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特許7426729プリントヘッド調整装置、システム、および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】プリントヘッド調整装置、システム、および方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/00 20060101AFI20240126BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240126BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240126BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20240126BHJP
   B41J 3/407 20060101ALI20240126BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
B05C11/00
B05C5/00 101
B05C11/10 ZNM
B05D1/26 Z
B41J3/407
B41J2/01 307
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021502465
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 US2019042649
(87)【国際公開番号】W WO2020018933
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】62/701,529
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/515,580
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513317345
【氏名又は名称】カティーバ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140833
【弁理士】
【氏名又は名称】岡東 保
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ソ-カン コー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ビュヒナー
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-529223(JP,A)
【文献】特表2008-539080(JP,A)
【文献】特開2010-167405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 11/00
B05C 5/00
B05C 11/10
B05D 1/26
B41J 3/407
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリントヘッドを支持し、x軸、y軸、z軸直交座標系のx軸方向に延在するビームに沿って並進するように装着されたプリントヘッドキャリッジを有する印刷システムを制御する方法であって、
前記プリントヘッドの前記x軸、前記y軸、および前記z軸周りの回転方向の向き、および前記プリントヘッドの前記y軸、および前記z軸に沿った位置の1つ以上を検知することと、
前記検知された1つ以上の前記回転方向の向きおよび前記位置に基づき、前記プリントヘッドキャリッジを前記ビーム上で持するように配置された1つ以上の気体軸受の位置を動的に調整することと、を含み、
前記1つ以上の軸受の前記位置を動的に調整することにより、前記プリントヘッドの前記回転方向の向きおよび前記プリントヘッドの前記位置の1つ以上を調整する、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の軸受の前記位置を調整することは、アクチュエータを作動させること、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の軸受の前記位置を調整することは、前記プリントヘッドキャリッジが回転方向の目標向きおよび目標位置の一方または両方に達するまで、前記1つ以上の軸受の前記位置を調整することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プリントヘッドの前記回転方向の向きおよび前記プリントヘッドの前記位置の一方または両方に関する情報を検知して、前記プリントヘッドが前記回転方向の目標向きおよび前記目標位置の一方または両方にあることを確認することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記プリントヘッドキャリッジが前記回転方向の目標向きおよび前記目標位置の一方または両方に達したときに、前記1つ以上の軸受の位置に関する情報を検知することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記プリントヘッドキャリッジの前記x軸方向に延在する前記ビームに沿った位置を検知することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の軸受の前記位置を調整することは、前記プリントヘッドが前記x軸方向に延在する前記ビームに沿って移動しながら、x-y平面に存在する被印刷面に印刷を行う間に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
プリントヘッドを支持し、x軸、y軸、z軸直交座標系のx軸方向に延在するビームに沿って並進するように装着されたプリントヘッドキャリッジを有する印刷システムを制御する方法であって、
前記プリントヘッドの前記x軸方向に延在する移動経路に沿った位置に関する情報を検知することと、
前記プリントヘッドの前記x軸、前記y軸、および前記z軸周りの回転方向の向き、および前記プリントヘッドの前記y軸および前記z軸に沿った位置の1つ以上に関する情報を検知することと、
前記検知された位置に基づき、記プリントヘッドが取り付けられた前記プリ
ントヘッドキャリッジの1つ以上の気体軸受に連結したアクチュエータを作動させることにより、前記プリントヘッドの前記回転方向の向きおよび前記位置の一方または両方を動的に調整することと、
前記プリントヘッドキャリッジの前記1つ以上の軸受の位置を、前記プリントヘッドキャリッジの前記移動経路に沿った対応する位置と相関させた情報を保存することと、を含む、方法。
【請求項9】
前記プリントヘッドキャリッジの前記1つ以上の軸受の位置を相関させた情報を保存することは、前記プリントヘッドキャリッジの前記1つ以上の軸受の前記位置に関する情報をエンコーダから受信することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記プリントヘッドの前記回転方向の向き、および前記プリントヘッドの前記位置の1つ以上に関する情報を検知することは、レーザ干渉計を用いて情報を検知することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記プリントヘッドの前記回転方向の向き、および前記プリントヘッドの前記位置の1つ以上に関する情報を検知することは、カメラを用いて較正装置の較正マークを撮像することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
被印刷面を有する基板を支持するように構成され、前記被印刷面を、x軸、y軸、z軸直交座標系のz軸に直なx-y平面に維持するように構成された基板支持システムと、
前記基板支持システムに跨がってx軸方向に延在するビームと、
前記ビームに移動可能に結合されて前記x軸方向に移動するプリントヘッドキャリッジであって、前記プリントヘッドキャリッジを記ビームに対して支持するように
配置された1つ以上の気体軸受を備えるプリントヘッドキャリッジと、を備える印刷システムにおいて、
前記1つ以上の軸受の少なくとも1つは、前記プリントヘッドキャリッジの前記x軸、前記y軸、および前記z軸周りの回転方向の向き、および前記プリントヘッドキャリッジのy軸方向およびz軸方向の位置の1つ以上を、長手軸に沿って前記1つ以上の軸受を移動させることにより、調整するように選択的に調整可能なアクチュエータに結合される、印刷システム。
【請求項13】
前記1つ以上の軸受の前記少なくとも1つは、前記ビームに対向する軸受表面を有する気体軸受を備える、請求項12に記載の印刷システム。
【請求項14】
前記1つ以上の軸受の前記少なくとも1つは、前記軸受の長手軸に沿って調整可能であり、前記長手軸は、前記軸受表面に垂直である、請求項13に記載の印刷システム。
【請求項15】
前記1つ以上の軸受の1つの軸受を前記プリントヘッドキャリッジに結合する少なくとも1つの玉継ぎ手をさらに備える、請求項13に記載の印刷システム。
【請求項16】
前記1つ以上の軸受の1つの軸受を前記プリントヘッドキャリッジに結合するアクチュエータをさらに備える、請求項15に記載の印刷システム。
【請求項17】
前記アクチュエータは、圧電素子を備える、請求項16に記載の印刷システム。
【請求項18】
前記1つ以上の軸受と前記プリントヘッドキャリッジとの間に結合された弾性付勢部材をさらに備える、請求項16に記載の印刷システム。
【請求項19】
前記弾性付勢部材は、前記1つ以上の軸受と前記プリントヘッドキャリッジとの間に、前記アクチュエータと並列に結合される、請求項18に記載の印刷システム。
【請求項20】
前記弾性付勢部材は、コイルばねを備える、請求項18に記載の印刷システム。
【請求項21】
前記弾性付勢部材は、空気圧式ピストンシリンダ装置を備える、請求項18に記載の印刷システム。
【請求項22】
前記1つ以上の軸受は前記軸受と前記ビームとの間の接触を最小にする、請求項1または8に記載の方法。
【請求項23】
前記1つ以上の軸受は前記軸受と前記ビームとの間の接触を最小にする、請求項12に記載の印刷システム。
【請求項24】
