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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】真空ベースの熱管理システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/427 20060101AFI20240126BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20240126BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
H01L23/46 A
G06F1/20 A
G06F1/20 C
F28D15/02 101K
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022076355
(22)【出願日】2022-05-03
(62)【分割の表示】P 2018534652の分割
【原出願日】2016-12-27
(65)【公開番号】P2022122869
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】62/272,290
(32)【優先日】2015-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518227935
【氏名又は名称】ズターコア エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パルネス,タル
(72)【発明者】
【氏名】イーデルソン,ナフション
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-349681(JP,A)
【文献】特開平05-029513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/427
G06F 1/20
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却剤を方向付けるように構成された閉ループ流体フローライン、冷却される実体、および少なくとも1つの制限機構を含む、冷却するためのシステムであって、
前記閉ループ流体フローラインは、少なくとも1つの冷却ゾーン、真空発生装置、および凝縮ゾーンを含み、
前記少なくとも1つの冷却ゾーンは、前記実体に隣接し、(i)前記実体からの伝導によって熱エネルギーを吸収するように、(ii)液相から気相へ前記冷却剤を蒸発するように構成され、それにより前記実体を冷却する、少なくとも1つの冷却ゾーンであり、および、
前記少なくとも1つの制限機構は、部分真空を適用することによって前記冷却剤の蒸発を介した熱の吸収、および前記閉ループ流体フローラインに沿って、高い圧力を有する、異なる位置における熱の放出を可能にする、前記閉ループ流体フローラインに沿って異なるゾーン間に圧力差を提供するように構成される、少なくとも1つの制限機構であって、
ここで、
前記少なくとも1つの制限機構は、前記冷却ゾーンの下流および前記凝縮ゾーンの上流に位置し、および、
前記少なくとも1つの制限機構は、前記少なくとも1つの制限機構に入る前記冷却剤の圧力が、前記少なくとも1つの制限機構から出る前記冷却剤の圧力よりも高くなるように、前記冷却剤の圧力を下げるように構成され、
前記真空発生装置は、前記少なくとも1つの冷却ゾーンにある前記冷却剤の蒸発温度を下げるために前記少なくとも1つの冷却ゾーンにおいて真空状態を維持するように構成され、
前記凝縮ゾーンは、前記少なくとも1つの冷却ゾーンの下流から間隔を空けて離れ、前記気相から前記液相へ前記冷却剤を凝縮するように構成され、凝縮の後に、前記冷却剤は前記少なくとも1つの冷却ゾーンへ方向付けられ
前記凝縮ゾーンにおける圧力は前記少なくとも1つの冷却ゾーンにおける圧力よりも高いことを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの制限機構は、開口部、一方向弁、および乱流を生成するように構成された可変断面を有する中空本体からなる群から選択される1つ以上の要素を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの制限機構は、流体の流れ経路を画定する本体を含み、前記本体は、前記流体の流れ経路に沿った前記冷却剤の曲線状の流れ特性を提供するように構成される、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの制限機構は、流体の流れ経路を画定する本体を含み、前記本体は、内壁から突出する1つ以上のフィンを含み、ここで前記1つ以上のフィンは、少なくとも一部の前記流体の流れ経路に沿った前記冷却剤における液体の乱流を提供するように構成される、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの冷却ゾーンは、前記実体と直接接触する少なくとも1つの冷却インターフェースを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの冷却インターフェースは、複数の冷却インターフェースである、ことを特徴とする請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記冷却剤は、前記実体に直接接触する、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記凝縮ゾーンは、周囲圧力を有する前記閉ループ流体フローラインの領域を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記凝縮ゾーンは、前記凝縮ゾーン中に周囲圧力より高い圧力を提供するように構成される凝縮器ユニットを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
