(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】クレーン及びクレーンの組立方法
(51)【国際特許分類】
B66C 23/26 20060101AFI20240126BHJP
B66C 23/42 20060101ALI20240126BHJP
B66C 23/66 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
B66C23/26 E
B66C23/42 B
B66C23/66 Z
(21)【出願番号】P 2020055260
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】山下 朋昭
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-222392(JP,A)
【文献】特開2017-145094(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0065616(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームと、
前記ブームに起伏可能に接続されたジブと、
前記ジブから吊り下げられるワイヤロープと、
前記ジブに設けられ前記ワイヤロープを支持するポイントシーブと、
を備え、
前記ジブの先端部には、
前記ジブが伸長しかつ前記ブームが倒伏した姿勢のときに前記ジブの先端部を移動可能に支持する走行補助部
、並びに、前記ジブを抱込みかつ前記ブームが倒伏した姿勢から前記ブームが起立する際に前記ワイヤロープを前記ポイントシーブとは別で支持するワイヤガイド部
、として兼用される兼用機能部が設けられているクレーン。
【請求項2】
前記ワイヤガイド部は、前記ジブの先端側で前記ワイヤロープを支持する、
請求項1記載のクレーン。
【請求項3】
前記兼用機能部はローラを含み、
前記ローラは前記走行補助部の車輪、並びに、前記ワイヤガイド部の滑車として機能する、
請求項
1又は請求項2記載のクレーン。
【請求項4】
前記ワイヤガイド部は、前記ジブが伸長しかつ前記
ブームを倒伏したときに、前記ポイントシーブよりも鉛直方向下方に配置される、
請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項5】
前記ジブに設けられ前記ワイヤロープをガイドするガイドシーブを備え、
前記ワイヤガイド部は、前記ガイドシーブと前記ポイントシーブとに張られるワイヤロープを延長した直線上もしくは前記直線より前記ポイントシーブ側に位置する、
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載のクレーンの組立方法であって、
前記走行補助部を接地させて前記ジブの先端部を移動可能に支持させる工程と、
前記ジブを伸長姿勢で前記ブームに接続する工程とを含む、
クレーンの組立方法。
【請求項7】
請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載のクレーンの組立方法であって、
前記ジブを抱込み姿勢で前記ブームに接続する工程と、
前記ワイヤロープを前記ワイヤガイド部にガイドさせる工程とを含む、
クレーンの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン及びクレーンの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ジブの先端部に車輪を有するクレーンが示されている。このクレーンは、上記の車輪が位置可変に構成され、クレーン解体時に、ジブが張り出した姿勢でブームを倒伏する場合と、ジブを抱き込んだ姿勢でブームを倒伏する場合とで、共通の車輪を介してジブの先端部を着地させることができる。クレーン組立時に逆の動きを行うときにも同様である。ここで、ジブの抱込み姿勢とは、ジブとブームとの間の角度(ジブの回動軸を中心とした角度)が小さくされ、ジブの先端部がブームに近接した姿勢を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のクレーンは、ジブを抱き込んだ姿勢でブームを起伏させると、ジブのポイントシーブに掛けられたワイヤロープの先が、ジブの反吊り側へ移動するため、ワイヤロープがポイントシーブのシーブ溝部から離間してしまい、ワイヤロープを適切に保護できない。
