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特許7426784経路データ生成システムおよび経路データ生成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】経路データ生成システムおよび経路データ生成プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20240126BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
G01C21/34
G09B29/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019083953
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020180860
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100174816
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 貴久
(74)【代理人】
【識別番号】100192692
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】幸場 喜郎
(72)【発明者】
【氏名】岩切 昭義
(72)【発明者】
【氏名】今西 暁久
(72)【発明者】
【氏名】宮辻 和宏
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-146710(JP,A)
【文献】特開2006-153463(JP,A)
【文献】特開2008-203167(JP,A)
【文献】特開2012-063260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/34
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路データを生成する経路データ生成システムであって、
地図上において始点と終点とを有する経路を受け付ける経路受付手段と、
前記経路を所定単位となる区間に分割して複数の区間を生成する区間生成手段と、
前記複数の区間それぞれにおいて点群データが存在するか否かを判定する計測データ判定手段と、
前記複数の区間それぞれにおいて存在する点群データからなる前記経路データを生成する経路データ生成手段とを備え、
前記計測データ判定手段は、計測車両の計測時の位置である複数の計測ポイントそれぞれにて計測された前記点群データにおいて、前記計測ポイントが含まれる前記区間に前記点群データが存在すると判定し、
前記経路データ生成手段によって生成される経路データについて、所望の期間を条件として受け付ける条件受付手段を、さらに備え、
前記計測データ判定手段は、前記複数の区間それぞれにおいて前記所望の期間に一致する点群データが存在するか否かを判定することを特徴とする経路データ生成システム。
【請求項2】
前記区間生成手段は、前記経路に沿う方向を分割する長さと、当該経路に沿う方向と略直交する方向である幅とを受け付け、当該長さと幅とで囲まれる領域を区間として生成することを特徴とする、請求項1に記載の経路データ生成システム。
【請求項3】
前記経路データ生成手段は、前記計測データ判定手段によって前記複数の区間それぞれにおいて存在すると判定された点群データのうち、最新の点群データに基づいて前記経路の経路データを生成することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の経路データ生成システム。
【請求項4】
経路データを生成する経路データ生成方法をコンピュータに実行させる経路データ生成プログラムであって、
地図上において始点と終点とを有する経路を受け付ける経路受付ステップと、
前記経路を所定単位となる区間に分割して複数の区間を生成する区間生成ステップと、
前記複数の区間それぞれにおいて点群データが存在するか否かを判定する計測データ判定ステップと、
前記複数の区間それぞれにおいて存在する点群データからなる前記経路データを生成する経路データ生成ステップとを備え、
前記計測データ判定ステップは、計測車両の計測時の位置である複数の計測ポイントそれぞれにて計測された前記点群データにおいて、前記計測ポイントが含まれる前記区間に前記点群データが存在すると判定し、
前記経路データ生成ステップによって生成される経路データについて、所望の期間を条件として受け付ける条件受付ステップを、さらに備え、
前記計測データ判定ステップは、前記複数の区間それぞれにおいて前記所望の期間に一致する点群データが存在するか否かを判定することを特徴とする経路データ生成方法をコンピュータに実行させる経路データ生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路データを生成する経路データ生成システムに関し、より特定的には、蓄積された計測データに基づいて所望の経路データを生成する経路データ生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、MMS(Mobile Mapping System)等を用いて、地形、建築物、構造物、道路、橋梁、トンネル、および標識等の情報が取得され、当該取得された情報は、計測データとしてデータベース等に蓄積されている。
