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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】ねじ供給装置及びねじ締めロボット
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/14 20060101AFI20240126BHJP
   B65G 47/84 20060101ALN20240126BHJP
【FI】
B65G47/14 101C
B65G47/14 H
B65G47/84 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020107368
(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公開番号】P2022002987
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】株式会社ジャノメ
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 諒
(72)【発明者】
【氏名】真船 潤
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-013596(JP,A)
【文献】特開平8-155758(JP,A)
【文献】特開2012-056070(JP,A)
【文献】特開平7-330162(JP,A)
【文献】特開昭64-058429(JP,A)
【文献】特開2008-087946(JP,A)
【文献】実開昭60-033516(JP,U)
【文献】特開平6-115675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/14
B65G 47/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のねじを整列及び前進させる振動レールと、
前記ねじが収まる切り欠き部を有し、前記切り欠き部を前記振動レールに対向する受け取り位置から移動させることで前記整列した複数のねじから所定のねじを離間させる切り出し機構と、
前記振動レール及び前記切り出し機構を駆動させるモータを有する駆動機構と、を備えるねじ供給装置であって、
前記駆動機構は、前記モータの回転力を前記振動レール及び前記切り出し機構に伝達させる第一状態と、前記モータの回転力を前記振動レールに伝達させる一方で前記切り出し機構への伝達は遮断する第二状態と、に切り替え可能な切り替え機構を備えることを特徴とするねじ供給装置。
【請求項2】
前記切り欠き部が前記受け取り位置に移動したことを検知する移動検知手段を備え、
前記移動検知手段の検知結果に基づいて前記第一状態と前記第二状態との切り替えを実行することを特徴とする請求項1に記載のねじ供給装置。
【請求項3】
前記ねじが前記振動レールから前記切り欠き部に受け取られたことを検知する受け取り検知手段を備え、
前記受け取り検知手段の検知結果に基づいて前記第一状態と前記第二状態との切り替えを実行することを特徴とする請求項1又は2に記載のねじ供給装置。
【請求項4】
前記切り替え機構は、前記モータが一の方向に回転する際は前記第一状態に切り替わり、前記モータが他の方向に回転する際は前記第二状態に切り替わることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のねじ供給装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載のねじ供給装置を備えたねじ締めロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、向きがバラバラのねじを整列させつつ移動させ、作業者等に一定の個数ずつ提供することが可能なねじ供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業者やロボットがねじ締め作業を行うにあたっては、収容した複数のねじを一定の個数ずつ提供することが可能なねじ供給装置が使用される。ねじ供給装置は、例えばレールと切り出し機構とを備えていて、切り出し機構はレールに対してねじの進行方向前方に設配置される。ねじ供給装置の収容部には、向きがバラバラの状態で複数のねじが収容されていて、これらのねじは、レール上で整列しつつ前進する。そして切り出し機構は、前進するねじをレールから1個ずつ受け取ってこれを受け渡し場所へ移動させる。
【0003】
このようなねじ供給装置においては、特許文献1に示されているように、レールからのねじの受け取りと作業者等へのねじの受け渡しを同時に行い、作業時間を短縮することができるものも提案されている。特許文献1のねじ供給装置は、切り出し機構として回転可能な円板を備えていて、この円板には、ねじが1個ずつ収まる切り欠き部が180度間隔で少なくとも2つ設けられている。またレールは、円板の回転中心を基点として受け渡し場所に対して180度回転したところに設けられている。すなわち、切り欠き部の一方に収まったねじを受け渡し場所へ移動させてこれが取り出されるまで待機しているとき、他方の切り欠き部はレールに対向する位置にあるため、この間にレールから切り欠き部へねじを移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-13596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に示されたものも含めてこのようなレールは、振動によってねじを前進させるものであるため、レールを移動するねじの速度は一定であるとは限らない。またねじの移動速度は、ねじの質量や形状、大きさ等によっても変化する。このような点を考慮して従来のねじ供給装置は、特許文献1に示されているように、切り出し機構を動作させるモータとは別に、レールを振動させる第二のモータを備えている。そして切り出し機構の円板部が停止した後も、第二のモータでねじの速度変化に応じた時間レールを振動させることによって、レール上で整列した先頭のねじが円板の切り欠き部へ確実に移動するようにしている。
