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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20240126BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20240126BHJP
   G01N 21/57 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
G01N21/84 B
G01N21/27 A
G01N21/57
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020041304
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021143877
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】隅井 唯
(72)【発明者】
【氏名】諏江 勇佑
(72)【発明者】
【氏名】野阪 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】鶴井 裕輔
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-203948(JP,A)
【文献】特開平5-256771(JP,A)
【文献】特開2019-141971(JP,A)
【文献】特開2021-137939(JP,A)
【文献】特開2019-98483(JP,A)
【文献】特開2017-124470(JP,A)
【文献】特開平1-255009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
G01N 21/84-G01N 21/958
G01B 11/00-G01B 11/30
G01J 3/00-G01J 4/04
G01J 7/00-G01J 9/04
B25J 1/00-B25J 21/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象領域の状態を検査する検査部と、前記検査部の周囲に配置され前記検査対象領域に接触することによって前記検査対象領域に対する前記検査部の姿勢を規定する複数の検査接触部と、を有する検査器と、
前記検査器を移動可能に保持するロボットアームと、
前記ロボットアームの作動を制御し、前記検査器を移動させ、前記検査対象領域において前記検査器を検査姿勢とする制御装置と、を備える検査装置において、
前記検査器又は前記ロボットアームに取り付けられた補正本体部と、
前記補正本体部に設けられ、前記複数の検査接触部の周囲に配置され前記検査対象領域に接触することが可能な複数の補正接触部と、を備え、
前記複数の検査接触部と前記複数の補正接触部とは周方向において交互に配置され
前記制御装置は、前記検査対象領域に対する前記補正接触部の接触に基づいて、前記検査部が前記検査姿勢となるように前記ロボットアームの作動を補正制御できるように構成されていることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記複数の補正接触部は、前記複数の検査接触部の周囲に配置された点状接触部であることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記複数の補正接触部は、周方向において均等に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記複数の補正接触部の先端は前記検査接触部の先端と同一平面に配置されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記複数の補正接触部は、前記補正本体部に対する突出距離を調節できるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記補正接触部が前記検査対象領域に接触したときの前記検査対象領域からの反力を検知可能な力センサをさらに備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記検査対象領域は車体の塗装面であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項8】
前記検査器は、色彩計、膜厚計、光沢度計、平滑度計のいずれかであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の検査装置によって、検査対象領域の状態を検査する検査方法であって、
前記検査部が前記検査対象領域から離れた位置で前記検査対象領域と正対するように前記検査器を移動させるステップと、
