(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】インターロッキング複合建築ブロック
(51)【国際特許分類】
E04C 1/00 20060101AFI20240126BHJP
E04C 1/39 20060101ALI20240126BHJP
E04B 2/02 20060101ALI20240126BHJP
E04B 2/18 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
E04C1/00 Z
E04C1/39
E04B2/02 115Z
E04C1/00 F
E04B2/18
E04B2/02 135
(21)【出願番号】P 2021547578
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 US2020019733
(87)【国際公開番号】W WO2020176530
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-09
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521358257
【氏名又は名称】フェルトン,コリン
【氏名又は名称原語表記】FELTON, Colin
【住所又は居所原語表記】2372 N. 14th St., Coos Bay, Oregon 97420 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】フェルトン,コリン
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0036696(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0221538(US,A1)
【文献】仏国特許発明第01272187(FR,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0347187(US,A1)
【文献】国際公開第2010/105317(WO,A1)
【文献】ベルギー国特許発明第479632(BE,A)
【文献】特開2002-143822(JP,A)
【文献】特開2011-157690(JP,A)
【文献】特開2012-193058(JP,A)
【文献】登録実用新案第3138465(JP,U)
【文献】国際公開第02/079093(WO,A1)
【文献】特開2014-015364(JP,A)
【文献】特表2016-519038(JP,A)
【文献】登録実用新案第3016672(JP,U)
【文献】特開2013-217143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 1/00-1/42
E04B 2/00-2/54
E04B 2/84-2/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各セグメントの長さがセグメントの幅と等しく、隙間ばめを有し、各セグメントの外周に配置されたリップ及びインセットにより、水平方向、垂直方向、直交方向にかみ合うことが可能なブロックにより、壁を組み立てることが可能となる、セグメント化された建築ブロックであって、前記ブロックの成形に使用される材料は、20~70%の天然繊維、最大約5%のカップリング剤、最大約10%の顔料、最大約10%の難燃剤、最大約1%の酸化防止剤、最大約1%の紫外線安定剤、最大約1%の熱安定剤、最大約5%の殺菌剤、最大約70%の熱可塑性プラスチックを含む熱可塑性複合材から構成される、建築ブロック。
【請求項2】
各セグメントは、前記ブロックの露出面を超えて延長し、その上側または下側のブロックセグメント上の雌インセットに嵌合する雄リップを有する、請求項1に記載の建築ブロック。
【請求項3】
各セグメントは、鉄筋等の補強材を挿入するために、上側及び下側のインターロッキングブロック内の垂直方向の溝に沿って垂直方向に配置された溝を有する、請求項1に記載の建築ブロック。
【請求項4】
前記セグメントの合わせ面と、前記ブロックの端部は、シーリング用Оリング、ガスケット、シーリング材、接着剤を挿入するための溝を有する、請求項1に記載の建築ブロック。
【請求項5】
一つの端面は、窓または扉組立体を取り付けるための垂直方向に配置された矩形状突起部を有する、請求項1に記載の建築ブロック。
【請求項6】
各セグメントは、前記ブロックの面より短いインセット及びリップを有する、請求項1に記載の建築ブロック。
【請求項7】
各セグメントは、雄と雌のインターロック部分に、コンジット、配線、パイプ、ボルト、締め具、鉄筋、その他の補強材の通過を可能にするための水平方向に整列する孔を有する、請求項1に記載の建築ブロック。
【請求項8】
前記複合材は、線熱膨張係数が0.0003/°C未満であり、圧縮強度が40MPaを超える、請求項1に記載の建築ブロック。
【請求項9】
