(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】冷却貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 11/00 20060101AFI20240126BHJP
F25D 23/00 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
F25D11/00 101U
F25D23/00 Z
(21)【出願番号】P 2019187546
(22)【出願日】2019-10-11
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河地 基宏
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 隆史
(72)【発明者】
【氏名】奥村 洋平
(72)【発明者】
【氏名】孫 龍
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-026263(JP,A)
【文献】特開2019-128051(JP,A)
【文献】特開2008-134038(JP,A)
【文献】特開平08-228989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00-31/00
A47L 15/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室を有する箱状の貯蔵庫本体と、前記貯蔵室内に設けられて少なくとも冷却器を含んで構成されて前記貯蔵室を冷却する冷却ユニットと、前記貯蔵室内に設けられて水を噴射することで前記貯蔵室内を洗浄する洗浄装置と、を含んで構成される冷却貯蔵庫であって、
前記冷却ユニットは、前記冷却器に対して水平方向に並んで設けられて前記貯蔵室内の空気を循環させる循環ファンを備え、
前記洗浄装置は、
前記冷却器と前記循環ファンとの間に配され、互いに上下方向に間隔をおいて設けられてそれぞれが水平方向に延設される複数の延設部を有し、洗浄水を導水する導水管
を備え、
前記複数の延設部には、前記循環ファン側に開口して前記循環ファンに向かって水を噴射するための複数の噴射孔が貫通形成され、
前記複数の延設部のうち最も上側に位置するものは、前記冷却器に対向して前記冷却器における側面の上端部に沿って延設される冷却器対向延設部とされ、
前記冷却器対向延設部には、その延設方向に間隔をおい
て、前記冷却器に向かっ
て洗浄水を噴射する複数の吐出ノズル
が設けられ、
前記複数の吐出ノズルは、それぞれが前記噴射孔の噴射範囲に比較して前記延設方向に広がる範囲に洗浄水を噴射する
ものとされ、隣接する前記吐出ノズル同士の噴射範囲が一部重なるようにされており、
前記冷却器対向延設部以外の前記延設部からは、前記冷却器に向かって洗浄水を噴射しないように構成された、冷却貯蔵庫。
【請求項2】
前記複数の吐出ノズルの各々は、前記延設方向において、前記複数の噴射孔からずれた位置に設けられている、請求項1に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項3】
前記冷却ユニットは、少なくとも前記冷却器を収容するハウジングを備え、
前記洗浄装置は、前記貯蔵室の天井面に設けられて前記貯蔵室の内面および前記ハウジングの外面に洗浄水を噴射する天井側噴射部を有し、
前記ハウジングには、上面の外周縁の一部に沿って立設する立設部が形成された請求項1または請求項2に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記冷却器を収容するとともに前記冷却器に接続される冷媒管を挿通させる開口が自身の上面に形成された冷却器ケースと、前記冷媒管における前記冷却器ケースの上方側に延設する部分を上方から覆う冷媒管カバーと、を含んで構成され、
前記立設部は、前記冷媒管カバーの上面に形成された請求項3に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項5】
前記冷却器ケースには、前記開口の開口縁に沿って立設する開口縁立設部が形成された請求項4に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項6】
前記洗浄装置は、
一方に開口する箱状をなして洗剤を入れることが可能な洗剤トレイと、前記貯蔵室内における立壁状の壁面を有する立壁部に固定されて前記洗剤トレイを回動可能に保持するトレイ保持具と、を含んで構成され、前記洗浄装置による洗浄時に洗剤を投入する洗剤投入機構を備え、
前記洗剤トレイは、自身の開口縁から前記一方に延び出すように形成された延出部を有し、
前記立壁部には、前記洗浄装置による洗浄水を噴射させる立壁部噴射孔が形成され、
前記洗剤投入機構は、
洗浄前において、前記洗剤トレイが上方に開口した状態で保持され、その状態において前記延出部によって前記立壁部噴射孔が塞がれており、
前記洗浄装置によって洗浄が開始されると、前記立壁部噴射孔から噴射された洗浄水が前記延出部に当たって前記洗剤トレイが回動し、前記洗剤トレイから洗剤を落下させるようにして洗剤を投入する構成とされ、
