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特許7426765情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0601 20230101AFI20240126BHJP
   G06Q 50/26 20240101ALI20240126BHJP
【FI】
G06Q30/0601 312
G06Q50/26
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023106065
(22)【出願日】2023-06-28
【審査請求日】2023-06-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521425652
【氏名又は名称】株式会社ゼロボード
(72)【発明者】
【氏名】渡慶次 道隆
(72)【発明者】
【氏名】本間 真
【審査官】庄司 琴美
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-152697(JP,A)
【文献】特開2002-149978(JP,A)
【文献】特開2023-039690(JP,A)
【文献】特開2010-134563(JP,A)
【文献】特開2009-258849(JP,A)
【文献】特開2010-009246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室効果ガスの排出量をオフセット可能な排出権によりオフセット可能な温室効果ガスの量であるオフセット可能量を記憶する記憶部と、
ユーザによるオフセットを希望する排出量の入力を受け付ける入力部と、
入力された前記排出量の合計値が前記オフセット可能量に対応する場合に排出権を特定する排出権特定情報を取得する取得部と、
を備え
入力された前記排出量の合計値が前記オフセット可能量よりも小さい場合は、排出権にかかる価格を第1の価格とし、
入力された前記排出量の合計値が前記オフセット可能量よりも大きい場合は、排出権にかかる価格を第1の価格よりも低い価格である第2の価格とすること、
を特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
温室効果ガスの排出量をオフセット可能な排出権によりオフセット可能な温室効果ガスの量であるオフセット可能量を記憶するステップと、
ユーザによるオフセットを希望する排出量の入力を受け付けるステップと、
入力された前記排出量の合計値が前記オフセット可能量に対応する場合に排出権を特定する排出権特定情報を取得するステップと、
入力された前記排出量の合計値が前記オフセット可能量よりも小さい場合は、排出権にかかる価格を第1の価格とし、入力された前記排出量の合計値が前記オフセット可能量よりも大きい場合は、排出権にかかる価格を第1の価格よりも低い価格である第2の価格とするステップと、
をコンピュータが実行することを特徴とする情報処理方法。
【請求項3】
温室効果ガスの排出量をオフセット可能な排出権によりオフセット可能な温室効果ガスの量であるオフセット可能量を記憶するステップと、
ユーザによるオフセットを希望する排出量の入力を受け付けるステップと、
入力された前記排出量の合計値が前記オフセット可能量に対応する場合に排出権を特定する排出権特定情報を取得するステップと、
入力された前記排出量の合計値が前記オフセット可能量よりも小さい場合は、排出権にかかる価格を第1の価格とし、入力された前記排出量の合計値が前記オフセット可能量よりも大きい場合は、排出権にかかる価格を第1の価格よりも低い価格である第2の価格とするステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素の排出権の取引が行われている(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-306839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
どの排出権を購入するべきかを決定する手間がかかる。
【0005】
本発明はこのような背景を鑑みてなされたものであり、排出権取引を支援することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の主たる発明は、情報処理システムであって、温室効果ガスの排出量をオフセット可能な排出権によりオフセット可能な温室効果ガスの量であるオフセット可能量を記憶する記憶部と、ユーザがオフセットを希望する排出量の入力を受け付ける入力部と、入力された前記排出量の合計値が前記オフセット可能量に対応する場合に排出権を特定する排出権特定情報を取得する取得部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
その他本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、排出権取引を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】情報処理システムの全体構成例を示す図である。
図2】管理サーバ2のハードウェア構成例を示す図である。
図3】管理サーバ2のソフトウェア構成例を示す図である。
図4】自動無効化が「偽」の無効化情報についての処理を説明する図である。
図5】自動無効化が「真」の無効化情報についての処理を説明する図である。
図6】管理サーバ2の動作3を説明する図である。
図7図7は、利用者が保有者から直接、排出権を取得する場合の概念図である。
図8】仲介者を介して、利用者が保有者から排出権を取得する場合の概念図である。
図9】管理サーバ2を有するプラットフォームを介して、利用者が保有者から排出権を取得する情報処理システム1の概念図である。
図10】管理サーバ2を有するプラットフォームを介して、利用者が保有者から排出権を取得する情報処理システム2の概念図である。
図11】管理サーバ2を有するプラットフォームを介して、利用者が保有者から排出権を取得する情報処理システム3の概念図である。