前記複合材は、線熱膨張係数が0.0002/°C未満であり、圧縮強度が60MPaを超える、請求項1に記載の建築ブロック。
【請求項10】
前記複合材に使用される前記熱可塑性プラスチックが、成形工程で架橋されたポリエチレンから構成される、請求項1に記載の建築ブロック。
【請求項11】
前記複合材に使用される前記天然繊維は、麻などの一年生植物由来の繊維から構成される、請求項1に記載の建築ブロック。
【請求項12】
前記複合材に使用される前記天然繊維は、木質繊維から構成される、請求項1に記載の建築ブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全体として、プレハブ式の石積ブロック(コンクリートブロック)(CMU)に類似する建築用の複合ブロックに関し、特に、壁を構築することに関する労働時間を短縮させる建築ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートブロック(CMU)は、簡易な壁構築に世界中で使用されている、低コストで耐久性に優れた製品である。このブロックは低コストであっても、設置には多くの人手を要し、手作業での位置合わせや、接着及び構造的な統合性のためのモルタルが必要なため、熟練した賃金の高い設置業者が必要となる。また、CMUに使用されている一般的なコンクリートは脆く、非常に重い。これらの要因により、設置費用は壁構築用ブロックの購入費用の10倍になる場合もある。また、コンクリートブロック材の機械的特性(圧縮強度約14MPa、引張強度約300MPa)により、ほとんどの用途で、少なくとも壁の一部に補強材が必要となる。鉄筋で補強し、用途に応じてコンクリートを充填する特定の部分を除き、CMU壁の大部分は耐力がない。
【0003】
CMUに関する先行技術には、複数の発明が列挙されている。例えば、コンクリート・プラスチック・ユニット(CPU)に関する米国特許第6167669号には、鉄骨鉄筋コンクリート構造物用の透明な永久フォームが記載されている。この透明なフォームのセクションは、透明なポリ塩化ビニル材料から工場で押し出されており、フォームの組み立て、スチールや諸設備の設置、必要な検査を容易にすることができる。この透明なフォームは、鉄骨鉄筋コンクリート構造物を、その構造物を破壊する原因となる構成部分から保護する。透明なフォームは、工場で押し出された全く異なる形状の2つのプロファイルで構成されている。フォームを構成する(複数の)セクションは、任意の長さや角度に変更してカットし、現場で組み立てることができる。1つのプロファイルの2つのセクションを使用してフォームの両垂直側面を形成し、もう1つのプロファイルの2つのセクションを垂直側面セクションの間に水平に挿入して、細長い空の容器を作成する。組み立てられた透明なフォームは、幅7+5/8インチ、高さ8インチで、4側面が開放されている。組み立てられたユニットは水平に設置され、積層して重ねて接続することができるため、住宅やの商業建築用のいかなる設計にも対応できる。
【0004】
他の米国特許第6213754号は、ポルトランドセメント、石炭燃焼副産物、発泡スチロールまたは押出発泡ポリスチレン、水からなる超軽量で耐久性のある大型構造ユニットを成形するためのセメント系組成物、およびそのような構造ユニットの製造に使用される、改良されたブロックマシンに関するものである。
【0005】
省エネCMUに関する米国特許第4566238号には、エネルギー貯蔵のための受動熱質量として機能するように構築された壁が記載されており、開示されているような壁を使用した建物内部の太陽熱暖房や夜間冷房の強化を可能にしている。所定の位置で発泡させた膨張性の断熱材を使用し、壁を密閉し、これを防水性としている。内側のセルと外側のセルを持つコンクリートブロックを積み重ねて壁を形成する。石積みユニットの内側のセルに注入された硬化性材料は、壁の中で垂直方向と水平方向の双方に移動して剛体壁構造を形成する。硬化性材料を入れたセルに隣接する外側のセルに流体状の断熱材を導入することで、断熱材は剛性の内壁構造の熱質量に実質的に隣接するように配置される。
【0006】
米国特許第6050749号は、強化された擁壁のためのコンクリートブロックに関し、特に、強化された土擁壁に使用するのに適したコンクリートブロックを記載している。強化された擁壁は、機械的に安定した土壁構造を形成するために、適切な連結装置により、外装要素から隣接する強化土まで延長する強化部材に連結された、プレキャストされたコンクリートブロック外装要素で構成されている。連結端部において強化部材を外装要素に取り付ける連結装置は、選択的な外装ブロック内の特定の空隙スペースの一部または全部に注入されたコンクリートを備えており、このコンクリートは、強化され、あるいは強化されない場合があり、このコンクリートは乾燥され、硬化される場合は、強化部材の連結端部を覆い、対応するブロックに固定し、そこに支持手段を形成する。本明細書で開示された新規なコンクリートブロックは、ブロックの単位体積(単位重量)当たりの最大対向体積を効果的にもたらし、これは常に4.0m2/m3を超えており、従来の壁構築物に対して、擁壁表面積の単位当たりにつき、相当程度のコスト削減となる。