前記洗剤トレイは、前記立壁部噴射孔から噴射された洗浄水によって回動させられた後、前記延出部が前記トレイ保持具に当接し、傾倒した状態で止められるようになっており、前記延出部には、前記立壁部噴射孔から噴射された洗浄水を挿通させる挿通部が形成されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の冷却貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、冷却室(貯蔵室)の内部に、冷却室を冷却する冷却ユニットと、水を噴射することで冷却室の内部を洗浄する洗浄装置と、を備えた冷却装置(冷却貯蔵庫)が記載されている。下記特許文献1に記載の冷却装置は、洗浄水噴射部から噴射された洗浄水を、冷却室の底部に設けた集水口から貯水タンクへ流下させて、洗浄水を洗浄水噴射部と貯水タンクとの間で繰返し循環させながら冷却室の内部を洗浄するように構成されている。このような構成により、洗浄時間に応じて洗浄水が消費されることがなく、貯水タンクに貯留された洗浄水で冷却室の内部の洗浄を行うことができ、洗浄水が無駄に消費されるのを解消して節水を行いつつ、適切に洗浄できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された冷却貯蔵庫のように、貯蔵室の内部に冷却ユニットが設けられているような構成とされる場合、噴射部の死角となるような部分が存在し、噴射された洗浄水が十分に流れず、貯蔵室内の洗浄が不十分となる虞がある。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、貯蔵室内に冷却ユニットを設けた冷却貯蔵庫において、洗浄装置による洗浄力を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の冷却貯蔵庫は、
貯蔵室を有する箱状の貯蔵庫本体と、前記貯蔵室内に設けられて少なくとも冷却器を含んで構成されて前記貯蔵室を冷却する冷却ユニットと、前記貯蔵室内に設けられて水を噴射することで前記貯蔵室内を洗浄する洗浄装置と、を含んで構成される冷却貯蔵庫であって、
前記洗浄装置は、
前記冷却器に対向して前記冷却器における側面の上端部に沿って延設される冷却器対向延設部を有し、洗浄水を導水する導水管と、
前記冷却器対向延設部にその延設方向に間隔をおいて設けられ、前記冷却器に向かって少なくとも前記延設方向に広がる範囲に洗浄水を噴射する複数の吐出ノズルと、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
従来から、冷却器(蒸発器)の洗浄には、導水管を、冷却器の側面に対向する状態で、例えば蛇行状や並列的に配して、その導水管に形成した噴射孔から洗浄水を噴射させて洗浄するような構成が採用されていた。しかしながら、そのような構成では、各噴射孔から噴射される洗浄水によって洗浄される範囲が狭く、冷却器の洗浄が不十分となる虞があった。それに対して、この構成の冷却貯蔵庫によれば、冷却器の側面上端部を、その上端部に沿う方向において広範囲に噴射できる複数の吐出ノズルによって、隙間なく洗浄水を吹き付けることができるとともに、その洗浄水を下方に流すことで、冷却器を下方まで十分に洗浄することができる。なお、吐出ノズルは、例えば扇状(広角的)に洗浄水を噴射するものとし、隣接する吐出ノズル同士の噴射範囲が一部重なるようにすることで、冷却器の側面上端部に隙間なく、洗浄水を吹き付けることができる。ちなみに、この構成の冷却貯蔵庫は、冷却器の少なくとも側面上端部に向かって洗浄水を噴射する吐出ノズルを備える構成であればよく、冷却器の上端部より下方側にも、洗浄水を噴射する噴射孔や吐出ノズルが設けられた構成であってもよい。ただし、冷却器対向延設部に設けられた複数の吐出ノズルからの洗浄水の噴射のみでも、十分な洗浄効果を得ることができる。
【0008】
上記構成において、前記冷却ユニットは、前記冷却器に対して水平方向に並んで設けられて前記貯蔵室内の空気を循環させる循環ファンを備え、
前記導水管は、前記冷却器と前記循環ファンとの間に配され、互いに上下方向に間隔をおいて設けられてそれぞれが水平方向に延設される複数の延設部を有するものとされ、
前記複数の延設部には、前記循環ファン側に開口して前記循環ファンに向かって水を噴射するための複数の噴射孔が形成され、
前記複数の延設部のうち最も上側に位置するもののみに、前記吐出ノズルが設けられて、その最も上側の前記延設部が前記冷却器対向延設部として機能するものとされ、その最も上側の前記延設部以外の前記延設部からは、前記冷却器に向かって洗浄水を噴射しないように構成することができる。
【0009】
この構成の冷却貯蔵庫は、導水管が冷却器と循環ファンとの両者を洗浄するものとされている。そして、先に述べたように、上記の構成による冷却器の洗浄は、冷却器への側面上端部への洗浄水の吹き付けのみで十分な洗浄効果が得られるため、この構成の冷却貯蔵庫は、最も上側の延設部(冷却器対向延設部)以外には、吐出ノズルが設けられておらず、必要最小限の吐出ノズルで効率的に冷却器の洗浄を行うことができるものとなっている。換言すれば、吐出ノズルを増やすことによる費用の増加や製造タスクの増加を抑えることができる。
【0010】
また、上記構成において、前記冷却ユニットは、少なくとも前記冷却器を収容するハウジングを備え、前記洗浄装置は、前記貯蔵室の天井面に設けられて前記貯蔵室の内面および前記ハウジングの外面に洗浄水を噴射する天井側噴射部を有し、前記ハウジングには、上面の外周縁の一部に沿って立設する立設部が形成された構成とすることができる。
【0011】
冷却ユニットのハウジングは、天井側噴射部との位置関係により、その天井側噴射部から噴射された洗浄水が流れにくい面が存在する。この構成の冷却貯蔵庫は、ハウジング上面に溜まった洗浄水を、立設部が形成されていない部分から流下させることが可能となり、洗浄水が流れにくい面に流れる洗浄水を増やすことできる。つまり、この構成の冷却貯蔵庫によれば、冷却ユニットのハウジングにおける天井側噴射部の死角となる面に流れる洗浄水を増加させることができ、冷却ユニットの洗浄力を高めることができる。
【0012】
また、上記構成において、前記ハウジングは、前記冷却器を収容するとともに前記冷却器に接続される冷媒管を挿通させる開口が自身の上面に形成された冷却器ケースと、前記冷媒管における前記冷却器ケースの上方側に延設する部分を上方から覆う冷媒管カバーと、を含んで構成され、前記立設部は、前記冷媒管カバーの上面に形成された構成とすることができる。
【0013】
この構成の冷却貯蔵庫は、冷却ユニットの構成およびそれを収容するハウジングの構成が限定されている。この構成の冷却貯蔵庫において、冷媒管カバーは、その上面における外縁の一部が冷却器ケースの上面の上方に位置していること、換言すれば、上下方向において重なるようにされていることが望ましい。そのような構成とすることで、冷媒管カバーのその一部から冷却器ケースの上面に洗浄水を流下させることができるため、冷却器ケースの上面から外面に向かって洗浄水を流すことができ、冷却器ケースの外面の洗浄力を高めることができる。