【0003】
例えば、GPS(Global Positioning System)、IMU(Inertial Measurement Unit)、レーザースキャナー、およびカメラ等の計測装置を搭載した計測車両が道路を走行しながら、上記情報を取得することによって、膨大な計測データを蓄積している。
【0004】
近年は、特殊車両が走行予定の道路に対して当該特殊車両が通過可能かどうか、道路、橋梁、およびトンネル等の老朽化に伴う修繕工事が必要かどうか等を判断するために、上記データベースに蓄積された計測データが利用されている。さらに、MMSによって取得された点群データに基づいて、道路の詳細な形状を把握すれば、所謂、自動運転システムへの利用も期待できる。
【0005】
このように、蓄積された計測データは様々な利用方法が考えられ、今後、多くのサービスにおいて重要な情報として考えられているところ、蓄積された計測データそのものの信頼性を高めるために、当該計測データの改ざんを防止する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開2017/110801号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、蓄積された計測データそのものの信頼性は確保できるものの、所望する任意の経路における計測データを効果的に利用できないという問題点がある。
【0008】
それ故に、本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的の1つは、所望する任意の経路における計測データを効果的に利用できる経路データ生成システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも以下のような構成を備え、もしくは手順を実行する。なお、以下の説明において、本発明の理解を容易にするために図面に示されている符号等を付記する場合があるが、本発明の各構成要素は、図面に示されているものに限定されるものではなく、当業者が技術的に理解しうる範囲にまで広く解釈されるべきものである。
【0010】
本発明の一局面に係る経路データ生成システムは、経路データを生成する経路データ生成システムであって、地図上において始点と終点とを有する経路を受け付ける経路受付手段と、前記経路を所定単位となる区間に分割して複数の区間を生成する区間生成手段と、前記複数の区間それぞれにおいて計測データが存在するか否かを判定する計測データ判定手段と、前記複数の区間それぞれにおいて存在する計測データに基づいて、前記経路の経路データを生成する経路データ生成手段とを備える。
かかる構成により、本発明の一局面に係る経路データ生成システムは、経路データ生成手段によって、複数の区間それぞれにおいて存在する計測データに基づいて経路データを生成するため、所望する任意の経路における計測データを効果的に利用することができる。
【0011】
また、好ましくは、前記区間生成手段は、前記経路に沿う方向を分割する長さと、当該経路に沿う方向と略直交する方向である幅とを受け付け、当該長さと幅とで囲まれる領域を区間として生成することを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る経路データ生成システムは、区間生成手段によって、任意の大きさの領域が区間として生成されるため、ユーザの利用目的に応じて、計測データをより効果的に利用することができる。
【0012】
また、好ましくは、前記経路データ生成手段によって生成される経路データについて、所望の期間を条件として受け付ける条件受付手段を、さらに備え、前記計測データ判定手段は、前記複数の区間それぞれにおいて前記所望の期間に一致する計測データが存在するか否かを判定することを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る経路データ生成システムは、複数の区間それぞれにおいて期間を条件として計測データを抽出するため、ユーザが所望する期間における計測データに基づいて経路データを生成することができる。その結果、ユーザにとっては、蓄積されている計測データを利用目的に応じて効果的に利用することができる。
【0013】
また、好ましくは、前記経路データ生成手段は、前記計測データ判定手段によって前記複数の区間それぞれにおいて存在すると判定された計測データのうち、最新の計測データに基づいて前記経路の経路データを生成することを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る経路データ生成システムは、複数の区間それぞれにおいて最新の計測データを抽出するため、一部区間において計測データが更新されていない場合であっても、その他は更新された計測データに基づいて経路データを生成することができる。
【0014】