【0006】
このように従来のねじ供給装置では、レールのみを振動させておく機能を持たせるために最低2つのモータを必要としており、装置の大型化、複雑化を招くとともにコストの増加にもつながっている。
【0007】
このような問題点に鑑み、本発明は、停止した切り出し機構にねじを移動させるにあたってレールを振動させる時間を変更することが可能であり、また必要となるモータの数を減らすことも可能なねじ供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数のねじを整列及び前進させる振動レールと、前記ねじが収まる切り欠き部を有し、前記切り欠き部を前記振動レールに対向する受け取り位置から移動させることで前記整列した複数のねじから所定のねじを離間させる切り出し機構と、前記振動レール及び前記切り出し機構を駆動させるモータを有する駆動機構と、を備えるねじ供給装置であって、前記駆動機構は、前記モータの回転力を前記振動レール及び前記切り出し機構に伝達させる第一状態と、前記モータの回転力を前記振動レールに伝達させる一方で前記切り出し機構への伝達は遮断する第二状態と、に切り替え可能な切り替え機構を備えることを特徴とする。
【0009】
このようなねじ供給装置は、前記切り欠き部が前記受け取り位置に移動したことを検知する移動検知手段を備え、前記移動検知手段の検知結果に基づいて前記第一状態と前記第二状態との切り替えを実行することが好ましい。
【0010】
またねじ供給装置は、前記ねじが前記振動レールから前記切り欠き部に受け渡されたことを検知する受け取り検知手段を備え、前記受け取り検知手段の検知結果に基づいて前記第一状態と前記第二状態との切り替えを実行することが好ましい。
【0011】
そして前記切り替え機構は、前記モータが一の方向に回転する際は前記第一状態に切り替わり、前記モータが他の方向に回転する際は前記第二状態に切り替わるものであることが好ましい。
【0012】
また本発明は、このようなねじ供給装置を備えたねじ締めロボットでもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明のねじ供給装置は切り替え機構を備えていて、これによりモータの回転力を振動レール及び切り出し機構に伝達させる第一状態と、モータの回転力を振動レールに伝達させる一方で切り出し機構への伝達は遮断する第二状態とに切り替えることができる。従って、振動レールと切り出し機構とが同一のモータによって動作されるように構成したとしても、切り出し機構を停止させたまま振動レールのみを動作させることができ、またその動作時間を任意に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るねじ供給装置の第一実施形態を示した外観図である。
図2図1に示したねじ供給装置の内部構造を概略的に示した図である。
図3図2に示した切り替え機構の動作に関する説明図である。
図4図2に示した間欠駆動機構の動作に関する説明図である。
図5図1に示したねじ供給装置のブロック図である。
図6図1に示した振動レールから切り出し機構へのねじの受け取りに関する説明図である。
図7図1に示したねじ供給装置における各部のタイミングチャートの一例である。
図8】本発明に係るねじ供給装置の第二実施形態に関し、その内部構造を概略的に示した図である。
図9図8に示したねじ供給装置のブロック図である。
図10図8に示したねじ供給装置のタイミングチャートの一例である。
図11】本発明に係るねじ供給装置の第三実施形態が備える受け取り検知手段を示した外観図である。
図12】本発明に係るねじ締めロボットの一実施形態に関するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1図7を参照しながら、本発明に係るねじ供給装置の第一実施形態であるねじ供給装置1について説明する。以下の説明においては、便宜上、ねじ供給装置1を図1に示す方向から見た状態での向きで説明することとする。また以下の説明におけるX、Y、Z方向とは、図面に示した矢印X、Y、Zに沿う方向であって、ねじ供給装置1を正面から見た際の前後方向をX方向、左右方向をY方向、上下方向をZ方向とする。なお図1におけるねじ供給装置1は、説明の都合上、手前側のカバーを一部省略して内部が表れる状態で示している。
【0016】
まず、ねじ供給装置1の概要を説明する。図1に示すようにねじ供給装置1は、上側に向けて開口するねじ投入口2と、ねじ投入口2から投入された複数のねじSを収容するねじ収容部3とを備えている。ねじ収容部3に収容されたねじSは、向きがバラバラの状態になっている。ねじ収容部3におけるX方向中間部分には、Y方向に沿って延在していて、後述する振動発生カムによって主にY方向に振動する振動レール4が設けられている。振動レール4の近傍には、ねじ収容部3の床部の一部を構成するとともに上下運動するブロック状の押上部5が設けられている。本実施形態の押上部5は、図2に示すように振動レール4に対して前側に位置する前側ブロック5aと、振動レール4に対して後側に位置する後側ブロック5bで構成されている。そして振動レール4の上側には、前後方向に揺動可能なブラシ部6が設けられている。振動レール4の右側には切り出し機構7が設けられていて、切り出し機構7の右側には、ねじSを検知可能なねじセンサ8が設けられている。