【0005】
本発明は、ブームに対してジブを伸長した姿勢でクレーンを組み立てる場合と、ブームがジブを抱き込んだ姿勢でクレーンを組み立てる場合との両方で、良好な作業性が得られるクレーン及びクレーンの組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るクレーンは、
ブームと、
前記ブームに起伏可能に接続されたジブと、
前記ジブから吊り下げられるワイヤロープと、
前記ジブに設けられ前記ワイヤロープを支持するポイントシーブと、
を備え、
前記ジブの先端部には、
前記ジブが伸長しかつ前記ブームが倒伏した姿勢のときに前記ジブの先端部を移動可能に支持する走行補助部、並びに、前記ジブを抱込みかつ前記ブームが倒伏した姿勢から前記ブームが起立する際に前記ワイヤロープを前記ポイントシーブとは別で支持するワイヤガイド部、として兼用される兼用機能部が設けられている。
【0007】
本発明に係る一態様のクレーンの組立方法は、
上記のクレーンの組立方法であって、
前記走行補助部を接地させて前記ジブの先端部を移動可能に支持させる工程と、
前記ジブを伸長姿勢で前記ブームに接続する工程とを含む。
【0008】
本発明に係るもう一つの態様のクレーンの組立方法は、
上記のクレーンの組立方法であって、
前記ジブを抱込み姿勢で前記ブームに接続する工程と、
前記ワイヤロープを前記ワイヤガイド部にガイドさせる工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ブームに対してジブを伸長した姿勢でクレーンを組み立てる場合と、ブームがジブを抱き込んだ姿勢でクレーンを組み立てる場合との両方で良好な作業性が得られるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態1のクレーンを示す図である。
【
図2】実施形態1のクレーンにおいてジブを伸長した姿勢でブームを倒伏させた状態を示す図(A)と、ジブ先端部の拡大図(B)である。
【
図3】実施形態1のクレーンにおいてジブを抱込んだ姿勢でブームを倒伏させた状態を示す図(A)と、ジブ先端部の拡大図(B)である。
【
図4】実施形態1のクレーンにおける伸長姿勢によるジブの組立工程(A)とブームを起立させる工程(B)、(C)とを説明する図である。
【
図5】実施形態1のクレーンにおける抱込み姿勢によるジブの組立工程(A)とブームを起立させる工程(B)、(C)とを説明する図である。
【
図6】実施形態2のジブの先端部を示す図であり、(A)はジブが伸長した姿勢でクレーンを組み立てる際の状態を示し、(B)は抱込み姿勢で組み立てられたジブを起立させる際の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1のクレーン1を示す図である。
【0013】
実施形態1のクレーン1は、キャブが搭載されたメインフレーム2と、メインフレーム2に回動可能に接続されたブーム3と、ブーム3に回動可能に接続されたジブ4と、ジブ4を起伏させるためのストラット7と、ジブ4に吊られるジブフック5と、ワイヤロープW1、W2、W3をそれぞれ巻回する複数のウインチとを備える。メインフレーム2には、並進走行する走行体8と、旋回する旋回装置9とが設けられている。ジブ4の先端部には、ポイントシーブ11が設けられ、ジブフック5を吊るすワイヤロープW1が掛けられる。ウインチの駆動によりワイヤロープW1が巻き取り又は繰り出されることで、ジブフック5が昇降される。ジブ4はワイヤロープW4を介してストラット7に支持され、ウインチの駆動によりストラット7に掛けられたワイヤロープW2が巻き取り又は繰り出されることでジブ4が起伏される。ブーム3は、カウンタウエイト2aの荷重を受けるマスト2bにワイヤロープW3を介して支持され、ウインチの駆動によりワイヤロープW3が巻き取り又は繰り出されることでブーム3が起伏される。複数のウインチはメインフレーム2又はブーム3の下部に設けられる。