【0014】
また、上記構成において、前記冷却器ケースには、前記開口の開口縁に沿って立設する開口縁立設部が形成された構成とすることができる。
【0015】
この構成の冷却貯蔵庫は、開口縁立設部によって、冷却器ケースの上の洗浄水が、開口から冷却器ケースの内部に流下してしまうことを抑制することができる。つまり、冷却器ケースの上の洗浄水を冷却器ケースの外面に沿って流下させることができる。上述したように、冷却器の洗浄は、上記構成によって十分に行われているため、冷却器ケースの上に溜まった洗浄水を冷却器ケースの外面に流して、冷却器ケースの外面に流れる洗浄水を増やすことで、冷却器ケースの外面の洗浄力を高めることができる。
【0016】
また、上記構成において、前記洗浄装置は、一方に開口する箱状をなして洗剤を入れることが可能な洗剤トレイと、前記貯蔵室内における立壁状の壁面を有する立壁部に固定されて前記洗剤トレイを回動可能に保持するトレイ保持具と、を含んで構成され、前記洗浄装置による洗浄時に洗剤を投入する洗剤投入機構を備え、
前記洗剤トレイは、自身の開口縁から前記一方に延び出すように形成された延出部を有し、
前記立壁部には、前記洗浄装置による洗浄水を噴射させる立壁部噴射孔が形成され、
前記洗剤投入機構は、
洗浄前において、前記洗剤トレイが上方に開口した状態で保持され、その状態において前記延出部によって前記立壁部噴射孔が塞がれており、
前記洗浄装置によって洗浄が開始されると、前記立壁部噴射孔から噴射された洗浄水が前記延出部に当たって前記洗剤トレイが回動し、前記洗剤トレイから洗剤を落下させるようにして洗剤を投入する構成とされ、
前記洗剤トレイは、前記立壁部噴射孔から噴射された洗浄水によって回動させられた後、前記延出部が前記トレイ保持具に当接し、傾倒した状態で止められるようになっており、前記延出部には、前記立壁部噴射孔から噴射された洗浄水を挿通させる挿通部が形成されている構成とすることができる。
【0017】
この構成の冷却貯蔵庫は、洗剤トレイに洗剤を入れておくと、洗浄時における洗浄水の噴射を利用して、洗剤を投入することができる。なお、この構成の冷却貯蔵庫は、洗剤トレイの延出部がトレイ保持具に当接するため、洗浄後に、元の状態に戻しやすい構成となっている。そのため、従来は、洗浄中において、洗剤トレイの延出部が立壁部噴射孔から噴射された洗浄水に当たって拡散してしまうような場合があったが、この構成の冷却貯蔵庫は、延出部に挿通部が形成されているため、上記のように洗浄水が洗剤トレイの延出部に当たって拡散してしまうような事態を回避し、立壁部噴射孔から噴射された洗浄水を、効率的に洗浄に利用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、貯蔵室内に冷却ユニットを設けた冷却貯蔵庫において、洗浄装置による洗浄力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る急速冷却庫を示す正面図
【
図3】カート及び扉を省略した状態の冷却庫本体を示す斜視図
【
図4】カート配置空間を開放した状態の急速冷却庫を示す正面図(カート収容状態)
【
図5】扉12,17Aが開いた状態の急速冷却庫を示す斜視図(カート未収容状態)
【
図6】収容室内を正面側から視た図(冷却ユニットの内部構造を示す断面図)
【
図7】急速冷却庫を排気パイプに対応する箇所で切断した断面図
【
図8】収容室内及び収容空間内を正面側から視た図(カバー37Bを開けた状態)
【
図15】冷却ユニット側噴射部における冷却器対向延設部を拡大した図
【
図19】洗剤投入機構を示す斜視図(洗剤トレイが回転した状態)
【
図20】洗剤投入機構を示す正面図(洗剤トレイが回転した状態)
【
図21】冷却ユニットのケースの斜視図(冷媒管カバーを取り外した状態)
【
図24】冷却ユニットの前端側を拡大して示す側面図
【
図25】変形例に係る急速冷却庫を示す正面図(カート及び扉を省略した状態)
【
図26】
図25に示す洗剤投入機構が設けられた部分を拡大して示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を
図1から
図24によって説明する。本実施形態では、冷却貯蔵庫として、カートインタイプの急速冷却庫10(ブラストチラー)を例示する。急速冷却庫10は、
図1及び
図2に示すように、縦長の冷却庫本体11(貯蔵庫本体)と、扉12と、扉17Aと、カート13と、を備える。冷却庫本体11は断熱箱体であり、
図3に示すように、前方に開口された収容室(貯蔵室)15を有する箱状をなしている。冷却庫本体11の下面には、4つの脚部14が設けられている。冷却庫本体11は、4つの脚部14を介して、床面14A上に設置されており、冷却庫本体11の下面11Aと床面14Aとの間には隙間が設けられている。なお、以下の説明では、扉12側を前側、扉12とは反対側を後側として説明する。また、正面視(急速冷却庫10を前側から視た状態、
図1の状態)における左右方向が急速冷却庫10の左右方向である。
【0021】
カート13(トロリー)は、
図3に示すように、台車部19と、カート本体部20と、カート本体部20と台車部19とを接続する接続部21と、を備える。台車部19は、4つのキャスタ19A及び方形枠状の枠部材19Bを備え、床面14A上を移動可能な構成となっている。接続部21は、台車部19(より詳しくは枠部材19B)の前端部から上方に立ち上がる一対の柱体22,22と、一対の柱体22,22の後面に設けられた板部23と、を備える。カート本体部20は、板部23の後面から後方に延びる基盤24と、基盤24上に設けられた縦長の門型をなす前後一対のフレーム25,25と、一対のフレーム25,25間に亘って複数段に設けられたトレイ受け26と、を備える。トレイ受け26には、