前記検査部が前記検査対象領域に対して正対する状態を保ったまま、前記検査器を前記検査対象領域まで移動させるステップと、
前記検査対象領域に対して前記検査部の姿勢を補正するステップと、を備えることを特徴とする検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の検査対象領域の状態を検査可能な検査部と、前記検査部の周囲に配置され、前記検査対象領域に均等に接触することによって前記検査部を所定の検査姿勢にする複数の検査接触部とを有する検査器と、前記検査器が取り付けられたロボットアームと、前記ロボットアームの作動を制御し、当該検査器を移動させ、前記検査対象領域において前記検査姿勢とする制御装置と、が備えられた検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物の検査対象領域の状態の検査にあたり、信頼性の高い検査のためには、検査器の検査部が検査対象領域に対して所定の検査姿勢で適切に配置される必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、検査器に取り付けられるアタッチメントを複数有し、それらのアタッチメントを適宜選択使用することで、被検査物の色、光沢度、ブロンズ現象等を一つの光源と一つのセンサとで検査可能とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-27599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術は、被検査物である印刷物と、その色や光沢度を検査する検査器との距離が常に一定である場合には有効である。
【0006】
しかし、検査対象物の検査対象領域の状態として、車体の塗装面の塗装色や塗装膜厚などを色彩計や膜厚計のような検査器によって検査するような場合には、搬送コンベアにより搬送されてくる車体の塗装面に対して検査器を適切に移動させる必要があることや、そもそも塗装面は平面だけではなく三次元的な凸面形状をしていることが多いため、検査箇所ごとに検査器を三次元的に移動させ、塗装面に対して検査器の検査部を所定の検査姿勢、すなわち検査対象領域に対する検査部の傾きや押し付け力を適切なものとすることが困難であり、このような用途において特許文献1に開示された技術をそのまま適用しても信頼性の高い検査ができなかった。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、信頼性の高い検査が可能な検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る検査装置の特徴は、検査対象領域の状態を検査する検査部と、前記検査部の周囲に配置され前記検査対象領域に接触することによって前記検査対象領域に対する前記検査部の姿勢を規定する複数の検査接触部と、を有する検査器と、前記検査器を移動可能に保持するロボットアームと、前記ロボットアームの作動を制御し、前記検査器を移動させ、前記検査対象領域において前記検査器を検査姿勢とする制御装置と、を備える検査装置において、前記検査器又は前記ロボットアームに取り付けられた補正本体部と、前記補正本体部に設けられ、前記複数の検査接触部の周囲に配置され前記検査対象領域に接触することが可能な複数の補正接触部と、を備え、前記複数の検査接触部と前記複数の補正接触部とは周方向において交互に配置され、前記制御装置は、前記検査対象領域に対する前記補正接触部の接触に基づいて、前記検査部が前記検査姿勢となるように前記ロボットアームの作動を補正制御できるように構成されている点にある。
【0009】
信頼性の高い検査が行われるためには、検査部は、検査対象領域において所定の検査姿勢、すなわち検査対象領域に対する検査部の傾きや押し付け力が適切であることが必要である。例えば、検査部が、発光部と受光部とを有し、発光部からの発光を対象領域に照射し、検査対象領域からの反射光を受光部において受光することにより、検査対象領域の状態を検査するような構成である場合には、検査対象領域に正対するように配置された発光部からの発光が検査対象領域に対して適切に照射され、当該検査対象領域からの反射光が受光部によって適切に受光される必要があるからである。
【0010】
本構成によれば、検査器を検査対象領域に配置する際に、検査対象領域に対して検査部が傾いて正対していないようなときは、検査接触部は検査対象領域に接触しないが、補正具の補正接触部が検査器の周囲において検査対象領域に接触することとなる。制御機構はこのような補正接触部の接触に基づいて検査部が所定の検査姿勢となるようにロボットアームの作動、例えばロボットアームの姿勢や押し付け力を適切に補正制御することによって、検査器は信頼性の高い検査が可能となる。
【0011】