【0007】
マニトバ大学に対して発行された表面強化コンクリートブロックに関する他の米国出願公開第2017/0016228号は、積層された列の中で互いに直列に接した石積みブロックユニットで形成された壁に関するものである。各石積みブロックユニットは、組立石積み壁のそれぞれの部分を確定する2つの対向する外部側壁を有するコンクリート体である。各石積みブロックユニットの外側の側壁には、外側に向かって横方向に開放されるように、垂直方向の補強溝が形成されている。補強溝は、隣接する積層された列の石積みブロックユニットの対応する溝と整列し、組み立てられた石積み壁の外面から横方向に挿入された、例えば鉄筋などの細長い補強部材を受け入れる。その後、接合材を補強溝に向けて横方向に凹ませて、補強部材を石積みの組立体に接合することができる。
【0008】
他の米国特許出願公開第2013/0205688号には、現場で建設する構成部分の代わりに、プレハブ式の複合石積みユニットとその製造方法が記載されている。一実施形態には、モルタルで接着した隣接する両端部を備え、端から端まで敷設された中空ブロックを備えた第1の経路が記載されており、中空ブロックは、第1の経路が中空のコアを有するように配置され、第1の経路の上面に形成された少なくとも1つの溝をさらに記載しており、前記溝は一定の長さを有し、仮の補強材をさらに記載しており、この仮の補強材は、前記溝の前記長さの少なくとも一部に沿って設けられ、モルタルとは異なる接合材により溝内部に保持されている。仮の補強材は、組立現場から建設現場までの間に、第1の経路を運搬し、かつ取り扱うために、第1の経路に引張強度を与えており、ここで第1の経路は、建設現場で中空のコア内で永久構造用石工補強材を受け入れるように構成されている。
【0009】
【0010】
1958年に発行された米国特許第3005282号には、Lego(商標)おもちゃの積み木の原型となる特許が開示されている。この特許には、二次的な突起(例えば側壁)の間の補完的な空間に、一次的な突起が摩擦によって嵌合する蟻継ぎなどの補完的な孔、溝、突起を備えた追加要素を使用せずに組み立てる建築用ブロック、ストリップ、同様の構築部分を記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
先行技術で提示された複数の他の解決手段が複数存在する。セメントよる解決手段は標準的なCMUに改良を施しているが、これらの解決手段は依然として重いこと、及び衝撃特性に乏しいという制約があり、手作業での位置合わせや、構造的な統合性のためのモルタルが必要であり、一般的に、位置合わせや設置のための熟練した労働が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
多くのブロックコンクリートの比重は約2.4であるのに対し、本発明で開示する熱可塑性複合ブロックの比重は1.4未満である。また、典型的なサンプルサイズの違いのために数値的に比較することは難しいが、ほとんどの熱可塑性天然繊維複合材の衝撃特性は、低コストのブロックコンクリートのそれよりも著しく高いことがよく知られている。開示された発明に記載された天然繊維熱可塑性複合材の軽量化と優れた衝撃性により、3mmという薄いシェルを持つ複雑な形状の成形が可能になる。低コストのブロックコンクリートで成形された類似のシェルの厚さのブロックは、運搬や設置の際に大きな破損が発生する。
【0013】
標準的なCMUやここで言及されている先行技術の構造的な統合性のかなりの部分は、モルタルに起因している。無筋コンクリートの壁は、通常、0.5%をかなり下回る破断前の低い伸びにより、地震の際の性能が低く、その一方で、天然繊維熱可塑性複合材は破断前に2~6%の歪みを示している。開示された発明では、ブロックのインターロッキングの性質により、構造的な統合性のためのモルタルを必要としない。モルタルがないことに加えて、成形された熱可塑性複合材の正確さ(通常は±0.5mm未満)と開示された設計により、ブロックはほぼ完全に整列する。
【0014】
本明細書及びその他の個所で開示されたLego(商標)などのプラスチック製の建築用ブロック、及び他の類似の解決手段に関して大きく異なる点は、熱膨張、クリープ、組み立ての性質、形状である。Lego(商標)及び他の類似のブロックは、接合時に一方または両方の部品が変形する締まりばめでかみ合う。これは、破損前に大きく変形する場合がある(通常は10%以上)純粋な熱可塑性プラスチックで作成された部品であれば、起こりうることである。他方で本特許で開示されている設計のような熱可塑性複合材では、この種の接合に必要な変形では、一般的に破損または損傷する。開示された発明のブロックは隙間ばめで接合し、このとき変形は必要ない。
【0015】
