(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】移植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20240126BHJP
A01B 49/04 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
A01C11/02 341
A01B49/04
(21)【出願番号】P 2020060662
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】渡里 圭介
(72)【発明者】
【氏名】難波 晟史
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-116143(JP,A)
【文献】特開2015-062352(JP,A)
【文献】特開2007-267614(JP,A)
【文献】米国特許第04408550(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
A01B 49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体と、
前記走行機体の後部に昇降可能に連結されて、圃場への植付作業を行う植付部を有する植付作業機と、
前記植付部の前方に配置された左右方向の整地ロータにより圃場の整地作業を行う整地作業機と、
前記植付作業機を昇降作動させる昇降シリンダと、
前記整地作業機を昇降作動させる昇降アクチュエータと、
前記走行機体の走行距離を検出する走行距離検出手段と、
前記走行機体の走行時間を計測可能な制御部とを備え、
前記植付作業機は、前記植付部により圃場への植付作業を行う昇降高さである作業高さと、前記植付部による植付作業が実行されない昇降高さである非作業高さとに昇降可能に構成され、
前記整地作業機は、前記植付作業機が作業高さまで下降作動された状態で圃場に接地させることにより圃場の整地作業を行う整地高さと、該整地高さから圃場に接地させない非整地高さとに昇降可能に構成され、
前記制御部は、予め設定された第1所定距離、又は第1所定時間の間、前記整地作業機を整地高さに下降作動させつつ、前記植付作業機による植付作業を実行する作業状態であることが検出された場合には、前記整地作業機を整地高さから非整地高さに自動的に上昇作動させた整地退避状態に切換え、該整地退避状態で前記第1所定距離よりも短く設定された第2所定距離、又は前記第1所定時間よりも短く設定された第2所定時間の間、前記植付作業機による植付作業が実行されたことが検出された場合には、前記整地作業機を非整地高さから整地高さに自動的に下降作動させて作業状態に切換えるように構成され
、
前記植付作業機による植付作業を行う圃場の状態を検出する感知フロートと、
該感知フロートの感度を調整する感度調整手段とを設け、
前記制御部は、前記植付作業機が前記整地退避状態に切換えられた場合には、前記感知フロートの感度を自動的に鈍感側に切換えるように構成された
移植機。
【請求項2】
前記整地作業機は、エンジンからの動力によって前記整地ロータが回転駆動可能に構成され、
前記制御部は、前記植付作業機が前記整地退避状態に切換えられた場合には、前記整地ロータの回転駆動を停止するように構成された
請求項
1に記載の移植機。
【請求項3】
前記走行機体の車速を検出する車速検出センサを設け、
前記整地作業機は、前記整地高さに切換えられた場合に、該整地作業機が圃場に接地する整地深さが調整できるように構成されており、
前記制御部は、前記走行機体の車速が遅くなるほど前記整地深さが深くなるとともに、前記走行機体の車速が速くなるほど前記整地深さが浅くなるように構成された
請求項
1又は2の何れかに記載の移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場面の整地作業を行う整地作業機を備えた移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
走行機体と、前記走行機体の後部に昇降可能に連結されて、圃場への植付作業を行う植付部と、該植付部の前方に配置されて圃場の整地作業を行う整地作業機とを有する植付作業機と、前記植付作業機を昇降作動させる昇降シリンダと、前記整地作業機を昇降作動させる昇降アクチュエータと、該整地作業機の昇降作動を操作する設定操作具と、前記走行機体の車速を検出する車速検出センサと、制御部とを備え、前記制御部は、前記走行機体の車速に応じて、前記整地作業機の昇降高さを自動的に調整可能に構成された特許文献1に記載の作業車両が従来公知である。
【0003】
上記文献の移植機によれば、前記植付作業機による植付作業を行う際の車速や圃場の状態に応じて前記整地作業機の高さ位置を自動的に適正に保つことにより、作業者の操作の手間が軽減されるとともに、前記整地作業機による整地作業の精度が向上するものであるが、前記整地作業機を連続して使用することにより、整地作業機のロータ前方に夾雑物や泥が滞留したり、該ロータに異物が絡まったりすることにより、作業走行中に前記整地作業機の整地性能が著しく低下する場合があり得るという問題もあり得た。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、整地ロータにより圃場の整地作業を行う整地作業機を、植付作業を行う植付部の前方に設けた植付作業機を備えた移植機において、前記整地ロータの前方に夾雑物や泥が滞留することによって前記整地作業機の整地性能が低下することを効率的に防止できる移植機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、走行機体と、前記走行機体の後部に昇降可能に連結されて、圃場への植付作業を行う植付部と、該植付部の前方に配置された左右方向の整地ロータにより圃場の整地作業を行う整地作業機とを有する植付作業機と、前記植付作業機を昇降作動させる昇降シリンダと、前記整地作業機を昇降作動させる昇降アクチュエータと、前記走行機体の走行距離を検出する走行距離検出手段と、前記走行機体の走行時間を計測可能な制御部とを備え、前記植付作業機は、前記植付部により圃場への植付作業を行う昇降高さである作業高さと、前記植付部による植付作業が実行されない昇降高さである非作業高さとに昇降可能に構成され、前記整地作業機は、前記植付作業機が作業高さまで下降作動された状態で圃場に接地させることにより圃場の整地作業を行う整地高さと、該整地高さから圃場に接地させない非整地高さとに昇降可能に構成され、前記制御部は、予め設定された第1所定距離、又は第1所定時間の間、前記整地作業機を整地高さに下降作動させつつ、前記植付作業機による植付作業を実行する作業状態であることが検出された場合には、前記整地作業機を整地高さから非整地高さに自動的に上昇作動させた整地退避状態に切換え、該整地退避状態で前記第1所定距離よりも短く設定された第2所定距離、又は前記第1所定時間よりも短く設定された第2所定時間の間、前記植付作業機による植付作業が実行されたことが検出された場合には、前記整地作業機を非整地高さから整地高さに自動的に下降作動させて作業状態に切換えるように構成されたことを特徴としている。
