(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】非侵襲的イメージングベースのFFRのインタラクションモニタリング
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240126BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240126BHJP
【FI】
A61B6/03 330Z
A61B6/03 370A
G06T7/00 612
(21)【出願番号】P 2019553424
(86)(22)【出願日】2018-03-05
(86)【国際出願番号】 EP2018055366
(87)【国際公開番号】W WO2018177692
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-04
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】フレイマン モルデカイ ピンカス
(72)【発明者】
【氏名】ゴシェン リラン
(72)【発明者】
【氏名】マクナイト ダグラス ビー.
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-528975(JP,A)
【文献】国際公開第2015/153362(WO,A1)
【文献】特表2017-512577(JP,A)
【文献】特開2014-113264(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0014033(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055、6/00-6/14
G06T 1/00-1/40、3/00-7/90
G06V 10/00-20/90、30/418、40/16、40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シミュレーションを介して冠血流予備量比値を決定する生物物理学的シミュレータ、及び、前記シミュレーションの1つ以上の時点におけるコンピューティングシステムとのユーザインタラクションを追跡して前記冠血流予備量比値を決定するトラフィックライトエンジンを含む、コンピュータ実行可能命令を有するコンピュータ可読記憶媒体と、
前記生物物理学的シミュレータを実行して前記冠血流予備量比値を決定し、また、前記トラフィックライトエンジンを実行して前記冠血流予備量比値の決定に関する前記ユーザインタラクションを追跡し、また、誤っている可能性のあるインタラクションがあるとの決定に応えて
警告を出すプロセッサと、
ある時点から前記シミュレーションを続行するために前記
警告を表示するディスプレイと、
を含み、
前記生物物理学的シミュレータは、ボリュメトリック画像データを受信し、前記ボリュメトリック画像データから冠動脈の3D解剖モデルを生成する冠動脈枝モデリングコンポーネント、及び前記3D解剖モデルから、前記ボリュメトリック画像データを記述する特徴のセットを抽出する個人特徴抽出コンポーネントを含み、前記特徴のセットは、冠動脈血流に関する患者の特性を特徴付けるものであり、前記トラフィックライトエンジンは、抽出された前記特徴のセットのうちの1つの特徴が所定範囲外である場合に、誤っている可能性のあるインタラクションがあると決定し、
前記シミュレーションは、前記
警告の表示に対して、ユーザがユーザインタラクションの変更又は修正を行った場合にのみ再開される、システム。
【請求項2】
抽出された前記特徴のセットは、ハウンズフィールドユニット、信号対ノイズ比又は動きのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ユーザインタラクションは、冠動脈血管の中心線を変更することを含み、前記トラフィックライトエンジンは、変更された前記中心線に関する特徴
を含む前記特徴のセットを抽出し、抽出された前記特徴のセットに基づいて
誤っている可能性のあるインタラクションがあるか否かを決
定する、請求項
1に記載のシステム。
【請求項4】
前記特徴のセットは、前記中心線に沿った強度プロファイル、前記中心線強度プロファイルの一次導関数、前記中心線に沿った強度の変化、前記中心線に沿った幾何学的曲率、並びに、中心線の空間的な位置及び長さのうちの1つ以上を含む、請求項
3に記載のシステム。
【請求項5】
前記ユーザインタラクションは、冠動脈血管の輪郭線を変更することを含み、前記トラフィックライトエンジンは、変更された前記輪郭線に関する特徴を含む前記特徴のセットを抽出し、抽出された前記特徴のセットに基づいて誤っている可能性のあるインタラクションがあるか否かを決定し、前記特徴のセットは、変更された前記輪郭線を記述する、請求項1から