Lego(商標)ブロックに使用されているような熱可塑性プラスチックのほとんどは、線熱膨張係数が0.0009/°Cよりはるかに大きい。このような熱可塑性プラスチックを大きな組立体に使用すると、建築用途での通常の温度変化によって大きな変形を示す場合がある。これらの変形は、ブロックが冷却されている際、あるいは温まっている際のいずれの際に組立体が作成されたかにより、プラスチックの経年劣化やシーリング材の破損、大きな隙間の発生の原因となり得る。この影響は、小さな部品では無視できるものである。これとは対照的に、本発明で開示された理想的な熱可塑性天然繊維複合材は、熱膨張係数が0002/°C未満であり、これと同程度の問題を露呈させないであろう。
【0016】
Lego(商標)ブロックに使用されているような純粋な熱可塑性プラスチックは、高温熱膨張に加えて、クリープする傾向がある。特にポリプロピレンやポリエチレンのような低コストの熱可塑性プラスチックでは、通常の建築用途で見られる温度で最小の負荷をかけると、クリープが大きくなる場合がある。約50%の天然繊維で強化した同じ熱可塑性プラスチックは、一般的に桁違いに少ないクリープを示す。
【0017】
Lego(商標)ブロックと開示された発明のもう一つの大きな違いは、成形されたブロックの形状である。Lego(商標)ブロックは一側面が開放されているのに対し、開示された発明のブロックは完全に中空で成形されている。さらに、Lego(商標)ブロックは、ピンと側壁の間が締まりばめでかみ合うのに対し、開示された発明のブロックは、各セグメントの全周のリップとインセットでかみ合っている。開示された発明は、Lego(商標)ブロックとは異なり、分離された場合は、単独で動作できる同一のセグメントを備えている。さらに、Lego(商標)ブロックは、開示された発明の孔が発揮する補強機能や、開示された発明のオープンジオメトリによる提供される、内部へのアクセス性を備えていない。
【0018】
今日、市場に存在する上述の現解決手段は、壁構築には困難で時間のかかる手順を伴う。これらは設置には多くの人手を要し、手作業での位置合わせや、接着及び構造的な統合性のためのモルタルが必要なため、熟練した賃金の高い設置業者が必要となる。あるいは、ほとんどの外壁用途の厳しい要求には適していない。
【0019】
従来の発明や特許のいずれも単独で、または組み合わせることによっても、ここで特許請求されている発明を記載していないと考えられる。したがって、本発明の発明者は、先行技術の前述の欠点を解消するために、既存の技術的困難を解決し、克服することを提案する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書では、好ましい実施形態の詳細な説明を行っている。しかし、本発明は様々な形態で具現化できることを理解すべきである。したがって、本明細書に開示されている特定の詳細は、限定的なものとして解釈されるべきではなく、むしろ、特許請求の範囲の根拠として、そして、当業者に本発明を実質的に任意の適切に詳細なシステム、構造または手法で採用することを教示するための代表的な根拠として解釈されるべきである。
【0021】
本明細書で使用されている用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図していない。本明細書で使用される用語である「および/または(「and/or」)は、関連するリストアップされた項目の1つまたは複数のあらゆる組み合わせを含んでいる。本明細書で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、別段、文脈で明確に示されていない限り、単数形だけでなく複数形も含むことを意図している。本明細書で使用される際に、「備えている(comprises)」および/または「備えている(comprising)」という用語は、記載された特徴、ステップ、操作、要素、および/または構成要素の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、ステップ、操作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことがさらに理解されるであろう。
【0022】
「水平の(horizotal)」という用語の使用は、壁の長さに沿った方向を意味することを意図している。「垂直の(vertical)」という用語の使用は、設置の基準面となる平面(通常は地面)に垂直な方向を意味することを意図している。「直交の(orthogonal)」という用語の使用は、壁の水平方向に対し90度の方向を意味することを意図している。「セグメント」という用語の使用は、ブロック内で横方向に接続された他のすべてのセグメントと寸法と形状が等しいブロックの一部を意味することを意図している。「シェル(shell)」という用語の使用は、個々のブロックの壁の厚さを意味することを意図している。「壁(wall)」という用語の使用は、この用語の従来の意味に加えて、バリアまたは平面的な分離箇所を意味することを意図している。「壁の厚さ(wall thickness)」という用語は、ブロックセグメント全体の厚さを意味することを意図している。「CMU」という用語の使用は、従来のコンクリート壁構築に使用されているコンクリートブロックを意味することを意図している。本特許で言及されている組成百分率は、すべて重量パーセント(%)である。木質繊維は、松、モミ、竹などの樹木からのものであり、一年生植物ではないことが理解されている。本特許で言及されている木質繊維は、パルプ工場の廃水から回収されたものであり、炭酸カルシウムなどの付着した汚染物質を含んでいる場合がある。「隙間ばめ」とは、スナップフィットやプレスフィットなどの締まりばめのように、どちらかのパーツを変形させる必要なく、組立体を作成するピースやパーツの間に隙間がある場合を意味することを意図している。
