(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】IDタグ装置及びその駆動方法
(51)【国際特許分類】
B65D 19/38 20060101AFI20240126BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
B65D19/38 Z
G06K19/07 190
G06K19/07 230
(21)【出願番号】P 2020045195
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】三川 正治
(72)【発明者】
【氏名】轟 雅量
(72)【発明者】
【氏名】北井 正俊
【審査官】土谷 慎吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-241957(JP,A)
【文献】特開2006-092126(JP,A)
【文献】特開2005-293486(JP,A)
【文献】特開2005-293485(JP,A)
【文献】特開2001-278270(JP,A)
【文献】特開平08-244773(JP,A)
【文献】特開2016-110358(JP,A)
【文献】特開2007-193478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 19/38
G06K 19/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石、
前記磁石の磁場を検出する検出素子、
無線信号を発信する発信機、及び、
これらを内部空間に収容する容器を備え、
前記発信機は、当該容器が装着対象物に着脱される際の着脱操作によって生じた前記磁場の変化を前記検出素子が検出した場合に発信状態を変更
し、
前記容器は、当該容器を装着対象物に固定する締結具が嵌め込まれる係合部を有し、当該係合部は、前記検出素子が検出可能な前記磁場の及ぶ位置に配置されているIDタグ装置。
【請求項2】
前記係合部は、当該容器を貫通し、前記締結具が挿通される貫通孔を形成する筒状部を有する請求項
1に記載のIDタグ装置。
【請求項3】
前記検出素子を搭載した基板を更に備え、
前記基板は、前記筒状部が嵌め込まれる切り欠きもしくは貫通孔である嵌め込み部が形成されており、
前記嵌め込み部は、前記筒状部の延出方向に沿って見たときに、前記磁石と前記検出素子との間に配置されている請求項
2に記載のIDタグ装置。
【請求項4】
磁石、
前記磁石の磁場を検出する検出素子、
無線信号を発信する発信機、及び、
これらを内部空間に収容する容器を備え、
前記発信機は、当該容器が装着対象物に着脱される際の着脱操作によって生じた前記磁場の変化を前記検出素子が検出した場合に発信状態を変更し、
前記容器は、前記装着対象物の一部が嵌まり込む受け部が形成されており、当該受け部は、前記検出素子が検出可能な前記磁場の及ぶ位置に配置されてい
るIDタグ装置。
【請求項5】
前記発信機は、信号の発信を停止している状態で前記検出素子が前記磁場の変化を検出した場合に発信を開始する請求項1~
4の何れか一項に記載のIDタグ装置。
【請求項6】
前記発信機は、信号を発信している状態で前記検出素子が前記磁場の変化を検出した場合に発信を停止する請求項1~
5の何れか一項に記載のIDタグ装置。
【請求項7】
磁石、
前記磁石の磁場を検出する検出素子、
無線信号を発信する発信機、及び、
これらを内部空間に収容する容器を備え、
前記発信機は、当該容器が装着対象物に着脱される際の着脱操作によって生じた前記磁場の変化を前記検出素子が検出した場合に発信状態を変更し、
前記発信機は、
信号を発信している状態で前記検出素子が前記磁場の変化を検出した場合に、当該検出時から所定期間経過後に発信を停止す
るIDタグ装置。
【請求項8】
磁石、前記磁石の磁場を検出する検出素子、無線信号を発信する発信機、及び、これらを収容する容器を備えたIDタグ装置の駆動方法であって、
当該容器が装着対象物に着脱される際の着脱操作によって生じた前記磁場の変動を前記検出素子で検出した場合に、前記発信機は無線信号の発信状態を変更
し、