前記1つ以上の軸受の位置を動的に調整することは、前記1つ以上の軸受を長手軸に沿って作動させることを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2018年7月20日出願の米国仮特許出願第62/701,529号および2019年7月18日出願の米国特許出願第16/515,580号の優先権を主張し、各出願内容の全体を参照により本明細書に組み込む。
(分野)
【0002】
本開示は、例えば、ディスプレイなどの装置を製造するための産業用印刷システムに使用されるプリントヘッドの位置および向きを微調整する装置、システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
インクジェット印刷技術を用いた各種電子デバイスの製造では、製品が正しく機能し、かつ期待される品質を満たすように、インク液滴を高い正確度で配置する技術が広く活用されている。これらのデバイスの例として、マイクロチップ、プリント回路基板、太陽電池、電子ディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ、有機発光ダイオードディスプレイ、量子ドットエレクトロルミネッセンスディスプレイ)、または他の装置が挙げられるが、それに限られるものではない。インクジェット印刷を用いて有機発光ダイオード(有機LED)ディスプレイを製造する例示的な応用例では、有機材料(有機インクとも呼ばれる)が、基板上に印刷されて画素が形成される。これらのデバイスや上記例などの他の装置の製造には、様々な課題がある。例えば、インクジェット印刷、サーマル印刷、または他の技術によらず、有機インクまたは他のインク材料を所望の位置に均一に堆積させるように、精密、正確、かつ再現可能に制御してインクを所望の位置に堆積させるのは困難である。これらの目標を達成するために、既存のシステムおよび技術の改善が求められている。
【0004】
有機LEDディスプレイなどの表示装置の場合、高解像度化に伴い画素サイズが低減するため、製造される装置の品質を維持するには、例えばプリントヘッドなどの印刷部品の正確度と精度が重要となりつつある。液滴を正確に配置するために、材料を堆積させる基板に対するプリントヘッドの位置や向きなど、印刷部品の正確かつ精密な位置決めや向きの調整を容易にする各種装置、システム、および方法が求められている。正確に液滴を配置することにより、最終製品の解像度が高まり、製造中の材料の無駄を削減することができる。また、製造プロセスの効率化を促し、関連する印刷機器全体の複雑さおよび重量を低減する(例:最小限に抑える)ように構成された装置および方法が望まれている。
【発明の概要】
【0005】
本開示の様々な例示的実施形態によれば、印刷システムは、プリントヘッドを支持し、x軸、y軸、z軸直交座標系のx軸方向に延在するビームに沿って並進するように装着されたプリントヘッドキャリッジを含む。印刷システムを制御する方法は、プリントヘッドのx軸、y軸、およびz軸周りの回転方向の向き、およびプリントヘッドのy軸およびz軸に沿った位置の1つ以上を検知することを含む。検知された1つ以上の回転方向の向きおよび位置に基づき、プリントヘッドキャリッジをビーム上で支持するように配置された1つ以上の軸受の位置を調整する。1つ以上の軸受の位置を調整することにより、プリントヘッドの回転方向の向きおよびプリントヘッドの位置の一方または両方を調整する。
【0006】
本開示のさらに他の例示的実施形態では、印刷システムを制御する方法は、プリントヘッドのx軸方向に延在する移動経路に沿った位置に関する情報を検知することと、プリントヘッドのx軸、y軸、およびz軸周りの回転方向の向き、およびプリントヘッドのy軸およびz軸に沿った位置の1つ以上に関する情報を検知することと、プリントヘッドが取り付けられたプリントヘッドキャリッジの1つ以上の軸受の位置を調整することにより、プリントヘッドの回転方向の向きおよび位置の一方または両方を調整することと、プリントヘッドキャリッジの1つ以上の軸受の位置を、プリントヘッドキャリッジの移動経路に沿った対応する位置と相関させた情報を保存することとを含む。
【0007】
本開示のさらに他の例示的実施形態では、印刷システムは、被印刷面を有する基板を支持するように構成された基板支持システムを含む。基板支持システムは、被印刷面を、x軸、y軸、z軸直交座標系のz軸に略垂直なx-y平面に維持するように構成される。印刷システムは、基板支持システムに跨がってx軸方向に延在するビームと、ビームに移動可能に結合されてx軸方向に移動するプリントヘッドキャリッジとを含む。プリントヘッドキャリッジは、プリントヘッドキャリッジをビームに対して支持するように配置された1つ以上の軸受を含む。1つ以上の軸受の少なくとも1つは、プリントヘッドキャリッジのx軸、y軸、およびz軸周りの回転方向の向き、およびプリントヘッドキャリッジのy軸方向およびz軸方向の位置の1つ以上を調整するように選択的に調整可能なアクチュエータに結合される。
【0008】
追加の目的、特徴、および/または他の利点は、以下の説明に一部が記載され、一部は本明細書から明白であり、あるいは本開示および/または特許請求の範囲を実施することによって理解されるであろう。これらの目的および利点の少なくとも一部は、添付の特許請求の範囲に特に記載された要素および組合せによって実現し、達成することができる。
【0009】
前述の概略および以下の詳細な説明は、例示および説明のためにすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲は、等価物を含めてその全範囲にわたり権利が及ぶものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の例示的実施形態に係る産業用印刷システムの印刷アセンブリの斜視図である。
【0011】
図2】本開示の例示的実施形態に係るプリントヘッドキャリッジの斜視図である。
【0012】
図3A】本開示の例示的実施形態に係るプリントヘッドおよびキャリッジアセンブリの概略平面図である。
【0013】
図3B図3Aのプリントヘッドおよびキャリッジアセンブリを図3Aに示す向きから回転させた概略平面図である。
【0014】
図4】本開示の例示的実施形態に係る気体軸受およびアクチュエータの概略側面図である。
【0015】
図5】本開示の別の例示的実施形態に係る気体軸受およびアクチュエータの概略側面図である。
【0016】
図6】本開示のさらに別の例示的実施形態に係る気体軸受およびアクチュエータの概略側面図である。
【0017】
図7】本開示の例示的実施形態に係る印刷システムの制御システムのブロック図である。
【0018】
図8】本開示の例示的実施形態に係る印刷システムの制御方法を示すフローチャートである。
【0019】
図9】本開示の別の実施形態に係る印刷システムの較正方法を示すフローチャートである。
【0020】
図10】本開示の別の実施形態に係る印刷システムの制御方法を示すフローチャートである。
【0021】
図11】本開示の例示的実施形態に係る基板およびプリントヘッドの概略斜視図である。
【0022】
図12】本開示の別の例示的実施形態に係るビーム(断面で図示)に対するキャリッジおよびプリントヘッドの概略側面図である。
【0023】
図13図12の例示的実施形態に係るキャリッジおよびプリントヘッドの、図12の断面に垂直な平面に沿った概略断面図である。
【0024】
図14図12の例示的実施形態に係るキャリッジおよびプリントヘッドを、図13と同じ方向から見た概略断面図である。
【0025】
図15図12の例示的実施形態に係るキャリッジおよびプリントヘッドを、図12と同じ方向から見た概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示の様々な例示的実施形態は、例えば、プリントヘッドにより材料を堆積させる表面に対するプリントヘッドの向き(例:軸周りの回転)および位置(例:軸に沿った並進)の一方または両方において正確度を向上させるために、プリントヘッドの向きを調整する装置、システム、および方法を提供する。例えば、本開示の様々な例示的実施形態では、3つの直交座標軸の1つ以上の軸周りのプリントヘッドの3つの回転方向の向きの1つ以上の微調整、および2つの直交座標軸の1つ以上に沿ったプリントヘッドの2つの並進位置の1つ以上の微調整が可能となる。説明を簡潔にするために、本明細書に開示の実施形態では、単一の回転軸周りの向きの調整について述べることがある。例えば、本明細書に開示の図1から図3に関する実施形態では、基板の被印刷面に垂直に延びるプリントヘッドの軸周りの回転方向の向きの調整(本明細書では「θ-z」調整または同義の「シータ-z」調整と称する)について述べる。本開示の他の実施形態は、直交座標軸(x、y、z)のいずれか、または全ての軸周りの回転方向の向きの調整、および3つの直交座標軸のうち、第3の直交座標軸に沿って規定されたプリントヘッドの進行方向に垂直な任意の2軸に沿った並進位置の調整が可能なように構成される。
【0027】
本開示の例示的実施形態では、実施可能な他のプリントヘッド調整法よりも大きな利点が得られる。例えば、回転軸周りの向きを調整する実施可能な一手法では、基板の被印刷面に垂直な軸周りでプリントヘッドを回転(例:自転)可能とする回転ターンテーブルにプリントヘッドを装着することができる。しかし、この機構は重く、費用がかかり、またそのサイズおよび重さから、印刷システム全体に組み込むことが困難な場合がある。
【0028】
プリントヘッドをターンテーブルまたは他の回転装置に装着する代替案として、基板の被印刷面に垂直な軸に対して基板の被印刷面の角度を調整する基板向き調整装置またはシステムを設けることがある。このような基板向き調整機構は、例えば、印刷中に基板を移動させる基板搬送装置の一部とすることができる。このシステムは、基板の被印刷面の向きに対してシータ-z調整を行うように構成されていない基板搬送システムよりも複雑となり、基板全体の位置決めの他の点、例えばx方向およびy方向の位置決めが不正確になるおそれがある。本開示の様々な例示的実施形態は、基板をz軸周りで回転させ、x軸に沿った動きを補償するように基板支持システムを構成する必要性を低減または解消することができる。さらに、本開示の実施形態では、より高い自由度でより微細に調整を制御することが可能であり、よってインク配置およびインク制御がより正確になる。
