(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】アルミニウム製組み付け体及びろう付体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 1/14 20060101AFI20240126BHJP
B23K 35/22 20060101ALI20240126BHJP
B23K 35/28 20060101ALI20240126BHJP
C22C 21/00 20060101ALI20240126BHJP
B23K 1/19 20060101ALI20240126BHJP
B23K 33/00 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
B23K1/14 A
B23K35/22 310E
B23K35/28 310B
C22C21/00 D
C22C21/00 E
C22C21/00 J
B23K1/19 F
B23K33/00 310B
(21)【出願番号】P 2020066893
(22)【出願日】2020-04-02
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 真一
(72)【発明者】
【氏名】山吉 知樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 太一
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏和
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-021159(JP,A)
【文献】特開2015-058472(JP,A)
【文献】特開2016-166702(JP,A)
【文献】特開2014-226704(JP,A)
【文献】特開平3-204169(JP,A)
【文献】特開平2-299795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00-3/08
B23K 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金からなる心材と、3.00~13.00質量%のSi及び2.00質量%以下のMg(ゼロを含まず。)を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなるろう材と、を少なくとも有するブレージングシート
(ろう材層がアルミニウム製被ろう付部材の溝の体積の40%以下の体積を与える厚さであるものを除く。)からなる部材
と、該ブレージングシートからなる部材とろう付けされるアルミニウム製被ろう付部材
との組み付け体であり、
該アルミニウム製被ろう付部材のフィレット形成範囲の表面に、2本以上の溝が設けられており、該溝の溝深さ(D1)が0.005~0.50mmであり、該溝の溝幅(W1)が0.005~0.50mmであり、該溝深さ(D1)に対する該溝幅(W1)の比(W1/D1)が10.00以下であり、隣り合う該溝同士の間隔(P1)が0.00~0.30mmであること、
を特徴とするアルミニウム製
組み付け体。
【請求項2】
アルミニウム合金からなる心材と、3.00~13.00質量%のSi及び2.00質量%以下のMg(ゼロを含まず。)を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなるろう材と、を少なくとも有するブレージングシートからなる部材
と、該ブレージングシートからなる部材とろう付けされるアルミニウム製被ろう付部材
との組み付け体であり、
該アルミニウム製被ろう付部材のフィレット形成範囲の表面に、主溝と、該主溝の溝底に設けられる2本以上の副溝と、が設けられており、該副溝の溝深さ(D2)が0.005~0.50mmであり、該副溝の溝幅(W2)が0.005~0.40mmであり、該副溝の溝深さ(D2)に対する該副溝の溝幅(W2)の比(W2/D2)が10.00以下であり、該主溝の溝深さ(D3)に対する該副溝の溝深さ(D2)の比(D2/D3)が0.50以上1.00未満であること、
を特徴とするアルミニウム製
組み付け体。
【請求項3】
前記アルミニウム製被ろう付部材を形成するアルミニウム合金が、1.50質量%以下のSi、1.00質量%以下のFe、1.20質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、8.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn、0.10質量%以下のSn、1.00質量%以下のBi、0.05質量%以下のNa、0.05質量%以下のSr及び0.05質量%以下のSbのうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1又は2記載のアルミニウム製
組み付け体。
【請求項4】
前記ブレージングシートのろう材が、更に、1.00質量%以下のBi、1.00質量%以下のFe、1.20質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、8.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn、0.10質量%以下のSn、0.05質量%以下のNa、0.05質量%以下のSr及び0.05質量%以下のSbのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載のアルミニウム製
組み付け体。
【請求項5】
前記ブレージングシートの心材が、1.50質量%以下のSi、1.00質量%以下のFe、1.20質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、8.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn、0.10質量%以下のSn、1.00質量%以下のBi、0.05質量%以下のNa、0.05質量%以下のSr及び0.05質量%以下のSbのうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載のアルミニウム製
組み付け体。
【請求項6】
ブレージングシート
(ろう材層がアルミニウム製被ろう付部材の溝の体積の40%以下の体積を与える厚さであるものを除く。)からなる部材と、アルミニウム製被ろう付部材と、を組み付けた後、フラックスを用いないで、ろう付加熱することにより、ろう付体を製造する方法であって、
該ブレージングシートのろう材が3.00~13.00質量%のSi及び2.00質量%以下のMg(ゼロを含まず。)を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、心材がアルミニウム合金からなり、
該アルミニウム製被ろう付部材のフィレット形成範囲の表面に、2本以上の溝が設けられており、該溝の溝深さ(D1)が0.005~0.50mmであり、該溝の溝幅(W1)が0.005~0.50mmであり、該溝深さ(D1)に対する該溝幅(W1)の比(W1/D1)が10.00以下であり、隣り合う該溝同士の間隔(P1)が0.00~0.30mmであること、
を特徴とするろう付体の製造方法。
【請求項7】
ブレージングシートからなる部材と、アルミニウム製被ろう付部材と、を組み付けた後、フラックスを用いないで、ろう付加熱することにより、ろう付体を製造する方法であって、
該ブレージングシートのろう材が3.00~13.00質量%のSi及び2.00質量%以下のMg(ゼロを含まず。)を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、心材がアルミニウム合金からなり、
該アルミニウム製被ろう付部材のフィレット形成範囲の表面に、主溝と、該主溝の溝底に設けられる2本以上の副溝と、が設けられており、該副溝の溝深さ(D2)が0.005~0.50mmであり、該副溝の溝幅(W2)が0.005~0.40mmであり、該副溝の溝深さ(D2)に対する該副溝の溝幅(W2)の比(W2/D2)が10.00以下であり、該主溝の溝深さ(D3)に対する該副溝の溝深さ(D2)の比(D2/D3)が0.50以上1.00未満であること、
を特徴とするろう付体の製造方法。
【請求項8】
前記アルミニウム製被ろう付部材が、1.50質量%以下のSi、1.00質量%以下のFe、1.20質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、8.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn、0.10質量%以下のSn、1.00質量%以下のBi、0.05質量%以下のNa、0.05質量%以下のSr及び0.05質量%以下のSbのうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項6又は7記載のろう付体の製造方法。
【請求項9】
前記アルミニウム合金製ブレージングシートのろう材が、更に、1.00質量%以下のBi、1.00質量%以下のFe、1.20質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、8.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn、0.10質量%以下のSn、0.05質量%以下のNa、0.05質量%以下のSr及び0.05質量%以下のSbのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項6~8いずれか1項記載のろう付体の製造方法。
【請求項10】
前記アルミニウム合金製ブレージングシートの心材が、1.50質量%以下のSi、1.00質量%以下のFe、1.20質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、8.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn、0.10質量%以下のSn、1.00質量%以下のBi、0.05質量%以下のNa、0.05質量%以下のSr及び0.05質量%以下のSbのうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項6~9いずれか1項記載のろう付体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックスを使用せずに、アルミニウム材をろう付するために用いられるアルミニウム製の被ろう付部材に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム製の熱交換器や機械用部品など、細かな接合部を多数有する製品の接合方法としてろう付接合が広く用いられている。アルミニウム材(アルミニウム合金材を含む)をろう付接合するには、表面を覆っている酸化皮膜を破壊して、溶融したろう材を母材あるいは同じく溶融したろう材に接触させることが必須である。アルミニウム材の酸化皮膜を破壊するためには、大別してフラックスを使用する方法と、真空中で加熱する方法とがあり、いずれも実用化されている。
【0003】
ろう付接合の適用範囲は多岐に及んでいる。ろう付け接合により製造される最も代表的なものとして自動車用熱交換器がある。ラジエータ、ヒータ、コンデンサ、エバポレータ等の自動車用熱交換器の殆どはアルミニウム製であり、その殆どがろう付接合によって製造されている。そのうち、非腐食性のフラックスを塗布して窒素ガス中で加熱する方法が現在では大半を占めている。
【0004】
しかし、フラックスろう付法においては、フラックス費とフラックスを塗布する工程に要する費用が嵩み、熱交換器製造コストが増大する要因になっている。熱交換器を真空ろう付によって製造する方法もあるが、真空ろう付法は加熱炉の設備費とメンテナンス費が高く、生産性やろう付の安定性にも問題のあることから、窒素ガス炉中でフラックスを使用せずにろう付接合するニーズが高まっている。
【0005】
このニーズに応えるため、特許文献1では、ろう材中にMgを含有させることで、面接合が可能になると提案している。また、特許文献2では、心材中にMgを含有させ、ろう付加熱中にろう材へMgを拡散させる手法が提案されており、クラッド材の製造時やろう付加熱中にろう材表面の酸化皮膜形成が防止され、ろう材表面の酸化皮膜破壊にMgが有効に作用することが開示されている。また、引用文献3では、ブレージングシートの心材や被ろう付部材のろう付部に溝を設けてろう付性を高める方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-215797号公報