締結具により当該容器を装着対象物に着脱する際における、当該締結具による前記磁場の変動を検出した場合に、前記発信機は無線信号の発信状態を変更するIDタグ装置の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IDタグ装置及びその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、IDタグ(IDタグ装置の一例)付き合成樹脂製パレット(装着対象物の一例)が記載されている。IDタグ装置は、例えばパレットの個体識別のために利用される。
【0003】
特許文献2には、パレットが記載されている。このパレットは、GPS発信器(IDタグ装置の一例)を搭載可能である。GPS発信器は、その位置情報(無線信号の一例)を発信することで、パレットの位置を時々刻々と通知している。これにより、パレットが移動した場合であっても、パレットの位置を正確に把握することができるようになっており、例えばパレットの紛失を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-278270号公報
【文献】特開2019-055798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載されたようなIDタグ装置は、状態(例えば、出荷時と使用時)に適合する発信状態(例えば、出荷時などの使用開始前は省電力モードで発信停止されている場合、使用開始後は発信を継続する状態)に設定されなければ個体の識別や位置確認をすることができない。しかし、適切な発信状態に設定されない場合がある。例えば、IDタグ装置の発信状態の切り替えを手動で行う場合、出荷時は省電力モードに設定されているにもかかわらず、装着対象物に装着した際に発信を継続するモードへの切り替えを忘れると、使用時に装着対象物の個体の識別や位置確認をすることができない。
【0006】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、使用開始時に確実に始動することができるIDタグ装置及びその駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係るIDタグ装置の特徴構成は、磁石、前記磁石の磁場を検出する検出素子、無線信号を発信する発信機、及び、これらを内部空間に収容する容器を備え、前記発信機は、当該容器が装着対象物に着脱される際の着脱操作によって生じた前記磁場の変化を前記検出素子が検出した場合に発信状態を変更する点にある。
【0008】
上記構成によれば、IDタグ装置が装着対象物に着脱される際の着脱操作によって、発信機が発信状態を変更する。すなわち、IDタグ装置を装着対象物に装着する際に発信を開始するように構成することができる。これにより、IDタグ装置を装着対象物に装着する際に発信を開始するようにすることができるため、使用開始時に確実にIDタグ装置を始動させることができる。なお、上記構成によれば、IDタグ装置を装着対象物から脱着する際に発信機は発信を停止することもできる。
【0009】
本発明に係るIDタグ装置の更なる特徴構成は、前記容器は、当該容器を装着対象物に固定する締結具が嵌め込まれる係合部を有し、当該係合部は、前記検出素子が検出可能な前記磁場の及ぶ位置に配置されている点にある。
【0010】
上記構成によれば、IDタグ装置を装着対象物に装着すべく締結具で固定する際に、締結具が係合部に嵌め込まれることにより磁場に変化を生じさせるようにすることができる。したがって、この磁場の変化を検出素子が検出し、当該検出をトリガーとして発信機が発信状態を変更できる。
【0011】
本発明に係るIDタグ装置の更なる特徴構成は、前記係合部は、当該容器を貫通し、前記締結具が挿通される貫通孔を形成する筒状部を有する点にある。
【0012】
上記構成によれば、締結具を筒状部の貫通孔に挿通してIDタグ装置を装着対象物に装着することができる。この場合において、締結具を筒状部の貫通孔に挿通した際に磁場の変化が生じさせることができ、この変化を検出素子が検出し、当該検出をトリガーとして発信機が発信状態を変更できる。
【0013】