また、好ましくは、前記経路データが生成される際に用いられる計測データは、当該計測データが計測された計測位置において取得された画像データまたは点群データの少なくともいずれかを含むことを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る経路データ生成システムは、複数の区間それぞれにおける画像データまたは点群データの少なくともいずれかを利用することができる。その結果、ユーザにとっては、直感的に視認しやすく、利用しやすいシステムとして提供することができる。
【0015】
さらに、上述した本発明の一局面に係る経路データ生成システムが行うそれぞれの処理は、一連の処理手順を与える経路データ生成方法として捉えることができる。この方法は、一連の処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムの形式で提供される。このプログラムは、所定のサーバからダウンロードする形態で、プログラムが格納された所定のサーバにインターネット経由でアクセスする形態で、もしくはコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録された形態で、コンピュータに導入されてもよい。また、上述した本発明の一局面に係る経路データ生成システムを構成する一部又は全部の機能ブロックは、集積回路であるLSI(Large-Scale Integration)等として実現されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、所望する任意の経路における計測データを効果的に利用できる経路データ生成システムを実現することである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る経路データ生成システム100を示す機能ブロック図ある。
図2】本発明の一実施形態に係る経路データ生成システム100が実行する経路データ生成方法200を示すフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態に係る経路データ生成システム100で利用する計測データの一例を示す図である。
図4】地図上において始点Sと終点Eとを有する経路を所定単位となる区間に分割する様子を示す図である。
図5A図4に示した区間dの拡大図である。
図5B】区間dに計測車両の走行軌跡が存在する計測データを示す図である。
図6A図4に示した区間dの拡大図であって、区間dに計測車両の走行軌跡が存在する計測データの計測ポイントを示す図である。
図6B】区間dに計測車両の走行軌跡が存在する計測データを計測ポイント毎に展開したレコードを示す図である。
図7A】区間dに存在する計測ポイントのうち、条件に一致する適切な計測ポイントが選択される様子を示す図である。
図7B】区間dにおいて条件に一致する適切な計測ポイントとして選択された計測ポイントに対応するレコードを示す図である。
図8】始点Sと終点Eとを有する経路において分割された区間a~区間h毎に経路データが生成された結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る経路データ生成システム100における各機能を示す機能ブロック図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る経路データ生成システム100が実行する経路データ生成方法200を示すフローチャートである。
【0020】
図1において、経路データ生成システム100は、経路受付手段110と、条件受付手段120と、区間生成手段130と、計測データ判定手段140と、経路データ生成手段150と、経路データ提示手段160と、記録手段170とを備える。
【0021】
経路データ生成システム100における各機能は、典型的にはCPU等の制御部によって実現される。当該各機能は、1つのコンピュータで実現されても構わないし、ローカルネットワークおよびインターネットを介してクライアントとサーバとで構成されるクライアントサーバシステムで実現されても構わない。また、記録手段170は、HDD(Hard Disk Drive)や不揮発性メモリ(フラッシュメモリ)やCDROM、DVD、又はBlu-ray(登録商標)などの光学ディスクといった可搬型記憶媒体に記憶されているデータベースであって、ここでは、当該経路データ生成システム100に含まれる構成としているが、別途、データベースサーバを設ける構成としても構わない。
【0022】
図2において、経路データ生成方法200は、地図表示ステップS210と、経路受付ステップS220と、期間条件受付ステップS230と、区間生成ステップS240と、計測データ探索ステップS250と、計測データ判定ステップS260と、経路データ生成ステップS270と、区間存在判定ステップS280と、経路データ提示ステップS290とを含む。
【0023】
地図表示ステップS210において、経路データ生成システム100は、当該システムで利用する地図を画面に表示する。例えば、地図は、メモリおよびデータベース等の記録手段170に予め記録されていても構わないし、サーバまたは別システムからダウンロードすることにより取得しても構わない。
【0024】
