(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】ペット火葬用具
(51)【国際特許分類】
A61G 17/06 20060101AFI20240126BHJP
A01K 29/00 20060101ALI20240126BHJP
A61G 17/007 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
A61G17/06
A01K29/00 Z
A61G17/007
(21)【出願番号】P 2020090603
(22)【出願日】2020-05-25
【審査請求日】2023-05-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年9月26日にペット霊園アプリエ(岐阜県中津川市茄子川1983-31)にて本願発明のペット火葬用具を販売するとともに、販売したペット火葬用具を用いた葬儀を行った。
(73)【特許権者】
【識別番号】520183416
【氏名又は名称】有限会社花松仏光社
(74)【代理人】
【識別番号】100181250
【氏名又は名称】田中 信介
(72)【発明者】
【氏名】松田 幸博
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-073281(JP,A)
【文献】特開2006-116069(JP,A)
【文献】米国特許第06574840(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 17/00-17/08
A01K 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性のシート状の素材からなる袋本体と、
前記袋本体の一対の対向する位置にある端部の近傍に複数設けた切り込み部と、
前記複数の切り込み部に、それぞれ前記袋本体の表裏面から交互に挿通させた、可燃性素材で形成されたベルト部と、
を備え、
前記複数の切り込み部に、前記袋本体の表裏面から交互に挿通させた前記ベルト部で、前記袋本体の両端部を絞り込んで固定することによって、火葬の対象となるペットを包装するとともに、前記切り込み部を設けていない一対の対向する端部によって開口部を形成し、前記包装したペットを視認可能とすることを特徴とするペット火葬用具。
【請求項2】
請求項1に記載のペット火葬用具において、
前記袋本体の素材は、ポリプロピレンであることを特徴とするペット火葬用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犬や猫などのペット動物を火葬する際に、ペット動物を包んで火葬するための火葬用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、犬や猫などのペット用を火葬するときに使用する棺桶として段ボール紙で作られた棺桶がある。このペット用棺桶は、段ボール紙からなる箱体の底面に、底面全体を覆うとともに、底面を傾斜させて頭部側を上げるようにした床台を配置したものである。このペット用棺桶を用いた場合、箱体の底面に床台を配してあるため、ペットの頭部が上がり、ペットが安らかに眠っているような感じを与える。したがって、飼い主に安らぎを与えるとともに手厚く葬ったという満足感を与えることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来のペット用棺桶は、箱体や床台が段ボール紙でできているため、ペットを入れた状態で火葬すると、段ボール紙が燃えた後の残渣が多量に発生し、ペットのお骨と見分けがつかないような状態になってしまう場合がある。また、段ボール紙で箱体や床台が作られているので、保管時に大きなスペースが必要になるという問題もある。
【0005】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、火葬時の残渣が少なく、保管時に大きなスペースを必要としないペット火葬用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。なお、本欄における括弧内の参照符号や補足説明等は、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0007】
[適用例1]
適用例1に記載のペット火葬用具(1)は、
可燃性のシート状の素材からなる袋本体(10)と、
前記袋本体(10)の一対の対向する位置にある端部の近傍に複数設けた切り込み部(20)と、