検査対象物の検査対象領域の状態とは、塗装の色彩、膜厚、光沢、平滑度等のように検査対象領域の表面の状態であってもよいし、探傷、板厚、硬度等のように検査対象領域の内部の状態であってもよい。また、検査対象物とは、自動車や鉄道車両の車体、航空機の機体や船舶の船体などが例示できる。
【0012】
補正具の補正接触部は、検査対象領域よりも柔らかい素材、例えば、検査対象領域が鋼板であるようなときには、補正接触部は合成樹脂、例えばポリカーボネートから構成されていることが好ましい。ポリカーボネートから構成することによって、補正具は安価に製造することができる。
【0013】
なお、補正具は、検査装置の製造の段階で予め備えられていてもよいし、既存の検査装置に後付け的に備えられる構成であってもよい。
【0014】
本発明に係る検査装置においては、前記補正接触部は、前記検査器の周囲に配置された複数の点状接触部から構成されていると好適である。
【0015】
本構成によれば、点状接触部という簡単な構成によって補正接触部を構成することができる。
【0020】
本発明に係る検査装置においては、前記補正接触部は、前記検査器の周囲に均等に配置されていると好適である。
【0021】
本構成によれば、補正接触部は、検査器の周囲に均等に配置されていることから、検査部が検査姿勢からいずれの方向に傾いていたとしても、いずれかの補正接触部が検査対象領域に接触しやすいため、その補正がしやすい。
【0022】
本発明に係る検査装置においては、前記補正接触部は、前記検査接触部の周囲であって、前記検査部から見て前記検査接触部とは重ならない位置に配置されていると好適である。
【0023】
上述のように、検査器が、検査対象領域からの反射光に基づいて、検査対象領域の状態を検査するような構成である場合には、受光部は検査対象領域からの反射光以外の光をなるべく受光しないことが好ましい。
【0024】
上述の構成のように、補正接触部は検査部から見て検査接触部とは重ならない位置に配置されることから、検査部の周囲が検査接触部に加えて補正接触部によってもいくらか覆われることとなる。そのため、検査対象領域からの反射光以外の光の量を低減することができ、信頼性の高い検査が可能となる。
【0025】
本発明に係る検査装置においては、前記補正接触部は、前記検査器を囲むように配置された一つ又は複数の環状接触部から構成されていると好適である。
【0026】
本構成によれば、補正接触部は、検査器を囲むように配置された環状接触部から構成されていることから、検査部が検査姿勢からいずれの方向に傾いていたとしても、環状接触部が検査対象領域に接触する。また、環状接触部が検査器を囲む構成であることから、検査器の検査部は環状接触部によって常に覆われることとなる。そのため、検査対象領域からの反射光以外の光の量を低減することができ、信頼性の高い検査が可能となる。
【0027】
本発明に係る検査装置においては、前記検査接触部と前記補正接触部とは、それぞれの先端が同一平面に配置されていると好適である。
【0028】
本発明に係る検査装置においては、前記補正接触部は、前記補正本体部からの突出距離を調節できるように構成されていると好適である。
【0029】
例えば、検査器、ロボットアーム及び補正具等の寸法公差等に起因して、補正接触部の先端が検査接触部の先端と同一平面に配置されていなかったり、補正接触部が検査対象領域との接触によって摩耗したりすると、検査部が検査姿勢でない場合における検査対象領域に対する接触性が低下する虞がある。上述の構成によると、補正接触部が検査対象領域との接触によって摩耗したとしても、補正本体部からの突出距離を長く調節することができるためそのような虞が回避される。具体的な構成としては、補正接触部が補正本体部に対して螺着されるような態様が例示され、補正本体部に対して補正接触部を螺進させることによって、補正接触部の補正本体部からの突出距離を自在に調節することができる。
【0030】
なお、補正接触部の突出距離が調節可能であることから、検査対象領域の形状に応じて、検査器の検査対象領域からの距離が任意に調節可能となる。検査対象領域が複雑な形状であっても、検査部が検査姿勢から傾いているときに、補正接触部を検査対象領域に接触させる。
【0031】
本発明に係る検査装置においては、前記検査接触部や前記補正接触部が前記検査対象領域に接触したときに、前記検査対象領域から前記検査接触部や前記補正接触部を介して前記ロボットアームへと伝わる反力を検知可能な力センサが設けられ、前記制御装置は、前記力センサが検知した反力に基づいて、前記ロボットアームの作動を補正制御できるように構成されていると好適である。
【0032】
本構成によれば、制御装置は力センサが検知した反力に基づいてロボットアームの作動を補正制御することによって、検査対象領域に対する検査部の傾きや押し付け力を適切なものとすることができるため、検査の信頼性が向上する。
【0033】