(i)前記実体の温度をモニタリングするように、および、(ii)前記実体の前記温度を制御するために選択されたある圧力において、真空状態を適用するように前記真空発生装置に方向付けられるように構成される、制御ユニットをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記実体に取り付けられるよう構成される、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記実体は電子部品である、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記電子部品は、前記冷却剤に直接接触する、ことを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
冷却するための方法であって、前記方法は、
(a)請求項1に記載された閉ループ流体フローラインに冷却剤を提供する工程であって、前記閉ループ流体フローラインは、少なくとも1つの冷却ゾーン、真空発生装置ユニット、および凝縮ゾーンを含み、前記少なくとも1つの冷却ゾーンは冷却される実体に隣接する、工程、
(b)(i)前記実体からの伝導によって熱エネルギーを吸収し、(ii)液相から気相へ前記冷却剤を蒸発し、それにより前記実体を冷却する、前記少なくとも1つの冷却ゾーンを使用する工程、
(c)前記少なくとも1つの冷却ゾーンにある前記冷却剤の蒸発温度を下げるために前記少なくとも1つの冷却ゾーンにおいて真空状態を維持するための前記真空発生装置ユニットを使用する工程、および
(d)前記気相から前記液相へ前記冷却剤を凝縮するために、前記少なくとも1つの冷却ゾーンの下流から間隔を空けて離れる前記凝縮ゾーンを使用する工程であって、ここで凝縮の後に、前記冷却剤が前記少なくとも1つの冷却ゾーンへ方向付けられる、工程を含み、
少なくとも1つの制御機構は、前記冷却ゾーンの下流および前記凝縮ゾーンの上流に位置し、
前記少なくとも1つの制限機構は、前記少なくとも1つの制限機構に入る前記冷却剤の圧力が、前記少なくとも1つの制限機構から出る前記冷却剤の圧力よりも高くなるように、前記冷却剤の圧力を下げるように構成される、
方法。
【請求項15】
前記実体は、前記冷却剤に直接接触する、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記冷却剤は、前記凝縮ゾーンにおいて、凝縮されるために周囲圧力よりも高い圧力にさらされる、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記冷却剤は、前記凝縮ゾーンにおいて、凝縮されるために周囲圧力にさらされる、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記実体の温度をモニタリングする工程、および前記実体の前記温度を制御するために選択されたある圧力において、前記真空状態を適用する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱管理システム、より具体的には真空ベースの冷却システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス分野における主な問題の1つは、コンピューティング性能の増加に伴う熱発生の増加である。テレコミュニケーションキャビネット及びクラウドコンピューティングセンターに収容されるものなどの、マイクロプロセッサ及び増幅器をベースとするシステムの放熱を絶えず増大することに向けての動向は、エレクトロニクス産業にとって徐々に重大なものとなりつつある。故に、効果的な熱問題の解決策を見つけることは、システムコスト、商品化に要する時間、及び性能といった、市販の電子機器の開発と販売における成功と失敗の間に存在する3つの決定因子にとって大きな制約となってしまう。
【0003】
放熱の増加により引き起こされる問題は、システムの小型化、つまり、より迅速で、小さな、軽い、且つ安価な電子デバイスに対する市場需要の増加を満たすためのエレクトロニクス産業の主要な方法の1つに向けた産業界の動向により更に大きくされている。この小型化の結果により、熱流束が増加している。また、電子機器における不均一な熱流束の分布により、結果として半導体チップ表面全体にわたる平均の熱流束を5倍上回るピーク熱流束がもたらされかねない。そのような状態下では、高度な熱拡散と熱緩和の機構を半導体チップに統合することが不可欠である。加えて、電子システム全体又はその中の単に熱を発生させるコンポーネントを冷却するための様々な冷却システムが開発された。
【0004】
過去のヒートシンクの最適化(ヒートパイプの使用を含む)及びインターフェース材料の開発の分野における多大な努力の結果、シンクから大気へ、及びパッケージからシンクへの熱抵抗の著しい減少がもたらされた。しかし、これら2つの熱抵抗の減少は現在、材料の物理的且つ熱力学的な制限に近づき始めている。加えて、半導体パッケージの蓋及びインターフェース材料としてのAlSiC、CuW、及びダイヤモンドの使用など、先行技術の熱転写の方法は、増大していく放熱要件の扱いには不適切なものとなった。
【0005】
優れた冷却技術は、デバイス、デバイスクラスター、プリント配線板、サブアセンブリ、及びラックの水準で熱問題に対処しなければならず、それら全ては、相手先商標製造会社(OEM)製品内にある。何度も、この問題は、熱問題の解決策がOEMについて「後からの思いつき」であるという事実により更に複雑となる。新たな機器設計は最新のソフトウェアを利用、又は最も速く新しい半導体技術を実施するかもしれないが、熱管理構造は通常、新製品設計の「後期」に回される。設計された電子システムに関連する熱管理の問題は頻繁に、電子機器システムと並行して配置される二次的な冷却又は冷蔵システムの手段により解決される。実際は、幾つかの既知の技術に従い、CPUのファームウェアは、プロセッサがそのTDP(熱設計電力)に接近するのを防ぎ、それによりその性能を最大限の設計レベルよりも著しく下のレベルにまで制限するコードを、中に埋め込んだ状態で含んでいる。しかし、他の幾つかの技術において、CPUは、拡張周波数範囲(XFR)機能を利用し、これは、全体的に冷却がどれくらい優れているかに基づいて、チップを潜在的に可能な限り自動的にオーバークロックする。