【0029】
したがって、本開示の実施形態を基板支持システムと共に使用すれば、基板支持システムにより基板をシータ-z軸周りで回転させて、プリントヘッドの向きのシータ-z誤差を補正する必要がない。したがって基板支持システムの複雑さが低減し、正確度および精度を向上させることができる。しかし、本開示の様々な例示的実施形態を、z軸周りで基板を回転させるように構成された基板支持体および/または基板搬送システムと共に用いて、プリントヘッドおよび基板の被印刷面のシータ-z調整法を組み合わせてもよいことが当業者には理解されるであろう。例えば、例示的実施形態では、基板搬送システムを用いて基板の向きの粗制御を行い、調整可能なプリントヘッドキャリッジを用いて基板に対するプリントヘッドの向きの微制御を行ってもよい。
【0030】
本開示では、印刷面を含め、印刷システムの他の構成要素に対して、プリントヘッドの回転方向の向きを1つ以上の軸周りで回転させることが可能なプリントヘッドおよびキャリッジアセンブリの様々な例示的実施形態が企図される。例えば、プリントヘッドにより有機材料を堆積させて画素を形成する基板の印刷面に垂直な軸周りでプリントヘッドを回転させ、プリントヘッドと印刷面との相対的なシータ-z調整を行うことができる。
【0031】
ある例示的実施形態において、プリントヘッドキャリッジは、プリントヘッドキャリッジおよびそこに取り付けられたプリントヘッドをビーム(ガントリとも称する)上で支持するように構成された複数の軸受を含む。これらの軸受は、気体軸受、磁気浮上(マグレブ)軸受などの軸受または装置を備え、ビームに対してキャリッジを所望の位置および向きに維持しながら、ビームとキャリッジとの間の接触を低減または最小にする。例えば、軸受は、キャリッジをビームに沿って単一の自由度で並進移動させるように構成してもよい。
【0032】
本開示の例示的実施形態によれば、1つ以上の軸受の位置をキャリッジに対して変更して、ビームに対するキャリッジの回転方向の向きを変更することができ、したがって3つの直交座標軸の1つ以上の軸に対してキャリッジの向きを変更することができる。例えば、1つ以上の軸受を、キャリッジに対して軸受の長手軸(すなわち、ビームに対向する軸受の表面に垂直に延びる軸)に沿って移動させて、キャリッジの向きを変更することができる。ある実施形態では、受動的に回転する玉継ぎ手により軸受をキャリッジに取り付け、キャリッジの向きが変更されても、ビームに対向する軸受の表面をビームの表面に平行に維持することができる。
【0033】
例示的実施形態では、長手軸に沿って移動可能な1つ以上の軸受を、アクチュエータによりキャリッジに連結する。アクチュエータは、各軸受をその軸受の長手軸に沿って移動させるように構成される。本明細書では、アクチュエータを作動機構と称することがある。例示的実施形態では、アクチュエータは、電流の印加に基づき形状が変化する圧電素子を備える。他の例示的実施形態では、アクチュエータは、例えば、空気圧アクチュエータ、油圧アクチュエータ、またはリニアモータ、ボイスコイル型装置などの電気機械アクチュエータなどの装置を備える。任意選択で、アクチュエータは、アクチュエータの実際の位置に関する情報を含む情報(例:信号)を供給する位置エンコーダ装置などのセンサを含む。この情報をフィードバック型制御システムの制御器によって用いて、キャリッジの位置を確認することができる。
【0034】
次に、図1を参照して、産業用印刷に応用可能な印刷システム100の例示的実施形態を示す。印刷システムを単独で示しているが、この印刷システムは、処理環境が制御された格納庫内に配置することができ、ディスプレイ(例:有機LEDディスプレイ)を含む各種電子部品を製造する産業システム全体の一部を成し得ることが当業者には理解されるであろう。ディスプレイの印刷などの電子デバイス部品製造用の産業システムの非限定的な例が、米国特許出願公開第2014/0311405A1号、同第2017/0028731A1号、同第2018/0014411A1号、および米国特許第9,505,245号に開示され、各公報の内容全体を参照により本明細書に組み込む。印刷装置100は、基板104を支持する基板支持システム102を含む。この基板支持システムは、例えば、真空チャック、または圧力ポートや真空ポートを有する基板浮揚チャック、あるいはそれらの組合せを備えることができる。例示的実施形態では、基板支持システム102は、基板浮揚チャック106と、図1に示すy軸の方向に基板104を移動させるように構成された動作システム108とを含む(図示のxyz直交座標系のx軸およびy軸は互いに入れ替え可能であり、したがってz軸を基板の被印刷面に垂直な軸として選択しているが、本開示の範囲を限定するものではないことが当業者には理解されるであろう)。この動作システムは、y軸に沿って長手方向に配置された第1のビーム110および第2のビーム112を含んでもよく、把持部(図示せず)などの装置が、基板104を保持し、印刷領域114内でy軸に沿って基板を移動させるように構成され得る。基板支持システム102として使用可能な基板支持システムの構成の非限定的な例に関する詳細については、米国特許出願公開第2017/0028731A1号、同第2014/0311405A1号、同第2018/0014411A1号、および米国特許第9,505,245号に記載され、各公報の内容を本明細書に組み込む。
【0035】
印刷システム100は、ビーム116(例:ガントリまたはブリッジ)を含む。ビーム116は、基板支持システム102のうち、印刷領域(プリントヘッドがビーム116に沿って往来する範囲の下方領域。詳細については後述)として画定される領域の上方に配置される。図1の例示的実施形態では、ビーム116は、一端部が第1の上昇台118に取り付けられ、反対側の端部が第2の上昇台120に取り付けられ、これらの上昇台により印刷領域上方で支持されている。ビーム116は、寸法精度が高く、剛性と強度のある安定した材料製でよい。非限定的な一例では、ビーム116は、平滑な表面(例:研磨表面)を有する。ビーム116は、例えば、セラミック材料、アルミニウムや鋼などの金属もしくは合金、または複合材料などの材料製でよいが、それに限られるものではない。図1の例示的実施形態では、ビーム116は花崗岩製である。
【0036】
印刷システム100は、1つ以上のプリントヘッドキャリッジ122を含んでもよい。プリントヘッドキャリッジ122は、ビーム116に沿って図1に示すx軸方向に並進移動可能にビーム116に結合される。1つ以上のプリントヘッドキャリッジ122は、基板104に材料を堆積させるために使用される1つ以上のプリントヘッド124が取り付けられるように構成される。例えば、1つ以上のプリントヘッド124は、基板104上にインク(例えば、有機LED材料)を堆積させるように構成されたインクジェットプリントヘッドでよい。1つ以上のキャリッジ122をビーム116に沿ってx軸沿いに様々な位置に移動させて、基板104上の印刷したい所望の位置にプリントヘッド124をx軸に沿って配置することができる。基板104のy軸に沿った並進運動を、キャリッジ122のx軸に沿った並進運動と組み合わせることにより、プリントヘッド124をx軸およびy軸に沿って基板104の各部分に到達させて、基板104の所望の領域に有機材料を印刷することが可能であり、したがって、例えば材料をパターン状に印刷面上に堆積させることができる。キャリッジ122およびビーム116は、各プリントヘッド124の印刷面(図示せず)が基板104の被印刷面(ビーム116に対向する面)と平行関係を維持するように構成してもよい。ある例示的実施形態において、印刷システム100は、上述のように、例えば電子ディスプレイに使用される基板などの電子デバイスを製造するための産業用製造システム全体の一部を成す。
【0037】
印刷システム100はまた、プリントヘッド124に付随する1つ以上の測定装置を含んでもよい。例えば、図1の実施形態では、干渉計などの1つ以上のセンサ119が各プリントヘッド124に結合される。このセンサ119は、較正処理中または印刷中にプリントヘッド124およびキャリッジ122の実際の並進位置および/または向きを測定するように構成された光学系(図示せず)に連結される(詳細については後述)。図1には1つのセンサ119のみが示されているが、ある例示的実施形態の印刷システム100では、複数の測定装置が配置され、1つ以上のプリントヘッド124の回転方向の向きを、x軸、y軸、z軸周りなど1つ以上の軸周りで求める。ある例示的実施形態において、印刷システム100は、基板104の表面によって画定される平面からプリントヘッド上の既知の3つの点までの距離を測定する3台の別個の測定装置(例えば、レーザ干渉計または他の光学測定装置)を含む。これら3台の距離測定値から、プリントヘッド124の回転方向の向きを3つの軸(例:x軸、y軸、z軸)周り全てについて求めることができる。同様に、1つ以上の測定装置を追加で配置して、プリントヘッド124の進行方向に垂直な2つの軸に沿ってプリントヘッドの位置を検知することができる。例えば、図1の実施形態では、y軸およびz軸に沿った、プリントヘッド124のビーム116に対する位置を、追加の測定装置(例えば、光学センサまたは他の装置)によって求めてもよい。
【0038】
これに加えて、またはこれに代えて、基板(例えば、基板104)と同サイズの「マスターガラス」(図示せず)、ガラスシート、または他の材料などの較正装置を用いて印刷システムを較正してもよい。マスターガラスは、既知の位置を示すマークのパターンを有する。1つ以上(例:2台)の高倍率カメラを用いて、マークの予測位置に対するマークの実際の位置を求め、プリントヘッド124の位置および/または向きに誤差が生じていないか判定する。誤差があれば記録し、この誤差を用いて、本明細書に記載のシステムおよび方法によりプリントヘッド124の位置および/または向きを補正する。
【0039】
