(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】計測方法、露光方法、物品の製造方法、プログラム及び露光装置
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20240126BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2020023659
(22)【出願日】2020-02-14
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 研二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】張 劬
(72)【発明者】
【氏名】大手 啓介
(72)【発明者】
【氏名】山本 将志
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-117491(JP,A)
【文献】特開2007-027721(JP,A)
【文献】特開2006-140204(JP,A)
【文献】特開2004-200632(JP,A)
【文献】特開2009-170612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原版のパターンを転写すべき基板上のショット領域に形成された複数の計測マークを計測する計測方法であって、
少なくとも1つの基板について、当該基板上のショット領域に形成された複数の計測マークのうち第1の数の計測マークを計測する第1計測モードを実行して得られる前記第1の数の計測マークの計測値に基づいて、当該基板上のショット領域の位置に関する第1位置情報を算出する工程と、
前記複数の計測マークのうち前記第1の数よりも少ない第2の数の計測マークを計測すると仮定した場合に、前記第1位置情報に基づいて、前記ショット領域の位置に関する位置情報を算出するための複数のモデルのそれぞれについて、前記ショット領域の位置に関する第2位置情報を予測する工程と、
前記第2位置情報から前記複数のモデルのそれぞれを評価するための前記複数のモデルのそれぞれに対応する複数の第1評価値を求める工程と、
前記複数の第1評価値のうち評価基準を満たす第1評価値に対応するモデルに基づいて、前記複数の計測マークに対する計測モードを、前記第1計測モードから前記第2の数の計測マークを計測する第2計測モードに遷移させる工程と、
を有
し、
前記評価基準を満たす第1評価値が複数存在する場合に、前記第2計測モードに遷移させる工程では、前記評価基準を満たす第1評価値に対応するモデルに基づく計測モードを実行したときの処理時間にも基づいて、前記複数の計測マークに対する計測モードを、前記第1計測モードから前記第2計測モードに遷移させることを特徴とする計測方法。
【請求項2】
少なくとも1つの基板について、前記第2計測モードを実行して得られる前記第2の数の計測マークの計測値に基づいて、当該基板上のショット領域の位置に関する第3位置情報を算出する工程と、
前記複数の計測マークのうち前記第2の数よりも少ない第3の数の計測マークを計測すると仮定した場合に、前記第3位置情報に基づいて、前記ショット領域の位置に関する位置情報を算出するための複数のモデルのそれぞれについて、前記ショット領域の位置に関する第4位置情報を予測する工程と、
前記第4位置情報から前記複数のモデルのそれぞれを評価するための前記複数のモデルのそれぞれに対応する複数の第2評価値を求める工程と、
前記複数の第2評価値のうち評価基準を満たす第2評価値が存在する場合に、前記第2評価値に対応するモデルに基づいて、前記複数の計測マークに対する計測モードを、前記第2計測モードから前記第3の数の計測マークを計測する第3計測モードに遷移させる工程と、
を更に有することを特徴とする請求項
1に記載の計測方法。
【請求項3】
前記複数の第2評価値のうち評価基準を満たす第2評価値が存在しない場合に、前記複数の計測マークに対する計測モードを、前記第2計測モードで維持する工程を更に有することを特徴とする請求項
2に記載の計測方法。
【請求項4】
前記複数の第2評価値のうち評価基準を満たす第2評価値が存在しない場合に、前記複数の計測マークに対する計測モードを、前記第2計測モードから前記第1計測モードに遷移させる工程を更に有することを特徴とする請求項
2に記載の計測方法。
【請求項5】
前記モデルは、前記複数の計測マークのうちの計測すべき計測マークの数、前記複数の計測マークのうちの計測すべき計測マークの位置、及び、前記ショット領域の位置に関する位置情報を算出するアルゴリズムのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1乃至