経路受付ステップS220において、経路受付手段110は、表示された地図上において始点Sと終点Eとを有する経路を受け付ける。具体的には、ユーザが、画面に表示された地図上において、始点Sとなる位置と終点Eとなる位置とについて、キーボードやマウスなどから直接指定したり、住所または所在地を入力したりすることによって、経路受付手段110は始点Sと終点Eとを有する経路を受け付ける。
【0025】
期間条件受付ステップS230において、条件受付手段120は、経路データ生成手段150によって生成される経路データについて、所望の期間を条件として受け付ける。具体的には、ユーザが所望する期間を入力することによって、条件受付手段120は当該期間を受け付け、当該期間中に計測された計測データに基づいて経路データを生成することになる。
【0026】
なお、条件受付手段120は、ユーザによって入力される始期と終期とに基づいて期間を受け付けても構わないし、最古、最新、または1年以内等をユーザに選択させる形式で期間を受け付けても構わない。
【0027】
また、条件は、ユーザからの都度入力に基づくものでなくても構わない。例えば、当該システムにおいて、計測データのうち最新の計測データを、ユーザが最も利用すると想定される場合には、予め当該条件を設定しておいても構わない。そして、経路データ生成手段150は、当該最新の計測データに基づいて経路データを生成する。
【0028】
ここで、計測データとは、一般的に、MMSを搭載した計測車両が取得する各種データや当該計測車両の走行軌跡である。より具体的には、MMSには、計測車両の位置情報を取得するGPSと、計測車両の傾きを取得するIMUと、複数のレーザーポイントを照射し、物体によって反射された複数のレーザーポイントの反射強度を取得するレーザースキャナー、および計測車両から物体を撮影するカメラ等の計測装置が具備されている。これらの計測装置を用いて、地形、建築物、構造物、道路、橋梁、トンネル、および標識等の情報が取得され、当該取得された情報は計測データとして、データベース等の記録手段170に蓄積されている。典型的には、計測日時、経路、計測車両の位置情報、計測車両の向き情報、画像データ、点群データ等である。
【0029】
図3は、本発明の一実施形態に係る経路データ生成システム100で利用する計測データの一例を示す図である。図3において、各レコードは、GPS、IMU、レーザースキャナー、およびカメラが搭載された計測車両の走行軌跡に沿って、それぞれ計測しながら取得したデータを示すものである。
【0030】
ここで、「No」は、各レコードに対して一意に振られる番号である。「計測ID」は、計測車両の番号と計測を最初に開始した日時を組合せた値である。「シーン番号」は、計測を開始してから何回目の計測を行ったか示した値である。「計測日時」は、計測を最初に開始した日時である。「車両位置情報」は、車両に搭載されているGPS等から所定の間隔で(例えば、0.5秒毎に、または2m毎等)取得した位置情報を示した値である。「車両向き(角変位)」は、車両に搭載されているIMU等から所定の間隔で取得したロール、ピッチ、ヘディングの情報が格納されている。また、上記以外にも計測時の天候等が、データに格納されても良い。
【0031】
例えば、No.1に示されるレコードは、2015年7月15日16時24分に計測を開始し、計測装置を搭載した計測車両(計測の車両番号:「0708」)を進めながら、所定の間隔でGPSによって計測車両位置(座標)を計測し、IMU等によって計測車両の向き(角変位)を計測したものである。さらに、当該所定の間隔で、カメラを用いて撮影した画像データ、およびレーザースキャナーを用いて計測した反射強度と計測車両位置と計測車両の向き等から算出した位置座標の点群データを取得している。換言すれば、所定の間隔で計測車両の位置および計測車両の向きに関する情報を取得し、当該計測車両位置に紐付く画像データおよび点群データを含めて計測データとして蓄積している。このように、2015年7月15日16時24分に計測が開始されて、計測車両を進めながら取得されたデータは、計測車両の走行軌跡に沿って紐付けられた、一連の計測データ(シーン番号S08)として管理される。また、同様に、No.2に示されるレコードはシーン番号S06として、No.3に示されるレコードはシーン番号S10として、管理される。
【0032】
区間生成ステップS240において、区間生成手段130は、経路を所定単位となる区間に分割して複数の区間を生成する。ここで、区間とは、経路に沿う方向を分割する長さと、当該経路に沿う方向と略直交する方向である幅とで囲まれる領域であり、典型的には、長さは、計測データの計測間隔に基づいて設定し、幅は、道路幅員に基づいて設定する。また、特殊車両の通過判定に当該システムを利用する場合等は、幅は、当該特殊車両の車幅に走行する際の余裕を持たせたサイズ(例えば、車幅+2m)を設定したり、さらには、当該特殊車両の長さを含めて右折、左折、および曲線道路を考慮したサイズを設定したりしても構わない。
【0033】
図4は、地図上において始点Sと終点Eとを有する経路を所定単位となる区間に分割する様子を示す図である。図4において、経路受付ステップS220で経路受付手段110によって受け付けられた始点Sと終点Eとを有する経路が区間a~区間hに分割されている。ここでは、説明を容易にするために、始点Sと終点Eとを有する経路は、距離を短く、かつ一直線で設定しているが、実際は、右折、左折、および曲線道路を含んでも構わないし、さらに長距離となる経路を設定する場合もある。