印刷システム100(図1)には高精度が求められるため、印刷システム100の各構成部品が少しでも不正確であると、プリントヘッドキャリッジ122がビーム116に沿って移動しながら印刷を行う際に、プリントヘッド124の1つ以上と基板104との間にずれが生じ得る。例えば、ビーム116製造時の製造公差に起因するビーム116表面の微小な凹凸により、キャリッジ122がビーム116を移動する際に、図1に示すキャリッジ122のz軸周りの回転方向の向きに変動が生じるおそれがある。例えば、ビーム116の厚さまたは平坦度にばらつきがあると、キャリッジ122がビーム116に沿って移動する際に、キャリッジのz軸周りの回転方向の向きが変動する可能性がある。このような向きの変動はわずか(例:マイクロラジアン程度)であっても、プリントヘッド124の基板104に対する予測位置が変動することになり、印刷の正確度(例:所期の液滴配置および/または軌跡)が損なわれる可能性がある。例えば、インクを堆積させるノズルが延びるプリントヘッド面と、基板の被印刷面との向きが、シータ-zについて所望の位置からずれることがある。このため、インク液滴の不正確な配置および/またはインク液滴の不均一な堆積、すなわち不均一な乾燥の双方の原因となり、したがって最終製品の膜厚が不均一になるおそれがある。
【0040】
キャリッジ122のz軸周りの向きの変動に加えて、ビーム116の厚さまたは平坦度のばらつきにより、キャリッジ122がビーム116に沿って移動する際に、他の軸周りの向きや位置にも変動が生じることがある。例えば、第1の上昇台118と第2の上昇台120との間では、ビーム116がその長さ全体にわたって支持されていないため、第1の上昇台118と第2の上昇台120との間でビーム116にある程度のたるみが生じることがある。ビーム116のたるみにより、キャリッジ122がビーム116に沿って移動する際に、キャリッジ122のy軸周りの回転方向の向きが変動し得る。y軸周りの回転方向の向きのずれにより、プリントヘッドの表面が基板の印刷面と平行でなくなる可能性がある。また、このようなたるみにより、プリントヘッドの表面が、意図した距離、または設計した距離よりも基板の印刷面に近接し得る。同様に、ビームの厚さ、平坦度、および真直度のばらつきにより、上述のz軸周りの変動に加えて、キャリッジ122のx軸およびy軸周りの回転方向の向きにも変動が生じる可能性がある。同様に、ビームおよび/またはシステム全体の他の構成要素支持部における上記ばらつきにより、キャリッジ122のy軸およびz軸に沿った位置に変動(並進)が生じ得る。本開示の例示的実施形態は、x軸、y軸、z軸周りのキャリッジ122、したがってプリントヘッド124の向きの変動を補償(例:補正)し、さらにはキャリッジ122の移動方向に垂直な2つの独立軸(例:図1のy軸およびz軸)に沿ったキャリッジ122の位置も補償するように構成することができる。
【0041】
次に、図11を参照すると、基板1104の概略斜視図が示されている。図11は、x軸、y軸、z軸周りの向きの変化(それぞれθ-x、θ-y、θ-z)およびx軸、y軸、z軸に沿った並進(それぞれx、y、z)を示す。本開示の例示的実施形態では、並進xは、ビーム116(図1)などの移動経路に沿ったプリントヘッド1124の移動を表す。
【0042】
図11はまた、基板の位置または向きの潜在的なずれにより、プリントヘッドと基板との間にずれが生じ得ることを例示している。図11において、実線は、第1の向きにある基板1104を示す。破線は、基板1104がx軸、y軸、またはz軸の1つの軸周りで第1の向きに対して回転した第2の向きにある基板1104を示す。また、基板1104は、x軸、y軸、またはz軸のいずれかにおいて、プリントヘッド1124に対して並進方向にずれることがある。基板1104のこのような回転または並進により、基板1104とプリントヘッド1124とで位置ずれが生じ得る。これに加えて、またはこれに代えて、基板1104とプリントヘッド1124との位置ずれは、プリントヘッド1124が基板1104に対して回転方向にずれることによっても生じ得る。プリントヘッド1124と基板1104との全位置ずれは、基板1104のx軸、y軸、z軸周りの所期の向きからのずれおよびx、y、z方向の所期の位置からのずれと、プリントヘッド1124のx軸、y軸、z軸周りの所期の向きおよびy、z方向(x方向はプリントヘッド1124の進行方向)の所期の位置からのずれとの合計となり得る。図2から図10に関して説明される本開示の例示的実施形態では、キャリッジ122(図1)およびプリントヘッド124(図1)を各軸に沿って回転方向および並進方向に調整して、プリントヘッド124の基板104に対する所期の位置合せからのこのようなずれを補償することが可能となる。
【0043】
次に図2を参照すると、本開示の例示的実施形態に係るプリントヘッドキャリッジ222がより詳細に示されている。プリントヘッドキャリッジ222は、プリントヘッドキャリッジ222を図1のビーム116などのビームに沿って低摩擦で移動しやすくし、かつキャリッジ222を基板の被印刷面に対して正確に配置しやすくするように構成された1つ以上の装置を含むことができる。例示的実施形態では、プリントヘッドキャリッジ222は、キャリッジ222とビーム116との摩擦を最小限に抑えつつ(例:低減または排除)、キャリッジ222を支持し、キャリッジ222をビーム116に沿って移動可能とするように構成された特徴部を含む。キャリッジ222は、プリントヘッド(例:図1に示すプリントヘッド124)の一部を受け、キャリッジ222がビーム116に沿って往来する際にプリントヘッドをキャリッジ222上の所定の位置に保持するように構成されたプリントヘッド装着部223を含む。
【0044】
例えば、図2の実施形態では、プリントヘッドキャリッジ222は、複数の気体軸受226を含む。気体軸受226はそれぞれ、ビーム(例:図1に示すビーム116)に対向する表面229を有し、気体軸受226は、加圧ガス(例えば、空気または不活性ガス)の供給を受け、ビームと気体軸受226の表面229との間にガスを排出するように構成され、それにより空気または他のガスの層を生成してキャリッジ222をビームに対して支持する。
【0045】
気体軸受226については図2から図4を参照してさらに詳細に述べるが、他の例示的実施形態では、プリントヘッドキャリッジとビームとの接触摩擦を低減(例:排除)するように構成された他のタイプの装置を含んでもよい。例えば、ある例示的実施形態は、磁力を用いてキャリッジ222をビーム116に対して浮上させるように構成された永久磁石および/または電磁石の様々な組合せを含んでもよい。このような装置は、「マグレブ」装置とも称される。
【0046】
気体軸受226はそれぞれ、キャリッジ222に対して回動可能に結合することができる。回動可能とすることで、気体軸受226の表面229を、対向するビーム116の表面と平行に位置合せしやすくすることができる。言い換えれば、この回動結合により、気体軸受226の表面229をビーム116の表面に対して水平となるように配置することが可能となる。気体軸受226をこのように配置すると、気体軸受226が正しく動作し、すなわち気体軸受226とビーム116との間で気体クッションが形成されやすくなる。例示的実施形態では、図4に示すように、玉継ぎ手434を用いて、気体軸受226がキャリッジ222に結合されている。したがって、玉継ぎ手434により、気体軸受226がビーム116に対して「自己整合」しやすくなる。各気体軸受226は、他の気体軸受226とは独立に「自己整合」してもよい。本明細書に記載の実施形態では、玉継ぎ手434が示されているが、1つ以上の回転軸受を含むアセンブリなどの他の多関節アセンブリも本開示の範囲に含まれる。
【0047】
本開示の例示的実施形態では、1つ以上の気体軸受が、軸受の長手軸Aに沿って移動可能なようにキャリッジ222に結合される。本明細書では、気体軸受の「長手軸」とは、気体軸受の表面229に垂直な軸を指す。例えば、図2に示すように、調整用気体軸受226Aは、キャリッジ222に対し長手軸Aに沿って選択的に移動可能に結合される。言い換えれば、調整用気体軸受226Aの軸受表面229は、装着されたプリントヘッドキャリッジ222の表面から離間して突出するように、または近接するように並進することができる。気体軸受226Aは、「調整用気体軸受226A」または「並進気体軸受226A」と称することがある。調整用気体軸受226Aが長手軸に沿って移動すると、キャリッジ222のビーム116に対する向きも変わることになる。
【0048】
図2の例示的実施形態では、キャリッジ222の一側面の上下位置に2つの調整用気体軸受226Aが示されているが、他の例示的実施形態では、調整用気体軸受は1つでもよく、または調整用気体軸受226Aは3つ以上でもよい。例えば、例示的実施形態は、プリントヘッドキャリッジのプリントヘッド装着部223に隣接する4つの位置に4つの調整用気体軸受を含む。これに加えて、またはこれに代えて、キャリッジ222は、図2に示す位置以外の位置に配置された気体軸受をさらに含んでもよく、例えば、プリントヘッド装着部223に隣接する6つ、8つ、またはそれ以上の気体軸受位置の1つ以上に調整用気体軸受226Aを設けてもよいが、それに限られるものではない。
【0049】
調整用気体軸受226Aに対向してキャリッジ222に装着された気体軸受226Cは、長手方向に受動的に移動するように構成され、調整用気体軸受226Aの長手方向の移動を補償する。すなわち、ビーム116の厚さT(図1)は公称的に一定であるので、調整用気体軸受226Aの位置が長手方向に変化すると、調整用気体軸受226Aに対向する気体軸受226Cが長手方向に移動することになる。したがって、気体軸受226Cと調整用気体軸受226Aとの距離は一定に保たれ、気体軸受226A、226Cとビーム116との間の間隙を通ってガスが軸受から流れることが可能となり、気体軸受226が適正に機能する。
【0050】
図2の例示的実施形態では、気体軸受226C(補償用気体軸受とも称する)は、調整用気体軸受226Aの長手方向の動きを補償するように、補償用気体軸受226Cの長手方向の動きを許容するばね支柱234を用いてキャリッジ222に結合される。ばね支柱234は、コイルばね、皿ばね、板ばねなどの機械ばねで構成することができ、機械ばねは、金属合金、ポリマー、または他の材料などの弾性材料製でも、可変容量空圧リザーバなどの気体ばねや他の種類のばね部材を備えてもよい。
【0051】