【0007】
第2に、前記植付作業機による植付作業を行う圃場の状態を検出する感知フロートと、該感知フロートの感度を調整する感度調整手段とを設け、前記制御部は、前記植付作業機が前記整地退避状態に切換えられた場合には、前記感知フロートの感度を自動的に鈍感側に切換えるように構成されたことを特徴としている。
【0008】
第3に、前記整地作業機は、エンジンからの動力によって前記整地ロータが回転駆動可能に構成され、前記制御部は、前記植付作業機が前記整地退避状態に切換えられた場合には、前記整地ロータの回転駆動を停止するように構成されたことを特徴としている。
【0009】
第4に、前記走行機体の車速を検出する車速検出センサを設け、前記整地作業機は、前記整地高さに切換えられた場合に、該整地作業機が圃場に接地する整地深さが調整できるように構成されており、前記制御部は、前記走行機体の車速が遅くなるほど前記整地深さが深くなるとともに、前記走行機体の車速が速くなるほど前記整地深さが浅くなるように構成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
前記制御部によれば、前記植付作業機による植付作業中に、前記整地作業機が所定間隔で自動的に上下動させることによって、整地作業中に前記整地ロータの前方に滞留した夾雑物や堆積泥を自動的に振落すことができるため、植付作業中に前記整地作業機による整地作業の性能が突然著しく低下する事態を効率的に防止することができる。
【0011】
また、前記植付作業機による植付作業を行う圃場の状態を検出する感知フロートと、該感知フロートの感度を調整する感度調整手段とを設け、前記制御部は、前記植付作業機が前記整地退避状態に切換えられた場合には、前記感知フロートの感度を自動的に鈍感側に切換えるように構成されたものによれば、前記整地作業機が植付作業中に非整地高さに切換えられた際に、前記感知フロートを圃場側により深く接地させることにより、低下した圃場の整地性能を補完することができる。言い換えると、前記整地ロータの夾雑物の除去中は、前記感知フロートによって整地作業を行うことができるため、前記整地退避状態であっても整地性能が大きく低下することを防止できる。
【0012】
また、前記整地作業機は、エンジンからの動力によって前記整地ロータが回転駆動可能に構成され、前記制御部は、前記植付作業機が前記整地退避状態に切換えられた場合には、前記整地ロータの回転駆動を停止するように構成されたものによれば、前記整地ロータの駆動が停止する際に該整地ロータに生じる逆慣性と、前記整地ロータが再び回転駆動を開始する際に該整地ロータに生じる正慣性とによって、該整地ロータに巻付いた夾雑物や該整地ロータに付着した泥等が除去され易くなる。
【0013】
なお、前記走行機体の車速を検出する車速検出センサを設け、前記整地作業機は、前記整地高さに切換えられた場合に、該整地作業機が圃場に接地する整地深さが調整できるように構成されており、前記制御部は、前記走行機体の車速が遅くなるほど前記整地深さが深くなるとともに、前記走行機体の車速が速くなるほど前記整地深さが浅くなるように構成されたものによれば、前記植付作業機による植付作業時の車速が速い場合には、前記整地ロータ前部の泥等の滞留や、該整地ロータへの巻付きが発生し易いため、前記整地ロータと圃場面との接地深さを浅めに制御し、植付作業時の車速が遅い場合には、前記整地ロータと圃場面との接地深さを深めに制御して、整地性能が必要以上に低下することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の移植機を適用した乗用田植機の全体側面図である。
【
図2】本発明の移植機を適用した乗用田植機の全体平面図である。
【
図3】(A)は、操縦部前方を示した要部正面図であり、(B)は、フロント表示パネルを示した図であり、(C)は、フロント操作パネルを示した図であり、(D)は、主変速レバーの把持部を示した要部側面図である。
【
図6】整地作業機の構成を示した要部側面図である。
【
図7】圃場面での植付作業時の作業経路を示したモデル図である。
【
図9】下方スイッチ操作制御を示した処理フロー図である。
【
図10】上方スイッチ操作制御を示した処理フロー図である。
【
図12】前記滞留防止制御のフローを示したイメージ図である。
【
図13】走行速度と整地ロータの高さの相関関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び
図2は、本発明の移植機を適用した乗用田植機の全体側面図及び全体平面図であり、
図3(A)は、操縦部前方を示した要部正面図であり、
図3(B)は、フロント表示パネルを示した図であり、
図3(C)は、フロント操作パネルを示した図であり、
図3(D)は、主変速レバーの把持部を示した要部側面図である。
【0016】
本乗用田植機は、左右一対の前輪1,1及び後輪2,2によって支持された走行機体3と、該走行機体3の後方に昇降リンク4を介して昇降作動可能に連結された植付作業機6と、該植付作業機6側に設けられた整地作業機7とを備えている。
【0017】
該走行機体3を支持する機体フレーム8は、前方側にボンネット9で囲繞されたエンジン(図示しない)が搭載されており、該エンジンの後方側には、作業者が乗込んで操向操作等を行う操縦部11が設けられている。
【0018】
前記操縦部11は、作業者が着座する座席12と、該座席12の前方側に配置されたステアリングハンドル13と、該ステアリングハンドル13の前方に配置された表示パネル14と、該表示パネル14の近傍に配置された操作パネル16と、前記ステアリングハンドル13の左右一方(図示する例では左)側に配置された主変速レバー17と、前記ステアリングハンドル13の左右他方(図示する例では右)側に配置された作業機レバー(作業機操作レバー)18と、該作業機レバーの側方側に配置された副変速レバー19と、前記ステアリングハンドル13の近傍に配置された油圧感度調節ダイヤル21とを備えている。また、前記座席12の真下側には、マイコン等から構成される後述の制御部50が配設されている(