【0017】
振動レール4は、図1における部分拡大図に示すように、板状又はブロック状になる一対の部材が所定の間隔Pで平行に設置されているものである。間隔Pは、ねじSの雄ねじ部S1の幅よりも広く、頭部S2の幅よりも狭く設定されている。このような振動レール4によってねじSは、雄ねじ部S1が下方を向くとともに頭部S2が振動レール4の上面に引っ掛かった状態で支持される。また振動レール4は、図2に示すように左側から加振されるように構成されていて、整列したねじSを右側に前進させることができる。
【0018】
切り出し機構7は、全体的に円形をなしていて回転可能な円板9と、円板9が嵌まる円形の孔を有するとともに振動レール4の右側端部に対向する側が切り欠かれた基台10とを備えている。なお基台10における切り欠かれた部位の幅は、振動レール4の間隔Pと略同一である。また振動レール4と円板9と基台10とは、上面の高さが揃った状態で配置されている。円板9の外縁部には、半円状の切り欠き部9aが設けられている。切り欠き部9aは、円板9の径方向外側へ向けて開口する部位での幅が、振動レール4の間隔Pと略同一であって、本実施形態では、90度間隔で合計4個設けられている。このような切り出し機構7においては、振動レール4の右側端部に対して一つの切り欠き部9aを対向させた状態にしておき、この状態で整列したねじSを前進させると、先頭のねじSのみが、頭部S2が円板9に引っ掛かった状態で切り欠き部9aに嵌まり込む。そしてこの状態で円板9を回転させることにより、整列した複数のねじSから1つのねじSだけを所定の位置へ移動させることができる。なお本明細書等では、切り欠き部9aが振動レール4の右側端部に対向する位置を「受け取り位置」と称し、受け取り位置に対して円板9の中心を基点として180度回転した位置を、「受け渡し位置」と称する。
【0019】
ねじセンサ8は、光を発する発光部8aと、発光部8aからの光を受ける受光部8bとを備えていて、光を遮蔽する物体の有無を検知するものである。本実施形態のねじセンサ8は、発光部8aと受光部8bとを結ぶ光軸8cがX方向を指向し、且つ受け渡し位置に重なる位置に設けられていて、円板9が回転する際に頭部S2が光を遮蔽することによって、ねじSが受け渡し位置近傍に移動したことを検知する。ねじセンサ8は、本明細書等において「移動検知手段」と称する手段の一つである。
【0020】
ここで、図2等を参照ながらねじ供給装置1の内部に設けられた駆動機構11について説明する。駆動機構11は、振動レール4を振動させ、また切り出し機構7の円板9を回転させることが可能なモータ12を備えている。モータ12の回転シャフトには、モータ歯車13が設けられていて、モータ歯車13には、前側に位置する前側歯車14と後側に位置する後側歯車15が噛み合っている。
【0021】
まず前側歯車14、及びこれにつながる部分について説明する。前側歯車14は、前側シャフト16に連結している。前側シャフト16の左側には、前側シャフト16とともに回転し、外縁部に凹凸部を備える振動発生カム17が設けられている。振動発生カム17の近傍には、一端部が振動レール4の左側端部に連結するとともに他端部が振動発生カム17の凹凸部によって弾かれるように構成され、弾かれた際の振動で振動レール4を加振する振動伝達アーム18が設けられている。
【0022】
また前側歯車14は、前側連結アーム19を介して前側ブロック5aとつながっている。前側連結アーム19は、前側歯車14に対してその中心から偏心した部位に連結していて、前側歯車14を回転させると前側ブロック5aを上下運動させることができる。
【0023】
そして前側シャフト16の右側には、切り替え機構20が設けられている。切り替え機構20は、前側シャフト16と従動側シャフト21との間に設けられるものであって、前側シャフト16の回転力を従動側シャフト21へ伝達、又は遮断する機能を有する。本実施形態の切り替え機構20は、図2の部分拡大図に示すように、ばね保持ピン22、圧縮ばね23、クラッチ歯車24、ガイドピン25、固定歯車26、固定ねじ27を備えている。また前側シャフト16は、ばね保持ピン22とガイドピン25をそれぞれ固定保持する2つの孔を備えている。
【0024】
圧縮ばね23とクラッチ歯車24は、ばね保持ピン22を前側シャフト16に固定保持した後、前側シャフト16に挿通される。クラッチ歯車24には、Y方向に延在する長孔24aが設けられていて、ガイドピン25を長孔24aに挿入するとともに前側シャフト16の孔に挿入することによって、圧縮ばね23とクラッチ歯車24は、前側シャフト16に保持される。この状態においてクラッチ歯車24は、圧縮ばね23によって、ばね保持ピン22から離れる向きに付勢されている。
【0025】
固定歯車26は、従動側シャフト21に挿通され、固定ねじ27を締めることによって従動側シャフト21に固定保持される。
【0026】
ところでクラッチ歯車24と固定歯車26は、歯部24b、歯部26aによって噛み合っている。図3に示すように歯部24bと歯部26aは、山形状に形成されていて、平面視で前側(X方向マイナス側)に位置する山形の一辺はY方向に延在する一方、後側(X方向プラス側)に位置する一辺はY方向に対して傾いて延在している。このため、図3(b)に示すA方向に前側シャフト16を回転させると、歯部24bと歯部26aが噛み合ったまま、従動側シャフト21もA方向に回転する。一方、図3(c)に示すB方向に前側シャフト16を回転させると、クラッチ歯車24は、歯部26aが歯部24bに及ぼす力によって圧縮ばね23の付勢力に抗してばね保持ピン22に近づく向きに移動する。従って、歯部24bと歯部26aとの噛み合いが外れるため、前側シャフト16が回転する一方で従動側シャフト21を停止させておく、つまり従動側シャフト21への前側シャフト16の回転力の伝達を遮断することができる。
