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特許7426809キャンデーコート焙煎アーモンドとその製造方法、並びにチョコレート被覆アーモンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】キャンデーコート焙煎アーモンドとその製造方法、並びにチョコレート被覆アーモンド
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/34 20060101AFI20240126BHJP
   A23G 1/48 20060101ALI20240126BHJP
   A23G 1/54 20060101ALI20240126BHJP
   A23L 25/00 20160101ALI20240126BHJP
【FI】
A23G3/34 109
A23G1/48
A23G1/54
A23L25/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019218275
(22)【出願日】2019-12-02
(65)【公開番号】P2021087366
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000228
【氏名又は名称】江崎グリコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝島 亨
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05424085(US,A)
【文献】特開昭50-052263(JP,A)
【文献】国際公開第2012/165374(WO,A1)
【文献】特開平04-079840(JP,A)
【文献】Candied Almonds, [online],2014年03月27日, [2023年8月29日検索], Retrieved from the internet:<URL: http://fishtripcafe.com/jp/?p=3508&utm_source=rss&utm_medium=rss&utm_campaign=%25e3%2582%25ad%25e3%,2583%25a3%25e3%2583%25b3%25e3%2583%2587%25e3%2582%25a3%25e3%2583%25bc%25e3%2582%25b3%25e3%2583%25bc%25e3%2583%2588%25e3%2582%25a2%25e3%2583%25bc%25e3%2583%25a2%25e3%2583%25b3%25e3%2583%2589>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャンデーコート層を有するキャンデーコート焙煎アーモンドであって、前記キャンデーコート層が
塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の塩類であって、塩化カリウム及び塩化カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む塩類
砂糖と、
を含む、キャンデーコート焙煎アーモンド。
【請求項2】
糖液にアーモンドを投入して加熱し、砂糖が結晶化後に融解し始めるときに塩類を添加してアーモンドの焙煎処理とキャンデーコート処理を同時に行うことを特徴とするキャンデーコート焙煎アーモンドの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のキャンデーコート焙煎アーモンドをチョコレートで被覆してなるチョコレート被覆アーモンド。
【請求項4】
請求項2に記載の方法によりキャンデーコート焙煎アーモンドを得る工程及び
上記工程で得られたキャンデーコート焙煎アーモンドにチョコレートを被覆する工程
を含むチョコレート被覆アーモンドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキャンデーコート焙煎アーモンドとその製造方法、並びにチョコレート被覆アーモンドに関する。
【背景技術】
【0002】
アーモンド等のナッツ製品は、原料ナッツ類を加熱処理(焙煎)して製造される。加熱処理には、原料を油脂中で加熱するオイルロースト法、油脂等を使用せずに火熱で煎るドライロースト法等が知られている。このような加熱処理によって、ナッツ類特有の香ばしいロースト臭が発現される。加熱処理されたナッツ類は、そのまま食用に供されるほか、チョコレート、キャンデー、ケーキ等の菓子類に加えるなどして使用される。
【0003】
