(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】設計支援システム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20240126BHJP
E04D 15/00 20060101ALI20240126BHJP
G06F 30/13 20200101ALI20240126BHJP
【FI】
G06F30/10
E04D15/00 V ESW
G06F30/13
(21)【出願番号】P 2020068936
(22)【出願日】2020-04-07
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】小栗 大誉
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-101681(JP,A)
【文献】特開2011-174301(JP,A)
【文献】特開2005-299112(JP,A)
【文献】特開2004-143912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10
E04D 15/00
G06F 30/13
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が屋根の上に上って作業を行うに際しその作業者の安全のために用いられる安全具が前記屋根上における複数箇所に取り付けられる建物において、それら各安全具を前記屋根上に配置する際の設計支援を行う設計支援システムであって、
前記
各安全具には、前記作業者が前記屋根上で作業する際に前記作業者に取り付けられる安全帯のフックを取り付けるための第1安全具と、前記屋根上に前記作業者が上る際に用いる梯子を固定するための第2安全具とが含まれており、
前記建物の設計データとして、少なくとも前記屋根及びその屋根に設けられる設備に関するデータを取得する設計データ取得手段と、
前記設計データ取得手段により取得された前記設計データに基づき、前記屋根上において前記第1安全具を前記屋根の陸棟部に沿って複数配置する第1安全具配置手段と、
前記設計データ取得手段により取得された前記設計データに基づき、前記屋根上において前記第2安全具を前記屋根の軒部に配置する第2安全具配置手段と、
を備えることを特徴とする設計支援システム。
【請求項2】
前記
各安全具には、前記梯子を用いて前記屋根上に上った前記作業者が前記第1安全具に前記フックを取り付けるべく、前記陸棟部側へ上がる際に前記フックを取り付けるための第3安全具が含まれており、
前記第1安全具配置手段により配置され
た各第1安全具の配置位置と、前記第2安全具配置手段により配置された前記第2安全具の配置位置とに基づいて、前記屋根上に前記第3安全具を配置する第3安全具配置手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の設計支援システム。
【請求項3】
前記設計データ取得手段により取得される前記建物の設計データには、前記建物に設けられる玄関と、前記建物において屋外側に張り出して設けられる張出部とについてのデータが含まれており、
前記第2安全具配置手段は、前記玄関及び前記張出部を含む前記建物の設計データに基づき、前記第2安全具を前記軒部に配置することを特徴とする請求項1又は2に記載の設計支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が屋根の上に上って作業を行うに際しその作業者の安全のために用いられる安全具が屋根上における複数箇所に取り付けられる建物において、それら各安全具を屋根上に配置する際の設計支援を行う設計支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物では、屋根の上に太陽光パネルが設置される場合がある。特許文献1には、かかる建物において、その屋根上に太陽光パネルを配置する際の配置設計を行う設計システムが開示されている。このシステムによれば、屋根上に太陽光パネルを自動で最適配置することができるため、屋根上への太陽光パネルの配置設計を容易かつ迅速に行うことが可能となる。
【0003】
ところで、屋根上に太陽光パネル等の設備が設置された建物では、設備のメンテナンスや修理等が行われる際、作業者が屋根の上に上って作業をすることになる。また、屋根自体の補修や点検等が行われる際も同様に、屋根の上に上って作業をすることになる。ここで、こうした屋根上での作業を行うに際しては、屋根からの落下を防ぐために、作業者に安全帯を取り付けて作業を行うのが一般である。具体的には、安全帯にはフックが取り付けられており、そのフックを予め屋根に固定しておいた安全用金具に引っ掛ける等して取り付け、その状態で屋根上において作業を行う。