【0034】
なお、ここでは、区間は、長さを2m、幅を道路幅員に設定して形成されているが、これらは、経路データを生成する毎にユーザが指定しても構わないし、長さのみをユーザが指定し、幅は道路幅員を自動的に設定するようにしても構わない。さらに、長さについて、予め固定値を設定しても構わないし、計測データの計測間隔に基づく値を設定するようにしておいても構わない。
【0035】
また、図4に示すように、(A)2015年計測は、計測車両の走行軌跡として、区間cおよび区間dの一部を含んでおり、(B)2016年計測は、計測車両の走行軌跡として、区間a~区間hを含んでおり、(C)2018年計測は、計測車両の走行軌跡として、区間bおよび区間gの一部と区間c~区間fとを含んでいる。換言すれば、(A)2015年計測において、区間cおよび区間dの計測データが蓄積されている可能性があり、(B)2016年計測において、区間a~区間hの計測データが蓄積されている可能性があり、(C)2018年計測において、区間b~区間gの計測データが蓄積されている可能性がある。
【0036】
計測データ探索ステップS250において、計測データ判定手段140は、記録手段170に記録されている計測データのうち、区間毎に計測車両の走行軌跡が存在する計測データを探索し、経路データを生成する上で候補となる計測データを抽出する。
【0037】
以下、実際には、複数に分割された区間単位に繰り返し実行される処理であるが、ここでは、それらのうち、主に区間dにおける計測データおよび処理を例に挙げて説明する。
【0038】
図5Aは、図4に示した区間dの拡大図であり、図5Bは、区間dに計測車両の走行軌跡が存在する計測データを示す図である。図5Aに示すように、区間dには、(A)2015年計測、(B)2016年計測、および(C)2018年計測において、計測車両の走行軌跡が存在しており、図5Bに示すように、レコードNo.1((A)2015年計測)、レコードNo.2((B)2016年計測)、およびレコードNo.3((C)2018年計測)が候補として抽出される。
【0039】
計測データ判定ステップS260において、計測データ判定手段140は、複数の区間それぞれにおいて計測データが存在するか否かを判定する。具体的には、計測データ判定手段140は、計測データ探索ステップS250で抽出された計測データの候補のうち、実際に、各区間において計測データが取得された計測車両の計測ポイントが存在するか否かを判定する。
【0040】
図6Aは、図4に示した区間dの拡大図であって、区間dに計測車両の走行軌跡が存在する計測データの計測ポイントを示す図であり、図6Bは、区間dに計測車両の走行軌跡が存在する計測データを計測ポイント毎に展開したレコードを示す図である。
【0041】
図6Aに示すように、区間dおよびその周辺において、(A)2015年計測における計測ポイント(1-1)(1-2)、(B)2016年計測における計測ポイント(2-1)(2-2)(2-3)、および(C)2018年計測における計測ポイント(3-1)(3-2)(3-3)が存在する。
【0042】
ここで、GPS、IMU、レーザースキャナー、およびカメラを搭載した計測車両が走行しながら計測データを取得するが、当該走行している計測車両は、所定の間隔で(例えば、0.5秒毎に、または2m毎に、)各種計測データを取得する。当該各種計測データを取得する計測車両の位置を計測ポイントという。
【0043】
図6Aに示すように、区間dにおいて、(A)2015年計測における計測車両の走行軌跡が存在しているものの、計測ポイント(1-1)(1-2)は、区間dに存在していない。(B)2016年計測における計測ポイント(2-1)(2-2)(2-3)のうち、計測ポイント(2-2)は区間dに存在している。(C)2018年計測における計測ポイント(3-1)(3-2)(3-3)のうち、計測ポイント(3-2)は区間dに存在している。
【0044】
図6Bは、図6Aで示した計測ポイント(1-1)(1-2)(2-1)(2-2)(2-3)(3-1)(3-2)(3-3)それぞれにおける計測データのレコードを示している。例えば、(1-1)および(1-2)に示されるレコードは、(A)2015年計測において、計測車両を進めながら、当該計測車両に搭載されたGPS、IMU、レーザースキャナー、およびカメラを用いて、所定の間隔で取得したそれぞれ一地点での計測データである。同様に、(2-1)(2-2)(2-3)に示されるレコードは、(B)2016年計測において所定の間隔で取得されたそれぞれ一地点での計測データであり、(3-1)(3-2)(3-3)に示されるレコードは、(C)2018年計測において所定の間隔で取得されたそれぞれ一地点での計測データである。
【0045】
換言すれば、計測時の計測車両の位置である計測ポイント(1-1)(1-2)(2-1)(2-2)(2-3)(3-1)(3-2)(3-3)毎に取得された種々の計測データが蓄積されている。種々の計測データには、典型的には、計測ポイントからレーザースキャナーを用いて計測した反射強度と計測車両位置と計測車両の向き等から算出した位置座標の点群データ、および計測ポイントから撮影した画像データ等が含まれている。