図12】管理サーバ2を有するプラットフォームを介して、利用者が保有者から排出権を取得する情報処理システム4の概念図である。
図13】管理サーバ2を有するプラットフォームを介して、利用者が保有者から排出権を取得する情報処理システム5の概念図である。
図14】管理サーバ2の動作2を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<発明の概要>
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明は、たとえば、以下のような構成を備える。
[項目1]
温室効果ガスの排出量をオフセット可能な排出権を特定する排出権特定情報、前記排出権によりオフセット可能な前記温室効果ガスの量であるオフセット可能量、及び前記排出権の属性を対応付けて記憶する排出権記憶部と、
活動を特定する活動特定情報に対応付けて、前記活動に係る前記排出量をオフセット可能な前記排出権の前記属性を記憶するオフセット属性記憶部と、
ユーザがオフセットを希望する前記活動を特定する前記活動特定情報及び前記活動に係る前記排出量の入力を受け付ける入力部と、
前記オフセット属性記憶部及び前記排出権記憶部を参照して、入力された前記活動特定情報に対応する前記属性を特定し、特定した前記属性及び入力された前記排出量以上の前記オフセット可能量に対応する前記排出権特定情報を取得する排出権取得部と、
を備えることを特徴とする情報処理システム。
[項目2]
項目1に記載の情報処理システムであって、
前記属性には前記排出権に係る方法論が含まれること、
を特徴とする情報処理システム。
[項目3]
項目1に記載の情報処理システムであって、
前記オフセット属性記憶部は、前記排出量の報告に係るルールを特定するルール特定情報と、前記活動特定情報と、前記属性とを対応付けて記憶し、
前記入力部は、前記排出量、前記活動特定情報、及び前記ルール特定情報の入力を受け付け、
前記排出権取得部は、入力された前記ルール特定情報及び前記活動特定情報に対応する前記属性を特定すること、
を特徴とする情報処理システム。
[項目4]
項目1に記載の情報処理システムであって、
前記ユーザから無効化のリクエストを受け付けるリクエスト受付部と、
前記リクエストに応じて、取得した前記排出権特定情報により特定される前記排出権を用いた、前記入力された活動特定情報が示す前記活動に係る前記排出量の無効化に関する処理を実行する無効化処理部と、
を備えることを特徴とする情報処理システム。
[項目5]
項目1に記載の情報処理システムであって、
前記排出権記憶部は、前記排出権特定情報、前記オフセット可能量、及び前記属性と、オフセット可能な前記排出権の最小量とを対応付けて記憶し、
前記活動特定情報及び前記排出量を含む無効化情報を記憶する無効化情報記憶部と、
前記排出権を用いた前記排出量の無効化に関する処理を行う無効化処理部と、
を備え、
前記排出権取得部は、前記排出量の合計が前記最小量以上前記オフセット可能量以下となるように複数の前記無効化情報を選択し、選択した前記無効化情報ごとに、前記無効化情報に対応する前記排出権特定情報を特定し、
前記無効化処理部は、選択された前記無効化情報の前記排出量を、前記排出権特定情報により特定される前記排出権を用いて前記無効化に関する処理を行うこと、
を特徴とする情報処理システム。
[項目6]
項目5に記載の情報処理システムであって、
前記無効化処理部は、前記無効化情報のそれぞれに含まれる前記活動特定情報及び前記排出量が無効化通知書に含まれるように、前記無効化に関する処理を行うこと、
を特徴とする情報処理システム。
[項目7]
温室効果ガスの排出量をオフセット可能な排出権を特定する排出権特定情報、前記排出権によりオフセット可能な前記温室効果ガスの量であるオフセット可能量、及び前記排出権の属性を対応付けて排出権記憶部に記憶するステップと、
活動を特定する活動特定情報に対応付けて、前記活動に係る前記排出量をオフセット可能な前記排出権の前記属性をオフセット属性記憶部に記憶するステップと、
ユーザがオフセットを希望する前記活動を特定する前記活動特定情報及び前記活動に係る前記排出量の入力を受け付けるステップと、
前記オフセット属性記憶部及び前記排出権記憶部を参照して、入力された前記活動特定情報に対応する前記属性を特定し、特定した前記属性及び入力された前記排出量以上の前記オフセット可能量に対応する前記排出権特定情報を取得するステップと、
をコンピュータが実行することを特徴とする情報処理方法。
[項目8]
温室効果ガスの排出量をオフセット可能な排出権を特定する排出権特定情報、前記排出権によりオフセット可能な前記温室効果ガスの量であるオフセット可能量、及び前記排出権の属性を対応付けて排出権記憶部に記憶するステップと、
活動を特定する活動特定情報に対応付けて、前記活動に係る前記排出量をオフセット可能な前記排出権の前記属性をオフセット属性記憶部に記憶するステップと、
ユーザがオフセットを希望する前記活動を特定する前記活動特定情報及び前記活動に係る前記排出量の入力を受け付けるステップと、
前記オフセット属性記憶部及び前記排出権記憶部を参照して、入力された前記活動特定情報に対応する前記属性を特定し、特定した前記属性及び入力された前記排出量以上の前記オフセット可能量に対応する前記排出権特定情報を取得するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
[項目9]
温室効果ガスの排出主体の拠点の衛星データを取得する取得部と、
前記衛星データを時系列に分析する分析部と、
分析結果に基づき、前記拠点におけるオフセット可能な温室効果ガスの排出量を登録する登録部と、
を備えることを特徴とする情報処理システム。
[項目10]
温室効果ガスの排出主体の拠点の衛星データを取得するステップと、
前記衛星データを時系列に分析するステップと、
分析結果に基づき、前記拠点におけるオフセット可能な温室効果ガスの排出量を登録するステップと、
をコンピュータが実行することを特徴とする情報処理方法。
[項目11]
温室効果ガスの排出主体の拠点の衛星データを取得するステップと、
前記衛星データを時系列に分析するステップと、