前記複数の切り込み部(20)に、それぞれ前記袋本体(10)の表裏面から交互に挿通させた、可燃性素材で形成されたベルト部(30)と、
を備え、
前記複数の切り込み部(20)に、前記袋本体(10)の表裏面から交互に挿通させた前記ベルト部(30)で、前記袋本体(10)の両端部を絞り込んで固定することによって、火葬の対象となるペット(3)を包装するとともに、前記切り込み部(20)を設けていない一対の対向する端部によって開口部を形成し、前記包装したペット(3)を視認可能とすることを要旨とする。
【0008】
このようなペット火葬用具(1)は、火葬の対象となるペット(3)を可燃性のシート状の素材で包んだ状態で、開口部からペット(3)を視認することができる。このとき、袋本体(10)やベルト部(30)に装飾を施したり、ベルト部(30)で袋部の両端部を絞って固定する際に結び目を作り、その結び目の形状を装飾的となるように工夫したりすることにより、飼い主に手厚く葬ったという満足感を与えるとともに飼い主に安らぎを与えることもできる。
【0009】
また、袋本体(10)やベルト部(30)がシート状の可燃性素材でできているため、火葬時の残渣が少ない。さらに、袋本体(10)とベルト部(30)がシート材でできているため、折りたたむことができ、保管時に大きなスペースを必要としない。
【0010】
[適用例2]
適用例2に記載のペット火葬用具(1)は、適用例1に記載のペット火葬用具(1)において、
前記袋本体(10)の素材は、ポリプロピレンであることを要旨とする。
【0011】
このようなペット火葬用具(1)では、袋本体(10)がポリプロピレンでできているため、機械的な強度が比較的高く、比重が比較的小さく、耐薬品性に優れ、比較的傷つきにくい反面、可燃性はある。したがって、ペット(3)を包んで保持するときには扱いやすく、火葬する際には、残渣が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ペット火葬用具の概略の構成を示す図である。
【
図2】ペット火葬用具の概略の使用方法を示す図(写真)である。
【
図3】従来の段ボール紙製のペット用棺桶でペットを火葬した場合の火葬後の状態とペット火葬用具でペットを火葬した場合の火葬後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明が適用された実施形態について適宜図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0014】
[第1実施形態]
(ペット火葬用具の構成)
図1に基づきペット火葬用具1の構成について説明する。
図1は、ペット火葬用具1の概略の構成を示す図である。
【0015】
図1に示すように、ペット火葬用具1は、袋本体10、切り込み部20、ベルト部30及び中敷き40を備えている。
袋本体10は、可燃性のシート状の素材を略長方形に形成したものであり、本実施形態では、ポリプロピレンの薄手のベージュ色のシート材を、縦750[mm]、横900[mm]の長方形に成形してある。また、袋本体10には、バティックを模したボタニカル柄がエンボス加工されている。
【0016】
切り込み部20は、袋本体10の左右端辺から約50[mm]の位置から内側に約40[mm]の幅で、約50[mm]間隔で設けられた切り込みである。
【0017】
ベルト部30は、ポリプロピレンの薄手の紫色のシート材を、切れ込み部20の切れ込み幅(40[mm])を通る幅で、長さ約90[mm]に形成したものである。また、ベルト部30の両先端部分は、切り込み部20に挿通させやすくするために、先端が細くなるようにカットされている。さらに、ベルト部30には、バティックを模したボタニカル柄がエンボス加工されている。
【0018】
中敷き40は、ポリプロピレンの薄手のシート材を縦375[mm]、横600[mm]の長方形に形成してある。中敷き40は、白色で、袋本体10と同様に、バティックを模したボタニカル柄がエンボス加工されている。
【0019】
(ペット火葬用具の使用方法)
次に、
図2に基づき、ペット火葬用具1の使用方法について説明する。
図2は、ペット火葬用具1の概略の使用方法を示す図(写真)であり、
図2(a)は、ペットを包んでいない状態の図であり、
図2(b)はペット3を包んだ状態の図である。なお、
図2(b)においては、ペット3として犬の縫い包みを使用している。
【0020】
ペット火葬用具1は、下記(ア)~(エ)に示す手順で使用する。
(ア)袋本体10の略中心部分に中敷き40を敷く。
(イ)中敷き40の上に火葬の対象となるペット3の遺体を載せる。
【0021】