本発明に係るIDタグ装置の更なる特徴構成は、前記検出素子を搭載した基板を更に備え、前記基板は、前記筒状部が嵌め込まれる切り欠きもしくは貫通孔である嵌め込み部が形成されており、前記嵌め込み部は、前記筒状部の延出方向に沿って見たときに、前記磁石と前記検出素子との間に配置されている点にある。
【0014】
上記構成によれば、筒状部の延出方向に沿って見たときに、筒状部を磁石と検出素子との間に配置することができるので、検出素子は、締結具を貫通孔に挿通した際の磁場の変化を良好に検出できる。
【0015】
本発明に係るIDタグ装置の更なる特徴構成は、前記容器は、前記装着対象物の一部が嵌まり込む受け部が形成されており、当該受け部は、前記検出素子が検出可能な前記磁場の及ぶ位置に配置されている点にある。
【0016】
上記構成によれば、装着対象物の一部が受け部に嵌まり込んだ際の磁場の変化を検出素子が検出できる。この磁場の変化を検出素子が検出し、当該検出をトリガーとして発信機が発信状態を変更できる。
【0017】
本発明に係るIDタグ装置の更なる特徴構成は、前記発信機は、信号の発信を停止している状態で前記検出素子が前記磁場の変化を検出した場合に発信を開始する点にある。
【0018】
上記構成によれば、IDタグ装置を締結具などで装着対象物に装着した際(すなわち、省電力モードなどの発信を停止している状態のIDタグ装置を装着対象物に装着した際)などの磁場の変化をトリガーとして発信機が発信を開始する。例えば検出素子が最初の磁場の変化を検出した場合や発信機が発信を行っていない状態である場合に、磁場変化の検出をトリガーとして発信機が発信を開始するように設定することができる。
【0019】
本発明に係るIDタグ装置の更なる特徴構成は、前記発信機は、信号を発信している状態で前記検出素子が前記磁場の変化を検出した場合に発信を停止する点にある。
【0020】
上記構成によれば、IDタグ装置を装着対象物から脱着するために締結具などを外した際(すなわち、信号の発信を継続しているIDタグ装置から締結具を取り外した際)などの磁場の変化をトリガーとして発信機が発信を停止する。例えば検出素子が二度目の磁場の変化を検出した場合や発信機が発信を行っている状態である場合に、磁場変化の検出をトリガーとして発信機が発信を停止するように設定することができる。
【0021】
本発明に係るIDタグ装置の更なる特徴構成は、前記発信機は、信号を発信している状態で前記検出素子が前記磁場の変化を検出した場合に、当該検出時から所定期間経過後に発信を停止する点にある。
【0022】
上記構成によれば、IDタグ装置を装着対象物から脱着するために締結具などを外した際(すなわち、発信を継続しているIDタグ装置から締結具を取り外した際)などの磁場の変化をトリガーとして、そのトリガーから所定期間経過後に発信機が発信を停止する。この場合、発信機は、検出素子が磁場の変化を検出した時から発信を停止するまでの期間内に、例えば、停止を報知する信号を発信してもよい。
【0023】
上記目的を達成するための本発明に係るIDタグ装置の駆動方法の特徴は、磁石、前記磁石の磁場を検出する検出素子、無線信号を発信する発信機、及び、これらを収容する容器を備えたIDタグ装置の駆動方法であって、当該容器が装着対象物に着脱される際の着脱操作によって生じた前記磁場の変動を前記検出素子で検出した場合に、前記発信機は無線信号の発信状態を変更する点にある。
【0024】
上記構成によれば、上記のIDタグ装置と同様の作用効果を奏することができる。例えば、IDタグ装置を装着対象物に装着する際に発信を開始したり、IDタグ装置を装着対象物から脱着する際に発信を停止したりすることができる。
【0025】
本発明に係るIDタグ装置の駆動方法の更なる特徴は、締結具により当該容器を装着対象物に着脱する際における、当該締結具による前記磁場の変動を検出した場合に、前記発信機は無線信号の発信状態を変更する点にある。
【0026】
上記構成によれば、IDタグ装置を装着対象物に着脱する際における締結具による磁場の変化を検出素子が検出し、当該検出をトリガーとして発信機が発信状態を変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図7】タグをネジでパレットに装着する方法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0028】