図4に示すように、トレイ26Aが載置され、そのトレイ26Aには被冷却物である食品が載置される。
【0022】
基盤24は、
図3に示すように、台車部19の上方に配されている。そして、枠部材19Bと基盤24との間には、冷却庫本体11の底壁部15F(収容室の底面を構成する底壁部)を後方から挿入することが可能な隙間S1が設けられている。カート本体部20は、収容室15(より詳しくは収容室15のうちカート配置空間15A)に対してその前方から挿入ないし抜出し可能に収容されている。つまり、カート13を冷却庫本体11の前方から後方に動かすことで、カート本体部20をカート配置空間15Aに対して前方から挿入することでカート配置空間15Aに収容することができる。また、カート本体部20がカート配置空間15Aに収容された状態でカート13を前方に動かすことで、カート配置空間15Aからカート本体部20を取り出す(抜き出す)ことができる。なお、カート本体部20を収容室15に収容した状態(カート収容状態)では、台車部19の枠部材19Bは、底壁部15Fの下方に配置されている。
【0023】
収容室15(庫内)は、
図3に示すように、主にカート本体部20(ひいては被冷却物である食品)が配されるカート配置空間15Aと、冷却器35(
図6参照)を含む冷却ユニット16が主に配される冷却ユニット配置空間15B(冷却器配置空間)と、を有している。カート配置空間15Aは、収容室15の右側の領域であり、冷却ユニット配置空間15Bは、収容室15の左側の領域である。つまり、カート配置空間15Aと冷却ユニット配置空間15Bとは急速冷却庫10の左右方向(貯蔵庫の左右方向)に並んでおり、カート配置空間15A及び冷却ユニット配置空間15Bはそれぞれ前方に開口されている。
【0024】
扉12は、収容室15のうちカート配置空間15Aを開閉可能な構成とされる。扉12は、
図1に示すように、右側の側端部において、冷却庫本体11に対してヒンジ12Aを介して回動可能に取り付けられている。扉17A(冷却器側扉)は、左側の側端部において、冷却庫本体11に対して回動可能に取り付けられている。扉17Aは、収容室15のうち冷却ユニット配置空間15Bを開閉可能な構成とされる。扉12及び扉17Aは、閉状態では、左右方向に並んでいる。また、扉12及び扉17Aは、ロック機構52によって閉状態で固定される構成となっている。ロック機構52は、レバー53を備え、レバー53を操作することで、ロック機構52による扉12及び扉17Aの固定を解除することが可能となっている。
【0025】
冷却ユニット配置空間15Bには、
図6に示すように、冷却ユニット16が配置されている。冷却ユニット16は、2基の冷却器35(蒸発器)と、3基の庫内ファン(循環ファン)36と、冷却器35及び庫内ファン36が収容されたケース(冷却器ケース)37と、を備える。冷却器35は、収容室15を冷却するためのもので、庫内ファン36に対して左側に配されている。冷却器35は、冷媒管38(
図21参照)を介して、外部に設けられた冷凍装置(圧縮機、凝縮器及び凝縮器ファン、図示せず)の圧縮機及び凝縮器と循環接続されることで冷凍サイクルを構成するものとされる。なお、このような冷凍装置は、急速冷却庫10の内部に設けられていてもよい。また、冷却器35及び庫内ファン36の個数は適宜変更可能である。
【0026】
ケース37は、
図5に示すように、右側に開口された開口部37Dを有する箱状をなすケース本体37Aと、ケース本体37Aに対して回動可能に取り付けられたケースカバー37Bと、を備える。ケースカバー37Bは、後側の端部において、ケース本体37Aに対して回動可能に取り付けられており、開口部37Dを開閉可能な構成となっている。ケースカバー37Bを開けた状態(
図5及び
図8の状態)では、冷却器35が開口部37Dを通じて右側に露出する構成となっている。なお、庫内ファン36は、ケースカバー37Bに対して取り付けられている。
【0027】
収容室15を冷却する冷却運転において、冷凍装置と庫内ファン36とが運転されると、収容室15の空気(主にカート配置空間15Aの空気)がケース37内に吸引され、冷却器35を通過する際に冷やされることで冷気となり、ケース37から左側に吹き出された冷気が、収容室15を構成する左側の側壁部15D(
図6参照)に当たった後、ケース37を回り込むようにしてカート配置空間15Aに送り込まれる。このような空気の循環が連続的に行われることで収容室15(ひいてはトレイ26Aに載置された被冷却物)が冷却される。また、冷却器35の右側面には、ヒータ39が設けられている。ヒータ39は、庫内を乾燥させる乾燥運転(後述)を行う際に用いられる。このような乾燥運転は、例えば収容室15内を洗浄するための洗浄運転(後述)を行った後に実行される。
【0028】
急速冷却庫10は、収容室15内を洗浄するための洗浄装置40を備える。洗浄装置40は、タンク41(
図9参照)と、洗剤投入機構42(
図17参照)と、収容室15に設けられ、水を噴射することが可能な天井側噴射部45(
図10参照)と、ケース37内に設けられ、冷却器35及び庫内ファン36に水を噴射することが可能な冷却ユニット側噴射部46(
図5参照)と、天井側噴射部45及び冷却ユニット側噴射部46の各々にタンク41内の水を供給するポンプ43(
図8参照)と、を備える。
【0029】
冷却庫本体11は、収容室15の底面を構成する底壁部15Fを備えており、タンク41は、
図9に示すように、底壁部15Fの下面11Aに設けられている。底壁部15Fには、
図3に示すように、排水口15Gが貫通形成されており、タンク41は排水口15Gと接続されている。つまり、タンク41の内部空間と排水口15Gとは連通されており、底壁部15F上の水は排水口15Gを通じてタンク41に流れる構成となっている。
【0030】
また、
図8に示すように、天井壁部15Eの上方には、給水バルブ49が設けられている。給水バルブ49は、水道管等の水源と接続されている。また、給水バルブ49は、天井壁部15Eに貫通形成された給水用の孔(図示せず)と接続されている。これにより、給水バルブ49を開くことで、給水用の孔から収容室15内に水源からの水が供給され、収容室15内に供給された水は、底壁部15Fの排水口15Gを通じて、タンク41に溜められる。
