【0125】
<工程1:混合・析出>
次に、調製した有機物微粒子の析出溶媒と、調製した有機物微粒子の原料溶液とを、
図2(A)に示すマイクロリアクターULREAを用いて混合した。具体的には、
図2(A)に示すマイクロリアクターの第1導入部d1から第1被処理流体(A液)として上記調製済の有機物微粒子の析出溶媒(ここでは0.1mol/Lの塩酸水溶液)を処理用面間に200mL/分、5℃で導入し、処理用部10を回転数1700rpmで運転しながら、第2被処理流体(B液)として調製済のインドメタシン原料溶液を処理用面1、2間に30mL/分、25℃で導入し、薄膜流体中で混合した。その後、インドメタシン微粒子を含む吐出液が、流体処理用面1、2間から吐出した。
【0126】
<工程c:回収・洗浄>
上記吐出液をろ過し、インドメタシン微粒子を回収した。その後、洗浄溶媒(純水)にて、繰り返し洗浄を行い、インドメタシン微粒子のウエットケーキを得た。上記ウエットケーキを純水で希釈し、その希釈液をコロジオン膜に滴下し、室温で乾燥させた観察用試料を用いてTEM観察を行った。TEM観察結果を
図4に示す。また、上記ウエットケーキを-0.095MPaGにて16時間、真空乾燥し、乾燥粉体を得た。得られた乾燥粉体の、X線回折測定結果を
図5上段に示す。
【0127】
TEM観察結果よりインドメタシン微粒子の平均一次粒子径は76nm程度であることを確認した。また、X線回折測定の結果、得られた粒子は非晶質であることを確認した。
【0128】
<工程2:粒子性状制御>
工程2の粒子性状制御では、有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒としては純水を用い、有機物微粒子に対して成長抑制が可能な界面活性剤としては、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)を用いた。純水にヒドロキシエチルセルロースを添加し高速回転式分散乳化装置であるクレアミックスディゾルバー(製品名:CLM-2.2SD、エム・テクニック製)を用い、ローター回転数15000rpmにて30分撹拌することにより、均質に混合されたヒドロキシエチルセルロース水溶液(粒子性状制御溶液)を調製し、粒子性状制御溶液に工程cで得られたインドメタシン微粒子のウエットケーキを投入し、分散処理を行った。
【0129】
具体的には、0.1wt%ヒドロキシエチルセルロース(粘度:200~300mPa・s、2% in Water at20℃、TCI製)水溶液に、工程cで得られたインドメタシン微粒子を0.2wt%となるように投入後、超音波分散機(ヒールッシャー製:UP200S)を用い、出力0.5%、cycle0.5にて、処理温度37℃±3℃で15分間分散処理を行い、インドメタシン微粒子分散液を得た。TEM観察用に、得られたインドメタシン微粒子分散液をコロジオン膜に滴下し、室温で乾燥して観察用試料を得た。TEM観察結果を
図6に示す。
【0130】
TEM観察の結果、0.1wt%ヒドロキシエチルセルロース水溶液を作用させたインドメタシン微粒子の平均一次粒子径は、98nm程度であることを確認した。また、上記分散液よりインドメタシン微粒子をろ過回収し、純水を用いて洗浄した後、-0.095MPaGにて25℃16時間真空乾燥し、乾燥粉体を得た。得られた乾燥粉体についてのX線回折測定結果を
図5下段に示す。
【0131】
X線回折測定の結果、工程2にて0.1wt%ヒドロキシエチルセルロース水溶液を作用させたインドメタシン微粒子は、α型の結晶に転移していることを確認した。なお、
図5には比較のため、工程cで回収・洗浄後のインドメタシン微粒子(工程2処理前)のX線回折測定結果も合わせて掲載した。
【0132】
(実施例A2)
実施例A1の工程2におけるヒドロキシエチルセルロースの濃度を0.1wt%を0.05wt%に変更した点を除いては、実施例A1と同条件でインドメタシン微粒子を製造した。実施例A2の工程2にて得られたインドメタシン微粒子のTEM写真を
図7に示す。
図7に見られるように、インドメタシン微粒子の平均一次粒子径は126nm程度であることを確認した。
【0133】
(比較例A1)
実施例A1、工程2の粒子性状制御における溶媒として、界面活性剤を添加することなく、インドメタシンに対して一部溶解能を有する溶媒である純水のみを用いた。その他は、実施例A1と同条件でインドメタシン微粒子を製造した。
【0134】
比較例A1の工程2にて得られたインドメタシン微粒子のTEM観察結果を
図8に示す。TEM観察結果より、850nm程度に粒子が粗大化していることを確認した。
【0135】
(実施例A3:インドメタシン微粒子)
工程0から工程cまでは実施例A1と同じで、工程2における有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒を実施例A1における純水からヘキサンに、有機物微粒子に対して成長抑制が可能な界面活性剤としては、実施例A1におけるヒドロキシエチルセルロースをSpan80に変えて、インドメタシン微粒子を製造した。
【0136】
具体的には、高速回転式分散乳化装置であるクレアミックスディゾルバー(製品名:CLM-2.2SD、エム・テクニック製)を用い、ローター回転数15000rpmにて30分撹拌することにより、均質に混合された0.01wt%のSpan80(Wako製)のヘキサン溶液(粒子性状制御溶液)を調製した。粒子性状制御溶液に、工程cで得られたインドメタシン微粒子を0.2wt%となるように投入後、マグネティックスターラーで150rpmにて温度27℃で16時間撹拌し分散処理を行い、インドメタシン微粒子分散液を得た。得られた分散液よりインドメタシン微粒子をろ過回収し、-0.095MPaGにて25℃で16時間真空乾燥し、X線回折測定用の乾燥粉体を得た。X線回折測定結果を
