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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】コイル用絶縁スペーサ及びコイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/32 20060101AFI20240126BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20240126BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20240126BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
H01F27/32 140
H01F27/28 147
H01F41/12 Z
H01F37/00 G
H01F37/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020102793
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021197441
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000214836
【氏名又は名称】長野日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 拓也
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-138045(JP,A)
【文献】特開2004-303816(JP,A)
【文献】特開2016-66686(JP,A)
【文献】特開2013-42021(JP,A)
【文献】特開2020-155662(JP,A)
【文献】特開2005-294427(JP,A)
【文献】特開2019-220658(JP,A)
【文献】特開2017-123415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00- 5/06
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26-27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 38/42-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10-41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平角線を用いたコイル本体部及びこのコイル本体部から導出する前記平角線の両端に設けたコイル端子部を有するコイル部における前記コイル本体部の各ターン部間に挿入して当該各ターン部間の電気絶縁を行うコイル用絶縁セパレータであって、U字状に形成することにより少なくとも対峙する一対の絶縁片部を有し、かつ各ターン部間に挿入することにより各ターン部間の電気絶縁を行う複数のセパレータメンバと、各セパレータメンバが前記各ターン部間に挿入した際に前記コイル部の外部に位置して前記各セパレータメンバを連結する連結部と、を電気絶縁素材により形成し、かつ前記コイル部の軸心から一方側に位置する各絶縁片部の先端部までの各長さをそれぞれ異ならせるとともに、当該軸心から他方側に位置する各絶縁片部の先端部までの各長さをそれぞれ異ならせてなることを特徴とするコイル用絶縁セパレータ。
【請求項2】
前記各セパレータメンバ及び前記連結部は、合成樹脂素材により一体成形することを特徴とする請求項1記載のコイル用絶縁セパレータ。
【請求項3】
前記セパレータメンバの数は、前記コイル本体部におけるターン部の数と同一に設定することを特徴とする請求項1又は2記載のコイル用絶縁セパレータ。
【請求項4】
前記一方側に位置する各絶縁片部及び前記他方側に位置する各絶縁片部は、それぞれ前記コイル部の軸心に沿って長さを段階的に異ならせることを特徴とする請求項1,2又は3記載のコイル用絶縁セパレータ。
【請求項5】
前記一方側に位置する各絶縁片部及び前記他方側に位置する各絶縁片部は、前記軸心に対する垂直線を中心にした点対称に形成することを特徴とする請求項4記載のコイル用絶縁セパレータ。
【請求項6】