シータ-z調整のみを行う例示的実施形態を用いて動作の様々な原理を説明する。次いで、同じ一般原理に基づき他の向き/位置調整について説明する。使用時には、キャリッジ122の向きの変動、およびそれに伴うプリントヘッド124の基板104(図1)に対する向きの変動を補償するために、調整用気体軸受226Aをその長手軸に沿って移動させて、キャリッジ122の向きを例えば基板の被印刷面に対する所期のシータ-z向きに戻すことができ、これについては図3Aおよび図3Bに関連してさらに述べる。
【0052】
次に、図3Aおよび図3Bを参照すると、印刷システム(例えば、図1に示す印刷システム100)のプリントヘッドキャリッジ322およびビーム316の一部の概略平面図が示されている。図3Aおよび図3Bは、破線で示す基板304の被印刷面305などの基板の被印刷面に垂直な方向から、基板の被印刷面を見下ろした図である。図3Aに示す構成では、調整用気体軸受326Aはキャリッジ322に対して中立位置にあり、プリントヘッド324は基板304に対して中立向きにある。
【0053】
図3B図3Aに示した図と同様の概略平面図であるが、調整用気体軸受326Aがキャリッジ322に対して長手軸Aに沿って伸長している(図3Aおよび図3Bには一方のみが示され、他方はこの見えている一方の下に配置されている)。調整用気体軸受326Aが伸長すると、キャリッジのz軸(図3Aおよび図3Bの紙面平面を垂直に貫く軸)周りの向きが、図3Bの矢印Cによって示すように時計回りの回転方向に変化することになる。キャリッジ322の向きがz軸周りで変化すると、プリントヘッド324の基板304に対するy軸位置(すなわち、図3Aおよび3Bの縦方向の位置)が変化し得るので、印刷システム100(図1)の制御システムを、基板304のy軸位置を調整するようにさらに構成して、プリントヘッド324と基板304とのy軸における位置変化を補償してもよい。同様に、キャリッジ322のz軸周りの向きの変化により、キャリッジ322のx軸に沿った位置が変化(すなわち、ビーム316方向に沿った位置が変化)することになり、この位置変化はキャリッジ322をビーム316に沿って移動させることで補償することができる。
【0054】
図2から図3Bの例示的実施形態は、2つの調整用気体軸受(例:図2の226A、そのうちの一方(326A)を図3Bに示す)を含むが、他の実施形態は、任意選択で調整用気体軸受を1つのみ、または3つ以上有してもよい。例えば、ある例示的実施形態において、調整用気体軸受に対角線上に対向する軸受(すなわち、図3Aおよび図3Bの図面左上にある軸受)が、調整用気体軸受と同様に伸長する。非限定的な追加の例として、図3Aおよび図3Bに示す補償用軸受326Cを使用するのではなく、図3Aおよび図3Bの気体軸受326および326Cを、キャリッジ322に対して選択的に伸長させたり収縮させたりすることで、調整用気体軸受326Aの伸長を積極的に補償するような構成としてもよい。
【0055】
調整用気体軸受326Aおよび補償用軸受326Cが、キャリッジに対して移動してキャリッジ322のビーム316に対する向きが変化するにつれて、図3Bに示すように、キャリッジ322のz軸周りの回転方向の向きが変化する。気体軸受326、調整用気体軸受326A、および補償用軸受326Cの玉継ぎ手により、気体軸受326、326A、326Cの表面329がビーム316の表面と平行に維持されるように調整される。したがって、気体軸受326、326A、326Cは、図3Bに示す向きにおいて、ビーム316とキャリッジ322との間の境界面を低摩擦(例:低摩擦または無摩擦)に維持することができる。言い換えれば、玉継ぎ手により、気体軸受326、326A、326Cの表面329がビーム316の表面に対して確実に水平になるように受動的に調整され、気体軸受326、326A、326Cの表面329とビーム316の表面との間に気体クッション(例:ガス層)が形成されやすくなる。
【0056】
図4の例示的実施形態では、調整用気体軸受426Aは、圧電アクチュエータ436(図4)によりプリントヘッドキャリッジ422に結合される。圧電アクチュエータ436は、電流の印加に基づき形状が変化するように構成される。図4の例示的実施形態では、圧電アクチュエータ436に電流が印加されると、調整用気体軸受426Aが伸長して、圧電アクチュエータ436が接続されているキャリッジ422の表面から離間する。例えば、電流が印加されると、圧電アクチュエータ436は、実線で示す第1の非伸長(例:収縮)状態438から、点線で示す第2の伸長状態440に変化し得る。電流の印加は、例えば、キャリッジ422のビーム(例:図1から図3Bに示すビーム116、216、または316)に沿うx軸に沿った移動、および基板(例えば、図1に示す基板104または図3Aおよび3Bに示す基板304)のy軸に沿った移動を制御する制御システムによって制御されてもよい。
【0057】
圧電部品は、例えば、高圧縮力、高精度、比較的微小な動きなどの望ましい特性をアクチュエータ436に与えることができるが、望ましい特性はこれに限られるものではない。気体軸受から受ける力(場合によっては数千ニュートン(N)程度となる)にビーム(例:図1から図3Bに示すビーム116、216、または316)が耐えるには、アクチュエータ436により高圧縮力を加える必要がある。例えば、ビームが気体軸受から受ける力は、約500N(113ポンドの力)から約1500N(337ポンドの力)の範囲となり得る。ビームが気体軸受から受ける力は、気体軸受の数、軸受表面の面積、プリントヘッドおよびキャリッジアセンブリの重量などの要因に応じて、上記で例示した範囲を上回る、または下回ることがあり、例えば500N未満、または1500N超の力などに変動し得る。
【0058】
プリントヘッドキャリッジのz軸(または該当する場合にはx軸またはy軸)周りの所望の回転範囲は1ラジアン未満でよく、マイクロラジアンで表すことができる。例示的実施形態では、位置ずれを補正するために、プリントヘッドキャリッジを選択された軸周りで回転させるのに必要な範囲は、0マイクロラジアンから50マイクロラジアン、0マイクロラジアンから100マイクロラジアン、またはその他の範囲でもよい。この範囲にわたって回転しやすくするために、アクチュエータ(例えば、図4に示すアクチュエータ436)により調整用気体軸受をミクロン範囲の距離、例えば約0ミクロンから約100ミクロンの範囲で並進させる必要が生じ得る。この距離は、調整用気体軸受間のピッチ(すなわち、調整用気体軸受間の距離)、およびプリントヘッドキャリッジの選択された軸周りの回転方向の向きの所望の変化量に応じて変動する。
【0059】
例えば、調整用気体軸受間のピッチは、約0.5メートル(19.7インチ)でよく、調整用気体軸受の移動範囲は、約25ミクロンでよく、調整用気体軸受のこの移動範囲では、キャリッジの選択された軸周りの最大回転は約50マイクロラジアンとなり得る。他の例示的実施形態では、プリントヘッドキャリッジを基板の印刷面に対して正しい向きに調整するために必要な、選択された軸周りの向き変化の範囲は、50マイクロラジアン未満、または50マイクロラジアン超でもよく、調整用気体軸受の長手軸に沿った長手方向の移動範囲は、それに応じて異なることになる。
【0060】
圧電アクチュエータ以外のアクチュエータも本開示の範囲内に含まれると考えられる。例えば、ある例示的実施形態では、油圧装置、空気圧装置、リニアモータまたはステッピングモータなどを運動学的リンク装置に接続した電気機械装置、または電気信号もしくは他の制御信号に基づき軸受を長手方向に移動させるように構成された他の任意の装置によって調整用気体軸受を作動させてもよい。非限定的なさらなる例示的実施形態として、1つ以上のアクチュエータは、磁石と、例えばボビンに巻かれたワイヤのコイルを備える可動電磁石とを含むボイスコイル型装置を備えてもよい。コイルに電流を印加すると、磁石の磁場と相互作用する磁場が発生し、ボビンが移動する。この装置の詳細については、米国特許出願公開第2018/0014411A1号に記載があり、この公報の内容を参照により本明細書に組み込む。
【0061】
図4の例示的実施形態では、キャリッジ422および調整用気体軸受426Aは、調整用気体軸受426Aのキャリッジ422に対する移動を制限する機械的(すなわち、「堅固な」)止め部442を含んでもよい。この止め部442により、調整用気体軸受426Aが調整のため最大伸長位置にあっても、連結された印刷システム(例:図1に示す印刷システム100)を確実に正しく機能させることができる。図4の実施形態では、調整用気体軸受426Aは、ビーム416に隣接して示されている。機械的止め部442について図4に関して具体的に図示し説明したが、機械的止め部442は、本明細書に記載の例示的実施形態のいずれに含めてもよい。
【0062】
図4の例示的実施形態では、機械的止め部442は、アクチュエータに配置された肩部445の両側に配置された1つ以上の環状部材443を備える。環状部材443は肩部445に接触し、肩部445および環状部材443によって規定される調整可能範囲を超えて調整用気体軸受426Aが過度に伸長する、または伸長が過小になるのを防止する。調整可能な範囲は、キャリッジの向きを補正するのに必要な伸長量に基づき選択することができる。例えば、例示的実施形態では、調整用軸受は、上記のように約25ミクロンの調整範囲を有し得る。他の例示的実施形態では、50ミクロン、100ミクロン、またはそれ以上などのより広い調整範囲、または10ミクロン、5ミクロン、またはそれ以下などのより狭い調整範囲を有してもよい。機械的止め部442は、アクチュエータの可動範囲を、所与の電気入力に対してアクチュエータが予測可能な安定した移動を行う範囲に限定する。例えば、アクチュエータの可動範囲は、印加電流とアクチュエータの移動との関係がほぼ直線的となる範囲に限定されてもよい。さらに、機械的止め部442は、保守のために印刷システムの電源が切断されているとき、または不使用期間など、アクチュエータに電力が供給されていないときに、アクチュエータおよびキャリッジの位置を規定された範囲内に維持することができる。
【0063】