【0031】
急速冷却庫10は、収容室15の左側に配された収容空間18を有しており、ポンプ43は、収容空間18における下部に設けられている。ポンプ43とタンク41は、
図9に示すように、配管47を介して接続されており、ポンプ43と天井側噴射部45は配管48を介して接続されている。また、ポンプ43は、図示しない配管を介して冷却ユニット側噴射部46とも接続されている。なお、洗浄装置40を構成する各機器は、例えば、収容空間18に設けられたコントロールボックス40A内に収容された制御部によって制御される。
【0032】
冷却庫本体11は、
図10に示すように、収容室15を構成する天井壁部15Eを備え、天井側噴射部45は、天井壁部15Eの下面15K(収容室の天井面)に設けられている。天井側噴射部45は、回転しながら洗浄水を噴射可能な金属製のパドルであって、
図10及び
図11に示すように、円筒部45Aと、円筒部45Aから突出するノズル管45Bと、円筒部45Aからノズル管45Bとは反対側に突出するノズル管45Cと、ノズル管45Cの中間部から下方に突出するノズル管45Dと、を備える。円筒部45Aは、天井壁部15Eから下方に突出する円筒状の突起部45E及び軸受け45Fを介して天井壁部15Eに対して回転可能に取り付けられている。これにより、天井側噴射部45は、突起部45E(上下方向に延びる軸)を回転中心として回転可能となっている。
【0033】
突起部45E、円筒部45A、ノズル管45B,45C,45Dの各内部空間は連通されている。ノズル管45B,45C,45Dの先端には、
図11に示すように、水を扇状に噴射可能なノズル45Gが設けられている。これにより、ポンプ43から供給されたタンク41の水は、突起部45Eの内部を通って各ノズル管45B,45C,45Dのノズル45Gから噴射される。ノズル管45Cの先端は、平面視(上方から視た状態)において基端に対して折り曲げられた形状をなしている。これにより、天井側噴射部45は、ノズル管45Cのノズル45Gからの水の噴射を推進力として、ノズル管45Cの折り曲げ方向と逆方向に回転する。このため、天井側噴射部45は上下方向に延びる軸(突起部45E)を中心として回転しながら、回転方向における全周(360度)に亘って水を噴射することが可能となっている。つまり、天井側噴射部45は少なくとも前方に向けて水を噴射することが可能な構成となっている。
【0034】
冷却ユニット側噴射部46は、本実施形態の特徴を有するものであるため、ここでの説明は簡略的に行うこととする。冷却ユニット側噴射部46は、ケース37内における冷却器35と庫内ファン36との間に配されている。そして、それら冷却器35及び庫内ファン36の各々に向かって、水を噴射することが可能なものとされている。
【0035】
また、洗剤投入機構42も、本実施形態の特徴を有するものであるため、ここでの説明は簡略的に行うものとする。洗剤投入機構42は、洗剤を入れるための箱状の洗剤トレイ70と、その洗剤トレイ70を回動可能に保持するトレイ保持具71と、を主体として構成され、ケースカバー37Bの右側壁面(右側のカート配置空間を向く外面)37B1に設けられている。洗剤投入機構42は、上記の冷却ユニット側噴射部46によって噴射された水を利用して洗剤トレイ70を回動させて、洗剤トレイ70内に入っている洗剤を底壁部15F上に落下させる構成となっている。なお、底壁部15F上に落下した洗剤は、底壁部15F上の水(天井側噴射部45や冷却ユニット側噴射部46から噴射された水)と混ざり、排水口15Gを通じてタンク41に溜まる。これにより、ポンプ43を作動させることで、洗剤が混入した水をタンク41と天井側噴射部45(又は冷却ユニット側噴射部46)との間で循環させることができる。
【0036】
また、
図8及び
図9に示すように、収容空間18には、吸気用のファン50と、吸気用のバルブ51が設けられている。ファン50は、配管54によって、タンク41と接続されている。バルブ51を開いた状態で、ファン50を動作させると収容空間18の空気がタンク41及び排水口15Gを経由して収容室15に送られる。なお、収容空間18は、
図2に示すように、扉17Aの左側に配された前壁部18Aと、前壁部18Aの左側端部から後方に延びる側壁部18Bによって囲まれた空間であり、上方及び後方に開口されている。このため、収容空間18内のファン50を動作させることで、外気(急速冷却庫10の外部の空気)を収容室15に送る(吸気する)ことができる。
【0037】
また、
図7に示すように、冷却庫本体11には、収容室15内の空気を庫外(冷却庫本体11の外部)に排出するための排気パイプ55が設けられている。排気パイプ55は、ケース37の内部から上方に延び、天井壁部15Eを貫通する形で設けられている。これにより、排気パイプ55の上端は、天井壁部15Eの上方に配されている。排気パイプ55にはバルブ55Aが設けられ、バルブ55Aを開閉することで、排気パイプ55による排気路を開閉することができる。また、排気パイプ55は、庫内ファン36の下流側(左側)に配されている。
【0038】
乾燥運転では、バルブ51及びバルブ55Aを開いた状態でファン50、庫内ファン36及びヒータ39を動作させる。これにより、ファン50が動作することで、タンク41及び排水口15Gを経由して外気が収容室15に送られる。また、庫内ファン36が動作することでケース37内に吸い込まれた空気は、ヒータ39によって加熱されることで、温風となり、収容室15内に吹き出されることで、収容室15内の温度が上昇し、収容室15内の水分が徐々に水蒸気に変化する。また、収容室15内の水蒸気及び空気は、排気パイプ55から排気される。これにより、収容室15の内部を乾燥させることができる。また、乾燥運転では、外気がタンク41及び排水口15Gを経由して収容室15に送られることから、タンク41内を乾燥させることができる。なお、洗浄運転や乾燥運転は、カート本体部20が収容室15に収容されていない状態(カート未収容状態)で実行される。