【0014】
ジブ4の先端部には、ポイントシーブ11に加えて、ワイヤロープW1をポイントシーブ11に案内するガイドシーブ12と、クレーン1の組立時に機能する兼用機能部13とが設けられている。
【0015】
クレーン1は、構成部品が外された状態で運送され、現場において組み立てられる。組み立ては、ブーム3が倒伏された状態で行われる。ジブ4をブーム3に回動自在に接続する工程は、現場の状況に応じて、ジブ4を伸長した姿勢で行う場合と、ブーム3にジブ4が抱き込まれた姿勢で行う場合とがある。
【0016】
図2は、ジブを伸長した姿勢でブームを倒伏させた状態を示す図(A)と、その状態のジブ先端部を示す拡大図(B)である。
図3は、ジブを抱込んだ姿勢でブームを倒伏させた状態を示す図(A)と、その状態のジブ先端部を示す拡大図(B)である。
【0017】
兼用機能部13は、滑車及び車輪として機能するローラ13aと、ローラ13aを回転自在に支持する支持部材13bとを有する。ローラ13aは、外周部にワイヤロープW1を掛ける溝を有する。ローラ13a、ローラ13aの外周部、並びに、ローラ13aの軸受部は、ローラ13aが地面に接したときにジブ4の荷重を支える強度を有する。
【0018】
ローラ13aは、ジブ4の長手方向に沿った中心線X1(
図2、
図3)に対して、ポイントシーブ11と同じ側(ジブ4の吊下げ側)に配置される。すなわち、ポイントシーブ11の回転軸は中心線X1よりもジブ4の吊下げ側に位置する。ここで、ジブ4の吊下げ側とは、ブーム3が90度起立し、ジブ4が水平に寝た状態において、ジブフック5が吊り下げられる側を意味する。吊下げ側の反対側をジブ4の反吊下げ側と呼ぶ。さらに、中心線X1からローラ13aまでの距離L1(中心線X1から最も遠い部位までの距離)は、中心線X1からポイントシーブ11までの距離L2(中心線X1から最も遠い部位までの距離)よりも長い。加えて、ローラ13aは、ジブ4の中心線X1に沿った方向において、ポイントシーブ11よりもジブ4の先端側に位置する。ジブ4の先端側とは、ジブ4の回動中心である根元側から回動移動する先端を向く方を意味する。さらに、ポイントシーブ11の回転軸方向に見たとき、ローラ13aのワイヤ受け面(滑車形態であればシーブ溝部)S2の少なくとも一部は、ポイントシーブ11とガイドシーブ12とに張られるワイヤロープW1を延長した円柱外面S1よりも、ポイントシーブ11の回転軸の側(
図2(B)の矢印Aの側)に位置する。
【0019】
兼用機能部13は、
図2に示すように、ジブ4が伸長しかつブーム3が倒伏した姿勢のときに、地面に接してジブ4の先端部を移動可能に支持する走行補助部として機能する。すなわち、兼用機能部13のローラ13aが回転自在に接地され、兼用機能部13は、ローラ13aが回転する方向にジブ4を移動可能に支持する。なお、走行補助部は、地面に接するのではなく、ジブ4を移動するために設けられたレール等に沿って移動する構成としてもよい。
【0020】
さらに、兼用機能部13のローラ13aは、
図3に示すように、ジブ4を抱き込んだ姿勢において、ポイントシーブ11に掛けられるワイヤロープW1を、ポイントシーブ11よりも先端側で支持する。そして、ローラ13aから吊り下がったワイヤロープW1は、ジブ4の先端部に接触することなく、ジブ4の吊下げ側から反吊り下げ側へ誘導される。ここで、仮にワイヤロープW1に荷重が加わってワイヤロープW1が張られると、ローラ13aとガイドシーブ12との間で、ワイヤロープW1はポイントシーブ11に沿って屈曲し、ワイヤロープW1とポイントシーブ11との間に荷重が加えられる。したがって、この状態で、ワイヤロープW1は、ポイントシーブ11のシーブ溝部から離脱することがない。
【0021】
<伸長姿勢によるクレーンの組立工程>
図4は、実施形態1のクレーンにおける伸長姿勢によるジブの組立工程(A)とブームを起立させる工程(B)、(C)とを説明する図である。
【0022】
伸長姿勢でブーム3とジブ4とを倒伏できる現場においては、伸長姿勢でクレーン1を組み立てる工程が採用される場合がある。伸長姿勢による組立工程において、ブーム3にジブ4を接続する際には、