図1乃至3等参照)。
【0019】
上記作業機レバー18は、上下方向及び左右方向に揺動操作可能に構成され、図示しない付勢部材等によって中立位置に付勢され、上下方向又は左右方向に揺動された後は中立位置に復帰するように構成されている。これにより、前記制御部50は、前記作業機レバー18の上方揺動操作により前記植付作業機6の上昇作動・植付クラッチの切断を操作し、前記作業機レバー18の下方揺動操作により前記植付作業機6の下降作動・植付クラッチの接続を操作する作業機操作制御と、前記作業機レバー18の左右揺動操作によって後述するマーカの姿勢切換を操作するマーカ操作制御ができるように構成されている。
【0020】
上記主変速レバー17は、前後揺動操作されることにより、走行HST(図示しない)を介して主変速操作をすることができるように構成されている。具体的には、前後方向中途部のニュートラル位置から前方に操作されることにより、前進方向に増速操作され、前記ニュートラル位置から後方に操作されることにより、後進方向に増速操作されるように構成されている。
【0021】
また、該主変速レバー17の上端の把持部側には、該把持部を握ったまま押操作することができる上下一対の昇降スイッチ17A,17Bが設けられており、該昇降スイッチ17A,17Bは、前記作業機レバー18と同様に後述する昇降装置22を介して、前記植付作業機6の昇降作動を操作できるように構成されている(
図3(D)参照)。
【0022】
上記副変速レバー19は、前後揺動操作によってギヤ変速されることによって、圃場面での作業走行に適した速度域で走行可能になる作業走行状態と、該作業走行状態よりも高速な速度域で走行可能となる路上走行に適した路上走行状態とに切換えることができるように構成されている。
【0023】
上記操作パネルは16、詳しくは後述する前記整地作業機7への夾雑物や泥の滞留を防止する滞留防止制御が実行される滞留・巻付き防止モードへの切換えを操作する滞留・巻付き防止モードスイッチ23と、植付準備スイッチ24と、前記走行機体3の前照灯のON・OFFを操作する照明スイッチ26と、報知ブザーのON・OFFを操作するブザースイッチ27と、前記マーカが自動的に振出操作されるオートマーカモードへの切換を操作するマーカスイッチ28とが設けられている(
図3(C)参照)。
【0024】
また、該操作パネル16は、各スイッチ操作具の上側に、前記整地作業機7の昇降位置を調整することによって、前記整地作業機7による整地作業を行う際に、該整地作業機7が圃場に接地する深さを調整する操作具であるロータ高さ設定ダイヤル29が設けられている。該ロータ高さ設定ダイヤル29により、前記整地作業機7の実行のON・OFFを操作可能に構成しても良い。
【0025】
上記表示パネル14は、前記植付準備スイッチ24のON・OFF状態を報知するランプである植付表示部31と、作業機レバー18によって操作される前記植付作業機6の上昇状態(上げ)と、固定状態と、下降状態(下げ)と、植付状態の何れかであることを作業者に報知する4つのランプからなる作業状態表示部32と、前記整地作業機7による整地作業が実行されていることを作業者に報知するランプである整地作業報知部33と、方向指示器34L,34Rとが設けられている(
図3(B)参照)。
【0026】
上記油圧感度調整ダイヤル21は、圃場面の硬さの状態に応じて、後述するセンターフロートが圃場面に接地した際の沈下量を調節できるように構成されている(
図3(C)参照)。なお、該油圧感度調整ダイヤル21に代えて、前記センターフロートの上下位置を調整する油圧感度調整レバーを設けても良い。
【0027】
前記植付作業機6は、圃場に植付けられる苗が載置される苗載台36と、該苗載台36の下方側に左右方向に複数並べて配置された植付部37と、前記植付作業機3の左右外側に振出されることにより次工程の植付条列に基準線を引く左右一対のマーカ装置38と、前記苗載台36の下方側に配置された前後方向のフロート39と、該フロート39の前方側に配置されて圃場面の整地作業を行う前記整地作業機7とを備え、前記整地作業機7によって整地作業がされた圃場面に対して前記植付部37が苗載台36上の苗を掻き取って圃場へ植付ける植付作業を行うことができるように構成されている。該整地作業機7の具体的な構成については後述する。
【0028】
該植付作業機6は、前記昇降リンク4と、油圧式アクチュエータである昇降シリンダ41によって走行機体3の後部側に昇降作動可能に設けられており、前記作業機レバー18又は前記昇降スイッチ17A,17Bにより制御される昇降装置22を介して、前記植付作業機6が上昇する上昇状態と、前記植付作業機6が自重によって下降作動する下降状態・自動下降状態(又は下端側で下降停止した下降停止状態)と、前記植付作業機6を所定の昇降位置で固定する固定状態と、前記植付部37による植付作業を実行する植付状態とに切換えることができるように構成されている。該昇降装置22の具体的な構成については後述する。
【0029】
また、前記植付作業機6は、前記植付部37側に動力を伝動するプランタケースの下方側に、圃場を均す前記フロート39が左右方向に複数並べて支持されており、左右に並べて配置されたフロート39のうちの左右方向の中央に配置されたフロートである前記センターフロート39Aは、圃場面からの土圧を感知する感知体として機能するように構成されている。
【0030】
該センターフロート39Aが、後述する連係機構42を介して油圧バルブと連係されることにより、前記植付作業機6の対地高さを制御できるように構成されている。該連係機構42の具体的な構成については後述する。
【0031】
ちなみに、該センターフロート39Aは、前記油圧感度切換ダイヤル21によって、その前部側を上下揺動させることによって、圃場面の状態に応じて感知される土圧の強さを適切に調整できるように構成されている。
【0032】
次に、
図4に基づき、前記昇降装置の構成について説明する。
図4は、昇降装置を示した要部側面図である。前記昇降装置22は、油圧ポンプから前記昇降シリンダ41に至る油圧経路に設けられた油圧バルブと、該油圧バルブを操作する側面視矩形状のバルブアーム44と、植付作業機への動力の断続を操作する植付クラッチと連係する連係アームとを有し、該油圧バルブ(バルブアーム44)を介して前記昇降シリンダ41側に供給・排出される油圧を制御することにより前記昇降シリンダを伸縮作動させるとともに、前記植付クラッチの断続を操作することができるように構成されている。