本発明に係る検査装置においては、前記検査対象物は車体であり、前記検査対象領域は前記車体の塗装面であり、前記検査器によって前記塗装面の塗装状態を検査するように構成されていると好適である。
【0034】
本構成によれば、当該検査装置によって、車体の塗装面の塗装状態を信頼性高く検査することができる。
【0035】
本発明に係る検査装置においては、前記検査器は、色彩計、膜厚計、光沢度計又は平滑度計のいずれかであると好適である。
【0036】
本構成によれば、例えば、車体の塗装面の色彩、膜厚、光沢度又は平滑度を信頼性高く検査することができる。
【0037】
本発明に係る検査方法の特徴は、検査装置によって、検査対象物の検査対象領域の状態を検査する検査方法であって、前記検査部が前記検査対象領域から離れた位置前記検査対象領域正対するように前記検査器を移動させるステップと、前記検査部が前記検査対象領域に対して正対する状態を保ったまま、前記検査器を前記検査対象領域まで移動させるステップと、前記検査対象領域に対して前記検査部の姿勢を補正するステップと、を備える点にある。
【0038】
本構成によれば、検査対象領域の状態の検査を行う際には、前記検査対象領域から離れた位置において前記検査部が前記検査対象領域に正対するように前記検査器をすばやく移動させ、正対状態を保ったまま前記検査対象領域まで前記検査器をゆっくりと移動させ、前記検査部が前記検査姿勢から傾いているときにその補正をし、前記検査対象領域の状態の検査を行った後には、前記検査部の前記正対状態を保ったまま前記検査対象領域から離れた位置まで前記検査器をゆっくりと移動させ、次の検査対象領域の検査を行うためにすばやく移動させることができる。検査対象物の全体の検査にかかる時間を短くしながらも、検査対象領域に対する検査器の接触はゆっくりとおこなうことができるため、検査対象領域に影響を及ぼす虞がない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】製造設備の概略構成図である。
図2】検査装置の要部概略図である。
図3】検査装置の要部概略図である。
図4】(a),(b),(c)は、検査装置による検査の説明図である。
図5】別実施形態に係る検査装置の要部概略図である。
図6】別実施形態に係る検査装置の要部概略図である。
図7】別実施形態に係る検査装置の要部概略図である。
図8】別実施形態に係る検査装置の要部概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に、本発明に係る検査装置及び検査方法について、検査対象物が車体1であり、検査対象領域が車体1の塗装面2であり、検査器としての色彩計31によって塗装面2の塗装状態を検査する場合を例に説明する。
【0041】
図1に示されるように、車体1の製造設備においては、車体1を塗装する塗装ブース10や、塗装ブース10において塗装された車体1の塗装状態を検査する検査ブース20が備えられている。塗装ブース10には、車体1を塗装する塗装ロボット11が備えられている。塗装ブース10及び検査ブース20の床面には、塗装ブース10と検査ブース20とを貫くように車体1を搬送する搬送コンベア12が設けられており、塗装ブース10において塗装がされた車体1が、塗装を乾燥させる乾燥ブース(図示せず)を経て、検査ブース20に搬送される。
【0042】
検査ブース20には、車体1を撮影する複数台のカメラ21、検査装置30などが備えられている。
【0043】
検査装置30は、車体1の塗装面2の色彩を検査可能な色彩計31と、色彩計31が取り付けられたロボットアーム32と、ロボットアーム32の作動を制御し、色彩計31を移動させる制御装置と、が備えられている。
【0044】
前記制御装置は、CPU、ROM、RAM、HDD、IOポートなどを有するコンピュータから構成され、色彩計31による検査結果を処理したり、ロボットアーム32の作動を制御したりするなどして検査ブース20における検査処理を実行する。
【0045】
ロボットアーム32は、前記制御装置から送信される制御信号に基づいて制御される多軸ロボットから構成され、搬送コンベア12の側方に配置されている。
【0046】
カメラ21は、二次元画像を撮影するカメラであって、複数のカメラ21によって撮影した画像データが前記制御装置において処理され、車体1の三次元位置が認識される。
【0047】
前記制御装置は、この三次元位置データに基づいて、所定の検査対象領域としての塗装面2を認識し、ロボットアーム32を作動させて検査部36を塗装面2に対して傾きなく正対するように移動させ、塗装面2における色彩を検査するように構成されている。
【0048】
図2及び図3に示すように、色彩計31は、車体1の塗装面2の色彩を検査する検査部36と、検査部36の周囲に均等に配置された複数の検査接触部37とを有している。検査接触部37は、検査部36の周囲の四か所に90度ずらされて配置されている。検査接触部37が、塗装面2に均等に接触することによって検査部36は、塗装面2において傾きなく正対した所定の検査姿勢となる。