分析結果に基づき、前記拠点におけるオフセット可能な温室効果ガスの排出量を登録するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
[項目12]
温室効果ガスの排出量をオフセット可能な排出権によりオフセット可能な温室効果ガスの量であるオフセット可能量を記憶する記憶部と、
ユーザがオフセットを希望する排出量の入力を受け付ける入力部と、
入力された前記排出量の合計値が前記オフセット可能量に対応する場合に排出権を特定する排出権特定情報を取得する取得部と、
を備えることを特徴とする情報処理システム。
[項目13]
項目12に記載の情報処理システムであって、
入力された前記排出量の合計値が前記オフセット可能量よりも小さい場合は、排出権にかかる価格を第1の価格とし、
入力された前記排出量の合計値が前記オフセット可能量よりも大きい場合は、排出権にかかる価格を第1の価格よりも低い価格である第2の価格とすること、
を特徴とする情報処理システム。
[項目14]
項目12に記載の情報処理システムであって、
入力された前記排出量の合計値と前記オフセット可能量との差分情報を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする情報処理システム。
[項目15]
温室効果ガスの排出量をオフセット可能な排出権によりオフセット可能な温室効果ガスの量であるオフセット可能量を記憶するステップと、
ユーザがオフセットを希望する排出量の入力を受け付けるステップと、
入力された前記排出量の合計値が前記オフセット可能量に対応する場合に排出権を特定する排出権特定情報を取得するステップと、
をコンピュータが実行することを特徴とする情報処理方法。
[項目16]
温室効果ガスの排出量をオフセット可能な排出権によりオフセット可能な温室効果ガスの量であるオフセット可能量を記憶するステップと、
ユーザがオフセットを希望する排出量の入力を受け付けるステップと、
入力された前記排出量の合計値が前記オフセット可能量に対応する場合に排出権を特定する排出権特定情報を取得するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【0011】
<システムの概要>
以下、本発明の一実施形態に係る情報処理システムについて説明する。本実施形態に係る情報処理システムは、温室効果ガスの排出権(本実施形態ではJ-クレジットを想定するが、J-クレジット以外の排出権についても適用可能である。)の取引を支援しようとするものである。温室効果ガスの排出削減や吸収などにより創出された排出権と、オフセットしたい温室効果ガスの排出量とのマッチングを行う。温室効果ガスの排出活動によって利用可能なJ-クレジットは異なる。また、温対法や省エネ法、SBT、CDP、RE100などのルールごとに、報告のために利用可能なJ-クレジットは異なる。本実施形態の情報処理システムでは、利用可能な排出権を、温室効果ガスの排出量をオフセットしようとするユーザ(以下、利用者という。)に提供する。
【0012】
図1は、情報処理システムの全体構成例を示す図である。本実施形態の情報処理システムは、管理サーバ2を含んで構成される。管理サーバ2は、保有者端末1、利用者端末3、及び無効化サーバ4のそれぞれと通信ネットワークを介して通信可能に接続される。通信ネットワークは、たとえばインターネットであり、公衆電話回線網や携帯電話回線網、無線通信路、イーサネット(登録商標)などにより構築される。
【0013】
保有者端末1は、温室効果ガスの排出削減や吸収などにより排出権を創出したユーザ(以下、排出権の保有者という。)が操作するコンピュータである。保有者端末1は、例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータなどとすることができる。
【0014】
利用者端末3は、利用者が操作するコンピュータである。利用者端末3は、例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータなどとすることができる。
【0015】
管理サーバ2は、排出権に関する情報を管理し、利用者に対して排出権を提案するコンピュータである。管理サーバ2は、例えばワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、あるいはクラウド・コンピューティングによって論理的に実現されてもよい。
【0016】
無効化サーバ4は、排出権を発行し、排出権に基づく温室効果ガスの排出量の無効化に関する機関(J-クレジット制度の運用機関)のコンピュータである。本実施形態では、無効化サーバ4に排出権の無効化のリクエストを送信すること(例えば、無効化の依頼を電子メールで送信することなども含む。)により無効化処理が行われることを想定する。
【0017】
<管理サーバ>
図2は、管理サーバ2のハードウェア構成例を示す図である。なお、図示された構成は一例であり、これ以外の構成を有していてもよい。管理サーバ2は、CPU201、メモリ202、記憶装置203、通信インタフェース204、入力装置205、出力装置206を備える。記憶装置203は、各種のデータやプログラムを記憶する、例えばハードディスクドライブやソリッドステートドライブ、フラッシュメモリなどである。通信インタフェース204は、通信ネットワークに接続するためのインタフェースであり、例えばイーサネット(登録商標)に接続するためのアダプタ、公衆電話回線網に接続するためのモデム、無線通信を行うための無線通信機、シリアル通信のためのUSB(Universal Serial Bus)コネクタやRS232Cコネクタなどである。入力装置205は、データを入力する、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、ボタン、マイクロフォンなどである。出力装置206は、データを出力する、例えばディスプレイやプリンタ、スピーカなどである。なお、後述する管理サーバ2の各機能部はCPU201が記憶装置203に記憶されているプログラムをメモリ202に読み出して実行することにより実現され、管理サーバ2の各記憶部はメモリ202及び記憶装置203が提供する記憶領域の一部として実現される。