図9下段に示す。なお、
図9上段は、実施例A3の工程cで得られたインドメタシン微粒子のX線回折測定結果である。
X線回折測定の結果、0.01wt%のSpan80のヘキサン溶液を作用させたインドメタシン微粒子は、γ型の結晶に転移していることを確認した。
【0137】
その後、上記乾燥粉体を0.1%のヒドロキシエチルセルロース(0.1wt%ヒドロキシエチルセルロース(粘度:200~300mPa・s、2%in Water at20℃、TCI製)水溶液で分散しTEM観察用試料を得た。TEM観察結果を
図10に示す。
【0138】
TEM観察の結果、実施例A3の工程2にて0.01wt%のSpan80のヘキサン溶液(粒子性状制御溶液)を作用させたインドメタシン微粒子の平均一次粒子径は、138nm程度であることを確認した。
【0139】
(比較例A2:インドメタシン微粒子)
実施例A3、工程2の粒子性状制御における溶媒として、界面活性剤を添加することなく、インドメタシンに対して一部溶解能を有する溶媒であるヘキサンのみを用いた。その他は、実施例A3と同条件でインドメタシン微粒子を製造した。
比較例A2、工程2にて得られたインドメタシン微粒子のTEM観察結果を
図11に示す。TEM観察結果より、1000nm程度に粒子が粗大化していることを確認した。
【0140】
(実施例A4:インドメタシン微粒子)
実施例A4では、実施例A1~3の工程0における、インドメタシン析出溶媒及びインドメタシン原料溶液の種類を変更し、工程1でα型のインドメタシン微粒子を析出させた。また、実施例A1の工程2における、有機物微粒子に対して成長抑制が可能な界面活性剤を変更した。
【0141】
工程0において、有機物微粒子の析出溶媒(A液)には、純水を用いた。単一溶媒であるため調製は行っていない。有機物微粒子の原料溶液(B液)として、エタノールに、結晶型がγ型であるインドメタシンが1.0wt%、ポリビニルピロリドン(Kollidon 12PF(BASF製))が1.0wt%となるように混合し、インドメタシン原料溶液を調製した。実施例A1~3と同様に高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM-2.2S、エム・テクニック製)を用い、ローター回転数15000rpmにて約35℃で30分撹拌することにより、均質なインドメタシン原料溶液を調製した。
【0142】
工程1:混合・析出、工程c:回収・洗浄の手順は、実施例A1~3と同じである。実施例A1~3と同様に、工程1でインドメタシン微粒子を析出させ、工程cで得られたウエットケーキを用いて、TEM観察用試料及びX線回折測定用の乾燥粉体を得た。TEM観察結果を
図12に、X線回折測定結果を
図13上段に示す。
【0143】
TEM観察の結果、工程cの洗浄後のインドメタシン微粒子の平均一次粒子径は、146nm程度であることを確認した。またX線回折測定の結果、上記インドメタシン微粒子は、α型の結晶であることを確認した。なお、結晶化度は50%であった。
【0144】
<工程2:粒子性状制御>
工程2の粒子性状制御では、有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒としては純水を用い、有機物微粒子に対して成長抑制が可能な界面活性剤としては、Lutrol F127(BASF製)を用いた。純水にLutrol F 127を添加し、高速回転式分散乳化装置であるクレアミックスディゾルバー(製品名:CLM-2.2SD、エム・テクニック製)を用い、ローター回転数15000rpmにて30分撹拌することにより、均質に混合されたLutrol F127水溶液(粒子性状制御溶液)を調製した。粒子性状制御溶液に、工程cで得られたインドメタシン微粒子のウエットケーキを投入し、分散処理を行った。
【0145】
具体的には、0.1wt%Lutrol127水溶液に、工程cで得られたインドメタシン微粒子を0.2wt%となるように投入後、超音波分散機(ヒールッシャー製:UP200S)を用い、出力0.5%、cycle0.5にて、処理温度37℃±3℃で15分間分散処理を行い、インドメタシン分散液を得た。得られたインドメタシン分散液をコロジオン膜に滴下し、室温で乾燥しTEM観察用試料を得た。TEM観察結果を
図14に示す。
【0146】
TEM観察の結果、0.1wt%Lutrol F 127水溶液を作用させたインドメタシン微粒子の平均一次粒子径は、168nm程度であることを確認した。また、上記分散液をろ過回収し、水洗後、-0.095MPaGにて25℃16時間真空乾燥し、X線回折測定用の乾燥粉体を得た。X線回折測定結果を
図13下段に示す。
【0147】
X線回折測定の結果、0.1wt%ヒドロキシエチルセルロース水溶液を作用させたインドメタシン微粒子は、工程cで得られたインドメタシン微粒子と同じα型であることを確認した。また、結晶化度は62.5%であり、工程cで得られたインドメタシン微粒子よりも結晶化度が向上していることを確認した。工程1、2で得られたインドメタシン微粒子に含まれる非晶質の部位が結晶化されたためと考えられる。
【0148】
(比較例A3:インドメタシン微粒子)