【文献】特開2004-358519号公報
【文献】特許2014-226704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、フラックスを用いないろう付の場合、特許文献1又は2のように、ろう材中にMgを含有させたり、心材に添加させたMgをろう材中に拡散させる方法においては、ヘッダプレートとチューブの接合のように、接合する部材の隙間が大きいと、ろう付加熱中にろう材がブレージングシートの端面(心材、中間材又は犠牲陽極材)や心材表面及び被ろう付部材の被ろう付面への濡れ拡がり性が十分でなく、良好なろう付性を確保できないという問題があった。また、特許文献3のろう付部に溝を設けても、接合する部材間の隙間が大きいと、良好なろう付性を確保できないという問題があった。
【0008】
従って、本発明の目的は、フラックスを使用せずにアルミニウム材をろう付する場合において、接合する部材間の隙間が大きくても、良好なろう付性を確保することができるアルミニウム材料及びろう付体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の本発明により解決される。
すなわち、本発明(1)は、アルミニウム合金からなる心材と、3.00~13.00質量%のSi及び2.00質量%以下のMg(ゼロを含まず。)を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなるろう材と、を少なくとも有するブレージングシート(ろう材層がアルミニウム製被ろう付部材の溝の体積の40%以下の体積を与える厚さであるものを除く。)からなる部材と、該ブレージングシートからなる部材とろう付けされるアルミニウム製被ろう付部材との組み付け体であり、
該アルミニウム製被ろう付部材のフィレット形成範囲の表面に、2本以上の溝が設けられており、該溝の溝深さ(D1)が0.005~0.50mmであり、該溝の溝幅(W1)が0.005~0.50mmであり、該溝深さ(D1)に対する該溝幅(W1)の比(W1/D1)が10.00以下であり、隣り合う該溝同士の間隔(P1)が0.00~0.30mmであること、
を特徴とするアルミニウム製組み付け体を提供するものである。
【0010】
また、本発明(2)は、アルミニウム合金からなる心材と、3.00~13.00質量%のSi及び2.00質量%以下のMg(ゼロを含まず。)を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなるろう材と、を少なくとも有するブレージングシートからなる部材と、該ブレージングシートからなる部材とろう付けされるアルミニウム製被ろう付部材との組み付け体であり、
該アルミニウム製被ろう付部材のフィレット形成範囲の表面に、主溝と、該主溝の溝底に設けられる2本以上の副溝と、が設けられており、該副溝の溝深さ(D2)が0.005~0.50mmであり、該副溝の溝幅(W2)が0.005~0.40mmであり、該副溝の溝深さ(D2)に対する該副溝の溝幅(W2)の比(W2/D2)が10.00以下であり、該主溝の溝深さ(D3)に対する該副溝の溝深さ(D2)の比(D2/D3)が0.50以上1.00未満であること、
を特徴とするアルミニウム製組み付け体を提供するものである。
【0011】
また、本発明(3)は、前記アルミニウム製被ろう付部材を形成するアルミニウム合金が、1.50質量%以下のSi、1.00質量%以下のFe、1.20質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、8.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn、0.10質量%以下のSn、1.00質量%以下のBi、0.05質量%以下のNa、0.05質量%以下のSr及び0.05質量%以下のSbのうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする(1)又は(2)のアルミニウム製組み付け体を提供するものである。
【0012】
また、本発明(4)は、前記ブレージングシートのろう材が、更に、1.00質量%以下のBi、1.00質量%以下のFe、1.20質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、8.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn、0.10質量%以下のSn、0.05質量%以下のNa、0.05質量%以下のSr及び0.05質量%以下のSbのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする(1)~(3)いずれかのアルミニウム製組み付け体を提供するものである。
【0013】
また、本発明(5)は、前記ブレージングシートの心材が、1.50質量%以下のSi、1.00質量%以下のFe、1.20質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、8.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn、0.10質量%以下のSn、1.00質量%以下のBi、0.05質量%以下のNa、0.05質量%以下のSr及び0.05質量%以下のSbのうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする(1)~(4)いずれかのアルミニウム製組み付け体を提供するものである。
【0014】
また、本発明(6)は、ブレージングシート(ろう材層がアルミニウム製被ろう付部材の溝の体積の40%以下の体積を与える厚さであるものを除く。)からなる部材と、アルミニウム製被ろう付部材と、を組み付けた後、フラックスを用いないで、ろう付加熱することにより、ろう付体を製造する方法であって、
該ブレージングシートのろう材が3.00~13.00質量%のSi及び2.00質量%以下のMg(ゼロを含まず。)を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、心材がアルミニウム合金からなり、
該アルミニウム製被ろう付部材のフィレット形成範囲の表面に、2本以上の溝が設けられており、該溝の溝深さ(D1)が0.005~0.50mmであり、該溝の溝幅(W1)が0.005~0.50mmであり、該溝深さ(D1)に対する該溝幅(W1)の比(W1/D1)が10.00以下であり、隣り合う該溝同士の間隔(P1)が0.00~0.30mmであること、
を特徴とするろう付体の製造方法を提供するものである。
【0015】
また、本発明(7)は、ブレージングシートからなる部材と、アルミニウム製被ろう付部材と、を組み付けた後、フラックスを用いないで、ろう付加熱することにより、ろう付体を製造する方法であって、
該ブレージングシートのろう材が3.00~13.00質量%のSi及び2.00質量%以下のMg(ゼロを含まず。)を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、心材がアルミニウム合金からなり、
該アルミニウム製被ろう付部材のフィレット形成範囲の表面に、主溝と、該主溝の溝底に設けられる2本以上の副溝と、が設けられており、該副溝の溝深さ(D2)が0.005~0.50mmであり、該副溝の溝幅(W2)が0.005~0.40mmであり、該副溝の溝深さ(D2)に対する該副溝の溝幅(W2)の比(W2/D2)が10.00以下であり、該主溝の溝深さ(D3)に対する該副溝の溝深さ(D2)の比(D2/D3)が0.50以上1.00未満であること、
を特徴とするろう付体の製造方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明(8)は、前記アルミニウム製被ろう付部材が、1.50質量%以下のSi、1.00質量%以下のFe、1.20質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、8.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn、0.10質量%以下のSn、1.00質量%以下のBi、0.05質量%以下のNa、0.05質量%以下のSr及び0.05質量%以下のSbのうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなることを特徴とする(6)又は(7)のろう付体の製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明(9)は、前記アルミニウム合金製ブレージングシートのろう材が、更に、1.00質量%以下のBi、1.00質量%以下のFe、1.20質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、8.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn、0.10質量%以下のSn、0.05質量%以下のNa、0.05質量%以下のSr及び0.05質量%以下のSbのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする(6)~(8)いずれかのろう付体の製造方法を提供するものである。
【0018】
また、本発明(10)は、前記アルミニウム合金製ブレージングシートの心材が、1.50質量%以下のSi、1.00質量%以下のFe、1.20質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、8.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn、0.10質量%以下のSn、1.00質量%以下のBi、0.05質量%以下のNa、0.05質量%以下のSr及び0.05質量%以下のSbのうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする(6)~(9)いずれかのろう付体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、フラックスを使用せずにアルミニウム材をろう付する場合において、接合する部材間の隙間が大きくても、良好なろう付性を確保することができるアルミニウム材料及びろう付体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】被ろう付部材に形成される溝の形態例を示す模式的な断面図である。
【
図2】被ろう付部材に形成される溝の形態例を示す模式的な断面図である。
【
図3】被ろう付部材に形成される溝の形態例を示す模式的な断面図である。
【
図4】被ろう付部材に形成される溝の形態例を示す模式的な断面図である。
【
図5】被ろう付部材に形成される溝の形態例を示す模式的な断面図である。
【
図6】被ろう付部材に形成される溝の形態例を示す模式的な断面図である。
【
図7】被ろう付部材に形成される溝の形態例を示す模式的な断面図である。
【
図8】チューブ材の形態例を示す模式的な斜視図である。
【
図9】プレート材の形態例を示す模式的な斜視図である。
【
図10】
図8に示すチューブ材と
図9に示すプレート材の組み付け体を示す斜視図である。
【
図11】プレート材における溝が延びる方向を説明するための図である。
【
図12】チューブ材における溝が延びる方向を説明するための図である。
【
図14】実施例における溝の形成範囲を示す図である。
【
図15】実施例における隙間充填試験に使用する試験体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第一の形態のアルミニウム製被ろう付け部材は、アルミニウム合金からなる心材と、3.00~13.00質量%のSi及び2.00質量%以下のMg(ゼロを含まず。)を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなるろう材と、を少なくとも有するブレージングシートからなる部材とろう付けされるアルミニウム製被ろう付部材であって、
該アルミニウム製被ろう付部材のフィレット形成範囲の表面に、2本以上の溝が設けられており、該溝の溝深さ(D1)が0.005~0.50mmであり、該溝の溝幅(W1)が0.005~0.50mmであり、該溝深さ(D1)に対する該溝幅(W1)の比(W1/D1)が10.00以下であり、隣り合う該溝同士の間隔(P1)が0.00~0.30mmであること、
を特徴とするアルミニウム製被ろう付部材である。
【0022】