【0004】
屋根上での作業に用いる安全用金具は、例えば屋根の頂部側となる陸棟部に配置される。この場合、安全用金具は陸棟部に沿って所定の間隔で複数配置される。屋根上で作業者が移動する際には、安全帯を各安全用金具に順次付け替えながら移動することになる。
【0005】
また、安全用金具としては、安全帯取付用の金具以外に、作業者が屋根上に上る際に用いる梯子を固定するための安全用金具がある。かかる安全用金具は、屋根上において軒部に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、建物の屋根上において安全用金具を複数箇所に設ける場合、各安全用金具を屋根上にそれぞれ配置する配置設計を行う必要がある。この場合、例えば設計者が建物の設計データ上(例えば屋根の平面図上)に安全用金具を手入力で配置していくことになると考えられる。
【0008】
しかしながら、屋根上における各安全用金具の配置位置は屋根の大きさや形状等により変わるため、建物ごとに手入力で安全用金具を適切な位置に配置するのは作業的に大変であると考えられる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、作業者が屋根上に上って作業する際にその作業者の安全のために用いられる安全具が屋根上の複数箇所に取り付けられる建物において、その屋根上において各安全具を適切な位置に容易に配置することができる設計支援システムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、第1の発明の設計支援システムは、作業者が屋根の上に上って作業を行うに際しその作業者の安全のために用いられる安全具が前記屋根上における複数箇所に取り付けられる建物において、それら各安全具を前記屋根上に配置する際の設計支援を行う設計支援システムであって、前記複数の安全具には、前記作業者が前記屋根上で作業する際に前記作業者に取り付けられる安全帯のフックを取り付けるための第1安全具と、前記屋根上に前記作業者が上る際に用いる梯子を固定するための第2安全具とが含まれており、前記建物の設計データとして、少なくとも前記屋根及びその屋根に設けられる設備に関するデータを取得する設計データ取得手段と、前記設計データ取得手段により取得された前記設計データに基づき、前記屋根上において前記第1安全具を前記屋根の陸棟部に沿って複数配置する第1安全具配置手段と、前記設計データ取得手段により取得された前記設計データに基づき、前記屋根上において前記第2安全具を前記屋根の軒部に配置する第2安全具配置手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
作業者が屋根上に上って作業を行うに際し用いられる安全具としては、作業者が屋根上で作業する際に作業者に取り付けられる安全帯のフックを取り付けるための第1安全具と、屋根上に作業者が上る際に用いる梯子を固定するための第2安全具とがある。この場合、第1安全具は、屋根上において陸棟部に沿って複数配置されるのに対し、第2安全具は、屋根の軒部に1つだけ配置されると考えられる。そこで、上記の設計支援システムでは、建物の屋根上に各安全具を配置するに際し、次のような手順で各安全具を行う配置するようにしている。
【0012】
各安全具の配置に際してはまず、屋根上に安全具が取り付けられる建物の設計データが取得される。この設計データの取得に際しては少なくとも、建物の屋根とその屋根に設けられる設備とのデータが取得される。なお、設備としては、屋根上に設置される太陽光パネルや、屋根に取り付けられるトップライト等が挙げられる。
【0013】
次に、取得された建物の設計データに基づいて、屋根上において第1安全具が屋根の陸棟部に沿って複数配置される。この場合、例えば屋根の設計データに基づき、屋根の陸棟の長さ等に応じて第1安全具を適切な間隔で配置することができる。また、屋根に設けられる設備の設計データに基づき、その設備と干渉しない位置に第1安全具を配置することができる。これにより、各第1安全具を適切な位置に配置することができる。
【0014】