図4(A)に示すように、ブーム3が倒伏した状態で、作業員がブーム3の延長線上にジブ4を配置し、ブーム3にジブ4の回動部を接続する。ジブ4を接続した後、あるいは、接続前から接続後にかけて、作業員は、ジブ4の先端部において兼用機能部13のローラ13aを接地させ、ローラ13aによりジブ4を前後方向(ジブ4の長手方向)へ変位可能に支持させる。ジブ4の先端部が変位可能に支持されることで、ジブ4の接続作業性が向上する。
【0023】
次に、作業員は、
図4(B)に示すように、ジブ4の先端部を接地させたまま、ブーム3を所定角度まで起立させる。このとき、ジブ4の先端部では兼用機能部13がジブ4を支えつつ、ブーム3の起立に追従してジブ4の先端部をメインフレーム2側へ移動させる。ジブ4の先端部が変位可能に支持されていることで、この工程の作業性が向上する。
【0024】
その後、作業員は、ブーム3とジブ4間の角度を固定しつつ、ブーム3の起立を進め、ブーム3が最終起立角度まで達したら、ジブ4を所定角度まで起伏する。これらの工程により、
図4(C)に示すように、クレーン1が作業可能な姿勢となる。
【0025】
なお、
図4(A)~(C)の作業工程を逆に実行することで、伸長姿勢によりクレーン1を解体できる。上述した良好な作業性は、伸長姿勢によるクレーン1の解体工程においても同様に得ることができる。
【0026】
<抱込み姿勢によるクレーンの組立工程>
図5は、実施形態1のクレーンにおける抱込み姿勢によるジブの組立工程(A)とブームを起立させる工程(B)、(C)とを説明する図である。
【0027】
伸長姿勢でブーム3及びジブ4を倒伏できない現場においては、抱込み姿勢によるクレーン1の組立工程が採用される。抱込み姿勢による組立工程において、ブーム3にジブ4を接続する際には、
図5(A)に示すように、作業員は、ブーム3の下方にジブ4を配置し、ジブ4の回動部をブーム3に接続する。ジブ4を接続したら、あるいはジブ4の接続前に、作業員は、ジブフック5に接続されるワイヤロープW1をブーム3及びジブ4の所定箇所を経由して、ジブ4のガイドシーブ12、ポイントシーブ11及び兼用機能部13のローラ13aに掛け、ワイヤロープW1の先をジブ4の反吊下げ側まで導く。兼用機能部13のローラ13aがワイヤロープW1をポイントシーブ11よりもジブ4の先端側で支持することで、ジブ4の先端部においてワイヤロープW1が保護される。したがって、ワイヤロープW1を配置する作業性、並びに、ワイヤロープW1を配置した後にジブ4を接続する作業性が向上する。
【0028】
ジブ4を接続し、ワイヤロープW1を配置したら、
図5(B)に示すように、作業員は、ブーム3がジブ4を抱込んだ姿勢のまま、ブーム3を起立させる。このとき、ジブフック5が地面から離間して、ワイヤロープW1に荷重が加えられる。仮に、例えばローラ13aが無く、ポイントシーブ11の周囲にワイヤロープW1の外れ止めN(
図5(B))がある構成が採用されたとする。この場合、ワイヤロープW1はポイントシーブ11のシーブ溝部から外れ、外れ止めNに接触した状態で荷重が加えられるため、ワイヤロープW1が損傷する恐れがある。しかし、本実施形態では、ワイヤロープW1はガイドシーブ12、ポイントシーブ11及びローラ13aに懸架され、ワイヤロープW1の配置が安定する。すなわち、ワイヤロープW1は、ポイントシーブ11のシーブ溝部から外れず、外れ止めNに接触しない。さらに、ローラ13aの先においてワイヤロープW1はジブ4の先端部から離間され、ワイヤロープW1がジブ4の構成部材に接触しない。したがって、抱込み姿勢におけるブーム3の起立工程の作業性が向上する。
【0029】
ブーム3が起立したら、
図5(C)に示すように、作業員は、ジブ4を起立させる。ジブ4の起立の過程で、ジブフック5を吊るワイヤロープW1は、兼用機能部13のローラ13aから離間し、ポイントシーブ11に掛けられた状態で吊り下げられ、クレーン作業時におけるワイヤロープW1の配置が得られる。
【0030】
なお、
図5(A)~(C)の作業工程を逆に実行するこまとで、抱込み姿勢によりクレーン1を解体できる。上述した良好な作業性は、抱込み姿勢によるクレーン1の解体工程においても同様に得られる。
【0031】