【0039】
続いて、詳細な説明を留保している冷却ユニット側噴射部46について、
図12から
図16をも参照しつつ、詳しく説明する。冷却ユニット側噴射部46は、
図5および
図12に示すように、ケース本体37Aの右側壁面37B1に固定されており、ケースカバー37Bを閉じることで、ケース37内の冷却器35と庫内ファン36との間に配される。冷却ユニット側噴射部46は、
図5および
図13に示すように、蛇行状をなす形で延びて洗浄水を導水するパイプ(導水管)60と、そのパイプ60に設けられた複数の吐出ノズル61と、を主体として構成される。パイプ60は、蛇行状をなす形とされていることで、互いに上下方向に間隔をおいて設けられて、それぞれが水平方向に延設される複数の延設部60A1,60A2,60A3,60A4(本実施形態においては4本)を有するものとなっている。
【0040】
図12に示すように、複数の延設部のうちの最も上側に位置する第1延設部60A1は、冷却器35の側面の上端部(蛇行状に形成された最上段35A)に沿って延設されている。そして、複数の吐出ノズル61(本実施形態においては4つ)は、冷却器35に向かって水を噴射するものであり、
図13から
図15に示すように、その第1延設部60A1の冷却器35側(左側)に設けられている。また、それら複数の吐出ノズル61は、第1延設部60A1の延設方向に間隔をおいて、詳しく言えば、延設方向に沿って等間隔で並ぶ形で設けられている。各吐出ノズル61は、
図14に示すように、第1延設部60A1の延設方向に広がる範囲に水を噴射可能なもの、つまり、扇状に(広角的に)水を噴射可能なものとされている。本実施形態においては、隣接する吐出ノズル61の噴射範囲が延設方向において一部重なるようにされており、複数の吐出ノズル61によって冷却器35の最上段35Aに隙間なく、洗浄水を吹き付けることが可能とされている。そして、その冷却器35の最上段35Aに吹き付けられた洗浄水は、冷却器35を流下し、冷却器35の最下段までを洗浄することができる。以上のような構成から、本急速冷却庫10においては、上記の第1延設部60A1が冷却器対向延設部として機能するものとなっている。ちなみに、本実施形態においては、各吐出ノズル61が、第1延設部60A1の延設方向に広がる範囲に水を噴射可能なものとされていたが、それらの少なくとも一部のものを、上下方向にも平がる範囲に水を噴射可能なものとすることもできる。
【0041】
また、パイプ60の概して右側には、
図12に示すように、庫内ファン36に向けて水を噴射することが可能な噴射孔62が複数形成されている。詳しく言えば、噴射孔62は、複数の延設部60A1,60A2,60A3,60A4だけでなく、上下方向に延びて延設部60A1,60A2,60A3,60A4の間を連結する連結部60Bにも、形成されている。一方で、
図13に示したように、パイプ60の左側には、上述した4つの吐出ノズル61以外に水を噴射するノズルも噴射孔も設けられていない。つまり、本急速冷却庫10においては、必要最小限の吐出ノズル61のみで、効率的に冷却器35を洗浄することが可能な構成となっている。換言すれば、本急速冷却庫10は、吐出ノズル61が増えることによる費用の増加や製造タスクの増加が抑えられたものとなっている。
【0042】
また、
図14および
図16に示すように、パイプ60の最下段の延設部60A4には、右側に向かって延び出したノズル63が設けられている。このノズル63は、洗剤投入機構42も構成するものである。以下に、その洗剤投入機構42について、
図17から
図20を参照しつつ詳しく説明する。
【0043】
洗剤投入機構42は、収容室15内における立壁部としてのケースカバー37Bの右側壁面37B1に設けられている。洗剤投入機構42は、上述したように洗剤トレイ70とトレイ保持具71とを主体として構成される。トレイ保持具71は、上下方向に開口する概して枠状の部材であり、自身の内部に洗剤トレイ70を保持する。詳しく言えば、洗剤トレイ70は、収容室15における前方側の壁面部および後方側の壁面部の各々に軸部72が設けられている。一方、トレイ保持具71は、前方側の壁面部および後方側の壁面部の各々に形成された貫通孔71Aにおいて、洗剤トレイ70の軸部72を回転可能に保持することで、洗剤トレイ70の軸部72を回転中心として回動可能に保持している。つまり、トレイ保持具71は、洗剤トレイ70を、ケースカバー37Bの右側壁面37B1に平行な前後方向に延びる軸線まわりに回動可能に保持している。
【0044】
洗剤トレイ70は、左側の壁面部が上方に延び出した延出部73を有するものとされている。その延出部73は、ケースカバー37Bの右側壁面37B1に対向する対向壁部73Aと、対向壁部73Aの上端の一部(前側部分)から右側壁面37B1に向かって張り出したフランジ部73Bと、からなる。洗剤トレイ70は、通常、
図17および
図18に示すように、対向壁部73Aが立設し、フランジ部73Bがトレイ保持具71の左側(ケースカバー37Bの右側壁面37B1側)の壁面部である左壁面部71Bにもたれ掛かった状態とされることで、上方に開口して洗剤を入れることが可能な状態となる。
【0045】
また、ケースカバー37Bの右側壁面37B1には、貫通孔37Cが形成されており、その貫通孔37Cには、ケース37内に設けられた前述の冷却ユニット側噴射部46のノズル63が対向配置されている。そして、洗剤トレイ70は、上記の通常状態では、対向壁部73Aが、貫通孔37Cの前(右側,カート配置空間15A側)に立設する状態、つまり、立壁部噴射孔である貫通孔37Cを塞いだ状態となっているのである。
【0046】
そして、収容室15内の洗浄時に、ノズル63から水が噴射されると、