また、取得された建物の設計データに基づいて、屋根上において第2安全具が屋根の軒部に1つだけ配置される。この場合、例えば屋根に設けられる設備の設計データに基づき、軒部において設備側とは異なる側に第2安全具を配置することができる。このため、第2安全具に固定した梯子を使って作業者が屋根上に上る際に設備が邪魔で上ることができないといった不都合を回避できる。これにより、第2安全具を適切な位置に配置することができる。以上のように、上記の構成によれば、屋根上に、その屋根の形状等に応じて各第1安全具及び第2安全具を適切な位置に容易に配置することができる。
【0015】
第2の発明の設計支援システムは、第1の発明において、前記複数の安全具には、前記梯子を用いて前記屋根上に上った前記作業者が前記第1安全具に前記フックを取り付けるべく、前記陸棟部側へ上がる際に前記フックを取り付けるための第3安全具が含まれており、前記第1安全具配置手段により配置された前記各第1安全具の配置位置と、前記第2安全具配置手段により配置された前記第2安全具の配置位置とに基づいて、前記屋根上に前記第3安全具を配置する第3安全具配置手段を備えることを特徴とする。
【0016】
建物の屋根上には、安全具として、上述した第1安全具及び第2安全具に加えて、作業者が梯子を用いて屋根上に上った後、陸棟部側の第1安全具に安全帯のフックを取り付けるべく、陸棟部側へ上がる際に安全帯のフックを取り付けるための第3安全具が取り付けられる場合が考えられる。この場合、第3安全具は、屋根上において第1安全具と梯子固定用の第2安全具との間に配置されると考えられる。
【0017】
そこで、上記の構成では、屋根上に配置された各第1安全具及び第2安全具の配置位置に基づいて、屋根上に第3安全具を配置するようにしている。この場合、第3安全具を第1安全具と第2安全具との中間部に配置することができる。そのため、第1安全具及び第2安全具に加え、第3安全具についても適切な位置に容易に配置することができる。
【0018】
第3の発明の設計支援システムは、第2の発明において、前記設計データ取得手段により取得される前記建物の設計データには、前記建物に設けられる玄関と、前記建物において屋外側に張り出して設けられる張出部とについてのデータが含まれており、前記第2安全具配置手段は、前記玄関及び前記張出部を含む前記建物の設計データに基づき、前記第2安全具を前記軒部に配置することを特徴とする。
【0019】
屋根上に上るための梯子が建物の玄関前に配置されると、玄関を通じた出入りが困難になることが考えられる。また、建物には、バルコニーや下屋等、屋外側に張り出した張出部が設けられる場合があるが、かかる張出部が設けられた建物では、梯子がその張出部の設けられた側に配置されると、張出部が邪魔で屋根上へ上るのが困難になることが考えられる。そこで、上記の構成では、梯子固定用の第2安全具を軒部に配置するに際し、玄関及び張出部の設計データを取得し、その取得したそれらの設計データに基づき、第2安全具を配置するようにしている。この場合、上述した不都合が生じるのを回避しながら、第2安全具を適切な位置に配置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】屋根部上に安全具が取り付けられた建物を示す平面図。
【
図2】(a)は安全具を示す正面図であり、(b)は安全具が屋根部上に取り付けられた取付状態を示す縦断面図。
【
図5】設計支援処理により屋根部上に順次配置される安全具の配置位置を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、建物の屋根部上で作業する作業者の安全のために用いられる安全具が屋根部上における複数箇所に取り付けられる建物において、その屋根部上に各安全具を配置する際の設計支援を行う設計支援装置について具体化している。以下においては、その設計支援装置の説明を行うのに先立ち、まず建物の屋根部上に取り付けられる安全具について
図1に基づいて説明する。
図1は、屋根部上に安全具が取り付けられた建物を示す平面図である。なお、建物は、例えば二階建ての住宅とされている。
【0022】
図1に示すように、建物10の屋根部11は、寄せ棟形状の屋根部分11a,11bを複数備えており、それら各屋根部分11a,11bが平面視L字状をなすように組み合わせられてなる複合屋根となっている。屋根部11は、その頂部において水平方向に延びる陸棟13(大棟)と、陸棟13から屋根部11の隅部に向かって斜めに延びる隅棟14とを有する。
【0023】