平角線を用いたコイル本体部及びこのコイル本体部から導出する前記平角線の両端に設けたコイル端子部を有するコイル部と、前記コイル本体部における各ターン部間に挿入して当該各ターン部間の電気絶縁を行う絶縁セパレータと、を少なくとも備えてなるコイル部品であって、U字状に形成することにより少なくとも対峙する一対の絶縁片部を有し、かつ各ターン部間に挿入することにより各ターン部間の電気絶縁を行う複数のセパレータメンバと、各セパレータメンバが前記各ターン部間に挿入した際に前記コイル部の外部に位置して前記各セパレータメンバを連結する連結部と、を電気絶縁素材により形成し、かつ前記コイル部の軸心から一方側に位置する各絶縁片部の先端部までの各長さをそれぞれ異ならせるとともに、当該軸心から他方側に位置する各絶縁片部の先端部までの各長さをそれぞれ異ならせてなる絶縁セパレータを備えることを特徴とするコイル部品。
【請求項7】
前記コイル本体部の内周側を覆う内筒部及び前記コイル本体部の外周側を覆う外装部を有するとともに、前記内筒部及び前記外装部の一方の端部に一体形成した端面部を有する絶縁ケース部と、前記コイル本体部を収容した前記絶縁ケース部の外部に装着するコア部とを備えることを特徴とする請求項6記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル本体部の各ターン部間に挿入して当該各ターン部間の電気絶縁を行うコイル用絶縁セパレータ及びこの絶縁セパレータを用いたコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平角線を用いたコイル本体部及びこのコイル本体部から導出する平角線の両端に一体に形成したコイル端子部を有するコイル部を備えて構成したコイル製品は知られており、既に、本出願人も、この種のコイル製品に用いて好適なコイル部品(コイル部品の製造方法)を特許文献1により提案した。
【0003】
このコイル部品(コイル部品の製造方法)は、製造工数の低減,製造コストの削減及びコイル部品のサイズダウンを図るとともに、全体の放熱性をより高めることを目的としたものであり、具体的には、平角線を用いたコイル本体部及びこのコイル本体部から導出する平角線の両端に一体のコイル端子部を有するコイル部を備えてなるコイル部品を構成するに際し、導電性素材により形成した所定の厚さを有するプレート基材からコイル本体部及びコイル端子部に対応する部位を一体に打ち抜いたコイル基材に対する曲げ処理により製作したコイル部と、コイル本体部における各ターン部間に挿入することにより各ターン部間の電気的絶縁を行う絶縁素材により形成した一又は二以上の絶縁片部を所定間隔置きに設けたセパレータ部材とを備えて構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-42021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1に開示される従来のコイル部品は、次のような解決すべき課題も残されていた。
【0006】
第一に、組付工程では、コイル本体部のターン数に対応した数の絶縁片部を有する二つのセパレータ部材を用意し、各セパレータ部材をそれぞれコイル本体部の両側からターン部間の隙間に挿入(圧入)する必要があるため、セパレータ部材を組付けしにくい側面がある。即ち、セパレータ部材の側面視形状は、複数の絶縁片部が一定間隔おきに配列した、いわば櫛形状となるため、複数の絶縁片部を複数のターン部間に挿入する場合、同時に挿入する必要があり、きわめて挿入しずらい難点があった。特に、この問題は、ターン数が多くなるほど大きくなり、組付性(挿入性)の低下による生産能率(生産効率)の低下を招いていた。
【0007】
第二に、セパレータ部材は、コイル本体部の各ターン部間の電気絶縁を行う機能を有するため、基本的に各ターン部間に挿入する絶縁片部により構成される。一方、この種のコイル部品は、通常、コア部を含むことも多いため、コイル部とコア部間の電気絶縁を行うコイルボビンが必要になる。この場合、平角線を用いる特殊性から、コイルボビンは製作後のコイル部に組付ける必要があるとともに、組立上の要請から二部品が必要になり、部品点数の増加に伴う部品コスト及び製造コストの上昇を招くなどの無視できない課題が存在した。