【0033】
具体的に説明すると、前記昇降装置22は、油圧式アクチュエータである前記昇降シリンダ41と、操作ピン46を介して前記バルブアーム44を操作することにより前記降シリンダ41の伸縮作動を操作する作業機操作カム46と、該作業機操作カム46の回動位置を操作する作業機操作カムモータ47と、該作業機操作カムモータ47によって駆動される出力ギヤ48と、該作業機操作カム47の操作位置を検出する作業機操作カムポテンショ49とを有し、前記制御部50は、作業機操作カムポテンショ49により検出された作業機操作カム46の操作位置に基づいて、前記植付作業機6の昇降状態(上昇状態、下降状態、下降停止状態)を検出することができる(
図4参照)。
【0034】
また、上記作業機操作カム46は、前記連係アームを介して前記植付クラッチの入切も操作することができるため、前記制御部50は、作業機操作カムポテンショ49により検出された作業機操作カム46の操作位置に基づいて、植付作業機(植付部)による植付作業が実行される植付状態も検出することができる。
【0035】
次に、
図5に基づき、前記連係機構の構成について説明する。
図5は、連係機構を示した要部側面図である。前記連係機構42は、前記センターフロート39Aと、該センターフロート39Aの前端から上方前側に向かって傾斜して設けられた連係プレート51と、該連係プレート51の後方で前後揺動可能に支持されたT字状の揺動プレート52と、前記揺動プレート52から前方に向かって延設された連係ロッド53と、前記バルブアーム44と連係するバルブ連係アーム54と、該バルブ連係アーム54と連結されて後方に向かって延設されたバルブ側連係プレート56と、該バルブ側連係プレート56の後端側と前記連係ロッド53の前端側とを接続する接続プレート57とを備えている(
図5参照)。
【0036】
前記バルブ側連係プレート56の前部側には弾性スプリングの一端側が係止される係止ピン57が設けられており、該係止ピン57には、バルブアーム下部側との間に設けられてピンを介して前記バルブ連係アーム54を後方に向けて付勢するように設けられた第1弾性部材58と、前記連係機構42に沿って前方に引っ張るように設けられる第2弾性部材59とが設けられている。
【0037】
前記揺動プレート52は、前記連係プレート51の上部に穿設された長孔にスライド可能にピン固定されるとともに、該長孔に挿通されるピンに取付けられる上下方向のプレート部材61を介して、取付けられた上下方向の第3弾性部材62により上方側に付勢されるように構成されている。
【0038】
上述のように構成された前記連係機構42によれば、前記センターフロート39Aが接地する圃場面の状態(軟硬)によって、該センターフロート39Aの前部側が沈んだり、浮き上がったりする上下方向の動きに連動して、前記バルブアーム44が操作されることにより、前記植付作業機5(植付部37)の高さを適正な位置に自動的に調整することができる。
【0039】
また、前記連係機構42は、その中途部に前記油圧感度調整ダイヤル21によって操作可能な感知ワイヤ64が連結されており、前記感知ワイヤ64の押引き操作によって前記センターフロート39Aの前部を上下動させて姿勢を調整することにより、該センターフロート39Aの土圧感度を調整できるように構成されている。
【0040】
具体的に説明すると、前記連係プレート51の上端側に前記感知ワイヤ64の一端側が連結され、機体フレーム8(前記バルブアーム44の後方)側には、前記感知ワイヤ64の押引き操作を行う感知ワイヤモータ66と、該感知ワイヤモータ66の回転位置を検出する感知ワイヤポテンショ67とが設けられている。これにより、前記制御部50は、前記感知ワイヤモータ66の駆動を制御することにより、前記センターフロート39Aの土圧感度を調整できるように構成されている(
図5参照)。
【0041】
次に、
図6に基づき、前記整地作業機の構成について説明する。
図6は、整地作業機の構成を示した要部側面図である。前記整地作業機7は、圃場面に接地した状態で回転駆動することにより圃場面の整地作業を行う左右方向に延設された整地ロータ71と、該整地ロータ71を前記植付作業機6(植付部37)に対して昇降作動させるロータ昇降機構と、前記整地ロータ71の昇降作動と該整地ロータ71への動力の断続を連係するロータ連係機構とを備えている。
【0042】
前記整地ロータ71の左右方向中央には、走行機体3後部のリアアクスルケース74側から後方に向かって延設された伝動シャフト76とユニバーサルジョイントを介して連結されるドライブケース77が設けられており、前記整地ロータ71が前記走行機体3側から伝動される動力によって回転駆動可能に構成されている。これより、前記整地ロータ71は、前記後輪2の駆動と連動するように構成されているため、走行機体4が停止している場合には自動的に停止し、走行開始に伴って前記整地ロータ71が駆動開始するように構成されている。
【0043】
また、該走行機体3(リアアクスルケース74)側には、前記整地ロータ71への動力伝動を断続操作する整地用クラッチを構成するシフタ78が設けられており、該シフタ78が、前記ロータ連係機構と連係されることにより、前記整地作業機7の昇降作動と、前記整地用クラッチ(シフタ78)の入切作動とが連動するように構成されている。以下具体的な構成を説明する。
【0044】
前記ロータ昇降機構は、前記整地ロータ71から上方に向かって延設されて前記植付作業機側に支持されるロータ支持フレーム81と、前記整地ロータ71を昇降作動させるロータ昇降モータ82と、該ロータ昇降モータ82によって駆動する出力ギヤを介して揺動作動するセクタギヤ83と、該セクタギヤ83の回動位置を検出することにより前記整地ロータ71の昇降位置を検出するロータ高さ検出ポテンショ84とを備え、前記セクタギヤ83を介して前記整地ロータ71(ロータ支持フレーム81)を上下揺動させることができるように構成されている。
【0045】
該構成により、前記制御部50を介して前記ロータ昇降モータ82の駆動を制御して、前記整地ロータ71を前記植付作業機6(植付部37)に対して上下動させることにより、前記整地ロータ71を、前記植付作業機6が植付作業を行う作業位置まで下降作動された状態において、圃場面に接地させて整地作業を行うことができる整地作業高さと、圃場面に接地させない非整地作業高さとに切換えることができる。
【0046】
