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  • 特許-耐酸性合金触媒 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】耐酸性合金触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 25/02 20060101AFI20240126BHJP
   C22C 19/03 20060101ALI20240126BHJP
   C22C 13/00 20060101ALN20240126BHJP
【FI】
B01J25/02 Z
C22C19/03 Z
C22C13/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019570811
(86)(22)【出願日】2018-06-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 CN2018092311
(87)【国際公開番号】W WO2018233677
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】201710481326.4
(32)【優先日】2017-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519450008
【氏名又は名称】チャンチュン メイヘ サイエンス アンド テクノロジー ディベロップメント カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】391026058
【氏名又は名称】ザ コカ・コーラ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Coca‐Cola Company
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ジン
(72)【発明者】
【氏名】チー,ホンビン
(72)【発明者】
【氏名】レン,ハイユ
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105521788(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105523890(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101199930(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C22C 19/03
C22C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル、1つ又は複数の希土類元素、スズ、アルミニウム、及びモリブデンを含むことを特徴とする、耐酸性合金触媒であって、
前記耐酸性合金触媒がタングステンを含まず、前記耐酸性合金触媒が、重量部で10~90部のニッケル、1~5部の希土類元素、1~60部のスズ、5~9部のアルミニウム、及び0.1~20部のモリブデンを含む混合物から形成され、
前記希土類元素が、周期系のIIIB族中の原子番号21、39、及び57~71の17種の化学元素の一般的名称であり、
前記触媒は、活性化された金属粉末の形態であり、
金属粉末は、製錬により金属合金が形成された後に、機械的粉砕または微粒化によって形成されたものであり、
前記金属粉末が水酸化ナトリウム水溶液に浸漬されて、活性化された金属粉末が形成されることを特徴とする、
耐酸性合金触媒。
【請求項2】
前記耐酸性合金触媒が、ニッケル、1つ又は複数の希土類元素、スズ、アルミニウム、モリブデン、及びホウ素又はリンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の耐酸性合金触媒。
【請求項3】
前記耐酸性合金触媒が、重量部で、10~90部のニッケル、1~5部の希土類元素、1~60部のスズ、5~9部のアルミニウム、0.1~20部のモリブデン、及び0.01~5部のホウ素又はリンを含む混合物から形成されることを特徴とする、請求項2に記載の耐酸性合金触媒。
【請求項4】
前記製錬は、ニッケル、1又は複数の希土類元素、スズ、アルミニウム、モリブデン、及び、ホウ素又はリンの混合物を製錬炉で1500~2000℃に加熱した後に、前記混合物を撹拌して前記金属合金を均一化することを含む、請求項に記載の耐酸性合金触媒。
【請求項5】
前記機械的粉砕がハンマーミルを用いて行われる、請求項に記載の耐酸性合金触媒。
【請求項6】