【0049】
検査部36は、その筐体の内部に発光部と受光部とが内蔵され、発光部からの発光を、塗装面2に照射し、塗装面2からの反射光を受光部において受光することにより、塗装面2の色彩を検査するように構成されている。信頼性の高い検査が行われるためには、発光部からの発光は塗装面2に対して適切に照射され、当該塗装面2からの反射光が受光部によって適切に受光される必要がある。そのためには、色彩計31の検査部36は検査姿勢で塗装面2に配置されることが重要である。
【0050】
色彩計31によって塗装面2の色彩の検査を行う際には、ロボットアーム32は、塗装面2から離れた位置であって塗装面2に正対する位置に色彩計31を移動させ、正対状態を保ったまま塗装面2まで色彩計31を移動させる。これにより、色彩計31の検査接触部37が塗装面2に均等に接触し、色彩計31の検査部36は検査姿勢となる。
【0051】
ところで、ロボットアーム32は基本的には、検査部36が検査姿勢となるように作動が制御されるのであるが、色彩計31の姿勢が塗装面2に対して傾いているような場合があると、検査の信頼性が低下する。このような、検査部36が検査姿勢となるように補正するために、本願発明に係る補正具33が利用される。
【0052】
補正具33は、色彩計31に取り付けられる補正本体部34を有している。補正本体部34は、色彩計31の検査部36の周囲を覆う平板部材から構成されている。当該平板部材は、例えば合成樹脂として、ポリカーボネートから構成されている。なお、補正本体部34は、ロボットアーム32に取り付けられる構成であってもよい。
【0053】
補正本体部34には、色彩計31の検査部36の周囲に、補正本体部34から塗装面2に向くように、塗装面2に接触可能に構成された補正接触部としての四つの点状接触部35が突設されている。検査接触部37と点状接触部35とは、それぞれの先端が同一平面に配置されている。点状接触部35は、塗装面2よりも柔らかい素材、例えば、合成樹脂として、ポリカーボネートから構成されている。点状接触部35の本数は例示であって四本に限らない。
【0054】
点状接触部35は、検査部36の周囲であって、検査接触部37より外側における四か所に90度ずらされて配置されている。その際、点状接触部35は、隣り合う検査接触部37どうしの中間に配置されている。したがって、検査部36の周囲には、検査接触部37と点状接触部35とが約45度ずらされて交互に配置されている。
【0055】
複数の点状接触部35が、色彩計31の周囲に均等に設けられていることから、検査部36が所定の検査姿勢からいずれの方向に傾いていたとしても、いずれかの検査接触部37又は点状接触部35が塗装面2に接触するため、姿勢の補正がしやすい。
【0056】
なお、補正具33は、検査装置30の製造の段階で予め備えられていてもよいし、既存の検査装置30に後付け的に備えられる構成であってもよい。
【0057】
なお、ロボットアーム32には、検査接触部37や点状接触部35が塗装面2に接触したときに、塗装面2から検査接触部37や点状接触部35を介してロボットアーム32へと伝わる反力を検知可能な力センサ38が設けられている。
【0058】
制御装置は、ロボットアーム32が色彩計31の検査部36を塗装面2に配置する際に、検査部36が検査姿勢でないときの塗装面2に対する点状接触部35の接触を、力センサ38によって測定される反力に基づいて検知し、検査部36が検査姿勢となるようにロボットアーム32の作動を補正制御できるように構成されている。
【0059】
色彩計31を、平面形状や凸面形状である塗装面2に配置する際に、検査部36が塗装面2に対して傾いていないときは、塗装面2には補正接触部が接触せず、検査接触部37と検査部36とが接触する。
【0060】
色彩計31を、平面形状や凸面形状である塗装面2に配置する際に、検査部36が塗装面2に対してわずかに傾いているきも、塗装面2には補正接触部が接触せず、検査接触部37と検査部36とが接触する。その際、検査部36は、わずかな姿勢の補正で塗装面2に正対した後、所定の押し付け力によって塗装面2に配置される。なお、所定の押し付け力とは、検査部36が隙間なく塗装面2に当接し、かつ、塗装面2を傷つけない大きさの力である。
【0061】
図4(a)に示すように、色彩計31を凸面形状である塗装面2に配置する際に、検査部36が塗装面2に対して傾いた姿勢であるときは、図4(b)に示すように、点状接触部35は塗装面2に接触しないが、補正具33の点状接触部35が色彩計31の周囲において塗装面2に接触することとなる。このような場合は、制御装置は、力センサ38が検知した反力に基づいて、平面方向の力ないし回転モーメントを検知し、図4(c)に示すように、当該平面方向の力ないし回転モーメントを打ち消す方向にロボットアーム32を作動させ、最終的に複数の検査接触部37と検査部36とを塗装面2に当接させ、予め設定した垂直方向の力を付加する。これにより塗装面2に対する検査部36の傾きや押し付け力が適切なものとなる。