4のうちいずれか1項に記載の計測方法。
【請求項6】
前記ショット領域の位置に関する位置情報は、前記ショット領域の倍率、回転及びシフトのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1乃至
5のうちいずれか1項に記載の計測方法。
【請求項7】
原版を介して基板を露光する露光方法であって、
前記原版のパターンを転写すべき前記基板上のショット領域に形成された複数の計測マークの計測を行う工程と、
前記計測の結果に基づいて、前記原版と前記ショット領域との位置合わせを行う工程と、
前記位置合わせの後、前記原版を介して前記基板の露光を行う工程と、
を有し、
前記計測を行う工程は、
少なくとも1つの基板について、当該基板上のショット領域に形成された複数の計測マークのうち第1の数の計測マークを計測する第1計測モードを実行して得られる前記第1の数の計測マークの計測値に基づいて、当該基板上のショット領域の位置に関する第1位置情報を算出する工程と、
前記複数の計測マークのうち前記第1の数よりも少ない第2の数の計測マークを計測すると仮定した場合に、前記第1位置情報に基づいて、前記ショット領域の位置に関する位置情報を算出するための複数のモデルのそれぞれについて、前記ショット領域の位置に関する第2位置情報を予測する工程と、
前記第2位置情報から前記複数のモデルのそれぞれを評価するための前記複数のモデルのそれぞれに対応する複数の第1評価値を求める工程と、
前記複数の第1評価値のうち評価基準を満たす第1評価値に対応するモデルに基づいて、前記複数の計測マークに対する計測モードを、前記第1計測モードから前記第2の数の計測マークを計測する第2計測モードに遷移させる工程と、
を含
み、
前記評価基準を満たす第1評価値が複数存在する場合に、前記第2計測モードに遷移させる工程では、前記評価基準を満たす第1評価値に対応するモデルに基づく計測モードを実行したときの処理時間にも基づいて、前記複数の計測マークに対する計測モードを、前記第1計測モードから前記第2計測モードに遷移させることを特徴とする露光方法。
【請求項8】
請求項
7に記載の露光方法を用いて基板を露光する工程と、
露光した前記基板を現像する工程と、
現像された前記基板から物品を製造する工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至
6のうちいずれか1項に記載の計測方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項10】
原版のパターンの像を基板に投影し、前記基板を露光する露光処理を行う露光装置であって、
前記パターンの像を前記基板に投影する投影光学系と、
前記露光処理を制御する制御部と、
を有し、
前記露光処理は、
前記パターンの像を転写すべき前記基板上のショット領域に形成された複数の計測マークの計測を行う工程と、
前記計測の結果に基づいて、前記原版と前記ショット領域との位置合わせを行う工程と、
前記位置合わせの後、前記原版を介して前記基板の露光を行う工程と、
を有し、
前記計測を行う工程は、
少なくとも1つの基板について、当該基板上のショット領域に形成された複数の計測マークのうち第1の数の計測マークを計測する第1計測モードを実行して得られる前記第1の数の計測マークの計測値に基づいて、当該基板上のショット領域の位置に関する第1位置情報を算出する工程と、
前記複数の計測マークのうち前記第1の数よりも少ない第2の数の計測マークを計測すると仮定した場合に、前記第1位置情報に基づいて、前記ショット領域の位置に関する位置情報を算出するための複数のモデルのそれぞれについて、前記ショット領域の位置に関する第2位置情報を予測する工程と、
前記第2位置情報から前記複数のモデルのそれぞれを評価するための前記複数のモデルのそれぞれに対応する複数の第1評価値を求める工程と、
前記複数の第1評価値のうち評価基準を満たす第1評価値に対応するモデルに基づいて、前記複数の計測マークに対する計測モードを、前記第1計測モードから前記第2の数の計測マークを計測する第2計測モードに遷移させる工程と、
を含
み、