【0027】
従動側シャフト21には、従動側シャフト21とともに回転する原動側かさ歯車28が設けられている。原動側かさ歯車28は、従動側かさ歯車29に噛み合っていて、従動側かさ歯車29は、Z方向に延在する縦型第一シャフト30の一端部に連結している。
【0028】
縦型第一シャフト30の他端部には、原動側間欠歯車31が設けられている。原動側間欠歯車31は、従動側間欠歯車32と噛み合っていて、従動側間欠歯車32は、Z方向に延在する縦型第二シャフト33の一端部に連結している。縦型第二シャフト33の他端部は、上述した円板9に連結している。
【0029】
ここで、原動側間欠歯車31と従動側間欠歯車32について図4を参照しながら詳細に説明する。なお図4に示した点aは、原動側間欠歯車31と従動側間欠歯車32の回転量を説明するために便宜上示した印である。原動側間欠歯車31と従動側間欠歯車32は、相互に噛み合う歯部31a、32aと、噛み合うことがない非歯部31b、32bとを備えている。図示したように本実施形態の原動側間欠歯車31には、その外縁部の約半周に亘って歯部31aが設けられていて、残りの約半周に非歯部31bが設けられている。また従動側間欠歯車32には、非歯部32bが90度間隔で設けられていて、残りの部分に歯部32aが設けられている。本実施形態での原動側間欠歯車31における歯部31aの歯数と従動側間欠歯車32における歯部32aの歯数の割合は、1:4に設定されている。このような構成になる原動側間欠歯車31と従動側間欠歯車32によれば、図4(a)~(e)に示すように、原動側間欠歯車31を回転させると、非歯部31bと非歯部32bが対向する状態では従動側間欠歯車32は停止したままである一方、歯部31aと歯部32aが噛み合うと従動側間欠歯車32も回転し始める。また歯部31aと歯部32aの歯数の割合は1:4であるため、原動側間欠歯車31が1周回転する間、従動側間欠歯車32は1/4周回転する。従って、原動側間欠歯車31が回転し続けていても、従動側間欠歯車32は、一定時間停止した後に90度回転し、再び一定時間停止した後に90度回転するという動作を繰り返す。
【0030】
次に、後側歯車15につながる部分について説明する。後側歯車15は、後側シャフト34に連結している。後側シャフト34の右側には、長円状をなしていてその長手方向端部が後側シャフト34に連結する偏心カム35が設けられている。偏心カム35の上側には、上下方向に移動可能であって下端部が偏心カム35に当接する縦型アーム36が設けられている。縦型アーム36の上端部は、揺動可能に設けられた揺動アーム37の一端部に係合している。揺動アーム37の他端部は、上述したブラシ部6に係合している。このような構成により、後側歯車15が回転すると偏心カム35も回転し、それに伴い縦型アーム36が上下運動して揺動アーム37を揺動させるため、揺動アーム37につながるブラシ部6を揺動させることができる。
【0031】
また後側歯車15は、後側連結アーム38を介して後側ブロック5bとつながっている。後側連結アーム38は、後側歯車15に対してその中心から偏心した部位に連結していて、後側歯車15を回転させると後側ブロック5bを上下運動させることができる。
【0032】
次に、本実施形態におけるねじ供給装置1の電気的な接続について、図5のブロック図を参照しながら説明する。制御装置39には上述したモータ12が接続されていて、制御装置39からの指令に基づいてモータ12の駆動を制御することができる。また制御装置39には、上述したねじセンサ8も接続されていて、光軸8cを遮蔽する物体の有無に関する信号が制御装置39に伝達される。なお、ねじセンサ8からの信号は、後述するようにモータ12の駆動に使用される他、ねじSが受け渡し位置に移動したことを作業者に報知する、或いは不図示のねじ締めロボットに送信してねじSの受け取りを実行させる際に利用される。また制御装置39には、操作装置40と所定時間記憶装置41が接続されている。操作装置40は、ねじ供給装置1に対する各種の操作(ねじ供給装置1の始動、停止、データの入力等)を行うための装置である。所定時間記憶装置41は、後述する各種の所定時間を記憶する装置である。なお、所定時間記憶装置41で記憶される時間は、操作装置40によって設定、変更が可能である。
【0033】
このような構成になるねじ供給装置1は、制御装置39からの指令に基づいてモータ12を駆動させ、図2に示すようにモータ歯車13を、A方向又はB方向に回転させることができる。詳細については後述するが、モータ歯車13をA方向に回転させた際、その回転力は振動レール4及び切り出し機構7に伝達される状態となり(本明細書等ではこの状態を「第一状態」と称する)、モータ歯車13をB方向に回転させた際、その回転力は振動レール4に伝達される一方で切り出し機構7への伝達は遮断される状態になる(本明細書等ではこの状態を「第二状態」と称する)。
【0034】
まず、第一状態及び第一状態におけるねじの動きについて説明する。モータ歯車13がA方向に回転するようにモータ12を駆動させると、前側歯車14もA方向に回転するため、前側連結アーム19を介して前側ブロック5aが上下に移動する。前側歯車14がA方向に回転する際は、前側シャフト16とともに振動発生カム17も回転し、振動発生カム17の凹凸部によって振動伝達アーム18が弾かれて、その際の振動で振動レール4が加振される。またモータ歯車13をA方向に回転させると、後側歯車15もA方向に回転するため、後側連結アーム38を介して後側ブロック5bが上下に移動する。後側歯車15がA方向に回転する際は、偏心カム35もA方向に回転し、それに伴い、縦型アーム36が上下運動して揺動アーム37を揺動させ、揺動アーム37につながるブラシ部6が揺動する。
