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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】表面材
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/26 20060101AFI20240126BHJP
   D04H 1/498 20120101ALI20240126BHJP
   D04H 1/4374 20120101ALI20240126BHJP
【FI】
B32B5/26
D04H1/498
D04H1/4374
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020025830
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021130228
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】臼田 啓治
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-301774(JP,A)
【文献】特開2009-299199(JP,A)
【文献】特開2005-246952(JP,A)
【文献】特開2017-089042(JP,A)
【文献】特開平09-070909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B、D04H
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一繊維層と第二繊維層が積層一体化してなる、前記第一繊維層の主面上に基材を積層して使用する、材であって、
前記第一繊維層は構成繊維として、難燃性繊維と前記難燃性繊維よりも親水性が低い低親水性繊維とを含んでおり、
前記第二繊維層を構成する繊維は低親水繊維のみである、
材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面材に関する。
【背景技術】
【0002】
成形することで各種内装を調製可能な内装材の構成部材として、従来から布帛(例えば、繊維ウェブ、不織布、織物、編物など)が使われている。
このような従来技術にかかる内装材として、例えば、特開平09-70909(特許文献1)などには、レーヨン繊維などの熱不溶融性繊維(以降、難燃性繊維と称することがある)ならびにポリエステル系繊維を含んで構成された表面材を、ウッドストックなどの基材シートに積層一体化してなる、自動車内装材が開示されている。そして、特許文献1には、表面材が熱不溶融性繊維(特に好適には、レーヨン繊維)を含んでいることによって、難燃性に優れる自動車内装材を実現できることが開示されている。
なお、特許文献1に開示されているように、繊維層を備える表面材は柔軟性に富み金型などへ追従し易いため、成形性に優れるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-70909(特許請求の範囲、0007、0013、0017、0028など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願出願人は難燃性と成形性に優れる内装材を提供するため、上述したような従来技術にかかる表面材を備える内装材について検討した。具体的には、難燃性繊維を含んだ布帛(繊維層)からなる表面材を備える内装材について検討した。そして、検討の結果、当該内装材は水分を吸収して湿潤し易いという問題を有することを見出した。特にこの問題は、フロア用内装材など雨水が付着し易い箇所に設ける用途において、大きな問題となった。
【0005】
本願出願人はこの問題が発生する理由として、内装材が水分を吸収し維持し易い布帛(繊維層)からなる表面材を備えているためだと考えた。更に、表面材が例えばレーヨン繊維などの親水性に富む難燃性繊維を含んでいる場合、特に、内装材は水分を吸収して湿潤し易いものとなった。
そのため、難燃性繊維を含んだ布帛(繊維層)からなる表面材であるにも関わらず、水分を吸収して湿潤し易いという問題が発生し難い内装材を、提供できる表面材が求められた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は「第一繊維層と第二繊維層が積層一体化してなる、前記第一繊維層の主面上に基材を積層して使用する、材であって、
前記第一繊維層は構成繊維として、難燃性繊維と前記難燃性繊維よりも親水性が低い低親水性繊維とを含んでおり、
前記第二繊維層を構成する繊維は低親水繊維のみである、
材。」である。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる表面材において、第一繊維層は構成繊維として、難燃性繊維と前記難燃性繊維よりも親水性が低い低親水性繊維とを含んでいる。そのため、第一繊維層は低親水性繊維を含んでいることによって、水分を吸水し難い構成を有する。
また、上述した問題の発生原因となる難燃性繊維を含んでおり水分を吸収して湿潤し易い第一繊維層に比べ、第二繊維層は低親水性繊維を第一繊維層よりも高い質量比率で含んでいる。そのため、第二繊維層はより水分を吸水し難い構成を有する。そのため、第二繊維層側が露出するようにして表面材が設けられている場合など、第二繊維層側に例えば雨水などが付着したとしても、第二繊維層の存在が撥水層としての役割を担い第一繊維層へ水分が浸透するのを防止できる。
【0008】
更に、第一繊維層と第二繊維層が共に構成繊維として低親水性繊維を含んでいることによって、第一繊維層と第二繊維層の積層一体化が十分になされる。具体的には、バインダを用いて第一繊維層と第二繊維層を接着して積層一体化する場合であっても、第一繊維層と第二繊維層が共に構成繊維として同一の繊維(低親水性繊維)を含んでいるため、第一繊維層と第二繊維層はバインダに対する接着態様が近いものとなり、バインダの使用量を低減化して(例え難燃性に劣るバインダを用いたとしても、難燃性が低下するのを最小限度に抑えて)第一繊維層と第二繊維層が積層一体化したものである。