【0006】
更に、輸送中に冷却される必要がある生きた臓器、組織、医薬品、又は他の実体、構成要素又は成分を運ぶための多くの技術が、開発されている。例えば、米国特許第6,673,594号は、灌流能力を持つ臓器輸送デバイスを記載している。しかし、大半のデバイスは、ドライアイスなどの冷却要素を使用するか、又は、大量の電気を消耗し且つ多くの空間を占める大規模の冷却手段を必要とする。加えて、標準のアクティブ熱管理システムは中に高圧環境を含み、これは、飛行中などに1気圧未満の大気圧で破裂する場合もある特殊なパイピング、コネクタ、及びシーリング材を必要とする。
【発明の概要】
【0007】
熱を発生させる電子システム(高機能電子システムなど)に使用するために、加えて、不安定な飛行によっても冷却状態下で保管且つ輸送される必要のある任意の物体の単純且つ効率の良い輸送のために、高性能の、コスト効率のよい、且つ信頼性のある熱管理システムが、当該技術分野で必要とされている。
【0008】
故に、周囲状態への依存性を低減させた、望ましくは低温のアクティブ冷却インターフェースを提供するために、様々な実体を冷却するための新しい方法を提供することが、当該技術分野で必要とされている。
【0009】
本開示は、実体を冷却するための新たな熱管理システムと方法に関する。前記システムは、システムを通る冷却剤の循環及び冷却インターフェースとの定期的な相互作用のための閉ループフローラインを含み、ここで冷却剤は、冷却インターフェース中にある間に液相と気相との間で移り変わる(例えば定期的又は連続的に)。故に、冷却剤は閉ループ中を流れ、必須の冷却インターフェースを持つ冷却ゾーンにおいて液体から気体への相変化を介して熱を吸収し、それにより冷却される実体から熱を吸収して、典型的には冷却剤の凝縮を介して熱を環境へと逃す。故に、冷却剤は潜熱の原理により熱を吸収する。この目的のために、アクティブ真空発生装置は、冷却ゾーンにおいて部分真空を適用し、需要によりそれを維持し、これにより冷却剤の沸点を下げるために、使用される。その後、冷却剤は、比較的低い温度で沸騰し、適用される低圧力に比例的に依存して、潜熱を介してその周囲から熱を吸収し、それにより冷却ゾーン、冷却剤、及びしたがって冷却インターフェースの温度を下げる。冷却される実体は、実体の温度を下げる又は維持するためにそれらとの熱交換を行う冷却インターフェースの付近にあるか、又はそれと直接接触した状態である。
【0010】
本発明の冷却システムは故に、(i)密封面に対する作用量の高い比率を得ること、(ii)金属パイプ、特殊なコネクタ、及びバルブなどの圧力保護手段の必要性を排除又は少なくとも著しく減らすこと、及び(iii)周囲状態に略依存することなく望ましい低さの温度までの冷却を得ること、を可能にする。
【0011】
故に、本発明の1つの広範な態様に従い、本発明は、実体を冷却するための熱管理システムを提供し、該熱管理システムは、(i)液相と気相との間を移り変わる間の冷却剤の流れのための閉ループ流体フローライン、(ii)前記フローライン内にあり且つ少なくとも1つの冷却インターフェースを含む少なくとも1つの冷却ゾーン、(iii)冷却ゾーンにおいて真空状態を作成且つ維持して、それにより冷却ゾーンにある前記冷却剤の蒸発温度を下げるために操作可能な真空発生装置ユニット、(iv)前記閉ループ経路に沿って冷却ゾーンから流れる冷却剤の方向に対して下流の冷却ゾーンから離れて間隔を空けた凝縮ゾーンであって、前記冷却剤が液相へと凝縮される、凝縮ゾーンを含む。
【0012】
以下の記載において、熱管理システムは時に冷却システムと呼ばれる。
【0013】
冷却システムの幾つかの実施形態において、真空発生装置の操作とフローラインの構成は、前記冷却インターフェースが潜熱を介して望ましい温度に冷却されることを可能にする冷却インターフェースにおける冷却剤の蒸発温度の低下、及び、前記凝縮ゾーンにおいて冷却剤蒸気の凝縮を提供する。
【0014】
冷却システムの特定の実施形態において、閉ループフローラインは、閉ループ経路に沿って異なるゾーン間に圧力差を提供し、それにより、部分真空の適用による冷却剤の蒸発を介した熱の吸収、及び、フローラインに沿ってより高い圧力を持つ異なる位置での熱の放出を可能にするように構成される。
【0015】
冷却システムの幾つかの実施形態において、フローラインは、開口部、一方向弁、及び前記閉ループフローラインの可変断面の少なくとも1つを含む、少なくとも1つの制限機構を含み、前記少なくとも1つの制限機構は異なるゾーン間に前記圧力差を提供する。
【0016】
冷却システムの特定の実施形態において、冷却インターフェースは冷却される前記実体と直接接触した状態にあり、それによりシステムは前記実体の直接接触液体冷却(DCLC)をもたらす。本出願の直接接触はまた、冷却される実体と直接接触した状態のメディエーター材料を含む冷却インターフェースの接触も考慮する。好ましくは、このようなメディエーターは高い熱伝導性を有している。
【0017】
冷却システムの幾つかの実施形態において、凝縮ゾーンは、周囲圧力に晒されたフローラインの領域により画定される。この具体的な実施形態において、冷却剤は、通常は大気圧温度において周囲圧力、即ち大気圧下で凝縮を受けることを特徴とするシステムにおいて利用される。
【0018】
冷却システムの幾つかの実施形態において、凝縮ゾーンは凝縮器ユニットにより画定され、それにより、凝縮器ユニットに周囲圧力よりも高い圧力をもたらす。
【0019】
冷却システムの特定の実施形態において、冷却インターフェースは、銅又はアルミニウムなどの高熱伝導性を備えた材料の組成物で作られている。
【0020】
冷却システムの特定の実施形態において、前記システムは、前記真空発生装置の操作の自動制御をもたらすように構成され且つそのように操作可能な制御ユニットを更に含む。
【0021】
特定の実施形態において、真空発生装置はダイヤフラム真空ポンプである。
【0022】
冷却システムの特定の実施形態において、システムは複数の冷却インターフェースを含む。