4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記特徴のセットは、血管内部の強度分布、各断面における中心線強度プロファイルの一次導関数、前記血管内部の強度の変動、輪郭線の幾何学的曲率、輪郭線におけるエッジの鮮明度、又は、血管半径のうちの1つ以上を含む、請求項
5に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下は、概してイメージングに関し、より具体的には、冠血流予備量比-コンピュータ断層撮影(FFR-CT)用の「トラフィックライト」エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
冠血流予備量比(FFR)は、FFR指標を介して、石灰化プラーク又は軟質プラークによる冠動脈病変の血行動態的意義を定量化するためのカテーテル検査室(Cath Lab)における侵襲的手段である。指標は、冠動脈造影中に行われた圧力測定から計算される冠動脈狭窄の機能的重症度を示し、充血状態での(小孔近くの)近位血圧に対する(狭窄の後ろの)遠位血圧として定義される。つまり、FFR指標は、狭窄がないと仮定した場合の血管の最大流量と比較される狭窄がある場合の最大流量を表す。FFR値は、0から1の絶対値であり、値0.50は、所与の狭窄が50%の血圧低下を引き起こしていることを示す。
【0003】
FFR侵襲的処置では、カテーテルを大腿動脈又は橈骨動脈に挿入し、狭窄部まで前進させる必要がある。狭窄部では、カテーテルの先端にあるセンサが、血管形状、伸展性及び抵抗並びに/又はその他の特性に影響を与える様々な薬剤によって促進された状態の間、狭窄部における圧力、温度及び流量を感知する。FFR-CTは、冠動脈の血流及び血圧がシミュレートされる計算流体力学(CFD)シミュレーションを介して、(例えば冠動脈コンピュータ断層撮影血管造影、つまり、CCTAからの)心臓のCT画像データからFFR指標を推定する非侵襲的イメージングアプローチである。これには、CCTA画像データを使用して冠動脈枝の幾何モデルを生成し、そこから特徴を抽出し、シミュレーションために当該特徴から境界条件を決定することが含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CT-FFR解析には、オフサイトとオンサイトとの2つのアプローチがある。オフサイトアプローチでは、CCTAデータを追加の患者情報と共にコンピューターネットワーク経由でコアラボに送信することが必要である。コアラボでは、技術者が制御環境で解析を行う。残念ながら、オフサイトアプローチには、解析を行い、患者管理計画をすぐに更新する機能がなく、解析がオフサイトで行われるまで待たなければならない。したがって、患者の状態に関する入力を即座に提供することができない。オンサイトアプローチでは、医師又は技術者が、非制御環境において彼らのオフィスで解析を行うことができるが、残念ながら、この技術は、ユーザによるばらつきとエラーの影響を受けやすく、オペレータ関連エラーによって、同様のレベルの再現性及びロバスト性を保証することができない。
【0005】
本明細書において説明する態様は、上記問題等に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下は、1つの非限定的な実施形態において、例えばユーザインタラクションを「監視」し、誤っている可能性のあるインタラクションがある場合には通知を出すオンサイトCT-FFR解析を介する等して、ユーザによるばらつきが軽減され、解析アプリケーションとの誤ったオペレータインタラクションに対するロバスト性によって、オンサイトCT-FFR推定の品質が向上されるアプローチを概して説明する。このアプローチでは、ルールベースのアルゴリズム、機械学習アルゴリズム等を使用して、誤っている可能性のあるユーザインタラクションを特定することができる。これは、一例では、例えばCT-FFR解析の1つ以上のフェーズ中に、誤っている可能性のあるユーザインタラクションを決定し、当該ユーザインタラクションを修正するアルゴリズム機能を活用することにより、冠動脈病変の血行動態的意義の非侵襲的評価を向上させることができる。
【0007】
一態様において、システムが、シミュレーションを介して冠血流予備量比値を決定する生物物理学的シミュレータコンポーネント、及び、シミュレーションの1つ以上の時点におけるコンピューティングシステムとのユーザインタラクションを追跡して冠血流予備量比値を決定するトラフィックライトエンジンを含む、コンピュータ実行可能命令を有するコンピュータ可読記憶媒体を含む。プロセッサが、生物物理学的シミュレータコンポーネントを実行して冠血流予備量比値を決定し、また、トラフィックライトエンジンを実行して冠血流予備量比値の決定に関するユーザインタラクションを追跡し、また、誤っている可能性のあるインタラクションがあるとの決定に応えて警告を出す。ディスプレイが、ある時点からシミュレーションを続行するために警告が検証を要求することを表示する。シミュレーションは、プロセッサが、要求した検証を受信した場合にのみ再開される。