さらに、蜂蜜・糖液などの液状物やナッツ・糖類・調味料・甘味料などの粉体原料を塗布・付着・加熱などの加工を付すことによって風味・食感・保存性等を付加して、そのまま、又はチョコレート、キャンデー、ケーキ等の菓子類に加えるなどして使用される(特許文献1)。
【0004】
キャンデーコートしたアーモンドを製造するに際、アーモンドの良好な食感・風味・香ばしさ・外観を得るため、焙煎状態やキャンデー化状態を良好に均一に仕上げることが望ましいが、大規模な製造設備にて大量生産する際には、個々のアーモンドへの熱の伝わり方にムラができやすいため、焙煎状態とキャンデー化状態を両立することは難しい。
【0005】
例えば、非特許文献1の記載に従い60kg/バッチの大量製造条件でキャンデーコートアーモンドを製造する場合、焙煎状態を適正に合わせるとキャンデー化が不足して砂糖結晶の多く残った凸凹形状のキャンデーコートになり、キャンデー化状態を適正に合わせると過ローストになって苦みの強すぎるアーモンドとなり、いずれの場合も製品価値を著しく損なうことになる。
【0006】
また、このようなアーモンドをセンターに入れたシェルチョコレートを製造する際、表面の凸凹の形状はアーモンドのチョコレート表面への露出を容易に引き起こすため、製品のロスに直結する。そのため、凸凹を加味しサイズの小さいアーモンドを使用せざるを得ず、結果としてアーモンドの比率が低いナッツチョコレートとなってしまうため、製品価値を著しく損なうことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-27953号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】菓子の事典、株式会社朝倉書店、2004年4月10日、343-347
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、アーモンドの香ばしいロースト風味、食感、外観のキャンデーコートアーモンドを均一かつ大量に製造する方法、及びそれを入れたチョコレートを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題に鑑み検討を重ねた結果、アーモンドを糖液に投入して加熱し、砂糖が結晶化後に融解し始めるときに塩類を添加してアーモンドの焙煎処理とキャンデーコート処理を同時に行うことで、風味が格段に向上し、かつ、糖がけによる食感の向上も得られること、得られたアーモンドは皮はげがほとんどなく外観上も優れていることを見出した。
【0011】
本発明は、以下のキャンデーコートアーモンドとその製造方法、並びにチョコレート被覆アーモンドを提供するものである。
項1. キャンデーコート層を有するキャンデーコート焙煎アーモンドであって、前記キャンデーコート層が塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の塩類と砂糖を含む、キャンデーコート焙煎アーモンド。
項2. 糖液にアーモンドを投入して加熱し、砂糖が結晶化後に融解し始めるときに塩類を添加してアーモンドの焙煎処理とキャンデーコート処理を同時に行うことを特徴とするキャンデーコート焙煎アーモンドの製造方法。
項3. 項1に記載のキャンデーコート焙煎アーモンド、又は、項2に記載の製造方法で得られたキャンデーコート焙煎アーモンドをチョコレートで被覆してなるチョコレート被覆アーモンド。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アーモンドの香ばしいロースト風味が格段に向上し、また、均一なキャンデーで覆われて外観上も優れ、アーモンドの好ましいカリッとした食感が向上したキャンデーコートアーモンドを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のキャンデーコートアーモンドは、焙煎された皮付きアーモンド(焙煎アーモンド)がキャンデーコート層で被覆されている。
【0014】
キャンデーコート層は、砂糖を主成分として含有し、さらに塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩類を含む。また、アーモンドはキャンデーコート層で均一に被覆され、バラつきがほとんどなく、これが優れた食感をもたらす。キャンデーコート層に含まれる好ましい塩類は、塩化ナトリウム及び塩化カリウムであり、より好ましくは塩化ナトリウム単独であるか、塩化ナトリウムと塩化カリウムの組み合わせである。
【0015】
キャンデーコート層の固形分における砂糖の比率は85~99.5質量%であり、塩類の比率は0.5~15質量%である。
【0016】