【0023】
冷却システムの特定の実施形態において、真空発生装置は外部電源に接続可能である。
【0024】
冷却システムの具体的な実施形態において、真空発生装置は、持ち運び可能なバッテリーで作動するように構成される。
【0025】
特定の実施形態において、冷却システムは、以下の構成要素:(a)冷却インターフェース内の真空状態の生成を補助するための開口部;(b)冷却ゾーンに戻される前に冷却された冷却剤が蓄積するリザーバー;(c)並行の冷却インターフェース間で冷却剤と真空を効率的に分割するためのスプリッター;(d)前記冷却剤が流れる冷却剤パイプであって、可撓性、及び、プラスチック、ゴム、シリコン、ポリウレタン、又は金属などの任意の望ましい材料で作られてもよい、冷却剤パイプ;(e)電源ワイヤー;(f)冷却インターフェース及び/又は周囲での温度を表示且つ制御するためのユーザーインターフェースであって、コンピュータースクリーン、タブレット又はスマートフォン、或いは冷却されるシステム又はコンテナに付けられるスクリーンといったスクリーンであり得る、ユーザーインターフェース;(g)実体の温度が予め定めた温度に達した時、又は環境の温度が予め定めた温度に上昇した時にのみ、前記冷却システムを自動的に起動することを可能にするために制御ユニットにデータを送信する場合がある、例えば熱電対といった温度センサー;(h)遠隔コンピューター又はスマートフォンへと温度などのデータを絶えず又は定期的に送信するための送信器;及び(i)プロセッサとメモリの少なくとも1つを更に含む。
【0026】
冷却システムの具体的な実施形態において、システムは持ち運び可能なユニットとして構成され、その場合には、システムのコンポーネントの残りは、例えば機内持込手荷物又はバックパックの中にあり、システムはバッテリーにより電力を供給され得る。代替的に、冷却デバイスは持ち運び可能ではなく、その場合には、システムのコンポーネントの残りは近くのコンステレーション(constellation)/デバイスの中にあり、主な送電網により電力を供給され得る。
【0027】
冷却システムの具体的な実施形態において、システムは冷却インターフェースの付近で自身の少なくとも一部を冷却するために被験体により着用可能となるように構成される。
【0028】
冷却システムの具体的な実施形態において、冷却される実体は以下から選択される:熱を発生させるCPU、GPU、又は他の電子部品;熱を発生させるコンピューター又は他の電子デバイス;人体臓器;医薬品;人体;及び輸送箱又は冷却器。
【0029】
冷却システムは、システム中に冷却剤及び/又は蒸気を流すのを補助するポンプ、加えて、冷却剤の濾過を可能にし、それによりシステムの詰まりを防ぐフィルター又は濾過サブシステムを更に含んでもよい。
【0030】
本発明の別の態様において、本発明は、上述の熱管理システムに関連する、冷却される実体を含むシステムを提供し、冷却される実体は、以下を含む:熱を発生させるCPU、GPU、又は他の電子部品;熱を発生させるコンピューター又は他の電子デバイス;医薬品;ヒトの臓器。
【0031】
冷却される実体(例えば電子部品)は、冷却剤と直接接触した状態でもよい。冷却剤は、電子部品と直接接触しながら液相から気相へと移り変わってもよい。例えば、本発明の技術は直接的なダイ(シリコン)の冷却のために使用することができ、そこでは、冷却インターフェースにスプレッダが無く、冷却剤は放熱実体と直接接触した状態で蒸発する。
この場合、冷却インターフェースは、放熱実体(即ち、冷却される実体)の少なくとも一部を含み、冷却インターフェースは真空発生装置により真空が適用される時に密封され、これにより、そのような実体と物理的に接触した状態である冷却剤は蒸発し、その熱を吸収する。
【0032】
本開示の別の態様は実体を冷却する方法を提供し、該方法は、閉ループフローラインに冷却剤を提供する工程;前記冷却剤の蒸発を誘発するためにその一部の上で、冷却ゾーンにおいて部分真空を制御可能に適用する工程;凝縮ゾーンを画定するために前記閉ループフローラインに沿って圧力分化する工程であって、それにより、蒸発した冷却剤が冷却ゾーンから圧力分化された前記凝縮ゾーンの下流を流れることを可能にし、凝縮ゾーンにおいて前記蒸発した冷却剤を液相に凝縮する、工程;及び前記凝縮した冷却液が前記冷却ゾーンへと流れて戻ることを可能にする工程を含む。
【0033】
実体を冷却する方法の特定の実施形態において、凝縮は、周囲圧力に蒸発した冷却剤を晒すことにより得られる。
【0034】
実体を冷却する方法の幾つかの具体的な実施形態において、凝縮は、周囲圧力よりも高い圧力に蒸発した冷却剤を凝縮することにより提供される。
【0035】
実体を冷却する方法の幾つかの実施形態において、圧力分化は、閉ループフローラインに沿って、開口部、一方向弁、或いは可変断面の少なくとも1つによりもたらされる。
【0036】
実体を冷却する方法の特定の実施形態において、前記方法は、冷却される前記実体の温度をモニタリングする工程、及び、制御可能に真空を適用する工程、例えば、望ましい温度範囲を得るために真空発生装置を起動且つ停止させる工程を更に含む。
【0037】
実体を冷却する方法の幾つかの実施形態において、冷却される実体は以下から選択される:電子部品;電子デバイス;冷却器;臓器;医薬品;及び被験体の身体。
【0038】
本発明はまた、液体の流量特性を制御するための冷却システムにおける使用のための液体フローラインを提供し、該液体フローラインは、液体フローラインの少なくとも一部にあるフロー制限デバイスを含み、該フロー制限デバイスは:本体の入口と出口との間で内部キャビティを介して液体の流れを可能にするように構成された中空本体であって、液体が通って流れる内部キャビティの予め定めた形状と幾何学的形状を持つ、中空本体、及び、液体の流れに影響を及ぼし且つ本体の内部において液体の乱流を得るために本体の内面から突出している少なくとも2つのフィンの配列を含み、内部キャビティの予め定めた形状と幾何学的形状、及び少なくとも2つのフィンの配列は、望ましいレベルの乱流と望ましい流量特性をもたらすように選択される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本明細書に開示される主題をより良く理解し、その主題が実際にどのようにして実行され得るのかを例証するために、実施形態はここで、添付の図面を参照するとともに非限定的な例のみによって記載される:
図1】本発明の冷却システムの基本的な機能部品のブロック図を示す。
図2】冷却システムのより詳細な構造を示す。
図3A】冷却システムのフローラインに使用される制限機構の様々な例を示す。図3Aは、開口部ベースの制限機構を例示する(図3Aは、冷却剤の流れを許容しない、作動状態にある制限機構を示す)。
図3B】冷却システムのフローラインに使用される制限機構の様々な例を示す。図3Bは、開口部ベースの制限機構を例示する(図3Bは、冷却剤の流れを可能にする、非作動状態にある制限機構を例示する)。
図3C】冷却システムのフローラインに使用される制限機構の様々な例を示す。図3Cは、フローラインの部分の内部キャビティの具体的な構成により形成された制限機構の例を示す。
図3D】冷却システムのフローラインに使用される制限機構の様々な例を示す。図3Dは、フローラインの部分の内部キャビティの具体的な構成により形成された制限機構の例を示す。
図4】1より多くの冷却ゾーンを持つ冷却システムの例のブロック図である。
図5A】本発明の冷却システムの3つのアプリケーションの非限定的な例である。図5Aは、コンピューターなどの電子デバイスを冷却するために冷却システムがどのように使用されるのかを示す。
図5B】本発明の冷却システムの3つのアプリケーションの非限定的な例である。図5Bは、持ち運び可能な冷却器として構成された冷却システムを示す。
図5C】本発明の冷却システムの3つのアプリケーションの非限定的な例である。図5Cは、人体の冷却のために構成された冷却システムを示す。
図6】冷却剤が電子部品と直接接触した状態となるように、底にセパレーターが無く、冷却される電子部品の少なくとも一部を密封そしてキャッピングするように機能する、コンテナの形態にある冷却ゾーンの非限定的な例の、長手方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
これは、本発明の熱管理システム、具体的には実体を冷却するための真空ベースの閉ループ冷却システムのより詳細な例を説明するものである。
【0041】
図1を参照すると、ブロック図により、フローライン(102)を冷却剤(coolant or cooling agent)で部分的又は完全に満たした冷却システム(100)が示される。フローライン(102)は、液体と気体(例えば、液相及び気相での冷却剤)が閉ループ経路に沿って流れることを可能にするための、任意の既知の適切な要素/構造により形成されてもよい。そのようなフローラインは、パイプ、又は当該技術分野で既知の他の中空キャビティにより形成されてもよい。システム(100)は、冷却剤が液相にある間に前記冷却領域に入り、前記領域を出て(emerges)、凝縮ゾーン/領域(110)の方へと気相状態で下流に流れるように配置される、フローラインの領域に冷却ゾーン(104)を含む。
【0042】
冷却ゾーンは、チャンバの形態(即ち、キャビティを持つ物理要素)、又は、中を通る冷却剤の流れを可能にするフローラインの領域の形態(例えばパイプ)でもよい。冷却ゾーン(104)は、1つ以上の冷却インターフェースを画定し/それを有しており、そのような1つの冷却インターフェース(106)がこの概略図において示され、それにより冷却ゾーンは冷却される実体に面している。幾つかの実施形態において、冷却ゾーンの構造上の境界の1つ以上は、冷却インターフェース(106)として機能する場合があり、その結果、冷却される実体と直接又は間接的に熱接触した状態となる。冷却ゾーンは、真空発生装置(108)が冷却ゾーン(104)において真空状態を生成し、且つそれを維持/制御することを可能にする方法で、真空発生装置(108)に接続される。
【0043】
本明細書で使用される用語「真空発生装置」は、アクティブな効果を介して真空を生成/誘導するデバイス、例えば真空ポンプを指すと、理解されたい。真空ポンプの具体的ではあるが限定されない例はダイヤフラム真空ポンプである。これは、ダイヤフラムが中での液体の浸透に対する耐性が必要となるためである。本明細書で使用されるような用語「真空状態」は、周囲環境よりも低い、通常は1気圧未満の圧力を指す。圧力はまた、0.9気圧未満、0.8気圧未満、0.7気圧未満、0.6気圧未満、0.5気圧未満、0.4気圧未満、0.3気圧未満、0.2気圧未満、又は0.1気圧未満でもよい。
【0044】
冷却剤はシステム中に散布され、液相又は気相状態にあってもよい。冷却剤は、液相状態で冷却ゾーン(104)に入り、その一方で冷却ゾーンにおいて真空状態に晒されている。前記状態において、液体冷却剤は、比較的低い温度、即ち、大気圧下での前記冷却剤の沸点よりも低い温度で沸騰する。従って、冷却剤は、冷却ゾーン(104)にて熱を吸収、即ち、冷却ゾーン(104)の冷却インターフェース(106)にて実体から熱を吸収しつつ、気相状態へと移る(冷却インターフェース(106)と直接接触した状態、又は前記インターフェースの付近にある状態の何れかである)。前述のように、冷却インターフェース(106)は、例えばチャンバの内壁の1つ以上又はフローラインの各領域のものといった、冷却ゾーンの境界の少なくとも1つにより画定される。
【0045】
冷却剤は、比較的低い圧力、例えば1気圧未満(約0気圧から約1気圧;約0気圧から約0.8気圧;約0気圧から約0.5気圧;約0気圧から約0.3気圧;又は約0.3気圧)で、そして例えば40℃を超えない(1気圧の圧力での)比較的低い温度(約0℃から約30℃;約0℃から約20℃;約0℃から約10℃;約5℃から約25℃;約10℃から約25℃;約15℃から約25℃;又は約5℃から約20℃)で蒸発するように選択される。そのような特徴得御持つ適切な冷却剤の例は、Novec 7000又はC5F12であるが、本発明は特定の冷却剤に限定されないことを理解されたい。
【0046】