本発明の第二の形態のアルミニウム製被ろう付部材は、アルミニウム合金からなる心材と、3.00~13.00質量%のSi及び2.00質量%以下のMg(ゼロを含まず。)を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなるろう材と、を少なくとも有するブレージングシートからなる部材とろう付けされるアルミニウム製被ろう付部材であって、
該アルミニウム製被ろう付部材のフィレット形成範囲の表面に、主溝と、該主溝の溝底に設けられる2本以上の副溝と、が設けられており、該副溝の溝深さ(D2)が0.005~0.50mmであり、該副溝の溝幅(W2)が0.005~0.40mmであり、該副溝の溝深さ(D2)に対する該副溝の溝幅(W2)の比(W2/D2)が10.00以下であり、該主溝の溝深さ(D3)に対する該副溝の溝深さ(D2)の比(D2/D3)が0.50以上1.00未満であること、
を特徴とするアルミニウム製被ろう付部材である。
【0023】
本発明の第一の形態のアルミニウム製被ろう付部材(以下、アルミニウム製被ろう付部材(1)とも記載する。)と本発明の第二の形態のアルミニウム製被ろう付部材(以下、アルミニウム製被ろう付部材(2)とも記載する。)とでは、アルミニウム製被ろう付部材のフィレット形成範囲の表面に設けられている溝の形状が異なるものの、組成や部材の形状については同様な点があるので、同様な点については、アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)と記載して説明する。
【0024】
アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)は、純アルミニウム又はアルミニウム合金の成形体であり、フラックスを使用しないろう付において、アルミニウム合金製のブレージングシートからなる部材とろう付けされるアルミニウム製の部材であり、ろう材を有していない。以下、アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)に成形されるアルミニウム材(純アルミニウム材又はアルミニウム合金材)を、被ろう付部材(1又は2)用純アルミニウム又は被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金と記載し、それらを総称して、被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム材と記載する。
【0025】
アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)としては、ろう付加熱によりブレージングシートからなる部材とろう付される相手材として用いられるものであれば、特に制限されないが、例えば、板状の被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム材をチューブ、フィン、ヘッダ、タンク、キャップ等の形状に成形した成形体、被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム材を押出成形して作製される押出配管、押出多穴管、抽伸材、条状の板材を側端面同士が付き合わされるように曲げ加工して側端面を高周波溶接し、扁平状に変形加工した電縫管等が挙げられる。
【0026】
被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金の組成は、ろう付加熱によりブレージングシートからなる部材とろう付される相手材に用いられる組成であれば、特に制限されない。
【0027】
被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金としては、1.50質量%以下のSi、1.00質量%以下のFe、1.20質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、8.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn、0.10質量%以下のSn、1.00質量%以下のBi、0.05質量%以下のNa、0.05質量%以下のSr及び0.05質量%以下のSbのうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金が挙げられる。
【0028】
被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金は、Siを含有することができる。Siは、Fe、MnとともにAl-Mn-Si系、Al-Fe-Si系、Al-Fe-Mn-Si系の金属間化合物を形成し、分散強化として作用し、或いはマトリクス中に固溶して固溶強化により材料強度を向上させる。また、Siは、Mgと反応してMg2Si化合物の時効析出による強度向上に効果を発揮する。被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金がSiを含有する場合、被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金中のSi含有量は、1.50質量%以下、好ましくは0.05~1.50質量%、特に好ましくは0.20~1.00質量%である。Si含有量が、上記範囲を超えると、被ろう付部材の固相線温度(融点)が低くなり、ろう付時に被ろう付部材が溶融するおそれが高くなる。
【0029】
被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金は、Feを含有することができる。Feは、Mn、SiとともにAl-Fe-Mn系、Al-Fe-Si系、Al-Fe-Mn-Si系の金属間化合物を形成し、分散強化として作用し、材料強度を向上させる。被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金がFeを含有する場合、被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金中のFe含有量は、1.00質量%以下、好ましくは0.05~1.00質量%、特に好ましくは0.05~0.70質量%である。Fe含有量が、上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり、塑性加工性が低くなる。
【0030】
被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金は、Cuを含有することができる。Cuは、固溶強化により材料強度を向上させる。被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金がCuを含有する場合、被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金中のCu含有量は、1.20質量%以下、好ましくは0.05~0.80質量%である。Cu含有量が、上記範囲を超えると、被ろう付部材の固相線温度(融点)が低くなり、ろう付時に被ろう付部材が溶融するおそれが高くなる。
【0031】
被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金は、Mnを含有することができる。Mnは、Fe、SiとともにAl-Fe-Mn系、Al-Mn-Si系、Al-Fe-Mn-Si系の金属間化合物を形成し、分散強化として作用し、あるいはマトリクス中に固溶して固溶強化により材料強度を向上させる。被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金がMnを含有する場合、被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金中のMn含有量は、2.00質量%以下、好ましくは0.60~1.50質量%である。Mn含有量が、上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が生成され易く、塑性加工性が低くなる。
【0032】
被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金は、Mgを含有することができる。Mgは、ろう付加熱中に、被ろう付部材の表面を覆っているアルミニウムの酸化皮膜を破壊し、ブレージングシートから供給されるろう材と被ろう付部材表面の濡れ性を向上させる。被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金がMgを含有する場合、被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金中のMg含有量は、3.00質量%以下、好ましくは0.02~1.50質量%、特に好ましくは0.50~1.20質量%である。一方、Mg含有量が、上記範囲未満だと、被ろう付部材の酸化皮膜を破壊する効果が不十分となり、また、上記範囲を超えると、被ろう付部材表面にMgOが形成されるためろう付性が低下する。
【0033】
被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金は、Znを含有することができる。Znは、被ろう付部材の表面を覆っているアルミニウムの酸化皮膜を脆弱化させ、同時に含有するBiとMgとの相乗効果により、被ろう付部材の酸化皮膜の破壊を確実なものとし、ブレージングシートから供給されるろう材と被ろう付部材表面の濡れ性を向上させる。また、Znは、自然電位を卑にし、犠牲防食効果を発揮する。被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金がZnを含有する場合、被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金中のZn含有量は、8.00質量%以下、好ましくは0.50~5.00質量%、特に好ましくは1.50~3.50質量%である。一方、Zn含有量が、上記範囲未満だと、被ろう付部材表面の酸化皮膜の脆弱化の効果が不十分となり、また、上記範囲を超えると、被ろう付部材の固相線温度(融点)が低くなり、ろう付時に被ろう付部材の溶融が起こるおそれが高くなる。
【0034】
被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金は、Cr、Ti及びZrのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することができる。Cr、Ti及びZrは、固溶強化により強度を向上させる。被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金がCrを含有する場合、被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金中のCr含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金がTiを含有する場合、被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金中のTi含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金がZrを含有する場合、被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金中のZr含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。Cr、Ti又はZrの含有量が、上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり、塑性加工性が低くなる。
【0035】
被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金は、In及びSnのうちのいずれか1種又は2種を含有することができる。In、Snは、自然電位を卑にし、犠牲防食効果を発揮する。被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金がInを含有する場合、被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金中のIn含有量は、0.10質量%以下、好ましくは0.005~0.10質量%、特に好ましくは0.01~0.05質量%である。被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金がSnを含有する場合、被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金中のSn含有量は、0.10質量%以下、好ましくは0.005~0.10質量%、特に好ましくは0.01~0.05質量%である。In又はSnの含有量が上記範囲を超えると、熱間圧延中に局所溶融を生じて製造が困難となる。