前記ロータ連係機構は、前記ロータ支持フレーム81の上端側と、前記整地用クラッチを構成する前記シフト78との間を連係する連係ワイヤ86によって構成されており、該連係ワイヤ86は、前記植付作業機6のフレーム側や走行機体3側に支持されるアウタワイヤ86Aと、該アウタワイヤ86A内に挿通されるインナーワイヤ86Bとから構成されている。
【0047】
このとき、前記ロータ連係機構は、前記植付作業機6が植付作業を行う植付位置に下降作動されるとともに、前記整地作業機7(整地ロータ71)が整地作業高さに下降作動された場合には、前記連係ワイヤ86が緩むことによって、前記整地用クラッチを構成する前記シフタ78が接続状態側に自動的に操作されるように構成され、その一方で、前記植付作業機6又は前記整地作業機7の何れか一方が非作業高さ(非整地作業高さ)に上昇作動された場合には、前記連係ワイヤ68の後端側が引っ張られることによって、前記シフタ78を切断状態側に自動的に操作されるように構成されている。
【0048】
上述の前記整地作業機7は、前記制御部50により、前記植付作業機が植付作業可能な作業高さ(前記センターフロート39Aが圃場面に接地した高さ)まで下降作動したことが検出された場合には、前記整地作業機7を整地作業高さまで下降作動させて、整地作業機7による整地作業と、植付作業機による植付作業とが同時に実行できるように構成されている。
【0049】
次に、
図7に基づいて、上記構成の移植機を用いた圃場面の作業走行経路について説明する。
図7は、圃場面での植付作業時の作業経路を示したモデル図である。本乗用田植機は、圃場面での植付作業を行う場合、まず、畦際に枕地として2行程残した植付開始位置(
図7の1)まで移動し(
図7の0)、外周部分を残して圃場面の内側を往復移動しながら植付作業を行い、最後に、初めに残した2行程分の幅の枕地の植付作業を作業済みのエリアの外周を回るようにして行う(
図7の2,3)これによって、圃場面全体に効率良く植付作業を行うことができる。
【0050】
このとき、上述の移植機が前記整地作業機7による整地作業と、前記植付作業機6(植付部37)による植付作業を同時に実行を継続していると、前記整地作業機7の整地ロータ71の前方に滞留物が溜まって整地作業の効率が低下するため、前記制御部50は、所定条件を満たした場合に、前記整地作業機7を自動的に昇降作動させて前記滞留物を除去する前記滞留防止制御が実行可能に構成されている。具体的には後述する。
【0051】
次に、
図8乃至13に基づき、前記制御部による作業機操作制御と、整地作業機の自動制御とについて説明する。
図8は、制御部のブロック図である。前記制御部50の入力側には、前記作業機レバー18の上下揺動操作を検出する作業機操作スイッチ91,92(上側・下側)と、前記植付作業準備スイッチ(植付準備スイッチ)24と、前記作業機操作カムポテンショ(リフタカムポテンショ)49と、前記植付作業機の昇降高さを検出するリフト角ポテンショ93と、前記油圧感度調整ダイヤル21と、前記感知ワイヤ64の操作位置を検出する前記感知ワイヤポテンショ67と、前記走行機体3の車速を検出する車速センサ94と、前記ロータ高さ設定ダイヤル29と、前記ロータ昇降モータ82の駆動位置を検出することにより前記整地ロータ71の高さ位置を検出するロータ高さ検出ポテンショ96と、前記滞留・巻付き防止モードスイッチ23と、前記主変速レバー17と、前記副変速レバー19とが接続されている。
【0052】
また、該制御部50の出力側には、前記操縦部側に設置される表示パネル14等に示される表示であるモニタ部97と、作業者への報知を行う報知ランプ(表示パネル14に表示のランプ等)や報知ブザーからなる報知手段98と、前記作業機操作カムモータ(リフタカムモータ)47と、前記感知ワイヤモータ66と、前記ロータ昇降モータ82とが接続されている。
【0053】
次に、
図9乃至11に基づき、前記制御部による前記植付作業機の操作制御について説明する。具体的には、前記制御部50により制御される前記植付作業機6の操作制御として、前記作業機レバー18の下方揺動操作が行われた場合の下方スイッチ操作制御と、前記作業機レバー18の上方揺動操作が行われた場合の上方スイッチ操作制御と、主変速レバーによる後進操作時の後進時制御とについて、以下説明する。
【0054】
図9は、下方スイッチ操作制御を示した処理フロー図である。前記下方スイッチ操作制御が実行されると、ステップS11に進む。ステップS11では、前記作業機操作スイッチ92により、前記作業機レバー18の下方操作が検出されたか否かが確認され、前記作業機レバー18の下方操作が検出された場合には、ステップS12に進む。
【0055】
ステップS12では、前記植付準備スイッチ24のON・OFF状態を確認し、前記植付準備スイッチ24のON状態が検出された場合には、ステップS13に進む。ステップS13では、前記作業機操作カムポテンショ49により前記植付作業機6が上昇状態であるか否かが確認され、上昇状態以外であることが検出された場合には、ステップS14に進む。
【0056】
ステップS14では、前記作業機操作カムポテンショ49により前記植付作業機6が下降状態であるか否かが確認され、下降状態以外の状態(具体的には固定状態か植付状態)が検出された場合には、ステップS15に進む。ステップS15では、前記作業機操作カムポテンショ49及び前記リフト角ポテンショ93により、前記植付作業機6が固定状態であるか植付状態であるかが確認され、固定状態であることが検出された場合には、ステップS16に進む。
【0057】
ステップS16では、前記植付作業機6を固定状態から下降状態にセットし、その後、リターンする。その一方で、ステップS15において、前記植付作業機6の植付状態が検出された場合には、その後、リターンする。
【0058】
また、ステップS14において、前記植付作業機6の下降状態が検出された場合には、ステップS17に進む。ステップS17では、前記リフト角ポテンショ93により、前記植付作業機6の下降作動が下端側(作業高さ)で停止しているか否かが確認され、前記植付作業機6の下降作動が停止していることが検出された場合には、ステップS18に進む。
【0059】
ステップS18では、前記植付クラッチを接続作動させることにより前記植付作業機6を植付状態に切換え、その後、リターンする。
【0060】
また、ステップS17において、前記植付作業機6の下降作動が停止しておらず、前記植付作業機6が下降作動中であることが検出された場合には、ステップS19に進む。ステップS19では、前記植付作業機6を植付クラッチ入り待ち状態にセットして、その後、リターンする。