本出願の全体にわたり使用される用語「約」は、この用語の次に書かれる値が、書かれた値よりも最大10%上及び下である値を含む範囲にあると考慮されるべきことを意味している。
【0047】
本出願の全体にわたり使用される用語「冷却インターフェース」は、冷却される実体から熱を吸収する任意の要素/表面を指す。冷却される実体は例えば、電子部品、人体、部屋又は閉じられたコンテナ内の空気などでもよい。そのような冷却インターフェース(要素/表面)は、そのような実体と直接接触した状態、或いは、例えば冷却パイプなどのインターフェース、メディエーター、或いは他の熱を伝達させる方法を介して間接的に接触した状態でもよい。パイプアセンブリとしてフローラインを考慮すると、冷却インターフェースは、冷却ゾーン内のパイプの部分/領域上の熱吸収体のコーティングにより構成されてもよい。
【0048】
気相状態の沸騰した冷却剤は、フローライン(102)の下流に、凝縮ゾーン(110)の方へと流れており、これは、冷却ゾーンのものと比較した前記ゾーンの圧力差により画定され:凝縮ゾーンの圧力は冷却ゾーンの圧力よりも高い。凝縮ゾーン(110)は受動的でもよく、これは、凝縮ゾーン(110)が冷却ゾーン(104)よりも高い圧力下にある限り、凝縮ゾーン(110)が大気圧状態、即ち周囲圧力下、或いはそれよりも低い圧力下にあることを意味している。
【0049】
本出願の全体にわたる用語「周囲圧力」は、システムの外部の圧力(典型的に大気圧)、通常は約1気圧を指す。
【0050】
冷却ゾーン中の真空状態と凝縮ゾーンの圧力との間の圧力差は、既知の適切なフロー制限機構によって得られてもよい。これは、様々な領域においてフローライン(102)の断面の変形を用いて、或いは、開口部や一方向弁などの追加の要素を用いて達成することが可能である。
【0051】
凝縮ゾーン(110)は能動的、即ち、凝縮装置により達成された加圧ゾーンでもよい。
【0052】
冷却剤は、凝縮ゾーン(110)内で液相状態へと凝縮され、周囲へと、又は熱交換器(例えばPlates Heat Exchanger)を通じて以前に吸収した熱を放出する。凝縮ゾーンは、比較的高い熱伝導度となり、それにより吸収した熱を効率的に放出するように構成されてもよい。凝縮ゾーン(110)での熱交換の速度を上げるために、ファン又は他の冷却アセンブリが、凝縮ゾーン(110)の付近から凝縮ゾーン(110)中に放出されている熱を取り除く、即ち、加熱空気を取り除くために適用されてもよい。そのような冷却アセンブリは、冷却システム(100)の一部であってもよく、及び例えば、凝縮ゾーン(110)の中又はその付近でフローラインに固定することができ、或いは、それに取り外し自在に付けられてもよい。その後、冷却剤は更に流れて、及び幾つかの実施形態においては、新たなサイクルを始めるために冷却ゾーン(104)へと戻る前に、図2に例証されるようにリザーバー(111)の中に随意に保管され得る。
【0053】
冷却システム(100)のより詳細な実施形態は図2で例証する。理解を促進するために、同じ参照符号は、全ての例において共通の構成要素を識別するために使用される。故に、この例において、冷却システム(100)は、中に冷却剤を流しつつ、その液相と気相との間の推移を可能にするための閉ループフローライン;及び、フローラインに沿って間隔を空けた関係で配置される冷却ゾーン(104)と凝縮ゾーン(110);及び冷却ゾーン(104)に関連付けた真空発生装置(108)を含む。
【0054】
この非限定的な例における冷却インターフェース(106)は、冷却される実体(112)と直接接触した状態である。冷却の必要がある実体は、限定されない例では、CPU、GPU、被験体(ヒト)の身体、人体臓器、組織、及び様々な医薬品から選択される。実体(112)は、冷却剤と直接接触していてもよく、それにより冷却剤は実体の上で蒸発し、即ち、冷却剤は、冷却されている実体(112)と直接接触している間に液体から気体へと相を変化させる。具体的な実施形態において、冷却液と直接接触している実体(112)は、CPU又はシリコンチップなどの電子部品である。
【0055】
これは図6で例証されており、図6は密封容器(602)の内部により画定される冷却ゾーン(604)を示す。コンテナ(602)は、壁(614)を有し、そして、冷却ゾーン(604)への冷却液の進入、及び冷却ゾーン(604)からの冷却剤蒸気の退出を可能にするために、密封容器(602)の内部の冷却ゾーン(604)と流体連結された液体入口(603)と気体出口(606)とを有している。密封容器(602)は、基板(610)上にあるシリコンダイなどの、冷却の必要がある電子部品(608)の一部のための密封キャップ又は密封カバーとして機能する。コンテナ(602)は、基板(610)と密封容器の壁(614)との間の接触領域内に密封要素(612)を設け、それにより、密封容器(602)の内部領域の中、即ち冷却ゾーン中での真空又は部分真空の生成が可能となる。液体入口(604)を通って密封容器(602)(冷却ゾーン(604))に導入される冷却剤(616)は、電子部品と直接接触し、冷却剤が蒸発して気体出口(606)を介して密封容器を出るまで、電子部品の熱を吸収する。本発明の原理は、非常に小さなユニットにおける、及び比較的低い作動圧力を用いた、冷却システムの実装を可能にし、これによりシステムがオンシリコンクーラー(通常は、オンチップクーラー)として使用されることが可能になることに留意されたい。
【0056】
ここで図2に戻ると、実体(112)の温度及び/又は冷却インターフェース(106)の温度は、熱電対などの温度センサー(114)により測定/モニタリングされ得る。
熱電対(114)は、制御ユニット(116)に(周知の方法で有線又は無線の信号伝達を介して)接続される。後者は、システムの一部であるか、或いは外部デバイス(コンピューター)である場合があり、この場合システム(100)は、遠隔制御ユニットにデータ(例えば温度状態)を送信するのに適切な送信器を持つ。
【0057】