【0008】
別の態様では、コンピュータ可読記憶媒体が、コンピューティングシステムのコンピュータプロセッサによって実行されると、当該コンピュータプロセッサに、生物物理学的メトリックをシミュレートするようにシミュレーションを行う生物物理学的シミュレータを実行させ、ここで、、シミュレーションは、複数の連続処理ステップを含み、複数の連続処理ステップのサブセットはユーザインタラクションを必要とし、後続の各処理ステップは、前の処理ステップの出力を受け取り、使用するものであり、トラフィックライトエンジンを実行させてシミュレーションの1つ以上の処理ステップにおける生物物理学的シミュレータとのユーザインタラクションを追跡させ、また、各ユーザインタラクションの品質スコアを決定させ、所定の合否基準に対して特定の処理ステップの品質スコアを評価させ、品質スコアが対応する合否基準を満たし、次の処理ステップを行うことが可能であるかどうかを決定させ、ユーザインタラクションが不十分であることを示す品質スコアに応えて、トラフィック品質スコアに基づいて勧告を出させ、勧告の実施結果に基づいて、失敗した生物物理学的シミュレータ処理ステップを再実行させ、シミュレートされた生物物理学的メトリックを表示させる、コンピュータ可読命令でコード化される。
【0009】
別の態様では、方法が、シミュレーションから冠血流予備量比値を決定する生物物理学的シミュレータを実行して、患者データ、3D解剖モデル、及び、3D解剖モデルから抽出された特徴から決定された境界条件を用いて、冠血流予備量比指標を決定するステップを含む。方法は更に、シミュレーションの1つ以上の時点における生理物理学的シミュレータとのユーザインタラクションを追跡し、シミュレーションのある時点において誤っている可能性のあるユーザインタラクションがあるとの決定に応えて警告を出すトラフィックライトエンジンを実行するステップを含む。方法は更に、当該ある時点からシミュレーションを続行するために警告が検証を要求することを表示するステップを含む。シミュレーションは、プロセッサが要求した検証を受け取ることに応えて再開される。
【0010】
当業者であれば、添付の説明を読んで理解すると、本願の更に他の態様を認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明は、様々なコンポーネント及びコンポーネントの構成、また、様々なステップ及びステップの構成の形を取ってよい。図面は、好適な実施形態を例示することのみを目的とし、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0012】
【
図1】
図1は、生物物理学的シミュレータ及びトラフィックライトエンジンを有するコンピューティングシステムと、イメージングシステムとを含むシステムを概略的に示す。
【
図2】
図2は、生物物理学的シミュレータ及びトラフィックライトエンジンの一例を概略的に示す。
【
図3】
図3は、本明細書における一実施形態による例示的な方法を示す。
【
図4】
図4は、本明細書における一実施形態による別の例示的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、非スペクトル及び/又はスペクトル(マルチエネルギー)CTスキャナを含むCTスキャナといったイメージングシステム102を含むシステム100を概略的に示す。イメージングシステム102は、ほぼ静止したガントリ104と、静止ガントリ104によって回転可能に支持され、z軸を中心に検査領域108の周りを回転する回転ガントリ106とを含む。カウチといった被験者支持体110が、検査領域108内で物体又は被験者を支持する。
【0014】
X線管といった放射線源112が、回転ガントリ106によって回転可能に支持され、回転ガントリ106と共に回転し、検査領域108を横断する放射線を放出する。放射線感受性検出器アレイ114が、検査領域108を横切る放射線源112の反対側の角度の弧を定める。放射線感受性検出器アレイ114は、検査領域108を横断する放射線を検出し、それを示す電気信号(投影データ)を生成する。
【0015】
再構成器116が、投影データを再構成し、CCTA画像データ及び/又はスペクトルCCTA画像データといった検査領域108内にある被験者又は物体の走査部分を示すボリュメトリック画像データを生成する。コンピューティングシステム118がオペレータコンソールとして機能する。コンソール118は、モニタといった人間が読取り可能な出力デバイスと、キーボード、マウス等といった入力デバイスとを含む。コンソール118に常駐するソフトウェアによって、オペレータは、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)又は他の手段を介してスキャナ102とやり取りする及び/又はスキャナ102を操作することができる。