【0018】
なお、保有者端末1、利用者端末3、無効化サーバ4のハードウェア構成も管理サーバ2と同様とすることができる。
【0019】
図3は、管理サーバ2のソフトウェア構成例を示す図である。管理サーバ2は、排出権記憶部231と、オフセット属性記憶部232と、無効化情報記憶部233と、入力部211と、排出権取得部212と、リクエスト受付部213と、無効化処理部214と、を備える。
【0020】
<記憶部>
排出権記憶部231は、温室効果ガスの排出量をオフセット可能な排出権に関する情報(以下、排出権情報という。)を記憶する。排出権情報には、排出権を特定する排出権特定情報(排出権ID)に対応付けて、当該排出計の名称(排出権名)と、排出権の属性と、排出権によりオフセット可能な温室効果ガスの量の最大値(最大オフセット可能量)と、最小値(最小オフセット量)とが含まれうる。最小オフセット量は、排出権の販売単位を設定するものであり、排出権の保有者が任意に設定可能であり、例えば、1t単位としてもよいし、50tや100tなどの単位とすることもできる。属性には排出権に係る方法論(排出削減・吸収に資する技術ごとに、適用範囲、排出削減・吸収量の算定方法及びモニタリング方法等を規定したもの)が含まれうる。属性には、排出権の種類を含めるようにしてもよい。
【0021】
オフセット属性記憶部232は、活動を特定する活動特定情報に対応付けて、活動に係る排出量をオフセット可能な排出権の属性を記憶する。本実施形態では、オフセット属性記憶部232は、排出量の報告に係るルールを特定するルール特定情報と、活動特定情報と、属性とを対応付けて記憶する。ルール特定情報は、例えば、「温対法」「省エネ法」「カーボンオフセット」「CDP質問書」「SBT」「RE100」などとすることができる。活動特定情報は、例えば、「燃料の燃焼」「電力の使用」などとすることができる。
【0022】
無効化情報記憶部233は、利用者がオフセットを希望する排出量に関する情報(以下、無効化情報という。)を記憶する。無効化情報には、無効化情報を特定する無効化IDと、ルール特定情報と、活動特定情報と、オフセットを希望する排出量とを含めることができる。また、無効化情報には、管理サーバ2側で自動的に無効化処理を行うか否かを示す情報(自動無効化)を含めることができる。
【0023】
<機能部>
入力部211は、ユーザがオフセットを希望する活動を特定する活動特定情報及び活動に係る排出量の入力を受け付けることができる。本実施形態では、入力部211は、無効化情報の入力を受け付ける。入力部211は、利用者端末3に対して無効化情報の入力フォームを表示する画面情報を送信し、利用者端末3から無効化情報の各項目のデータを受信して無効化情報を受け付けることができる。入力部211は、受け付けた無効化情報を無効化情報記憶部233に登録することができる。
【0024】
排出権取得部212は、無効化情報に対して提示可能な排出権を特定する。排出権取得部212は、オフセット属性記憶部232及び排出権記憶部233を参照して、無効化情報に含まれる活動特定情報に対応する属性を特定し、特定した属性及び無効化情報に含まれる排出量以上の最大オフセット可能量に対応する排出権特定情報を取得することができる。また、無効化情報にルール特定情報が設定されている場合には、排出権取得部212は、無効化情報に含まれるルール特定情報及び活動特定情報に対応する属性をオフセット属性記憶部232から特定することができる。
【0025】
排出権取得部212は、特定した排出権を利用者に提示することができる。排出権取得部212は、例えば、排出権情報を利用者端末3に送信することができる。
【0026】
排出権取得部212は、排出権情報について、当該排出権を提示可能な無効化情報を検索するようにしてもよい。排出権取得部212は、例えば、排出権情報について、無効化情報に含まれる排出量(無効化情報が1つの場合)又は排出量の合計(無効化情報が複数の場合)が、排出権情報の最大オフセット可能量以下となる無効化情報の組み合わせ(1つであってもよい。)を選択することができる。また、排出権取得部212は、無効化情報に含まれる排出量(無効化情報が1つの場合)又は排出量の合計(無効化情報が複数の場合)が、最小オフセット可能量以上となるように無効化情報の組み合わせ(1つであってもよい。)を選択することができる。排出権取得部212は、例えば、1つの排出権情報について、無効化情報に含まれる排出量(又はその合計)が、排出権情報の最大オフセット可能量以下となり、かつ、最小オフセット可能量以上となる無効化情報(又はその組み合わせ)のうち、無効化情報に含まれる排出量の合計値が所定値以上となり、あるいは、最大となるような組み合わせを選択することができる。
【0027】
リクエスト受付部213は、利用者端末3から無効化のリクエストを受け付けることができる。リクエストには、無効化情報を特定する情報(例えば無効化ID)と、排出権を特定する情報(例えば排出権ID)とを含めることができる。
【0028】
無効化処理部214は、排出権を用いた排出量の無効化に関する処理(以下、無効化処理という。)を行う。無効化処理として、無効化処理部214は、例えば、排出権を特定する情報と、無効化情報とを含む無効化のリクエストを無効化サーバ4に送信することができる。この場合、管理サーバ2の運用者が無効化の代行を行うことになる。なお、無効化は利用者自身が行うようにしてもよい。
【0029】
無効化処理部214は、自動無効化が「偽」である無効化情報については、利用者端末3からの無効化のリクエストに応じて無効化処理を行うことができる。無効化処理部214は、自動無効化が「真」である無効化情報については、利用者端末3からのリクエストを受信せずに、無効化処理を行うことができる。この場合において、無効化処理部214は、無効化処理に先立って、保有者から利用者への排出権の販売処理を行うことができる。なお、販売処理については一般的な取引システムにおける処理を用いるものとしてここでは説明を省略する。
【0030】
また、無効化処理部214は、1つの排出権を用いて複数の無効化情報についての無効化処理を行う場合には、無効化情報のそれぞれに含まれる活動特定情報及び排出量が無効化通知書に含まれるように、無効化に関する処理(例えば、無効化サーバ4に対する無効化リクエストの送信)を行うことができる。