【0009】
また、第一繊維層と第二繊維層をニードルパンチ処理などの繊維絡合により積層一体化する場合であっても、第一繊維層と第二繊維層が共に構成繊維として同一の繊維(低親水性繊維)を含んでいるため、第一繊維層と第二繊維層間の繊維絡合が効率良く行われ、バインダを用いることなく、あるいは、バインダの使用量を低減化して(例え難燃性に劣るバインダを用いたとしても、難燃性が低下するのを最小限度に抑えて)第一繊維層と第二繊維層を積層一体化できる。そのため、第一繊維層と第二繊維層の間で層間剥離が発生するのが防止され成形性に優れていると共に、難燃性に優れる表面材を提供できる。
【0010】
以上から、本発明にかかる表面材は、難燃性繊維を含んだ布帛(繊維層)からなる難燃性と成形性に優れる表面材であるにも関わらず、水分を吸収して湿潤し易い(以降、湿潤し易いと略することがある)という問題が発生し難い内装材を、提供できる表面材である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明にかかる表面材の模式断面図である。
図2】本発明にかかる表面材と基材を備えてなる内装材の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。なお、本発明で説明する各種測定は特に記載のない限り、大気圧下のもと測定を行った。また、25℃温度条件下で測定を行った。そして、本発明で説明する各種測定結果は特に記載のない限り、求める値よりも一桁小さな値まで測定で求め、当該値を四捨五入することで求める値を算出した。具体例として、少数第一位までが求める値である場合、測定によって少数第二位まで値を求め、得られた少数第二位の値を四捨五入することで少数第一位までの値を算出し、この値を求める値とした。
そして、以下に記載する各上限値ならびに各下限値は、所望により任意に組み合わせることで採用可能な数値範囲を定めることができる。
【0013】
本発明にかかる表面材について、主として、本発明にかかる表面材の模式断面図である図1を用いて説明する。
本発明の表面材(10)は第一繊維層(1)と第二繊維層(2)を備えている。ここでいう繊維層とは、例えば、繊維ウェブや不織布あるいは織物や編み物などからなる、繊維同士が絡み合い構成された繊維の層をいう。繊維層を含んでいることによって、柔軟性に富み金型などへ追従し易いため成形性に優れる表面材(10)を提供できる。より成形性に優れる表面材(10)を提供できるよう、表面材(10)を構成する第一繊維層(1)あるいは第二繊維層(2)のうち少なくとも一方の繊維層は、繊維同士がランダムに絡み合った繊維ウェブや不織布からなる層であるのが好ましく、表面材(10)は繊維同士がランダムに絡み合った繊維ウェブや不織布からなる層のみで構成されているのがより好ましい。
【0014】
また、本発明の表面材(10)では、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)とが積層一体化している。ここでいう積層一体化とは、第一繊維層(1)の一方の主面と第二繊維層(2)の一方の主面が隣接し面すると共に、
・主面同士がバインダにより接着している態様、
・第一繊維層(1)および/または第二繊維層(2)が含む接着繊維により繊維接着している態様、
・第一繊維層(1)と第二繊維層(2)の層間を超え、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)の構成繊維同士が絡合している態様、
などを指し、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)がただ重なり合っているだけの態様ではないことを意味する。なお、図2ならびに後述する図3では、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)の層間は破線を用いて図示されている。
積層一体化の態様は適宜選択できるが、難燃性が低下する原因となり得るバインダを含んでいないことで難燃性に優れる表面材(10)を提供できるよう、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)の構成繊維同士が絡合している態様で積層一体化がなされているのが好ましい。
【0015】
第一繊維層(1)は、難燃性繊維を含んでいる。ここでいう難燃性繊維とは、融点を有していない樹脂(熱可塑性樹脂ではない樹脂)を含んでいる繊維、および/または、LOI値が22より高い樹脂を含んでいる繊維を指す。
【0016】
なお、融点とは、JIS K7121:1987に規定されている示差熱分析により求められ、示差熱分析曲線(DTA曲線)における融解温度のピークから算出される温度を指すものであり、当該融解温度のピークを有していない樹脂、および/または、融点を算出できない樹脂を「融点を有していない樹脂」とする。融点を有していない樹脂を繊維表面に含んでいることによって、表面材(10)が高温雰囲気下にあっても、難燃性繊維は当該樹脂を含んでいる部分が溶融することなく繊維形状を維持できる。
【0017】
また、LOI値とは限界酸素指数のことであり、JIS K7201-1:1999、JIS K7201-2:2007、JIS K7201-3:2008に規定されている酸素指数の測定手順により求められる値を指すものであり、LOI値が高いほど難燃性に優れている繊維であることを意味する。そのため、LOI値が高い樹脂を含んでいることによって、表面材(10)が高温雰囲気下にあっても、難燃性繊維は繊維形状を維持できる。
【0018】