屋根部11は、陸棟13及び隅棟14によって区画された複数の屋根面15を有している。これら各屋根面15には、矩形形状(例えば台形形状)の屋根面や、三角形状の屋根面等が含まれている。また、各屋根面15はいずれも陸棟13から軒先17に向けて下方傾斜した傾斜面とされている。これら各屋根面15において、陸棟13側は陸棟部18となっており、軒先17側は軒部19となっている。
【0024】
屋根部11上には、太陽光パネル21が設置されている。太陽光パネル21は、各屋根面15のうち一部の屋根面15に設置され、
図1の例では2つの屋根面15に設置されている。また、屋根部11には、採光用のトップライト22(天窓)が取り付けられている。トップライト22は、屋根面15において陸棟部18と軒部19との間の中間部に配置されている。なお、太陽光パネル21及びトップライト22はいずれも「設備」に相当する。
【0025】
建物10には、その二階部分にバルコニー24が設けられている。バルコニー24は、屋外側に張り出して設けられたキャンチ式のバルコニーとなっている。なお、バルコニー24が「張出部」に相当する。また、建物10の一階部分には玄関(図示略)が設けられている。玄関には、玄関ドア25が設けられている。
【0026】
屋根部11上には、その複数の箇所に安全具30が取り付けられている。これらの安全具30は、屋根部11上で作業者が点検やメンテナンス等の作業を行うに際し、その作業者の安全を確保するために用いられる安全用金具とされている。これらの安全具30は、建物10の施工時に屋根部11上に予め取り付けられるものとなっている。
【0027】
各安全具30には、第1安全具30A、第2安全具30B及び第3安全具30Cが含まれている。これらの安全具30A~30Cはそれぞれ用途が異なるものの、本実施形態ではこれら各安全具30A~30Cとして同じ構成のものを用いている。
図1では、これら各安全具30A~30Cを区別し易くするため、第1安全具30Aを丸印で示し、第2安全具30Bを四角印で示し、第3安全具30Cを三角印で示しており、またこれら各印をいずれも黒塗りの印で示している(この点は後述する
図5も同様)。なお、各安全具30A~30Cは必ずしも同じ構成とする必要はなく、それぞれ異なる構成としてもよい。
【0028】
各安全具30A~30Cの用途等の説明を行う前に、屋根部11上における安全具30(30A~30C)の取付構成について
図2を用いながら簡単に説明する。なお、
図2において(a)は安全具30を示す正面図であり、(b)は安全具30が屋根部11上に取り付けられた取付状態を示す縦断面図である。また、
図2(b)では便宜上、野地板34が水平向きとなる状態で安全具30の取付状態を示している。
【0029】
図2(a)及び(b)に示すように、安全具30は、屋根部11において、瓦33が葺設されている野地板34上に固定されている。安全具30は、上下に重なり合う各瓦33の間を通じて延び先端側が野地板34上に固定された長尺の固定板35と、その固定板35の基端側に固定され上方に立ち上がる支柱部36とを有している。固定板35は、その先端側が下地板37を介して野地板34に固定されている。また、支柱部36は、固定板35において瓦33上に露出した基端側から上方に立ち上がっている。支柱部36には円形状の孔部38が設けられている。この孔部38は、屋根部11上で作業する作業者に取り付けられる安全帯のフックを取り付けるための取付用孔として用いられたり、作業者が屋根部11上に昇る際に利用する梯子を固定するための固定用孔として用いられたりする。なお、
図2に示す安全具30の構成はあくまで一例であり、安全具30としての機能を果たせるのであれば、安全具30の構成は
図2の構成以外の構成であってもよい。
【0030】
図1の説明に戻って、第1安全具30Aは、作業者が屋根部11上で作業する際に、その作業者に取り付けられる安全帯のフックを取り付けるために用いられる作業用の安全具となっている。第1安全具30Aにフックを取り付ける際には、例えば第1安全具30Aの孔部38にフックを引っ掛けて取り付ける。第1安全具30Aは、屋根部11上において陸棟部18に配置され、詳しくは屋根部11上において陸棟13に沿って所定の間隔で複数配置されている。
【0031】
第2安全具30Bは、作業者が屋根部11上に上る際に用いる梯子を固定するために用いられる梯子固定用の安全具となっている。第2安全具30Bは、屋根部11上において軒部19に1つだけ配置されている。第2安全具30Bに梯子を固定する際には、例えば第2安全具30Bの孔部38に通したロープ等の線状部材を用いて梯子の上端側を第2安全具30Bに固定する。
【0032】