前記評価基準を満たす第1評価値が複数存在する場合に、前記第2計測モードに遷移させる工程では、前記評価基準を満たす第1評価値に対応するモデルに基づく計測モードを実行したときの処理時間にも基づいて、前記複数の計測マークに対する計測モードを、前記第1計測モードから前記第2計測モードに遷移させることを特徴とする露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測方法、露光方法、物品の製造方法、プログラム及び露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルや有機ELパネルなどのフラットパネルや半導体デバイスの製造では、原版(マスク)のパターンを、レジストが塗布されたガラスプレートやウエハなどの基板に転写する露光装置が用いられている。このような露光装置には、基板上のショット領域に対して原版のパターンを高精度に位置合わせ(アライメント)すること、及び、スループット(生産性)を向上させることが求められ、それに関する技術が提案されている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
スループットを向上させる技術としては、基板上のショット領域に設けられた位置合わせ用の計測マーク(の点数)を間引く技術が知られている。計測マークを間引く技術には、複数の選択肢がある。例えば、基板の変化成分やショット形状の変化成分のうち、補正したい成分によって、最適な間引き方法及び計算アルゴリズムが決定される。最適な間引き方法及び計算アルゴリズムは、フラットパネルの製造プロセス(生産)を開始する際にテスト露光(試し焼き)を行い、マーク計測装置を用いて基板の変形成分やショット形状の変化成分を計測することで決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平4-47968号公報
【文献】特開2006-140204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、製造プロセス中、主となる基板の変化成分は一定ではない。例えば、製造プロセスの開始後の数時間は、原版の伸び成分(ショット倍率)が主となる。そして、原版の伸びが安定した後は、基板の伸び成分(基板倍率)が主となる。このように、製造プロセス中に基板の変化成分が変わるため、従来技術に従って最適な間引き方法及び計算アルゴリズムを決定したとしても、製造プロセスを通して、常に最適であるとは限らない。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、基板上のショット領域に形成された計測マークを計測するのに有利な計測方法を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての計測方法は、原版のパターンを転写すべき基板上のショット領域に形成された複数の計測マークを計測する計測方法であって、少なくとも1つの基板について、当該基板上のショット領域に形成された複数の計測マークのうち第1の数の計測マークを計測する第1計測モードを実行して得られる前記第1の数の計測マークの計測値に基づいて、当該基板上のショット領域の位置に関する第1位置情報を算出する工程と、前記複数の計測マークのうち前記第1の数よりも少ない第2の数の計測マークを計測すると仮定した場合に、前記第1位置情報に基づいて、前記ショット領域の位置に関する位置情報を算出するための複数のモデルのそれぞれについて、前記ショット領域の位置に関する第2位置情報を予測する工程と、前記第2位置情報から前記複数のモデルのそれぞれを評価するための前記複数のモデルのそれぞれに対応する複数の第1評価値を求める工程と、前記複数の第1評価値のうち評価基準を満たす第1評価値に対応するモデルに基づいて、前記複数の計測マークに対する計測モードを、前記第1計測モードから前記第2の数の計測マークを計測する第2計測モードに遷移させる工程と、を有し、前記評価基準を満たす第1評価値が複数存在する場合に、前記第2計測モードに遷移させる工程では、前記評価基準を満たす第1評価値に対応するモデルに基づく計測モードを実行したときの処理時間にも基づいて、前記複数の計測マークに対する計測モードを、前記第1計測モードから前記第2計測モードに遷移させることを特徴とする。
【0008】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、基板上のショット領域に形成された計測マークを計測するのに有利な計測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】基板上のショットレイアウト及び計測マークの一例を示す図である。
【
図3】第1実施形態における計測処理を説明するためのフローチャートである。
【