前記金属粉末は、20~25重量%の水酸化ナトリウム水溶液に70~95℃で浸漬される、請求項1に記載の耐酸性合金触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合金触媒の技術分野に関する。特に、耐酸性合金触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ラネーニッケル合金触媒は、強力な水素吸着能、高い触媒活性、及び熱安定性の理由から、不飽和化合物であるオレフィン、アルキン、ニトリル、ジオレフィン、芳香族炭化水素、カルボニル含有物質の、さらには不飽和結合を有する巨大分子の水素付加反応、並びにソルビトール及びキシリトールを製造するための可溶性糖の水素付加などの可溶性糖の水素付加反応などの数多くの工業プロセス及び有機合成反応で幅広く使用されている。いくつかの反応は反応の過程で酸を生じ;酸性条件では、ニッケルは水素を放出してニッケルイオンNi2+を生じ、その結果、触媒は緩慢に溶解してその水素化活性を失う。一般に、ニッケル触媒の安定性を維持するために、反応システムに塩基を添加して、酸を中和する必要がある。塩基の添加は、塩基出発原料のコストを増加させるだけでなく、生成物の分離と精製のコストも増加させ、標的生成物に対する触媒の選択性を変化させることさえある。例えば、糖が直接、加水分解されてエチレングリコールが調製される反応では、高温の水相条件では糖が非常に容易に加水分解副反応を被り、酢酸、乳酸、及びギ酸などの小分子物質が生じるため、結果的にシステムの酸性度が増加するという事実から(Sevilla M, Fuertes A B. Chemical and structural properties of carbonaceous products obtained by hydrothermal carbonization of saccharides. Chemistry - A European Journal. 2009, 15(16): 4195-4203.)、反応システムのpHが7以上になるように調節することでニッケル含有触媒の安定性が維持できることが、文献で報告されている(中国特許公開第103667365A号)。しかし、高pH条件では、プロピレングリコールの収率が大幅に増加する一方で、エチレングリコールの収率は大幅に低下し(米国特許第5107018号、中国特許公開第101781167A号、中国特許公開第101781171A号、中国特許公開第101781166A号);同時に、ギ酸、酢酸、及び乳酸などの加水分解副反応で生じる酸が増加し、総ジオールの収率もそれに応じて減少する(中国特許公開第101544537A号)。
【0003】
pH<5の酸性条件では、還元糖は比較的安定した状態にあって本質的に加水分解副反応を受けず(LI Yan, SHEN Canqiu et al., Study of the mechanism of decomposition of sucrose in non-pure sugar solution, China Beet and Sugar, 1996(2): 11-16);したがって、酸性条件で糖水素化触媒作用システムを稼働させることによって、ポリオールの収率が増加され得る。しかし、低pH条件では、Ru及びPtなどの貴金属のみが安定しており、触媒活性成分の役割を果たし得る。貴金属の使用は、ジオールの生産コストを大幅に増加させる。使用する貴金属の量を低減して活性を高めるために、一般に、比表面積が大きい担体を選択して固定し、分散させる。しかし、例えば、アルミナ、シリカ、及びマグネシアなどの無機酸化物のような一般に使用される担体は、酸性条件では不安定であり、容易に中和反応して反応システムに溶解し、ポリオールの収率が低下する(中国特許公開第103159587A号)。耐酸性材料としての活性炭は、触媒の比表面積を増加させるために、触媒担体としてもしばしば使用される(中国特許公開第103420796A号、中国特許公開第102643165A号、中国特許公開第102731258A号、中国特許公開第10161325A号)。しかし、活性炭もまた高温水素条件で不安定であり、水素化反応を容易に受けてメタン化される(米国特許出願公開第2002/0169344号)。
【0004】
さらに、ニッケル合金材料にはハステロイも含まれ、その主な組成は50~64%のNi、15~30%のMo、14~21%のCrである。これは、種々の化学工業環境に対して並外れた耐性を有し、特に種々の有機酸による腐食に耐性があり、モリブデンとクロムの高い含有量は、その耐腐食性を高める。それは、耐腐食性金属構造材料として、機械的特性の保証にさらに関する。
【0005】
したがって、担体を必要とせず、工業的連続生産に安定して適用され得て、生産コストを低下させ得る、耐酸性の安価で安定したニッケル合金触媒を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、耐酸性合金触媒を提供することである。それは工業的連続生産に安定して適用され得て、生産コストを低下させ得る。
【0007】