以上のように、実施形態1のクレーン1によれば、ジブ4が伸長しブーム3が倒伏した姿勢のときに、ジブ4の先端部を移動可能に支持する走行補助部(兼用機能部13)を有する。さらに、ジブ4の先端部には、ブーム3がジブ4を抱き込みかつブーム3が倒伏した姿勢から起立する際にワイヤロープW1をポイントシーブ11よりもジブ4の先端側で支持するワイヤガイド部(兼用機能部13)が設けられている。したがって、
図4及び
図5を参照して説明したように、クレーン1の組立工程において、ジブ4を伸長姿勢でブーム3に接続する場合と、ジブ4を抱込み姿勢でブーム3に接続する場合との両方において、良好な作業性を得ることができる。
【0032】
さらに、実施形態1のクレーン1によれば、ジブ4を抱き込みかつブーム3が倒伏した姿勢からブーム3を起立させる際に、ポイントシーブ11にワイヤロープW1が張られた状態で、ジブ4の先方に延在するワイヤロープW1をジブ4の反吊下げ側から吊下げ側へ移し送ることができる。したがって、ジブ4を抱き込んだ姿勢でブーム3を起立させることで、ワイヤロープW1を保護しつつ、クレーン作業時の配置までワイヤロープW1を容易に誘導できる。
【0033】
さらに、実施形態1のクレーン1によれば、兼用機能部13が、伸長姿勢時にはジブ4の先端部を移動可能に支持する走行補助部として機能し、また、抱込み姿勢時にはワイヤロープをジブ4の反吊下げ側へ導くワイヤガイド部として機能する。このように、兼用機能部13が、両機能として兼用されていることで、走行補助部及びワイヤガイド部を配置するスペースを抑制できる。さらに、部品の共通化により部品コストを低減できる。
【0034】
さらに、実施形態1のクレーン1によれば、兼用機能部13がローラ13aを含み、ローラ13aが走行補助部の車輪と、ワイヤガイド部の滑車として機能する。ローラ13aにより、走行を補助する機能の向上と、ワイヤロープW1のガイド機能の向上とを図れる。
【0035】
さらに、実施形態1のクレーン1によれば、ジブ4が伸長しかつブーム3が倒伏したとき(ジブ4が倒伏したとき)に、ワイヤガイド部として機能するローラ13aが、ポイントシーブ11より鉛直方向の下方に配置される。したがって、ジブ4を抱き込んだ姿勢でブーム3が倒伏したときと、ジブ4を抱き込んだ姿勢でブーム3が起立したときとで、ローラ13aの配置を、ポイントシーブ11よりも先に繰り出されたワイヤロープW1を適切に保護できる配置とすることができる。
【0036】
さらに、実施形態1のクレーン1によれば、ワイヤガイド部として機能するローラ13aの中心軸が、ジブ4の中心線X1よりもジブ4の吊下げ側に配置され、中心線X1とローラ13aとの距離が、中心線X1とポイントシーブ11との距離よりも長い。したがって、ワイヤガイド部として機能するローラ13aにより、ジブ4を抱き込んだ姿勢でブーム3が倒伏したときと、ジブ4を抱き込んだ姿勢でブーム3が起立したときとで、ポイントシーブ11よりも先に繰り出されたワイヤロープW1を適切に保護できる。
【0037】
さらに、実施形態1のクレーン1によれば、ポイントシーブ11の回転軸方向に見たとき、ローラ13aのワイヤ受け面(滑車形態であればシーブ溝部)S2の少なくとも一部は、ポイントシーブ11とガイドシーブ12とに張られるワイヤロープW1を延長した円柱外面S1よりも、ポイントシーブ11の回転軸の側(
図2(B)の矢印Aの側)に位置する。したがって、ジブ4を抱き込んだ姿勢からジブを起立させるときにワイヤロープW1をポイントシーブ11が確実に支持することができる。
【0038】
さらに、実施形態1の伸長姿勢によるクレーン組立工程によれば、兼用機能部13を接地させてジブ4の先端部を移動可能に支持させる工程と、兼用機能部13が接地した状態でジブ4をブーム3に接続する工程を含む。これらの工程により、ジブ4の先端部を別の部材を用いて移動可能に支持する工程が省かれ、ジブ4をブーム3に接続する工程の作業性を向上できる。
【0039】
さらに、実施形態1の抱込み姿勢によるクレーン組立工程によれば、ブーム3がジブ4を抱き込んだ姿勢でジブ4とブーム3に接続する工程と、ジブ4の先端部に位置するワイヤロープW1を兼用機能部13にガイドさせる工程とを含む。このような工程により、ジブ4を抱込んだ姿勢でブーム3を起伏させる際、ワイヤロープW1が兼用機能部13により適切に保護されるので、別途ワイヤロープW1を保護及び所定箇所に配置する作業を省くことができ、ブーム3を起立する際の作業性を向上できる。