実施例A4、工程2の粒子性状制御における溶媒として、界面活性剤を添加することなく、インドメタシンに対して一部溶解能を有する溶媒である純水のみを用いた。その他は、実施例A4と同条件でインドメタシン微粒子を製造した。
TEM観察結果を
図15に示す。TEM観察結果より、1160nm程度に粒子が粗大化していることを確認した。
【0149】
(実施例A5:クルクミン微粒子)
<工程0:有機物微粒子の析出溶媒(A液)と有機物微粒子の原料溶液(B液)の調製>工程0において、有機物微粒子の析出溶媒(A液)には、純水を用いた。単一溶媒であるため調製は行っていない。有機物微粒子の原料溶液(B液)として、エタノールに、結晶型が1型であるクルクミンが0.5wt%、ポリビニルピロリドン(Kollidon 12PF(BASF製))が0.5wt%となるように混合し、クルクミン原料溶液を調製した。実施例A1~4と同様に高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM-2.2S、エム・テクニック製)を用い、ローター回転数15000rpmにて約35℃で30分撹拌することにより、均質なクルクミン原料溶液を調製した。
【0150】
<工程1:混合・析出>
次に、有機物微粒子の析出溶媒と、調製した有機物微粒子の原料溶液とを、
図2(A)に示すマイクロリアクターを用いて混合した。具体的には、
図2(A)に示すマイクロリアクターの第1導入部d1から第1被処理流体(A液)として上記調製済の有機物微粒子の析出溶媒(ここでは純水)を処理用面間に500mL/分、5℃で導入し、処理用部10を回転数1700rpmで運転しながら、第2被処理流体(B液)として調製済の有機物微粒子の原料溶液を処理用面1、2間に30mL/分、25℃で導入し、薄膜流体中で混合した。その後、クルクミン微粒子を含む吐出液が、流体処理用面1、2間から吐出した。
【0151】
<工程c:回収・洗浄>
上記吐出液をろ過し、上澄みを除去することでクルクミン微粒子を回収した。その後、洗浄溶媒(純水)にて、3回の繰り返し洗浄を行い、クルクミン微粒子のウエットケーキを得た。上記ウエットケーキを純水で希釈し、その希釈液をコロジオン膜に滴下し、室温で乾燥させた観察用試料を用いてTEM観察を行った。
【0152】
また、上記ウエットケーキを-0.095MPaGにて16時間、真空乾燥してX線回折測定用の乾燥粉体を得た。TEM観察結果を
図16に、X線回折測定結果を
図17上段に示す。
【0153】
TEM観察結果よりクルクミン微粒子の平均一次粒子径は88nm程度であることを確認した。またX線回折測定の結果、得られた粒子は非晶質であることを確認した。
【0154】
<工程2:粒子性状制御>
工程2の粒子性状制御では、有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒としては純水を用い、有機物微粒子に対して成長抑制が可能な界面活性剤としては、ポリビニルアルコールを用いた。純水にポリビニルアルコール(PVA)を添加し、高速回転式分散乳化装置であるクレアミックスディゾルバー(製品名:CLM-2.2SD、エム・テクニック製)を用い、ローター回転数15000rpmにて30分撹拌することにより、均質に混合されたポリビニルアルコール水溶液(粒子性状制御溶液)を調製した。粒子性状制御溶液に、工程cで得られたクルクミン微粒子のウエットケーキを投入し、分散処理を行った。
【0155】
具体的には、粒子性状制御溶液である0.2wt%ポリビニルアルコール500(完全ケン化型)水溶液に、工程cで得られたクルクミン微粒子を0.2wt%となるように投入後、超音波分散機(ヒールッシャー製:UP200S)を用い、出力0.5%、cycle0.5にて、処理温度30℃±3℃で30分間分散処理を行い、クルクミン微粒子分散液を得た。得られた分散液をコロジオン膜に滴下し、室温で乾燥してTEM観察用試料を得た。TEM観察結果を
図18に示す。
【0156】
TEM観察の結果、0.2wt%ポリビニルアルコール500(完全ケン化型)水溶液を作用させたクルクミン微粒子の平均一次粒子径は、108nm程度であることを確認した。また、上記分散処理後の液体をろ過回収し、水洗後、-0.095MPaGにて25℃12時間真空乾燥し、X線回折測定用の乾燥粉体を得た。X線回折測定結果を
図17中段に示す。
【0157】
X線回折測定の結果、0.2wt%ポリビニルアルコール500(完全ケン化型)水溶液を作用させたクルクミン微粒子は、非晶質から3型の結晶に転移していることを確認した。
【0158】
(比較例A4)
実施例A5、工程2の粒子性状制御における溶媒として、界面活性剤を添加することなく、クルクミンに対して一部溶解能を有する溶媒である純水のみを用いた。その他は、実施例A5と同条件でクルクミン微粒子を製造した。
【0159】
TEM観察結果を
図19に示す。TEM観察結果より、3型の結晶に転移はしたが、クルクミン微粒子の平均粒子径は980nm程度であって、粒子が粗大化していることを確認した。
【0160】
(実施例A6)
工程0から工程cまでは実施例A5と同じで、工程2における有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒を実施例A5における純水からヘキサンに変えて、クルクミン微粒子を製造した。
【0161】
有機物微粒子に対して成長抑制が可能な界面活性剤としては、Span80(Wako製)を用い、ヘキサンにSpan80を添加し、高速回転式分散乳化装置であるクレアミックスディゾルバー(製品名:CLM-2.2SD、エム・テクニック製)を用い、ローター回転数15000rpmにて30分撹拌することにより、均質に混合された溶液(粒子性状制御溶液)を調製した。粒子性状制御溶液に、工程cで得られたクルクミン微粒子の乾燥粉体を投入し、分散処理を行った。