さらに他の例示的実施形態では、アクチュエータは、調整用気体軸受の間に結合された1つ以上の圧電アクチュエータを、調整用気体軸受とキャリッジとの間に加わる荷重の少なくとも一部を支持するように構成された他の装置と並列に含んでもよい。この装置は、例えば、機械ばねまたは空気圧ばねなどの弾性付勢部材でよい。例えばここで図5を参照すると、調整用気体軸受526Aおよびキャリッジ522の概略側面図が示されている。ばね546(例えば、コイルばね)が、調整用気体軸受526Aとキャリッジ522との間に結合されている。ばね546は、アクチュエータ(例えば、圧電アクチュエータ)536と並列に装着されている。ばね546は、調整用気体軸受526Aとキャリッジ522との間に加わる荷重の一部を支持することができ、圧電アクチュエータ536は、キャリッジ522を調整用気体軸受526Aに対して上述のように微細に位置決めすることができる。例えば、荷重は、キャリッジ522によって支持されたプリントヘッド(図5に示さず)の重量と、キャリッジ522の重量の少なくとも一部とから加わる力である。
【0064】
次に図6を参照すると、図5に関して説明した構成と同様の構成が示されている。図6では、コイルばね546の代わりに、空気圧ばね647(例えば、ピストン-シリンダ装置を含む)が、調整用気体軸受626Aとキャリッジ622との間に圧電アクチュエータ636と並列に配置されている。空気圧ばね647は、調整用気体軸受626Aとキャリッジ622との間に加わる荷重の一部を支持し、圧電アクチュエータ636は、キャリッジ622を調整用気体軸受626Aに対して微細に位置決めすることができる。
【0065】
使用中、プリントヘッドキャリッジ(例えば、プリントヘッドキャリッジ122、222、322、または422)は、リニアモータシステムにより、ビーム(例えば、図1から図3Bに示すビーム116、316、または416)に沿って移動させることができる。リニアモータシステムは、キャリッジ422に接続された固定子(図示せず)と、ビームに埋込みまたは他の形で固定された一連の永久磁石もしくは電磁石(図示せず)とを含む。調整用気体軸受426Aをある範囲を超えて伸長させると、固定子の磁石に対する位置合せに影響を及ぼす可能性があり、したがって固定子が磁石またはビームに影響を及ぼす可能性がある。機械的止め部442は、リニアモータが適正に機能し、キャリッジ422がビームに影響を及ぼさない特定の距離を超えて、調整用気体軸受426Aが伸長するのを防止することができる。機械的止め部について図4の実施形態で具体的に示したが、機械的止め部は、本開示に示す他の実施形態、または実施形態の組合せのいずれに使用してもよい。
【0066】
ある例示的実施形態において、印刷システムは、基板支持システム102(図1)などの基板搬送システムの、所期の搬送経路からのずれを補正するシステムを組み込んでもよい。この補正システムは、米国特許出願公開第2018/0014411A1、または2016年11月29日発行の米国特許第9,505,245号に概ね記載されているようなものでよく、上記公報の各内容の全体を参照により本明細書に組み込む。このシステムは、製造補助として、例えば基板などの部品を搬送経路に沿って案内するように構成された基板把持部などの搬送システムを含んでもよい。典型的な実装形態では、搬送経路は数メートル程度となり得るが、位置決めについては、ミクロン規模またはさらに微細な規模(例:ナノメートルまたはさらに微細な規模)の位置決めが求められ得る。精密な位置決めを補助するために、1つ以上のセンサを用いて、部品(例:基板)と光ビームとのずれについて、1つ以上の寸法を検出する。次に、1つ以上のセンサによって検出されたずれに基づいて位置補正信号を生成する。この信号を1つ以上のトランスデューサに供給し、ずれの相殺に使用する。これにより、搬送経路に伴う微小な機械的誤差に妨げられることなく、部品を光路に追従させることが可能となる。例示的実施形態では、1つ以上のセンサは、トランスデューサが位置誤差および/または回転誤差を常に「ゼロアウト」するようにフィードバックを与える。
【0067】
本開示の例示的実施形態では、経路補正搬送システムの1つ以上の態様を、調整可能なプリントヘッドキャリッジ(例えば、プリントヘッドキャリッジ122、222、322、422、522、622、または1222)と共に使用してもよい。各軸周りの回転調整と、各軸に沿った位置調整とを実現するように構成されたプリントヘッドキャリッジを、米国特許出願公開第2018/0014411A1号または米国特許第9,505,245号に開示の実施形態によって提供される経路補正と組み合わせることにより、プリントヘッドと基板との位置決めの正確度を高め、精密、正確、かつ再現性のある印刷結果を確保することができる。さらに、プリントヘッドキャリッジの回転調整および位置調整により、基板の回転調整を搬送システムによって行う必要性を低減または解消することができ、搬送システムの調整用部品点数が減少し、それに伴う複雑さも低減することになる。したがって、基板とプリントヘッドとを完全に調整することにより搬送経路の誤差(所期の搬送経路からのずれ)および回転誤差または位置誤差(例:プリントヘッドのシータ-z誤差または所期の回転方向の位置合せまたは所期の位置からの他のずれ)の双方を必要に応じて補正して、正確な印刷結果を実現することができる。
【0068】
本開示の実施形態は、キャリッジ(例:キャリッジ122、222、322、422、522、622、または1222)を必要に応じて回転または並進させて、ビーム116または基板支持システム102に付随する構成要素の真直度および/または平坦度のずれに起因する回転または位置の不正確度を補正するように構成された制御システムを含んでもよい。この制御システムは、キャリッジおよび基板搬送システムの実際の位置および向きを求めるように構成された1つ以上のセンサと、1つ以上のセンサに動作可能に結合された1つ以上のプロセッサとを含んでもよい。本開示の例示的実施形態では、1つ以上のセンサは、エンコーダ、干渉計(例:レーザ干渉計)、カメラなどの他の光学測定装置などの1つ以上の構成要素を備えてもよい。制御システムは、プリントヘッドキャリッジと搬送システムとの双方を制御する統合制御システムでも、基板搬送システムとプリントヘッドキャリッジとをそれぞれ独立に制御する2つの実質的に離散した制御システムを備えてもよい。
【0069】
例示的実施形態では、プリントヘッドキャリッジの特定の回転軸に対する所望の位置または回転方向の向き、または位置ずれを補償するためにキャリッジの位置および/または向きを調整しなければならない所望量は、ビームに沿ってx軸方向に並進するプリントヘッドキャリッジの実際の位置および向きに関する情報に基づき求められる。例示的実施形態では、プリントヘッドキャリッジがビームに沿って移動する際に、プリントヘッド(例:図1図3A図3Bに示すプリントヘッド124、324)に設けられた測定装置を用いて、プリントヘッドキャリッジがビームに沿って移動する際に生じた向きのずれまたは位置の不正確度を求める。例えば、カメラ、レーザ干渉計などの干渉計、または上記のような他の測定装置の1つ以上を用いて、キャリッジがビームに沿って移動する際のプリントヘッドの向きおよび位置に関する情報を収集することができる。向きおよび位置に関するデータは、制御システムに供給することができる。制御システムは、プリントヘッドキャリッジ(プリントヘッドキャリッジ122、222、322、422、522、622、または1222)の位置、基板(例えば、図1図3A図3Bに示す基板104、304)のy位置、およびプリントヘッドキャリッジの1つ以上の回転軸(例:プリントヘッドキャリッジのシータ-z向き)周りの1つ以上の回転方向の向き(したがって、プリントヘッドキャリッジに取り付けられるプリントヘッドの回転方向の向き)を制御する。また、制御システムは、基板の搬入および搬出、プリントヘッドを介した有機材料の堆積の制御など、印刷システム100の他の制御機能を実行してもよい。
【0070】
さらに、x軸、y軸、またはz軸のいずれかの軸周りのプリントヘッドの回転中心がプリントヘッドの中心からずれることがあり、したがって、キャリッジの軸周りの回転方向の向きの調整により、プリントヘッドがx、y、またはz方向に移動することがある。制御システムは、こうした移動を補償し、x軸、y軸、および/またはz軸周りの回転方向の調整に基づきキャリッジまたは基板を適切な量だけ移動させるようにプログラミング、または他の形で構成してもよい。
【0071】
ある例示的実施形態において、制御システムは、プリントヘッドキャリッジがビーム116、316、416、1216に沿って移動する際に、搬送システムによって搬送される基板またはキャリッジの実際の位置および/または向きに関するデータを収集し、処理する「リアルタイム」ベースで動作してもよい。次いで、制御システムは、リアルタイムデータを処理して、搬送システムまたはプリントヘッドキャリッジの位置および/または向きを調整して、印刷動作中の搬送システムまたはキャリッジの向きまたは位置の不正確度を補償することができる。
【0072】
「リアルタイム」制御構成の代替形態として、様々な例示的実施形態において、制御システムは、初期較正処理中に、キャリッジが移動するビームに不正確度が存在する場合にその不正確度を補償するために必要となるキャリッジの動きを記録してもよい。キャリッジの向きについて必要となる補正量は、キャリッジがビームに沿って往来する際に、干渉計または他の測定装置などの1つ以上のセンサによって取得された測定値に基づき計算することができる。測定値は、キャリッジのビームに沿った位置に関連付けられた補正値テーブルまたは補正値マップに収集することができる。各補正値は、このテーブルまたはマップによりキャリッジの特定の位置に関連付けられ、この一連の補正値を用いて、ビームの平坦度や厚さのばらつきなど、ビームに存在する特定の不正確度を補償する。補正値表または補正値マップは、較正を実施した印刷システムで使用される特定のビームに関連付けられている。補正値は、制御システムのプロセッサに動作可能に結合された電子メモリに保存してもよい。制御システムは、ビーム上のキャリッジの各位置、または搬送経路に沿った搬送システムの各位置に関連付けられた補正値を適用し、したがってキャリッジがビームに沿って往来し、搬送システムが搬送経路に沿って移動するたびに、キャリッジおよび搬送システムの位置および/または向きの不正確度を測定し直す必要がない。
【0073】