【0031】
<動作1>
図4は、自動無効化が「偽」の無効化情報についての処理を説明する図である。
【0032】
管理サーバ2は、利用者端末3から無効化情報の入力を受け付けて無効化情報記憶部233に登録する(S301)。管理サーバ2は、オフセット属性記憶部232から、無効化情報に含まれるルール特定情報及び活動特定情報に対応する属性を取得し(S302)、排出権記憶部231から、取得した属性に対応し、かつ、無効化情報の排出量が最小オフセット可能量以上かつ最大オフセット可能量以下である排出権情報を検索する(S303)。管理サーバ2は、検索した排出権情報を利用者端末3に送信して排出権を利用者に提示することができる(S304)。ここで管理サーバ2は、排出権を利用者に販売する処理を行うようにしてもよい。
【0033】
管理サーバ2は、利用者端末3から無効化のリクエストを受信すると(S304)、リクエストに指定されている排出権情報及び無効化情報に基づいて、排出権情報に係る排出権を用いた無効化処理を行う(S305)。
【0034】
以上のようにして、管理サーバ2は利用者に対して、排出量のオフセットを行うことが可能な排出権を提示することができる。また、管理サーバ2は、利用者からのリクエストに応じて排出量の無効化を代行することができる。
【0035】
図5は、自動無効化が「真」の無効化情報についての処理を説明する図である。
【0036】
管理サーバ2は、利用者端末3から無効化情報の入力を受け付けて無効化情報記憶部233に登録する(S321)。
【0037】
管理サーバ2は、オフセット属性記憶部232から、排出権情報の属性に対応するルール及び活動を取得する(S322)。管理サーバ2は、無効化情報記憶部233から、取得したルール及び活動に対応する無効化情報を読み出し、読み出した無効化情報の中から、排出量の合計が最小オフセット可能量以上、かつ、最大オフセット可能量以下となるような無効化情報の組み合わせを選択する(S323)。ここで管理サーバ2は、排出量の合計が所定値以上となるように組み合わせを選択することができる。また、管理サーバ2は、排出量の合計が最大となるように組み合わせを選択してもよい。管理サーバ2は、選択した組み合わせに含まれる無効化情報のそれぞれに含まれる活動特定情報及び排出量が無効化通知書に含まれるように、無効化処理を行うことができる(S324)。
【0038】
以上のようにして、管理サーバ2は利用者から受け付けたオフセットを希望する排出量に関して、自動的に無効化処理を実行することができる。したがって、例えば、最小オフセット可能量よりも少ない排出量に関する無効化情報をまとめて無効化することができる。また、最大オフセット可能量よりも少ない排出量をオフセットする場合に、他の無効化情報と一緒に無効化を行うこともできる。
【0039】
次に、図7~13を用いて、排出権取引の情報処理システムの概念図を説明する。
【0040】
図7は、利用者が保有者から直接、排出権を取得する情報処理システムの概念図である。買手である利用者が、利用者端末3を用いて排出権の保有者に排出権の購入意思があることを伝える。保有者に排出権の売却意思がある場合、利用者は、利用者端末3を用いて保有者の銀行口座に排出権に対応する金額(排出権に係る価格)を送金する。保有者は、送金がなされたことに基づき、保有者端末1を用いて保有者の口座から利用者の口座に排出権を移転する。利用者は、排出権を取得し、取得した排出量が無効化通知書に含まれるように、無効化処理を行う。
【0041】
図8は、仲介者を介して、利用者が保有者から排出権を取得する情報処理システムの概念図である。買手である利用者が、利用者端末3を用いて仲介者に排出権の購入意思があることを伝える。保有者は、保有者端末1を用いて仲介者に排出権の売却意思があることを示し、排出権を第三者に提供したい旨を依頼する。仲介者は、利用者の購入意思と、保有者の売却意思とがあることを認識する。利用者は、利用者端末3を用いて仲介者の銀行口座に排出権に対応する金額を送金する。仲介者は、利用者から送金された金額を保有者の銀行口座に送金する。保有者は、送金がなされたことに基づき、保有者端末1を用いて保有者の口座から仲介者の口座に排出権を移転する。仲介者は、自身の口座から利用者の口座に排出権を移転する。利用者は、取得した排出量が無効化通知書に含まれるように、無効化処理を行う。仲介者は、後述する図9のような仲介者端末および仲介サーバを用いることが好ましい。
【0042】
図9は、管理サーバ2を有するプラットフォームを介して、利用者が保有者から排出権を取得する情報処理システム1の概念図である。買手である利用者が利用者端末3を用いて、プラットフォームに排出権の購入意思があることを示す無効化情報を出力する。保有者は、保有者端末1を用いて、仲介者の仲介サーバ(例えば、管理サーバ2と同様なシステム)に排出権の売却意思があることを示す排出権情報を出力し、排出権を第三者に提供したい旨を依頼する。仲介者は、仲介者端末および仲介サーバを用いて、保有者の売却意思の排出権情報をプラットフォームに出力する。プラットフォームは、仲介者からの排出権情報と、利用者からの無効化情報をマッチングする。利用者は、利用者端末3を用いてプラットフォームの銀行口座に排出権に対応する金額を送金する処理を行う。プラットフォームは、利用者から送金された金額を仲介者の銀行口座に送金する処理を行う。仲介サーバは、利用者から送金された金額を保有者の銀行口座に送金する処理を行う。保有者は、送金がなされたことに基づき、保有者端末1を用いて保有者の口座から仲介者の口座に排出権情報を出力し、排出権を移転する。仲介サーバは、自身の口座からプラットフォームの口座に排出権情報を出力し、排出権を移転する。プラットフォームは、自身の口座から利用者の口座に排出権情報を出力し、排出権を移転する。利用者は、排出権情報を取得し、取得した排出量が無効化通知書に含まれるように、無効化処理を行う。
【0043】
