(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】石炭混焼ボイラにおける燃焼灰の付着予測評価方法
(51)【国際特許分類】
F23K 1/00 20060101AFI20240126BHJP
【FI】
F23K1/00 B
(21)【出願番号】P 2020048170
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000198318
【氏名又は名称】株式会社IHI検査計測
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】知惠 賢二郎
(72)【発明者】
【氏名】茂田 潤一
(72)【発明者】
【氏名】高野 卓
(72)【発明者】
【氏名】長島 陽一
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/050050(WO,A1)
【文献】特開2008-082651(JP,A)
【文献】特開2011-255368(JP,A)
【文献】特開2004-361368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを再生可能エネルギーとして利用する石炭混焼ボイラで主燃料となる石炭にバイオマスを所定の添加率で混合した試料を灰化して試験灰を調製し、該試験灰を前記石炭混焼ボイラの燃焼温度条件で焼結させて焼結灰を生成し、該焼結灰をラトラ試験機にかけて試験前の焼結灰の重量で試験後の焼結灰の重量を割った比から膠着度を求め、該膠着度に基づき前記石炭混焼ボイラにおける燃焼灰の付着状況を事前に評価する
石炭混焼ボイラにおける燃焼灰の付着予測評価方法であって、
実際の石炭混焼ボイラでの燃焼灰の付着結果と膠着度とを比較し、実際の石炭混焼ボイラにて灰障害を招くことのない膠着度の付着安全域を特定し、該付着安全域内に膠着度が収まるようにバイオマスの添加率を調整する一方、
石炭に対するバイオマスの添加率を変えた複数の試験灰について膠着度を求め、該膠着度が付着安全域内で最大値をとるバイオマスの添加率を最適添加率として評価することを特徴とする石炭混焼ボイラにおける燃焼灰の付着予測評価方法。
【請求項2】
膠着度が0.5以下の領域を付着安全域として特定することを特徴とする請求項
1に記載の石炭混焼ボイラにおける燃焼灰の付着予測評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭混焼ボイラにおける燃焼灰の付着予測評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策を推進する観点から再生可能エネルギーの導入拡大は重要事項となっており、火力発電所等にてバイオマス(動植物に由来する有機物)を再生可能エネルギーとして利用した石炭混焼ボイラが増加してきている。
【0003】
特に火力発電所の場合においては、発電効率が発電設備への投入エネルギーと発電で得られる電力エネルギー量との比率であることから、再生可能エネルギーであるバイオマスを投入エネルギーとして利用することで発電効率の向上を図ることもできる。
【0004】
図10は石炭混焼ボイラの一例を示すもので、図中1は炉壁管(伝熱管)で形成されている火炉1aと後部伝熱部1bとからなるボイラ本体、2はボイラ本体1の火炉1a内へ投入される石炭(微粉炭)とバイオマスの混合燃料、3は一次過熱器、4は二次過熱器、5は三次過熱器、6は最終過熱器、7は一次再熱器、8は二次再熱器、9は節炭器であり、これらの熱交換器は伝熱管により構成されている。
【0005】
そして、ボイラ本体1の火炉1a内へ混合燃料を投入して燃焼させると、生成した燃焼ガスは、火炉1aの炉壁を構成する伝熱管を加熱した後、火炉1a上部における二次過熱器4、三次過熱器5、最終過熱器6、二次再熱器8からなる上部伝熱部11を加熱し、続いて、後部伝熱部1bの一次過熱器3、一次再熱器7及び節炭器9を加熱し、熱交換した後の排ガスは排ガスダクト10へ流出し、下流側に設けられた脱硝、脱硫等の排煙処理装置(図示せず)で窒素酸化物や硫黄酸化物等が除去された後に大気へ放出されるようになっている。
【0006】
尚、この種のバイオマスを再生可能エネルギーとして利用した石炭混焼ボイラに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した如き石炭混焼ボイラの場合、石炭と混焼されるバイオマスの種類によっては、石炭混焼ボイラにファウリング(火炉1a上部から後段の伝熱管にかけての燃焼灰の付着)を起こすことがあり、例えば、このようなファウリングが進むことにより、伝熱阻害や閉塞、塊状の硬質クリンカ落下による物理的損傷等といった灰障害を誘発することが懸念されたが、これまで石炭混焼ボイラにおける燃焼灰の付着状況を事前に評価する有効な手段が無く、灰障害を招かない範囲でバイオマスをどの程度の添加率にまで高められるかを的確に見極めることが難しかった。