【0062】
なお、色彩計31による塗装面2の色彩の検査結果は検査装置30に記録されるとともに、後工程の作業者へと通知される。検査装置30によって塗装面2の色彩が合格基準を満たしていないと判定されたときは、当該作業者によって塗装面2の修正がなされる。
【0063】
例えば、色彩計31、ロボットアーム32及び補正具33等の寸法公差等に起因して、点状接触部35の先端が検査接触部37の先端と同一平面に配置されていなかったり、点状接触部35が塗装面2との接触によって摩耗したりすると、検査部36が所定の検査姿勢でない場合における塗装面2に対する接触性が低下する虞がある。このような虞を回避するために、補正本体部34からの突出距離を長く調節することができるように構成されている。具体的な構成として、点状接触部35が補正本体部34に対して螺着されるような態様が例示され、補正本体部34に対して点状接触部35を螺進させることによって、点状接触部35の補正本体部34からの突出距離を自在に調節することができる。
【0064】
なお、補正本体部34からの点状接触部35の突出距離が調節可能であることから、塗装面2の形状に応じて、色彩計31の塗装面2からの距離が任意に調節可能となる。塗装面2が複雑な形状であっても、検査部36の姿勢が検査姿勢ではないときに、点状接触部35を塗装面2に接触させることができるため、検査部36を所定の検査姿勢とすることができる。
【0065】
上述した実施形態においては、補正本体部34は、平板部材から構成されていたが、これに限らない。補正本体部34は、色彩計31の検査部36の周囲を覆う位置に点状接触部35を設けることができる構成であればよく、検査部36の周囲に放射状に延びる棒状部材から構成されていてもよい。この場合は、点状接触部35は、各棒状部材の先端に設けられる構成が考えられる。
【0066】
上述した実施形態においては、補正接触部は、四つの点状接触部35から構成されている場合について説明したが、これに限らない。例えば、図5に示すように、補正接触部は、補正本体部34の全面に均等に配置された複数の点状接触部35から構成されていてもよい。
【0067】
また、図6に示すように、補正接触部は、補正本体部34において、検査部36の周囲に放射状に配置された複数の棒状接触部35から構成されていてもよい。
【0068】
また、図7に示すように、補正接触部は、複数の円弧状接触部35から構成されていてもよい。その際、各円弧状接触部35は共通の円周上に配置されていることが好ましい。
【0069】
また、図8に示すように、補正接触部は、色彩計31の検査部36を囲むように配置された環状接触部35から構成されていてもよい。なお、環状接触部35は、一つであってもよいし、二つ以上の複数であってもよい。
【0070】
上述した実施形態においては、検査器は色彩計31であり、検査対象物は車体1であり、検査対象領域は車体1の塗装面2であり、検査装置30は、色彩計31によって塗装面2の塗装状態を検査するように構成されている場合について説明したが、これに限らない。例えば、検査器は膜厚計、光沢度計又は平滑度計などであり、検査対象物は車体1であり、検査対象領域は車体1の表面であり、検査装置30は、膜厚計、光沢度計又は平滑度計などによって表面の塗装膜厚、光沢度又は平滑度などを検査するように構成されていてもよい。
【0071】
また、検査器は、探傷、板厚、硬度等の検査器であってもよい。すなわち、検査器は、検査対象領域の状態を検査可能な検査部36と、検査部36の周囲に均等に配置され、検査対象領域に均等に接触することによって検査部36を所定の検査姿勢にする複数の検査接触部37とを有していればよい。なお、検査対象物は、例えば、自動車や鉄道車両の車体1のみならず、航空機の機体や船舶の船体などを含む。
【0072】
上述した実施形態は、いずれも本発明の一例であり、当該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲において適宜変更設計可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 :検査対象物(車体)
2 :検査対象領域(塗装面)
10 :塗装ブース
11 :塗装ロボット
12 :搬送コンベア
20 :検査ブース
21 :カメラ
30 :検査装置
31 :検査器(色彩計)
32 :ロボットアーム
33 :補正具
34 :補正本体部
35 :補正接触部(点状接触部、棒状接触部、円弧状接触部)
36 :検査部
37 :検査接触部
38 :力センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8