【0035】
このようにモータ歯車13をA方向に回転させた際、ねじ収容部3に収容されたねじSは、前側ブロック5a、後側ブロック5bが上昇することで振動レール4の上側まで押し上げられる。そして、雄ねじ部S1が振動レール4の間に挿入可能なねじSは振動レール4の隙間に嵌まり込み、それ以外のものはねじ収容部3の床部へ落下する。なお、振動レール4に嵌まり込まずにその上部に載った状態のねじSは、ブラシ部6が揺動することで振動レール4からはじかれてねじ収容部3の床部へ落下するため、振動レール4には、雄ねじ部S1が下方を向いた姿勢のねじSだけが一列に並ぶことになる。そして整列したねじSは、振動レール4の振動によって、切り出し機構7に向けて前進する。
【0036】
前側歯車14がA方向に回転する際に切り替え機構20は、前側シャフト16とともにクラッチ歯車24がA方向に回転する。上述したようにクラッチ歯車24がA方向に回転する際、クラッチ歯車24の歯部24bと固定歯車26の歯部26aは噛み合っているため、クラッチ歯車24とともに固定歯車26もA方向に回転する。従って、従動側シャフト21、原動側かさ歯車28等も回転して、原動側間欠歯車31と従動側間欠歯車32も回転する。なお上述したように、原動側間欠歯車31は回転し続けていても、従動側間欠歯車32は一定時間停止した後に90度回転し、再び一定時間停止した後に90度回転するという動作を繰り返す。従って、縦型第二シャフト33を介して従動側間欠歯車32つながる円板9も、従動側間欠歯車32と同様に間欠的に動作する。
【0037】
図6(a)は、円板9が停止した直後の状態を示している。円板9に設けた切り欠き部9aの一つは、振動レール4の右側端部に対向している位置で停止している。モータ12の駆動によってモータ歯車13がA方向に回転し続けている間、円板9は一定時間停止しているものの、振動レール4は振動していて整列したねじSを前進させるため、図6(b)に示すように先頭のねじSが、切り欠き部9aに受け取られる。そして一定時間経過した後、円板9は、図6(b)に示した矢印の向きに90度回転することで、整列したねじから先頭のねじSだけが離間される。
【0038】
これに対して第二状態では、モータ歯車13が逆方向(B方向)に回転するようにモータ12を駆動させ、前側歯車14を逆方向(B方向)に回転させる。ここで前側ブロック5aは、前側連結アーム19を介して前側歯車14につながっているため、前側歯車14の逆方向への回転にかかわらず、上下に移動する。また振動発生カム17もB方向に回転するものの、振動発生カム17の凹凸部によって振動伝達アーム18が弾かれるため、振動レール4は加振される。またこの場合は後側歯車15も逆方向(B方向)に回転するものの、後側ブロック5bは上下に移動し、ブラシ部6は揺動する。従ってモータ歯車13がB方向に回転する場合も、これがA方向に回転する場合と同様に、振動レール4にねじSを整列させてこれらを切り出し機構7に向けて前進させることができる。
【0039】
一方、モータ歯車13がB方向に回転する場合、図3(c)に示すように切り替え機構20のクラッチ歯車24は、圧縮ばね23の付勢力に抗してばね保持ピン22に近づく向きに移動するため、歯部24bと歯部26aとの噛み合いが外れてクラッチ歯車24から従動側シャフト21への回転力が遮断される。従って円板9は、モータ歯車13がA方向に回転する場合とは異なり、間欠的に動作することなく停止したままとなる。
【0040】
なお整列したねじSは、振動レール4の振動によって移動するため、その移動速度は一定であるとは限られない。またその移動速度は、ねじSの質量や形状、大きさ等によっても変化する。従って、振動レール4で整列した先頭のねじSが切り欠き部9aへ移動するまでに要する移動時間(以下、この時間を「必要移動時間TN」と称する)も変わることになる。一方、モータ歯車13がA方向に回転する際に円板9が停止している時間は一定である。従って、円板9が停止している時間よりもねじSの必要移動時間TNが短い場合は、振動レール4で整列したねじSを切り欠き部9aで受け取ることが可能であるが、円板9が停止している時間よりもねじSの必要移動時間TNが長くなると、振動レール4からのねじSを切り欠き部9aで受け取ることができなくなる。このため本実施形態のねじ供給装置1では、ねじSを切り欠き部9aで確実に受け取ることができるように、以下に説明するようにしてモータ12を駆動させている。
【0041】
図7は、ねじ供給装置1におけるモータ12等のタイミングチャートの一例である。図7において横軸は経過時間を示し、縦軸は各部の状態を示している。初期状態においてモータ12は、タイミングチャートの左端に示すように停止しているものとする。また初期状態においてねじSは、図6(b)に示すように、受け取り位置の切り欠き部9aのみに収まっているものとする。そしてタイミングチャートに示した時間T1(以下、「第一所定時間T1」と称する)とT2(以下、「第二所定時間T2」と称する)は、所定時間記憶装置41に記憶されているものとする。なお、第一所定時間T1と第二所定時間T2についての詳細な説明は後述する。
【0042】
操作装置40によってねじ供給装置1を始動させると、制御装置39からの指令に基づいて、停止していたモータ12はA方向に回転する。これにより、振動レール4は振動し、押上部5は上下運動し、ブラシ部6は揺動する。また円板9は、ある時間停止しているものの、その後、図6(b)に示した矢印の向きに90度回転し、その後一定時間停止するというように、間欠的に動作する。なお、タイミングチャートに示した符合TRは、モータ12をA方向に回転させた際に円板9が90度回転する時間(以下、「回転時間TR」と称する)であり、符合TSは、モータ12をA方向に回転させた状態で円板9が一定時間停止する時間(以下、「間欠停止時間TS」と称する)である。
