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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】排水ポンプ、着脱方法及び管路構造
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/60 20060101AFI20240126BHJP
   F04D 13/00 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
F04D29/60 D
F04D13/00 A
F04D29/60 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020189615
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078734
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】服部 正也
(72)【発明者】
【氏名】松本 秀樹
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-060101(JP,A)
【文献】特開2019-100294(JP,A)
【文献】特開2018-132025(JP,A)
【文献】特開2019-052625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/60
F04D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流端が吸込水槽に位置し、下流端が前記吸込水槽の上方にあるポンプ室に位置するように、前記ポンプ室の床部を貫通した状態で当該床部に据え付けられる揚水管が備えられた排水ポンプであって、
前記ポンプ室において、前記揚水管を通る液体を前記吸込水槽へと返送する戻り管が備えられ、
前記戻り管は、前記揚水管から分岐して横向きに延びる横向管路部と、前記ポンプ室の床部を貫通して縦向きに延びる縦向管路部と、前記横向管路部と前記縦向管路部とを連通可能な曲管路部と、を有し、
前記横向管路部と前記曲管路部とは連通自在に構成され、
前記縦向管路部と前記曲管路部とは連通自在に構成され、
前記横向管路部と前記曲管路部には、前記曲管路部を、前記横向管路部に対して、前記横向管路部及び前記曲管路部の外部の左右いずれか一方に設けられた縦向軸心まわりに回動可能な回動機構が備えられ、
前記回動機構は、前記曲管路部を前記縦向軸心まわりに回動させる際に、前記曲管路部を前記横向管路部に対して前記縦向軸心に沿って上方へ押し上げ、前記曲管路部と前記縦向管路部とを離間させることができる押上機構が備えられていることを特徴とする排水ポンプ。
【請求項2】
前記回動機構は、前記横向管路部と前記曲管路部のうち、一方に設けられ前記縦向軸心を有する軸部材と、他方に設けられ前記軸部材を軸支可能な貫通孔を有する筒部材とから構成され、
前記押上機構は、前記貫通孔に対する前記軸部材の挿通方向とは逆方向から、前記貫通孔に挿通可能であり、前記貫通孔の内部において前記軸部材の先端に当接可能な当接部を有することを特徴とする請求項1に記載の排水ポンプ。
【請求項3】
前記当接部はボルトから構成され、
前記筒部材に、前記ボルトに形成された雄ネジが螺合可能な雌ネジが形成されたブラケットが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の排水ポンプ。
【請求項4】
前記回動機構は、
前記縦向軸心を有するとともに、長手方向中央にフランジ部を有する軸部材と、
前記縦向管路部に設けられ前記軸部材のうち前記フランジ部より一方側を軸支可能な第一貫通孔を有する第一筒部材と、
前記曲管路部に設けられ前記軸部材のうち前記フランジ部より他方側を軸支可能な第二貫通孔を有する第二筒部材とから構成され、
前記押上機構は、前記第一貫通孔又は前記第二貫通孔に対する前記軸部材の挿通方向とは逆方向から、前記第一貫通孔又は前記第二貫通孔に挿通可能であり、前記第一貫通孔又は前記第二貫通孔の内部において前記軸部材の先端に当接可能な当接部を有することを特徴とする請求項1に記載の排水ポンプ。
【請求項5】
前記当接部はボルトから構成され、
前記第一筒部材又は前記第二筒部材に、前記ボルトに形成された雄ネジが螺合可能な雌ネジが形成されたブラケットが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の排水ポンプ。
【請求項6】