【0016】
システム100のスペクトル的な構成は、2017年3月31日に「Spectral FFR-CT」なる名称で出願された米国特許出願第62/479,670号、及び、2017年8月2日に「Spectral FFR」なる名称で出願された米国特許出願第62/540,089号に説明されている。これらはすべて参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0017】
コンソール118は更に、プロセッサ120(例えばマイクロプロセッサ、コントローラ、中央処理装置等)と、非一時的媒体は除く物理メモリデバイス等といった一時的媒体を含むコンピュータ可読記憶媒体122とを含む。コンピュータ可読記憶媒体122は、少なくとも生物物理学的シミュレータ126及びトラフィックライトエンジン128のための命令124を含む。プロセッサ120は命令124を実行する。プロセッサ120は更に、搬送波、信号及び/又は他の一時的媒体によって運ばれる1つ以上のコンピュータ可読命令を実行することもできる。変形例では、プロセッサ120及びコンピュータ可読記憶媒体122は、コンピューティングシステム118とは別個である別のコンピューティングシステムの一部である。
【0018】
生物物理学的シミュレータ126は、少なくともボリュメトリック画像データを処理して、生物物理学的シミュレーションを行う。FFRに関しては、生物物理学的シミュレータは、そのためのFFR指標を決定する。FFR指標は、ディスプレイモニタを介して表示される、保存される又は別のデバイスに送信することができる。一例では、FFRはオンサイトで行われる。したがって、一例では、システム100は、解析を行い、患者管理計画をすぐに更新することができ、解析がオフサイトで行われるまで待つ必要がない。したがって、システム100は、患者の状態に関する入力を即座に提供することができる。別の例では、FFRはオフサイトで行われる。
【0019】
適切なFFRアプローチには、少なくとも、2013年5月10日に「Determination of a fractional flow reserve (FFR) value for a stenosis of a vessel」なる名称で出願された米国特許出願第14/396,407号(米国特許出願公開第2015/0092999A1号)、2013年10月24日に「Fractional flow reserve (FFR) index」なる名称で出願された米国特許出願第14/437,990号(米国特許出願公開第2015/0282765A1号)、2013年10月22日に「Fractional flow reserve (FFR) index with adaptive boundary condition parameters」なる名称で出願された米国特許出願第14/059,517号(米国特許出願公開第2015/0112191Al号)、2016年11月22日に「Vascular tree standardization for biophysical simulation and/or an extension simulation for pruned portions」なる名称の米国特許出願第62/425,181号に説明されているようなアプローチを含む。これらはすべて参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0020】
トラフィックライトエンジン128は、コンポーネント202、204、206及び208の何れかに関連するユーザインタラクションを追跡し、誤っている可能性のあるインタラクションがある場合に、警告(例えばオーディオ、グラフィック等)を出す。一例では、これにより、システム100は、ユーザのばらつきによるエラー及び/又はユーザエラーを軽減し、オフサイトFFRに類似するオペレータ関連エラーによるレベルの再現性及びロバスト性を提供しつつ、オンサイト及び/又はオフサイトFFRを行うことが可能になる。一例では、これは技術の向上であり、例えばFFRによる冠動脈病変の血行動態的意義の向上された非侵襲的で正確かつ客観的なオンサイト評価をもたらす。冠動脈病変の血行動態的意義を、非侵襲的かつ正確に、オンサイト及び/又はオフサイトで評価できるということは、冠動脈疾患を有する患者の診断及び管理の向上に劇的な影響を与えることができる。
【0021】
図2は、CT-FFR解析の様々なフェーズに対してコンピューティングシステム118によって実施される個々のコンポーネントの一例を概略的に示す。
【0022】