【0043】
図示したタイミングチャートでモータ12を駆動させた際、原動側間欠歯車31が初期状態から1回転しても(すなわち円板9が図6(b)に示した初期状態から矢印の向きに90度回転しても)、切り欠き部9aに収まったねじSは、ねじセンサ8における光軸8cの位置までは到達していないため、発光部8aからの光は受光部8bで受光された状態にある。その後、原動側間欠歯車31が更に1回転する(初期状態から2回転する)最中で、発光部8aからの光はねじSの頭部S2によって遮蔽される。発光部8aからの光を遮蔽した直後のねじSの位置は、一般的に受け渡し位置よりも回転方向手前側にある。従って本実施形態では、ねじSが発光部8aからの光を遮蔽してから第一所定時間T1が経過するまでモータ12は駆動させておき、ねじSを確実に受け渡し位置に移動させるようにしている。なお、発光部8aからの光を遮蔽した直後のねじSの位置は、頭部S2の形状や大きさ等によって変わるものの、円板9は90度回転する毎に一定時間停止するため、第一所定時間T1をそれ程厳密に設定しなくても、ねじSを受け渡し位置で確実に停止させることができる。第一所定時間T1は、一般的には間欠停止時間TSの1/2程度に設定しておけばよい。
【0044】
そして第一所定時間T1経過した後は、タイミングチャートに示すようにモータ12をB方向に回転させる動作を第二所定時間T2の間実行し、その後はモータ12の駆動を停止する。モータ12をB方向に回転させる場合は、これをA方向に回転させる場合と同様に、振動レール4は振動し、押上部5は上下運動し、ブラシ部6は揺動する一方で、円板9は停止したままとなる。すなわち、ねじSは受け渡し位置で停止しているため、作業者或いはねじ締めロボットによって、このねじSを取り出すことができる。また受け取り位置では、別の切り欠き部9aが振動レール4の右側端部に対向しているため、振動レール4で整列した先頭のねじSをこの切り欠き部9aへ移動させることができる。なお、本実施形態において第二所定時間T2は、原動側間欠歯車31が1回転する時間の3/2程度に設定しているが、この時間は操作装置40によって変更可能であるため、使用するねじSの質量や形状、大きさ等が変わって第二所定時間T2を変更しなければならない場合も対応可能である。
【0045】
タイミングチャートでの図示は省略するが、作業者やねじ締めロボットによってねじSを取り出すと、ねじセンサ8における発光部8aからの光は、再び受光部8bで受光される状態になる。従って、ねじセンサ8での検知に基づいて、停止していたモータ12を再びA方向に回転させて、上述した動作を繰り返し実行させることができる。なお、第二所定時間T2が経過する前にねじSが取り出された際、B方向に回転していたモータ12を直ちにA方向に回転させると、振動レール4から切り欠き部9aへのねじSの移動が完了する前に円板9が回転するおそれがある。従ってこの場合は、ねじSが取り出されても第二所定時間T2が経過するまでモータ12をB方向に回転させておき、その後にモータ12の回転方向を切り替えることが好ましい。
【0046】
次に本発明に係るねじ供給装置の第二実施形態であるねじ供給装置51について、図8図10を参照しながら説明する。なお、上述したねじ供給装置1と共通する部位については、図面に同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0047】
図8に示すように、ねじ供給装置51における円板9は、切り欠き状のスリット9bを備えている。スリット9bは、切り欠き部9aの径方向内側に位置していて、90度間隔で合計4個設けられている。
【0048】
更にねじ供給装置51は、円板9におけるスリット9bを検知可能な位相センサ52を備えている。位相センサ52は、光を発する発光部52aと、発光部52aからの光を受ける受光部52bを備えている。発光部52aと受光部52bの何れか一方は、受け取り位置の近傍に位置するスリット9bの直上に設けられ、何れか他方は、このスリット9bの直下に設けられていて、発光部52aと受光部52bとを結ぶ光軸52cは、Z方向を指向している。そして、発光部52aの光がスリット9bを通過して受光部52bで受光されることによって、切り欠き部9aが受け取り位置に移動したことを検知する。なお位相センサ52は、本明細書等において「移動検知手段」と称する手段の一つである。
【0049】
図9は、ねじ供給装置51の電気的な接続について示したブロック図である。上述したねじ供給装置1と同様にねじ供給装置51も、制御装置39にモータ12、操作装置40、所定時間記憶装置41、ねじセンサ8が接続されていて、更に制御装置39には、位相センサ52が接続されている。
【0050】
このような構成となるねじ供給装置51は、例えば図10に示したタイミングチャートのように動作させて作業者やねじ締めロボットにねじSを提供する。図7のタイミングチャートと同様に、図10のタイミングチャートも横軸は経過時間を示し、縦軸は各部の状態を示している。タイミングチャートの左端に示すように、モータ12は初期状態で停止しているものとし、ねじSは、初期状態においては図6(b)に示すように、受け取り位置の切り欠き部9aのみに収まっているものとする。またタイミングチャートに示した時間T1(上述した第一所定時間T1)、T2(上述した第二所定時間T2)、T3(以下、「第三所定時間T3」と称する)、T4(以下、「第四所定時間T4」と称する)は、所定時間記憶装置41に記憶されているものとする。なお、第三所定時間T3、第四所定時間T4についての詳細な説明は後述する。また図10に示した符合TR(回転時間TR)とTS(間欠停止時間TS)は、図7のタイミングチャートと同様に、回転時間TRはモータ12をA方向に回転させた際に円板9が90度回転する時間であって、間欠停止時間TSはモータ12をA方向に回転させた状態で円板9が一定時間停止する時間である。