図10は、管理サーバ2を有するプラットフォームを介して、利用者が保有者から排出権を取得する情報処理システム2の概念図である。図9との相違点は、無効化処理をプラットフォームで実行する点である。買手である利用者が利用者端末3を用いて、プラットフォームに排出権の購入意思があることを示す無効化情報を出力する。保有者は、保有者端末1を用いて、仲介者の仲介サーバに排出権の売却意思があることを示す排出権情報を出力し、排出権を第三者に提供したい旨を依頼する。仲介者は、仲介者端末および仲介サーバを用いて、保有者の売却意思の排出権情報をプラットフォームに出力する。プラットフォームは、仲介者からの排出権情報と、利用者からの無効化情報をマッチングする。利用者は、利用者端末3を用いてプラットフォームの銀行口座に排出権に対応する金額を送金する処理を行う。プラットフォームは、利用者から送金された金額を仲介者の銀行口座に送金する処理を行う。仲介サーバは、利用者から送金された金額を保有者の銀行口座に送金する処理を行う。保有者は、送金がなされたことに基づき、保有者端末1を用いて保有者の口座から仲介者の口座に排出権情報を出力し、排出権を移転する。仲介サーバは、自身の口座からプラットフォームの口座に排出権情報を出力し、排出権を移転する。プラットフォームは、排出権情報を取得し、取得した排出量が無効化通知書に含まれるように、無効化処理を行う。また、プラットフォームは、利用者に無効化通知書を出力し、排出権を移転する。このようにプラットフォームで無効化代行を行うことで、利用者の無効化処理の手間を省くことができる。
【0044】
図11は、管理サーバ2を有するプラットフォームを介して、利用者が保有者から排出権を取得する情報処理システム3の概念図である。図10との相違点は、利用者の下位階層の小口利用者から小口要求を利用者が収集する点である。排出権を利用したい小口利用者が小口利用者端末を用いて、利用者に排出権の購入意思があることを示す無効化情報を出力する。複数の小口利用者がいる場合は、複数の小口利用者から小口要求である無効化情報が出力される。利用者は、無効化情報を受信する。利用者は、利用者端末3を用いてプラットフォームに排出権の購入意思があることを示す無効化情報を出力する。この無効化情報は、複数の小口要求に対応する複数の無効化情報を各々出力してもよいし、複数の小口要求を合算した無効化情報を出力してもよい。本例では、後者で説明する。保有者は、保有者端末1を用いて、仲介者の仲介サーバに排出権の売却意思があることを示す排出権情報を出力し、排出権を第三者に提供したい旨を依頼する。仲介者は、仲介者端末および仲介サーバを用いて、保有者の売却意思の排出権情報をプラットフォームに出力する。プラットフォームは、仲介者からの排出権情報と、利用者からの無効化情報をマッチングする。利用者は、利用者端末3を用いてプラットフォームの銀行口座に排出権に対応する金額を送金する処理を行う。プラットフォームは、利用者から送金された金額を仲介者の銀行口座に送金する処理を行う。仲介サーバは、利用者から送金された金額を保有者の銀行口座に送金する処理を行う。保有者は、送金がなされたことに基づき、保有者端末1を用いて保有者の口座から仲介者の口座に排出権情報を出力し、排出権を移転する。仲介サーバは、自身の口座からプラットフォームの口座に排出権情報を出力し、排出権を移転する。プラットフォームは、排出権情報を取得し、取得した排出量が無効化通知書に含まれるように、無効化処理を行う。また、プラットフォームは、利用者に無効化通知書を出力し、排出権を移転する。なお、利用者は、小口要求に基づく無効化通知書を小口利用者に出力するようにしてもよい。このように小口要求を受け付けることで、小口利用者にとって排出権を利用し易くさせることができる。また、プラットフォームで無効化代行を行うことで、利用者の無効化処理の手間を省くことができる。
【0045】
図12は、管理サーバ2を有するプラットフォームを介して、利用者が保有者から排出権を取得する情報処理システム4の概念図である。図11との相違点は、複数の利用者からプラットフォームに複数の無効化情報を出力する点である。排出権を利用したい小口利用者が小口利用者端末を用いて、利用者に排出権の購入意思があることを示す無効化情報を出力する。複数の小口利用者がいる場合は、複数の小口利用者から小口要求である無効化情報が出力される。利用者は、利用者端末3で無効化情報を受信する。複数の利用者がいる場合は、利用者毎に無効化情報を受信する。利用者は、利用者端末3を用いてプラットフォームに排出権の購入意思があることを示す無効化情報を出力する。複数の利用者がいる場合は、利用者毎に無効化情報を出力する。保有者は、保有者端末1を用いて、仲介者の仲介サーバに排出権の売却意思があることを示す排出権情報を出力し、排出権を第三者に提供したい旨を依頼する。仲介者は、仲介者端末および仲介サーバを用いて、保有者の売却意思の排出権情報をプラットフォームに出力する。プラットフォームは、仲介者からの排出権情報と、各利用者からの無効化情報をマッチングする。各利用者は、利用者端末3を用いてプラットフォームの銀行口座に排出権に対応する金額を送金する処理を行う。プラットフォームは、各利用者から送金された金額を仲介者の銀行口座に送金する処理を行う。仲介サーバは、各利用者から送金された金額を保有者の銀行口座に送金する処理を行う。保有者は、送金がなされたことに基づき、保有者端末1を用いて保有者の口座から仲介者の口座に排出権情報を出力し、排出権を移転する。仲介サーバは、自身の口座からプラットフォームの口座に排出権情報を出力し、排出権を移転する。プラットフォームは、排出権情報を取得し、取得した排出量が無効化通知書に含まれるように、無効化処理を行う。また、プラットフォームは、各利用者に無効化通知書を出力し、排出権を移転する。なお、利用者は、小口要求に基づく無効化通知書を小口利用者に出力するようにしてもよい。このように小口要求を受け付けることで、小口利用者にとって排出権を利用し易くさせることができる。また、プラットフォームで無効化代行を行うことで、利用者の無効化処理の手間を省くことができる。なお、利用者は、利用者サーバを用いて各種処理を実行してもよい。
【0046】