図6】第2実施形態における計測処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。更に、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、露光装置100の構成を示す概略図である。露光装置100は、液晶パネルや有機ELパネルなどのフラットパネルの製造工程に用いられ、基板上にパターンを形成するリソグラフィ装置である。露光装置100は、例えば、原版と基板とを走査方向に移動させながら基板を露光(走査露光)して、原版のパターンを基板上に転写するステップ・アンド・スキャン方式の露光装置(スキャナー)である。但し、露光装置100は、ステップ・アンド・リピート方式やその他の露光方式を採用することも可能である。
【0013】
露光装置100は、
図1に示すように、光源からの光で原版1(マスク)を照明する照明光学系21と、基板1(基板上)のショット領域に形成された複数の計測マークを計測する計測光学系22と、原版1を保持して移動する原版ステージ23とを有する。また、露光装置100は、露光装置100の各部を支持する構造体24と、原版1のパターンを基板1に投影する投影光学系25と、基板1を保持して移動する基板ステージ26とを有する。また、露光装置100は、原版ステージ23の位置を計測するための干渉計27と、基板ステージ26の位置の位置を計測するための干渉計28と、原版ステージ23を移動させるためのモータ29と、基板ステージ26を移動させるためのモータ30とを有する。また、露光装置100は、露光装置100の全体を制御する制御部31と、基板ステージ26との間で基板1を搬送する基板搬送部40とを有する。
【0014】
制御部31は、CPUやメモリなどを含む情報処理装置(コンピュータ)で構成され、記憶部に記憶されたプログラムに従って、露光装置100の各部を統括的に制御して露光装置100を動作させる。
制御部31は、本実施形態では、原版1を介して基板2の露光を行う露光処理や露光処理に関連する処理を制御する。露光処理に関連する処理は、例えば、原版1のパターンを転写すべき基板上のショット領域に形成された複数の計測マークの計測を行う計測処理や計測処理の結果に基づいて原版1と基板上のショット領域との位置合わせを行うアライメント処理を含む。
【0015】
図2は、本実施形態における基板上のショットレイアウト(露光レイアウト)及び計測マークの一例を示す図である。但し、
図2に示すショットレイアウト及び計測マーク(の数及び配置)は例示的なものであり、これに限定されるものではない。
図2に示すように、本実施形態では、横方向(X方向)に2つのショット領域が形成され、縦方向(Y方向)に2つのショット領域が形成された4ショットによるグリッド状レイアウトが基板上に形成されている。以下では、左上のショット領域を起点として時計回りで各ショット領域を、ショット領域S1、ショット領域S2、ショット領域S3、ショット領域S4と称する。
【0016】
また、ショット領域S1乃至S4のそれぞれには、横方向に配列された(左右に並ぶ)2つの計測マークを、縦方向に沿って(上下に)3組配置している。従って、本実施形態のショットレイアウトにおける各ショット領域には、6つの計測マークが形成されている。以下では、各ショット領域内の左上の計測マークを起点として時計回りで各計測マークを、計測マークP1L、計測マークP1R、計測マークP2R、計測マークP3R、計測マークP3L、計測マークP2Lと称する。従って、各ショット領域の各計測マークは、それぞれの表記で識別可能となる。
【0017】
更に、本実施形態では、各ショット領域内において左右に並ぶ2つの計測マーク、例えば、計測マークP2Lと計測マークP2Rとを、計測光学系22が同時に計測することができるように配置している。従って、各ショット領域に対して、基板ステージ26をY方向に移動させながら計測光学系22で左右に並ぶ2つの計測マークを同時に計測することで、3回の計測でショット領域内の全ての計測マークが計測可能となる。
【0018】
図3を参照して、本実施形態における露光処理を、特に、計測処理に注目して説明する。計測処理は、上述したように、制御部31が露光装置100の各部を統括的に制御することで実行される。
【0019】
S101では、少なくとも1つの基板1について、基板上の各ショット領域に形成された複数の計測マークの全てを計測する全点計測モードを実行する。本実施形態では、全点計測モードを実行する基板1の数(枚数)を2とする。具体的には、まず、基板搬送部40を介して、ロットの1枚目の基板1を基板ステージ26に搬送し、かかる基板1を基板ステージ26で保持する。次いで、基板ステージ26を移動させながら、計測光学系22を用いて各ショット領域に形成されている計測マークの全てを計測し、各計測マークの計測値(第1位置情報)を取得してメモリなどの記憶部に格納する。ロットの2枚目の基板1に対しても、1枚目の基板1と同様に、全点計測モードを実行する。本実施形態では、ロットの1枚目及び2枚目の基板1のそれぞれについて、各ショット領域に形成された複数の計測マークの全てを計測する全点計測モードを実行するが、実際には、複数の計測マークの全てを計測しなくてもよい。例えば、基板上のショット領域に形成された複数の計測マークのうち第1の数の計測マークを計測する計測モード(第1計測モード)を実行すればよい。