【0046】
ここで、本実施形態の場合、区間dにおいては、計測ポイント(2-2)および(3-2)が区間dに存在していると判定され(ステップS260のYes)、その他は区間dに存在していないと判定される(ステップS260のNo、ステップS300)。
【0047】
計測データ判定ステップS260で区間dに存在すると判定された計測ポイント(2-2)および(3-2)における計測データは、以降の処理に用いられるが、期間条件受付ステップS230において受け付けられた条件に一致し、適切な計測データが選択される。
【0048】
図7Aは、区間dに存在する計測ポイントのうち、条件に一致する適切な計測ポイントが選択される様子を示す図であり、図7Bは、区間dにおいて条件に一致する適切な計測ポイントとして選択された計測ポイントに対応するレコードを示す図である。例えば、期間条件受付ステップS230において、ユーザが2017年~2018年と条件を入力していたり、最新と条件を選択していたりすれば、図7Aに示すように計測ポイント(3-2)が条件に一致する適切な計測データとして選択される。
【0049】
経路データ生成ステップS270において、経路データ生成手段150は、複数の区間それぞれにおいて存在する計測データに基づいて経路データを生成する。より具体的には、上述したように計測データ判定ステップS260で、区間dにおいて計測ポイント(3-2)が選択されると、計測ポイント(3-2)における計測データを区間dの計測情報として付与し、計測データ管理区間経路線700を形成する。計測データ管理区間経路線700は、当該区間dにおいて管理される計測データが存在していることを示し、付与される計測情報としては、典型的には、計測ポイント(3-2)における画像データおよび点群データ等を含む計測データである。
【0050】
このように、経路データ生成手段150は、区間dにおいて、計測ポイント(3-2)における計測データに基づいて、計測データ管理区間経路線700を形成し、典型的には、画像データおよび点群データを含む計測データを計測情報として付与することによって、経路データを生成している。
【0051】
なお、ここでは、最新の計測ポイント(3-2)が選択される例を示しているが、期間条件受付ステップS230において受け付けられた条件に応じて、その他の計測ポイントが選択される場合もある。例えば、過去に災害や事故等が発生し、それ以前の計測データが必要となる場合には、最新の計測データではなく、特定期間の計測データが要求され、選択される。そして、当該選択された計測ポイントにおける計測データ(典型的には、画像データおよび点群データ)が区間dの計測情報として付与され、計測データ管理区間経路線700が形成される。
【0052】
区間存在判定ステップS280において、計測データ判定手段140は、次に処理すべき区間が存在するか否かを判定する。本実施形態の場合、区間aから順に区間hまで、計測データ探索ステップS250、計測データ判定ステップS260、および経路データ生成ステップS270を繰り返し実行されるが、区間hの処理が終了すれば、次の処理すべき区間は存在しないと判定され(ステップS280のNo)、次の処理(ステップS290)に進む。
【0053】
以上、ここでは、区間dにおける計測データを一例に説明したが、計測データ探索ステップS250、計測データ判定ステップS260、および経路データ生成ステップS270は、始点Sと終点Eとを有する経路において分割された区間a~区間hについて繰り返し処理される。
【0054】
図8は、始点Sと終点Eとを有する経路において分割された区間a~区間h毎に経路データが生成された結果を示す図である。ここで、「MMS計測データファイル名」は、レーザースキャナーを用いて計測した反射強度と計測車両位置と計測車両の向き等から算出した位置座標の点群データ、および計測ポイントから撮影した画像データ等が、格納されているファイル名と計測ポイントを示した値である。上記の値のファイル名から、点群データと画像データを読み込み、計測ポイントをもとに、計測ポイントで計測した反射強度と計測車両位置と計測車両の向き等から算出した位置座標の点群データと計測ポイントから撮影した画像データを読み込むことが可能となる。また、「MMS計測データファイル名」は、レーザースキャナーを用いて計測した反射強度と計測車両位置と計測車両の向き等から算出した位置座標の点群データ、および計測ポイントから撮影した画像データ等が、格納されているファイル名でも良い。この場合は、車両位置情報を計測ポイントとすることによって、計測ポイントで計測した反射強度と計測車両位置と計測車両の向き等から算出した位置座標の点群データと画像データを読み込むことが可能になる。図8に示すように、区間a~区間h毎に経路データが生成されて、その結果、地図上において始点Sと終点Eとを有する経路における経路データが生成されている。
【0055】
区間dにおいては、上記一例で示したように、(C)2018年計測の計測ポイント(3-2)における計測データが選択され、区間dの計測情報として計測データ管理区間経路線700に付与されている。
【0056】