(ウ)袋本体10の両端部の複数の切り込み部20に、表裏面から交互に挿通させたベルト部30で、袋本体10の両端を絞り込んで、リボン状の結び目を形成して固定する。これにより、
図2(b)に示すようにペット3の遺体を袋本体10で包み込む。
【0022】
(エ)このとき、
図2に示すように、切り込み部20を設けていない一対の対向する端部によって開口部を形成する。この開口部から、ペット3の遺体を視認することが可能となる。また、開口部から供花やペット3と一緒に火葬したい物などをペット3の周りに置くようにしてもよい。
【0023】
(ペット火葬用具の特徴)
以上のようなペット火葬用具1は、火葬の対象となるペット3を可燃性のシート状の素材(ポリプロピレン)で包んだ状態で、開口部からペット3を視認することができる。
【0024】
このとき、袋本体10やベルト部30に和の花模様などの装飾を施してあり、ベルト部30で袋部の両端部を絞って固定する際にリボン状の結び目を作り装飾的となるように工夫してあるため、ペットの飼い主に手厚く葬ったという満足感を与えるとともに飼い主に安らぎを与えることもできる。
【0025】
また、袋本体10やベルト部30がシート状の薄手の可燃性素材であるポリプロピレンでできているため、火葬時の残渣が少ない。ここで、
図3に、従来の段ボール紙製のペット用棺桶でペットを火葬した場合の火葬後の状態と本発明に係るペット火葬用具1でペットを火葬した場合の火葬後の状態を示す(
図3(a)が段ボール製のペット用棺桶の場合の状態、
図3(b)がペット火葬用具1の場合の状態)。
【0026】
図3(a)に示すように、従来の段ボール紙製のペット用棺桶では、火葬後の段ボール紙の残渣が非常に多く、ペットの遺骨と区別がつかない場合がある。それに対し、ペット火葬用具1の場合、火葬後の残渣が少なく、火葬後には、ほぼペットの遺骨しか残らないことが分かる。
【0027】
さらに、袋本体10とベルト部30とがともに薄手のポリエステル材でできているため、折りたたむことができる。したがって、ペット火葬用具1を保管する際に大きなスペースを必要としない。
【0028】
さらに、袋本体10やベルト部30がポリプロピレン製であるため、使用前の保管時には、変色せず、また強度の劣化も少ない軽量で使いやすいペット火葬用具1となる。
【0029】
[その他の実施形態]
(1)上記実施形態では、袋本体10、ベルト部30及び中敷き40をポリプロピレンで形成していたが、他の樹脂材や不織布、和紙などの紙類、木綿や絹などの織物などを用いてもよい。
【0030】
(2)上記実施形態では、袋本体10や中敷き40を長方形にしていたが、他の形状、例えば楕円状などにし、細い方の両端部をベルト部30で絞るようにしてもよい。
【0031】
(3)上記実施形態では、袋本体10、切り込み部20、ベルト部30及び中敷き40の具体的な寸法を示したが、火葬の対象となるペットの種類や大きさなどによって、それぞれの寸法を変更すればよい。
【0032】
(4)前記実施形態では、袋本体10にペットを包む際に、中敷き40を敷いていたが、ペットの上から被せるようにして使用してもよい。
【0033】
(5)上記実施形態では、袋本体10をベージュ色、ベルト部30を紫色及び中敷き40を白色にしていたが、他の色にしてもよい。
【0034】
(6)上記実施形態では、袋本体10、ベルト部30及び中敷き40にバティックを模したボタニカル柄のエンボス加工を施していたが、その他の模様、例えば、和の花柄などの模様が形成あるいはプリントするようにしてもよい。
【0035】
(7)上記実施形態では、ポリプロピレン製の中敷き40を用いたが、吸水性のある素材の、いわゆるペットシーツを用いてもよい。
【0036】
(8)上記実施形態では、切り込み部20の切込みは、袋本体10の左右端辺の一定の距離離隔した位置から内側に所定の幅で等間隔に設けられていたが、等間隔でなくともよい。例えば、中央部の切込みの間隔は狭く、端に行くほど間隔を広くするようにしてもよいし、その逆にしてもよい。このようにすることで、ベルト部30で袋本体10の端部を絞ったときに形成される襞の形状に変化を与えることができる。
【0037】
(9)さらに、上記実施形態では、切り込み部20のすべての切込みが袋本体10の端辺に対して垂直になるようにしていたが、斜めになるようにしてもよい。例えば、すべての切り込みが同じ方向に斜めになるようにしてもよいし、カタカナの「ハ」の字を描くようにしてもよい。このようにすることで、ベルト部30で袋本体10の端部を絞ったときに形成される襞の形状に変化を与えることができる。
【符号の説明】
【0038】
1… ペット火葬用具 3… ペット 10… 袋本体 20… 切り込み部 30… ベルト部。