難燃性繊維がこのような構成を有することによって、表面材(10)が高温雰囲気下にあっても、繊維形状を維持できる。その結果、難燃性繊維を含んでいることで、難燃性に優れる表面材(10)を提供できる。当該効果がより効果的に発揮されるよう、融点を有していない樹脂のみで構成されている難燃性繊維である、および/または、LOI値が22より高い樹脂のみで構成されている難燃性繊維(より好ましくは、LOI値が25以上の樹脂のみで構成されている難燃性繊維)であるのが好ましい。
【0019】
このような難燃性繊維の具体例として、レーヨン繊維(融点を有していない樹脂のみで構成されており、LOI値は22以下であり通常17~19程度である)、ポリクラール繊維(融点を有する樹脂のみで構成されており、LOI値は25以上であり通常26程度である)、モダアクリル繊維(融点を有する樹脂のみで構成されており、LOI値は25以上であり通常28~33程度である)、芳香族ポリアミド系繊維(融点を有していない樹脂のみで構成されており、LOI値は25以上であり通常25~32程度である)、ノボロイド繊維(融点を有していない樹脂のみで構成されており、LOI値は25以上であり通常30~34程度である)、アクリル系耐炎化繊維(融点を有していない樹脂のみで構成されており、LOI値は25以上であり通常42~52程度である)などを挙げることができる。これらの中でも、難燃性に優れる表面材(10)を実現できるという知見から、第一繊維層(1)はレーヨン繊維を含んでいるのが好ましく、第一繊維層(1)が含んでいる難燃性繊維はレーヨン繊維のみであるのがより好ましい。
【0020】
また、第一繊維層(1)は、難燃性繊維よりも親水性が低い低親水性繊維を含んでいる。ここでいう低親水性繊維とは、難燃性繊維の繊維表面を構成している樹脂よりも、水の接触角が高い樹脂を繊維表面に備えている繊維を指す。なお、水の接触角とは、JIS R3257:1999に規定されている接触角の測定方法において、試験片である基盤ガラスの替わりに樹脂板を用いて算出される、樹脂板表面において4μlの水滴が形成する接触角を指すものである。難燃性繊維の繊維表面を構成している樹脂を用いて作成された樹脂板Aにおける水の接触角と、比較対象とする繊維の繊維表面を構成している樹脂を用いて作成された樹脂板Bにおける水の接触角とを比較し、水の接触角が樹脂版Aよりも樹脂版Bの方が高い場合、比較対象とした繊維は低親水性繊維であるとする。
【0021】
低親水性繊維がこのような構成を有することによって、水分を吸収し難く湿潤し難い表面材(10)を提供できる。当該効果がより効果的に発揮されるよう、低親水性繊維の繊維表面は、樹脂版Aよりも水の接触角が高い樹脂版Bを調製可能な樹脂(接触角が高い樹脂)のみで構成されているのが好ましい。
【0022】
このような難燃性繊維と低親水性繊維の組み合わせの具体例として、第一繊維層(1)が含んでいる難燃性繊維がレーヨン繊維である場合、低親水性繊維としてポリエチレンテレフタレート繊維(融点を有する樹脂のみで構成されており、LOI値:22以下)を採用できる。
【0023】
第一繊維層(1)が構成繊維として含んでいる難燃性繊維と低親水性繊維の質量比率は、適宜調整できるものであり、難燃性繊維:低親水性繊維=5質量%:95質量%~30質量%:70質量%であるのが好ましく、10質量%:90質量%~25質量%:75質量%であるのが好ましく、15質量%:85質量%~20質量%:80質量%であるのが好ましい。
【0024】
なお、本発明において、構成繊維に占める特定繊維の質量比率(単位:質量%)は、以下の計算式から算出できる。
X=100*B/A
X:構成繊維に占める特定繊維の質量比率(単位:質量%)
A:繊維層が含む構成繊維の総質量(単位:g/m
B:繊維層が含む特定繊維の質量(単位:g/m
具体例として、第一繊維層の構成繊維がレーヨン繊維とポリエチレンテレフタレート繊維のみである場合、当該第一繊維層の構成繊維に占めるレーヨン繊維の質量比率(単位:質量%)は、以下の計算式から算出できる。
Y=100*D/C
Y:第一繊維層の構成繊維に占めるレーヨン繊維の質量比率(単位:質量%)
C:第一繊維層が含むレーヨン繊維とポリエチレンテレフタレート繊維の総質量(単位:g/m
D:第一繊維層が含むレーヨン繊維の質量(単位:g/m
【0025】
第二繊維層(2)は構成繊維として低親水性繊維を含んでおり、第一繊維層(1)よりも高い質量比率で低親水性繊維を含んでいる。ここでいう、「第一繊維層(1)よりも高い質量比率で低親水性繊維を含んでいる」とは、第二繊維層(2)の構成繊維に占める低親水性繊維の質量比率が、第一繊維層(1)の構成繊維に占める低親水性繊維の質量比率よりも高いことを意味する。
【0026】
なお、本発明にかかる表面材(10)を構成する、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)は以下の方法で判断できる。
【0027】
(第一繊維層(1)および第二繊維層(2)の判断方法1)
1.表面材(10)を構成している各繊維層を分離して採取できる場合には、表面材(10)から採取した各繊維層を、以下の判断方法へ供する。
2.主面が隣接し面する2層の繊維層について、FT-IRや元素分析やNMRなどの各種分析装置を用いる方法、電子顕微鏡などの分析装置を用いる方法、カヤステインなどの染料を用いて染色し分析する方法などを用いて、各繊維層を構成する繊維の種類とその質量比率を求める。
3.当該2層の繊維層を構成する繊維の種類を比較し、共に同一の樹脂で構成された繊維(より望ましくは、同一の繊維)を含んでいた場合には、当該繊維を低親水性繊維であるとみなす。
4.各繊維層に含まれている低親水性繊維以外の繊維を選出し、このうち低親水性繊維よりも、難燃性が高く親水性が高い繊維が存在していた場合、当該繊維を難燃性繊維であるとみなす。
5.主面が隣接し面する2層の繊維層について、一方の繊維層が難燃性繊維と低親水性を含んでおり、もう一方の繊維層が低親水性を含んでいると共に、もう一方の繊維層が一方の繊維層よりも高い質量比率で低親水性繊維を含んでいる場合、前記一方の繊維層を第一繊維層(1)であると判断でき、もう一方の繊維層を第二繊維層(2)であると判断できる。