【0023】
本発明は、コンクリートブロック(CMU)を使用して構築されるものと同様の壁を構築することに関連する労働コストを低減するための方法論を提供することを意図している。本設計は、水平方向、垂直方向、直交方向にかみ合い、モルタルを必要とせず、自己整列するマルチセグメント建築ブロックに関する。
【0024】
その好ましい実施形態によるブロックの寸法は、約150mm、200mmまたは300mmの厚さの壁を構築するために一般的に使用されている市販のCMU(
図1)の寸法に類似していることが提案されている。寸法はここに挙げたものに限定されず、製造可能なものであれば何でも構わない。
図1は、ブロックの端部(101)とブロックの露出面(102)を備えた典型的なCMUの向きを示している。
【0025】
本発明におけるブロックは、各ブロックセグメントの長さ(202)に等しい各セグメントの幅または厚さ(201)でセグメント化されている。また、ブロックの長さ(203)はセグメントの長さの偶数倍である。
図2は、3つのセグメントを持つブロックを示している。ブロックとセグメントの露出した高さ(204)は、通常、セグメントの長さと幅と同じであるが、任意の高さであってもよい。
【0026】
各セグメントには、雄リップ(205)、(301)、雌インセット(401)があり、これらは各セグメントの外周に渡っており、各ブロックの雌インセットに嵌合する雄リップと隙間ばめにおいて垂直方向にかみ合っている。
図4では、リップとインセットが各セグメントの全周に渡っているように示されているが、これは必須ではなく、特定の用途の構造要件に依存している。
【0027】
ブロックをかみ合わせたときに(複数の)孔が水平に並ぶように、各セグメントは、リップ部とインセット部に水平方向に配置された孔(206)を備えていてもよい。これらの孔は、必要に応じて垂直方向および水平方向の追加補強を行うための鉄筋、ボルト、リベット、ピンを収容することが意図されている。2つのブロックに隣接する各孔は、隣接する2つのブロックのみを強固に結合するためのボルト、リベット、その他の締結装置を備えていてもよい。孔は、壁に沿って諸設備を供給するための配線、コンジット、パイプの通路としても使用してもよい。さらに、ブロックは、必要に応じて機械的な補強のために、または諸設備のための通路として使用できる垂直通路(207)を備えていてもよい。各セグメントは中空であり、その下のセグメントと並んでいることにより、壁の上部から下部にかけて、開放された通路が作成されている。この通路は、用途の構造要件に応じて、コンクリート、鉄筋、あるいはその他の補強材で充填したり、発泡スチロール、籾殻、セルロース、土、石などの緩い断熱材で充填してもよい。ブロックシェルの厚さ(301)は、用途の機械的要件に応じて金型で変化させてもよく、通常は25mm未満である。
【0028】
このブロックは、構造的な統合性のためのモルタルやシーリング材、接着剤を必要としないが、構造的な補強や耐候性を高めるために、必要に応じて設置の過程でブロック間に使用してもよい。
図3は、シーリング材や接着剤、Oリングやガスケットを入れるための溝(302)、(303)がある個々のセグメントの上部を示している。
図4は、個々のセグメント上の対応する雌インセット(401)を示している。
【0029】
図5は、雄リップ(501)および雌インセット(502)を有する組み立てられたブロックのインターロッキングの細部、ならびに補強または通過のために水平方向に配置された孔(503)の位置を示している。
【0030】
図6は、オフセットセグメントを有する2つのインターロッキングブロックを示している。ブロックはセグメントをオフセット(補正)せずに設置することができるが、他方でオフセット(補正)することにより、(特にせん断時の)追加の構造的な統合
性が得られるとともに、壁部の自動位置合わせが可能となる。
【0031】
図7は、角部を生成するために、直交方向に配置された2つのインターブロッキングブロックを示している。
【0032】
ブロックには複数のセグメントがあるため、壁部を完成させ、最後までブロックを垂直に並べるためには、個々のセグメントが必要になる場合がある。この目的のために個々のブロックを製造してもよいし、あるいは、マルチセグメントのブロックをセグメント間で切断して単一セグメントのブロックを作成してもよい。