第3安全具30Cは、梯子を用いて屋根部11上に上った作業者が、第1安全具30Aに安全帯のフックを取り付けるべく、陸棟部18側に上がる際、安全帯のフックを取り付けるために用いられる。また、第3安全具30Cは、作業者が屋根部11上での作業を終えた際に、陸棟部18側から梯子の固定されている軒部19側(換言すると第2安全具30B側)に下りる際にも、同様に、安全帯のフックを取り付けるために用いられる。したがって、第3安全具30Cは、作業者が屋根部11上に上り下りする際に用いられる昇降用の安全具となっている。第3安全具30Cに安全帯のフックを取り付ける際には、例えば第3安全具30Cの孔部38にフックを引っ掛けて取り付ける。第3安全具30Cは、屋根部11上において第1安全具30Aと第2安全具30Bとの間の中間部に配置されている。
【0033】
続いて、上記の安全具30A~30Cを用いて作業者が屋根部11上で作業を行う際の流れについて説明する。屋根部11上で作業者が作業を行う際には、予め作業者に安全帯を二本取り付けておき、その取付状態で作業を行う。まず、作業者は第2安全具30Bに予め固定した梯子を使って屋根部11上に上る。そして、その後、一方の安全帯のフックを第3安全具30Cに取り付け、その取付状態で屋根部11上を陸棟部18側に上り、他方の安全帯のフックを第1安全具30Aに取り付ける。そして、その後、第3安全具30Cに取り付けたフックを取り外す。これにより、作業者は、屋根部11上で作業を行う際の安全が確保される。
【0034】
屋根部11上で作業者が移動する際には、作業者は一方の安全帯のフックを第1安全具30Aに取り付けた状態で、他方の安全帯のフックを移動先の第1安全具30Aに取り付ける。そして、その取付後、上記一方の安全帯のフックを第1安全具30Aから取り外す。すなわち、この場合、安全帯を移動先の第1安全具30Aに付け替える作業を行う。このようにして、作業者が屋根部11上を陸棟部18に沿って移動する際には、移動先の第1安全具30Aに順次安全帯を付け替えながら移動していくことになる。
【0035】
次に、設計支援装置40の概要について
図3に基づいて説明する。
図3は、設計支援装置40の概略構成を示す図である。
【0036】
図3に示すように、設計支援装置40は、パーソナルコンピュータにより構成され、建物を設計するCADプログラムを有している。設計支援装置40は、例えば建物メーカに設けられ、同メーカの設計者により使用される。設計支援装置40は、制御部41と、操作部42と、表示部43と、記憶部44とを備えている。
【0037】
制御部41は、建物10の屋根部11上に安全具30を配置する際の設計支援を行う設計支援処理を実施するものである。操作部42は、その設計支援処理に際し必要な各種操作を行うもので、キーボードやマウス等を有して構成されている。表示部43は、設計支援処理の結果等、各種情報を表示するもので、ディスプレイからなる。また、記憶部44には、設計支援処理に必要な各種情報が記憶されている。
【0038】
次に、設計支援装置40により行われる設計支援処理の流れについて
図4に基づいて説明する。
図4は設計支援処理を示す機能ブロック図である。なお、
図4中の各ブロックは制御部41により実現されている。また、以下では、上述した建物10を対象に設計支援処理を行うことを想定しており、設計支援装置40の記憶部44には、建物10のCADデータ(設計データ)があらかじめ記憶されているものとする。
【0039】
また、以下においては、
図4に加え
図5を適宜参照しながら、設計支援処理の流れについて説明を行う。
図5は、設計支援処理により屋根部11上に順次配置される安全具30の配置位置を示す平面図である。
【0040】
図4に示すように、設計データ取得部51は、記憶部44より建物10のCADデータを読み出して取得する。この場合、設計データ取得部51により取得される建物10のCADデータには、屋根部11とその屋根部11に設けられる太陽光パネル21及びトップライト22のCADデータが含まれている。また、取得されるCADデータには、バルコニー24や玄関ドア25(玄関)のCADデータも含まれている。
【0041】
本設計支援処理では、設計データ取得部51により取得された建物10(具体的には屋根部11)のCADデータ(例えば平面図データ)上に安全具30を配置していくこととしており、その安全具30の配置を安全具配置部52~54により行っていくこととしている。以下、安全具配置部52~54による安全具30の配置処理について説明する。
【0042】