【0020】
また、全点計測モードが実行された1枚目及び2枚目の基板1については、計測マークの計測値に基づいて各種の補正処理を行いながらアライメント処理や露光処理を行い、基板搬送部40を介して基板ステージ26(露光装置100)から搬出する。
【0021】
S102では、ショット領域の位置に関する位置情報を算出するための複数のモデル(予測条件)を変更しながら、ロットの1枚目及び2枚目の基板1の各ショット領域の各計測マークの計測値を予測する(即ち、予測値を算出する)。本実施形態では、互いに異なる2つのモデル(第1モデル及び第2モデル)のそれぞれについて、各計測マークの計測値の予測値(第2位置情報)を算出する。ここで、ショット領域の位置に関する位置情報を算出するためのモデルは、計測点数、計測点の配置及び計算アルゴリズムの少なくとも1つを含む。なお、計測点数は、基板上の各ショット領域に形成された複数の計測マークのうち計測光学系22によって計測すべき計測マークの数を意味し、計測点の配置は、複数の計測マークのうち計測光学系22によって計測すべき計測マークの位置を意味する。計算アルゴリズムは、基板上の各ショット領域の位置に関する位置情報を算出するアルゴリズムを意味する。また、基板上の各ショット領域の位置に関する位置情報は、ショット領域の倍率、回転及びシフトのうちの少なくとも1つを含む。但し、S102で設定されるモデルに対応する計測モードは、基板上のショット領域に形成された複数の計測マークのうち第1の数よりも少ない第2の数の計測マークを計測する計測モード(第2計測モード)である。
【0022】
図4は、本実施形態における第1モデルとしての計測点の配置を示す図である。
図4に示すように、本実施形態では、第1モデルとして、基板上の各ショット領域に形成された計測マークP2L及びP2Rのみを計測する計測モードを仮定する。また、基板上の各ショット領域の位置に関する位置情報として、以下の式11、式12、式13、式14、式15、式16、式17及び式18で表される成分を定義する。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
ここで、ショット領域Siの計測マークPjLのX方向の計測値をxSiPjL(i=1,2,3,4 j=1,2,3)とし、ショット領域Siの計測マークPjRのX方向の計測値をxSiPjR(i=1,2,3,4 j=1,2,3)とする。同様に、ショット領域Siの計測マークPjLのY方向の計測値をySiPjL(i=1,2,3,4 j=1,2,3)とし、ショット領域Siの計測マークPjRのY方向の計測値をySiPjR(i=1,2,3,4 j=1,2,3)とする。また、ショット領域SiのX方向の座標をDXi(i=1,2,3,4)とし、ショット領域SiのY方向の座標をDYi(i=1,2,3,4)とし、ショット領域Siの数をN(本実施形態では、4)とする。
【0032】
そして、S101で取得した各計測マークの計測値を、式11乃至式18に代入して、基板倍率、基板回転、各ショット領域の形状倍率、形状回転及びシフトを算出する。また、上述した各成分に対して基板間平均値を求め、それぞれをMPave、RPave、MSavei、RSavei、SXave及びSYaveとする。
【0033】
最後に、ロットの1枚目の基板1の各計測マークの計測値を、
図4に示す計測点の配置で計測すると仮定し、式11乃至式18を用いて、上述した各成分を求める。かかる各成分は、基板倍率MP’、基板回転RP’、各ショット領域の形状倍率MS’
i、形状回転RS’
i、シフトSX’
i及びSY’
iを含む。そして、以下の式21、式22、式23及び式24から各計測マークの計測値の予測値を求める。
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
ここで、ショット領域Siの計測マークPjLのX方向の計測値の予測値をx’SiPjL(i=1,2,3,4 j=1,2,3)とする。ショット領域Siの計測マークPjRのX方向の計測値の予測値をx’SiPjR(i=1,2,3,4 j=1,2,3)とする。同様に、ショット領域Siの計測マークPjLのY方向の計測値の予測値をy’SiPjL(i=1,2,3,4 j=1,2,3)とする。ショット領域Siの計測マークPjRのY方向の計測値の予測値をy’SiPjR(i=1,2,3,4 j=1,2,3)とする。また、ショット領域Siの計測マークPjL/PjRのY方向の座標をYij(i=1,2,3,4 j=1,2,3)とする。