制御ユニット(116)は典型的に、特にメモリ(120)、ユーザーインターフェース(122)、データ処理装置(118)、加えてデータインプット及びアウトプットユーティリティを含むコンピューター/電子装置である。幾つかの実施形態において、制御ユニット(116)はまた、実体(112)及び/又は環境状態の望ましい温度を達成且つ維持するために、真空発生装置(108)の操作を起動且つ停止するように構成され、且つそのように操作可能な真空制御装置(119)を含んでもよい。この目的のために、(上述のような)冷却インターフェースの付近における温度状態はモニタリングされ、このデータは真空制御装置(119)を操作するためのプロセッサにより使用される。故に、真空発生装置の操作は、望ましい温度範囲に実体(112)を維持するために、熱電対(114)又は他のセンサーにより提供されるデータに従って管理される場合がある。本発明の冷却システムにより得られ得る温度範囲は、約-20℃から約40℃、例えば、-20℃から約30℃、-20℃から約25℃、約-15℃から約20℃、約-10℃から約20℃、約-5℃から約20℃、約0℃から約20℃、約0℃から約15℃、約-5℃から約15℃、約-5℃から約10℃、約-5℃から約5℃、又は40℃から50℃などのより高い温度に、変動する場合がある。
【0058】
真空発生装置(108)の操作は、以下にも記載されるような、作業負荷を増やす及び/又は追加の並行する冷却インターフェースを起動する、付随するコマンドの下にあってもよい。あまり効率は良くないが、真空発生装置が停止されるタイムスロット中に冷却システム(100)は機能し且つ冷却を行うことを、言及すべきである。電源(124)は制御ユニット(116)に電力を供給している。システムへの電力は、外部電源により、即ち主要な送電網に直接接続されることにより、或いは、バッテリー、即ち持ち運び可能な電源の使用により供給されてもよい。制御ユニット(116)の電源(124)はまた、真空発生装置(108)の電源として機能し、或いは、真空発生装置が自身の電力供給に関連付けられる場合もある(本明細書には示さない)。
【0059】
冷却システム(100)は、フローライン(102)の異なるゾーンに沿って圧力分化される。言いかえれば、機能的に異なるゾーン(冷却ゾーンと凝縮ゾーン)は、フローラインに沿って異なる圧力の領域により画定される。圧力分化は、フロー制限ゾーン及び/又はフローラインの内部キャビティの曲線状の幾何学的形状をもたらす閉ループフローラインに沿った可変断面など、閉ループフローライン(又は少なくともその一部)の幾何学的形状/形状により画定される、フロー制限機構により得られる場合があり;又は、制限要素(物理的要素)の提供により得られる場合もある。
【0060】
制限要素は例えば、一方向弁、開口部、又は乱流を生成するように構成された可変断面を持つ中空本体であり得る。この具体的な非限定的な例において、制限機構は、冷却ゾーン(104)の下流及び凝縮ゾーン(110)の上流にあるバルブの形で制限要素(126)により構築され、この経路に沿ってあらゆる場所に位置付けられ得る。他の幾つかの実施形態において、補足の制限要素(126)が、圧力分化を得るために、又は冷却剤のフロー制御など他の目的のために、フローラインに沿って位置付けられ得る。この例において、このような補足の要素(128)(例えば開口部)は、凝縮ゾーンと冷却ゾーンとの圧力差を維持し、且つ冷却剤の流れを制御するために、冷却ゾーン(104)の上流及び凝縮ゾーン(110)の下流にあるように凝縮ゾーンと冷却ゾーンとの間にある。
【0061】
このような制限機構/アセンブリ(128)の例は、図3A-3Dで具体的に例証される。制限アセンブリの第1の可能な例は、図3A-3Bに例証される。制限アセンブリ(128)は、支持ユニット(129)と密封要素(132)とを含み、密封要素(132)は、冷却剤が冷却ゾーンの方に流れるのを制限するユニット(129)の入口(134)にある作動的抽出位置(operative extracted position)と、冷却剤が冷却ゾーンに流れるのに影響しない非作動的/退縮位置(inoperative/retracted position)との間で置き換え可能である。この目的のために、アセンブリ(128)はばね(130)を含み、その一端が支持ユニット(129)に固定され、且つ対向端が密封要素(132)に付けられている。図3Aに提示されるように、緩んだ状態のばね(130)は、入口(134)に締め付けられる密封要素(132)を維持して、冷却ゾーン(104)への冷却剤の流れを可能にしない。冷却ゾーン(104)とフローライン(102)の上流経路との間の圧力差が予め定めた値に達した時、図3Bに提示されるように、ばねは縮み始め、それにより冷却剤がユニット(129)の入口(134)と出口(136)を通って冷却ゾーン(104)へと流れることを可能にする。冷却ゾーン(104)に形成される蒸発した冷却剤は更に、前述のように凝縮ゾーン(110)に到着するように下流を流れている(図示せず)。
【0062】
制限アセンブリの第2の非限定的な例は、図3C-3Dに例証される。この具体的な例の制限アセンブリは本体(150)を含み、その内部は、本体の入口(151)と出口(153)との間の曲線状チャネル/流れ経路を画定するように構成される。この具体的な例において、これは、本体の内面/内壁から各々が突出している複数のフィン(通常は少なくとも1つ)(152)を設けることで達成される。図に示されるように、制限アセンブリは、本体の少なくとも一部に沿って間隔を空けた関係で配置される一連のフィン(152)を含んでもよい。本体(150)は典型的に細長く、長方形や楕円形などの任意の適切な断面形状を持つことができる。フィン(152)は、本体の対向する内表面、例えば本体(150)の上面(156)と下面(158)から伸長し、入口(151)を通って本体に入り、その中を流れ、且つ出口(153)を通って出ていく液体(154)、例えば冷却剤のための「迷路」経路を形成し得る。そのような構成は、必要なレベルの乱気流(151)の乱流をもたらす略曲線状の流れ経路を生成し、故に、凝縮ゾーン(110)から出る冷却液の圧力に抵抗し、且つ、液体下流、即ち、望ましい流量特性に従って冷却ゾーン(104)(図示せず)への流れを遅くする、制限力を生成する。流量特性は、流れ経路の与えられた幾何学的形状に関して、フィン(152)の形状及び/又はサイズ、及び互いの相対的な配置によって調整することができ、これによって、様々な抵抗力を持つ乱気流(様々なレベルの乱気流)の様々な状態をもたらすことができる。フィンは、例えば図3Cに例証されるような三角形、又は図3Dに例証されるような長方形の断面形状であり得る。更に、図3C図4Cはフィン(152)の2つの配置を例証し、ここで、フィンはそれぞれ、互いに隣接して、及び互いに間隔を空けて配置される。液体(154)の流量特性は、凝縮ゾーン(110)と冷却ゾーン(104)との圧力差を制御可能に維持/設定することにより制御することもできる(例えば、必要であれば真空ポンプの操作、及び/又は凝縮装置の操作を制御する)。