まず、各安全具配置部52~54のうち、第1安全具配置部52では、設計データ取得部51により取得された建物10の設計データ、具体的には屋根部11及び太陽光パネル21の設計データに基づいて、第1安全具30Aを屋根部11上において陸棟部18に沿って複数配置する。
図5(a)には、第1安全具配置部52により屋根部11上に配置された第1安全具30Aの配置位置が示されている。第1安全具配置部52は、屋根部11における各屋根面15ごとに第1安全具30Aを配置する。具体的には、第1安全具配置部52は、まず各屋根面15のうち、太陽光パネル21の設置されていない屋根面15を第1安全具30Aを配置する屋根面15(以下、屋根面15Aという)として決定する。そして、第1安全具配置部52は、それら各屋根面15Aごとに第1安全具30Aを順次配置していく。この屋根面15Aへの第1安全具30Aの配置に際しては、予め定められた第1安全具30Aの配置条件にしたがって第1安全具30Aを配置する。
【0043】
屋根面15Aに対する第1安全具30Aの配置条件は屋根面15Aの形状ごとに相違している。各屋根面15Aには、陸棟13に沿って延びる屋根面15A(a)と、陸棟13の端部を頂点とする三角形状の屋根面15A(b)とが含まれている。本実施形態では、これら各屋根面15A(a),15A(b)ごとに第1安全具30Aの配置条件が相違している。例えば、屋根面15A(a)に第1安全具30Aを配置する際には、予め定められた所定のピッチL(例えば3600mm)で第1安全具30Aを陸棟13(陸棟部18)に沿って複数配置する。この場合、第1安全具30AのピッチLは、作業者に取り付けられる安全帯の長さに基づき定められており、詳しくは作業者が隣り合う第1安全具30Aに安全帯を付け替え可能な大きさに定められている。また、陸棟13の長さが上記のピッチL以下とされている場合には、その陸棟13に沿って配置される第1安全具30Aについては陸棟13の中央となる位置に1つだけ配置する。また、陸棟13の長さにかかわらず、第1安全具30Aは、陸棟13の両端から所定距離(例えば900mm)以上離れた位置に配置する。
【0044】
続いて、第2安全具配置部53において、設計データ取得部51により取得された建物10の設計データに基づき、屋根部11上において(梯子固定用の)第2安全具30Bを軒部19に1つだけ配置する。第2安全具配置部53では、まず、軒部19における複数の箇所に第2安全具30Bを配置する配置位置の候補(以下、配置位置候補Lという)を設定する。
図5(b)には、その設定された第2安全具30Bの配置位置候補Lが白抜きの四角印(点線又は実線)で示されている。
【0045】
第2安全具配置部53では、第2安全具30Bの配置位置候補Lの設定後、配置位置候補絞込部53aにおいて第2安全具30Bの配置位置候補Lの絞り込みを行う。
図5(b)の例では、配置位置候補絞込部53aにより第2安全具30Bの配置位置候補Lが2つの配置位置候補Lに絞り込まれており、その絞り込まれた2つの配置位置候補L(以下、L(α)という)が実線の四角印で示されている。なお、
図5(b)では、上記の絞り込みにより除外された配置位置候補Lが点線の四角印で示されている。
【0046】
配置位置候補絞込部53aでは、予め定められた絞り込み条件に基づいて、第2安全具30Bの配置位置候補Lについて絞り込みを行う。この絞り込み条件は、第2安全具30Bの配置位置候補Lから除外されるものを規定しており、したがって、絞り込み条件により除外されなかったものに、第2安全具30Bの配置位置候補L(α)が絞り込まれることになる。その点では、絞り込み条件を除外条件ということもできる。
【0047】
本実施形態では、絞り込み条件として、第2安全具30Bについて、a)南側には配置しない、b)太陽光パネル21の配置側には配置しない、c)玄関直上には配置しない、d)バルコニー24の直下には配置しない、e)トップライト22を挟んで第1安全具30Aとは反対側には配置しない、といった条件が定められている。したがって、配置位置候補絞込部53aでは、上記設定された各第2安全具30Bの配置位置候補Lの中から、上記絞り込み条件(a~e)に該当するものを除外し、それにより残ったものを配置位置候補L(α)として絞り込む。
図5(b)の例では、各絞り込み条件(a~e)に基づく絞り込みによって、第2安全具30Bの配置位置候補Lが北側の屋根面15に設定された2つの配置位置候補L(α)に絞り込まれている。なお、
図5(b)の例では、各絞り込み条件(a~e)により除外された配置位置候補Lの隣りにいずれの絞り込み条件で当該配置位置候補Lが除外されたかがわかるよう対応する絞り込み条件を英文字で示している。