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したコイル用絶縁セパレータ及びコイル部品の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るコイル用絶縁セパレータSは、上述した課題を解決するため、平角線Wfを用いたコイル本体部3及びこのコイル本体部3から導出する平角線Wfの両端に設けたコイル端子部4a.4bを有するコイル部2におけるコイル本体部3の各ターン部3t…間に挿入して当該各ターン部3t…間の電気絶縁を行う絶縁セパレータを構成するに際して、U字状に形成することにより少なくとも対峙する一対の絶縁片部S1p,S1q…を有し、かつ各ターン部3t…間に挿入することにより各ターン部3t…間の電気絶縁を行う複数のセパレータメンバS1,S2…と、各セパレータメンバS1,S2…が各ターン部3t…間に挿入した際にコイル部2の外部に位置して各セパレータメンバS1,S2…を連結する連結部Srと、を電気絶縁素材により形成し、かつコイル部2の軸心Ksから一方側に位置する各絶縁片部S1p,S2p…S7pの先端部までの各長さLa,Lb…Lgをそれぞれ異ならせるとともに、当該軸心Ksから他方側に位置する各絶縁片部S1q,S2q…S7qの先端部までの各長さLg,Lf…Laをそれぞれ異ならせてなることを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、各セパレータメンバS1,S2…及び連結部Srは、合成樹脂素材により一体成形することができる。なお、セパレータメンバS1,S2…の数は、コイル本体部3におけるターン部3t…の数と同一に設定することが望ましい。また、一方側に位置する各絶縁片部S1p,S2p…S7p(他方側に位置する各絶縁片部S7q,S6q…S1q)は、それぞれコイル部2の軸心Ksに沿って長さLa,Lb…(Lg,Lf…)を段階的に異ならせることができるとともに、一方側に位置する各絶縁片部S1p,S2p…及び他方側に位置する各絶縁片部S1q,S2q…は、軸心Ksに対する垂直線Fvを中心にした点対称に形成することができる。
【0011】
さらに、本発明に係るコイル部品Pは、上述した課題を解決するため、平角線Wfを用いたコイル本体部3及びこのコイル本体部3から導出する平角線Wfの両端に設けたコイル端子部4a,4bを有するコイル部2と、コイル本体部3における各ターン部3t…間に挿入して当該各ターン部3t…間の電気絶縁を行う絶縁セパレータと、を少なくとも備えてなるコイル部品を構成するに際して、U字状に形成することにより少なくとも対峙する一対の絶縁片部S1p,S1q…を有し、かつ各ターン部3t…間に挿入することにより各ターン部3t…間の電気絶縁を行う複数のセパレータメンバS1,S2…と、各セパレータメンバS1,S2…が各ターン部3t…間に挿入した際にコイル部2の外部に位置して各セパレータメンバS1,S2…を連結する連結部Srと、を電気絶縁素材により形成し、かつコイル部2の軸心Ksから一方側に位置する各絶縁片部S1p,S2p…S7pの先端部までの各長さLa,Lb…Lgをそれぞれ異ならせるとともに、当該軸心Ksから他方側に位置する各絶縁片部S7q,S6q…S1qの先端部までの各長さLg,Lf…Laをそれぞれ異ならせた絶縁セパレータSを備えて構成したことを特徴とする。
【0012】
この場合、発明の好適な態様により、コイル部品Pは、コイル本体部3の内周側を覆う内筒部5i及びコイル本体部3の外周側を覆う外装部5eを有するとともに、内筒部5i及び外装部5eの一方の端部に一体形成した端面部5dを有する絶縁ケース部5と、コイル本体部3を収容した絶縁ケース部5の外部に装着するコア部6とを設けて構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明に係るコイル部品P及びその製造方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0014】
(1) 絶縁セパレータSを構成するに際し、コイル部2の軸心Ksから一方側に位置する各絶縁片部S1p,S2p…の先端部までの各長さLa,Lb…をそれぞれ異ならせるとともに、当該軸心Ksから他方側に位置する各絶縁片部S1q,S2q…の先端部までの各長さLg,Lf…をそれぞれ異ならせてなるため、絶縁セパレータSの組付工程では、基本的に各絶縁片部S1p,S2p…(又は各絶縁片部S1q,S2q…)を一つずつターン部3t…間に対して挿入(圧入)可能となり、容易かつ迅速に組付けることができる。これにより、組付性(挿入性)が高められることに伴う生産能率(生産効率)の向上を図ることができ、特に、ターン数が多くなるコイル部品Pにおける改善効果をより高めることができる。
【0015】
(2) 好適な態様により、絶縁セパレータSを構成するに際し、各セパレータメンバS1,S2…及び連結部Srを、合成樹脂素材により一体成形すれば、全体を単一部品として構成できるため、生産性(量産性)及び低コスト性に優れたコイル用絶縁セパレータSとして提供できる。
【0016】