その他、区間a、区間b、区間g、および区間hについて、(B)2016年計測の各区間に存在する計測ポイントにおける計測データがそれぞれ選択され、区間a、区間b、区間g、および区間hの計測情報として、それぞれ計測データ管理区間経路線700に付与されている。また、区間c、区間e、および区間fにおいては、(C)2018年計測の各区間に存在する計測ポイントにおける計測データがそれぞれ選択され、区間c、区間e、および区間fの計測情報として、それぞれ計測データ管理区間経路線700に付与されている。
【0057】
このように、始点Sと終点Eとを有する経路において、区間毎に、計測データに基づく経路データを生成すれば、一部区間において計測データが更新されていない場合であっても、その他は更新された計測データに基づいて経路データを生成することができる。より具体的には、ここでは、始点Sと終点Eとを有する経路において、(B)2016年計測の計測データは一連に存在しているものの、区間a~区間hのうち、区間c~区間fには、(C)2018年計測の計測データが存在する。すなわち、始点Sと終点Eとを有する経路において、ユーザが最新の経路データを要求する場合、より新しい計測データが存在する区間c~区間fにおいては、(C)2018年計測の計測データに基づいて経路データを生成することができる。
【0058】
経路データ提示ステップS290において、経路データ提示手段160は、経路データ生成ステップS270で生成された経路データを、地図上に重畳する形式で提示する。
【0059】
より具体的には、地図上に表示されている始点Sと終点Eとを有する経路に沿って、経路データ生成ステップS270で区間a~区間h毎に計測データ管理区間経路線700に計測情報として付与された画像データを当該地図上に重畳して表示する。これにより、ユーザが指定した経路において、当該経路の始点から終点まで継続的に画像データが表示され、ユーザにとっては、当該経路において所望する条件に一致する適切な画像データを確認することができる。道路、町並み、その他景色などを視認することができる。
【0060】
また、地図上に表示されている始点Sと終点Eとを有する経路に沿って、経路データ生成ステップS270で区間a~区間h毎に計測データ管理区間経路線700に計測情報として付与された点群データを当該地図上に重畳して表示する。これにより、ユーザが指定した経路において、当該経路の始点から終点まで継続的に点群データが表示され、ユーザにとっては、当該経路において所望する条件に一致する適切な点群データを確認することができる。道路、橋梁、建物等の形状を具体的に確認することができるため、例えば、大型特殊車両が通過可能な道路や橋梁か等を判断することができる。
【0061】
以上のように、本発明の一実施形態に係る経路データ生成システム100および経路データ生成方法200によれば、所望する任意の経路における計測データを効果的に利用することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、区間dにおいて、期間条件受付ステップS230において受け付けられた条件に一致し、適切な計測データとして、計測ポイント(3-2)における計測データを1つだけ選択したが、例えば、当該条件に一致する計測ポイント(計測データ)が複数存在する場合も考えられる。その場合、複数存在する計測データのうち、ユーザにいずれかを選択させるか、追加条件や優先キーを予め設定することによって、最適な計測データを選択するようにしても構わない。例えば、ユーザによって受け付ける期間条件として2000年~2019年である場合、さらに、そのうちの最新と設定すればよい。
【0063】
一方、当該条件に一致する計測ポイント(計測データ)が存在しない場合も考えられる。その場合、計測データが存在しない旨を応答しても構わないし、当該計測データが存在しない区間のみブランクとしても構わない。また、当該計測データが存在しない区間に隣接する区間に基づいて計測データを推測し、補完するようにしても構わない。
【0064】
以上、本発明の実施形態についての具体的な説明を行った。上記説明は、あくまで一実施形態としての説明であって、本発明の範囲はこの一実施形態に留まらず、当業者が把握可能な範囲にまで広く解釈されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、蓄積された計測データに基づいて所望の経路データを生成するシステム等に利用可能であって、特に、車両の通過可否などの判定を行うシステム等に有用である。
【符号の説明】
【0066】
100 経路データ生成システム
110 経路受付手段
120 条件受付手段
130 区間生成手段
140 計測データ判定手段
150 経路データ生成手段
160 経路データ提示手段
170 記録手段
200 経路データ生成方法
700 計測データ管理区間経路線
S210 地図表示ステップ
S220 経路受付ステップ
S230 期間条件受付ステップ
S240 区間生成ステップ
S250 計測データ探索ステップ
S260 計測データ判定ステップ
S270 経路データ生成ステップ
S280 区間存在判定ステップ
S290 経路データ提示ステップ
a,b,c,d,e,f,g,h 区間
A,B,C 走行軌跡
S 始点
E 終点

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8