本発明は、以下の技術的解決策を採用する:
ニッケル、1つ又は複数の希土類元素、スズ、アルミニウム、及びモリブデンを含む、耐酸性合金触媒;構成要素は、重量部で好ましくは10~90部のニッケル、1~5部の希土類元素、1~60部のスズ、5~9部のアルミニウム、及び0.1~20部のモリブデンである。
【0008】
本発明の耐酸性合金触媒は、安価で安定しており、担体を必要としない。
【0009】
本明細書中では、希土類元素は、ランタン(La)、セリウム(Ce)、及びサマリウム(Sm)などをはじめとする、周期系のIIIB族中の原子番号21、39、及び57~71の17種の化学元素の一般的名称である。
【0010】
さらに、耐酸性合金触媒は、ニッケル、1つ又は複数の希土類元素、スズ、アルミニウム、モリブデン、及びホウ素又はリンを含み;構成要素は、重量部で好ましくは、10~90部のニッケル、1~5部の希土類元素、1~60部のスズ、5~9部のアルミニウム、0.1~20部のモリブデン、及び0.01~5部のホウ素又はリンである。
【0011】
この触媒合金中で金属元素のモリブデンを使用する利点は(ニッケル、1つ又は複数の希土類元素、スズ、及びアルミニウムが含まれる場合と比較して)、触媒への反応出発原料の吸着を促進させることである。反応出発原料は、まず最初にモリブデンに吸着され、次にニッケルの触媒活性に移行されて、触媒反応を受ける。同時に、モリブデンの添加は、反応中のアルミニウム成分を保持してその損失を防ぎ得て、その結果、触媒の物理的強度と寿命を保証する。
【0012】
この触媒合金中で金属元素タングステンの使用を回避する利点は(ニッケル、1つ又は複数の希土類元素、スズ、アルミニウム、及びタングステンが含まれる場合と比較して)、金属の使用が1つの金属分削減され、その結果、触媒の生産コストが低下することであり;タングステン含有触媒合金と比較して、同一触媒効果が達成され得る。
【0013】
本発明の耐酸性合金触媒では、化学的還元又は電解析出を用いて、高い比表面積を有する活性金属粉末が直接調製されてもよく、又はまず最初に製錬を用いて金属合金が形成され、次に機械的粉砕、微粒化などを用いて金属粉末が形成され、最後に従来のラネーニッケル触媒活性化法を用いて活性金属粉末が形成される。例えば、ニッケル、希土類元素、スズ、アルミニウム、モリブデン、及びホウ素又はリンが、それぞれ、10~90部、1~5部、1~60部、5~9部、0.1~20部、及び0.01~5部の重量部で、製錬炉に入れられ;温度が1500~2000℃に上昇され、次に低下されて;均一性を達成するための徹底的な機械的撹拌の後、金属合金が炉を出て入手される。ハンマーミルを使用して金属合金が粉砕されて金属粉末になり、金属粉末は20重量%~25重量%の水酸化ナトリウム水溶液に70~95℃で1~2時間浸漬されて、高い比表面積を有する活性金属粉末が形成される。
【0014】
本発明の耐酸性合金触媒は、可溶性糖の一段階触媒水素化分解によって、ジオールが調製される工程で使用される。
【0015】
この方法は、水中の触媒と接触させてジオールを調製する出発原料として糖及び水素を使用し、使用される触媒は主触媒と共触媒からなる複合触媒であり、
主触媒は、本発明の耐酸性合金触媒であり;
共触媒は、可溶性タングステン酸塩及び/又は不溶性タングステン化合物である。
【0016】
好ましくは、ジオールはエチレングリコールである。
【0017】
本発明の耐酸性合金触媒は、主触媒として使用され、可溶性タングステン酸塩及び/又は不溶性タングステン化合物の共触媒と協力して使用され、ジオールを得るために、複合触媒として糖を触媒する。ジオール、特にエチレングリコールの収率は、低い生産コストで保証され得る。本発明の耐酸性合金触媒は酸性条件で安定しており、反応システムに塩基を添加して糖の加水分解によって生じる酸を中和する必要がない。工業的連続生産では、この耐酸性合金触媒の主触媒としての使用は、システムの長期にわたる安定した稼働と、生産コストの管理にとって、特に重要である。
【0018】
好ましくは、エチレングリコールが上述の方法によって調製される場合、反応システムのpHは1~7であり;より好ましくは、反応システムのpHは3~6である。システムのpHが<7になるように制御することによって、反応の過程で出発原料の糖の加水分解副反応の回避が可能になり、その結果、エチレングリコール生産における出発原料の糖の消費が低減するだけでなく、触媒の寿命もまた保証されるので、触媒の使用コストが削減され得て、反応システムの長期連続稼働の安定性が確実になり;同時に、エチレングリコールの収率が高い一方で、生成する有機酸とポリマーの量は少ない。反応の過程で生成される酸が低pHを維持するのに十分でない場合、乳酸、ギ酸、又は酢酸などの無機酸又は有機酸がシステムに添加され、反応システムのpHが調節されてもよい。一般に、有機酸又は無機酸は、出発原料の糖と一緒に添加される。