図19に示すように、噴射された水(矢線L1)は、洗剤トレイ70の対向壁部73Aに当たり、洗剤トレイ70は、軸部72を中心として回動する。つまり、洗剤投入機構42は、洗浄水の噴射を利用して、洗剤トレイ70を回動させ、洗剤トレイ70内に入っている洗剤を底壁部15F上に落下させるようにして、洗剤を投入する構成とされているのである。なお、底壁部15F上に落下した洗剤は、先にも説明したように、底壁部15F上の水(天井側噴射部45や冷却ユニット側噴射部46から噴射された水)と混ざり、排水口15Gを通じてタンク41に溜まる。これにより、ポンプ43を作動させることで、洗剤が混入した水をタンク41と天井側噴射部45(又は冷却ユニット側噴射部46)との間で循環させることができる。
【0047】
また、洗剤トレイ70は、噴射された水によって回動させられると、延出部73がトレイ保持具71の右側の壁面部である右壁面部71Cの上端に当接し、その回動が止められて傾倒した状態(ほぼ90度回転した状態)で止められるようになっている。そのため、洗浄後において、洗剤トレイ70を元の位置に戻し易くなっている。しかしながら、洗剤トレイ70がトレイ保持具71の右壁面部71Cに当接した状態においては、
図19および
図20に示すように、フランジ部73Bが立設する状態となってしまう。そして、そのフランジ部73Bは、ノズル63から噴射された水と、高さ方向において重なることになるが、本実施形態においては、フランジ部73Bが対向壁部73Aの上端における前側部分にのみ形成されており、前後方向においては重ならないようになっている。つまり、本実施形態においては、対向壁部73Aの上端におけるフランジ部73Bが形成されていない部分(後側部分)が、ノズル63から噴射された水を挿通させる挿通部73Cとなっているのである。
【0048】
そのような構成から、本急速冷却庫10は、ノズル63から噴射された水が洗剤トレイ70に(詳しく言えば、延出部73に)当たって拡散してしまうことがなく、ノズル63から噴射された水を、収容室15の右側の側壁部に吹き付けることができ、効率的に洗浄に利用することができる。
【0049】
次に、冷却ユニット16の外面の洗浄について、
図21から
図24をも参照しつつ詳しく説明する。まず、
図21に示すように、ケース37には、詳しく言えば、ケース本体37Aの上面における前側には、開口80が形成されており、その開口80に、2基の冷却器35に接続される冷媒管38が挿通させられている。なお、その開口80には、開口縁に沿って立設する開口縁立設部としてのガイド81が設けられている。
【0050】
ケース37から延び出している冷媒管38は、開口80の上方において屈曲させられて後方に向かって延設されている。その冷媒管38におけるケース37の上方側に延設する部分は、
図12,
図22,
図23に示すように、冷媒管カバー82によって、上方から覆われている。ただし、冷媒管カバー82は、冷媒管38の右側に位置する右壁面部82Aは、ケース37の上面との間に隙間が設けられており、その隙間から、天井側噴射部45から噴射された水がケース37の上面側にも入るように構成されている。一方で、冷媒管カバー82の左壁面部は、ケース37の上面における左側の外縁に沿って立設されたガイド83(
図21参照)の上端と接続されており、ケース37の上面側に入った洗浄水を、ケース37の左側には流下させないようになっている。また、
図21に示すように、ケースカバー37Bの上面には、ケース本体37Aの上方に向かって突出した返し部84が設けられており、ケース本体37Aの上側に溜まった水は、ケースカバー37B側にも流れにくくされている。
【0051】
また、冷媒管カバー82には、
図22および
図23に示すように、上面部82Bにおける左側の外縁に沿って立設するガイド85が設けられている。つまり、天井側噴射部45から噴射されて、冷媒管カバー82の上面部82Bの上に溜まった水は、ガイド85によって、左壁面部には流下しないようになっている。なお、本急速冷却庫10においては、冷却器35および庫内ファン36を収容する冷却器ケースとしてのケース37と、冷媒管カバー82とを含んで、冷却ユニット16を収容するハウジング90が構成されており、冷媒管カバー82の上面に設けられたガイド85が、ハウジング90の上面における外周縁の一部に沿って立設する立設部として機能するものとなっている。
【0052】
また、冷媒管カバー82は、
図24に示すように、冷媒管38の前側に位置する前面部82Cが、ケース本体37Aの前面37A1より前方に位置しており、冷媒管カバー82の前面部82Cとケース本体37Aの前面37A1との間は、冷媒管カバー82をケース本体37Aに対して取り付けるための取付部82Dを除いて、下側が塞がれておらず、下方に開口した状態となっている。
【0053】
以上のような構成から、本急速冷却庫10においては、洗浄時に天井側噴射部45から洗浄水が噴射されると、冷媒管カバー82の上側およびケース37の上側に洗浄水が溜まる。ちなみに、天井側噴射部45のノズル管45B,45Cは、冷却ユニット16側において後方から前方に向かって回転しているため、冷媒管カバー82の上の洗浄水は、後方から前方に向かって流れやすい。そして、冷媒管カバー82の上に溜まった洗浄水は、
図22および
図23に示すように、ガイド85の存在によって、冷媒管カバー82の左側に流下することはなく、冷媒管カバー82の前側あるいは右側から流下することになる。なお、冷媒管カバー82の左右方向の寸法は、ケース本体37Aの左右方向の寸法より小さくされており、右壁面部82Aは、ケース本体37Aの上面の上方に位置している。より詳しく言えば、返し部84の縁部より左側に位置している。それにより、冷媒管カバー82の右側から流下した洗浄水は、ケース本体37Aの上面に落ちることになる。
【0054】
冷媒管カバー82から流下した洗浄水、あるいは、冷媒管カバー82の右壁面部82Aの下方からケース本体37Aの上側に直接入り込んだ洗浄水は、ガイド83によって左側には流れず、また、返し部84によって右方向にも流れにくくなっており、多くの洗浄水が前方に向かって流れて、冷媒管カバー82の前面部82Cとの隙間からケース本体37Aの前面37A1を流下することになるのである。さらに言えば、ガイド81によって開口80から洗浄水が流下しにくくなっているため、より多くの洗浄水をケース本体37Aの前面37A1に流下させることができる。つまり、本急速冷却庫10は、後方から前方に向かって回転する天井側噴射部45の死角となっているハウジング90の前面(特に、ケース本体37Aの前面37A1)に流れる洗浄水を増加させることができ、冷却ユニット16の外面(ハウジング90)の洗浄力が高いものとなっている。