図8は、単一セグメントブロックを利用した壁部(801)を示している。
【0033】
図9は、窓や扉の開口部が所望される壁を完成させるために使用できる、垂直な突起部(901)を有する端面を備えたブロックの1つのバージョンを示している。この突起部は、締結ガイドを提供することによって、窓または扉の設置を支援するために使用することができる。さらに、(901)に類似する突起部を有する特別なブロックを作成してもよく、窓や扉が設置される場所である、ブロックの露出した上部または下部に配置してもよい。また、シールされた上面または下面を有する特殊なブロックは、壁の下部から開始し、あるいは壁の上部を終了させるが、上下の対応するブロックとの接続を可能にするために、対応するインターロックリップまたはインセットを備えるように製作してもよい。
【0034】
また、ブロックは、必要に応じて、水道設備や配線取出口のためのポートを備えていてもよいが、これは、各セグメントの中空の性質によってもたらされるアクセス可能性のために、ブロックの内側から構成されていてもよい。
【0035】
図10は、水の侵入から壁を密閉するのに有効であることを所望できる任意の面取りした面(1001)を有するブロックの露出面を示している。
【0036】
CMUと競り合うために、ブロックは、コンクリートと同等以上の強度の低コスト材料で作成し、低い熱膨張係数を有する必要がある。ブロックは、圧縮成形、ブロー成形、ロト成形、射出成形で作成され、必要に応じて穴あけ加工や外装成形ドラフトの排除など、何らかの二次成形の作業を伴ってもよい。
【0037】
本発明では、いかなる成形可能な材料を使用してもよいが、おそらく単位コストあたりの機械的特性が最も優れているのは、天然繊維強化熱可塑性複合材であろう。理想的な材料は、天然繊維や合成繊維(ジュート、木、亜麻、ケナフ、綿、麻、竹、セルロース、ラミー、バナナなど)と熱可塑性プラスチック(ポリオレフィン、ナイロン、PVC、ポリエステル、PLAなど)の複合材で成形される。理想的な天然繊維熱可塑性複合材は、60MPaを超える圧縮強度と0.0002/℃未満の線熱膨張係数(CLTE)を有する。一般的なコンクリートブロック材の圧縮強度(約14MPa)の4倍以上の圧縮強度により、これらの天然繊維熱可塑性複合材は、クリープが問題にならなければ、一般的なコンクリートブロックの1/4のシェル厚で、圧縮強度に基づいてブロックの設計が可能になる。
【0038】
天然繊維複合材の配合組成には、顔料(鉄、その他の 金属酸化物、亜鉛フェライト、カーボンブラック、二酸化チタンなど)、紫外線安定剤(HALS、二酸化チタン、カーボンブラック、ニッケルクエンチャー、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール)、酸化防止剤(ヒンダードフェノール、亜りん酸塩、チオエステル、熱安定剤;(有機リン酸塩、ヒンダードフェノール)、殺菌剤(ホウ酸亜鉛、Microban(商標))、カップリング剤(マレート化ポリオレフィン、マレイン酸グラフト型スチレン-エチレン-ブタジエン、シラン)、難燃剤(水酸化マグネシウム、アルミナ三水和物、ホウ酸塩)などの添加剤を含んでいても良い。ブロックの露出部がコーティングされていたり、光や火にさらされない場合は、紫外線安定剤、顔料、難燃剤は不要である。
【0039】
また、用途の要求に応じて、ブロックは、ポリオレフィン、ナイロン、PVC、ポリエステルなどのリサイクルプラスチック、及びこれらの混合物から作成することができる。異なる種類のプラスチックの混合物と共に、シランやマレイン酸グラフトポリマーなどの適切なカップリング剤や相溶化剤、または混合物中の異なるポリマーと相溶性のあるセグメントを含む適切なブロック共重合体を使用してもよい。スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン・トリブロック共重合体(SEBS)は、ポリマーブレンドの特性を向上させることができる相溶化剤を使用してもよい。また、タルク、炭酸カルシウム、粘土、マイカ、カーボン、これらの鉱物のナノ粒子、籾殻、亜麻繊維、木材のおがくず、バガス、麻やケナフの芯など、天然粒子、合成粒子、採掘された粒子を繊維の代わりに使用してもよい。また、マットレスや家具、カーペットから回収した天然繊維や合成繊維のリサイクル品も使用される。
【0040】
繊維ではなく再利用プラスチックと充填材を使用した、より典型的な天然繊維熱可塑性複合材は、線熱膨張係数が0.0003/℃未満、圧縮強度が40MPaを超えており、多くのブロック用途に適している。
【0041】
場合によっては、ガラス、ケブラー、バサルトなどの合成繊維は費用対効果があり、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂などの触媒付き熱硬化性樹脂を使用することも費用対効果がある。
【0042】