本発明の好ましいキャンデーコートアーモンドは、焙煎アーモンド70~99質量%とキャンデーコート層1~30質量%から構成される。また、キャンデーコート層の厚さは、好ましくは5~2500μm、より好ましくは10~2000μm、さらに好ましくは50~1800μm、特に好ましくは100~1600μmである。
【0017】
本発明のキャンデーコート焙煎アーモンドは、砂糖を含む糖液にアーモンドを投入して加熱し、砂糖が結晶化後に融解し始めるときに塩類を添加し、さらに混合することで製造することができる。
【0018】
本発明の製造方法において、糖液に投入されるアーモンドとしては、焙煎処理を行っていないアーモンド、例えば生のアーモンドが挙げられる。
【0019】
糖液としてはショ糖を含む糖類水溶液が挙げられ、好ましくは、ショ糖(砂糖)の水溶液が挙げられる。アーモンドを投入する糖液の固形分におけるショ糖の割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは98質量%以上である。なお、ここでのショ糖の割合は、糖類全体に対するショ糖の割合であり、100質量%であってもよい。糖液に配合可能なショ糖以外の糖類としては、ブドウ糖、果糖、キシロース、パラチノース、トレハロース、ハチミツ、メープルシュガー、ブラウンシュガー、マルトース、乳糖、オリゴ糖などの還元基を有する単糖、二糖、多糖などが挙げられる。
【0020】
糖液は、ショ糖を含む糖類を水に加熱溶解して調製する。アーモンド投入時の糖液の濃度は、Brix30~Brix100程度、好ましくはBrix50~Brix90程度である。この糖液にアーモンドを投入・浸漬する。糖液は、水に加熱溶解後、さらに加熱して煮詰めることができるので、アーモンドを投入するときの糖液の温度は、例えば80℃以上、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上であってもよい。好ましいアーモンド投入時の糖液温度は、100~108℃程度である。投入時の糖液の温度が高すぎると、糖類の焦げが発生しやすくなる。投入時の糖液の温度が低すぎると、投入後すぐの焦げの発生は抑制されるが、糖液漬け工程に時間がかかりすぎることになる。
【0021】
アーモンドを投入後に糖液の温度は低下するがその後緩やかに上昇する。撹拌しながらアーモンドに糖液をなじませるとアーモンドの表面で糖類が再結晶化する。再結晶化時の製品表面温度は100℃~110℃程度が好ましい。アーモンド表面における糖類、特にショ糖の再結晶化後、さらに温度を上げると、120℃±2℃程度の製品表面温度で再結晶化した糖類が溶け始める。再結晶化した糖類が溶け始め~焦げ始める前(120℃~130℃)が塩類添加のタイミングである。このタイミングで塩類を添加することにより、過ローストにならない低温度帯で焙煎アーモンドを均一にキャンデーコートすることができる。
【0022】
塩類を砂糖が結晶化する前に添加すると、糖液とアーモンドを含む全体が粘ってブロッキングして製造できなくなる。 塩類の添加方法としては、アーモンドに対して均一に散布することができれば、粉末状や水溶液 (例えば10~20 wt%) 等の形態で実施することができる。塩類の添加量は、最終の(糖類、塩類、任意成分の離型油等の全成分が配合された後の)糖液中の固形分の塩類濃度が好ましくは0.3~15質量%、より好ましくは0.35~15質量%になるような量である。
【0023】
塩類を添加後さらに撹拌し、必要に応じて離型油脂(任意成分)をさらに投入し、キャンデーコートされた焙煎アーモンドを得ることができる。離型油脂の添加により、キャンデーコートされた焙煎アーモンド同士のブロッキングが防止されるので、冷却により容易にキャンデーコートされた焙煎アーモンドを得ることができる。離型油脂としては、常温で液体又は固体の1種又は2種以上の植物性又は動物性の食用油脂が挙げられ、離型油とともに乳化剤(例えばレシチン)をさらに配合してもよい。
【0024】
砂糖がアーモンド表面で結晶化した状態でアーモンドの品温を130℃~145℃程度に一定時間(5-15分程度)保持することで、アーモンドの焙煎及びキャンデーコートを行うことができる。
【0025】
温度の制御は、IHヒーターのような1℃単位の温度調節が可能なヒーターにより行うことが好ましい。糖類の焦げが発生すると、昇温が制限され、ローストが不十分になるだけでなく、食味も損なわれる。
【0026】
アーモンドの糖液への処理時間は、例えば10~45分程度、好ましくは15~40分程度、より好ましくは20~35分程度である。
【0027】
本発明で加工したキャンデーコートアーモンドは、食感・風味が優れており、そのまま食してもよく、チョコレートとともにアーモンド入りチョコレートとして食してもよい。
【0028】