【0019】
好ましくは、糖は、五炭素単糖、二糖及びオリゴ糖、六炭素単糖、二糖及びオリゴ糖、可溶性五炭素多糖及び可溶性六炭素多糖の1つ又は複数から選択される。出発原料糖の供給源としては、ビーツやサトウキビなどの糖ベースの物質、トウモロコシ、小麦、大麦、及びキャッサバなどのデンプンベースの物質、又はトウモロコシ茎、トウモロコシ穂軸、麦藁、サトウキビバガス、及び木材などのリグノセルロースベースの物質、トウモロコシ穂軸残渣若しくは古紙及び古紙包装紙などのセルロース系産業廃棄物、又は海藻などをはじめとする多糖類物質が挙げられるが、これに限定されるものではない。本明細書では、可溶性五炭素多糖及び可溶性六炭素多糖は、室温で可溶性の五炭素多糖及び六炭素多糖だけでなく、この処理の反応条件において可溶性の五炭素多糖及び六炭素多糖である。
【0020】
好ましくは、糖は、糖水溶液(糖溶液と略記される)の形態で水素と反応し、糖水溶液は、5~60重量%、より好ましくは20~50重量%の濃度を有する。連続稼働では、糖溶液は、送達ポンプの手段によって連続的に供給されてもよい。適切な触媒の使用は、出発原料の糖の濃度に関する反応システムの制限を低減し;高濃度の糖溶液が出発原料として使用され得て、これは、ジオール、特にエチレングリコールの生産コストを大幅に削減して、ジオールの大規模で経済的な生産を可能にする。
【0021】
好ましくは、可溶性タングステン酸塩は、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、及びリンタングステン酸ナトリウムの1つ又は複数であり;不溶性タングステン化合物は、三酸化タングステン及び/又はタングステン酸である。
【0022】
主触媒は水と混合され、反応器に入れられる。
【0023】
好ましくは、使用される主触媒の量は、1時間当たりの糖供給量の0.01~10倍である。
【0024】
好ましくは、反応は連続モードである。
【0025】
好ましくは、主触媒の補充量は、供給される糖1000kg当たり主触媒0.01~5kgの補充である。触媒の補充は、触媒排出バルブ(一般に反応器の底部にある)を通じて古い触媒の一部を排出し、次に等量の新しい触媒を触媒供給バルブ(一般に反応器の底部にある)から補充することで達成されてもよい。
【0026】
可溶性共触媒は、最初に糖溶液に添加され、次に同時に反応器に入れられてもよい。好ましくは、使用される可溶性共触媒の量は、糖水溶液の0.01~5重量%、より好ましくは0.01~2重量%、最も好ましくは0.01~1重量%である。
【0027】
不溶性共触媒は、主触媒と一緒に反応器に入れられてもよい。好ましくは、使用される不溶性共触媒の量は、主触媒の0.5~50重量%、より好ましくは5~20重量%である。
【0028】
好ましくは、反応システムの反応圧力は5~12MPaであり、反応温度は150~260℃であり、反応時間は≧10分である。
【0029】
より好ましくは、反応システムの反応圧力は6~10MPaであり、反応温度は180~250℃であり、反応時間は0.5~3時間である。反応時間は、最も好ましくは0.5~2時間である。
【0030】
好ましくは、反応は、スラリー床反応器内で行われる。反応の円滑な進行を確実にするために、形成される反応液の総容積は、反応器容積の80%を超えない。
【0031】
好ましくは、反応器内に触媒の不溶性部分を保持するために、フィルターがスラリー床反応器内に提供されて、不溶性部分がフィルターを通して流出する反応液及び気体によって、運び去られないようにする。
【0032】
反応の開始前に、主触媒がスラリー床反応器に入れられて、水素及び糖溶液がポンプを使用して同時に別々に反応器に添加され、反応が実行され;糖及び主触媒の補充は連続流の状態であり、反応液は反応器から連続的に流出する。共触媒に関しては、それが可溶性タングステン化合物である場合、それは糖溶液と一緒に反応器に入れられ;それが不溶性タングステン化合物である場合、それは主触媒と同時に反応器に入れられる。フィルターが、反応器に取り付けられている。フィルターは触媒を遮り得るが、気体及び反応液はフィルターから連続的に流出し、凝縮器に入って気液分離される。粗水素は精製されて、CO、CO、及びCHなどが除去され、再び精製水素になって反応器に戻る。凝縮器から流出する流出物は、分離システムに入り、分離されて、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセロール、ソルビトール、及び共触媒などが得られる。エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブタンジオールなどの製品は、既存の技術(例えば、精留など)を用いた精製によって入手されてもよい。反応システム内で既に溶解している水、ソルビトール、グリセロール、及び共触媒は反応器に戻されて、循環的に反応する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