【0061】
また、ステップS13において、前記植付作業機6の上昇状態が検出された場合には、ステップS20に進む。ステップS20では、前記植付作業機6を固定状態にセットして、その後、リターンする。
【0062】
また、ステップS12において、前記植付準備スイッチ24のOFF状態が検出された場合には、ステップS21に進む。ステップS21では、前記作業機操作カムポテンショ49により、前記植付作業機6が上昇状態であるか否かが確認され、上昇状態が確認された場合には、ステップS20に進み、前記植付作業機6を固定状態にセットして、その後、リターンする。その一方で、ステップS21において、上昇状態以外の状態が検出された場合には、ステップS22に進む。
【0063】
ステップS22では、前記作業機操作カムポテンショ49により、前記植付作業機6が固定状態であるか否かが確認され、固定状態が検出された場合には、ステップS23に進む。ステップS23では、前記植付作業機6が自重により下降作動する自動(下降)状態にセットして、その後、リターンする。その一方で、ステップS22において、固定状態以外であることが検出された場合には、その後、リターンする。
【0064】
また、ステップS11において、前記作業機レバー18の下方操作が検出されなかった場合には、ステップS24に進む。ステップS24では、前記植付作業機6が植付クラッチ入り待ち状態にセットされているか否かが確認され、植付クラッチ入り待ち状態であることが検出された場合には、ステップS25に進む。
【0065】
ステップS25では、前記リフト角ポテンショ49により、前記植付作業機6が下端側(作業高さ)に到達して下降作動が停止した状態か否かが確認され、前記植付作業機6の下降作動が停止していることが検出された場合には、ステップS26に進む。
【0066】
ステップS26では、前記植付作業機6が植付状態に切換えられ、その後、リターンする。なお、ステップS25において、前記植付作業機6が下降作動中であることが検出された場合には、その後、リターンする。
【0067】
すなわち、前記制御部50は、前記作業機レバー18による前記植付作業機6の下降操作が検出されると、前記植付作業機6が植付状態であった場合には、該植付状態が維持され、前記植付作業機6が任意の高さ位置で固定された固定状態であった場合には、下降状態に切換えられ、前記植付準備スイッチ24がON状態で且つ前記植付作業機6が下降作動中であった場合には、前記植付作業機6が下端側(作業高さ)に到達すると同時に植付状態に切換えられる植付クラッチ入り待ち状態に切換えられ、前記植付作業機6が上昇状態であった場合には、前記植付作業機6の上昇作動を停止させて固定状態に切換えるように構成されている。
【0068】
また、ステップS24において、植付クラッチ入り待ち状態が検出されなかった場合には、ステップS27に進む。ステップS27では、前記植付準備スイッチ24のON・OFF状態を確認し、前記植付準備スイッチ24のOFF状態が検出された場合には、ステップS28に進む。
【0069】
ステップS28では、前記副変速レバー19が路上走行状態に切換えられているか否かが確認され、路上走行状態に切換えられていることが検出された場合には、ステップS29に進む。
【0070】
なお、ステップS28において、前記副変速レバー19が作業走行状態に切換えられていることが検出された場合には、その後、リターンする。また、ステップS27において、前記植付準備スイッチ24のON状態が検出された場合には、ステップS29に進む。
【0071】
ステップS29では、前記作業機操作カムポテンショ49により、前記植付作業機6が下降状態か否かが確認され、下降状態が検出された場合には、ステップS30に進む。なお、ステップS29において、下降状態以外が検出された場合には、その後、リターンする。
【0072】
ステップS30では、前記リフタ角ポテンショ93により、前記植付作業機6が路上用非作業高さ(h2)であるか否かが確認され、前記植付作業機6の高さが路上用非作業高さ(h2)となっていることが検出された場合には、ステップS31に進む。ステップS31では、前記植付作業機6を固定状態に切換え、その後、リターンする。
【0073】
なお、ステップS30において、路上用非作業高さ(h2)となっていることが検出されなかったには、その後、リターンする。
【0074】
図10は、上方スイッチ操作制御を示した処理フロー図である。前記上方スイッチ操作制御が実行されると、ステップS41に進む。ステップS41では、前記作業機操作スイッチ91により、前記作業機レバー18の上方操作が検出されたか否かが確認され、前記作業機レバー18の上方操作が検出された場合には、ステップS42に進む。
【0075】
ステップS42では、前記作業機操作カムポテンショ49により前記植付作業機6が上昇状態か否かが確認され、上昇状態以外の状態であることが検出された場合には、ステップS43に進む。ステップS43では、同様に前記植付作業機6が固定状態か否かを検出し、固定状態以外の状態が検出された場合には、ステップS44に進む。
【0076】
ステップS44では、前記作業機操作カムポテンショ49により前記植付作業機6が植付状態であるか下降状態であるかを確認し、植付状態であることが検出された場合には、ステップS45では、前記植付作業機6を下降状態に切換え、その後、リターンする。
【0077】
また、ステップS44において、前記植付作業機6の下降状態が検出された場合には、ステップS46に進む。
【0078】
ステップS46では、前記作業機操作カムポテンショ49及びリフト角ポテンショ93により、前記植付作業機6が下端側(作業高さ)で下降作動が停止しているか否かが確認され、前記植付作業機6の下降作動が停止していることが検出されなかった場合には、ステップS47に進む。ステップS47では、前記植付作業機6が固定状態に切換えられて、その後、リターンする。
【0079】
また、ステップS46において、前記植付作業機6の下降作動が停止していることが検出された場合には、ステップS48に進む。ステップS48では、前記植付作業機6が上昇状態に切換えられて、その後、リターンする。
【0080】
また、ステップS43において、前記植付作業機6の固定状態が検出された場合には、ステップS48に進み、前記植付作業機6が上昇状態に切換えられて、その後、リターンする。
【0081】
また、ステップS42において、前記植付作業機6の上昇状態が検出された場合には、その後、リターンする。
【0082】