【0051】
操作装置40によってねじ供給装置51を始動させると、制御装置39からの指令に基づいて、停止していたモータ12はA方向に回転する。これにより、振動レール4は振動し、押上部5は上下運動し、ブラシ部6は揺動する。また円板9は、ある時間停止しているものの、その後は図6(b)に示した矢印の向きに90度回転した後に一定時間停止するというように、間欠的に動作する。
【0052】
初期状態からある時間停止していた円板9が回転すると、それまでスリット9bを通過していた発光部52aの光が円板9で遮蔽されて受光部52bで受光できなくなる。その後、円板9が90度回転していくと、次のスリット9bが発光部52aの直下に差し掛かるため、発光部52aからの光が受光部52bで受光される。これにより、次の切り欠き部9aが受け取り位置に移動したことを検知することができる。なお、スリット9bは所定の幅で開口しているため、発光部8aからの光を受光部52bで受光した直後のスリット9bの位置は、一般的に受け渡し位置よりも回転方向手前側にある。従って本実施形態では、ねじSが発光部8aからの光を遮蔽してから第三所定時間T3が経過するまでモータ12は駆動させておき、次の切り欠き部9aが確実に受け取り位置に移動するようにしている。
【0053】
モータ12をA方向に回転させる場合でも、切り欠き部9aは間欠停止時間TSの間、受け取り位置で停止しているため、振動レール4で整列した先頭のねじSをこの切り欠き部9aへ移動させることが可能であるが、本実施形態では、この停止時間を更に延ばしてねじSを確実に切り欠き部9aへ移動させるべく、タイミングチャートに示したように、第三所定時間T3経過した後、第四所定時間T4の間、モータ12をB方向に回転させる動作を実行する。モータ12をB方向に回転させる場合は、振動レール4は振動し、押上部5は上下運動し、ブラシ部6は揺動する一方で、円板9は停止したままとなる。従って切り欠き部9aは、間欠停止時間TS経過した後も第四所定時間T4の間、受け取り位置で停止しているため、ねじSを切り欠き部9aへ確実に移動させることができる。
【0054】
そして第四所定時間T4経過した後は、タイミングチャートに示すように再びモータ12をA方向に回転させる。これにより、初期状態で切り欠き部9aに収まっていたねじSが受け渡し位置に向けて移動して、発光部8aからの光が頭部S2によって遮蔽されるため、ねじSが受け渡し位置に移動したことを検知することができる。なお、発光部8aからの光を遮蔽した直後のねじSの位置は、一般的に受け渡し位置よりも回転方向手前側にあるため、本実施形態においても、ねじSが発光部8aからの光を遮蔽してから第一所定時間T1が経過するまでモータ12は駆動させておき、ねじSを確実に受け渡し位置に移動させるようにしている。
【0055】
そして第一所定時間T1経過した後は、タイミングチャートに示すようにモータ12をB方向に回転させる動作を第二所定時間T2の間実行し、その後はモータ12の駆動を停止する。すなわち第二所定時間T2の間、振動レール4は振動し、押上部5は上下運動し、ブラシ部6は揺動する一方で円板9は停止しているため、振動レール4で整列した先頭のねじSを、受け取り位置の切り欠き部9aへ確実に移動させることができる。また受け渡し位置に移動したねじSは、第一所定時間T1経過した後は停止しているため、作業者或いはねじ締めロボットによってこのねじSを取り出すことができる。
【0056】
なお、ねじ供給装置51では、第一所定時間T1、第二所定時間T2とは別に第三所定時間T3と第四所定時間T4も所定時間記憶装置41に記憶させていたが、第一所定時間T1と第三所定時間T3、第二所定時間T2と第四所定時間T4は同一でもよい。
【0057】
先に述べた第一実施形態のねじ供給装置1は、ねじSが受け渡し位置へ移動したことをねじセンサ8で検出して切り欠き部9aが受け取り位置に移動していることを検知し、これによりモータ12の回転方向を切り替えて円板9が停止する時間を延長することが可能である。一方、第二実施形態のねじ供給装置51は、ねじSの有無にかかわらず、位相センサ52によって切り欠き部9aが受け取り位置に移動していることを検出できる。従って第二実施形態のねじ供給装置51によれば、切り欠き部9aにねじSが一つも収まっていない状態で始動させても、振動レール4で整列した先頭のねじSを、受け取り位置の切り欠き部9aへ確実に移動させることができる。
【0058】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0059】
例えば、上述した原動側間欠歯車31と従動側間欠歯車32は、所謂ゼネバストップ(ジェネバ機構)の一つであり、他のゼネバストップを採用して円板9を間欠的に動作させてもよい。またねじ供給装置1とねじ供給装置51は、切り欠き部9aを受け取り位置で確実に停止させるために円板9を間欠的に動作させたが、切り欠き部9aの位置が把握できるように構成して(例えばモータ12が実際に回転した量がエンコーダで把握できるようにする)、原動側間欠歯車31と従動側間欠歯車32を連続的に回転する歯車に置き換えてもよい。
【0060】