(3) 好適な態様により、絶縁セパレータSを構成するに際し、セパレータメンバS1,S2…の数を、コイル本体部3におけるターン部3t…の数と同一に設定すれば、最も端部に位置するセパレータメンバS1(又はS7)を、コイルボビン(絶縁ケース部5)の一部の機能として兼用できるため、部品点数の削減(半減)に伴うコストダウン及び製造コストの削減を図ることができるとともに、絶縁セパレータSにおける多機能性を高めることができる。
【0017】
(4) 好適な態様により、絶縁セパレータSを構成するに際し、一方側に位置する各絶縁片部S1p,S2p…S7p(他方側に位置する各絶縁片部S1q,S2q…S7q)を、それぞれコイル部2の軸心Ksに沿って長さLa,Lb…(Lg,Lf…)を段階的に異ならせるようにすれば、各絶縁片部S1p,S2p…(各絶縁片部S1q,S2q…)をターン部3t…間に対し、軸心Ksの方向に沿って順番に挿入可能になるため、最も望ましい形態として実施できる。
【0018】
(5) 好適な態様により、絶縁セパレータSを構成するに際し、一方側に位置する各絶縁片部S1p,S2p…と他方側に位置する各絶縁片部S1q,S2q…を、軸心Ksに対する垂直線Fvを中心にした点対称に形成すれば、コイル部2に対して絶縁セパレータSを組付ける際に、軸心Ks方向の向きに左右されることなく組付可能になるため、組付工程の更なる容易化及び能率化に寄与できる。
【0019】
(6) 好適な態様により、コイル部品Pを構成するに際し、コイル本体部3の内周側を覆う内筒部5i及びコイル本体部3の外周側を覆う外装部5eを有するとともに、内筒部5i及び外装部5eの一方の端部に一体形成した端面部5dを有する絶縁ケース部5と、コイル本体部3を収容した絶縁ケース部5の外部に装着するコア部6とを設けて構成すれば、絶縁セパレータSと組合わせた合理的構成を有するコンパクトなコイル部品Pを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の好適実施形態に係るコイル用絶縁スペーサを用いたコイル部品の断面側面図、
図2】同絶縁スペーサの外観斜視図、
図3】同絶縁スペーサの外観側面図、
図4】同絶縁スペーサ及びコイル本体部の外観平面図、
図5】同絶縁スペーサの絶縁片部の先端部を抽出して示す断面側面図、
図6】同絶縁スペーサの絶縁片部の先端部を抽出して示す平面図、
図7】同コイル部品を構成する部品類の斜視図、
図8】同絶縁スペーサのコイル本体部に対する組付説明図、
図9】同コイル部品の断面平面図、
図10】同コイル部品の断面正面図、
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
まず、本実施形態に係るコイル用絶縁スペーサSを含むコイル部品Pの構成部品類について、図1図10を参照して説明する。
【0023】
最初に、本実施形態に係るコイル部品Pの主要部品となるコイル用絶縁スペーサSについて説明する。この絶縁セパレータSは、図2に示すように、コイル部2におけるコイル本体部3の各ターン部3t…間に挿入して当該各ターン部3t…間の電気絶縁を行う機能を備えている。このため、同図に示すように、U字状に形成することにより少なくとも対峙する一対の絶縁片部S1p,S1q…を有し、かつ各ターン部3t…間に挿入することにより各ターン部3t…間の電気絶縁を行う複数のセパレータメンバS1,S2…と、各セパレータメンバS1,S2…が各ターン部3t…間に挿入した際にコイル部2の外部に位置して各セパレータメンバS1,S2…を連結する連結部Srを備えている。
【0024】
この場合、各セパレータメンバS1,S2…及び連結部Srは、電気絶縁性を有する合成樹脂素材(例えば、PET樹脂素材等)により全体を一体成形する。このように、各セパレータメンバS1,S2…及び連結部Srを形成するに際し、合成樹脂素材により一体成形すれば、全体を単一部品として構成できるため、生産性(量産性)及び低コスト性に優れたコイル用絶縁セパレータSとして提供することができる。
【0025】
また、各セパレータメンバS1,S2…S7を形成するに際しては、図2図4に示すように、コイル部2の軸心Ksから、各セパレータメンバS1,S2,S3,S4,S5,S6,S7の一方側に位置する各絶縁片部S1p,S2p,S3p,S4p,S5p,S6p,S7pの先端部までの各長さLa,Lb,Lc,Ld,Le,Lf,Lg(Lb…Lfは図示を省略)をそれぞれ異ならせるとともに、当該軸心Ksから他方側に位置する各絶縁片部S1q,S2q,S3q,S4q,S5q,S6q,S7qの先端部までの各長さLg,Lf,Le,Ld,Lc,Lb,Laをそれぞれ異ならせる。
【0026】