【0028】
(第一繊維層(1)および第二繊維層(2)の判断方法2)
1.表面材(10)を構成している各繊維層を容易に分離して採取できない場合には、表面材(10)における一方の主面を構成する繊維の種類を求める。
2.表面材(10)の一方の主面からもう一方の主面に向かい、その厚さ方向における繊維組成を連続的に確認していき、一方の主面と構成繊維が同一である繊維層部分を繊維層Aとみなし表面材(10)から採取する。
3.表面材(10)から繊維層Aを採取することで新たに形成された主面から、もう一方の主面に向かい、その厚さ方向における繊維組成を連続的に確認していき、新たに形成された主面と構成繊維が同一である繊維層部分を繊維層Bとみなし表面材(10)から採取する。以降、同様にして表面材(10)から繊維層を採取してゆく。
4.採取した各繊維層について、(第一繊維層(1)および第二繊維層(2)の判断方法1)で説明した項目2以降の工程へ供することで、第一繊維層(1)および第二繊維層(2)を判断できる。
【0029】
第二繊維層(2)は第一繊維層(1)よりも、低親水性繊維を高い質量比率で含んでいる。そのため、本発明にかかる表面材(10)では、第二繊維層(2)の存在が撥水層としての役割を担い第一繊維層(1)へ水分が浸透するのを防止できる。第二繊維層(2)の撥水層としての役割がより効果的に発揮されるよう、第二繊維層(2)の構成繊維に占める低親水性繊維の質量比率は、第一繊維層(1)の構成繊維に占める低親水性繊維の質量比率よりも、10質量%以上高いのが好ましく、30質量%以上高いのが好ましく、50質量%以上高いのが好ましく、70質量%以上高いのが好ましく、90質量%以上高いのが好ましい。なお、第二繊維層(2)の撥水層としての役割が最も効果的に発揮されるよう、第二繊維層(2)を構成する繊維は低親水繊維のみであるのが最も好ましい。
【0030】
本発明にかかる表面材(10)を構成する繊維の種類は、本発明にかかる構成を満足するよう適宜選択するものであるが、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂(レーヨンなどの再生セルロース繊維の構成成分)、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の樹脂を用いて構成できる。
なお、これらの樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の樹脂を混ぜ合わせたものでも良い。
【0031】
表面材(10)に更なる難燃性が求められる場合には、構成繊維が難燃性の樹脂を含んでいてもよい。このような難燃性の樹脂として、例えば、モダアクリル樹脂、ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ノボロイド樹脂、ポリクラール樹脂、リン化合物を共重合したポリエステル樹脂、ハロゲン含有モノマーを共重合したアクリル樹脂、アラミド樹脂、ハロゲン系やリン系又は金属化合物系の難燃剤を練り込んだ樹脂などを挙げることができる。また、顔料を練り込み調製された繊維や、染色された繊維などの原着繊維であってもよい。
【0032】
構成繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
【0033】
構成繊維は、一種類の樹脂から構成されてなるものでも、複数種類の樹脂から構成されてなるものでも構わない。複数種類の樹脂から構成されてなる繊維として、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの態様であることができる。
【0034】
また、構成繊維は、略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維を含んでいてもよい。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
【0035】
表面材(10)が構成繊維として熱融着性繊維を含んでいる場合には、繊維同士を熱融着することによって、表面材(10)へ強度と形態安定性を付与でき好ましい。このような熱融着性繊維は、全融着型の熱融着性繊維であっても良いし、上述した複合繊維のような態様の一部融着型の熱融着性繊維であっても良い。熱融着性繊維において熱融着性を発揮する成分(樹脂)として、例えば、低融点ポリオレフィン系樹脂や低融点ポリエステル系樹脂を含む熱融着性繊維などを適宜選択して使用できる。
【0036】
表面材(10)は構成繊維として捲縮性繊維を含んでいても良いが、炎の存在下や高温環境下においても寸法安定性を維持できることで難燃性を維持できるよう、表面材(10)は構成繊維として、加熱を受け捲縮を発現可能な潜在捲縮繊維が捲縮を発現してなる繊維など、捲縮繊維を含まないのが好ましい。
【0037】
表面材(10)を構成する各繊維層が繊維ウェブや不織布である場合、例えば、上述の繊維をカード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報に開示の方法)など)を用いて繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集する方法、などによって調製できる。
【0038】
調製した繊維ウェブの構成繊維を絡合および/または一体化させて不織布を調製できる。構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法として、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、繊維ウェブを加熱処理へ供するなどしてバインダあるいは接着繊維によって構成繊維同士を接着一体化あるいは溶融一体化させる方法などを挙げることができる。
【0039】