【0036】
被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金は、Biを含有することができる。Biは、ろう付加熱中に、ブレージングシートから供給されるろう材により被ろう付部材の表層部が溶融することで、被ろう付部材の表面張力を低下させ、ブレージングシートから供給されるろう材と被ろう付部材表面の濡れ性を向上させる。被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金がBiを含有する場合、被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金中のBi含有量は、1.00質量%以下、好ましくは0.05~0.30質量%である。一方、Bi含有量が、上記範囲未満だと、被ろう付部材の表面張力を低下させる効果が不十分となり、また、上記範囲を超えると、熱間圧延の際に割れを生じて製造が困難となる。
【0037】
被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金は、Na、Sr及びSbのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することができる。Na、Sr及びSbは、ろう付中に形成されるフィレットに溶け出し、フィレットのSi粒子微細化する。被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金がNaを含有する場合、被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金中のNa含有量は、0.05質量%以下、好ましくは0.003~0.05質量%、特に好ましくは0.005~0.03質量%である。被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金がSrを含有する場合、被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金中のSr含有量は、0.05質量%以下、好ましくは0.003~0.05質量%、特に好ましくは0.005~0.03質量%である。被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金がSbを含有する場合、被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金中のSb含有量は、0.05質量%以下、好ましくは0.003~0.05質量%、特に好ましくは0.005~0.03質量%である。
【0038】
アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)は、単一の被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金で形成されていてもよいし、あるいは、表面に、1層又は2層以上のアルミニウム合金層を有する被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金で形成されていてもよい。アルミニウム合金層としては、犠牲陽極材層、皮材層、中間材層、ろう犠材層等が挙げられる。犠牲陽極材層、皮材層、中間材層、ろう犠材層等が挙げられる。犠牲陽極材層は、主にZn等を含有し、犠牲陽極効果により防食するという機能を有するアルミニウム合金層である。皮材層としては、主にSiを含有し、ろう付加熱時に溶融し、ろう材として機能を有するアルミニウム合金層が挙げられる。中間層としては、Znを添加した犠牲陽極材の機能、Mnを添加し強度を向上させる機能、Mgを添加し、ろう付加熱時にMgが表層に拡散し、酸化被膜破壊を促進させる機能等を有するクラッド層が挙げられる。アルミニウム合金層の組成は、機能に応じて適宜選択される。単一の被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金で形成されているアルミニウム製被ろう付部材(1又は2)としては、例えば、1種のアルミニウム合金を押出成形することにより製造される押出配管、押出多穴管等の押出加工材、1種のアルミニウム合金を板状に圧延することにより製造される板状のベア材が挙げられる。表面に、1層又は2層以上のアルミニウム合金層を有する被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金で形成されているアルミニウム製被ろう付部材(1又は2)としては、例えば、板状の被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金からなる心材の片面又は両面に、1層又は2層以上のアルミニウム合金層がクラッドされているクラッド材からなる被ろう付部材、被ろう付部材(1又は2)用アルミニウム合金の押出配管又は押出多穴管の表面に、1層又は2層以上のアルミニウム合金層が溶射されている被ろう付部材等が挙げられる。
【0039】
アルミニウム製被ろう付部材(1)に係るブレージングシートからなる部材とアルミニウム製被ろう付部材(2)に係るブレージングシートからなる部材は同様である。以下では、アルミニウム製被ろう付部材(1)に係るブレージングシートからなる部材及びアルミニウム製被ろう付部材(2)に係るブレージングシートからなる部材を総称して、本発明に係るブレージングシートからなる部材と記載して説明する。また、本発明に係るブレージングシートからなる部材を形成するブレージングシートを、本発明に係るブレージングシートと記載する。
【0040】
本発明に係るブレージングシートからなる部材は、本発明に係るブレージングシートの成形体であり、フラックスを使用しないろう付において、アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)とろう付けされるアルミニウム合金製のブレージングシートからなる部材である。
【0041】
本発明に係るブレージングシートからなる部材としては、本発明に係るブレージングシートをチューブ、フィン、ヘッダ、タンク材等の形状に成形した成形体、被ろう付部材用アルミニウム材を押出成形して作製される押出配管、押出多穴管、抽伸材及び条状の板材を側端面同士が付き合わされるように曲げ加工して側端面を高周波溶接し、扁平状に変形加工した電縫管等が挙げられる。
【0042】
本発明に係るブレージングシートは、少なくとも心材とろう材とを有する。本発明に係るブレージングシートとして、心材の一方の面にろう材を配した2層クラッド材、心材の両方の面にろう材を配した3層クラッド材、心材の一方の面に1層以上のアルミニウム合金層及びろう材を配した多層クラッド材、心材の両方の面に1層以上のアルミニウム合金層又はろう材を配した多層クラッド材が挙げられる。
【0043】
本発明に係るブレージングシートの心材を構成するアルミニウム合金は、固相線温度が600℃以上の既存合金であり、1000系、2000系、3000系、4000系、5000系、6000系、7000系、8000系のいずれでもよく、好ましくは1000系、3000系、5000系、6000系、7000系である。
【0044】
本発明に係るブレージングシートの心材としては、1.50質量%以下のSi、1.00質量%以下のFe、1.20質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、3.00質量%以下のMg、8.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn、0.10質量%以下のSn、1.00質量%以下のBi、0.05質量%以下のNa、0.05質量%以下のSr及び0.05質量%以下のSbのうちのいずれか1種又は2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金が挙げられる。
【0045】
本発明に係るブレージングシートの心材は、Siを含有することができる。Siは、Fe、MnとともにAl-Mn-Si系、Al-Fe-Si系、Al-Fe-Mn-Si系の金属間化合物を形成し、分散強化として作用し、或いはマトリクス中に固溶して固溶強化により材料強度を向上させる。また、Siは、Mgと反応してMg2Si化合物の時効析出による強度向上に効果を発揮する。本発明に係るブレージングシートの心材がSiを含有する場合、心材中のSi含有量は、1.50質量%以下、好ましくは0.05~1.50質量%、特に好ましくは0.20~1.00質量%である。Si含有量が、上記範囲を超えると、被ろう付部材の固相線温度(融点)が低くなり、ろう付時に被ろう付部材が溶融するおそれが高くなる。
【0046】
本発明に係るブレージングシートの心材は、Feを含有することができる。Feは、Mn、SiとともにAl-Fe-Mn系、Al-Fe-Si系、Al-Fe-Mn-Si系の金属間化合物を形成し、分散強化として作用し、材料強度を向上させる。本発明に係るブレージングシートの心材がFeを含有する場合、心材中のFe含有量は、1.00質量%以下、好ましくは0.05~1.00質量%、特に好ましくは0.05~0.70質量%である。Fe含有量が、上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり、塑性加工性が低くなる。
【0047】
本発明に係るブレージングシートの心材は、Cuを含有することができる。Cuは、固溶強化により材料強度を向上させる。本発明に係るブレージングシートの心材がCuを含有する場合、心材中のCu含有量は、1.20質量%以下、好ましくは0.05~0.80質量%である。Cu含有量が、上記範囲を超えると、被ろう付部材の固相線温度(融点)が低くなり、ろう付時に被ろう付部材が溶融するおそれが高くなる。
【0048】
本発明に係るブレージングシートの心材は、Mnを含有することができる。Mnは、Fe、SiとともにAl-Fe-Mn系、Al-Mn-Si系、Al-Fe-Mn-Si系の金属間化合物を形成し、分散強化として作用し、あるいはマトリクス中に固溶して固溶強化により材料強度を向上させる。本発明に係るブレージングシートの心材がMnを含有する場合、心材中のMn含有量は、2.00質量%以下、好ましくは0.60~1.50質量%である。Mn含有量が、上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が生成され易く、塑性加工性が低くなる。
【0049】
本発明に係るブレージングシートの心材は、Mgを含有することができる。心材に含有されるMgは、マトリクス中に固溶して固溶強化により材料強度を向上させる。また、心材に含有されるMgは、Siと反応してMg2Si化合物の時効析出による強度向上に効果を発揮するとともに、酸化物生成自由エネルギーがアルミニウムよりも低いため、ろう付加熱時にろう材中へ拡散して、ろう材の表面を覆っているアルミニウムの酸化皮膜を破壊する。心材中のMg含有量は、3.00質量%以下、好ましくは0.02~1.50質量%、特に好ましくは0.50~1.20質量%である。心材中のMg含有量が、上記範囲を超えると、心材の固相線温度(融点)が低くなり、ろう付時に心材溶融が起こるおそれが高くなる。
【0050】
本発明に係るブレージングシートの心材は、Znを含有することができる。心材がろう材や合金層によって覆われていない場合、Znは、心材の表面を覆っているアルミニウムの酸化皮膜を脆弱化させ、同時に含有するBiとMgとの相乗効果により、心材の酸化皮膜の破壊を確実なものとし、ブレージングシートから供給されるろう材と心材表面の濡れ性を向上させる。また、自然電位を卑にし、犠牲防食効果を発揮する。本発明に係るブレージングシートの心材がZnを含有する場合、心材中のZn含有量は、8.00質量%以下、好ましくは0.50~5.00質量%、特に好ましくは1.50~3.50質量%である。Zn含有量が、上記範囲を超えると、心材の固相線温度(融点)が低くなり、ろう付時に心材の溶融が起こるおそれが高くなる。
【0051】
本発明に係るブレージングシートの心材は、Cr、Ti及びZrのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することができる。Cr、Ti及びZrは、固溶強化により強度を向上させる。本発明に係るブレージングシートの心材がCrを含有する場合、心材中のCrの含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。本発明に係るブレージングシートの心材がTiを含有する場合、心材中のTiの含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。本発明に係るブレージングシートの心材がZrを含有する場合、心材中のZrの含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.10~0.20質量%である。Cr、Ti及びZr含有量が、上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり、塑性加工性が低くなる。