3D冠動脈枝モデリングコンポーネント202は、(例えばイメージングシステム102及び/又は他のイメージングシステムから)少なくとも非スペクトル及び/又はスペクトルボリュメトリック画像データを受信及び処理して、冠動脈の3D解剖モデルを生成する。選択された画像データには、ある程度のノイズ、動きアーティファクトを含んでよく、また、特定の解剖学的構造等を含み、これらは、そこから決定されるFFR値の決定に影響を与える(例えばエラーを導入する)可能性がある。一例では、患者の人口統計及び/又は他の情報も入力として使用される。本明細書では、画像データ、患者の人口統計及び/又は他のデータを合わせて患者データと呼ぶ。3D冠動脈枝モデリングコンポーネント202は、自動及び/又はインタラクティブセグメンテーションツールを使用して、患者データから冠動脈の3D解剖モデルを生成する。
【0023】
このようなツールの一例は、Freiman他による「Automatic coronary lumen segmentation with partial volume modeling improves lesion’s hemodynamic significance assessment」(Progress in Biomedical Optics and Imaging-SPIEプロシーディングス、2016年、第9784巻)に記載されている。3D冠動脈枝モデリングコンポーネント202は、スペクトルボリュメトリック画像データを活用してセグメンテーションを向上させる。インタラクティブツールには、最適化アルゴリズムを使用して、オペレータインタラクションに基づく最適な3Dモデルを決定する「スマート」ツールや、及び/又は、モデルの2D輪郭又は直接3Dでのインタラクションを可能にする単純なツールが含まれる。インタラクションは、解析のためのフェーズ選択、心室セグメンテーション、冠動脈中心線抽出及び冠動脈内腔セグメンテーションを含むがこれらに限定されない冠動脈枝生成の任意のフェーズで使用することができる。
【0024】
個人特徴抽出コンポーネント204は、入力から特徴を抽出して、検査中の患者の特定の特性を特徴付ける。一例では、これには、患者の心臓CT画像から得られる冠動脈血流に関連する可能性のある量といった特徴をスペクトルCCTAデータから抽出することが含まれる。非スペクトル及び/又はスペクトルのボリュメトリック画像データからの特徴抽出及びシミュレーション用の個人化された境界条件を得るために特徴を利用する方法の例については、2014年6月30日に「Enhanced Patient’s Specific Modelling for FFR-CT」なる名称で出願された欧州特許出願第14174891.3号及び2015年11月5日に「Collateral Flow Modelling For FFR-CT」なる名称で出願された米国特許出願第62/251,417号(これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、並びに米国特許出願第62/479,670号及び米国特許出願第62/540,089号に記載されている。
【0025】
境界条件パラメトリックモデルコンポーネント206は、非スペクトル及び/又はスペクトルボリュメトリック画像データから抽出された特徴、例えば流体シミュレーションに対する特徴から、調整可能な境界条件パラメトリックモデルを決定する。微小血管抵抗と解剖学的特徴及び生理学的特徴との間には幾つかの関係がある。欧州特許出願第14174891.3号及び米国特許出願第62/251,417号に、とりわけ冠動脈出口断面積を含む微小血管抵抗に関連する幾つかの特徴の例が説明されている。一例では、境界条件パラメトリックモデルコンポーネント206は、例えば様々な効果の加重線形和又は加重非線形和を含む様々な類似のパラメトリック関係を考慮することができる。
【0026】
流体シミュレーションコンポーネント208は、境界条件モデルを用いて流体シミュレーションを行う。流体シミュレーションは、3D計算流体力学(CFD)アプローチ及び/又は次数低減アプローチ(例えばNickisch他による「Learning Patient-Specific Lumped Models for Interactive Coronary Blood Flow Simulations」(Medical Image Computing and Computer-Assisted Intervention―MICCAI2015:第18回国際会議、LNCS、第9350号、2015年、第9350号、433-441頁)において説明されるアプローチ)を使用して行うことができる。一例では、このコンポーネントは、3D解剖モデルと個人化された境界条件モデルとを使用して流体シミュレーションを行って、冠動脈病変の血行動態的意義を推定する。
【0027】
トラフィックライトエンジン128は、ユーザインタラクションを受信し、コンポーネント202、204、206及び/又は208のうちの1つ以上に関連して、例えば当該ユーザインタラクションが合理的なインタラクションであるか又はエラーの可能性のあるインタラクションであるか、インタラクションの品質スコアを提供する。一例において、トラフィックライトエンジン128は、このためにルールベースのアプローチを採用する。別の例では、トラフィックライトエンジン128は、このために機械学習アプローチを採用する。更に別の例では、トラフィックライトエンジン128は、このためにルールベースのアプローチと機械学習アプローチとの組み合わせを採用する。更に別の例では、トラフィックライトエンジン128は、異なるアプローチを採用する。必要に応じて、修正が提供されるか及び/又は優先されてよい。