図面に基づいて、本発明の実施形態に係る及びその駆動方法を説明する。
【0029】
(全体構成の説明)
図1には、IDタグ装置100(以下、タグ100と記載する)を示している。タグ100は、自己のID情報と自己の位置情報とを含む無線信号を発信することで、使用者に自己の位置を報知する。タグ100は、その本体ケーシングである容器Cを上下方向に貫通する貫通孔Laが形成された係合部L(筒状部の一例)を備えている。タグ100は、この係合部LにネジNなどの締結具を挿通されて、装着対象物にねじ止めなどにより装着される。
【0030】
図2には、タグ100の分解斜視図を示している。タグ100は、磁石M、磁石Mの磁場を検出する検出素子S、無線信号を発信する発信機3、無線信号を送出するアンテナA(
図3参照)、検出素子Sなどを搭載した基板P、駆動電力を供給する電池B、及び、磁石Mと基板Pと電池Bとを内部空間に収容する容器Cとを備えている。タグ100の外形は、およそ長方体である。
【0031】
(各部の説明)
図3には、
図1のIII-III矢視断面図を示している。
図4には、
図1のIV-IV矢視断面図を示している。
【0032】
図2、
図3に示すように、磁石Mは、例えばフェライト磁石や希土類磁石などの、磁場を発生させる部材である。磁石Mは、例えば長方体状に形成される。
【0033】
検出素子Sは、例えばホール素子などの、磁場を電気信号に変換して出力するセンサである。
【0034】
図3に示すように、発信機3は、無線通信網との通信結果などに基づいて自己の位置情報を取得する位置情報取得回路、自己のID情報と自己の位置情報とを含む無線信号を生成してアンテナAから送出する信号発生回路、検出素子Sが出力する電気信号などに基づいて無線信号の発信状態を変更や制御する制御回路などを包含する集積回路である。
【0035】
発信機3は、例えばSigFox(登録商標)に基づく通信(無線信号の発信)を行う。発信機3は、アンテナAで電波を送受波して無線通信網と無線通信する。なお、
図3には、アンテナAがパターンアンテナである場合を例示している。発信機3は、生成した無線信号を、アンテナAを介して無線通信網へ送出する。発信機3は、アンテナAで受信した無線通信網を構成する基地局に関する情報に基づいて自己の位置情報を取得する。
【0036】
発信機3は、検出素子Sが出力する電気信号の値に基づいて、無線信号を発信していない状態と無線信号を発信している状態とを切り替える。
【0037】
発信機3が無線信号を発信していない状態において、検出素子Sが出力する電気信号の値が変化した場合、発信機3は、無線信号の発信を開始する。この無線信号は、あらかじめ定められた時間間隔(例えば、2時間)毎に発信される。これにより、使用者は、タグ100及びタグ100が装着された装着対象物の位置を知ることができる。
【0038】
発信機3が無線信号を発信している状態において、検出素子Sが出力する電気信号の値が変化した場合、発信機3は、無線信号の発信を停止する。本実施形態では、発信機3は、無線信号を発信している状態で検出素子Sが出力する電気信号の値が変化すると、所定時間経過後に無線信号の発信を停止する。なお、発信機3は、無線信号の発信を停止するまでの所定期間内に、自己のID情報と自己の位置情報とに加えて、無線信号の発信を停止する旨を報知する情報を更に含む無線信号を生成して送出する。これにより、使用者は、タグ100が装着対象物から脱着されたことと、装着対象物からタグ100が取り外された位置を知ることができる。これらの情報は、装着対象物が盗難された場合に、当該装着対象物を奪還するための情報として利用できる。また、このようにタグ100が取り外された位置を送出する機能を搭載することで、装着対象物の盗難を防止する抑止力とすることができる。
【0039】
図3に示すように、基板Pは、検出素子Sと発信機3とアンテナAとを搭載したプリント基板である。本実施形態では、検出素子Sと発信機3とアンテナAとは、基板Pの下面側(底板1と対向する側)に面実装されている。基板Pは、上面視における容器Cの長手方向がその長手方向になるように搭載された略矩形状の板状である。基板Pは、長手方向と直交する短手方向の二辺のうちの一方の辺に、円弧上に切り欠かれた嵌め込み部Paが形成されている。後述するように、基板Pが容器Cに収容された状態で、検出素子Sは、短手方向視において筒部25(筒状部の一例)と重複する位置に配置される。検出素子Sの指向性の向きは、短手方向に平行になるように搭載される。