【0009】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、バイオマスを再生可能エネルギーとして利用した石炭混焼ボイラにおける燃焼灰の付着状況を事前に評価し得るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、バイオマスを再生可能エネルギーとして利用する石炭混焼ボイラで主燃料となる石炭にバイオマスを所定の添加率で混合した試料を灰化して試験灰を調製し、該試験灰を前記石炭混焼ボイラの燃焼温度条件で焼結させて焼結灰を生成し、該焼結灰をラトラ試験機にかけて試験前の焼結灰の重量で試験後の焼結灰の重量を割った比から膠着度を求め、該膠着度に基づき前記石炭混焼ボイラにおける燃焼灰の付着状況を事前に評価する石炭混焼ボイラにおける燃焼灰の付着予測評価方法であって、
実際の石炭混焼ボイラでの燃焼灰の付着結果と膠着度とを比較し、実際の石炭混焼ボイラにて灰障害を招くことのない膠着度の付着安全域を特定し、該付着安全域内に膠着度が収まるようにバイオマスの添加率を調整する一方、
石炭に対するバイオマスの添加率を変えた複数の試験灰について膠着度を求め、該膠着度が付着安全域内で最大値をとるバイオマスの添加率を最適添加率として評価することを特徴とするものである。
【0011】
而して、このようにすれば、試料と同じ添加率でバイオマスを混合した石炭を実際の石炭混焼ボイラで燃焼させた場合に起こり得る燃焼灰の付着状況を再現し、その膠着度を指標とすることで実際的で信頼性の高い評価を行うことが可能となり、灰障害を招かない範囲でバイオマスをどの程度の添加率にまで高められるかを容易に見極めることが可能となる。
【0012】
また、実際の石炭混焼ボイラでの燃焼灰の付着結果と膠着度とを比較し、実際の石炭混焼ボイラにて灰障害を招くことのない膠着度の付着安全域を特定し、膠着度が付着安全域内に収まるようにバイオマスの添加率を調整することで灰障害を未然に回避することが可能となる。
【0013】
更に、石炭に対するバイオマスの添加率を変えた複数の試験灰について膠着度を求め、該膠着度が付着安全域内で最大値をとるバイオマスの添加率を最適添加率として評価しているので、灰障害の発生を招かない範囲内でバイオマスの添加率を極力大きく設定することが可能となる。
【0014】
尚、実際の石炭混焼ボイラにて灰障害を招くことのない膠着度の付着安全域を特定するにあたり、同じ膠着度でも実際の石炭混焼ボイラの構造等により灰障害の発生状況に多少の違いがあるものの、膠着度が0.5以下の領域を付着安全域として特定すれば、概ね重篤な灰障害は回避されるものと見做せる。
【発明の効果】
【0015】
上記した本発明の石炭混焼ボイラにおける燃焼灰の付着予測評価方法によれば、試料と同じ添加率でバイオマスを混合した石炭を実際の石炭混焼ボイラで燃焼させた場合に起こるであろう燃焼灰の付着状況を再現し、その膠着度を指標とすることで実際的で信頼性の高い評価を行うことができるので、燃焼灰の付着が進むことによる伝熱阻害や閉塞、塊状の硬質クリンカ落下による物理的損傷等といった灰障害の発生を回避することができると共に、灰障害の発生を招かない範囲内でバイオマスの添加率を極力大きく設定して該バイオマスを効率良く有効利用することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の方法で試料の焼結を行う電気炉の概略図である。
【
図2】膠着度の測定を行うラトラ試験機の一例を示す正面図である。
【
図3】膠着度と焼結温度との関係を示すグラフである。
【
図4】膠着度と木質系のバイオマスの添加率との関係を示すグラフである。
【
図5】膠着度とその他のバイオマスの添加率との関係を示すグラフである。
【
図6】Rf値と木質系のバイオマスの添加率との関係を示すグラフである。
【
図7】Rs値と木質系のバイオマスの添加率との関係を示すグラフである。
【
図8】膠着度とRf値との関係を示すグラフである。
【
図9】膠着度とRs値との関係を示すグラフである。
【
図10】本発明を適用する石炭混焼ボイラの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1~
図9は本発明を実施する形態の一例を示すもので、本実施例においては、既に低品位炭(亜瀝青炭)での灰汚れ(付着性)を評価する上で実績のある膠着度測定法を利用し、石炭とバイオマスとの混焼時における燃焼灰の付着状況を事前に評価するようにしている。
【0019】
即ち、膠着度とは、金属圧粉体の耐摩耗及び先端安定性を定量的に評価するラトラ試験を応用し、焼結体の固さを定量化するための指標として新たに定義したものであり、ラトラ試験後の重量をラトラ試験前の重量で割った比を膠着度としている。
【0020】