本発明でいうチョコレートとは、チョコレート、およびそれと同等の物性を有する食品をいう。すなわち、チョコレート規約に言うチョコレートや準チョコレートのみならず、カカオ分を少量しか、あるいは全く含まず、カカオ脂代替用として開発された油脂(以下、カカオ代用脂と称する)、及び/又はそれらと同等の融点を有するノーテンパ型油脂(チョコレートの結晶をつくるための品温操作、いわゆるテンパリング操作が不要な油脂)をカカオ脂及びカカオ代用脂の代わりに用いることにより、40℃以上で油脂が完全に溶解するチョコレート様食品も包含する。
【0029】
チョコレートとしては、ビターチョコレート、ブラックチョコレート、ミルクチョコレート、クリームチョコレート、ホワイトチョコレート、生チョコレートなどが挙げられる。
【0030】
本発明のチョコレート被覆アーモンドは、常法に従い、チョコレートを型に流し込んで殻(シェル)形成、又は2層チョコレートの上面を充填し、この中にアーモンドを入れ、さらにチョコレートで蓋(ボトム)又は2層チョコレートの下面を充填することにより製造することができる。
【実施例
【0031】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づきより詳細に説明をするが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
(1)キャンデーコートアーモンドの製造
糖液の組成、生アーモンドの配合量、離型油として、以下の表1の処方で実施した。具体的には、
・カジワラ製(700L)IH釜に表1配合の砂糖と水を投入した後、102℃までIH釜壁面温度235℃ 30rpmで撹拌加熱して糖液を沸騰させた。
・次に生のアーモンドを投入し、IH釜壁面温度235℃ 25rpmで撹拌加熱した。
・さらにIH釜壁面温度245℃ 25rpmで撹拌加熱したところ、アーモンド品温が110℃に達した際に糖液の砂糖が結晶化した。
・さらにIH釜壁面温度245℃ 25rpmで撹拌加熱を継続したところ、アーモンド品温が120℃に達した際に、結晶化した砂糖が徐々に融け始めた。
・次にIH釜壁面温度235℃ 25rpmで撹拌加熱を継続し、アーモンド表面の温度が130℃に達した際に、予め溶かしておいた塩類水溶液(砂糖、塩類、離型油脂、レシチンの固形分合計量に対し塩類0.25~13.3 wt%)をシャワー状にアーモンド全体に振り掛けた。(これにより急速にキャンデー化が進む。)
・その後、240℃ 25rpm で撹拌加熱を継続し、135~145℃付近までアーモンド温度を昇温させ、アーモンドのローストと砂糖の融解を同時に進行させ、砂糖結晶が目視確認できない透明状態になったところで加熱を止めた。
・その後、得られたアーモンドをカジワラ製(500L)横軸撹拌機に移動し、離型油脂とレシチンを振り掛け、ジャケット15℃、冷風18℃、撹拌8rpmで60℃以下まで撹拌冷却させることで、アーモンド表面のキャンデー部を冷却・固化するとともにバラバラに解した。
【0032】
【表1】
【0033】
上記表1の原料を用いて得られるキャンデーコート焙煎アーモンドのキャンデーコート層の砂糖の比率は90.8質量%、塩類(食塩)の比率は1.5質量%であり、糖液の組成と同じである。
【0034】
(2)評価
糖液に添加する添加物の効果について評価した。
具体的には、配合、混合方法は上記(1)と同じ条件で試作し、キャンデー化促進効果、ロースト状態、風味・食感を比較評価した。
【0035】
【表2】
【0036】
<評価基準>
キャンデー化;砂糖がキャンデー化状態となっている状態を、以下の基準とする。
【0037】
※キャンデー化率;キャンデー部を示差走査熱量計 (PerkinElmer社製 Diamond DSC) で結晶残存率を測定し、
100-砂糖結晶残存率=キャンデー化率とする
アーモンド表面のキャンデー化率が75%以上の状態 ○
アーモンド表面のキャンデー化率が75%未満の状態 △~×
【0038】
ロースト状態;アーモンドのロースト状態を、以下の基準とする。
アーモンドの断面が加熱により茶色に着色した状態 ○
アーモンドの断面の着色が薄くローストが浅い状態 △
アーモンドの断面が加熱不足で白い、又は過加熱による焦げた状態 ×
【0039】
風味・食感;ローストアーモンドとしての風味と食感の状態を、以下の基準とする。
アーモンドの香ばしいロースト風味、崩壊性のある食感を有し、異味異臭がない ○
アーモンドの生の風味がなく、風味・食感に違和感がある △
アーモンドの生の風味と食感、又は焦げた風味・食感、その他の異味異臭がある ×
【0040】
上記の結果から、本発明のキャンデーコートアーモンドは、香ばしさ、風味、香味などに優れていることが明らかになった。