【0162】
具体的には、粒子性状制御溶液である0.01wt%のSpan80のヘキサン溶液に、工程cで得られたクルクミン微粒子を0.2wt%となるように投入後、実施例A5と同一条件で分散処理を行い、クルクミン微粒子を得た。得られた分散液よりクルクミン微粒子をろ過回収し、-0.095MPaGにて25℃、16時間、真空乾燥し、X線回折測定用の乾燥粉体を得た。X線回折測定結果を
図17下段に示す。
【0163】
X線回折測定の結果、0.1wt%のSpan80のヘキサン溶液で処理をしたクルクミン微粒子は、非晶質から2型の結晶に転移していることを確認した。
【0164】
その後、上記乾燥粉体を0.1%のヒドロキシエチルセルロース(0.1wt%ヒドロキシエチルセルロース(粘度:200~300mPa・s 2% in Water at 20℃、TCI製)水溶液で分散しTEM観察用試料を得た。TEM観察結果を
図20に示す。TEM観察の結果、0.1wt%のSpan80のヘキサン溶液を作用させたクルクミン微粒子の一次粒子径は、97nm程度であることを確認した。
【0165】
(比較例A5)
実施例A6、工程2の粒子性状制御における溶媒として、界面活性剤を添加することなく、クルクミンに対して一部溶解能を有する溶媒であるヘキサンのみを用いた。その他は、実施例A6と同条件でクルクミン微粒子を製造した。
【0166】
比較例A5、工程2にて得られたクルクミン微粒子のTEM観察結果を
図21に示す。TEM観察結果より、3型の結晶に転移はしたが、1000nm以上に粒子が粗大化していることを確認した。
【0167】
(実施例A7:ポリプロピレン微粒子)
<工程0:有機物微粒子の析出溶媒(A液)と有機物微粒子の原料溶液(B液)の調製>
【0168】
工程0において、有機物微粒子の析出溶媒(A液)には、アセトンを用いた。単一溶媒であるため調製は行っていない。有機物微粒子の原料溶液(B液)として、結晶型がα型であるポリプロピレンをトルエンに混合し、1wt%ポリプロピレン原料溶液を調製した。実施例A1~6と同様に高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM-2.2S、エム・テクニック製)を用い、ローター回転数15000rpmにて約85℃で30分撹拌することにより、均質なポリプロピレン原料溶液を調製した。
【0169】
<工程1:混合・析出>
実施例A7では、バッチ方式による工程1の例Aとして、有機物微粒子の析出溶媒と有機物微粒子の原料溶液とをクレアミックスを用いて混合した。具体的には、5℃まで冷却したアセトン(A液)500mLを15000rpmで撹拌しながら、調製済の有機物微粒子の原料溶液(B液)を80℃、30mLをゆっくりと滴下し混合した。その後、クレアミックスからポリプロピレン微粒子を含む液を回収した。
【0170】
<工程c:回収・洗浄>
上記ポリプロピレン微粒子を含む液をろ過し、上澄みを除去することでポリプロピレン微粒子を回収した。その後、洗浄溶媒(アセトン)にて、繰り返し洗浄を行い、ポリプロピレン微粒子のウエットケーキを得た。
【0171】
上記ウエットケーキを-0.095MPaGにて、16時間、真空乾燥し、SEM観察用及びX線回折測定用の乾燥粉体を得た。SEM観察結果を
図22に、X線回折測定結果を
図23上段に示す。
【0172】
SEM観察結果、ポリプロピレン微粒子の平均一次粒子径は124nm程度であることを確認した。また、X線回折測定の結果、得られた粒子はα型の結晶であることを確認した。なお、結晶化度は85.6%であった。
【0173】
<工程2:粒子性状制御>
工程2の粒子性状制御では、有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒としてはイソプロピルアルコール水溶液(IPA+純水)を用い、有機物微粒子に対して成長抑制が可能な界面活性剤としては、Tween80(Wako製)を用いた。イソプロピルアルコール水溶液にTween80を添加し、高速回転式分散乳化装置であるクレアミックスディゾルバー(製品名:CLM-2.2SD、エム・テクニック製)を用い、ローター回転数15000rpmにて30分撹拌することにより、均質に混合された水溶液(粒子性状制御溶液)を調製した。粒子性状制御溶液に、工程cで得られたポリプロピレン微粒子のウエットケーキを投入し、分散処理を行った。
【0174】
具体的には、粒子性状制御溶液である0.1wt%Tween80/2.0wt%イソプロピルアルコール/97.9wt%水溶液に、工程cで得られたポリプロピレン微粒子を0.2wt%となるように投入後、超音波分散機(ヒールッシャー製:UP200S)を用い、出力0.5%、cycle0.5にて、処理温度70℃±3℃で15分間分散処理を行い、ポリプロピレン微粒子分散液を得た。得られた分散液よりピロプロピレン微粒子をろ過回収し、純水を用いて洗浄後、-0.095MPaGにて25℃、16時間、真空乾燥し、SEM観察用及びX線回折測定用の乾燥粉体を得た。SEM観察結果を
図24に、X線回折測定結果を
図23下段に示す。
【0175】