【0039】
ロットの2枚目の基板1についても、同様に、第1モデルに対応する各計測マークの計測値の予測値を算出する。
【0040】
図5は、本実施形態における第2モデルとしての計測点の配置を示す図である。
図5に示すように、本実施形態では、第2モデルとして、基板上のショット領域S1及びS2のそれぞれに形成された計測マークP2L及びP2Rのみを計測する計測モードを仮定する。また、基板上の各ショット領域の位置に関する位置情報として、以下の式31、式32、式33、式34、式35及び式36で表される成分を定義する。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
式31乃至式36における表記は、式11乃至式18と同様である。
【0048】
そして、S101で取得した各計測マークの計測値を、式31乃至式36に代入して、基板倍率、基板回転、各ショット領域のシフトを算出する。また、上述した各成分に対して基板間平均値を求め、それぞれをMPave、RPave、SXave及びSYaveとする。
【0049】
最後に、ロットの1枚目の基板1の各計測マークの計測値を、
図5に示す計測点の配置で計測すると仮定し、式31乃至式36を用いて、上述した各成分を求める。かかる各成分は、基板倍率MP’、基板回転RP’、各ショット領域のシフトSX’及びSY’を含む。そして、以下の式41、式42、式43及び式44から各計測マークの計測値の予測値を求める。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
式41乃至式44における表記は、ショット領域Siの計測マークPjL/PjRのX方向の座標をXijL/XijR(i=1,2,3,4 j=1,2,3)とする以外、式21乃至式24と同様である。
【0055】
ロットの2枚目の基板1についても、同様に、第2モデルに対応する各計測マークの計測値の予測値を算出する。
【0056】
なお、本実施形態で説明した各成分の定義及び式は一例であり、これに限定されるものではない。
【0057】
S103では、S102で得られた各計測マークの計測値の予測値から、複数のモデルのそれぞれを評価するための複数のモデルのそれぞれに対応する評価値(第1評価値)を求める(各計測マークの計測値の予測値を評価する)。本実施形態では、複数のモデルのそれぞれに対して、S102で得られた各ショット領域に形成された全ての計測マークのそれぞれの計測値の予測値と実際の計測値(S101で実測された計測値)との差の絶対値の最大値を評価値とする。従って、複数のモデルの数と同じ数の評価値、本実施形態では、2つの評価値が得られる。なお、本実施形態では、各計測マークの計測値の予測値と実際の計測値との差の絶対値の最大値を評価値としているが、これに限定されるものではない。そして、複数のモデルのそれぞれに対応する評価値のうち、予め定められた閾値よりも小さい、即ち、評価基準を満たす評価値に対応するモデルを選択し、かかるモデルに対応する計測モードを、計測マークに対する計測モードとして適用可能と判断する。換言すれば、計測マークに対する計測モードを、全点計測モードから、評価基準を満たす評価値のモデルに対応する計測モードに遷移させる。
【0058】
S103において、評価基準を満たす評価値が複数存在する場合には、例えば、評価基準を満たす評価値のうち、閾値から最も離れている評価値に対応するモデルを選択すればよい。また、他の評価条件、例えば、評価基準を満たす評価値のモデルに対応する計測モードの処理時間に基づいて、評価基準を満たす評価値に対応するモデルを選択してもよい。本実施形態では、第2モデルに対応する計測モードの処理時間が第1モデルに対応する計測モードの処理時間よりも短いことが自明であるため、両方のモデルの評価値が評価基準を満たす場合であっても、第2モデルを選択することが可能である。
【0059】
一方、評価基準を満たす評価値が存在しない場合には、記憶部に記憶された計測値の全て又は一部を破棄するとともに、計測マークに対する計測モードとして、全点計測モードを維持する。
【0060】
S104では、ロットの1枚目及び2枚目以降の基板1について、S103で選択されたモデルに対応する計測モードを実行する。例えば、第1モデルが選択された場合には、
図4に示したように、計測マークP2L及びP2Rのみを計測する計測モードを実行し、その計測値を式11乃至式18に代入して、基板倍率、基板回転、各ショット領域の形状倍率、形状回転及びシフトを算出する。また、算出された各成分を、式21乃至式24に代入して、各計測マークの計測値の予測値を求める。