加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して含まれている樹脂を加熱する方法などを用いることができる。
【0040】
第一繊維層(1)や第二繊維層(2)を構成する繊維同士を接着するため、バインダを用いても良い。使用可能なバインダの種類は適宜選択するが、例えば、ポリオレフィン(変性ポリオレフィンなど)、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体などのエチレン-アクリレート共重合体、各種ゴムおよびその誘導体(スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)など)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、エポキシ樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、アクリル系樹脂(アクリル酸エステル樹脂、アクリロニトリルスチレン共重合体樹脂など)、ポリウレタン樹脂などを使用できる。バインダがアクリル系樹脂を含有していると、金型を用いたヒートプレス等の熱成形時に適度に軟化するため、金型への追従性に優れる表面材を提供でき好ましい。
【0041】
また、バインダは上述した樹脂以外にも、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤などの添加剤を含有していてもよい。特に、表面材(10)が難燃剤を含んでいることによって、より難燃性に優れる表面材(10)を提供でき好ましい。また、表面材(10)が撥水剤を含んでいることによって、水分を吸収して湿潤し易いという問題がより発生し難い内装材を、提供できる表面材(10)を提供でき好ましい。
【0042】
表面材(10)がバインダを含んでいる場合、その目付は適宜選択するが、バインダ量が多いほど主面が平滑な表面材(10)を提供し易いことから、バインダの目付は、0.5g/m以上であるのが好ましい。一方、バインダ量が過剰に多い場合には、成形性が劣る表面材(10)となるおそれがあることから、バインダの目付は、30g/m以下であるのが好ましく、20g/m以下であるのが好ましい。
【0043】
表面材(10)を構成する各繊維層が織物や編物である場合、上述のようにして調製した繊維を織るあるいは編むことで、織物や編物を調製できる。
【0044】
なお、繊維ウェブ以外にも不織布あるいは織物や編物など布帛を、上述した構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法へ供しても良い。
【0045】
表面材(10)を構成する各繊維層の構成繊維の繊度は特に限定するものではないが、繊度は1~100dtexであることができ、3~50dtexであることができ、5~10dtexであることができる。なお、本発明における「繊度」はJISL1015:2010、8.5.1(正量繊度)に規定されているA法により得られる値を意味する。そして、繊維長は5~110mmであることができ、10~80mmであることができ、20~60mmであることができる。
【0046】
構成繊維は連続長を有する長繊維であっても良いが、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)の層間を超え構成繊維同士が絡合して積層一体化がなされ易いよう、難燃性繊維および低親水性繊維などの構成繊維は所定長を有する繊維であるのが好ましい。
【0047】
表面材(10)を構成する各繊維層の、例えば、厚さ、目付などの諸構成は、特に限定されるべきものではなく適宜調整する。各繊維層の厚さは、0.5~5mmであることができ、1~3mmであることができ、1.1~1.9mmであることができる。また、各繊維層の目付は、例えば、50~500g/mであることができ、80~300g/mであることができ、100~250g/mであることができる。なお、本発明において厚さとは主面と垂直方向へ20g/cm圧縮荷重をかけた時の当該垂直方向の長さをいい、目付とは測定対象物の最も広い面積を有する面(主面)における1mあたりの質量をいう。
【0048】
表面材(10)は、その露出する主面にプリント層や、プリント層上に更にトップコート層を備えていても良い。プリント層とは表面材(10)の少なくとも一方の主面上に存在し、主として表面材(10)の意匠性および/または触感を向上させる役割を担う樹脂の層を指す。プリント層は樹脂以外にも、上述した添加剤を含有していてもよい。なお、表面材(10)は一種類のプリントのみを有するものであっても、プリントを構成する樹脂の種類や顔料の種類あるいは有無など配合が異なる複数種類のプリントを有するものであってもよい。その存在態様も適宜調整でき、主面全面に存在する態様や、部分的に存在して柄を形成している態様であることができる。
【0049】
また、トップコート層とは表面材(10)の少なくとも一方の主面上に存在し、主として表面材(10)の主面を保護する役割を担う樹脂の層を指す。トップコート層は樹脂以外にも、上述した添加剤を含有していてもよい。なお、表面材(10)は一種類のトップコートのみを有するものであっても、トップコートを構成する樹脂の種類など配合が異なる複数種類のトップコートを有するものであってもよい。その存在態様も適宜調整でき、主面全面に存在する態様や、部分的に存在している態様であることができる。
【0050】
プリントならびにトップコート層を構成する樹脂の種類は適宜選択でき、上述したバインダと同様の樹脂を採用できる。特に、金型を用いたヒートプレス等の熱成形時に適度に軟化するため、金型へ追従し、成形性に優れる表面材を提供できることから、アクリル系樹脂を含んでいるのが好ましい。
【0051】