図13は、管理サーバ2を有するプラットフォームを介して、利用者が保有者から排出権を取得する情報処理システム5の概念図である。図12との相違点は、プラットフォームに銀行口座とクレジット口座を設けない点である。排出権を利用したい小口利用者が小口利用者端末を用いて、利用者に排出権の購入意思があることを示す無効化情報を出力する。複数の小口利用者がいる場合は、複数の小口利用者から小口要求である無効化情報が出力される。利用者は、利用者端末3で無効化情報を受信する。複数の利用者がいる場合は、利用者毎に無効化情報を受信する。利用者は、利用者端末3を用いてプラットフォームに排出権の購入意思があることを示す無効化情報を出力する。複数の利用者がいる場合は、利用者毎に無効化情報を出力する。保有者は、保有者端末1を用いて、仲介者の仲介サーバに排出権の売却意思があることを示す排出権情報を出力し、排出権を第三者に提供したい旨を依頼する。仲介者は、仲介者端末および仲介サーバを用いて、保有者の売却意思の排出権情報をプラットフォームに出力する。プラットフォームは、仲介者からの排出権情報と、各利用者からの無効化情報をマッチングする。各利用者は、利用者端末3を用いて仲介者の銀行口座に排出権に対応する金額を送金する処理を行う。仲介サーバは、各利用者から送金された金額を保有者の銀行口座に送金する処理を行う。保有者は、送金がなされたことに基づき、保有者端末1を用いて保有者の口座から仲介者の口座に排出権情報を出力し、排出権を移転する。仲介サーバは、自身の口座から利用者の口座に排出権情報を出力し、排出権を移転する。また、仲介サーバは、排出権情報を取得し、取得した排出量が無効化通知書に含まれるように、無効化処理を行う。さらに、仲介サーバは、各利用者に無効化通知書を出力し、排出権を移転する。なお、利用者は、小口要求に基づく無効化通知書を小口利用者に出力するようにしてもよい。このように小口要求を受け付けることで、小口利用者にとって排出権を利用し易くさせることができる。また、プラットフォームで無効化代行を行うことで、利用者の無効化処理の手間を省くことができる。なお、利用者は、利用者サーバを用いて各種処理を実行してもよい。
【0047】
次に、排出権を大ロットで買った方が小ロットで買うよりも良い購入条件を引き出せる機能について説明する。本例では、図12図13のプラットフォームにおいて、共同購入によって価格(単価)を引き下げる機能について説明する。
【0048】
利用者端末3の購入画面では、A、B、C等の排出権の種類によって、価格に応じた「最小販売数量=ミニマムチケット」が掲示される。例えば、排出権の売り手であるX社が仲介しているAは、以下(1)、(2)の最小販売数量と価格の関係となっている。
(1)100万トン以上・・・8000円/ton-co2
(2)1000万トン以上・・・7000円/ton-co2
【0049】
条件(1)は、排出権を購入するにあたり、他の利用者含めた共同購入の排出権の合計が100万トン以上かつ1000万トン未満の場合、1ton-co2あたり8000円の価格(単価)で購入可能とする条件である。条件(2)は、排出権を購入するにあたり、他の利用者含めた共同購入の排出権の合計が1000万トン以上の場合、1ton-co2あたり7000円の価格(単価)で購入可能とする条件である。このように共同購入の排出権の合計値によって、排出権の単価が変動するように最小販売数量と価格を設定した条件を利用者端末3に対して提示可能になっている。
【0050】
X社がプラットフォームに出品するときに、プラットフォームの管理サーバ2にて共同購入の参加者募集の設定をしていると、条件(2)の1000万トン以上の単価で購入意思がある利用者が、利用者端末3を用いてその購入意思を表すことができるようになっている。例えば、複数の利用者が利用者端末3で購入意思を示し、1000万トンのうち、700万トン集まっている場合、「あと300万トン分の購入者が集まると7000円の単価での取引が成立します」等の画像を利用者端末3に表示可能とするように、管理サーバ2の出力部から利用者端末3に表示画像に関する情報等を出力する。また、この画像とともに700万トン/1000万トンを示すゲージ画像や現在の単価である8000円を示す画像も表示可能とするように、管理サーバ2の出力部から利用者端末3に表示画像に関する情報等を出力する。複数の利用者が利用者端末3で購入意思を示し、1000万トンのうち、1000万トン集まった場合、「条件達成」等の画像を利用者端末3に表示可能とするように、管理サーバ2の出力部から利用者端末3に表示画像に関する情報等を出力する。また、この画像とともに1000万トン/1000万トンを示すゲージ画像や条件達成後の単価である7000円を示す画像も表示可能とするように管理サーバ2の出力部から利用者端末3に表示画像に関する情報等を出力する。このように構成することで、排出権の購入を希望する利用者が有利な取引条件を引き出せることができるようになるため、排出権の購入を希望する利用者が増える。かかる利用者が増えると排出権の売却を希望する保有者も増えるため、排出権の取引量が増大して排出権取引が活況となり、排出権取引の参加者が少なく排出権取引が成立しづらいといった問題を解決することができる。また、利用者が条件達成までの過程も確認することができるので、利用者はこの過程を確認しながら目標とする単価で排出権を購入することができる。なお、排出権の売り手であるX社は、排出権を持っている保有者、あるいは仲介者である。また、図12図13に示す利用者が利用者端末3を用いる例を示したが、小口要求をする者が小口利用者端末を用いる例としてもよい。なお、本段落において排出権の購入希望者が有利な購入条件を引き出すことができる例を説明したが、排出権の売却希望者が共同売却によって有利な売却条件を引き出せるようにしてもよい。
<動作2>
図14は、管理サーバ2の動作を説明する図である。
【0051】
管理サーバ2は、参加者募集を設定する(S1401)。詳細には、温室効果ガスの排出量をオフセット可能な排出権によりオフセット可能な温室効果ガスの量であるオフセット可能量を排出権記憶部に記憶する。また、複数の利用者による入力であって、オフセットを希望する排出量の入力を受け付け可能な状態とする。さらに、利用者端末3に以下(1)、(2)のような画像を表示するように画像等の情報を出力して、共同購入の参加者を募集する。