【0040】
図1、
図2に示すように、容器Cは、上面視が矩形状で板状の底板1と、上面視が矩形状で、底板1に対向する面が底になる有底筒状のカバー2と、容器Cを上下方向に貫通する貫通孔が形成された係合部Lとを備えている。底板1は、
図1、
図4に示すように四隅をねじ止めなどしてカバー2に固定される。容器Cは、例えば樹脂で形成されている。
【0041】
以下では、底板1とカバー2との関係で底板1の側をタグ100における下、カバー2の側をタグ100における上と定義して説明する。上述のごとく、タグ100の外形は、およそ長方体であるが、タグ100の上面視において長手方向と同じ方向は単に長手方向と記載し、短手方向と同じ方向は単に短手方向と記載する。また、タグ100における容器Cの外部側を外、内部側を内として記載する場合がある。
【0042】
図2に示すように、カバー2は、その形状が有底筒状の部材である。カバー2は、その有底筒の開口部分が下方で、底部分が上方になる(天井になる)ように配置されている。カバー2は、天井になる板状の天井部20と、天井部20の外周の全周から下方に向けて延出し、筒部分を構成する四辺の壁部21とを有する。カバー2は、その有底筒の内部、すなわち、天井部20と壁部21と底板1で囲われた内部空間(容器Cの内部空間と同じ。以下、収容空間と記載する)に、磁石Mと基板Pと電池Bとを収容している。長手方向における一端側の壁部21の外面には、自己のID情報を文字や図形(例えば、バーコード)で表示したラベルが貼付されている。
【0043】
図5に示すように、天井部20における重心部分の近傍には、下方に向けて延出する直胴状の筒部25が形成されている。筒部25の筒の内側空間は、直線状に形成されており、天井部20を貫通する貫通孔となっている。筒部25の根元部分は、直径が他の部分よりも大きく、天井部20と平行な面が環状に形成された段部25aが形成されている。
【0044】
天井部20における長手方向の中間位置近傍には区画リブ22が形成されている。区画リブ22は、カバー2の内側を長手方向において基板Pを収容する領域Spと、電池Bを収容する領域Sbとに区画している。区画リブ22は短手方向に渡り形成されており、下方に向けて延出している。区画リブ22は、短手方向における両端が壁部21と連結している。短手方向における区画リブ22の中間部分は、本実施形態では
図5に示すように筒部25が兼ねているが、区画リブ22を筒部25とは分離して形成してもよい。
【0045】
図5に示すように、基板Pを収容する領域Spには、天井部20から段部25aよりも高く延出(段部25aよりも下方まで延出)した複数の支持リブ23が形成されている。
図5においては、2つの支持リブ23が表されているが、図の手前側にも不図示の2つの支持リブ23があり、本実施形態では、4つの支持リブ23が形成されている。支持リブ23とには、基板Pが当接され支持される。
【0046】
基板Pにおける嵌め込み部Paの縁部分は、上面視で段部25aと重複させる。この際、嵌め込み部Paの内周は、筒部25の外周に沿うように形成されている。支持リブ23には、嵌め込み部Pa以外の基板Pにおける縁部分の上面が当接(
図4参照)される。このようにして基板Pが収容空間に収容された状態で、検出素子Sは短手方向視において筒部25(係合部L)と重複する位置に配置される(
図3参照)。
【0047】
図5に示すように、電池Bを収容する領域Sbには、天井部20から下方に延出する複数の規制リブ24が形成されている。複数の規制リブ24はそれぞれ高さが違えられており、電池Bがぐらつかないように電池Bの移動を規制している。
図5においては、8つの規制リブ24が表されているが、図の手前側にも不図示の4つの規制リブ24があり、本実施形態では、12の規制リブ24が形成されている。また、筒部25からも、領域Sb側に向けて2本のリブが延出されている。なお、電池Bは、円筒状の電池セル(例えば、塩化チオニルリチウム電池)が2つ用いられている。それぞれの電池セルは、短手方向にその円筒の中心軸を沿わせ、径方向で隣接する状態で収容されている。電池Bは、本実施形態では、2つの電池セルを筒の径方向外側から包み込んで一組に束ねる電池ホルダBC(