【0028】
以下に、トラフィックライトエンジン128が、フェーズ選択、冠動脈中心線編集及び冠動脈内腔輪郭編集を含むがこれらに限定されないインタラクションの品質スコアを提供する例を説明する。
【0029】
フェーズ(画像データ)の選択
この例では、操作者は解析を行うための非スペクトル及び/又はスペクトルボリュメトリック画像データ(例えば患者のCCTAデータ)を選択して、3D冠動脈枝モデリングコンポーネント202がそこから3D解剖モデルを作成する。一例では、個人特徴抽出コンポーネント204が、自動アルゴリズムを使用して、ボリュメトリック画像データから、患者データを記述する特徴のセット(x
1,…,x
n)を抽出する。このような特徴の例には次が含まるが、これらに限定されない。
・例えば大動脈等におけるハウンズフィールドユニット(HU)レベル(μ)
・信号対ノイズ比(SNR)。例えば上行大動脈の位置を自動的に決定し、大動脈内のHUの平均(μ)及び標準偏差(σ)を計算し、そこからSNRを計算することによって(例えばSNR=μ/σによって)決定される。及び/又は、
・動きアーティファクトの存在。動きアーティファクトにより、画像がぼやける。ぼけのレベルは、画像エッジの鮮明度によって測定することができる。画像鮮明度が低いと、動きアーティファクトがある可能性を間接的に示す。この特徴は、画像内の様々なコンポーネント、例えば左心室又は冠動脈の境界を決定することによって測定することができる。次に、各ピクセルにおける境界輪郭の法線を計算する。そして、エッジ強度の差をエッジサイズで割ることにより、境界の鮮明度を計算する。
【数1】
ここで、xは、境界法線に沿った強度プロファイルであり、size(x)は、エッジの長さである。
【0030】
患者データを記述する特徴のセット(x
1,…,x
n)があることにより、トラフィックライトエンジン128は、ルールベースのアプローチを適用して、特徴のうちの1つが、所定範囲、即ち、
【数2】
を上回る又は下回る値を有する状況において、オペレータに警告することができる。これは、特徴値を上記所定範囲と比較することによって決定することができる。更に又は或いは、トラフィックライトエンジン128は、選択された患者データが、同様の解析について専門家ユーザによって選択又は拒否された様々なデータセットでトレーニングされた機械学習エンジンによって評価されている機械学習アプローチを適用することができる。品質が不十分である場合、システム100はオペレータに警告し、続行するために追加の検証を要求する。
【0031】
冠動脈中心線の編集
この例では、オペレータは、3D冠動脈枝モデルにおける冠動脈の中心線を確認、調整及び/又は修正する。インタラクションの結果は、修正された冠動脈中心線である。フェーズ選択と同様に、修正された中心線が基準を満たすかどうかを決定するために、特徴を幾つか抽出することができる。これらの特徴には、中心線に沿った強度プロファイル、中心線強度プロファイルの一次導関数、中心線に沿った強度の変動、中心線に沿った幾何学的曲率、空間位置及び長さ等が含まれるがこれらに限定されない。
【0032】
患者データを記述する特徴のセット(x
1,…,x
n)があることにより、トラフィックライトエンジン128は、ルールベースのアプローチを適用して、特徴のうちの1つが、所定範囲、即ち、
【数3】
を上回る又は下回る値を有する状況において、オペレータに警告することができる。これは、特徴値を上記所定範囲と比較することによって決定することができる。更に又は或いは、トラフィックライトエンジン128は、予めトレーニングされた分類器を使用して、十分な品質を有する又は有さないものとして特徴を分類する機械学習エンジンを採用することができる。更に又は或いは、機械学習エンジンは、専門家ユーザによって行われるインタラクションでトレーニングされ、そして、トレーニングされたエンジンは、現在のサイトのユーザのインタラクションを分類するために使用される。品質が不十分である場合、システム100はオペレータに警告し、続行するために追加の検証を要求する。
【0033】
冠動脈内腔輪郭の編集
このシナリオでは、オペレータは、必要に応じて、3D冠動脈枝モデルにおける冠動脈の内腔輪郭を確認及び修正する。インタラクションの結果は、修正された冠動脈内腔輪郭である。冠動脈中心線の編集と同様に、修正された中心線が基準を満たすかどうかを決定するために、特徴が幾つか抽出される。これらの特徴には、冠動脈内腔内の強度分布、各断面における中心線強度プロファイルの一次導関数、冠動脈内腔内の強度の変動、冠動脈輪郭の幾何学的曲率、上述したように測定される冠動脈輪郭のエッジの鮮明度、内腔半径等が含まれるがこれらに限定されない。