添付の図面と併せて、本発明の特定の実施形態を下でさらに詳細に説明する。
【0034】
図1】可溶性糖の一段階触媒水素化分解によるジオールの調製に本発明の耐酸性合金触媒が使用される場合における、プロセスフローの概略図である。
図2】実施例2のエチレングリコール収率の経時的変動のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明をより明確に説明するために、好ましい実施例及び添付の図面と併せて、本発明を下でさらに説明する。当業者は、下の特定の用語に記載される内容が説明的且つ非限定的であり、本発明の保護範囲を制限するために使用されるべきでないことを理解するはずである。
【0036】
実施例1
耐酸性合金触媒の調製:
本発明の耐酸性合金触媒では、化学的還元又は電解析出を用いて高い比表面積を有する活性金属粉末が直接調製されてもよく、又はまず最初に製錬を用いて金属合金が形成され、次に機械的粉砕、微粒化などを用いて金属粉末が形成され、最後に従来のラネーニッケル触媒活性化法を用いて活性金属粉末が形成される。例えば、ニッケル、希土類元素、スズ、アルミニウム、モリブデン、及びホウ素又はリンが、それぞれ、10~90部、1~5部、1~60部、5~9部、0.1~20部、及び0.01~5部の重量部で、製錬炉に入れられ;温度が1500~2000℃に上昇され、次に低下されて;均一性を達成するための徹底的な機械的撹拌の後、金属合金が炉を出て入手される。ハンマーミルを使用して金属合金を粉砕して金属粉末にし、金属粉末を20重量%~25重量%の水酸化ナトリウム水溶液に70~95℃で1~2時間浸漬し、高い比表面積を有する活性金属粉末を形成する。
【0037】
以下を調製する:耐酸性合金触媒Ni80Sm1Sn30Al8Mo1(耐酸性合金触媒の組成が、80部のNi+1部のSm+30部のSn+8部のAl+1部のMoであることを意味する、以下同様)、耐酸性合金触媒Ni10Sm5Sn3Al2Mo5、耐酸性合金触媒Ni70Ce1Sn50Al7Mo0.5B5、耐酸性合金触媒Ni90Ce3Sn60Al9Mo20P0.01、及び耐酸性合金触媒Ni80La1Ce0.5Sn30Al7Mo10。
【0038】
実施例2
10Lの反応ケトルに、6Lの水及び1400gの耐酸性合金触媒Ni80Sm1Sn30Al8Mo1(主触媒として)を撹拌しながら入れる。反応ケトルを密閉し、水素を大気圧で1000L/hで通過させ、反応ケトル内の空気を5時間にわたり置換し、次に水素圧力を10MPaに上昇させて水素を5時間流入させ続け、反応ケトルの温度を250℃に上昇させて、連続供給を開始する。供給物組成は、40重量%のグルコース、0.5重量%のタングステン酸ナトリウム、59.5重量%の水であり、糖溶液濃度は約1.17g/cmであり;供給速度は3L/hである。反応ケトル内の糖の滞留時間は、2時間である。反応システムのpHが4.4になるように、酢酸を反応釜に添加する。反応の結果生じる水素及び反応液は、フィルターを通じて反応ケトルから流出して凝縮タンクに入り、反応液の排出速度は3L/hであり;反応液は冷却され、次に凝縮タンクの底部から排出されて液体流出物が得られる。液体流出物は精留分離システムに入り;水、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、及びソルビトール並びにタングステン酸ナトリウムが別々に得られ、グリセロール及びソルビトール、並びにタングステン酸ナトリウムをはじめとする蒸留されない重質成分は、反応システムに戻って循環的に反応する。サンプルを凝縮タンクの底部で採取し、高性能液体クロマトグラフィーを使用してその組成を検出する。
【0039】
高性能液体クロマトグラフィー検出は、従来の技術を使用してもよい。本発明は、基準のために以下の実験パラメータを提供する:
装置:Waters 515 HPLCポンプ;
検出器:Water 2414屈折率検出器;
クロマトグラフィーカラム:300mm×7.8mm、Aminex HPX-87Hイオン交換カラム;
移動相:5mmol/L硫酸溶液;
移動相流速:0.6ml/分;
カラム温度:60℃;
検出器温度:40℃。
【0040】
結果は次のようである:グルコース変換は100%であり;ジオール収率は85.9%であり、エチレングリコール収率は78%であり、プロピレングリコール収率は6%であり、ブタンジオール収率は2.1%であり;メタノール及びエタノールの収率は3.7%であり、その他の収率は10.4%である。
【0041】
図1は、可溶性糖の一段階触媒水素化分解によるジオールの調製に本発明の耐酸性合金触媒が使用される場合における、プロセスフローの概略図である。
【0042】