具体的には、図3に示すように、各セパレータメンバS1,S2…における一方側に位置する各絶縁片部S1p,S2p…を、それぞれコイル部2の軸心Ksの方向に沿って、長さLa,Lb…を段階的に異ならせるとともに、他方側に位置する各絶縁片部S1q,S2q…を、それぞれコイル部2の軸心Ksの方向に沿って、長さLg,Lf…を段階的に異ならせる。例示の場合、同図に示すように、一方側に位置する各絶縁片部S1p,S2p…S7pの先端を結ぶ接続線Kpの軸心Ksに対する角度Qpを概ね30〔゜〕程度に設定するとともに、他方側に位置する各絶縁片部S1q,S2q…S7qの先端を結ぶ接続線Kqの軸心Ksに対する角度Qqを概ね-30〔゜〕程度に設定した。このように構成すれば、各絶縁片部S1p,S2p…(各絶縁片部S1q,S2q…)をターン部3t…間に対し、軸心Ksの方向に沿って順番に挿入可能になるため、最も望ましい形態として実施できる。
【0027】
なお、このように構成することにより、一方側に位置する各絶縁片部S1p,S2p…と他方側に位置する各絶縁片部S1q,S2q…は、軸心Ksに対する垂直線Fvを中心にした点対称に形成される。この結果、コイル本体部3に対して絶縁セパレータSを組付ける際には、軸心Ks方向の向きに左右されることなく組付可能になり、組付工程の更なる容易化及び能率化に寄与できる利点がある。
【0028】
ところで、各セパレータメンバS1,S2…は、ターン部3t…間の隙間Cs…に挿入するため、コイル本体部3のターン数が「N」の場合、セパレータメンバS1,S2…の数は、「N-1」で足りる。しかし、本実施形態に係る絶縁スペーサSでは、セパレータメンバS1,S2…の数を、コイル本体部3におけるターン部3t…の数と同一に設定した。これにより、最も端部に位置するセパレータメンバS1(又はS7)は、図1及び図10に示すように、コイル本体部3の軸心Ks方向における最も端部に位置するターン部3tsの外面を覆うことができるため、コイル本体部3の一端側における絶縁構造の構築に利用できる。即ち、コイル本体部3の他端側における絶縁構造は、後述する絶縁ケース部5の端面部5dにより確保されるとともに、コイル本体部3の一端側における絶縁構造は、セパレータメンバS1(又はS7)により確保される。このように、絶縁スペーサSは、コイルボビン(絶縁ケース部5)の一部の機能として兼用できるため、部品点数の削減(半減)に伴うコストダウン及び製造コストの削減を図ることができるとともに、絶縁セパレータSにおける多機能性を高めることができる。なお、セパレータメンバS1(又はS7)は、このような絶縁構造に用いられるため、この絶縁機能を確保できれば、ターン部3tsの外面の全部を覆う形状であるか一部のみを覆う形状であるかは問わないとともに、必要により、より広幅形状に形成する場合を排除するものではない。
【0029】
一方、各絶縁片部S1p…,S1q…の先端部は、ターン部3t…間の隙間Cs…に容易に挿入できる形状を選定することが望ましい。図5(a)-(c)に、絶縁片部S1p(他の絶縁片部S2p…,S1q…も同様)における先端部の断面側面形状の一例を示すとともに、図6(a)及び(b)に、同先端部の平面形状の一例を示す。図5(a)は、先端部を横台形状に形成した例、図5(b)は、先端部を半円形に形成した例、図(c)は、先端部を三角形状に形成した例を示す。例示の形状は一例であり、容易かつ円滑に挿入できる形状であれば、他の各種形成を選定可能である。また、図6(a)は、先端部の平面形状を最も一般的となる平坦形状に選定した例を示すとともに、図6(b)は、先端部の平面形状を半円形状に選定した例を示す。その他、各絶縁片部S1p…,S1q…は、コイル製品Pに要求される絶縁性能を満たす厚さを選定するとともに、ターン部3t…間に挿入した際は、図1及び図10に示すように、ターン部3t…の表面に面接触できるように形成素材等を選定する。
【0030】
次に、絶縁セパレータS以外の他の部品類について説明する。2はコイル部を示す。このコイル部2は、図7に示すように、導電性素材(銅素材等)を用いた断面が長方形となる平角線Wfを円形に巻回形成したコイル本体部3を有し、このコイル本体部3から導出する平角線Wfの両端は、図9に仮想線で示すように、一対のコイル端子部4a,4bとして形成する。例示するコイル部2は、コイル本体部3のターン数が7巻である。なお、一つのターン部3tが一巻分となる。
【0031】
5はコイルボビンを兼ねた絶縁ケース部を示す。絶縁ケース部5は、コイル本体部3の内周側を覆う内筒部5iとコイル本体部3の外周側を覆う外装部5eを有するとともに、内筒部5i及び外装部5eの一方の端部には一体形成した端面部5dを有する。絶縁ケース部5は、電気絶縁性を有する合成樹脂素材により全体を一体成形する。