【0034】
患者データを記述する特徴のセット(x
1,…,x
n)があることにより、トラフィックライトエンジン128は、ルールベースのアプローチを適用して、特徴のうちの1つが、所定範囲、即ち、
【数4】
を上回る又は下回る値を有する状況において、オペレータに警告することができる。これは、特徴値を上記所定範囲と比較することによって決定することができる。中心線の編集と同様に、トラフィックライトエンジン128は、予めトレーニングされた分類器を使用して、十分な品質を有する又は有さないものとして特徴を分類する機械学習エンジンを採用し、及び/又は、専門家ユーザによって行われるインタラクションで機械学習エンジンをトレーニングし、トレーニングされたエンジンを使用して、現在のサイトのユーザのインタラクションを分類することができる。品質が不十分な場合、システム100はオペレータに警告し、続行するために追加の検証を要求する。
【0035】
一実施形態では、プロセッサ120は、更に又は或いは、トラフィックライトエンジンの指示に基づいて勧告を出す。一例では、勧告は、現在の失敗した処理ステップを修正するために、ユーザインタラクションを変更することである。別の例では、勧告は、基準を満たした以前の処理ステップのユーザインタラクションを変更することである。基準を満たした以前の処理ステップの変更は、例えば基準を満たすステータスを達成するために、現在の失敗した処理ステップを向上させる尤度を増加させる。更に別の例では、勧告は、これらの2つの勧告の組み合わせであり、例えば現在の失敗した処理ステップのユーザインタラクションを修正する及び/又は基準を満たした以前の処理ステップのユーザインタラクションを変更することである。更に別の例では、勧告は、上記勧告の一方若しくは両方に加えて又はこれらに代わる別の勧告を含んでもよい。
【0036】
一例として、勧告ステップは、1つ以上の前の品質スコアを考慮し、また、前のステップの反復にかかる時間を考慮して、向上の可能性を高めるためにどのステップを変更すべきであるかを示す最適化関数に基づいている。例えばセグメンテーションが失敗した場合、セグメンテーションを再度行うことができる。或いは、動き補正を最初に再度行って残りのぼけを低減し(例えば動き補正ステップが合否基準を満たしていると既に決定された場合)、その後、セグメンテーションを再度行うことができる。ぼけを更に低減するとセグメンテーションの結果を向上させることができる。一般に、合否基準を満たす以前に行われた任意のステップを向上して、現在のステップ又は後続のステップを向上させることができる。この場合、最適化関数は、時間(及び、再度イメージングが必要な場合は線量)を考慮する。
【0037】
図3は、本明細書において説明される一実施形態による例示的な方法を示す。
【0038】
当然ながら、上記ステップの順序は限定ではない。したがって、本明細書では、別の順序も考えられる。更に、1つ以上のステップを省略しても、及び/又は、1つ以上の追加のステップを含めてもよい。
【0039】
ステップ302において、ユーザインタラクションで患者データが受信される。本明細書において説明するように、患者データには、非スペクトル及び/又はスペクトルボリュメトリック画像データ及びオプションで人口統計といった他のデータが含まれる。
【0040】
ステップ304において、ユーザインタラクションがFFR値を決定するのに十分であるかどうかを示すユーザインタラクションの品質スコアをトラフィックライトエンジン128が提供する。変形例では、このステップは省略され、及び/又は、データはユーザインタラクションなしで選択される。
【0041】
ステップ306において、本明細書において及び/又は別の方法で説明されるように、ユーザインタラクションで3D冠動脈モデルが生成される。
【0042】
ステップ308において、ユーザインタラクションがFFR値を決定するのに十分であるかどうかを示すユーザインタラクションの品質スコアをトラフィックライトエンジン128が提供する。変形例では、このステップは省略され、及び/又は、3D冠動脈モデルはユーザインタラクションなしで生成される。
【0043】
ステップ310において、本明細書において及び/又は別の方法で説明されるように、ユーザインタラクションで個人化された特徴が抽出される。
【0044】
ステップ312において、ユーザインタラクションがFFR値を決定するのに十分であるかどうかを示すユーザインタラクションの品質スコアをトラフィックライトエンジン128が提供する。変形例では、このステップは省略され、及び/又は、個人化された特徴はユーザインタラクションなしで抽出される。
【0045】
ステップ314において、本明細書において及び/又は別の方法で説明されるように、ユーザインタラクションで境界条件モデルが決定される。
【0046】