図4参照)に保持された状態で、この領域Sbに収容されている。電池Bと基板Pとは、そのタブ端子などに接続された電力線を介して電気的に接続されており、電池Bから基板Pへの電力供給が可能となっている(
図3参照)。
【0048】
図2に示すように、底板1は、板状の底板本体10と、底板本体10の外周部分における、外周からやや板の内側のカバー2に対向する面から上方に向けて、底板本体10の外周部分の全周から延出する背の低い板状のシール部12とを有する。底板本体10とシール部12とは一体成型されている。底板1の外面(下面)には、自己のID情報を文字や図形(例えば、バーコード)で表示したラベル(図示せず)が貼付されている。
【0049】
シール部12は、壁部21の内周側に嵌め込まれる。シール部12と壁部21との間は、シール部12の外周面と壁部21の内周面の間に挟み込まれるパッキン12aにより密封される。
【0050】
底板本体10には、磁石Mを嵌め込んで固定する固定座13と、底板本体10における重心部分の近傍に形成された直胴状の筒部15(筒状部の一例)とが形成されている。
【0051】
図4に示すように、筒部15は、底板本体10の板面から上方に向けて延出している。筒部15の筒の内側空間は、直線状に形成されており、底板本体10を貫通する貫通孔となっている。筒部15は、上面視で筒部25と重複する位置に配置されており、それぞれの貫通孔も上面視で重複するようになっている。筒部15の上面と筒部25の下面とは密に当接している。上述の係合部Lは筒部15と筒部25とで構成されており、係合部Lの貫通孔Laは、筒部15と筒部25とのそれぞれの貫通孔が上面視で完全重複したものである。
【0052】
図2、
図3に示すように、固定座13は、底板本体10から上方に向けて延出する壁などにより形成されている。
図3に示すように、固定座13を形成する壁は、上面視(上下方向視)が矩形状に形成されている。固定座13は、短手方向視において筒部15(係合部L)と重複する位置に配置される。固定座13は、筒部15から視て短手方向において検出素子Sと反対側に配置される。固定座13は、上面視において基板Pと重複する位置に配置される。磁石Mは、固定座13の壁で囲われた空間に嵌め込まれて固定される。この際、磁石Mで発生する磁場の向きは、底板1の短手方向に沿う向きになるように固定される。このように磁石Mを配置することで、磁石Mの磁場が検出素子Sと係合部Lとに及ぶようになる。なお、固定座13は、底板1がカバー2(
図1参照)に固定された状態では、領域Sp(
図5参照)に収容される。これにより磁石Mが領域Spに収容される。
図3では、磁石Mの磁場を磁力線Maで模式的に表示している。
【0053】
図1、
図2に示すように、底板1がカバー2に固定され、容器Cの収容空間に電池B、基板P、磁石Mを収容した状態で、領域Spは樹脂等で封止される(ポッティングされる)。
図2、
図4では、この封止のための樹脂部分を封止部5で示している。封止部5により、基板Pは外部からの衝撃や、外部から侵入する水や塵などから保護される。なお、封止部5は、
図2、
図4以外の図では図示を省略している。
【0054】
(IDタグ装置の装着)
図6~
図8に示すように、タグ100は、容器Cの係合部Lの貫通孔にネジNなどの締結具を挿通(嵌め込みの一例)されることで、パレット9(装着対象物の一例)などに装着(固定)される。
【0055】
図6、
図7に示すように、パレット9は、互いに離間して配置された木製の複数(少なくとも2つ)の桁(側板の一例)91(本実施形態では3つ)と、桁91の上面91aと下面のそれぞれに互いに離間して桁91に対して直角に交差するように横架された木製の複数のデッキボード(天面板の一例)92(本実施形態では上下面とも各7つ)とにより構成されている。複数のデッキボード92のそれぞれは、不図示の釘等により桁91に固定されている。パレット9は、両面使用形の二方差しタイプである。
【0056】