より具体的に本実施例に即して説明すると、ラトラ試験とは、石炭の灰分分析法のJIS(JIS M 8812)に準拠してバイオマスを所定の添加率で混合した試料をマッフル炉にて815℃で灰化して試験灰を調製し、
図1に示す如く、その試験灰をアルミナボート12に装填した上、電気炉13に取り付けたアルミナ管14内に収容して石炭混焼ボイラ(
図10参照)の燃焼温度条件で加熱処理することにより焼結させ、これにより生成された焼結灰の硬さ(後述の膠着度)を
図2に示す如きラトラ試験機15で測定して評価するものである。
【0021】
ここで、ラトラ試験機15とは、金属圧粉体の耐摩耗性及び先端安定性を測定するための装置で、直径100mm、長さ120mmの円筒形金網16(目開き1mm#)を80rpmの速度で回転させる装置であり、前記ラトラ試験機15における円筒形金網16に焼結灰を入れて回転させると、焼結灰は一旦上方に持ち上げられた後に金網内壁に落下衝突して表面から徐々に崩されるので、一定条件で回転した後、円筒形金網16内に残った重量から灰の焼結性を評価するようにしている。
【0022】
尚、試験条件は、例えば下記のように決めて行うことができる。
・温度 :1000~1300℃
・雰囲気 :空気
・加熱時間:1h
・評価方法:下記式(1)で求められる数値を膠着度と定義して焼結性を定量化する(膠着度が1.0に近いほど硬く焼結していることになる)。
膠着度=ラトラ試験後の重量/ラトラ試験前の重量…(1)
【表1】
【0023】
[表1]に石炭(瀝青炭)と木質系のバイオマスの性状分析結果を示している通り、木質系のバイオマスには、石炭より発熱量は低いが揮発分が多いという特徴があり、揮発分燃焼は燃焼性が高い(燃焼速度が速い)ため、バイオマスの混焼により燃焼性の向上が考えられる。
【0024】
また、窒素(N)分と硫黄(S)分が0.1%以下と少ないため、バイオマスの混焼では排ガス中の窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)の低減化が予測される。一方、木質系のバイオマスの灰分は石炭より極めて少ないが、高温での灰の付着性を誘発する酸化カリウム(K2O)の含有量が多いことが特徴である。
【0025】
図3に膠着度と焼結温度との関係を示す如く、本発明者らによる試験結果によれば、瀝青炭Aに木質系のバイオマスを添加することにより灰は焼結し易くなり(膠着度が高くなる)、また、松を30%添加した場合に瀝青炭Aと同一膠着度を示す温度条件が30℃~100℃低温となることが確認された。
【0026】
更に、
図4に燃焼灰の加熱温度1100℃における松、樫及び杉の膠着度とバイオマスの添加率との関係を示すと、木質系のバイオマスの種類の違いによる変化は認められなかったが、何れの木質系のバイオマスも添加率が増えるほど灰の膠着度が高くなることが確認され、より具体的には、瀝青炭Aの灰の膠着度が約0.05(
図3参照)であったのに対し、添加率50%では0.6~0.7に上昇することが確認された。尚、今回用いた木質系のバイオマスの添加率が約20%以下であれば、燃焼灰の焼結性は殆ど変化しないものと予測される。
【0027】
その他のバイオマスとして、農業残渣系稲わら、木質系竹についても30%混焼での燃焼灰の膠着度を調査しており、これらバイオマスの性状を[表2]に、膠着度を
図5に夫々示している。杉、樫、松の混焼灰の膠着度に比べて、稲わら混焼灰は高値、竹混焼灰は低値を示しており、バイオマスの種類により灰組成が異なることが膠着度に影響を与えたものと考えられる。
【表2】
【0028】
また、バイオマスの混焼により生成する灰のファウリングインデックスRf及びスラッギングインデックスRsがどのように変化するかを計算し、その結果を
図6及び
図7に示す。尚、単位は灰中の各成分の濃度(%)である。
Rf=(Base/Acid)×Na
2O…(2)
Rs=(Base/Acid)×燃料中S…(3)
【0029】
ここで、Base(塩基性成分);Na2O+K2O+Fe2O3+CaO+MgO…(4)
Acid(酸性成分);Al2O3+SiO2+TiO2 …(5)
【0030】
図6及び
図7に示す通り、木質系のバイオマスはBaseが主成分のため添加率を増やすことによりRf値は大きくなるが、S分を殆ど含まないためRs値は小さくなる。一例を挙げると、バイオマス添加率50%では瀝青炭Aと比較すると、Rf値は1.5倍前後になるのに対し、Rs値は逆に約3/4に低下する。即ち、従来のインデックスが適用できるとすると、バイオマスの添加によりファウリング(火炉上部から後段の伝熱管にかけての燃焼灰の付着)は強くなるが、スラッギング(火炉部分での燃焼灰の付着)は逆に弱くなることになる。
【0031】
焼結試験で得られた焼結灰の膠着度とRf値及びRs値との関係を
図8と
図9に示すと、焼結灰の膠着度はRf値が大きくなるほど上がるのに対し、Rs値が大きくなるほど下がることが分かる。この際、灰の焼結性とRs値との関連性はみられなかった。