SEM観察の結果、ポリプロピレン微粒子の平均一次粒子径は、197nm程度であることを確認した。また、X線回折測定の結果、得られた粒子は工程cで得られたポリプロピレン微粒子と同じα型の結晶であることを確認した。なお、結晶化度は93.5%であり、工程cで得られたポリプロピレン微粒子よりも結晶化度が向上していることを確認した。工程1、2で得られたポリプロピレン微粒子に含まれる非晶質の部位が結晶化されたためと考えられる。
【0176】
(比較例A6)
実施例A7、工程2の粒子性状制御における溶媒として、界面活性剤を添加することなく、ポリプロピレンに対して一部溶解能を有する溶媒であるイソプロピルアルコール水溶液(2.0wt%イソプロピルアルコール/98.0wt%水溶液)のみを用いた。その他は、実施例A7と同条件でポリプロピレン微粒子を製造した。
SEM観察結果を
図25に示す。SEM観察結果より、平均一次粒子径が512nm程度であることを確認した。
【0177】
(実施例A8:ピレノキシン微粒子)
<工程0:有機物微粒子の析出溶媒(A液)と有機物微粒子の原料溶液(B液)の調製>
<有機物微粒子の析出溶媒(A液)の調製>
有機物微粒子の析出溶媒(A液)として、クエン酸が1.9wt%となるように純水と混合し、ピレノキシン析出溶媒を調製した。高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM-2.2S、エム・テクニック製)を用い、ローター回転数15000rpmにて約35℃で30分撹拌することにより、均質なピレノキシン析出溶媒を調製した。調製したピレノキシン析出溶媒のpHは2.1であった。
【0178】
<有機物微粒子の原料溶液(B液)の調製>
有機物微粒子の原料溶液(B液)として、0.01mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、ピレノキシンが0.2wt%となるように混合し、ピレノキシン原料溶液を調製した。高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM-2.2S、エム・テクニック製)を用い、ローター回転数15000rpmにて約35℃で30分撹拌することにより、均質なピレノキシン原料溶液を調製した。調製したピレノキシン原料溶液のpHは12.0であった。
【0179】
<工程1:混合・析出>
次に、調製した有機物微粒子の析出溶媒と、調製した有機物微粒子の原料溶液とを、
図2(A)に示すマイクロリアクターを用いて混合した。具体的には、
図2(A)に示すマイクロリアクターの第1導入部d1から第1被処理流体(A液)として上記調製済のピレノキシン析出溶媒(ここでは1.9wt%クエン酸水溶液)を処理用面間に300mL/分、25℃で導入し、処理用部10を回転数1700rpmで運転しながら、第2被処理流体(B液)として調製済のピレノキシン原料溶液を処理用面1、2間に20mL/分、25℃で導入し、薄膜流体中で混合した。その後、ピレノキシン微粒子を含む吐出液が、流体処理用面1、2間から吐出した。ピレノキシン微粒子を含む吐出液のpHは2.48であった。
【0180】
ピレノキシン微粒子を含む吐出液をコロジオン膜に滴下し、室温で乾燥して観察用試料を用意し、TEM観察を行った。TEM観察結果よりピレノキシン微粒子の平均一次粒子径は42nm程度であることを確認した。TEM観察結果を
図26に示す。
【0181】
<工程2:粒子性状制御>
工程2の粒子性状制御では、有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒としては純水を用い、有機物微粒子に対して成長抑制が可能な界面活性剤としては、Tween80、塩化ベンザルコニウムを用いた。純水にTween80と塩化ベンザルコニウムを添加し高速回転式分散乳化装置であるクレアミックスディゾルバー(製品名:CLM-2.2SD、エム・テクニック製)を用い、ローター回転数15000rpmにて15分撹拌することにより、均質に混合されたTween80、塩化ベンザルコニウム水溶液(粒子性状制御溶液)を調製し、この粒子性状制御溶液に工程1で得られたピレノキシン微粒子分散液を加え、分散処理を行った。
【0182】
具体的には、0.03wt%Tween80-0.01wt%塩化ベンザルコニウム-99.96wt%純水 500gに工程1で得られたピレノキシン微粒子分散液500gを加えた。その後、クレアミックスダブルモーション(エム・テクニック製:CLM-2.2/3.7W)を用い、ローター回転数20000rpm、スクリーン回転数18000rpmにて、処理温度42℃±3℃で30分間の分散処理を行い、ピレノキシン微粒子分散液を得た。TEM観察用に、得られたピレノキシン微粒子分散処液をコロジオン膜に滴下し、室温で乾燥して観察用試料を得た。TEM観察結果を
図27に示す。
【0183】
TEM観察の結果、Tween80を含む水溶液中で処理をしたピレノキシン微粒子の平均一次粒子径は、48nm程度であることを確認した。また、上記分散液よりピレノキシン微粒子をろ過回収し、純水を用いて洗浄した後、-0.095MPaGにて25℃、16時間真空乾燥し、乾燥粉体を得た。得られた乾燥粉体についてX線回折測定結果を
図28下段に示す。なお、結晶性の比較のため、工程2の分散処理を行う前のピレノキシン微粒子分散液(工程1吐出液)を上記と同様にろ過回収し、純水を用いて洗浄後に、同条件で乾燥させた粉体についてXRD回折測定を行っている。こちらの結果を
図28の上段に示した。XRD回折測定の結果から、工程2の分散処理前の結晶化度が58.1%に対して、工程2の分散処理後の結晶化度は63.2%に上昇していることを確認した。また、X線回折測定の結果、得られた粒子の結晶型が処理前後で変化しなかったことを確認した。