【0055】
<変形例>
上記実施形態の急速冷却庫10においては、洗剤投入機構42が、ケースカバー37Bの右側壁面37B1に設けられていた。それに対して、変形例の急速冷却庫100においては、
図25および
図26に示すように、洗剤投入機構101がケースカバー37Bの前面37B2に設けられており、上記実施形態の急速冷却庫10に比較して、使用者が洗剤をより入れ易い構成となっている。なお、本変形例の急速冷却庫100は、洗剤投入機構101を除いて、上記実施形態の急速冷却庫10とほぼ同じ構成であるため、同じ構成要素については、同じ符号を付し、説明は省略するものとする。
【0056】
洗剤投入機構101は、上記実施形態における洗剤投入機構42と類似する構成であり、
図27に示すように、洗剤を入れるための箱状の洗剤トレイ102と、その洗剤トレイ102を回動可能に保持するトレイ保持具103と、を主体として構成される。洗剤トレイ102は、上記実施形態における洗剤トレイ70と同様の形状のものであり、後方側の壁面部が上方に延び出した延出部110を有するものとされている。その延出部110は、ケースカバー37Bの前面37B2に対向する対向壁部110Aと、対向壁部110Aの上端の一部(左側部分)からケースカバー37Bの前面37B2に向かって(後方に向かって)張り出したフランジ部110Bと、からなる。洗剤トレイ70は、通常、
図27および
図28に実線で示すように、対向壁部110Aが立設し、フランジ部110Bがトレイ保持具103の後方側の壁面部である背面壁部111にもたれ掛かった状態とされることで、上方に開口して洗剤を入れることが可能な状態となる。
【0057】
一方、ケースカバー37Bの前面(立壁部)37B2には、貫通孔120が形成されており、その貫通孔120には、ケース37内に設けられた冷却ユニット側噴射部のノズル121が対向配置されている。そして、洗剤トレイ102は、上記の通常状態では、対向壁部110Aが、貫通孔120の前方に立設する状態、つまり、立壁部噴射孔である貫通孔120を塞いだ状態となっている。そして、収容室15内の洗浄時に、ノズル12から水が噴射されると、噴射された水が洗剤トレイ102の対向壁部110Aに当たり、洗剤トレイ102は、軸部122を中心として回動し、洗剤を落下させるように構成されている。
【0058】
ただし、上記実施形態においては、トレイ保持具71が下方にも開口するものであったが、本変形例においては、トレイ保持具103が、底面部130を有するものとなっている。詳しく言えば、トレイ保持具103の底面部130は、
図28および
図29に示すように、後方(立壁部であるケースカバー37Bの前面37B2)に向かうにつれて下降する傾斜面状とされており、その底面部130の後端には、下方に開口する切欠130Aが形成されている。したがって、洗剤投入機構101は、洗剤トレイ102からトレイ保持具103上に洗剤を落とし、トレイ保持具103の底面部130に沿って下降させて、切欠130Aから底壁部15F上に落下させるようにして、洗剤を投入する構成とされているのである。
【0059】
洗剤投入機構101がケースカバー37Bの前面37B2に上記実施形態における洗剤投入機構42を設けると、扉12,17Aの近傍に洗剤が落下してしまうことになるが、本変形例の急速冷却庫100は、
図26に示すように、洗剤投入機構101によって、ケースカバー37Bの前面37B2の近傍から洗剤を落下させて、底壁部15Fの凹所内に入れることができるため、循環させる洗浄水に洗剤を確実に混ぜることができる。
【0060】
<他の実施形態>
上記実施形態および変形例においては、冷却貯蔵庫としてカートインタイプの急速冷却庫を例示したが、これに限定されず、本発明は、カートを収容しないタイプの急速冷却庫等、貯蔵室の内部に冷却ユニットと貯蔵室内を洗浄する洗浄装置を備えた冷却貯蔵庫に適用することができる。また、上記実施形態において、冷却ユニット側噴射部46は、導水管であるパイプ60の最上段の延設部60A1のみに、吐出ノズル61を設けていたが、それに限定されない。洗浄力を高めるために、下段側の延設部に吐出ノズルを設けることも可能である。また、上記実施形態においては、冷却ユニット16が貯蔵室15の左側の側壁部15Dに沿って配されていたが、それに限定されない。そして、ハウジングの上面に設ける立設部は、冷却ユニットと天井側噴射部との位置関係に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
10…急速冷却庫〔冷却貯蔵庫〕、11…冷却庫本体〔貯蔵庫本体〕、13…カート、15…収容室〔貯蔵室〕、15A…カート配置空間、15B…冷却ユニット配置空間、16…冷却ユニット、35…冷却器、35A…最上段、36…庫内ファン〔循環ファン〕、37…ケース〔冷却器ケース〕、37A…ケース本体部、37A1…前面、37B…ケースカバー、37B1…右側壁面〔立壁部〕、37C…貫通孔〔立壁部噴射孔〕、40…洗浄装置、42…洗剤投入機構、45…天井側噴射部、46…冷却ユニット側噴射部、60…パイプ〔導水管〕、60A1…延設部〔冷却器対向延設部〕、60A2,60A3,60A4…延設部、61…吐出ノズル、62…噴射孔、63…ノズル、70…洗剤トレイ、71…トレイ保持具、73…延出部、73A…対向壁部、73B…フランジ部、73C…挿通部、80…開口、81…ガイド〔開口縁立設部〕、82…冷媒管カバー、82A…右壁面部、82B…上面部、82C…前面部、85…ガイド〔立設部〕、90…ハウジング、100…急速冷却庫、101…洗剤投入機構、102…洗剤トレイ、103…トレイ保持具、110…延出部、110A…対向壁部、110B…フランジ部、120…貫通孔〔立壁部噴射孔〕、121…ノズル、130…底面部、130A…切欠