【0032】
Rs値は上記式(3)で示すように燃料中のS分に比例するが、石炭中のS分の増加はFe成分がパイライト(FeS2)として含まれることが多いため、S分の影響と言うよりFe成分の影響を評価するインデックスである。
【0033】
石炭燃焼ボイラでは、ファウリングの主因子は灰中に含まれるアルカリ成分(Na2O、K2O)であるが、木質系のバイオマスは灰中にK2Oが特に多く含まれることから、スラッギングよりはファウリングが強く懸念されるため、スラッギングインデックスでバイオマス混焼時の灰障害を予測するのは適切ではないと言える。
【0034】
松、樫、杉との石炭混焼灰での膠着度に比べて、稲わら、竹との石炭混焼灰での膠着度には差異がみられた。これにはバイオマスの灰組成が大きく係わっており、特に酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)の存在が関与しているものと考えられる。
【0035】
一般的な石炭灰では、CaOはCaSO4(CaO+SO3)、MgOはMgSO4(MgO+SO3)の化合物形態をとることが多いが、バイオマスは灰中にSO3分が少ないことから、CaO、MgO単独で存在する可能性があり、このCaO(融点:2572℃)、MgO(融点:2852℃)は高融点であることから灰の焼結を抑制したものと考えられる。
【0036】
以上に説明した通り、バイオマスはその種類によって灰の組成が大きく異なり、バイオマスの種類と添加率によっては灰障害を発生する懸念があるため、事前の調査・検討が必要となることは明らかであるが、本発明者らによる鋭意研究により、バイオマスを石炭に添加することで灰の膠着度が上がり、しかも、その混焼率が増加するに従い膠着度も上昇することが確認され、ファウリングインデックスと膠着度との明確な相関も確認されたため、バイオマスを石炭と混焼した際に生じる燃焼灰の付着性を評価する上で、膠着度を指標とすることが極めて効果的であることが検証された。
【0037】
従って、上記実施例によれば、試料と同じ添加率でバイオマスを混合した石炭を実際の石炭混焼ボイラで燃焼させた場合に起こるであろう燃焼灰の付着状況を再現し、その膠着度を指標とすることで実際的で信頼性の高い評価を行うことができるので、燃焼灰の付着が進むことによる伝熱阻害や閉塞、塊状の硬質クリンカ落下による物理的損傷等といった灰障害の発生を回避することができると共に、灰障害の発生を招かない範囲内でバイオマスの添加率を極力大きく設定して該バイオマスを効率良く有効利用することができる。
【0038】
より具体的には、実際の石炭混焼ボイラでの燃焼灰の付着結果と膠着度とを比較し、実際の石炭混焼ボイラにて灰障害を招くことのない膠着度の付着安全域を特定すれば、膠着度が付着安全域内に収まるようにバイオマスの添加率を調整することで灰障害を未然に回避することができる。
【0039】
ここで、実際の石炭混焼ボイラにて灰障害を招くことのない膠着度の付着安全域を特定するにあたっては、同じ膠着度でも実際の石炭混焼ボイラの構造等により灰障害の発生状況に多少の違いがあるものの、膠着度が0.5以下の領域を付着安全域として特定すれば、概ね重篤な灰障害は回避されるものと見做すことができる。
【0040】
なぜなら、膠着度が0.2より低ければ、パウダー状の灰付着状態となり、膠着度が0.2-0.4の範囲では、脆くて自然崩落する程度の灰付着状態となり、膠着度が0.4-0.8の範囲では、手で簡単に崩せる程度の灰付着状態となり、膠着度が0.8より大きければ溶融してガラス状に硬く固着して簡単に崩せない灰付着状態となることが過去の実機付着灰調査に基づく知見として得られており、手で簡単に崩せる程度の灰付着状態となる膠着度が0.4-0.8の範囲にあっても、膠着度が0.5以下であれば重篤な灰障害を招かないことが確認されているからである。
【0041】
そして、石炭に対するバイオマスの添加率を変えた複数の試験灰について膠着度を求め、該膠着度が付着安全域内で最大値をとるバイオマスの添加率を最適添加率として評価すれば、灰障害の発生を招かない範囲内でバイオマスの添加率を極力大きく設定することができて該バイオマスを最も効率良く有効利用することができる。
【0042】
尚、本発明の石炭混焼ボイラにおける燃焼灰の付着予測評価方法は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、石炭混焼ボイラに混焼されるバイオマスは木質系以外のバイオマスであっても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
1 ボイラ本体
1a 火炉
1b 後部伝熱部
2 混合燃料
3 一次過熱器
4 二次過熱器
5 三次過熱器
6 最終過熱器
7 一次再熱器
8 二次再熱器
9 節炭器
10 排ガスダクト
11 上部伝熱部
12 アルミナボート
13 電気炉
14 アルミナ管
15 ラトラ試験機
16 円筒形金網