すなわち、前記制御部50は、前記作業機レバー18による前記植付作業機6の上昇操作が検出されると、前記植付作業機6が植付状態であった場合には、前記植付作業機6が下降状態に切換えられ、前記植付作業機6が下降状態で且つ下端(作業高さ)で下降作動が停止していた場合、若しくは、任意の高さ位置で前記植付作業機6が固定状態となっていた場合には、前記植付作業機6が上昇状態に切換えられ、前記植付作業機6が下降作動中となっていた場合には、前記植付作業機6が固定状態に切換えられ、前記植付作業機6が上昇状態であった場合には、前記植付作業機6の上昇状態が維持されるように構成されている。
【0083】
また、ステップ41において、前記作業機レバー18の上方操作が検出されなかった場合には、ステップS49に進む。ステップS49では、前記作業機操作カムポテンショ49により前記植付作業機6が上昇状態であるか否かが確認され、上昇状態であることが検出された場合には、ステップS50に進む。なお、ステップS49において、上昇状態以外の状態であることが検出された場合には、その後、リターンする。
【0084】
ステップS50では、前記リフト角ポテンショ93により、前記植付作業機6が植付時非作業高さ(h1)となっているか否かが確認され、前記植付作業機6が植付時非作業高さ(h1)となっている場合には、ステップS51に進む。ステップS51では、前記植付作業機6が固定状態に切換えられ、その後、リターンする。
【0085】
また、ステップS50において、前記植付作業機6が植付時非作業高さ(h1)でなかった場合には、ステップS52に進む。ステップS52では、前記植付準備スイッチ24のON・OFF状態が確認され、前記植付準備スイッチ24のOFF状態が検出された場合には、ステップS53に進む。なお、ステップS52において、前記植付準備スイッチ24のON状態が検出された場合には、その後、リターンする。
【0086】
ステップS53では、前記副変速レバー19が路上走行状態に切換操作されているか否かが確認され、前記副変速レバー19が路上走行状態に操作されていることが検出された場合には、ステップS54に進む。なお、ステップS53において、前記副変速レバー19が作業走行状態に操作されていた場合には、その後、リターンする。
【0087】
ステップS54では、前記リフト角ポテンショ49により、前記植付作業機6が路上用非作業高さ(h2)となっているか否かが確認され、前記植付作業機6が路上用非作業高さ(h2)となっていることが検出された場合には、ステップS51に進む。ステップS51では、前記植付作業機6が固定状態に切換えられ、その後、リターンする。
【0088】
なお、ステップS54において、前記植付作業機6が路上用非作業高さ(h2)でなかった場合には、その後、リターンする。
【0089】
図11は、後進時制御を示した処理フロー図である。前記後進時制御が実行されると、ステップS61に進む。ステップS61では、前記主変速レバー17により、前記走行機体3の後進操作がされたか否かが確認され、後進操作が検出された場合には、ステップS62に進む。
【0090】
ステップS62では、前記植付準備スイッチ24のON・OFF状態が確認され、前記植付準備スイッチ24のON状態が検出された場合には、ステップS63に進む。ステップS63では、前記副変速レバー19が路上走行状態に操作されているか否かが確認され、前記副変速レバー19が路上走行状態に操作されていることが検出された場合には、ステップS64に進む。
【0091】
ステップS64では、前記リフト角ポテンショ93により、前記植付作業機6の昇降高さ(h)が、路上用非作業高さ(h2)よりも低いか否かが確認され、前記植付作業機6の昇降高さ(h)が路上用非作業高さ(h2)以下であることが検出された場合には、ステップS65に進む。
【0092】
ステップS65では、前記植付作業機6が上昇状態に切換えられ、その後、リターンする。また、ステップS64において、前記植付作業機6が路上用非作業高さ(h2)以上であった場合には、その後、リターンする。
【0093】
また、ステップS63において、前記副変速レバー19が作業走行状態に操作されていることが検出された場合には、ステップ65に進み、前記植付作業機6が上昇状態に切換えられる。
【0094】
また、ステップS62において、前記植付準備スイッチ24のOFF状態が検出された場合には、ステップS64に進む。
【0095】
また、ステップS61において、前記主変速レバー17による後進操作が検出されなかった場合には、ステップS66に進む。ステップS66では、前記作業機操作カムポテンショ49により、前記植付作業機6が上昇状態であるか否かが確認され、上昇状態であることが検出された場合には、ステップS67に進む。なお、ステップS66において、上昇状態以外の状態が検出された場合には、その後、リターンする。
【0096】
ステップS67では、前記リフト角ポテンショ49により、前記植付作業機6が路上用非作業高さ(h2)になっているか否かが確認され、前記植付作業機6が路上非作業高さであることが検出された場合には、ステップS68に進む。
【0097】
ステップS68では、前記植付準備スイッチ24のON・OFF状態が確認され、前記植付準備スイッチ24のON状態が検出された場合には、ステップS69に進む。ステップS69では、前記副変速レバー19が路上走行状態に操作されているか否かが確認され、前記副変速レバー19が路上走行状態に操作されていることが検出された場合には、ステップS70に進む。
【0098】
ステップS70では、前記植付作業機6が固定状態に切換えられ、その後、リターンする。また、ステップS68において、前記植付準備スイッチ24のOFF状態が検出された場合には、ステップS70に進み、前記植付作業機6が固定状態に切換えられ、その後、リターンする。
【0099】
また、ステップS67において、前記植付作業機6が路上用非作業高さ(h2)であることが検出されなかった場合には、ステップS71に進む。ステップS71では、前記リフト角ポテンショ93により、前記植付作業機6が植付時非作業高さ(h1)であるか否かが確認され、植付時非作業高さ(h1)であることが検出された場合には、ステップS70に進み、前記植付作業機6が固定状態に切換えられ、その後、リターンする。
【0100】
また、ステップS71において、前記植付作業機6が植付時非作業高さ(h1)であることが検出されなかった場合には、その後、リターンする。
【0101】
また、ステップS69において、前記副変速レバー19が作業走行状態に操作されていることが検出された場合には、ステップS71に進む。