【0052】
本発明に係るブレージングシートの心材は、In及びSnのうちのいずれか1種又は2種を含有することができる。In、Snは、自然電位を卑にし、犠牲防食効果を発揮する。本発明に係るブレージングシートの心材がInを含有する場合、心材中のInの含有量は、0.10質量%以下、好ましくは0.005~0.10質量%、特に好ましくは0.01~0.05質量%である。本発明に係るブレージングシートの心材がSnを含有する場合、心材中のSnの含有量は、0.10質量%以下、好ましくは0.005~0.10質量%、特に好ましくは0.01~0.05質量%である。In及びSnの含有量が上記範囲を超えると、熱間圧延中に局所溶融を生じて製造が困難となる。
【0053】
本発明に係るブレージングシートの心材は、Biを含有することができる。Biは、ろう付加熱中に、心材が溶融することでろう材にBiを供給し、溶融したろうの表面張力を低下させ、ろう付性を向上させる。本発明に係るブレージングシートの心材がBiを含有する場合、心材中のBi含有量は、1.00質量%以下、好ましくは0.05~0.30質量%である。Bi含有量が、上記範囲を超えると、熱間圧延の際に割れを生じて製造が困難となる。
【0054】
本発明に係るブレージングシートの心材は、Na、Sr及びSbのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することができる。Na、Sr及びSbは、ろう付加熱中に心材が溶融することでろう材にNa、Sr及びSbを供給し、ろうが凝固する際のSi粒子を微細化する。本発明に係るブレージングシートの心材がNaを含有する場合、心材中のNa含有量は、0.05質量%以下、好ましくは0.003~0.05質量%、特に好ましくは0.005~0.03質量%である。本発明に係るブレージングシートの心材がSrを含有する場合、心材中のSr含有量は、0.05質量%以下、好ましくは0.003~0.05質量%、特に好ましくは0.005~0.03質量%である。本発明に係るブレージングシートの心材がSbを含有する場合、心材中のSb含有量は、0.05質量%以下、好ましくは0.003~0.05質量%、特に好ましくは0.005~0.03質量%である。
【0055】
本発明に係るブレージングシートのろう材は、3.00~13.00質量%のSi及び2.00質量%以下のMg(ゼロを含まず。)を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。
【0056】
本発明に係るブレージングシートのろう材中のSi含有量は、3.00~13.00質量%である。ろう材中のSi含有量が、上記範囲未満だと、ろう付性が十分でなく、また、上記範囲を超えると、鋳造時に粗大な初晶Siが形成され易くなり、材料製造時に割れが発生し易くなり、塑性加工性が低くなる。
【0057】
本発明に係るブレージングシートのろう材中のMg含有量は、2.00質量%以下(ゼロを含まず。)、好ましくは1.00質量%以下(ゼロを含まず。)である。ろう材中のMg含有量が、上記範囲を超えると、ろう付加熱中のろう材が溶融する前に、ろう材表面にMgOが形成されるためろう付性が低くなる。また、本発明に係るブレージングシートのろう材中のMg含有量は、好ましくは0.01質量%以上である。
【0058】
本発明に係るブレージングシートのろう材は、更に、1.00質量%以下のBi、1.00質量%以下のFe、1.20質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、8.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn、0.10質量%以下のSn、0.05質量%以下のNa、0.05質量%以下のSr及び0.05質量%以下のSbのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することができる。
【0059】
本発明に係るブレージングシートのろう材は、更に、Biを含有することができる。ろう材に含有されるBiは、ろう付加熱時に心材からろう材へ供給されるMgによる酸化皮膜の破壊を促進し、ろう付性を向上させる。本発明に係るブレージングシートのろう材がBiを含有する場合、ろう材中のBi含有量は、1.00質量%以下、好ましくは0.004~0.50質量%である。ろう材中のBi含有量が上記範囲を超えると、熱間圧延の際に割れを生じて製造が困難となる。
【0060】
本発明に係るブレージングシートのろう材は、更に、1.00質量%以下、好ましくは0.05~0.50質量%のFeを含有していてもよい。
【0061】
本発明に係るブレージングシートのろう材は、更に、Zn及びCuのうちのいずれか1種又は2種を含有することができる。ろう材中のZn及びCuは、ろう材の融点を低下させ、一般的なろう付温度である600℃よりも低い温度でのろう付を可能とする。本発明に係るブレージングシートのろう材がZnを含有する場合、ろう材中のZn含有量は、8.00質量%以下、好ましくは0.50~8.00質量%、特に好ましくは2.00~4.00質量%である。本発明に係るブレージングシートのろう材がCuを含有する場合、ろう材中のCu含有量は、4.00質量%以下、好ましくは1.00~3.00質量%である。
【0062】
本発明に係るブレージングシートのろう材は、更に、Mn、Cr、Ti及びZrのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することができる。ろう材中のMn、Cr、Ti、Zrは、ろう付け後のろう材の結晶粒径を粗大化し、腐食環境下でのろう材の脱粒を抑制することで耐食性を高める。本発明に係るブレージングシートのろう材がMnを含有する場合、ろう材中のMn含有量は、2.00質量%以下、好ましくは0.10~0.60質量%である。本発明に係るブレージングシートのろう材がCrを含有する場合、ろう材中のCr含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.05~0.10質量%である。本発明に係るブレージングシートのろう材がTiを含有する場合、ろう材中のTi含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.05~0.10質量%である。本発明に係るブレージングシートのろう材がZrを含有する場合、ろう材中のZr含有量は、0.30質量%以下、好ましくは0.05~0.10質量%である。ろう材中のMn、Cr、Ti又はZrの含有量が上記範囲を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり、塑性加工性が低くなる。
【0063】
本発明に係るブレージングシートのろう材は、更に、In及びSnのうちのいずれか1種又は2種を含有することができる。ろう材中のIn、Snは、材料の自然電位を卑にし、犠牲防食効果を発揮する。本発明に係るブレージングシートのろう材がInを含有する場合、ろう材中のIn含有量は、0.10質量%以下、好ましくは0.005~0.10質量%、特に好ましくは0.01~0.05質量%である。本発明に係るブレージングシートのろう材がSnを含有する場合、ろう材中のSn含有量は、0.10質量%以下、好ましくは0.005~0.10質量%、特に好ましくは0.01~0.05質量%である。
【0064】
本発明に係るブレージングシートのろう材は、更に、Na、Sr及びSbのうちのいずれか1種又は2種以上を含有することができる。Na、Sr又はSbは、Si粒子微細化のために、ろう材に添加される。本発明に係るブレージングシートのろう材がNaを含有する場合、ろう材中のNa含有量は、0.05質量%以下、好ましくは0.003~0.05質量%、特に好ましくは0.005~0.03質量%である。本発明に係るブレージングシートのろう材がSrを含有する場合、ろう材中のSr含有量は、0.05質量%以下、好ましくは0.003~0.05質量%、特に好ましくは0.005~0.03質量%である。本発明に係るブレージングシートのろう材がSbを含有する場合、ろう材中のSb含有量は、0.05質量%以下、好ましくは0.003~0.05質量%、特に好ましくは0.005~0.03質量%である。
【0065】
アルミニウム製被ろう付部材(1)の表面に形成されている溝(2本以上の溝)と、アルミニウム製被ろう付部材(2)の表面に形成されている溝(溝底に2本以上の副溝を有する主溝)とは、異なるので、それぞれ、別々に説明する。
【0066】
アルミニウム製被ろう付部材(1)では、アルミニウム製被ろう付部材(1)のフィレット形成範囲の表面に、2本以上の溝が設けられており、溝の溝深さ(D1)が0.005~0.50mmであり、溝の溝幅(W1)が0.005~0.50mmであり、溝深さ(D1)に対する溝幅(W1)の比(W1/D1)が10.00以下であり、隣り合う溝同士の間隔(P1)が0.00~0.30mmである。このような溝を継手のフィレット形成範囲に設けることにより、溝にろうが流入した後、毛細管現象により、ろうが溝に沿って流動し、フィレットが途中で途切れることなく連続的に形成され、フィレット切れのない健全なろう付継手が形成される。
【0067】
アルミニウム製被ろう付部材(1)の表面には、2本以上の溝が設けられている。アルミニウム製被ろう付け部材(1)のフィレット形成範囲の表面に設けられている溝の数は、2本以上、好ましくは4本以上、特に好ましくは8本以上である。アルミニウム製被ろう付部材(1)のフィレット形成範囲の表面に設けられている溝の数が上記範囲未満だと、溝に沿って流れるろう量が不足し、健全なろう付継手が形成されない。
【0068】
アルミニウム製被ろう付部材(1)の表面に設けられている溝の溝深さ(D1)は、いずれの溝においても、0.005~0.50mm、好ましくは0.005~0.30mm、特に好ましくは0.005~0.10mmである。溝深さ(D1)が上記範囲にあることにより、ろう付け加熱中のろう材の被ろう付部材への濡れ拡がり性が高くなるので、良好なろう付け性を確保することができる。一方、溝深さ(D1)が、上記範囲未満だと、毛細管現象が十分作用せず、健全なろう付継手が形成されず、また、上記範囲を超えると、溶融したろうが溝を埋めるために消費され、ろう量が不足することとなり、良好なろう付け性を確保することができない。
【0069】
アルミニウム製被ろう付部材(1)の表面に設けられている溝の溝幅(W1)は、いずれの溝においても、0.005~0.50mm、好ましくは0.005~0.40mm、特に好ましくは0.005~0.30mmである。溝幅(W1)が上記範囲にあることにより、ろう付け加熱中のろう材の被ろう付部材への濡れ拡がり性が高くなるので、良好なろう付け性を確保することができる。一方、溝幅(W1)が、上記範囲未満だと、溶融したろうの流路が狭いため健全なろう付継手が形成されず、良好なろう付け性を確保することができず、また、上記範囲を超えると、溶融したろうが溝を埋めるために消費され、ろう量不足となり、良好なろう付け性を確保することができない。
【0070】
アルミニウム製被ろう付部材(1)において、溝深さ(D1)に対する溝幅(W)の比(W1/D1)は、いずれの溝においても、10.00以下、好ましくは0.20~5.00、特に好ましくは0.50~5.00である。W1/D1が上記範囲にあることにより、ろう付け加熱中のろう材の被ろう付部材への濡れ拡がり性が高くなるので、良好なろう付け性を確保することができる。一方、W1/D1が、上記範囲を超えると、毛細管現象が十分作用せず、健全なろう付継手が形成されない。
【0071】
アルミニウム製被ろう付部材(1)において、隣り合う溝同士の間隔(P1)は、いずれも0.00~0.30mm、好ましくは0.00~0.20mm、特に好ましくは0.00~0.10mmである。隣り合う溝同士の間隔(P1)が、上記範囲にあることにより、ろう付け加熱中のろう材の被ろう付部材への濡れ拡がり性が高くなるので、良好なろう付け性を確保することができる。一方、隣り合う溝同士の間隔(P1)が、上記範囲を超えると、溝間のろうが互いに接触できなくなり、フィレットが分断され、健全なろう付継手が形成されない。
【0072】