表面材(10)の厚さは適宜選択するが、2.5mm以下であることができ、2mm以下であることができ、1.4mm以下であることができる。一方、厚さの下限値は適宜調整するが、0.5mm以上であるのが現実的である。表面材(10)の目付は適宜選択するが、300g/m以下であることができ、250g/m以下であることができる。一方、目付の下限値は適宜調整するが、10g/m以上であるのが現実的であり、50g/m以上であるのが好ましく、100g/m以上であるのが好ましい。
【0052】
本発明の表面材(10)は、更に別の多孔体、フィルム、発泡体などの部材を備えていてもよい。これらの部材は表面材(10)における、第二繊維層(2)側の主面と反対側の主面に積層して備えていてもよい。
更に、本発明の表面材(10)をリライアントプレス処理などの、表面を平滑とするために加圧処理する工程へ供してもよい。また、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜いた後に加熱成形するなどの、各種二次加工工程へ供してもよい。
【0053】
本発明にかかる表面材(10)を基材(3)と積層することで、内装材を提供できる。本発明にかかる内装材について、主として、本発明にかかる表面材と基材を備えてなる内装材の模式断面図である図2を用いて説明する。
【0054】
基材(3)の種類は提供する内装材(100)の態様によって適宜選択できるが、ガラス繊維やカーボンファイバーなどの繊維と樹脂が混合してなる板状のCFRP、布帛、樹脂板、フィルムなどを採用できる。
【0055】
基材(3)の厚さは適宜選択するが、2.5mm以下であることができ、2mm以下であることができ、1.4mm以下であることができる。一方、厚さの下限値は適宜調整するが、0.5mm以上であるのが現実的である。基材(3)の目付は適宜選択するが、2000g/m以下であることができ、1500g/m以下であることができる。一方、目付の下限値は適宜調整するが、250g/m以上であるのが現実的であり、500g/m以上であるのが好ましい。
【0056】
表面材(10)と基材(3)との積層態様は適宜選択できるが、ただ重なり合っている態様、バインダによって接着一体化している態様、表面材(10)および/または基材(3)の構成成分が融着しており接着一体化している態様、基材(3)が布帛である場合には表面材(10)と基材(3)の構成繊維同士が絡合一体化している態様などであることができる。
【0057】
表面材(10)と基材(3)の積層順番は適宜選択できるが、第二繊維層(2)の撥水層としての役割がより効果的に発揮され、水分を吸収して湿潤し易いという問題が発生し難い内装材(100)を提供できるよう、図2に図示したように、表面材(10)における第一繊維層(1)側の主面上に基材(3)が積層してなる内装材(100)であるのが好ましい。
【0058】
本発明にかかる表面材(10)を調製する方法は適宜選択できるが、例えば、
(i)難燃性繊維と低親水性繊維を含む第一の布帛を用意する工程、
(ii)第一の布帛よりも高い質量比率で低親水性繊維を含む第二の布帛を用意する工程、
(iii)第一の布帛の一方の主面上に第二の布帛を積層し、露出する第二の布帛側の主面からもう一方の主面へ対し繊維絡合手段を施すことで、第一の布帛と第二の布帛における隣接する主面間の構成繊維同士を絡合して、不織布を調製する工程、
(iv)調製した不織布へ撥水剤を付与する工程、
を備えた表面材(10)の製造方法であることができる。
このようにして調製した表面材(10)は、第一の布帛由来の第一繊維層(1)と第二の布帛由来の第二繊維層(2)とが、層間を超え構成繊維同士が絡合して積層一体化している構造を有する。
【0059】
工程(i)および工程(ii)について説明する。
布帛として、例えば、繊維ウエブや不織布、あるいは、織物や編み物などを用意する。なお、布帛における構成繊維の繊度や繊維長、厚さや目付は上述した数値のものを採用できる。なお、表面材(10)における第二繊維層(2)の撥水層としての役割がより効果的に発揮されるよう、第二の布帛は構成繊維として低親水性繊維のみで構成された布帛であるのが好ましい。
【0060】
工程(iii)について説明する。
繊維絡合手段の種類は適宜選択できるが、ニードルや水流による繊維絡合手段を採用できる。特に、厚手の第一繊維層(1)を備えることでより難燃性に優れた表面材(10)を容易に提供できることから、ニードルによる繊維絡合手段を採用するのが好ましい。
【0061】
工程(iv)について説明する。
不織布へ撥水剤を付与する方法は適宜選択できるが、撥水剤を分散媒へ分散あるいは溶媒に溶解させてなる撥水剤液を用意し、当該撥水剤液を不織布へ付与する方法を採用できる。付与の手段は適宜選択できるが、撥水剤液中へ不織布を含浸する方法、撥水剤液をスプレーなどを用いて不織布へ付与する方法など周知の方法を採用できる。
撥水剤液が付与された不織布を自然乾燥によって、あるいは、加熱処理へ供することで、撥水剤液に含まれている溶媒や分散媒を除去できる。なお、加熱処理へ供することで、バインダや接着繊維の一部あるいは全てを溶融させて、構成繊維同士を溶融接着により一体化させてもよい。加熱温度の上限は、分散媒あるいは溶媒を除去できると共に、不織布の構成繊維やバインダなどの構成成分が意図せず変性しない温度となるよう調整するのが好ましい。
【0062】
更に、プリントを構成可能なプリント液やトップコートを構成可能なトップコート液を用意し、表面材(10)の主面(好ましくは、第二繊維層(2)側の主面)へ付与してなる表面材(10)を調製してもよい。なお、プリント液やトップコート液の付与方法や、プリント液やトップコート液に含まれている分散媒あるいは溶媒の除去方法は、上述した方法と同様の方法を採用できる。
【0063】
また、表面材(10)は、更に別の多孔体、フィルム、発泡体などの部材を備えていてもよい。これらの部材は表面材(10)における、プリントやトップコートが存在する主面とは異なる主面側に積層して備えていてもよい。更に、本発明の表面材(10)をリライアントプレス処理などの、表面を平滑とするために加圧処理する工程へ供してもよい。