次に図7を参照すると、本開示の例示的実施形態に係る印刷システムを制御する制御システム750を例示するブロック図が示されている。制御システム750は、プリントヘッド(例えば、図1図3A図3B図12から図15のプリントヘッド124、324、1224)の、基板の被印刷面に対する向きおよび/または位置を表す出力信号を生成するように構成された少なくとも1つのセンサ装置752を含み、プリントヘッドはこの被印刷面にインクなどの材料を堆積させるように構成されている。センサ装置752は、本明細書に記載の干渉計、エンコーダ、または他の装置、および/または当業者に周知の装置などの1つ以上のセンサを含んでもよい。一実施形態では、センサ装置752は、1つ以上のレーザ干渉計を含む。
【0074】
センサ装置752は、例えば、プロセッサや電子記憶媒体を含むコンピュータシステムなどの制御器754に動作可能に結合される。制御器754は、被印刷面に対するプリントヘッドの回転方向の向きおよび/または位置に関する情報をセンサ装置752から受信する。さらに、ある実施形態では、制御器754は、印刷システムに連結された他のセンサなどの他の装置から情報を受信してもよい。これらのセンサは、プリントヘッドのx、y、z方向(例えば、上述の図1から図4に関する例示的実施形態について述べたx軸、y軸、z軸に沿った方向)における回転方向の向きおよび位置に関する情報を生成するように構成される。これに加えて、またはこれに代えて、制御器754は、基板を支持および/または搬送するように構成されたシステム(例:図1に示す基板支持システム102)や、プリントヘッドを移動させるように構成されたシステム(例:図1に示す動作システム108)などの印刷システムの他の装置およびシステムから情報を受信してもよい。制御器754は、プリントヘッドの位置、基板の位置、印刷システムの動作状態、気体格納容器などの印刷システムの他の構成要素に関連する情報、または他の入力など、印刷システムの動作態様に関する入力を受信してもよい。
【0075】
制御器754は、基板支持システム(例:図1の102)や動作制御システム(例:図1の108)などの印刷システムの様々な構成要素、または印刷システムの他の構成要素に動作可能に結合されてもよい。制御器754は、センサ装置752からの入力、および制御器754に動作可能に接続された他の任意のセンサまたは入力装置からの入力に基づき、印刷システムを制御する出力信号を生成してもよい。例えば、制御器754は、印刷システムの1つ以上の制御装置756に出力信号を送信するように構成してもよい。制御装置756は、例えば、印刷システムの構成要素に連結された制御可能な構成要素(例えば、モータ、サーボモータ、リニアモータ、または他のアクチュエータ)を含んでもよい。
【0076】
図7の例示的実施形態では、制御器754は、制御装置756に出力信号を送信する。制御装置756は、例えば、印加された電流に基づき位置および/または形状が変化するように構成された1つ以上のアクチュエータ(例えば、図4に示す圧電アクチュエータ436)を備える。このように、制御器754からの出力信号を用いて、アクチュエータ436の作動状態および対応するプリントヘッド(例えば、図1および図3A図3Bのプリントヘッド124、324)の向きを制御することができる。さらに、例示的実施形態では、制御器754は、基板支持システム、動作制御システム、または印刷システムの他の動作態様を制御するなどにより、印刷システムの動作状態を制御する追加の出力を生成してもよい。
【0077】
ある例示的実施形態において、制御装置756は、任意選択で、制御器754にフィードバックを与えるように構成された装置を含む。例えば、例示的実施形態では、制御装置756は、制御装置756の実際の位置に関するフィードバックを制御器754に与えるように構成されたエンコーダ装置757が連結された圧電アクチュエータである。エンコーダ装置757は、制御装置756の位置または動きに基づき信号を生成するように構成された光学式エンコーダ、磁気式エンコーダ、または他の任意の装置でよい。受信したフィードバックに基づき制御装置756が目標位置に達した場合、制御器754は、制御装置をその目標位置に維持する。エンコーダ装置757からのフィードバックが、制御装置756が目標位置に達したことを示すと、制御器754は制御装置756の移動を停止する。
【0078】
次に図8を参照すると、フローチャート860は、プリントヘッドキャリッジの軸に沿った位置および/またはプリントヘッドキャリッジの軸周りの向きを調整するワークフローを示す。本明細書全体を通して、用語「位置」とは、軸に沿った並進位置を指し、用語「向き」とは、軸周りの回転方向の向きを指す。図8の例示的実施形態は、キャリッジの実際の位置および/または向きに関するリアルタイム入力を使用し、リアルタイム入力に基づきキャリッジの位置および/または向きを調整する制御方法の一例を表す。862において、ワークフローは、プリントヘッドにより材料を堆積させる被印刷面に垂直な軸周りのプリントヘッドの回転方向の向きに関する情報を検知することを含む。プリントヘッドは、基板支持システムに跨がって延在するビームに移動可能に装着されたプリントヘッドキャリッジに取り付けられてもよい。検知されたプリントヘッドの向きに関する検知情報は、様々な例示的実施形態において、制御器754(図7)などの制御器に供給することができる。
【0079】
864において、プリントヘッドキャリッジの軸に沿った位置および軸周りの回転方向の向きの一方または両方を、例えば検知情報に基づき調整する。上述のように、例示的実施形態では、この調整は、アクチュエータ436(図4)などの1つ以上のアクチュエータのサイズ、形状、位置、または他の特性を変化させることにより、基板の被印刷面に対して垂直な軸周りのプリントヘッドの向きを基板に対して調整することによって実現することができる。例えば、図1から図4に関して上述したように、気体軸受226、326、および426(図2図3A図3B図4)などの1つ以上の非接触軸受をアクチュエータによりそれぞれの長手軸に沿って移動させて、プリントヘッドの向きを変更してもよい。様々な例示的実施形態では、アクチュエータは、制御器754(図7)などの制御器によって制御してもよい。例えば、検知情報を受信した制御器を用いて、プリントヘッドキャリッジを調整するようにアクチュエータを制御する信号を出力してもよい。
【0080】
866において、プリントヘッドキャリッジの軸周りの実際の向きと、軸に沿った実際の位置の一方または両方を検知し、実際の向きと位置に基づき必要に応じて追加の制御または調整を行ってもよく、または向きと位置を確認して調整を停止してもよい。例えば、例示的実施形態では、制御器は、エンコーダ(例:図7のエンコーダ装置757)またはセンサ装置752(図7)などの別の測定装置の一方または両方から信号を受信する。エンコーダまたは別の測定装置は、アクチュエータの位置、軸受の位置、またはキャリッジの位置の1つ以上を検知し、その検知情報を、検知した構成要素の実際の位置を示す信号として制御器に供給してもよい。制御器は、受信した信号を評価し、例えば、アクチュエータおよび/または軸受などの各構成要素の位置をキャリッジの実際の向きおよび/または位置と相関させた保存済みの幾何関係に基づき、キャリッジの実際の向きおよび位置を求める。制御器が受信した情報に基づき、キャリッジが所望の向きおよび/または位置にない場合、エンコーダまたはセンサから受信した信号が向きおよび/または位置が正しいことを示すまで、制御器によりキャリッジの向きおよび/または位置をさらに調整することができる。図3Aおよび図3Bに関して上述したように、例えば、キャリッジのシータ-z向きの補正により、プリントヘッドの基板に対するxおよびy方向の位置に変化が生じることがある。制御器は、プリントヘッドのz軸周りの向きの変化に基づき、プリントヘッドのxおよびy方向の位置を必要に応じて調整するように構成してもよい。同様に、x軸またはy軸周りの回転方向の向きの変化により、x軸、y軸、z軸に沿った並進位置に変化が生じることがあり、このような位置の変化を、1つ以上のセンサからの情報に基づき補正するように制御器をプログラミングしてもよい。
【0081】
図8に関して上述したリアルタイム制御方法の代替形態として、ある例示的実施形態では、初期較正処理からの情報を用いて制御システムをプログラミングしてもよく、初期較正処理中に得られた情報を制御器によって用いて、後続の印刷動作中にキャリッジの向きを制御する。この構成の一例では、キャリッジがビームに沿って移動する際のキャリッジの向きを求めるために使用する測定装置は、較正の目的で印刷システムの構成要素に一時的にのみ取り付け、較正処理が完了すると、その後印刷システムから取り外すことができる。したがって、このような構成では、測定システムを印刷システムに恒久的に取り付ける必要がないため、印刷システムのコストおよび全体の複雑さが低減することになる。
【0082】
次に図9を参照すると、ワークフロー970の別の例示的実施形態は、1つ以上の測定装置を用いた初期較正処理を含み、これらの1つ以上の測定部品は、初期較正処理で使用した後は、後の印刷動作に使用する必要がない。例えば、972において、ワークフロー970は、プリントヘッドにより材料を堆積させる被印刷面に対する、プリントヘッドの回転方向の向きおよび位置の一方または両方に関する情報を検知することを含む。検知は、上述の干渉計やカメラなどの測定装置によって行うことができる。様々な例示的実施形態では、プリントヘッドの向きおよび位置に関する測定装置からの測定情報は、プリントヘッドキャリッジがビーム116、316、416などの移動経路に沿って移動する際に、制御器で受信される。974において、プリントヘッドが移動経路に沿って移動する際に、プリントヘッドの向きおよび/または位置を調整する。例えば、様々な例示的実施形態では、制御器は、測定装置からの情報がプリントヘッドの向きおよび/または位置が所望の向きに達したことを示すまで、キャリッジおよびプリントヘッドの回転方向の向きまたは位置を調整するように、1つ以上のアクチュエータに信号を送信する。任意選択で、アクチュエータに結合されたエンコーダなどのセンサにより、アクチュエータのキャリッジに対する実際の位置(例:直線伸長量)に関する情報を含む信号を制御器に供給する。別のセンサにより、キャリッジおよびプリントヘッドの、ビームに沿った経路などの移動経路に沿った位置に関する情報を制御器に供給してもよい。1つ以上のアクチュエータによる調整の結果生じるプリントヘッドの向きまたは位置の変化に基づき、必要に応じてプリントヘッドの位置および/または向きに対する追加の調整を行ってもよい。