タグ100は、パレット9の3つの桁91のうち、デッキボード92の長手方向の両端側のそれぞれにおいて最も端側で交差する2つの桁91の何れか一方の桁91であって、デッキボード92と当接する上面91aのうち隣接する2つのデッキボード92の間にネジNで固定される。なお、ネジNは、
図7に示すように、係合部Lの貫通孔Laに上から挿通(ネジNの頭部が上側になるように挿通)し、容器Cを貫通した状態で桁91にねじ込んで固定する。
図8に示すように、係合部Lの貫通孔LaにネジNを挿通した状態で、磁石M、ネジN、及び検出素子Sは、短手方向においてこの順に並ぶ。
【0057】
(IDタグ装置の駆動状態の変化についての説明)
タグ100は、製造後の出荷時(使用開始前)の段階においては、無線信号の送出を停止させた状態(省電力状態)に設定されている。検出素子Sは、磁石Mで発生する磁場を検出して、検出された磁場に対応する電気信号を出力している。この所定値の電気信号は発信機3の制御回路に入力されている。
【0058】
省電力状態では、発信機3には通電されているが、制御回路が、発信機3信号発生回路の無線信号の送出や位置情報取得回路の位置情報の取得を停止させている。以下では、発信機3が省電力状態である際に検出素子Sが出力している電気信号を単に初期値を記載する。
【0059】
図7に示すようにタグ100をパレット9に装着(固定)する際、
図8に示すようにネジNを係合部Lの貫通孔Laに挿通すると、磁石Mが生じた磁場が係合部L(ネジN)近傍で変化する。この磁場の変化によって、検出素子Sが出力して制御回路に入力される電気信号の値が初期値から変化する。発信機3は、この電気信号の値の変化をトリガーとして無線信号の発信を開始する。このようにタグ100は、タグ100をパレット9に装着する操作(ねじ止め)を行うことで自動的に始動されるため、使用者が特別な始動開始の操作を行う必要がない。これにより、タグ100を装着対象物に装着して使用を開始したにもかかわらず、始動を忘れることを回避できる。なお、ネジNは、磁性を有する鉄系の合金等で形成されると好適であるが、磁性体でなくとも磁場を変化させることができれば足りる。
【0060】
タグ100をパレット9から着脱する場合、ネジNを係合部Lの貫通孔Laから引き抜く。ネジNを引き抜くことで、磁石Mが生じた磁場が係合部L(ネジN)近傍で変化する。この磁場の変化によって検出素子Sが出力して制御回路に入力される電気信号の値が変化する。発信機3は、この電気信号の値の変化をトリガーとして無線信号の発信を所定期間経過後に停止する。発信機3は、無線信号の発信を停止するまでの所定期間内に、自己のID情報と自己の位置情報とに加えて、無線信号の発信を停止する旨を発信(報知)する。
【0061】
なお、タグ100には、外部に露出したスイッチ類(例えばディップスイッチ)が設けられる必要がないため、他の物体との接触により、不意に無線信号の発信が開始されてしまったり、無線信号の発信が停止しまったりする不具合も回避されている。
【0062】
以上のようにして、使用開始時に確実に始動することができるIDタグ装置及びその駆動方法を提供することができる。
【0063】
(別実施形態)
(1)上記実施形態では、容器Cが、容器Cを上下方向に貫通する貫通孔Laが形成された係合部Lを備えている場合を説明した。しかし、係合部Lは、貫通孔Laが形成されている場合に限られない。例えば、貫通孔Laに代えて、容器Cの側面から内側に向けて凹むスリット状の切り欠きLbを設ける場合もある(
図9参照)。この場合、切り欠きLbにネジNを挿通してもよいし、切り欠きLbにクランプなどを引っ掛けて容器Cを装着対象物に固定してタグ100を装着対象物に装着可能としてもよい。
【0064】
(2)上記実施形態では、基板Pには円弧上に切り欠かれた嵌め込み部Paが形成されており、嵌め込み部Paの外周を筒部25の外周に沿わせて基板Pを収容空間に収容する場合を説明した。しかし、嵌め込み部Paに代えて、筒部25を嵌め込み可能な貫通孔を基板Pに形成してもよい。この場合は、貫通孔に筒部25嵌め込んだ状態で基板Pを収容空間に収容する。
【0065】