【0032】
6はコイル本体部3を収容した絶縁ケース部5の外部に装着する磁性材により形成したコア部を示す。例示のコア部6は、一対のコア半部6uと6dの組合わせにより構成する。コア半部6uと6dは同一部品となるため、一体成形した二つのコア半部を用意し、一方をコア半部6uとして使用し、他方をコア半部6dとして使用すればよい。この場合、一つのコア半部6uは、正面視の全体をE型に形成し、絶縁ケース部5の外装部5eの外部に位置するコの字形のアウタコア部6ueと、このアウタコア部6ueの中央から円柱形に突出することにより絶縁ケース部5の内筒部5iに挿入するインナコア部6uiにより構成する。
【0033】
次に、本実施形態に係るコイル部品Pの製造方法、特に、コイル部2に対する絶縁スペーサSの組付方法について、各図を参照して説明する。
【0034】
まず、コイル部2は、銅素材等の導電性素材により形成したプレート基材から、型(パンチ)を用いて打ち抜き形成したコイル基材により製作する。この場合、コイル基材は直線状の平角線Wfとなるため、このコイル基材を曲げ処理(湾曲形成)することによりコイル2を製作することができる。なお、絶縁セパレータS及び絶縁ケース部5は、予め別途の成形機等を用いて製作するとともに、コア半部6u…は、予め別途の焼成処理等により製造する。
【0035】
そして、コイル部2に対して、本実施形態に係る絶縁セパレータSの組付けを行う。図8(a)-(c)は、コイル部2に対する絶縁スペーサSの組付説明図を示す。なお、例示は、人的作業により組付を行う場合を説明するが、自動プロセスにより製造する場合でも同様に適用することができる。
【0036】
組付けに際しては、コイル本体部3と絶縁セパレータSの位置関係を、図8(a)に示すようにセットし、図7に矢印F1方向で示すように、コイル本体部3に対する絶縁セパレータSの組付けを行う。この際、図8(b)に示すように、コイル本体部3の軸心Ks方向における最も端部に位置するターン部3tsの外面に、セパレータメンバS1(又はS7)の最も長い長さL1の絶縁片部S1pの先端部を当接させ、この状態で二番目に長い長さL2を有する一方側の絶縁片部S2pの先端部を、ターン部3tsとこのターン部3tsに隣接するターン部3t間の隙間Csに挿入するとともに、さらに、この絶縁片部S2pに対して、比較的離れた位置にある他方側の絶縁片部S7q、即ち、絶縁片部S1pに対して、軸心Ks方向の反対側における最も端部に位置する仮想線で示す絶縁片部S7qを、コイル本体部3の軸心Ks方向の反対側における最も端部に位置するターン部3tと隣接するターン部3t間の隙間Csに挿入する。
【0037】
この場合、絶縁片部S7qは絶縁片部S2pに対して離れた位置にあり、相互間の干渉はほとんど発生しないため、容易かつ円滑に挿入することができる。また、この状態においては、図8(b)に示すように、他の絶縁片部S3p…,S6q…の先端部は、コイル本体部2の外周面の外方に位置するため、各絶縁片部S2p,S7qの挿入に対して干渉することはない。
【0038】
そして、以降は、絶縁片部S3p,S6q,S4p,S5q,S5p,S4q…の順に、対応する各ターン部3t…間に対して順次同様に挿入することができる。これにより、最終的に、図8(c)に示すように、コイル本体部3に対する絶縁セパレータSの組付けを行うことができる。なお、従来のコイル部品では、二つのセパレータ部材を使用したが、本実施形態に係る絶縁セパレータSは一つで足りる。一つの絶縁セパレータSであっても、図9に示すように、各ターン部3t…の表面のほぼ2/3の領域を覆うことができるため、安定した絶縁空間を維持することができる。
【0039】
絶縁セパレータSを組付けたコイル部2は、この後、図7に示すように、矢印F2方向から絶縁ケース部5に収容する。この際、図10に示すように、絶縁ケース部5の内筒部5iはコイル本体部3の内周側に収容されるとともに、コイル本体部3の外周側は絶縁ケース部5の外装部5eにより覆われる。また、絶縁ケース部5の端面部5dは、コイル本体部3の他端側の端面を覆う。
【0040】
次いで、図7に示すように、コア半部6dを、絶縁ケース部5の端面部5d側に対して矢印F3方向から装着するとともに、コア半部6uを、絶縁ケース部5の開放側に対して矢印F4方向から装着する。これにより、コア半部6dと6uは当接し、一体化されたコア部6が構成されるため、コア半部6dと6uに不図示の樹脂テープを巻付けるなど、テーピングによりコア半部6dと6uを固定する。これにより、図1図9及び図10に示すコイル部品Pを得ることができる。
【0041】