【0061】
S105では、S104で算出された各計測マークの計測値の予測値に基づいて、S103で遷移させた計測モードの継続可否を判定する。本実施形態では、S104で算出された各計測マークの計測値の予測値と実際の計測値との差を評価し、予め定められた閾値を超えるものが1つでもあれば、S103で遷移させた計測モードの継続を不可と判定する。この場合、計測マークに対する計測モードを全点計測モードに遷移させる(戻す)。一方、S104で算出された各計測マークの計測値の予測値と実際の計測値との差を評価し、予め定められた閾値を超えるものが1つもなければ、S103で遷移させた計測モードの継続を可能と判定する。この場合、S103で遷移させた計測モードを実行して得られた計測マークの計測値に基づいて各種の補正処理を行いながらアライメント処理や露光処理を行い、基板搬送部40を介して基板ステージ26(露光装置100)から基板1を搬出する。
【0062】
このように、本実施形態によれば、露光装置100の動作中(製造プロセス中)に基板1の変化成分が変わった場合でも、計測マークに対する計測モードを、常に、最適な計測モード(計測点を減らす方向への計測モード)に遷移させることができる。従って、露光装置100では、基板上のショット領域に対して原版1のパターンを高精度に位置合わせ(アライメント)することと、計測マークを間引きして(計測点を減らして)スループット(生産性)を向上させることを両立させることができる。
【0063】
<第2実施形態>
図6を参照して、本実施形態における露光処理を、特に、計測処理に注目して説明する。計測処理は、上述したように、制御部31が露光装置100の各部を統括的に制御することで実行される。
【0064】
S201では、第1実施形態で説明したS101乃至S105と同様に、基板上の各ショット領域に形成された計測マークに対する計測モードを最適な計測モードに遷移させる(即ち、計測モードの最適化を行う)。本実施形態では、S105において、第1モデルに対応する計測モードの計測モードの継続を可能と判定され、少なくとも1枚の基板1に対して第1モデルに対応する計測モードが実行されたものとする。また、ロットの1枚目及び2枚目の基板1に対して全点計測モードを実行し、ロットの3枚目及び4枚目の基板1に対して第1モデルに対応する計測モードを実行されたものとする。本実施形態では、S202、S203、S204及びS205において、計測マークに対する計測モードの更なる最適化を行う。
【0065】
S202では、第1モデルに対応する計測モード(基板上の各ショット領域の計測マークP2L及びP2Rのみの計測)を全点計測モードと見立てて、モデルを変更しながら、ロットの3枚目及び4枚目の基板1の各ショット領域の各計測マークの計測値を予測する。本実施形態では、第2モデルについて、各計測マークの計測値の予測値(第4位置情報)を算出する。具体的には、ロットの3枚目及び4枚目の基板1に第1モデルに対応する計測モードを実行して得られた各計測マークの計測値(第3位置情報)を、式31乃至式36に代入して、基板倍率、基板回転、各ショット領域のシフトを算出する。また、上述した各成分に対して基板間平均値を求め、それぞれをMP
ave、RP
ave、SX
ave及びSY
aveとする。更に、ロットの3枚目の基板1に対して、
図5に示す計測点の配置で計測する計測モード(第3計測モード)を実行すると仮定し、式31乃至式36を用いて、基板倍率MP’、基板回転RP’、各ショット領域のシフトSX’
i及びSY’
iを求める。そして、式41乃至式44から計測マークP2L及びP2Rのそれぞれの計測値の予測値を求める。ロットの4枚目の基板1についても、同様に、計測マークP2L及びP2Rのそれぞれの計測値の予測値を算出する。
【0066】
S203では、S202で得られた各計測マークの計測値の予測値から、複数のモデルのそれぞれを評価するための複数のモデルのそれぞれに対応する評価値(第2評価値)を求める(各計測マークの計測値の予測値を評価する)。本実施形態では、第2モデル、即ち、基板上のショット領域S1及びS3のそれぞれの計測マークP2L及びP2Rの計測値の予測値のみの評価となる。具体的な評価については、S103と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。但し、評価基準を満たす評価値が存在しない場合には、計測マークに対する計測モードを、直ちに全点計測モードに戻すのではなく、第1モデルに対応する計測モードで維持する。
【0067】
S204では、ロットの5枚目以降の基板1について、S203で選択されたモデルに対応する計測モードを実行する。本実施形態では、第2モデルに対応する計測モード、即ち、