アルミニウム製被ろう付部材(1)において、溝の溝深さ(D1)とは、溝の延長方向に直交する方向(幅方向)に切った断面において、溝の最深部と溝の非形成部分の延長線との距離を指す。また、溝の溝幅(W1)とは、溝の延長方向に直交する方向(幅方向)に切った断面において、溝の幅方向の両側の溝面の最高部間の距離を指す。隣り合う溝同士の間隔(P1)とは、溝の延長方向に直交する方向(幅方向)に切った断面において、一の溝の溝面の最高部と隣りの溝の溝面の最高部間の距離を指す。
【0073】
アルミニウム製被ろう付部材(1)では、溝を幅方向で切ったときの断面形状としては、略三角形、略四角形が挙げられ、溝面の形状としては、略V字形状が挙げられる。また、アルミニウム製被ろう付部材(1)では、隣り合う溝間に溝の非形成部分が存在していてもよいし、あるいは、隣り合う溝間に溝の非形成部分が存在していなくてもよい。また、アルミニウム製被ろう付部材(1)では、溝の溝面の最高部の位置が、溝の非形成部分の延長線の位置と同じ高さであってもよいし、あるいは、溝の溝面の最高部の位置が、溝の非形成部分の延長線の位置より高くてもよい。また、アルミニウム製被ろう付部材(1)では、一の溝の溝面の最高部と隣りの溝の溝面の最高部が、溝の非形成部分の延長線の位置で重なっていてもよい。また、アルミニウム製被ろう付部材(1)では、溝の溝面の上部には、最高部の位置が、溝の非形成部分の延長線の位置より高くなる盛り上がり部が形成されていてもよい。
【0074】
図1~
図5を参照して、アルミニウム製被ろう付部材(1)に形成されている溝について詳細に説明する。
図1~
図5は、アルミニウム製被ろう付部材(1)に形成されている溝の形態例の模式的な断面図である。
図1中、溝2の溝深さ(D1)とは、溝2の最深部7と溝の非形成部分3の延長線8との距離を指す。溝2の溝幅(W1)とは、溝2の幅方向の両側の溝面5の最高部6間の距離を指す。隣り合う溝同士の間隔(P1)とは、一の溝2の溝面5の最高部6と隣りの溝2の溝面5の最高部6間の距離を指す。
【0075】
図1に示す形態例では、溝2を幅方向で切ったときの断面形状は略三角形であり、溝2の溝面5の形状が略V字である。また、
図1に示す形態例では、隣り合う溝間に、溝の非形成部分3が存在している。また、
図1に示す形態例では、溝2の溝面5の最高部6の位置は、溝の非形成部分3の延長線8の位置と同じ高さである。
図1に示す形態例では、溝2の溝面5の最高部6の位置は、溝の非形成部分3の延長線8の位置より高くてもよい。
【0076】
図2に示す形態例では、溝2を幅方向で切ったときの断面形状は略三角形であり、溝2の溝面5の形状が略V字である。また、
図2に示す形態例では、一の溝2の溝面5の最高部6と隣りの溝2の溝面5の最高部6が、溝の非形成部分3の延長線8の位置で重なっている。そのため、
図2に示す形態例では、隣り合う溝間に、溝の非形成部分3が存在せず、隣り合う溝同士の間隔(P1)は0.0mmである。また、
図2に示す形態例では、溝2の溝面5の最高部6の位置は、溝の非形成部分3の延長線8の位置と同じ高さである。
図2に示す形態例では、溝2の溝面5の最高部6の位置は、溝の非形成部分3の延長線8の位置より高くてもよい。なお、
図2に示す形態例では、溝2の最深部7と溝の非形成部分3の延長線8との距離が、溝の溝深さ(D1)であり、溝2の幅方向の両側の溝面5の最高部6間の距離が、溝2の溝幅(W1)である。
【0077】
図3に示す形態例では、溝2を幅方向で切ったときの断面形状は略三角形であり、溝2の溝面5の形状が略V字である。また、
図3に示す形態例では、一の溝2の溝面5の最高部6と隣りの溝2の溝面5の最高部6が、溝の非形成部分3の延長線8の位置で重なっている。そのため、
図3に示す形態例では、隣り合う溝間に、溝の非形成部分3が存在せず、隣り合う溝同士の間隔(P1)は0.0mmである。また、
図3に示す形態例では、幅方向の両端の溝の幅方向の外側の上部には、最高部6の位置が、溝の非形成部分3の延長線8の位置より高くなる盛り上がり部9が形成されている。よって、
図3に示す形態例では、幅方向の両端の溝以外は、溝2の溝面5の最高部6の位置は、溝の非形成部分3の延長線8の位置と同じ高さであり、幅方向の両端の溝の幅方向の外側の溝面5の最高部6の位置は、溝の非形成部分3の延長線8の位置より高い。なお、
図3に示す形態例では、溝2の最深部7と溝の非形成部分3の延長線8との距離が、溝の溝深さ(D1)であり、溝2の幅方向の両側の溝面5の最高部6間の距離が、溝2の溝幅(W1)である。
【0078】
図4及び
図5に示す形態例では、溝2を幅方向で切ったときの断面形状は略四角形である。なお、
図4及び
図5に示す形態例では、
図4又は
図5中に示す符号D1が溝の溝深さであり、符号W1が溝の溝幅であり、符号P1が隣り合う溝同士の間隔である。
【0079】
アルミニウム製被ろう付部材(2)では、アルミニウム製被ろう付部材のフィレット形成範囲の表面に、主溝と、主溝の溝底に設けられる2本以上の副溝と、が設けられており、副溝の溝深さ(D2)が0.005~0.50mmであり、副溝の溝幅(W2)が0.005~0.40mmであり、副溝の溝深さ(D2)に対する副溝の溝幅(W2)の比(W2/D2)が10.00以下であり、主溝の溝深さ(D3)に対する副溝の溝深さ(D2)の比(D2/D3)が0.50以上1.00未満である。このような溝を継手のフィレット形成範囲に設けることにより、溝にろうが流入した後、毛細管現象により、ろうが溝に沿って流動し、フィレットが途中で途切れることなく連続的に形成され、フィレット切れのない健全なろう付継手が形成される。
【0080】
アルミニウム製被ろう付部材(2)の表面には、溝底に2本以上の副溝が形成されている主溝が設けられている。アルミニウム製被ろう付部材(2)において、主溝の溝底に設けられている副溝の数は、2本以上、好ましくは4本以上、特に好ましくは8本以上である。アルミニウム製被ろう付部材(2)において、主溝の溝底に設けられている副溝の数が上記範囲未満だと、副溝に沿って流れるろう量が不足し、健全なろう付継手が形成されない。
【0081】
アルミニウム製被ろう付部材(2)において、主溝の溝底に形成されている副溝の溝深さ(D2)は、いずれの副溝においても、0.005~0.50mm、好ましくは0.005~0.40mm、特に好ましくは0.005~0.20mmである。副溝の溝深さ(D2)が上記範囲にあることにより、ろう付け加熱中のろう材の被ろう付部材への濡れ拡がり性が高くなるので、良好なろう付け性を確保することができる。一方、副溝の溝深さ(D2)が、上記範囲未満だと、毛細管現象が十分作用せず、健全なろう付継手が形成されず、また、上記範囲を超えると、溝を埋めるために溶融ろうが消費され、ろう材不足となり、良好なろう付け性を確保することができない。
【0082】
アルミニウム製被ろう付部材(2)において、主溝の溝底に設けられている副溝の溝幅(W2)は、いずれの溝においても、0.005~0.40mm、好ましくは0.005~0.35mm、特に好ましくは0.005~0.30mmである。副溝の溝幅(W2)が上記範囲にあることにより、ろう付け加熱中のろう材の被ろう付部材への濡れ拡がり性が高くなるので、良好なろう付け性を確保することができる。一方、副溝の溝幅(W2)が、上記範囲未満だと、溶融したろうの流路が狭いため健全なろう付継手が形成されず、良好なろう付け性を確保することができず、また、上記範囲を超えると、溶融したろうが溝を埋めるために消費され、ろう量不足となり、良好なろう付け性を確保することができない。
【0083】
アルミニウム製被ろう付部材(2)において、副溝の溝深さ(D2)に対する副溝の溝幅(W2)の比(W2/D2)は、いずれの溝においても、10.00以下、好ましくは0.20~5.00、特に好ましくは0.50~5.00である。W2/D2が上記範囲にあることにより、ろう付け加熱中のろう材の被ろう付部材への濡れ拡がり性が高くなるので、良好なろう付け性を確保することができる。一方、W2/D2が、上記範囲を超えると、毛細管現象が十分作用せず、健全なろう付継手が形成されない。
【0084】
アルミニウム製被ろう付部材(2)において、主溝の溝深さ(D3)に対する副溝の溝深さ(D2)の比(D2/D3)は、0.50以上1.00未満、好ましくは0.60~0.95、特に好ましくは0.70~0.95である。D2/D3が上記範囲にあることにより、ろう付け加熱中のろう材の被ろう付部材への濡れ拡がり性が高くなるので、良好なろう付け性を確保することができる。一方、D2/D3が、上記範囲を超えると、毛細管現象が十分作用せず、健全なろう付継手が形成されない。
【0085】
アルミニウム製被ろう付部材(2)においては、アルミニウム製被ろう付部材のフィレット形成位置の表面に形成されている主溝の溝幅(W3)は、副溝の数、副溝の溝幅(W2)、隣り合う副溝同士の間隔等に応じて、適宜選択される。
【0086】
アルミニウム製被ろう付部材(2)において、副溝の溝深さ(D2)とは、溝の延長方向に直交する方向(幅方向)に切った断面において、副溝の最深部と副溝の溝面の最高部を結んだ線との距離を指す。副溝の溝幅(W2)とは、溝の延長方向に直交する方向(幅方向)に切った断面において、副溝の幅方向の両側の溝面の最高部間の距離を指す。主溝の溝深さ(D3)とは、溝の延長方向に直交する方向(幅方向)に切った断面において、副溝の最深部と溝の非形成部分の延長線との距離を指す。主溝の溝幅(W3)とは、溝の延長方向に直交する方向(幅方向)に切った断面において、主溝の溝面の最高部間の距離を指す。
【0087】
アルミニウム製被ろう付部材(2)では、主溝及び副溝を幅方向で切ったときの副溝の断面形状としては、略三角形、略四角形が挙げられ、副溝の溝面の形状としては、略V字形状が挙げられる。また、アルミニウム製被ろう付部材(2)では、隣り合う副溝間に平坦部分が存在していてもよいし、あるいは、隣り合う副溝間に平坦部分が存在していなくてもよい。また、アルミニウム製被ろう付部材(2)では、主溝の溝面の上部には、最高部の位置が、溝の非形成部分の延長線の位置より高くなる盛り上がり部が形成されていてもよい。
【0088】
図6~
図7を参照して、アルミニウム製被ろう付部材(2)に形成されている主溝及び副溝について詳細に説明する。
図6~
図7は、アルミニウム製被ろう付部材(2)に形成されている主溝及び副溝の形態例の模式的な断面図である。
図6中、副溝12の溝深さ(D2)とは、副溝12の最深部17と副溝12の溝面15の最高部16を結んだ線18との距離を指す。副溝12の溝幅(W2)とは、副溝2の幅方向の両側の溝面15の最高部16間の距離を指す。主溝11の溝深さ(D3)とは、副溝12の最深部17と溝の非形成部分13の延長線23との距離を指す。主溝11の溝幅(W3)とは、主溝11の溝面21の最高部22間の距離を指す。
【0089】
図6に示す形態例では、主溝11の溝底に副溝12が設けられており、主溝11及び副溝12を幅方向で切ったときの副溝12の断面形状は略三角形であり、副溝12の溝面15の形状が略V字である。また、
図6に示す形態例では、一の副溝12の溝面15の最高部16と隣りの副溝12の溝面15の最高部16が、副溝12の溝面15の最高部16を結んだ線18の位置で重なっている。そのため、
図6に示す形態例では、隣り合う副溝間に、副溝の平坦部が存在せず、隣り合う副溝同士の間隔は0.0mmである。なお、
図6に示す形態例では、副溝12の最深部17と副溝12の溝面15の最高部16を結んだ線18との距離が、副溝の溝深さ(D2)であり、副溝12の幅方向の両側の溝面15の最高部16間の距離が、副溝12の溝幅(W2)である。また、副溝12の最深部17と溝の非形成部分13の延長線23との距離が、主溝の溝深さ(D3)であり、主溝11の両側の溝面21の最高部22間の距離が、主溝11の溝幅(W3)である。
【0090】
図7に示す形態例では、主溝11の溝底に副溝12が設けられており、主溝11及び副溝12を幅方向で切ったときの副溝12の断面形状は略三角形であり、副溝12の溝面15の形状が略V字である。また、
図7に示す形態例では、一の副溝12の溝面15の最高部16と隣りの副溝12の溝面15の最高部16が、副溝12の溝面15の最高部16を結んだ線18の位置で重なっている。そのため、
図7に示す形態例では、隣り合う副溝間に、副溝の平坦部が存在せず、隣り合う副溝同士の間隔は0.0mmである。また、
図7に示す形態例では、主溝11の溝面21の上部には、最高部22の高さが、溝の非形成部分13の位置より高くなる盛り上がり部19が形成されている。なお、
図7に示す形態例では、副溝12の最深部17と副溝12の溝面15の最高部16を結んだ線18との距離が、副溝の溝深さ(D2)であり、副溝12の幅方向の両側の溝面15の最高部16間の距離が、副溝12の溝幅(W2)である。また、副溝12の最深部17と溝の非形成部分13の延長線23との距離が、主溝の溝深さ(D3)であり、主溝11の両側の溝面21の最高部22間の距離が、主溝11の溝幅(W3)である。