図2は、反応システムの稼働時間によるエチレングリコール収率の変動のグラフである。図から、エチレングリコールの収率は、実質的に約78%のままであることが分かる。これは、複合触媒が、反応システムの500時間の連続稼働後、エチレングリコールの収率がなおも安定していることを確実にし得ることを示唆する。
【0043】
実施例3
耐酸性合金触媒はNi10Sm5Sn3Al2Mo5であり、添加量は1400gである。
【0044】
供給物組成は、40重量%のグルコース、2重量%のタングステン酸ナトリウム、48重量%の水であり、糖溶液濃度は約1.17g/cmである。
【0045】
反応システムpH=6。
【0046】
その他の操作条件は、実施例2と同一である。
【0047】
結果は次のようである:グルコース変換は100%であり;ジオール収率は62.4%であり、エチレングリコール収率は25.4%であり、プロピレングリコール収率は30.4%であり、ブタンジオール収率は6.6%であり;メタノール及びエタノールの収率は9.4%であり、その他の収率は28.2%である。
【0048】
実施例4
耐酸性合金触媒はNi70Ce1Sn50Al7Mo0.5B5であり、添加量は500gである。
【0049】
100gの三酸化タングステンを添加する。
【0050】
供給物組成は、60重量%のグルコース、40重量%の水であり、糖溶液濃度は約1.29g/cmである。
【0051】
反応システムpH=4.2。
【0052】
その他の操作条件は、実施例2と同一である。
【0053】
結果は次のようである:グルコース変換は100%であり;ジオール収率は20.8%であり、エチレングリコール収率は10.9%であり、プロピレングリコール収率は7.5%であり、ブタンジオール収率は2.4%であり;メタノール及びエタノールの収率は15.6%であり、その他の収率は63.6%である。
【0054】
実施例5
耐酸性合金触媒はNi90Ce3Sn60Al9Mo20P0.01であり、添加量は1000gである。
【0055】
供給物組成は、15重量%のキシロース、40重量%のグルコース、1重量%のマルトビオース、1重量%のマルトトリオース、1重量%のリンタングステン酸ナトリウム、42重量%の水であり、糖溶液濃度は約1.22g/cmである。
【0056】
反応システムpH=4.8。
【0057】
その他の操作条件は、実施例2と同一である。
【0058】
結果は次のようである:キシロース、グルコース、マルトビオース、及びマルトトリオースの変換は100%であり;ジオール収率は71.6%であり、エチレングリコール収率は65.5%であり、プロピレングリコール収率は4.3%であり、ブタンジオール収率は1.8%であり;メタノール及びエタノールの収率は3.4%であり、その他の収率は25%である。500時間の触媒の稼働後、エチレングリコールの収率はなおも安定している。
【0059】
実施例6
耐酸性合金触媒はNi80La1Ce0.5Sn30Al7Mo10であり、添加量は5000gである。
【0060】
供給物組成は、50重量%のキシロース、0.1重量%のタングステン酸ナトリウム、49.9重量%の水であり、糖溶液濃度は約1.21g/cmである。
【0061】
反応システムpH=4.8。
【0062】
その他の操作条件は、実施例2と同一である。
【0063】
結果は次のようである:キシロース変換は100%であり;ジオール収率は72.1%であり、エチレングリコール収率は58.8%であり、プロピレングリコール収率は12.4%であり、ブタンジオール収率は0.9%であり;メタノール及びエタノールの収率は6.9%であり、その他の収率は21%である。500時間の触媒の稼働後、エチレングリコールの収率はなおも安定している。
【0064】
実施例7
耐酸性合金触媒はNi80Sm1Sn30Al8Mo1であり、添加量は1400gである。
【0065】
供給物組成は、40重量%のスクロース、1重量%のタングステン酸ナトリウム、59重量%の水であり、糖溶液濃度は約1.18g/cmである。
【0066】
反応システムpH=4.7。
【0067】
その他の操作条件は、実施例2と同一である。
【0068】
結果は次のようである:スクロース変換は100%であり;ジオール収率は81.7%であり、エチレングリコール収率は52.6%であり、プロピレングリコール収率は24%であり、ブタンジオール収率は5.1%であり;メタノール及びエタノールの収率は3.3%であり、その他の収率は15%である。500時間の触媒の稼働後、エチレングリコールの収率はなおも安定している。
【0069】
明らかに、本発明の上記の例は、単に本発明を明確に説明するために与えられた例であり、本発明の実施形態を制限するものではない。上記の説明に基づいて、異なる形式のその他の変更又は修正をなおも加えてもよい。本明細書で全ての実施形態を網羅的に列挙することは、不可能である。本発明の技術的解決策に由来する全ての明白な変更又は修正は、依然として本発明の保護の範囲内にある。
図1
図2