このように、コイル部品Pを構成するに際し、コイル本体部3の内周側を覆う内筒部5i及びコイル本体部3の外周側を覆う外装部5eを有するとともに、内筒部5i及び外装部5eの一方の端部に一体形成した端面部5dを有する絶縁ケース部5と、コイル本体部3を収容した絶縁ケース部5の外部に装着するコア部6とを設けて構成すれば、本実施形態に係る絶縁セパレータSと組合わせた合理的構成を有するコンパクトなコイル部品Pを得ることができる。
【0042】
よって、このような本実施形態に係るコイル部品P(コイル用絶縁セパレータS)によれば、基本的な構成として、U字状に形成することにより少なくとも対峙する一対の絶縁片部S1p,S1q…を有し、かつ各ターン部3t…間に挿入することにより各ターン部3t…間の電気絶縁を行う複数のセパレータメンバS1,S2…と、各セパレータメンバS1,S2…が各ターン部3t…間に挿入した際にコイル部2の外部に位置して各セパレータメンバS1,S2…を連結する連結部Srと、を電気絶縁素材により形成し、かつコイル部2の軸心Ksから一方側に位置する各絶縁片部S1p,S2p…S7pの先端部までの各長さLa,Lb…Lgをそれぞれ異ならせるとともに、当該軸心Ksから他方側に位置する各絶縁片部S1q,S2q…S7qの先端部までの各長さLg,Lf…Laをそれぞれ異ならせたコイル用絶縁セパレータSを用いたため、絶縁セパレータSの組付工程では、基本的に各絶縁片部S1p,S2p…(又は各絶縁片部S1q,S2q…)を一つずつターン部3t…間に対して挿入(圧入)可能となり、容易かつ迅速に組付けることができる。これにより、組付性(挿入性)が高められることに伴う生産能率(生産効率)の向上を図ることができ、特に、ターン数が多くなるコイル部品Pにおける改善効果をより高めることができる。
【0043】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0044】
例えば、絶縁セパレータSを構成するに際し、各セパレータメンバS1,S2…及び連結部Srは、合成樹脂素材により一体成形する場合を示したが、二部品(複数部品)の組合わせにより構成する場合を排除するものではないとともに、この場合、二素材(複数素材)を用いる場合を排除するものではない。また、セパレータメンバS1,S2…の数は、コイル本体部3におけるターン部3t…の数と同一に設定することが望ましいが、ターン部3t…の数に対して、一つのセパレータメンバを減らした数のセパレータメンバS1,S2…により実施する場合を排除するものではない。さらに、一方側に位置する各絶縁片部S1p,S2p…S7p(他方側に位置する各絶縁片部S7q,S6q…S1q)は、それぞれコイル部2の軸心Ksに沿って長さLa,Lb…(Lg,Lf…)を段階的に異ならせることが望ましいが、長さLa,Lb…(Lg,Lf…)の異なる位置をランダムに設定する場合を排除するものではない。一方、電気絶縁素材として合成樹脂素材を例示したが、合成樹脂素材として各種素材を利用できるとともに、セラミック素材など、合成樹脂素材以外の電気絶縁素材を用いてもよい。他方、コイル部品Pとして、コイル本体部3の内周側を覆う内筒部5i及びコイル本体部3の外周側を覆う外装部5eを有するとともに、内筒部5i及び外装部5eの一方の端部に一体形成した端面部5dを有する絶縁ケース部5と、コイル本体部3を収容した絶縁ケース部5の外部に装着するコア部6とを設ける場合を示したが、例えば、コイル部2に絶縁セパレータSを装着した状態のコイル部品Pを、そのまま電子機器等の基板に実装して使用する場合などの使用形態(製品形態)を排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係るコイル用絶縁セパレータ及びコイル部品は、コイル本体部の各ターン部間に挿入して当該各ターン部間の電気絶縁を行うインダクタ,トランス等の各種のコイル部品において利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
S:コイル用絶縁セパレータ,P:コイル部品,2:コイル部,3:コイル本体部,3t…:ターン部,4a:コイル端子部,4b:コイル端子部,5:絶縁ケース部,5i:内筒部,5e:外装部,5d:端面部,6:コア部,Wf:平角線,S1:セパレータメンバ,S2…:セパレータメンバ,S1p:一方側に位置する絶縁片部,S2p…S7p:一方側に位置する絶縁片部,S1q:他方側に位置する絶縁片部,S2q…S7q:他方側に位置する絶縁片部,Sr:連結部,Ks:コイル部の軸心,La:長さ,Lb…Lg:長さ,Fv:垂直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10