【0091】
アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)では、溝は、アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)の表面のうち、フィレット形成範囲に設けられる。なお、以下では、アルミニウム製被ろう付部材(1)において、溝が設けられる位置とは、2本以上の溝が設けられる位置のことを言い、また、アルミニウム製被ろう付部材(2)において、溝が設けられる位置とは、主溝及び副溝が設けられる位置のことを言う。
【0092】
アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)の表面の、溝が設けられる位置について詳細に説明する。
図8は、組み合わされる前のチューブ材の形態例を示す模式的な斜視図である。
図9は、組み合わされる前のプレート材の形態例を示す模式的な斜視図であり、(A)は面421側から見た図であり、(B)は面422側から見た図である。
図10は、組み合わされた後のチューブ材とプレート材の形態例を示す模式的な斜視図である。チューブの形状に成形されたチューブ材31が、プレート材32の挿通口38に挿通されることにより、ろう付前の組み付け体30が組み立てられる。そして、組み立て体30がろう付加熱されることにより、接合部位にフィレットが形成され、ろう付体(図示せず。)が製造される。
【0093】
(1)チューブ材1がアルミニウム製被ろう付部材(1又は2)であり、且つ、プレート材2が本発明に係るブレージングシートかなる部材である場合、チューブ材1のうち、符号36で示す部分が、ブレージングシートからなる部材と対向する部分であり、符号35及び符号37で示す部分が、ブレージングシートからなる部材と対向しない部分である。そして、部分35、部分36及び部分37を合わせた範囲が、アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)のフィレット形成範囲である。
【0094】
(1)の場合、フィレット形成範囲のどこかに、溝が形成されていればよい。つまり、部分35、部分36及び部分37のいずれか一つの部分に、溝が形成されていればよい。少なくとも部分36に溝が形成されていることが好ましく、部分35、部分36及び部分37のいずれの部分にも溝が形成されていることが特に好ましい。
【0095】
(2)プレート材1がアルミニウム製被ろう付部材(1又は2)であり、且つ、チューブ材2が本発明に係るブレージングシートかなる部材である場合、プレート材2のうち、符号39で示す部分が、ブレージングシートからなる部材と対向する部分であり、符号40及び符号41で示す部分が、ブレージングシートからなる部材と対向しない部分である。そして、部分39、部分40及び部分41を合わせた範囲が、アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)のフィレット形成範囲である。
【0096】
(2)の場合、フィレット形成範囲のどこかに、溝が形成されていればよい。つまり、部分39、部分40及び部分41のいずれか一つの部分に、溝が形成されていればよい。少なくとも部分39に溝が形成されていることが好ましく、部分39、部分40及び部分41のいずれの部分にも溝が形成されていることが特に好ましい。
【0097】
アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)において、溝が延びる方向は、形成されるフィレットの長手方向である。形成されるフィレットの長手方向とは、形成されるフィレットの幅方向に直交する方向を指す。
【0098】
アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)において、溝が延びる方向について詳細に説明する。
図11は、
図9に示すプレート材について、溝が延びる方向を示す図であり、(A)は面421(422)側を見た図であり、(B)は(A)中のX-X線断面図である。
図12は、
図8に示すチューブ材について、溝が延びる方向を示す図である。
図11では、溝が延びる方向は、部分40(41)では、符号421(422)で示す方向であり、部分39では、符号42で示す方向である。そして、
図11では、フィレットは、プレート材とチューブ材との接合部分を囲むように形成されるので、溝が延びる方向421(422)、42は、形成されるフィレットの長手方向である。つまり、
図11では、溝が延びる方向421(422)、42は、形成されるフィレットの幅方向44に直交する方向である。
図12では、溝が延びる方向は、部分35では符号431で示す方向であり、部分36では、符号432で示す方向であり、部分37では符号433で示す方向である。そして、
図12では、フィレットは、
図12では、プレート材とチューブ材との接合部分を囲むように形成されるので、溝が延びる方向431、432、433は、形成されるフィレットの長手方向である。つまり、
図12では、溝が延びる方向431、432、433は、形成されるフィレットの幅方向44に直交する方向である。
【0099】
アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)において、溝は、一端から他端まで連続していてもよいし、あるいは、本発明の効果を損なわない程度で、途中に途切れ部分があってもよい。
図13(A)に示す形態例の溝45は、一端から他端まで連続した溝である。また、
図13(B)に示す形態例の溝46には、途中に途切れ部分47が存在する。
【0100】
アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)が、板状材がチューブ形状に成形されたチューブ材の場合、板厚は、0.15~0.50mm程度であり、チューブ材がクラッド材の場合の皮材のクラッド率は、通常5~30%程度である。また、アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)が、板状材がプレートの形状に成形されたプレート材の場合、板厚は、0.80~5.00mm程度であり、プレート材がクラッド材の場合の皮材のクラッド率は、5~30%程度である。
【0101】
アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)が、冷媒通路用押出配管の場合、配管の外径は6.0~20.0mm程度であり、クラッド配管に用いられる場合の皮材のクラッド率は、通常3~30%程度である。また、アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)が、冷媒通路用押出多穴管の場合、多穴管の幅は10.0~100mm程度であり、厚みは1.0~3.0mm程度であり、壁厚みは0.10mm~0.30mm程度であり、多穴管の穴数は2~30個程度である。
【0102】
アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)の製造方法について説明する。アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)が、板状材のベア材の成形体の場合、先ず、ベア材に用いる所望の成分組成を有するアルミニウム合金を、また、板状材のクラッド材の成形体の場合は、心材及び心材にクラッドされるクラッド層に用いる所望の成分組成を有するアルミニウム合金を、それぞれ溶解、鋳造することによって、ベア材用鋳塊、又は心材用鋳塊及びクラッド層用鋳塊を作製する。これら溶解、鋳造の方法は、特に限定されるものではなく通常の方法が用いられる。
【0103】
次いで、上記鋳塊を、必要に応じて、均質化処理する。均質化処理の好ましい温度範囲は、400~630℃であり、均質化処理時間は2~20時間である。
【0104】
次いで、ベア材用鋳塊及び心材用鋳塊を面削し、クラッド層用鋳塊を面削し、更に、熱間圧延して所定の厚さする。クラッド材については、心材とクラッド層用鋳塊を所定の順に積層した積層物とする。
【0105】
熱間加工では、ベア材の場合は所定のベア材用鋳塊を、クラッド材の場合は所定の順に心材用鋳塊及びクラッド層用鋳塊を積層した積層物を、400~550℃で熱間圧延する。熱間圧延では、例えば、2.0~8.0mmの板厚となるまで圧延を行う。
【0106】
冷間加工では、熱間加工を行い得られる熱間圧延物を、冷間で圧延する。冷間加工では、冷間での圧延を、複数回のパスで行う。
【0107】
冷間加工において、冷間での圧延のパス間に、中間焼鈍を行う場合、中間焼鈍の温度は、200~500℃、好ましくは250~400℃である。中間焼鈍では、中間焼鈍温度まで昇温し、中間焼鈍温度に達した後、速やかに冷却を開始してもよいし、あるいは、中間焼鈍温度に達した後、中間焼鈍温度で一定時間保持後、冷却を開始してもよい。中間焼鈍温度での保持時間は、0~10時間、好ましくは1~5時間である。
【0108】
冷間圧延後、冷間加工を行い得られる冷間圧延物を、300~500℃、好ましくは350~450℃で焼鈍する最終焼鈍を行う。最終焼鈍では、最終焼鈍温度まで昇温し、最終焼鈍温度に達した後、速やかに冷却を開始してもよいし、あるいは、最終焼鈍温度に達した後、最終焼鈍温度で一定時間保持後、冷却を開始してもよい。最終焼鈍温度での保持時間は、0~10時間、好ましくは1~5時間である。なお、チューブ材の場合は、この最終焼鈍を施してもよいし、施さなくてもよい。
【0109】
このようにして、板状のベア材又はクラッド材を得る。
【0110】
板状のベア材又はクラッド材については、ろう付前に、ベア材又はクラッド材をエッチングすることにより、ろう付性がより高まる。酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸及びフッ酸のうち1種または2種以上を含む水溶液を使用することができる。好ましいエッチング量範囲は0.05~2.0g/m2である。
【0111】
このようにして得られた板状のベア材又はクラッド材の所定の位置に溝を形成させた後、所定のアルミニウム製被ろう付部材(1又は2)の形状に成形するか、又は所定のアルミニウム製被ろう付部材(1又は2)の形状に成形するときに同時に、所定の位置に溝を形成させることにより、アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)を得る。なお、フレット形成範囲に所定の溝が設けられているのであれば、溝がフレット形成範囲を超えて設けられていてもよい。
【0112】
本発明において、アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)の所定の位置に溝を設ける方法は特に制限されず、例えば、公知方法が適宜用いられる。所定の位置に溝を設ける方法としては、例えば、プレート材をプレス成型する際に、プレート材をプレス金型で圧縮して、プレート材の表面の所定の位置に溝を設ける方法や、プレス後に刃具を摺動させて、プレート材の表面の所定の位置に溝を設ける方法が挙げられる。また、所定の位置に溝を設ける方法としては、例えば、プレート材にチューブ材を差し込む穴を設けるピアス加工の際に、ピアス金型の側面に凸部を設けて、プレート材の穴の切断面(
図9に示す形態だと、ブレージングシートと対向する部分39)に溝を設ける方法や、ピアス加工後に刃具をチューブ長手方向や周方向に摺動させて、溝を設ける方法が挙げられる。また、所定の位置に溝を設ける方法としては、例えば、チューブ材を成形する際に、チューブ進行方向に沿って刃具を押し当てることにより、チューブ材の表面の所定の位置に溝を設ける方法や、チューブ材とプレート材を組み付ける際に、刃具をチューブ材に摺動させることにより、チューブ材の表面の所定の位置に溝を設ける方法が挙げられる。
【0113】
アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)が、押出配管材の場合、アルミニウム合金の溶湯を常法に従って造塊し、所定の組成を有する鋳塊(ビレット)を得る。次いで、得られた鋳塊(ビレット)を均質化処理した後、押出に際してビレットを再加熱して、押出後の管の肉厚が特定寸法となるようにポートホール押出を行い、押出配管材を作製する。均質化処理の好ましい温度範囲は、400~630℃であり、均質化処理時間は2~20時間である。好ましい押出温度範囲は、400℃~550℃である。好ましい押出比は10~200である。押出後の管の肉厚の好ましい範囲は、0.50~10.00mmである。
【0114】