【0040】
さらに、実施形態1のクレーン1の組立方法によれば、伸長姿勢による組み立てと、抱込み姿勢による組み立てとの両方で、良好な作業性が実現される。したがって、現場の状況等に合わせて、いずれかの組立工程を選択した場合でも、良好な作業性を持ってクレーン1を組み立てられる。
【0041】
(実施形態2)
図6は、実施形態2のジブの先端部を示す図であり、(A)はジブが伸長した姿勢でクレーンを組み立てる際の状態を示し、(B)は抱込み姿勢で組み立てられたジブを起立させる際の状態を示す。
【0042】
実施形態2のクレーン1は、ジブ4の先端部の構成が異なる他は、実施形態1と同様である。実施形態2のジブ4の先端部には、ポイントシーブ11及びガイドシーブ12に加えて、クレーン1の組立工程において機能するワイヤガイド部13Aと、走行補助部13Bとが設けられている。
【0043】
走行補助部13Bは、車輪13cと、車輪13cを回転可能に支持する支持部材13dとを備える。車輪13cは、ジブ4の中心線X1(
図6(A))よりもジブ4の吊下げ側に位置する。車輪13cと中心線X1との距離L3(中心線X1から最も離れた部位までの距離)は、ポイントシーブ11と中心線X1との距離L2(中心線X1から最も離れた部位までの距離)よりも長い。車輪13cは、ジブ4の中心線X1に沿った方向において、ポイントシーブ11及びワイヤガイド部13Aよりもジブ4の先端側に位置する。
【0044】
ワイヤガイド部13Aは、滑車13eと、滑車13eを回転可能に支持する支持部材13fとを備える。滑車13eは、ジブ4の中心線X1(
図6(A))よりもジブ4の吊下げ側に位置する。滑車13eとジブ4の中心線X1との距離L4(中心線X1から最も離れた部位までの距離)は、ポイントシーブ11とジブ4の中心線X1との距離L2(中心線X1から最も離れた部位までの距離)よりも長い。滑車13eは、ジブ4の中心線X1に沿った方向において、ポイントシーブ11よりもジブ4の先端側に位置する。
【0045】
実施形態2のクレーン1においても、
図6(A)に示すように、ジブ4が伸長した姿勢でブーム3が倒伏したときに、走行補助部13Bがジブ4の先端部を移動可能に支持することができる。また、
図6(B)に示すように、ジブ4を抱込んだ姿勢でブーム3が倒伏状態から起伏する際に、ポイントシーブ11より先、ジブ4の吊下げ側において、ワイヤガイド部13AがワイヤロープW1を支持する。したがって、ジブフック5が地上から離間し、ワイヤロープW1に荷重が加わったときに、ジブ4の先に繰り出されたワイヤロープW1がジブ4の先端部の他の部材に接触しないように保護することができる。そして、ジブ4が起立するに従って、ワイヤロープW1がポイントシーブ11から離脱することなくワイヤガイド部13Aから離間し、クレーン作業時におけるワイヤロープW1の配置が得られる。
【0046】
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記の実施形態1、2では、走行補助部として機能する兼用機能部あるいはワイヤガイド部と兼用されない走行補助部として、車輪を有する構成を示したが、これに限定されず、例えば面上を滑って移動するソリなど、ジブの先端部を移動可能に支持できる構成であればどのような構成であってもよい。また、上記実施形態1、2では、ワイヤガイド部として機能する兼用機能部あるいは走行補助部と兼用されないワイヤガイド部として、滑車を有する構成を示したが、滑車の代わりに、ワイヤロープW1を摺動して支持及びガイドする凸曲面を有する部材(例えば強化プラスチックの丸棒など)が採用されてもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 クレーン
2 メインフレーム
3 ブーム
4 ジブ
5 ジブフック
11 ポイントシーブ
12 ガイドシーブ
13 兼用機能部
13a ローラ
13b 支持部材
13A ワイヤガイド部
13e 滑車
13B 走行補助部
13c 車輪
W1 ワイヤロープ
X1 中心線