【0102】
すなわち、前記制御部50は、前記主変速レバー17により前記走行機体3の後進操作が検出された場合には、前記作業機レバー18が操作されなくとも自動的に前記植付作業機6が上昇作動するように構成されている。このとき、前記植付作業機6が上昇作動される際には、前記副変速レバー19や植付準備スイッチ24により、路上走行状態に切換えられている場合には、路上用非作業高さ(h2)まで上昇作動した後に停止し、植付作業を実行する作業走行状態に切換えられている場合には、路上用非作業高さ(h2)よりも高く設定された植付時非作業高さ(h1)まで上昇作動した後に停止するように構成されている。
【0103】
次に、
図12及び
図13に基づき、前記制御部による前記滞留防止制御について説明する。
図12は、前記滞留防止制御のフローを示したイメージ図であり、
図13は、走行速度と整地ロータの高さの相関関係を示した図である。
【0104】
前記制御部は、前記滞留・巻付き防止スイッチ23がON操作されている状態で、前記整地作業機7による整地作業と前記植付作業機6による植付作業が実行される場合に、所定間隔で前記整地作業機7を自動的昇降作動させる前記滞留防止制御が実行されるように構成されている。
【0105】
具体的に説明すると、前記制御部50は、前記植付作業機6による植付作業と、前記整地作業機7による整地作業とが実行開始された(作業状態に切換えられた)場合、言い換えると、前記作業機操作カムポテンショ49により、前記植付作業機6が植付状態に切換えられたことが検出された場合には、整地作業機7による整地作業が実行された整地作業実行時間のカウントを開始し、その後、該整地作業実行時間が、予め設定された所定の第1所定時間(T1)が経過したことが検出された場合には、前記整地作業機7を整地作業高さから非整地作業高さまで自動的に上昇作動させた整地退避状態に切換える(
図12の1参照)とともに、前記シフタ78を切断作動させて前記整地作業機7の回転駆動を停止させる(
図12の2参照)ように構成されている。
【0106】
該構成によれば、前記滞留防止制御は、所定時間の整地作業を行った後に、前記整地作業機7を非作業高さに自動的上昇作動させるとともに、前記整地ロータ71の駆動を停止させたことにより、逆転方向の慣性が生じて、若干逆回転が促されることにより、前記整地ロータ71の前方に堆積した泥等の滞留物や、該整地ロータ71に巻付いた物を、ある程度自動的に除去することができる。
【0107】
次に、前記制御部50は、前記整地作業機7が非整地作業高さに上昇作動されてからの非整地作業時間のカウントを開始するとともに、前記整地ロータ71の前記エンジンから伝動される動力による逆転駆動を開始する(
図12の3参照)。
【0108】
該構成によれば、前記整地ロータ71の前方に付着している前記滞留物を積極的に落とし、該整地ロータ71に巻付いた物も落とすことにより、該整地ロータ71の整地作業の性能を回復させることができる。
【0109】
次に、前記制御部50は、上記状態で、該非整地作業時間が、前記第1所定時間よりも短く設定された所定の第2所定時間(T2)を経過したことが検出された場合には、前記整地作業機7を非整地作業高さから整地作業高さに下降作動させるとともに、前記シフタ78を接続作動させて前記整地作業機7の回転駆動を再開させるように構成されている(
図12の4参照)。
【0110】
すなわち、前記滞留防止制御によれば、整地作業をしながら植付作業を行う作業走行を実行する際に、前記整地作業機7の整地作業の性能を落とすことなく、連続して作業走行を実行することができるため、整地作業を伴う植付作業の効率が向上するものである。
【0111】
また、前記制御部50は、前記整地ロータ71が自動的に非整地作業高さに上昇作動されたことによって前記整地作業機7による整地作業が中断されている間、前記感知ワイヤモータ66を制御することにより、前記フロート39を鈍感側に切換え、言い換えると、前記フロート39の前部側を沈める方向に姿勢切換するように構成されている(
図12参照)。
【0112】
該構成によれば、前記滞留防止制御によって前記整地ロータ71が一時的に上昇作動されて整地作業が中断される期間は、前記フロート39の感度を一時的に低くすることで該フロート39による整地作用を強めることができるため、圃場面が必要以上に低下することをより効率的に防止することができる。
【0113】
ちなみに、前記制御部50は、該制御部50によってカウントされる前記整地作業実行時間(T1)と、非整地作業実行時間(T2)に代えて、回転センサ等によって整地作業を実行した第1所定距離(D1)と、前記整地作業機7を上昇作動させたまま作業走行をした第2所定距離(D2)とを検出し、前記整地作業機7を同様に制御する構成としても良い(
図12参照)。図示する例では、前記第1所定距離(D1)として20m、前記第2所定距離として1.5mが設定されている。
【0114】
また、前記滞留防止制御は、前記整地作業機7による整地作業を実行する際に、前記車速センサ94によって検出される車速が速くなるほど、前記整地ロータ71の圃場面への接地深さが段階的に高くなるように自動調整することがように構成されている(
図13参照)。
【0115】
具体的に説明すると、前記制御部50は、整地作業中に検出される車速が所定の閾値(V1<V2)を超えたことが検出された場合には、前記整地ロータ71の整地作業高さ(H1<H2<H3)を不連続(段階的)に高くなるように構成されている(
図13の1参照)。
【0116】
なお、前記制御部50は、前記車速センサ93によって検出される車速に応じて、前記整地ロータ71の整地作業高さHが連続的(線形的)に高くなるように構成しても良い(
図13の2参照)。
【0117】
該構成によれば、前記整地作業機7による整地作業中の走行速度が速い場合には、前記整地ロータ71が圃場面に没入して、該整地ロータ71前方に夾雑物が堆積し易くなるため、前記整地ロータ71の整地作業高さの昇降位置を若干高くして圃場面との接地量を少なくすることにより、必要以上に前記整地ロータ71に泥等が堆積することを予防することができる。
【符号の説明】
【0118】
3 走行機体
6 植付作業機
7 整地作業機
37 植付部
39A センターフロート(感知フロート)
41 昇降シリンダ
50 制御部
66 感知ワイヤモータ(油圧感度調整手段)
71 整地ロータ
82 ロータ昇降モータ(昇降アクチュエータ)
84 車速センサ(車速検出センサ)
95 回転センサ(走行距離検出手段)