【0184】
以上の実施例A1~8、比較例A1~6の結果を表1に示す。
【0185】
【0186】
なお、表1の結晶化度の欄に記載した「--」は、非晶質であること示す。また、結晶化度は、前述の通りXRDを用いて測定し、工程2の有機物微粒子の粒子性状制御溶液での処理前後について、工程2処理前、すなわち工程c終了後(実施例A8のみ工程1終了後)の平均一次粒子径の値(Xb)に対する、工程2処理後の平均一次粒子径の値(Xa)の比率(Xa/Xb)を結晶化度変化率とした。さらに、ピレノキシンに関しては結晶型の名称が一般的に用いられていないため、表1の実施例A8の結晶型の欄は「×」とし、工程2の処理前・処理後で結晶型に変化がなかったことを示した。
【0187】
実施例A1、2、比較例A1の結果から、インドメタシンに対して一部溶解能を有する溶媒である純水中では、インドメタシン微粒子は粗大化するが、有機物微粒子に対して成長抑制が可能な界面活性剤を上記溶媒に添加する工程2の粒子性状制御を行うことにより、インドメタシン微粒子の粒子径は実質的に変わらず、粗大化を抑制できることが分かる。さらに、工程2の粒子性状制御を行うことにより、非晶質からα型への結晶転移が可能であることが分かる。
【0188】
また、実施例A1、2及び実施例A3の結果から、インドメタシンに対して一部溶解能を有する溶媒やインドメタシンに対して成長抑制が可能な界面活性剤の種類を変更しても、工程2の粒子性状制御の効果が得られることを確認した。
【0189】
実施例A1~4の結果から、工程2の粒子性状制御の効果は、インドメタシンの結晶型に依存しないことが分かる。また、工程2の粒子性状制御により、結晶転移のみならず、結晶化度が向上したことが分かる。
【0190】
実施例A5~8、比較例A4~6に示されるように、以上の効果が、実施例A1~4のインドメタシンに限らず、他の有機物微粒子に関しても有効であることが示された。
【0191】
さらに、実施例A8の結果から、工程1で得られた有機物微粒子に対して、洗浄および/または溶媒置換を行う工程cを省略しても、工程2の粒子性状制御の効果が得られることを確認した。
【0192】
(実施例Bのグループ)
以下、実施例Bのグループ(赤色有機顔料)について説明する。
実施例BのXRD測定には、粉末X線回折測定装置(製品名:X‘PertPRO MPD、PANalytical社製)を使用した。測定条件は、測定範囲:6~60°、Cu対陰極、管電圧45kV、管電流40mA、走査速度16°/minである。
また、TEM観察には、透過型電子顕微鏡、JEM-2100(JEOL社製)を用いた。観察条件としては、加速電圧を80kV、観察倍率を25000倍とした。
【0193】
(バッチ方式の場合)
実施例Aと同様に、
図1に示す工程0~工程2により顔料微粒子を製造した。
(工程0)
下記の表2に示す、顔料微粒子析出溶媒(A液)及び顔料微粒子原料溶液(B液)の調製:A液、B液とも、液温40℃とし、各々マグネティックスターラー及び撹拌子を用いて300rpmで30分間撹拌し各調製液を得た。
(工程1)
A液とB液の混合:下記の表2に示すように、A液をマグネティックスターラー及び撹拌子を用いて300rpmで撹拌しつつ、B液を投入し、有機顔料微粒子を析出させた。なお、工程1で得られた有機顔料微粒子を含むスラリーを濾過し、有機顔料微粒子を、純水を用いて洗浄(工程c)し、有機顔料微粒子のウェットケーキを得た。あるいは真空乾燥法等の乾燥処理にて有機顔料微粒子の乾燥粉体を得た。
(工程2)
上記有機顔料のウェットケーキまたは乾燥粉体を界面活性剤または分散剤を添加した有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒(粒子性状制御溶液)中に投入し、回転する撹拌翼を有する撹拌機クレアミックスCLM-2.2Sを用いて一定時間の撹拌処理を行った。
【0194】
【0195】
略号の説明、DMSO:ジメチルスルホキシド、BTMA:水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、MeOH:メタノール、soln:溶液、PR254:C.I.Pigment Red 254、PR122:C.I.pigment Red 122
【0196】
工程cにおける洗浄後、工程2における撹拌後の顔料微粒子それぞれについて、TEM観察にて平均一次粒子径を算出し、XRD測定にて結晶化度を測定し比較した(下記表3参照)。ここで、結晶化度とは、結晶化した成分と非晶質を合わせた全体に対して結晶化した成分の占める割合のことであり、顔料の結晶化度が高い程、光や熱、湿気等に対する耐久性が向上する。なお、◎、○、△、×の定義は、下記のとおりである。
【0197】
Da:工程2の作用後の粒子の平均一次粒子径、Db:工程2の前であって、洗浄後の平均一次粒子径としたときに、
「◎」は、
Da/Dbが1.0~4.0の範囲であり、
かつ、
Xa:工程2の作用後の粒子の結晶化度、
Xb:工程2の前であって、洗浄後の結晶化度、としたときに、
Xa/Xbが、1.05以上であり、
かつ、
Daが80nm以下
かつ、
微粒子の均一性の観点から、25000倍にて3視野のTEM観察を行った際、工程2(作用後)の個々の顔料微粒子のうち、Dbの8.0倍を超える粒子が全く確認されなかった場合である。
「○」は、
Da/Dbが1.0~4.0の範囲であり、
かつ、
Xa/Xbが、1.05以上であり、
かつ、Daが80nmより大きく、
かつ、