【0083】
976において、プリントヘッドの回転方向の向きと、プリントヘッドの移動経路に沿った位置および移動経路に垂直な方向の位置とに関する情報を保存して、プリントヘッドの移動経路に沿った位置に対応する一連の補正値を収集する。例えば、様々な例示的実施形態では、制御器は、1つ以上のアクチュエータの位置に関する情報を、キャリッジのビームに沿った位置と関連付けて、キャリッジのビームに沿った位置に関連付けられたアクチュエータ位置の一連の値を収集する。この一連の収集情報には、任意選択で、キャリッジのビームに沿った所与の位置に対するx、y、z方向の補正値を必要に応じて含めることができ、キャリッジの所与の軸周りの回転の結果生じる変化を補償することができる。関連付けられた一連の収集値は、テーブル、リスト、マップなどと称され、プロセッサと動作可能に結合された電子メモリに保存することができる。電子メモリには、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、ディスクドライブやフラッシュメモリなどの電子記憶装置、または他の任意のタイプの電子記憶媒体または装置が含まれるが、これに限られるものではない。
【0084】
初期較正処理後に印刷システムを使用する際、ビームに沿ったキャリッジの位置に基づき、キャリッジおよびプリントヘッドの向きおよび/または位置を制御器によって調整する。この調整は、キャリッジがビームにわたって移動する際に、キャリッジの位置に関連付けられたアクチュエータの伸長値に従ってキャリッジ上の1つ以上のアクチュエータを制御することにより行われる。例えば、ここで図10を参照すると、ワークフロー1080が示されている。1082において、プリントヘッドの移動経路に沿った位置に関する情報を検知する。例えば、様々な例示的実施形態では、印刷動作中、制御器は、ビームに沿ったキャリッジの位置に関する情報を受信する。1084において、プリントヘッドの移動経路に沿った位置に対応する保存済みの補正値に基づき、プリントヘッドの回転方向の向きおよび/または位置を調整する。例えば、様々な例示的実施形態では、電子メモリに保存された値、例えば、図9のワークフローの工程976に関連して保存されたデータなどに基づき、キャリッジの向きまたは位置を制御器によって調整してもよい。このように、制御システムは、リアルタイムの測定値に依存せずに、初期較正に基づき向きの誤差や位置の誤差を補正することができ、したがって測定センサや測定システムを印刷システムに統合する必要性が低減し、結果として印刷システムの複雑さが低減する。
【0085】
図12から図15は、キャリッジ上の1つ以上のアクチュエータを用いて、キャリッジのx軸およびy軸(図1の座標系)周りの向き調整を例示した概略図である。上述の例示的実施形態では、気体軸受226のうちの2つのみ調整用気体軸受であり、z軸周りの向きの調整を行うように構成されているが、他の例示的実施形態では、このシステムは、他の軸周りの向きの調整および/または他の軸に沿った位置の調整をしやすくするように、3つ以上の調整用気体軸受を含んでもよい。ある例示的実施形態では、気体軸受はそれぞれ、アクチュエータに取り付けられるため、調整用気体軸受でよい。気体軸受の数は所望の個別の調整の数に基づき調整が可能であり、所望の調整の数が増えれば、アクチュエータに設ける気体軸受の個数を増やせばよい。
【0086】
次に、図12を参照すると、ビーム1216、キャリッジ1222、およびプリントヘッド1224の、ビーム1216の長さに垂直な平面に沿った断面図が示されている。図12の図面向きでは、x軸は図面平面を垂直に貫く軸である。キャリッジ1222をx軸周りで回転させるには、調整可能な軸受1286、1287に連結されたアクチュエータを作動させて、キャリッジ1222と、各調整可能軸受1286、1287のビーム1216に対向した表面との間の距離を増大させる。調整可能な軸受1288に連結されたアクチュエータを作動させて、キャリッジ1222と、調整可能な軸受1288のビーム1216に対向した表面との間の距離を減少させる。その結果、キャリッジ1222およびそこに連結されたプリントヘッド1224は、図12の矢印Rで示されるように、x軸周りで反時計回りに回転する。キャリッジ1222およびプリントヘッド1224をx軸周りで時計回りに回転させたい場合には、調整可能な軸受1286、1287に連結されたアクチュエータを作動させて、キャリッジ1222と、調整可能な軸受1286、1287のビーム1216に対向した表面との間の距離を減少させる。また、調整可能な軸受1288を作動させて、キャリッジ1222と、調整可能な軸受1288のビーム1216に対向した表面との間の距離を増大させる。このように、調整可能な軸受1288を用いて、キャリッジ1222がビーム1216に沿って移動する際の、キャリッジ1222のx軸の向きの不正確度を補償することができる。図12の例示的実施形態では、各軸受1286、1287、1288はアクチュエータを含むが、1つ以上の軸受を任意選択で固定しても、(例えば、ばね式装着部を用いて)受動的に移動可能としてもよい。例えば、一例示的実施形態では、軸受1286は受動的に移動可能であり、それにより、調整可能な軸受1287および1288の作動を受動的に補償することができる。さらなる例として、軸受1288をキャリッジ1222に対して固定してもよく、調整可能な軸受1287が作動すると、軸受1286は、受動的または能動的に調整可能に、軸受1287の移動を補償することができる。同様に、軸受1287を固定してもよく、軸受1286、1288の一方または両方にアクチュエータを含めてもよい。
【0087】
次に図13を参照すると、y軸周りの回転を実現する手法が示されている。図13は、図12をz軸周りで90度回転させた図であり、ビームの長手軸が延在する平面に沿った断面図である。y軸は、図13の図面平面を垂直に貫く軸である。図13では、2つの調整用軸受1390、1392がキャリッジ1222の上部に配置されている。キャリッジ1222およびプリントヘッド1224をy軸周りで反時計回りに回転させるには、調整用軸受1390をキャリッジ1222に対して伸長させ、調整用軸受1392をキャリッジ1222に対して収縮させる。これにより、キャリッジ1222が図13の矢印Rで示すようにビーム1216に対して回転することになる。y軸周りの時計回りの回転は、調整用軸受1392をキャリッジ1222に対して伸長させ、調整用軸受1390をキャリッジ1222に対して収縮させ、回転方向Rを反転させることによって実現することができる。図13に示す例示的実施形態では、調整用軸受1390、1392の両方がアクチュエータに接続され、そのように説明したが、他の例示的実施形態では、調整用軸受1390、1392の一方のみがアクチュエータを含み、調整用軸受1390、1392の他方の代わりに固定軸受が使用される。y軸周りの回転は、一方の調整用軸受を伸縮させ、固定軸受をキャリッジ1222から一定の距離に保つことによりいずれの方向にも回転させることが可能である。このように、キャリッジ1222がビーム1216に沿って移動する際に生じるy軸方向の不正確度を補償することができる。
【0088】
次に図14を参照すると、図13と同様の図であり、ビーム1216の長手軸が延在する平面に沿ったビーム1216およびキャリッジ1222の断面図が示されている。キャリッジ1222およびプリントヘッド1224の、ビーム1216に対するz方向の位置を調整するには、調整用軸受1390および1392を同時に伸縮させて、キャリッジ1222をビーム1216に対して必要に応じて動かす。これにより、キャリッジ1222がビーム1216に沿って移動する際に生じるz位置の不正確度が補正される。図14には2つの調整用軸受1390、1392が示されているが、キャリッジ1222の中央に単一の調整用軸受が配置された実施形態、または3つ以上の調整用軸受が配置された実施形態もまた、本開示の範囲に含まれる。
【0089】
次に、図15を参照すると、図12と同様の図であり、ビーム1216の長手軸に垂直な平面に沿ったビーム1216の断面が示されている。キャリッジ1222のy方向の位置を調整するには、調整用軸受1594および1596を伸長させ、調整用軸受1598は収縮させて、キャリッジ1222をy方向に移動させる。キャリッジ1222の移動をy方向に反転させるには、調整用軸受1594および1596を収縮させ、調整用軸受1598は伸長させる。このように、キャリッジ1222およびプリントヘッド1224のy方向の位置の不正確度を補正することができる。
【0090】
本開示の様々な例示的実施形態は、x軸、y軸、z軸の任意の一軸、または任意の組合せの軸周りのキャリッジ1222およびプリントヘッド1224の向きの変化、およびキャリッジ1222のビーム1216に沿った運動方向に対して垂直な任意の一方向、または両方向(すなわち、図示のy軸およびz軸)に沿ったキャリッジ1222およびプリントヘッド1224の並進運動を実現する。図8のワークフローに関して説明したものなどのリアルタイムフィードバックに基づき、調整を動的に行うことができる。あるいは、図9および図10のワークフローに関して説明したものなどの較正工程中に収集、記録されたデータに基づき調整を行うこともできる。
【0091】
本開示の装置、システム、および方法の実施形態を用いて製造された装置として、例えば、電子ディスプレイまたはディスプレイ部品、プリント回路基板、または他の電子部品が挙げられるが、これに限られるものではない。これらの部品は、例えば、携帯用電子デバイス、テレビ、コンピュータディスプレイ、またはディスプレイ技術を組み込んだ他の電子デバイスに使用することができる。
【0092】
本明細書に記載の特定の例および実施形態は、非限定的であり、構造、寸法、材料、および方法について、本教示の範囲から逸脱することなく改変可能であることが理解されるであろう。本開示による他の実施形態は、本開示の明細書および本発明の実施を考慮すれば当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は、例示にすぎず、均等物を含め、以下の特許請求の範囲全体が適用法の下で権利範囲に含まれるものである。

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15