押出配管材を、更に引抜き加工し、必要に応じて軟化処理を施し、更に、引抜き加工し、必要に応じて最終軟化処理を施す。軟化処理の好ましい温度範囲は、300~500℃であり、軟化処理時間は0~10時間である。引き抜き管の最終肉厚の好ましい範囲は、0.10~3.0mmである。
【0115】
押出配管材については、ろう付前に、押出配管をエッチングすることにより、ろう付性がより高まる。酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸及びフッ酸のうち1種または2種以上を含む水溶液を使用することができる。好ましいエッチング量範囲は0.05~2.0g/m2である。
【0116】
このようにして得られた押出配管材の所定の位置に溝を形成させることにより、アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)を得る。なお、フレットが形成される部分に溝を設ける場合、フレットが形成される部分に所定の溝が設けられているのであれば、フレットが形成される部分を超えて、溝が設けられていてもよい。
【0117】
本発明において、アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)の所定の位置に溝を設ける方法は特に制限されず、例えば、公知方法が適宜用いられる。所定の位置に溝を設ける方法としては、押出配管材をヘッダプレートとして用いる場合、例えば、押出配管材を回転させながら刃具を摺動させることにより、押出配管材のフィレット形成範囲に溝を形成させる方法や、長手方向に連続的に送り出しながら刃具を摺動させることにより、押出配管材のフィレット形成範囲に溝を形成させる方法が挙げられる。また、所定の位置に溝を設ける方法としては、例えば、チューブ材を差し込む穴を設けるピアス加工の際に、ピアス金型の側面に凸部を設けて、切断面に溝を設ける方法や、ピアス加工後に刃具をチューブ長手方向や周方向に摺動させることにより、切断面に溝を設ける方法が挙げられる。また、所定の位置に溝を設ける方法としては、押出配管材をチューブ材として用いる場合、押出配管材を送り出す際に、チューブ材進行方向に沿って刃具を押し当てることにより、押出配管材の表面の所定の位置に溝を設ける方法や、チューブ材とプレート材を組み付ける際に、刃具をチューブ材に摺動させることにより、チューブ材の表面の所定の位置に溝を設ける方法が挙げられる。
【0118】
アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)が、押出多穴管材の場合、アルミニウム合金の溶湯を常法に従って造塊し、所定の組成を有する鋳塊(ビレット)を得る。次いで、得られた鋳塊(ビレット)を均質化処理した後、押出に際してビレットを再加熱して、押出後の管の肉厚が特定寸法となるようにポートホール押出を行い、押出多穴管材を作製する。均質化処理の好ましい温度範囲は、400~630℃であり、均質化処理時間は2~20時間である。好ましい押出温度範囲は、400℃~550℃である。好ましい押出比は50~2500である。
【0119】
その後、必要に応じて最終軟化処理を施す。最終軟化処理の好ましい温度範囲は、300~500℃であり、軟化処理時間は0~50時間である。作製した押出多穴管をサイジングして外形寸法精度を高めても良い。この場合の加工度の好ましい範囲は、0.5~10%である。
【0120】
押出多穴管材については、ろう付前に、押出配管をエッチングすることにより、ろう付性がより高まる。酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸及びフッ酸のうち1種または2種以上を含む水溶液を使用することができる。好ましいエッチング量範囲は0.05~2.0g/m2である。
【0121】
このようにして得られた押出多穴管材の所定の位置に溝を形成させることにより、アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)を得る。なお、フレット形成範囲に所定の溝が設けられているのであれば、フレット形成範囲を超えて、溝が設けられていてもよい。
【0122】
本発明において、アルミニウム製被ろう付部材(1又は2)の所定の位置に溝を設ける方法は特に制限されず、例えば、公知方法が適宜用いられる。所定の位置に溝を設ける方法としては、押出多穴管材をチューブ材として用いる場合、押出多穴管材を送り出す際に、チューブ材進行方向に沿って刃具を押し当てることにより、押出多穴管材の表面の所定の位置に溝を設ける方法や、チューブ材とプレート材を組み付ける際に、刃具をチューブ材に摺動させることにより、チューブ材の表面の所定の位置に溝を設ける方法が挙げられる。
【0123】
本発明の第一の形態のろう付体の製造方法は、ブレージングシートからなる部材と、アルミニウム製被ろう付部材と、を組み付けた後、ろう付加熱することにより、ろう付体を製造する方法であって、
該ブレージングシートのろう材が3.00~13.00質量%のSi及び2.00質量%以下のMg(ゼロを含まず。)を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、心材がアルミニウム合金からなり、
該アルミニウム製被ろう付部材のフィレット形成範囲の表面に、2本以上の溝が設けられており、該溝の溝深さ(D1)が0.005~0.50mmであり、該溝の溝幅(W1)が0.005~0.50mmであり、該溝深さ(D1)に対する該溝幅(W1)の比(W1/D1)が10.00以下であり、隣り合う該溝同士の間隔(P1)が0.00~0.30mmであること、
を特徴とするろう付体の製造方法である。
【0124】
本発明の第二の形態のろう付体の製造方法は、ブレージングシートからなる部材と、アルミニウム製被ろう付部材と、を組み付けた後、ろう付加熱することにより、ろう付体を製造する方法であって、
該ブレージングシートのろう材が3.00~13.00質量%のSi及び2.00質量%以下のMg(ゼロを含まず。)を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、心材がアルミニウム合金からなり、
該アルミニウム製被ろう付部材のフィレット形成範囲の表面に、主溝と、該主溝の溝底に設けられる2本以上の副溝と、が設けられており、該副溝の溝深さ(D2)が0.005~0.50mmであり、該副溝の溝幅(W2)が0.005~0.40mmであり、該副溝の溝深さ(D2)に対する該副溝の溝幅(W2)の比(W2/D2)が10.00以下であり、該主溝の溝深さ(D3)に対する該副溝の溝深さ(D2)の比(D2/D3)が0.50以上1.00未満であること、
を特徴とするろう付体の製造方法である。
【0125】
つまり、本発明の第一の形態のろう付体の製造方法は、被ろう付部材として、上記アルミニウム製被ろう付部材(1)を用い、ブレージングシートからなる部材として、上記本発明に係るブレージングシートからなる部材を用いて、少なくとも、本発明に係るブレージングシートからなる部材とアルミニウム製被ろう付部材(1)とを組み付け、組み付け体を作製した後、フラックスを用いないで、ろう付加熱することにより、ろう付体を製造する方法である。また、本発明の第二の形態のろう付体の製造方法は、被ろう付部材として、上記アルミニウム製被ろう付部材(2)を用い、ブレージングシートからなる部材として、上記本発明に係るブレージングシートからなる部材を用いて、少なくとも、本発明に係るブレージングシートからなる部材とアルミニウム製被ろう付部材(2)とを組み付け、組み付け体を作製した後、フラックスを用いないで、ろう付加熱することにより、ろう付体を製造する方法である。
【0126】
本発明の第一の形態のろう付体の製造方法に係る被ろう付部材は、アルミニウム製被ろう付部材(1)と同様である。本発明の第二の形態のろう付体の製造方法に係る被ろう付部材は、アルミニウム製被ろう付部材(2)と同様である。本発明の第一の形態のろう付体の製造方法及び本発明の第二の形態のろう付体の製造方法に係るブレージングシートからなる部材は、上記本発明に係るブレージングシートからなる部材と同様である。
【0127】
本発明の第一の形態のろう付体の製造方法及び本発明の第二の形態のろう付体の製造方法では、少なくともブレージングシートからなる部材と被ろう付部材とを組み付けるが、それら以外に、必要に応じて、ベアフィン、配管、ブロック等の部材も組み付けて、組み付け体を作製することができる。
【0128】
本発明の第一の形態のろう付体の製造方法及び本発明の第二の形態のろう付体の製造方法では、作製した組み付け体を、フラックスを用いないで、ろう付加熱することにより、ろう付を行い、ろう付体を得る。つまり、本発明の第一の形態のろう付体の製造方法及び本発明の第二の形態のろう付体の製造方法は、フラックスフリーろう付方法によるろう付体の製造方法である。
【0129】
本発明の第一の形態のろう付体の製造方法及び本発明の第二の形態のろう付体の製造方法において、ろう付体をろう付加熱する際のろう付加熱温度は、例えば、577~610℃、好ましくは590~600℃であり、また、ろう付加熱時間は、例えば、590℃以上が5~20分間、好ましくは5~10分間、また、ろう付雰囲気は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気である。
【0130】
本発明の第一の形態のろう付体の製造方法及び本発明の第二の形態のろう付体の製造方法により製造するろう付体は、特に制限されないが、例えば、家庭用、自動車用、各種産業用のアルミニウム合金製熱交換器、ヒートシンク等が挙げられる。
【0131】
以下に、実施例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0132】
以下に示す実施例及び比較例では、溝を有する被ろう付部材とブレージングシートの接合継手を作製し、ろう付性を評価した。なお、本発明のアルミニウム製被ろう付部材では、溝が設けられている被ろう付部材が、板状材の成形体であっても、押出配管や、押出多穴管であっても、ろう付性は、以下に示す溝を有する被ろう付部材とブレージングシートの接合継手のろう付性と同様である。
【0133】
(実施例及び比較例)
被ろう付部材として、連続鋳造により3003合金鋳塊を作製し、面削を施して所定の厚さにした後、均質化後、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍を経て厚さ1.0mmの板状材を作製した。さらに、作製した板状材に酸洗を施した。次いで、
図14に示す3-1部分に溝を設けたもの、3-2部分に溝を設けたもの、3-3部分に溝を設けたもの、3-2部分と3-3部分の両方に溝を設けたもの、3-1部分と3-2部分と3-3部分に溝を設けたものそれぞれを準備した。溝の形態は、
図1中のW1、D1及びP1が表2に示す値のもの、及び
図6中のW2、D2及びD3が表3に示す値のものである。
【0134】
被ろう付部材と組み合わせるブレージングシートに関しては、連続鋳造により、表1に示す化学成分を有するろう材用鋳塊、心材用鋳塊及び皮材用鋳塊、を作製する。次いで、心材用鋳塊を均質化し、心材用鋳塊については面削を施し、板厚を所定の厚さとする。ろう材用鋳塊と皮材用鋳塊については、均質化後面削し、熱間圧延を行い、板厚を所定の厚さとする。このようにして得られたろう材用鋳塊、皮材用鋳塊、心材用鋳塊を表1に示す組み合わせで重ね合わせ、積層物を作製する。得られた積層物に熱間圧延を行い、心材用鋳塊、ろう材用鋳塊と皮材用鋳塊を接合し、板厚3.00mmのクラッド材を作製する。得られたクラッド材に、冷間圧延、最終焼鈍、酸洗の順に行い、板厚0.80mmの試験材を得た。
【0135】
<ろう付性の評価>
すき間充填試験により、各試験材のろう付性を評価した。隙間充填試験において使用する試験体は、
図15に示すように、垂直板に溝を設けた被ろう付部材を配し、水平板にブレージングシートを配して、垂直板の溝が水平板に近接するよう、SUSワイアで組み付け、窒素ガス雰囲気中で炉中ろう付した。炉内の雰囲気は酸素濃度を10体積ppm以下、試験体の到達温度を600℃とした。
【0136】
隙間充填試験においては、ろう付後に形成されるフィレットの長さFLに基づいてろう付性を評価した。表2及び表3中の「隙間充填試験」欄には、FLが記載され、15mm以上である場合優れたろう付性を有しており、また、12mm以上である場合も良好なろう付性を有しており合格と判定し、12mm未満である場合を、ろう付性に劣っており不合格と判定する。
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
表2及び表3に示すように、本発明例である実施例の試験材は、合格レベルの優れた接合状態が得られることが確認された。