また、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜いた後に加熱成形するなどの、各種二次加工工程へ供してもよい。
【0064】
そして、本発明にかかる表面材(10)に別途用意した基材(3)を積層して、内装材(100)を調製できる。積層方法は適宜選択できるが、第二繊維層(2)の撥水層としての役割がより効果的に発揮され、水分を吸収して湿潤し易いという問題が発生し難い内装材(100)を提供できるよう、図2に図示したように、表面材(10)における第一繊維層(1)側の主面上に基材(3)を積層して内装材(100)を調製するのが好ましい。
【0065】
なお、表面材(10)と基材(3)との積層一体化方法は適宜選択できるが、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)を積層一体化できるとして挙げた方法を、同様に採用できる。
【0066】
また、内装材(100)は、更に別の多孔体、フィルム、発泡体などの部材を備えていてもよい。これらの部材は内装材(100)における、プリントやトップコートが存在する主面とは異なる主面側に積層して備えていてもよい。更に、本発明の表面材(10)を備える内装材(100)をリライアントプレス処理などの、表面を平滑とするために加圧処理する工程へ供してもよい。
また、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜いた後に加熱成形するなどの、各種二次加工工程へ供してもよい。
【実施例
【0067】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
(繊維の用意)
以下の繊維を用意した。
難燃性繊維:レーヨン繊維(繊度:1.7dtex、繊維長:51mm、融点を有していない樹脂のみで構成されており、LOI値:17~19)
低親水性繊維:ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:51mm、融点を有する樹脂のみで構成されており、LOI値:22以下、以降、PET繊維と称することがある)
【0069】
(撥水剤液の用意)
以下の配合の撥水剤液を用意した。
・アニオン系界面活性剤(固形分濃度:20質量%):0.5質量部
・カルボキシメチルセルロースナトリウム(固形分濃度:100質量%):0.1質量部
・フッ素系撥水剤(固形分濃度:20質量%):6.0質量部
・水:93.4質量部
【0070】
(比較例1)
レーヨン繊維98.0質量部をカード機へ供することで、第一の繊維ウェブ(目付:98g/m)を調製した。
そして、繊維ウェブの一方の主面からもう一方の主面へ向かいニードルパンチ処理を施すことで、ニードルパンチ不織布(目付:98g/m)を調製した。
次いで、撥水剤液中にニードルパンチ不織布を含浸し、その後、加熱装置へ供することで分散媒を除去し、本発明の構成を満たす表面材(目付:100g/m、撥水剤液由来の固形分の目付:2g/m、厚さ:1.3mm)を製造した。
【0071】
(比較例2)
レーヨン繊維24.5質量部とPET繊維73.5質量部とを混綿し、カード機へ供することで、繊維ウェブ(目付:98g/m)を調製した。
そして、繊維ウェブの一方の主面からもう一方の主面へ向かいニードルパンチ処理を施すことで、ニードルパンチ不織布(目付:98g/m)を調製した。
次いで、撥水剤液中にニードルパンチ不織布を含浸し、その後、加熱装置へ供することで分散媒を除去し、本発明の構成を満たす表面材(目付:100g/m、撥水剤液由来の固形分の目付:2g/m、厚さ:2.1mm)を製造した。
なお、本表面材の構成繊維に占めるレーヨン繊維とPET繊維の質量割合は、レーヨン繊維:PET繊維=25質量%:75質量%であった。
【0072】
(実施例1)
レーヨン繊維24.5質量部とPET繊維24.5質量部とを混綿し、カード機へ供することで、第一の繊維ウェブ(第一の布帛、目付:49g/m)を調製した。また、PET繊維49.0質量部をカード機へ供することで、第二の繊維ウェブ(第二の布帛、目付:49g/m)を調製した。
そして、第一の繊維ウェブと第二の繊維ウェブとを積層し、第二の繊維ウェブ側の主面から第一の繊維ウェブ側の主面へ向かいニードルパンチ処理を施すことで、ニードルパンチ不織布(目付:98g/m)を調製した。
次いで、撥水剤液中にニードルパンチ不織布を含浸し、その後、加熱装置へ供することで分散媒を除去し、本発明の構成を満たす表面材(目付:100g/m、撥水剤液由来の固形分の目付:2g/m、厚さ:2.1mm)を製造した。
このようにして調製した本表面材は、第一の繊維ウェブ由来の第一繊維層と第二の繊維ウェブ由来の第二繊維層とが、その隣接する主面間の構成繊維同士が絡合して積層一体化してなる表面材であった。また、本表面材を構成する第一繊維層はレーヨン繊維とPET繊維を含んでおり、第二繊維層は構成繊維として第一繊維層よりも高い質量比率でレーヨン繊維を含んでいた。
なお、本表面材の構成繊維に占めるレーヨン繊維とPET繊維の質量割合は、レーヨン繊維:PET繊維=25.0質量%:75.0質量%であった。
【0073】
(比較例3)
レーヨン繊維9.8質量部とPET繊維88.2質量部とを混綿し、カード機へ供することで、繊維ウェブ(目付:98g/m)を調製した。
そして、繊維ウェブの一方の主面からもう一方の主面へ向かいニードルパンチ処理を施すことで、ニードルパンチ不織布(目付:98g/m)を調製した。
次いで、撥水剤液中にニードルパンチ不織布を含浸し、その後、加熱装置へ供することで分散媒を除去し、本発明の構成を満たす表面材(目付:100g/m、撥水剤液由来の固形分の目付:2g/m、厚さ:2.1mm)を製造した。
なお、本表面材の構成繊維に占めるレーヨン繊維とPET繊維の質量割合は、レーヨン繊維:PET繊維=10.0質量%:90.0質量%であった。
【0074】
(実施例2)