クリープが問題となる場合は、熱可塑性プラスチックを架橋して、特に持続的な負荷と高温の下での動きを防止することが望ましい場合がある。高密度ポリエチレンは特に架橋に適しており、金型内の複合材の温度が架橋を開始するのに十分な高さであれば、金型内で完成させることができる。多くの架橋剤が存在するが、高密度ポリエチレン(HDPE)では、tert-ブチル-クミルペルオキシド(BCUP)がポリエチレンの重量の2%の組成で一般的に使用される。ポリプロピレンやその他の熱可塑性プラスチックは、熱可塑性天然繊維複合ブロックの成形にも適している場合がある特有の架橋剤を含んでいる。
【0043】
これまで具体的な実施形態を示し、説明してきたが、多くのバリエーションが可能である。時間の経過とともに、追加の特徴を採用してもよい。プラットフォームの特定の形状または構成、あるいは内部構成は、それが使用されるシステムまたは機器に合わせて変更してもよい。
【0044】
本発明を詳細に説明してきたが、当業者であれば、本発明の精神を逸脱することなく、本発明に修正を加えることができることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲が、図示および説明された特定の実施形態に限定されることは意図していない。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって決定されることを意図している。
【0045】
本開示の要旨は、読み手が技術開示の性質を迅速に確認できるように提供されている。これは、特許請求の範囲または意味を解釈または制限するために使用されないことを理解した上で提出されている。さらに、前述の詳細な説明では、開示を合理化する目的で、様々な特徴が様々な実施形態でグループ化されていることが理解できる。このような開示方法は、請求項に記載された実施形態が、各請求項に明示的に記載されている以上の特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求項が反映するように、発明の主題は、開示された単一の実施形態のすべての特徴よりも少ないところにある。したがって、以下の請求項はここでは、各請求項が別個に特許請求された主題として独立している状態で、詳細な説明に組み込まれる。
【0046】
先行技術の欠点に鑑みて、以下の要約は、本発明に特有の斬新な特徴のいくつかの理解を容易にするために提供されるものであり、完全な説明であることを意図したものではない。本発明の様々な態様の完全な理解は、明細書、特許請求の範囲、図面、要約書の全体を理解することによって得ることができる。
【0047】
本発明の主な好ましい目的は、コンクリートブロック(CMU)に類似した、新規かつ改良された形態の建築ブロックを提供することである。
【0048】
本発明の主な目的は、耐久性のある低コストの壁構築に世界中で使用することができる改良された方法論を有することにより、改良を提起する改善策を提供することである。
【0049】
本発明の目的はさらに、ブロック壁の構築に関連する労働コストを最小化する方法論を提供することである。
【0050】
さらに、本発明の目的は、水平方向、垂直方向、直交方向にかみ合い、モルタルを必要とせず、自己整列するマルチセグメント建築ブロックの設計を提供することである。
【0051】
さらに、本発明の主な目的は、少量の組込みエネルギーを有するリサイクルプラスチックと、現地生産された天然繊維や農業廃棄物を使用することにより、環境にやさしい解決手段を提供することである。
【0052】
さらに、本発明の目的は、使いやすく、専門的な訓練を必要としない解決手段を提供することである。
【0053】
さらに、本発明の目的は、設置に費用対効果があり、建設の寿命にわたって費用対効果がある解決手段を提供することである。
【0054】
このように、コンクリートブロック(CMU)が一般的に使用される用途において、効果的な建築ブロックのための新規かつ改良された解決手段を提供することが目的である。本発明の他の態様、利点および新規な特徴は、添付の図面と併せて考慮したときに、本発明の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0055】
本概要は、本明細書に記載されている主題のいくつかの態様の基本的な理解をもたらすように、いくつかの例示的な実施形態を要約する目的でのみ提供されているに過ぎない。したがって、上述の特徴は単なる例示であり、本明細書に記載された主題の範囲または精神をいかなる方法でも狭めるように解釈されるべきではないことが理解されるであろう。本明細書に記載された主題の他の特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明、図、および請求項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1は、本発明の例示的な実施形態による典型的なCMUの外観を開示している。
【0057】
図2は、本発明の例示的な実施形態による単一のマルチセグメントのブロックを開示している。
【0058】