(1)100万トン以上・・・8000円/ton-co2
(2)1000万トン以上・・・7000円/ton-co2
【0052】
次に、管理サーバ2は、第1の価格を設定する(S1402)。例えば、第1の価格として、条件(1)の8000円を設定する。次に、管理サーバ2は、利用者からの購入意思を受信する(S1403)。次に、管理サーバ2は、利用者からの購入意思を合計する(S1404)。次に、管理サーバ2は、購入意思の合計が最小販売数量よりも大きいか否かを判断する(S1405)。詳細には、入力された購入意思(排出量)の合計の値(例えば、1000万トン)が最小販売数量であるオフセット可能量に対応する値(例えば、1000万トン)よりも大きいか否かを判断する。S1405でYesの場合、管理サーバ2は、第2の価格を設定する(S1404)。例えば、第2の価格として、条件(2)の7000円を設定する。また、管理サーバ2は、排出権を特定する排出権特定情報(排出権ID)を取得する。S1405でNoの場合、管理サーバ2は、本処理を終了する。この場合の価格は、第1の価格である8000円を維持する。この動作2の処理は、予め定めた所定期間内で実行される。したがって、例えば、所定期間内に条件(2)を達成できない場合は、条件(1)となる。なお、所定期間内に条件(1)も達成できない場合は、条件(1)とは異なる単価で排出権を購入できるようにしてもよいし、排出権を購入できないようにしてもよい。また、利用者が利用者端末3を用いる例を示したが、小口要求をする者が小口利用者端末を用いる例としてもよい。また、<動作2>は、<動作1>や後述する<動作3>と組み合わせてもよい。
【0053】
次に、衛星データを用いて、各拠点における過去及び将来の地表状態を時系列で分析する機能について説明する。本例における拠点は、例えば、事業所や工場など、温室効果ガスを排出する活動を行う場所でもよいし、一又は複数の事業所や工場などを含む温室効果ガスを排出する活動を活動主体が存在する所定の領域でもよい。所定の領域は、予め定められた面積の領域であることが好ましい。衛星データは、GPS衛星から撮影された画像データである。衛星データは、温室効果ガスの排出主体の拠点の画像データであり、予め定められた面積の領域を示す画像データである。衛星データは、取得部215で取得する。分析対象の画像データは、第1の時点(例えば、1年前)で取得した第1の衛星データと第2の時点(例えば、現在)で取得した第2の衛星データであり、これらを比較して分析を行う。第1の衛星データと第2の衛星データは、同じ面積の領域(同じ拠点)を示す画像データである。分析は、分析部216で行う。分析は、画像データにおける緑地面積や森林の面積を比較する。このように衛星データを分析することで、緑地や森林の減少などの土地利用の時系列での変化を分析することができる。また、衛星データを分析することで、拠点における活動量を推定して登録することができる。さらに、衛星データを分析することで、オフセット可能な温室効果ガスの排出量を推定して登録することができる。このような分析により、拠点における活動量及びオフセット可能な温室効果ガスの排出量を容易に登録することができる。登録は、登録部217で行う。また、この分析により、生物多様性リスク等の分析ができる。特にマテリアリティを特定する際に非常に有効である。さらに、グリーンウォッシュに繋げることができる。なお、分析結果によってオフセットすることができない場合もあるが、この場合、オフセット不可能な温室効果ガスの排出量を推定して登録することができる。
【0054】
<動作3>
図6は、管理サーバ2の動作を説明する図である。
【0055】
管理サーバ2は、温室効果ガスの排出主体の拠点の衛星データを取得する(S601)。次に、管理サーバ2は、衛星データを時系列に分析する(S602)。次に、管理サーバ2は、分析結果に基づき、拠点におけるオフセット可能な温室効果ガスの排出量を推定して登録部217に登録する(S603)。続いて、次のように構成してもよい。管理サーバ2は、分析結果に基づき、拠点における活動量を登録部217に登録する。管理サーバ2は、衛星データから拠点の位置を特定し、特定した拠点の位置情報を拠点情報記憶部に記憶する。管理サーバ2は、拠点の位置情報及び排出主体による活動量の入力を活動量入力部で受け付ける。管理サーバ2は、拠点情報記憶部を参照して、拠点特定部によって位置情報に基づいて拠点を特定する。管理サーバ2は、分析結果に基づき、拠点における活動量を活動量記憶部に登録する。また、特定した拠点に対応付けて、入力された活動量を活動量記憶部に登録する。また、<動作3>は、<動作1>や<動作2>と組み合わせてもよい。
【0056】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0057】
例えば、本実施形態では、1つの排出権情報に対して、1つ又は複数の無効化情報をマッチングさせるものとしたが、複数の排出権情報に対して、1つ又は複数の無効化情報をマッチングさせるようにしてもよい。この場合に、例えば、最小オフセット可能量の単位で無効化情報の排出量に余り(端数)が出るときは、その端数だけ別の排出権情報をマッチさせるようにしてもよい。
【0058】
例えば、本実施形態では、管理サーバ2が自動的に無効化処理(無効化の代行)を行うものとしたが、利用者に対して無効化に利用可能な排出権を提示することに止めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 保有者端末
2 管理サーバ
3 利用者端末
4 無効化サーバ
【要約】
【課題】排出権取引を支援することができるようにする。
【解決手段】温室効果ガスの排出量をオフセット可能な排出権によりオフセット可能な温室効果ガスの量であるオフセット可能量を排出権記憶部に記憶する。複数のユーザが入力部を介してオフセットを希望する排出量の入力を受け付ける。入力された排出量の合計値である1000万トンが、オフセット可能量に対応する値である1000万トンとなった場合に、排出権取得部は排出権を特定する排出権特定情報を取得する。
【選択図】図14
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14