【0048】
第2安全具配置部53では、配置位置候補絞込部53aにより第2安全具30Bの配置位置候補Lを絞り込んだ後、配置位置決定部53bにおいてその絞り込まれた配置位置候補L(α)のうちいずれを第2安全具30Bの配置位置とするか決定する。そして、その決定した配置位置に第2安全具30Bを配置する。
図5(c)には、そのようにして配置された第2安全具30Bの配置位置が示されている。
【0049】
配置位置決定部53bでは、予め定められた優先条件に基づいて、上記絞り込まれた第2安全具30Bの各配置位置候補L(α)の中から、いずれかの配置位置候補L(α)を優先して第2安全具30Bの配置位置として決定する。本実施形態では、優先条件として、f)陸棟13の中心に近い配置位置候補L(α)を優先させる、g)面積の大きい屋根面15にある配置位置候補L(α)を優先させる、といった条件が定められている。
【0050】
図5(b)の例では、各配置位置候補L(α)がいずれも同じ屋根面15に位置しているとともに、それら各配置位置候補L(α)のうち、図示の左側に位置する配置位置候補L(α)がより陸棟13の中心に近い側に位置している。このため、この例では、
図5(c)に示すように、陸棟13の中心に近い側に位置する配置位置候補L(α)が第2安全具30Bの配置位置として決定されている。
【0051】
次に、第3安全具配置部54では、第1安全具配置部52により配置された第1安全具30Aの配置位置と、第2安全具配置部53により配置された第2安全具30Bの配置位置とに基づいて、屋根部11上に第3安全具30Cを配置する。
図5(d)には、その第3安全具配置部54により配置された第3安全具30Cの配置位置が示されている。第3安全具配置部54では、第1安全具30Aと第2安全具30Bとの間の中間部に第3安全具30Cを配置する。詳しくは、屋根部11上に配置された各第1安全具30Aのうち、第2安全具30Bと同じ屋根面15に配置された第1安全具30Aと、第2安全具30Bとの間の中間部に第3安全具30Cを配置し、より詳しくは、第2安全具30Bと同じ屋根面15に配置された複数の第1安全具30Aのうち、第2安全具30Bと最も近い位置に配置された第1安全具30Aと第2安全具30Bとの中間部に第3安全具30Cを配置する。また、第3安全具配置部54では、第2安全具30Bから第1安全具30A(陸棟部18)側に所定距離(例えば1800mm)離れた位置に第3安全具30Cを配置する。以上より、屋根部11上に各安全具30A~30Cがそれぞれ配置される。
【0052】
次に、出力部55において、各安全具配置部52~54により屋根部11上に配置された各安全具30A~30Cの配置位置を表示部43に出力する。これにより、表示部43には、屋根部11上における各安全具30A~30Cの配置位置が表示される(
図5(d)参照)。なお、出力部55において、表示部43に出力することに代えて又は加えて、プリンタ等、他の出力先に各安全具30A~30Cの配置位置を出力するようにしてもよい。
【0053】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0054】
上記実施形態の設計支援装置40にて各安全具30を屋根部11上に配置する設計支援処理を行うに際しては、まず設計データ取得部51により、安全具30の取付対象(配置対象)とされる建物10の設計データを取得するようにした。この場合、取得される設計データには、建物10の屋根部11とその屋根部11に設けられる設備(具体的には太陽光パネル21及びトップライト22)とのデータが含まれるようにした。
【0055】
続いて、第1安全具配置部52により、取得した設計データに基づき、屋根部11上にて作業用の第1安全具30Aを屋根部11の陸棟部18に沿って複数配置するようにした。この場合、屋根部11の設計データに基づき、屋根部11の陸棟13の長さ等に応じて第1安全具30Aを適切な間隔で配置することができる。また、屋根部11に設けられる設備(具体的には太陽光パネル21)の設計データに基づき、その設備と干渉しない位置に第1安全具30Aを配置することができる。これにより、各第1安全具30Aを適切な位置に配置することができる。
【0056】