図3は、本発明の例示的な実施形態による、セグメントの外周にインターロック用雄リップを有する単一ブロックセグメントを開示している。
【0059】
図4は、本発明の例示的な実施形態による、セグメントの外周にインターロック用雌インセットを有する単一ブロックセグメントを開示している。
【0060】
図5は、本発明の例示的な実施形態による、組み立てられた壁のセグメントにおけるインターロック用雄リップおよび雌インセットの細部を開示している。
【0061】
図6は、本発明の例示的な実施形態による、2つのオフセットされたインターロッキング3セグメントブロックを開示している。
【0062】
図7は、本発明の例示的な実施形態による、角部を形成する2つの直交するインターロッキング3セグメントブロックを開示している。
【0063】
図8は、本発明の例示的な実施形態による、壁を終了させるための単一セグメントブロックを備えた2つのオフセットされたインターロッキング3セグメントブロックを開示している。
【0064】
図9は、本発明の例示的な実施形態による、窓または扉を位置決めするための端面上の突起部を有する単一セグメントブロックを開示している。
【0065】
図10は、本発明の例示的な実施形態による、ブロックの露出面上の面取りした面を開示している。
【0066】
下記は、本願の出願当初に記載の発明である。
<請求項1>
各セグメントの長さがセグメントの幅と等しく、隙間ばめを有し、各セグメントの外周に配置されたリップ及びインセットにより、水平方向、垂直方向、直交方向にかみ合うことが可能なブロックにより、壁を組み立てることが可能となる、セグメント化されたプラスチック複合建築ブロック。
<請求項2>
各ブロックは、2以上の隣接する等間隔セグメントを有する、請求項1に記載の建築ブロック。
<請求項3>
各セグメントは、前記ブロックの露出面を超えて延長し、その上側または下側のブロックセグメント上の雌インセットに嵌合する雄リップを有する、請求項2に記載の建築ブロック。
<請求項4>
各セグメントは、鉄筋等の補強材を挿入するために、上側及び下側のインターロッキングブロック内の垂直方向の溝に沿って垂直方向に配置された溝を有する、請求項2に記載の建築ブロック。
<請求項5>
前記セグメントの合わせ面と、前記ブロックの端部は、シーリング用Оリング、ガスケット、シーリング材、接着剤を挿入するための溝を有する、請求項2に記載の建築ブロック。
<請求項6>
一端は、窓または扉組立体を取り付けるための垂直方向に配置された矩形状突起部を有する、請求項2に記載の建築ブロック。
<請求項7>
各セグメントは、前記ブロックの面より短いインセット及びリップを有する、請求項3に記載の建築ブロック。
<請求項8>
各セグメントは、雄及び雌のインターロック部分に、コンジット、配線、パイプ、ボルト、締め具、鉄筋、その他の補強材の通過を可能にするための水平方向に整列する孔を有する、請求項3に記載の建築ブロック。
<請求項9>
前記ブロックを成形するのに使用される材料は、20~70%の天然繊維、最大約5%のカップリング剤、最大約10%の顔料、最大約10%の難燃剤、最大約1%の酸化防止剤、最大約1%の紫外線安定剤、最大約1%の熱安定剤、最大約5%の殺菌剤、最大約70%の熱可塑性プラスチックを含む熱可塑性複合材から構成される、請求項1に記載の建築ブロック。
<請求項11>
前記複合材は、線熱膨張係数が0.0003/°C未満であり、圧縮強度が40MPaを超える、請求項9に記載の建築ブロック。
<請求項12>
前記複合材は、線熱膨張係数が0.0002/°C未満であり、圧縮強度が60MPaを超える、請求項9に記載の建築ブロック。
<請求項13>
前記複合材に使用される前記熱可塑性プラスチックが、成形工程で架橋されたポリエチレンから構成される、請求項9に記載の建築ブロック。
<請求項14>
前記複合材に使用される前記天然繊維は、麻などの一年生植物由来の繊維から構成される、請求項9記載の建築ブロック。
<請求項15>
前記複合材に使用される前記天然繊維は、木質繊維から構成される、請求項9に記載の建築ブロック。
<請求項16>
ブロックの成形に使用される材料が、30~70%の天然繊維または充填材、最大約5%のカップリング剤、最大約10%の顔料、最大約10%の難燃剤、最大約1%の酸化防止剤、最大約1%の紫外線安定剤、最大約1%の熱安定剤、最大約5%の殺菌剤、最大約70%の熱可塑性プラスチックを含む熱可塑性複合材から構成される、従来のCMU設計の建築ブロック。
<請求項17>
前記複合材は、線熱膨張係数が0.0003/°C未満であり、圧縮強度が40MPaを超える、請求項16に記載の建築ブロック。
<請求項18>
前記複合材は、線熱膨張係数が0.0002/°C未満であり、圧縮強度が60MPaを超える、請求項16に記載の建築ブロック。
<請求項19>
前記複合材に使用される前記熱可塑性プラスチックが、成形工程で架橋されたポリエチレンから構成される、請求項16に記載の建築ブロック。
<請求項20>
前記複合材に使用される前記充填材は籾殻から構成される、請求項16に記載の建築ブロック。