微粒子の均一性の観点から、25000倍にて3視野のTEM観察を行った際、工程2(作用後)の個々の顔料微粒子のうち、Dbの8.0倍を超える粒子が全く確認されなかった場合である。
「△」は、
Da/Dbが1.0~4.0の範囲であり、
かつ、
Xa/Xbが、1.05以上であり、
かつ、
微粒子の均一性の観点から、25000倍にて3視野のTEM観察を行った際、工程2(作用後)の個々の顔料微粒子のうち、Dbの8.0倍を超える粒子が最大1つ確認された場合である。
「×」は、
上記「◎」、「○」、「△」のいずれにも該当しない場合である。
【0198】
ここで平均一次粒子径の計測方法は、TEM観察 25000倍にて複数視野に観察された微粒子計100個の平均によって求めた。
【0199】
【0200】
(マイクロリアクターを用いた場合)
実施例Bにおいて、A液は、
図2(A)に示すマイクロリアクターの第1導入部d1から導入される第1被処理流体、B液は、同じく第2導入部d2から導入される第2被処理流体に相当する。両者の入れ替えは任意である。なお、実施例Bにおいて、マイクロリアクターとして、ULREA(エム・テクニック製)を用いた。
【0201】
A液とB液を以下の表4に示す条件で運転するマイクロリアクター内で混合し、実施例Aと同様に、
図1に示す工程0~工程2により顔料微粒子を製造した。
【0202】
(工程0)表5に示す様に、顔料微粒子析出溶媒(A液)及び顔料微粒子原料溶液(B液)の調製:A液、B液とも、液温40℃とし、上記クレアミックスCLM-2.2Sを用い、A液は10000rpmで、B液は20000rpm30分間撹拌し、各調製液を得た。
(工程1)
図1に示したマイクロリアクターを用いて有機顔料溶解液(B液)と貧溶媒(A液)とを混合し、有機顔料微粒子を析出させた。なお、(工程1)で得られた有機顔料微粒子を含むスラリーを濾過し、有機顔料微粒子を、純水を用いて洗浄(工程c)し、有機顔料微粒子のウェットケーキまたは真空乾燥法等の乾燥処理にて有機顔料微粒子の乾燥粉体を得た。
(工程2)上記有機顔料のウェットケーキまたは乾燥粉体を界面活性剤または分散剤を添加した有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒(粒子性状制御溶液)中に投入し、上記クレアミックスCLM-2.2Sを用いて一定時間の撹拌処理を行った。
【0203】
【0204】
【0205】
続いて、バッチ方式の場合と同様に、工程1及び工程2で得られた顔料微粒子それぞれについて、TEM観察にて平均一次粒子径を算出し、XRD測定にて結晶化度を測定し比較した(以下の表6参照)。符号、略号の意味は、バッチ方式の場合と同じである。◎、○、△、×の定義もバッチ方式の場合と同じである。
【0206】
【0207】
実施例Bの実験番号1-2で得られた本発明の赤色顔料ナノ粒子のTEM観察写真(
図30)から明らかなように、本願発明の製造方法を実施例Bに適応した場合、粒子性状制御溶液の作用によって、得られた赤色有機顔料微粒子はネッキングや成長を抑制できることが分かった。
なお、実験番号2-1については、上述のTEM観察を行った際、工程2(作用後)の個々の顔料微粒子のうち、Dbの8.0倍を超える粒子が2個以上確認されたので比較例としたものである。
【0208】
(実施例Cのグループ)
次に、実施例Cのグループ(青色有機顔料)について説明する。
実施例CのXRD測定には、粉末X線回折測定装置(製品名:X‘PertPRO MPD、PANalytical社製)を使用した。測定条件は、測定範囲:6~60°、Cu対陰極、管電圧45kV、管電流40mA、走査速度16°/minである。
また、TEM観察には、透過型電子顕微鏡、JEM-2100(JEOL社製)を用いた。観察条件としては、加速電圧を80kV、観察倍率を25000倍とした。
【0209】
(マイクロリアクターを用いた場合)
A液とB液を以下の条件で混合し、下記の手順により青色有機顔料微粒子を製造した。
なお、実施例Cにおいて、マイクロリアクターとして、ULREA(エム・テクニック製)を用いた。この場合、A液は、
図2(A)に示すマイクロリアクターの第1導入部d1から導入される第1被処理流体、B液は、同じく第2導入部d2から導入される第2被処理流体に相当する。第1導入部d1、第2導入部d2の入れ替えは任意である。
【0210】
【0211】
但し、CuPc:銅フタロシアニン、TiOPc:チタニルフタロシアニン、CoPc:コバルトフタロシアニン、H2SO4:濃硫酸である。
【0212】
実施例Cにおいても、実施例Aと同様に、
図1に示す工程0~工程2により顔料微粒子を製造した。
(工程0)
上記実験処方でULREAを用いて混合・析出を実施するにあたり、以下の様にA液およびB液を調製した。
有機顔料粒子析出溶媒(A液)調製条件:
上記実験処方に記載した様に単一溶媒の場合には、調製は不要であるが、例えば特許文献8に記載の実験処方を適応する場合には、クレアミックスを用いて撹拌するのが望ましい。例えば、実施例CにおいてはCLM-2.2Sを用いて10000rpmで30分間撹拌する。
有機顔料粒子の原料溶液(B液)調製条件:
クレアミックスCLM-2.2Sを用いて20000rpmで30分間撹拌を行った。また、A液、B液とも調製温度は40℃とした。
(工程1)
以下の表8に示す運転条件でULREAを使用し、有機顔料粒子析出溶媒(A液)と有機顔料粒子の原料溶液(B液)とを混合し、青色有機顔料微粒子を析出させた。