(3)上記実施形態では、発信機3は、無線信号を発信している状態で検出素子Sが出力する電気信号の値が変化すると、所定時間経過後に無線信号の発信を停止する場合を説明した。しかし、検出素子Sが出力する電気信号の値が変化すると、所定時間の経過を経ずに無線信号の発信を停止してもよい。
【0066】
(4)上記実施形態では、発信機3は、無線信号を発信している状態で検出素子Sが出力する電気信号の値が変化すると、無線信号の発信を停止する場合を説明した。しかし、発信機3は、無線信号を発信している状態で検出素子Sが出力する電気信号の値が変化すると無線信号の発信を停止するように構成される場合に限られない。無線信号を発信している状態で検出素子Sが出力する電気信号の値が変化しても、発信機3が発信を継続するように構成してもよい。発信機3は、使用開始時に確実に始動(無線信号の発信を開始)されれば目的を達成するからである。また、発信機3は、無線信号の発信を停止する条件として、検出素子Sが出力する電気信号の値の変化量の閾値を定め、無線信号を発信している状態で、電気信号の値に閾値を超える変化があったときのみ無線信号の発信を停止するように構成されていてもよい。このように構成することで、何らかの外部要因によって検出素子Sが出力する電気信号の値に変化があった場合でも、変化量が閾値を超えない限り発信機3は無線信号の発信を継続するので、発信機3が誤って無線信号の発信を停止するのを防止することができる。
【0067】
(5)上記実施形態では、ネジNでタグ100をパレット9などの装着対象物に装着する場合を説明した。また、ネジNが容器Cを貫通している場合を説明した。しかし、タグ100は、ネジN以外の他の締結具でパレット9などの装着対象物に装着されてもよい。この場合、他の締結具は必ずしも容器Cを貫通しなくてもよく、当該他の締結部の一部が磁場を変化させる位置まで侵入していれば足りる。
【0068】
例えば、ネジNに代えて、釘や押しピン、針金などでもよい。また、タグ100やパレット9と別部材ではなく、パレット9に形成もしくは固定したスナップフィットの爪のような締結具であってもよい。例えば、パレット9に形成したスナップフィットの爪を係合部Lに係合させてもよい。この場合、スナップフィットの爪を係合部Lの貫通孔Laに挿通した状態で係合させてもよいし、切り欠きLbに嵌め込んだ状態で引っ掛けて係合させてもよい。ネジNに代えて、スナップフィットの爪を用いる場合、係合部Lは、貫通孔Laや切り欠きLbのように上下方向に貫通している必要はなく、下方から上方に向けて凹んだ嵌め込み穴H(受け部の一例)であってもよい(
図10参照)。
図10では、嵌め込み穴Hに、桁91にあらかじめ固定したスナップフィットの爪Kが嵌まり込み、嵌め込み穴Hの内側で容器Cと係合している場合を図示している。爪Kは、磁性を有する鉄系の合金等で形成されると好適であるが、磁性体でなくとも磁場を変化させることができれば足りる。なお、
図10は、タグ100の短手方向視を示しており、容器C内部に位置している嵌め込み穴Hや爪Kを透視して模式的に図示したものである。
【0069】
(6)上記実施形態では、パレット9を装着対象物の一例として説明したが、装着対象物はパレット9に限られない。装着対象物は、場所を移動させることが可能なものであればどのようなものでも対象となる。例えば、パレット9のように、物品の流通の用途で用いる輸送用の物品、貸し出して他人に使用させるようなレンタル用の物品、床などに載置して使用されるが盗難の恐れのあるものなどに装着すると好適である。輸送用の物品としては、搬送用の箱や台車等が例示できる。レンタル用の物品としては例えば、介護ベット、乳母車、車いす、自転車等が例示できる。盗難の恐れのあるものとしては、美術品、家具、鉢植えの観葉植物、金庫等を例示できる。
【0070】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、IDタグ装置及びその駆動方法に適用できる。
【符号の説明】
【0072】
3 :発信機
9 :パレット(装着対象物)
15 :筒部(筒状部)
25 :筒部(筒状部)
100 :タグ(IDタグ装置)
C :容器
H :嵌め込み穴(受け部)
K :爪(装着対象物の一部)
L :係合部
La :貫通孔
Lb :切り欠き
M :磁石
N :ネジ(締結具)
P :基板
Pa :嵌め込み部
S :検出素子