図5に示したように、ショット領域S1及びS3のそれぞれの計測マークP2L及びP2Rのみを計測する計測モードを実行するものとする。そして、第2モデルに対応する計測モードを実行して得られた計測値を式31乃至式36に代入して、基板倍率MP’、基板回転RP’、各ショット領域のシフトSX’及びSY’を算出する。また、算出された各成分を、式41乃至式44に代入して、計測マークP2L及びP2Rのそれぞれの計測値の予測値を求める。
【0068】
S205では、S204で算出された各計測マークの計測値の予測値に基づいて、S203で遷移させた計測モードの継続可否を判定する。具体的な判定については、S105と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。S203で遷移させた計測モードの継続を可能と判定した場合は、S105と同様に、計測マークの計測値に基づいて各種の補正処理を行いながらアライメント処理や露光処理を行い、基板搬送部40を介して基板ステージ26から基板1を搬出する。一方、S203で遷移させた計測モードの継続を不可と判定した場合は、計測マークに対する計測モードを、全点計測モード、或いは、第1モードに対応する計測モードに遷移させる(戻す)。
【0069】
このように、本実施形態では、計測マークに対する計測モードを、計測点を減らす方向への計測モードに遷移させた場合に、基板1の変形成分が変わったとしても、かかる計測モードを維持する、或いは、計測点を増やす方向への計測モードに戻すことができる。従って、露光装置100の動作中、計測マークに対する計測モードを、常に、最適な計測モードに遷移させることができる。
【0070】
なお、露光装置100の動作、即ち、露光装置100で行われる露光方法も本発明の一側面を構成する。かかる露光方法は、第1実施形態や第2実施形態で説明したように、基板上のショット領域に形成された複数の計測マークの計測を行う工程を含む。また、かかる露光方法は、複数の計測マークの計測の結果に基づいて、原版とショット領域との位置合わせを行う工程と、位置合わせの後、原版を介して基板の露光を行う工程とを含む。
【0071】
また、露光装置100の動作中に、装置運用状況が変化した場合には、それに応じて、第1実施形態や第2実施形態で説明した計測処理を行うようにしてもよい。ここで、装置運用状況の変化とは、露光装置100の環境の変化、露光装置100に設定される情報の変化、露光装置100の生産に関する情報の変化などを含む。また、露光装置100の環境とは、装置内外の温度、湿度、気圧、振動などを含む。露光装置100に設定される情報とは、露光条件や露光装置100の各部の制御パラメータなどを含む。露光装置100の生産に関する情報は、原版1の開口率、露光量、基板処理時間、基板交換時間、生産枚数、生産時間、外部システムからの割り込み信号などを含む。
【0072】
<第3実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1つ以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1つ以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0073】
<第4実施形態>
本発明の実施形態における物品の製造方法は、例えば、フラットパネルディスプレイ、液晶表示素子、半導体素子、MEMSなどの物品を製造するのに好適である。かかる製造方法は、上述した露光方法(露光装置100)を用いて感光剤が塗布された基板を露光する工程と、露光された感光剤を現像する工程とを含む。また、現像された感光剤のパターンをマスクとして基板に対してエッチング工程やイオン注入工程などを行い、基板上に回路パターンが形成される。これらの露光、現像、エッチングなどの工程を繰り返して、基板上に複数の層からなる回路パターンを形成する。後工程で、回路パターンが形成された基板に対してダイシング(加工)を行い、チップのマウンティング、ボンディング、検査工程を行う。また、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、レジスト剥離など)を含みうる。本実施形態における物品の製造方法は、従来に比べて、物品の性能、品質、生産性及び生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0074】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0075】
100:露光装置 1:原版 2:基板 22:計測光学系 31:制御部