【0063】
本発明がシステムの比較的低い作動圧力を利用するという事実により、システムは、本体(150)及びフィン(152)の材料組成物にとってはより可撓性であり、故にこれらは、プラスチック、ポリマー、シリコンなどの非剛性の材料で作ることができるが、より高い圧力又はより低級な維持に耐える金属などの剛性の材料でも作ることができる。
【0064】
冷却システム(100)の別の実施形態において、図4に例証されるように、システム(100)は、冷却インターフェース(106)を持つ複数の冷却ゾーン(通常は少なくとも2つ)(104)を含み、全てが共通の凝縮ゾーン(110)に関連付けられている。3つのそのような冷却ゾーン(104)が、この非限定的な例に示されている。しかし、本発明の原理は任意の数の冷却ゾーンに限定されないことを理解されたい。冷却液は、凝縮ゾーン(110)を通って流れた後、スプリッター(138)を通って更に流れ、スプリッター(138)は、適切な量の冷却剤を冷却ゾーン(104)に供給しつつ、冷却ゾーン(104)内の真空状態を維持するために冷却液を分割する。スプリッターは、冷却ゾーン(104)の一部のみに冷却剤を選択的に供給するように(制御ユニット(116)により)制御されてもよい。更に、スプリッターは、誤作動又は意図した停止(inactivation)による不活発な冷却ゾーン(104)の場合に、冷却システム(100)の持続性を維持する。
【0065】
下記は、様々な実体の冷却のために本発明の冷却システムをどのように使用することができるかに関する、幾つかの具体的ではあるが、非限定的な例である。
【0066】
図5Aは、コンピューター又はその中の熱を発生するコンポーネントを冷却するための上記の冷却システムの使用を示す。図5Aは、上に取り付けられる標準のベンチレータ(202)を備えたコンピューター(200)の裏面を示す。冷却システムは、冷却インターフェースがCPU又はGPUなどの熱を発生させるコンポーネント付近にある(それに密に接触している)ように、コンピューターの内部に部分的に取り付けられる(及びそれ故、図中では確認できない)。(上述の閉ループフローライン(102)を形成する)冷却剤パイプ(102A)と(102B)の2つの部分が示され、1つは冷却液をコンピューター内部の冷却インターフェースへと導き、もう1つは冷却蒸気を冷却インターフェースから、冷却システム(100)の外側部分を形成するコンピューター外部にある凝縮領域(110A)へと導く。パイプの可撓性は、任意の位置と配向での前記外側部分の位置決めを可能にし、それにより冷却システム(100)の無数のアセンブリ構成をコンピューターに提供する。
【0067】
図5Bに例示されるように、本発明の冷却システムは、中に保管される様々な実体を冷やすための冷却器(300)又は配達ボックスを冷却するために使用されてもよい。図5Bは、冷却器の外部セクションにある冷却システム(制御ユニット)のユーザーインターフェース(122)を示す。ユーザーインターフェースは典型的に、スクリーン(例えばLCDスクリーン)、及び、(例えば、冷却システムを起動/停止させる)冷却システムの操作のための操作ボタンを含み得る。この構成において、冷却システムのコンポーネントは全て、冷却インターフェースが冷却器の内部空間から熱を吸収し、それにより内部を冷やすように、冷却器内にある。その後、吸収した熱は、専用の通気孔(140)を介して逃される。
【0068】
図5Cに例示されるように、冷却システムは、例えばトレーニング又は手術中に体温を冷ますために使用されてもよい。図5Cは、冷却システム(100)が個人によって着用できるように持ち運び可能であることを示している。この目的のために、システムは電源としてバッテリーを使用する。図5Cに見られるように、冷却インターフェースは、専用のストラップによりユーザーの頭部の望ましい位置に保持され、ここで前記冷却インターフェースは、前記ストラップの内部に統合されるか、又は単に前記ストラップにより保持されてもよい。冷却インターフェースは、皮膚と直接接触するか、又は中間媒体を介して接触されてもよい。2本の冷却剤パイプが示されており、それぞれ、冷却液をユーザーの頭部の周囲にある冷却インターフェースヘと導き、及び、冷却蒸気を前記冷却インターフェースから、例えばユーザーにより運ばれるバックパックにある凝縮領域へと導く。冷却インターフェースは、額、胸部、腕、脚、及び/又は冷却される被験体の他の臓器に配されてもよいことに、注意されたい。パイプの可撓性は、ユーザーの頭部の自由運動を可能にし、それによりその最大限の快適さを提供する。そのような持ち運び可能な冷却システム(100)は、例えば兵士、ハイカー、スポーツ選手、或いは熱又は負荷のある状態下で作業する人によって快適に使用することができるように、ユーザーにより着用できるほど十分に軽いものとなるように設計されることに、注意されたい。
【0069】
故に、本発明は、比較的単純なシステム構成を使用した、様々な実体の迅速且つ効率の良い冷却のための新たな方法を提供する。当業者は、様々な修正及び変更が、添付の請求項の中に及びそれにより定められる範囲から逸脱することなく本発明の上記実施形態に適用され得ることを、容易に認識する。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図5C
図6