また、第2安全具配置部53により、取得した建物10の設計データに基づき、屋根部11上にて梯子固定用の第2安全具30Bを屋根部11の軒部19に1つだけ配置するようにした。この場合、屋根部11に設けられる設備(具体的には太陽光パネル21及びトップライト22)の設計データに基づき、軒部19において設備側とは異なる側に第2安全具30Bを配置することができる(絞り込み条件のb)やe)参照)。このため、第2安全具30Bに固定した梯子を使って作業者が屋根部11上に上る際に設備が邪魔で上ることができないといった不都合を回避できる。これにより、第2安全具30Bを適切な位置に配置することができる。以上のように、上記実施形態の設計支援装置40によれば、屋根部11の形状や大きさ、屋根部11に設けられる設備等に応じて、屋根部11上に各第1安全具30A及び第2安全具30Bを適切な位置に容易に配置することができる。
【0057】
設計支援処理に際してはさらに、第3安全具配置部54により、屋根部11上に配置した各第1安全具30A及び第2安全具30Bの配置位置に基づき、屋根部11上に昇降用の第3安全具30Cを配置するようにした。この場合、第3安全具30Cを第1安全具30Aと第2安全具30Bとの中間部に配置することができる。そのため、第1安全具30A及び第2安全具30Bに加え、第3安全具30Cについても適切な位置に容易に配置することができる。
【0058】
具体的には、設計データ取得部51により取得される建物10の設計データには、建物10にて屋外側に張り出して設けられる張出部(具体的にはバルコニー24)や、建物10に設けられる玄関ドア25(玄関)のデータが含まれるようにした。そして、第2安全具配置部53により、第2安全具30Bを屋根部11の軒部19に配置するに際しては、それら取得した張出部及び玄関のデータに基づき第2安全具30Bを軒部19に配置するようにした(絞り込み条件c)やd)参照)。この場合、屋根部11に上るための梯子がバルコニー24の直下に配置されることになって屋根部11上へ上るのが困難になったり、梯子が建物10の玄関前に配置されることになって玄関を通じた出入りが困難になったりする不都合が生じるのを回避することができる。
【0059】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0060】
(1)上記実施形態では、第2安全具配置部53による処理として、まず配置位置候補絞込部53aにおいて第2安全具30Bの配置位置候補Lをいずれか複数の配置位置候補L(α)に絞り込み、その後、配置位置決定部53bにて、絞り込んだ各配置位置候補L(α)のうちいずれかを第2安全具30Bの配置位置として決定するようにしたが、これを変更してもよい。例えば、配置位置候補絞込部53aにて配置位置候補L(α)を絞り込んだ後、それら絞り込んだ各配置位置候補L(α)の中からユーザがいずれかを選択して第2安全具30Bの配置位置を決定するようにしてもよい。この場合、第2安全具30Bの配置位置を決めるに際し、ユーザ(例えば作業者)の要望を加味することができる。具体的には、この場合、配置位置候補絞込部53aにて配置位置候補L(α)の絞り込みを行った後、絞り込まれた各配置位置候補L(α)を表示部43に表示するようにし、それら表示した各配置位置候補L(α)の中からいずれかをユーザが操作部42の操作により選択するようにすることが考えられる。
【0061】
(2)設計データ取得部51により建物10の設計データを取得するに際して、建物10の屋根部11とその屋根部11に設けられる太陽光パネル21の設計データのみ取得するようにしてもよい。この場合にも、取得した屋根部11及び太陽光パネル21の設計データに基づき、第1安全具配置部52により第1安全具30Aを屋根部11上に配置し、第2安全具配置部53により第2安全具30Bを屋根部11上に配置することができる。
【0062】
(3)上記実施形態では、建物10にバルコニー24が張出部として設けられていたが、建物10には下屋等、バルコニー以外の張出部が設けられている場合もある。その場合にも、第2安全具配置部53により第2安全具30Bを屋根部11上に配置するに際しては、その張出部を含む建物の設計データに基づき第2安全具30Bを配置するようにすればよい。
【符号の説明】
【0063】
10…建物、11…屋根としての屋根部、18…陸棟部、19…軒部、30A…第1安全具、30B…第2安全具、30C…第3安全具、21…設備としての太陽光パネル、22…設備としてのトップライト、24…張出部としてのバルコニー、40…設計支援システムとしての設計支援装置、41…制御部、51…設計データ取得手段としての設計データ取得部、52…第1安全具配置手段としての第1安全具配置部、53…第2安全具配置手段としての第2安全具配置部、54…第3安全具配置手段としての第3安全具配置部。