工程1で得られた青色有機顔料微粒子を含むスラリーを濾過し、青色有機顔料微粒子を、純水を用いて洗浄(工程c)し、青色有機顔料微粒子のウェットケーキ(または真空乾燥法等の乾燥処理にて青色有機顔料微粒子の乾燥粉体)を得た。
(工程2)
工程1で得られた青色有機顔料微粒子のウェットケーキ(または乾燥粉体)を有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒単独または界面活性剤および/または分散剤を添加した有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒(粒子性状制御溶液)中に投入した。投入後、クレアミックスを用いて一定時間の撹拌処理をした。
【0213】
【0214】
マイクロリアクターを用いた場合の撹拌処理前後の青色有機顔料微粒子の粒子径の変化と結晶化度変化について、以下の表9に示す。
【0215】
【0216】
なお、上記の実施例Cに関する略号、用語の定義に関しては次の表10に示す通りである。
【0217】
【0218】
なお、表9における、評価結果の定義は、赤色有機顔料に関する実施例Bと同じである。
【0219】
工程c(洗浄)後、および、工程2(作用)後の青色有機顔料微粒子それぞれについて、TEM観察にて平均一次粒子径を算出し、XRD測定にて結晶化度を測定し比較した(表9)。また、上記実施例Cの実験番号1-7で得られたTEM画像を示した(
図32~
図35)。また、上記実施例Cの実験番号3-1で得られた比較例のTEM画像を示した(
図37)。
【0220】
上記の実験結果によると、工程2において、青色有機顔料微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒(表9では単に溶媒と記載)に界面活性剤も分散剤も含まない比較例の実験においては、粒子の成長やネッキングが生じてしまった。
図37は、その一例である。一方、本願発明の製造方法を実施例Cに適応した場合、得られた青色有機顔料微粒子はネッキングや成長を抑制できることがわかった。
【0221】
(バッチ方式の場合)
マイクリアクターを使った場合と同様に、以下の表11に示す処方で調製したA液とB液を、混合することにより青色有機顔料微粒子を製造した。
【0222】
【0223】
但し、CuPc:銅フタロシアニン、TiOPc:チタニルフタロシアニン、CoPc:コバルトフタロシアニン、H2SO4:濃硫酸である。
【0224】
実施例Cにおける処理内容は次の通りである。
(工程0)
上記実験処方でバッチ方式を用いて混合・析出を実施するにあたり、以下の様にA液およびB液を調製した。
有機顔料粒子析出溶媒(A液)調製条件:
実験処方に記載した様に単一溶媒の場合には、調製は不要であるが、例えば特許文献8に記載の実験処方を適応する場合には、クレアミックスを用いて撹拌するのが望ましい。例えば、実施例CにておいてはCLM-2.2Sを用いて10000rpmで30分間撹拌する。
有機顔料粒子の原料溶液(B液)調製条件:
クレアミックスCLM-2.2Sを用いて20000rpmで30分間撹拌を行った。
また、A液、B液とも調製温度は40℃とした。
(工程1)
ビーカー内の有機顔料粒子析出溶媒(A液)をマグネティックスターラーおよび撹拌子を用いて300rpmで撹拌しつつ、有機顔料粒子の原料溶液(B液)を投入することにより、A液とB液とを混合し、青色有機顔料微粒子を析出させた。工程1で得られた青色有機顔料微粒子を含むスラリーを濾過し、青色有機顔料微粒子を、純水を用いて洗浄(工程c)し、青色有機顔料微粒子のウェットケーキ(または真空乾燥法等の乾燥処理にて青色有機顔料微粒子の乾燥粉体)を得た。
(工程2)
工程1で得られた青色有機顔料微粒子のウェットケーキ(または乾燥粉体)を有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒単独または界面活性剤および/または分散剤を添加した有機物微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒(粒子性状制御溶液)中に投入した。投入後、クレアミックスを用いて一定時間の撹拌処理をした。
【0225】
バッチ方式での撹拌処理前後の青色有機顔料微粒子の粒子径の変化と結晶化度変化について、以下の表12に示す。
【0226】
【0227】
工程c(洗浄)後、および、工程2(作用)後の青色有機顔料微粒子それぞれについて、TEM観察にて平均一次粒子径を算出し、XRD測定にて結晶化度を測定し比較した(表12)。符号、略号等の意味は、マイクロリアクターを用いた場合と同じである。
【0228】
上記の実験結果によると、上記マイクロリアクターを用いた場合の実施例Cと同様、バッチ式の場合においても、工程2において、青色有機顔料微粒子に対して一部溶解能を有する溶媒(表12では単に溶媒と記載)に界面活性剤も分散剤も含まない場合には、粒子の成長やネッキングが生じてしまった。一例として実験番号4-4で得られた銅-チタニル-コバルトフタロシアニン微粒子のTEM観察写真を
図36に示す。一方、本願発明の製造方法を実施例Cに適応した場合、粒子性状制御溶液の作用によって、得られた青色有機顔料微粒子はネッキングや成長を抑制できることが分かった。
【0229】
以上、実施例A,実施例B、実施例Cから、本発明は、有機物の微粒子全般に対して、有効であることが示された。
【符号の説明】
【0230】
1 第1処理用面
2 第2処理用面
10 第1処理用部
11 第1ホルダ
20 第2処理用部
21 第2ホルダ
d1 第1導入部
d2 第2導入部
d10 開口部
d20 開口部