またねじ供給装置1とねじ供給装置51は、ねじセンサ8や位相センサ52のような移動検知手段によって切り欠き部9aが受け取り位置に移動していることを検知し、その検知結果に基づいてモータ12の回転方向をA方向からB方向に切り替えたが、移動検知手段を使用せずにモータ12をA方向に所定時間回転させ、切り欠き部9aが受け取り位置に移動したと推定できるタイミングでモータ12の回転方向を切り替えてもよい。また、ねじ供給装置1とねじ供給装置51は、所定時間記憶装置41に第一所定時間T1や第二所定時間T2等を記憶させるとともに操作装置40でこれらの時間を変更できるように構成していたが、例えば電流値や電圧値を可変できるボリュームを設け、作業者がボリュームを操作して時間を変更できるようにしてもよい。
【0061】
また、モータ12の回転方向を切り替える際に使用したねじセンサ8や位相センサ52のような移動検知手段は、ねじSやスリット9bを検出して切り欠き部9aが受け取り位置に移動していることを検知するものであったが、ねじSが振動レール4から切り欠き部9aに受け取られたことを検知する受け取り検知手段によって、モータ12の回転方向を切り替えてもよい。図11に示した本発明に係るねじ供給装置の第三実施形態であるねじ供給装置61は、図1に示したねじ供給装置1に対してねじセンサ8を省略する一方で、受け取り検知手段としての第二ねじセンサ62を備えるものである。第二ねじセンサ62は、発光部62aと受光部62bを備えていて、発光部62aと受光部62bとを結ぶ光軸62cが振動レール4の右側端部と円板9の間に位置するように設けられている。このような第二ねじセンサ62によれば、ねじSが振動レール4から切り欠き部9aに移動する際に発光部62aからの光を遮蔽して再び受光部62bで受光されるため、振動レール4から切り欠き部9aへねじSが受け取られたことを検知することができる。
【0062】
ねじ供給装置61の動作の一例を説明すると、まずモータ12をA方向に回転させ、円板9が一定時間停止している間に第二ねじセンサ62で振動レール4から切り欠き部9aへねじSが受け渡されたことを検知できた場合は、回転方向を切り替えることなくモータ12を駆動させる。一方、円板9が一定時間停止している間に第二ねじセンサ62でねじSを検知できない場合は、モータ12の回転方向をB方向に切り替える。そして振動レール4から切り欠き部9aへねじSが受け渡されたことを検知できるまでモータ12をB方向に回転させる。このように動作させることによって、所定時間記憶装置41に第一所定時間T1や第二所定時間T2等を記憶させずとも、振動レール4から切り欠き部9aへねじSを確実に移動させることができる。
【0063】
なお、ねじ供給装置61では第二ねじセンサ62のみを使用していたが、ねじセンサ8や位相センサ52を併用してもよい。
【0064】
ねじ供給装置1とねじ供給装置51の駆動機構11は、図示したものに限られず、モータ12の回転力によって振動レール4、押上部5、ブラシ部6、円板9が上記のように動作すればよい。例えば、図示した駆動機構11は、前側歯車14を経由して円板9を回転させるものであったが、後側歯車15を経由して円板9を回転させてもよいし、モータ12の回転シャフトを延長してこれに原動側かさ歯車28を取り付けるようにしてもよい。また切り替え機構20を設ける位置は、前側シャフト16と従動側シャフト21の間に限られず、モータ12と円板9の間であれば何れの位置でもよい。
【0065】
上述した切り替え機構20は、モータ12の回転方向によってその回転力が円板9に伝達されるか遮断されるかを切り替える所謂ワンウェイクラッチであったが、ワンウェイクラッチの構造は上記のようにクラッチ歯車24や固定歯車26に限られず、一方向に回転させた際に回転力が伝達され、他方向に回転させた場合には回転力が伝達されない種々のものが採用可能である。また切り替え機構20はワンウェイクラッチに限られず、他の機構でもよい。例えば、摩擦板を前側シャフト16と従動側シャフト21にそれぞれ設け、これらが押し当てることによってモータ12の回転力が円板9に伝達され、これらを離反させることによって円板9へのモータ12の回転力が遮断されるように構成してもよい。このように構成する場合は、例えば摩擦板同士の押し当て又は離反を行う電磁ソレノイドを設け、またモータ12は、動作中はA方向のみに回転させることとする。そして円板9を間欠的に動作させる際は、摩擦板同士を押し当てるとともにモータ12を回転させればよく、振動レール4等は動作させる一方で円板9は停止させる場合は、モータ12は同方向に回転させつつ電磁ソレノイドを駆動させて摩擦板を離反させればよい。
【0066】
このようなねじ供給装置1とねじ供給装置51は、図12のようなブロック図で構成されるねじ締めロボット71に組み込んでもよい。ねじ締めロボット71は、ロボット制御装置72によって制御されるものである。ロボット制御装置72には、上述したねじセンサ8、モータ12の他、ねじSを締め付けるためのねじ締めドライバに組み込んだビット回転モータ73、ねじ締めドライバをX、Y、Z方向に移動させる3軸ロボットのX駆動モータ74、Y駆動モータ75、Z駆動モータ76、ロボット制御装置72に動作を教示させ、またロボット制御装置72を操作させるための教示・操作装置77、及び上述した第一所定時間T1等を含む各種の情報を記憶する記憶装置78が接続されている。このように構成することによって、ねじ供給装置1に設けていた制御装置39が不要になるため、ねじ供給装置1等とねじ締めロボットをそれぞれ単独で用いる場合に比して、構成の簡略化とコストの削減を図ることができる。
【符号の説明】
【0067】
1、51、61:ねじ供給装置
4:振動レール
7:切り出し機構
8:ねじセンサ(移動検知手段)
9a:切り欠き部
11:駆動機構
12:モータ
20:切り替え機構
52:位相センサ(移動検知手段)
62:第二ねじセンサ(受け取り検知手段)
71:ねじ締めロボット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12