レーヨン繊維9.8質量部とPET繊維39.2質量部とを混綿し、カード機へ供することで、第一の繊維ウェブ(第一の布帛、目付:49g/m)を調製した。また、PET繊維49.0質量部をカード機へ供することで、第二の繊維ウェブ(第二の布帛、目付:49g/m)を調製した。
そして、第一の繊維ウェブと第二の繊維ウェブとを積層し、第二の繊維ウェブ側の主面から第一の繊維ウェブ側の主面へ向かいニードルパンチ処理を施すことで、ニードルパンチ不織布(目付:98g/m)を調製した。
次いで、撥水剤液中にニードルパンチ不織布を含浸し、その後、加熱装置へ供することで分散媒を除去し、本発明の構成を満たす表面材(目付:100g/m、撥水剤液由来の固形分の目付:2g/m、厚さ:2.1mm)を製造した。
このようにして調製した本表面材は、第一の繊維ウェブ由来の第一繊維層と第二の繊維ウェブ由来の第二繊維層とが、その隣接する主面間の構成繊維同士が絡合して積層一体化してなる表面材であった。また、本表面材を構成する第一繊維層はレーヨン繊維とPET繊維を含んでおり、第二繊維層は構成繊維として第一繊維層よりも高い質量比率でレーヨン繊維を含んでいた。
なお、本表面材の構成繊維に占めるレーヨン繊維とPET繊維の質量割合は、レーヨン繊維:PET繊維=10.0質量%:90.0質量%であった。
【0075】
(実施例3)
レーヨン繊維4.9質量部とPET繊維44.1質量部とを混綿し、カード機へ供することで、第一の繊維ウェブ(第一の布帛、目付:49g/m)を調製した。また、PET繊維49.0質量部をカード機へ供することで、第二の繊維ウェブ(第二の布帛、目付:49g/m)を調製した。
そして、第一の繊維ウェブと第二の繊維ウェブとを積層し、第二の繊維ウェブ側の主面から第一の繊維ウェブ側の主面へ向かいニードルパンチ処理を施すことで、ニードルパンチ不織布(目付:98g/m)を調製した。
次いで、撥水剤液中にニードルパンチ不織布を含浸し、その後、加熱装置へ供することで分散媒を除去し、本発明の構成を満たす表面材(目付:100g/m、撥水剤液由来の固形分の目付:2g/m、厚さ:2.3mm)を製造した。
このようにして調製した本表面材は、第一の繊維ウェブ由来の第一繊維層と第二の繊維ウェブ由来の第二繊維層とが、その隣接する主面間の構成繊維同士が絡合して積層一体化してなる表面材であった。また、本表面材を構成する第一繊維層はレーヨン繊維とPET繊維を含んでおり、第二繊維層は構成繊維として第一繊維層よりも高い質量比率でレーヨン繊維を含んでいた。
なお、本表面材の構成繊維に占めるレーヨン繊維とPET繊維の質量割合は、レーヨン繊維:PET繊維=5.0質量%:95.0質量%であった。
【0076】
(比較例4)
PET繊維98.0質量部をカード機へ供することで、繊維ウェブ(目付:98g/m)を調製した。
そして、繊維ウェブの一方の主面からもう一方の主面へ向かいニードルパンチ処理を施すことで、ニードルパンチ不織布(目付:98g/m)を調製した。
次いで、撥水剤液中にニードルパンチ不織布を含浸し、その後、加熱装置へ供することで分散媒を除去し、本発明の構成を満たす表面材(目付:100g/m、撥水剤液由来の固形分の目付:2g/m、厚さ:2.3mm)を製造した。
【0077】
上述のようにして製造した各表面材の物性を、表1にまとめた。なお、有していない構成については表中に「-」を記載した。また、表中の「難燃性能」および「吸水性能」の欄には、以下の測定を用いて評価した結果を記載した。
【0078】
(難燃性能の評価方法)
測定対象である表面材から採取した試験片を、FMVSS No.302燃焼性試験へ供することで、難燃性能を評価した。そして、測定に基づき評価結果を表中に記載した。なお、当該表面材におけるニードルパンチ処理を施した側の主面(実施例においては第二繊維層側の主面となる)が、炎側に面するようにして試験片を設置し測定を行った。
比較例1で調製した表面材の測定結果を基準にして、難燃性が同等であった表面材は「〇」という評価を下した。また、難燃性が「〇」であると評価された表面材よりも難燃性が劣る表面材には「×」という評価を下した。
【0079】
(吸水性能の評価方法)
測定対象である表面材から採取した試験片を、JIS L1092:2009:7.3雨試験(シャワー法)A法へ供することで、吸水性能を評価した。そして、測定された級数を表中に記載した。なお、当該表面材におけるニードルパンチ処理を施した側の主面(実施例においては第二繊維層側の主面となる)が、試験装置の水滴発生ノズルに面するようにして試験片を設置し測定を行った。
級数が高い表面材は、撥水性を有するなど水分を吸収し難く湿潤し難い性質に富むことを意味する。
【0080】
【表1】
【0081】
実施例の表面材は比較例の表面材よりも、難燃性に優れていると共に水分を吸収し難く湿潤し難い表面材であった。特に、比較例2と実施例1、ならびに、比較例3と実施例2を比較した結果から、表面材の繊維組成が同一であるとしても本発明の構成を満足することによって、難燃性に優れていると共に、より水分を吸収し難く湿潤し難い表面材を提供できることが判明した。
なお、実施例で調製した表面材は繊維層を備えていると共に、第一繊維層と第二繊維層が共に構成繊維として同一の繊維(低親水性繊維)を含んでいるため、第一繊維層と第二繊維層間の繊維絡合が効率良く行われて積層一体化しており、成形性と難燃性に優れる表面材であった。
【0082】
そして、本発明にかかる表面材によって、難燃性と成形性に優れると共に、水分を吸収して湿潤し易いという問題が発生し難い内装材を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は各種内装材の表面材、特に、フロア用内装材、天井、ドアーサイド、ピラーガーニッシュ、リヤパッケージなどの車両用内装材の表面材として使用できる。
【符号の説明】
【0084】
10・・・表面材
1・・・第一繊維層
2・・・第二繊維層
3・・・基材
100・・・内装材
図1
図2