ステップ316において、ユーザインタラクションがFFR値を決定するのに十分であるかどうかを示すユーザインタラクションの品質スコアをトラフィックライトエンジン128が提供する。変形例では、このステップは省略され、及び/又は、境界条件モデルはユーザインタラクションなしで決定される。
【0047】
ステップ318において、本明細書において及び/又は別の方法で説明されるように、ユーザインタラクションで流体シミュレーションが行われる。
【0048】
ステップ320において、ユーザインタラクションがFFR値を決定するのに十分であるかどうかを示すユーザインタラクションの品質スコアをトラフィックライトエンジン128が提供する。変形例では、このステップは省略され、及び/又は、流体シミュレーションはユーザインタラクションなしで行われる。
【0049】
ステップ322において、計算されたFFR値が出力される。
【0050】
図4は、本明細書において説明される一実施形態による例示的な方法を示す。
【0051】
当然ながら、上記ステップの順序は限定ではない。したがって、本明細書では、別の順序も考えられる。更に、1つ以上のステップを省略しても、及び/又は、1つ以上の追加のステップを含めてもよい。
【0052】
ステップ402において、患者データが受信される。本明細書において説明されるように、患者データは、非スペクトルボリュメトリック画像データ、スペクトルボリュメトリック画像データ等を含む。
【0053】
ステップ404において、生物物理学的シミュレータ126が、ユーザインタラクションに基づいて患者データの処理を開始する。本明細書において説明するように、処理は複数のステップを含み、そのサブセットはユーザインタラクションを必要とし、後続の各ステップは、前のステップの出力を受け取り、使用する。
【0054】
ステップ406において、トラフィックライトエンジン128が、処理ステップに関連するユーザインタラクションの品質スコアを計算する。本明細書において説明するように、品質スコアは、ユーザインタラクションが次のステップに進むのに十分かどうかを示す。
【0055】
ステップ408において、ユーザインタラクションが十分でないことを示す品質スコアに応えて、プロセッサ120がトラフィックエンジンの品質スコアに基づく勧告を出す。本明細書において説明するように、一例では、勧告は、現在の失敗したステップのユーザインタラクションを変更すること、及び/又は、基準を満たした前のステップのユーザインタラクションを変更することである。
【0056】
ステップ410において、生物物理学的シミュレータ126が、現在のステップを再び行うが、実施された勧告の結果に基づいて行う。
【0057】
ステップ412において、生物物理学的シミュレータ126が、本明細書において説明するように、合否基準を満たす及び/又は臨床医によって確認されたすべてのステップに応えて生物物理学的メトリック(例えばFFR値)を出力する。
【0058】
上記は、コンピュータ可読記憶媒体にコード化された又は埋め込まれたコンピュータ可読命令によって実現される。当該コンピュータ可読命令は、コンピュータプロセッサによって実行されると、当該プロセッサに説明されたステップを実行させる。更に又は或いは、コンピュータ可読命令の少なくとも1つは、コンピュータ可読記憶媒体ではない信号、搬送波又は他の一時的媒体によって運ばれる。
【0059】
本発明は、図面及び上記説明において詳細に図示及び説明されたが、このような図示及び説明は、限定的ではなく、例示的であると見なされるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形は、図面、開示内容及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求項に係る発明を実施する際に当業者によって理解及び実施される。
【0060】
請求項において、「含む」との用語は他の要素又はステップを排除するものではなく、「a」又は「an」との不定冠詞も複数形を排除するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載される幾つかのアイテムの機能を果たしてもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているということだけで、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
【0061】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又はその一部として提供される光記憶媒体又は固体媒体といった適切な媒体に記憶/分散されてもよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線の通信システムを介するといった他の形式で分配されてもよい。請求項における任意の参照符号は、範囲を限定すると解釈されるべきではない。