上流端が吸込水槽に位置し、下流端が前記吸込水槽の上方にあるポンプ室に位置するように、前記ポンプ室の床部を貫通した状態で当該床部に据え付けられる揚水管が備えられ、
前記ポンプ室において、前記揚水管を通る液体を前記吸込水槽へと返送する戻り管が備えられ、
前記戻り管は、前記揚水管から分岐して横向きに延びる横向管路部と、前記ポンプ室の床部を貫通して縦向きに延びる縦向管路部と、前記横向管路部と前記縦向管路部とを連通可能な曲管路部と、を有し、
前記横向管路部と前記曲管路部とは連通自在に構成され、
前記縦向管路部と前記曲管路部とは連通自在に構成され、
前記横向管路部と前記曲管路部には、前記曲管路部を、前記横向管路部に対して、前記横向管路部及び前記曲管路部の外部の左右いずれか一方に設けられた縦向軸心まわりに回動可能な回動機構が備えられた排水ポンプにおける前記曲管路部の着脱方法であって、
前記回動機構によって、前記曲管路部を前記縦向軸心まわりに回動させる際に、前記曲管路部を前記横向管路部に対して前記縦向軸心に沿って上方へ押し上げ、前記曲管路部と前記縦向管路部とを離間させることを特徴とする着脱方法。
【請求項7】
横向きに延びる横向管路部と、縦向きに延びる縦向管路部と、前記横向管路部と前記縦向管路部とを連通可能な曲管路部と、を有し、
前記横向管路部と前記曲管路部とは連通自在に構成され、
前記縦向管路部と前記曲管路部とは連通自在に構成され、
前記横向管路部と前記曲管路部には、前記曲管路部を、前記横向管路部に対して、前記横向管路部及び前記曲管路部の外部の左右いずれか一方に設けられた縦向軸心まわりに回動可能な回動機構が備えられ、
前記回動機構は、前記曲管路部を前記縦向軸心まわりに回動させる際に、前記曲管路部を前記横向管路部に対して前記縦向軸心に沿って上方へ押し上げ、前記曲管路部と前記縦向管路部とを離間させることができる押上機構が備えられていることを特徴とする管路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上流端が吸込水槽に位置し、下流端が前記吸込水槽の上方にあるポンプ室に位置するように、前記ポンプ室の床部を貫通した状態で当該床部に据え付けられる揚水管が備えられた排水ポンプ、着脱方法及び管路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、排水ポンプとして、上流端すなわち下端が吸込水槽に位置し、下流端すなわち上端が吸込水槽の上方にあるポンプ室に位置するようにポンプ室の床部を貫通した状態で当該床部に据え付けられる揚水管が備えられたものが開示されている。
【0003】
揚水管の上流側には羽根車が収容されたポンプケーシングが連通され、揚水管の下流側には吐出管が連通されている。吐出管には当該吐出管の通液をする吐出弁が設けられている。
【0004】
揚水管には当該揚水管を通る液体を吸込水槽へと返送するバイパス管(以後、戻り管という。)が連通されている。戻り管には当該戻り管を開閉する戻り弁が設けられている。
【0005】
上述の構成により、排水運転を行う場合には吐出弁を開き、戻り弁を閉じた状態で排水ポンプを駆動させる。これにより吸込水槽の液体がポンプケーシングの吸込口から揚水され揚水管に連通された吐出管へ吐出される。
【0006】
また、管理運転を行う場合には吐出弁を閉じ、戻り弁を開いた状態で排水ポンプを駆動させる。これにより吸込水槽の液体がポンプケーシングの吸込口から揚水管内を揚水され、揚水管に分岐して連通された戻り管を介して吸込水槽に返送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5431558号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のような排水ポンプにおいて揚水管の内部を点検するために排水ポンプの運転を停止した状態で戻り管の一部を取り外す場合がある。
【0009】
しかし、戻り管は数十kg以上もの重量があるため、その取り外しや取り付けの作業には人手のみならずホイストやクレーンも必要となることがあり非常に煩雑であった。
【0010】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、排水ポンプの揚水管に連通された戻り管が有する曲管路部の着脱作業性が良い排水ポンプ、着脱方法及び管路構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するための、本発明による排水ポンプの特徴構成は、上流端が吸込水槽に位置し、下流端が前記吸込水槽の上方にあるポンプ室に位置するように、前記ポンプ室の床部を貫通した状態で当該床部に据え付けられる揚水管が備えられた排水ポンプであって、前記ポンプ室において、前記揚水管を通る液体を前記吸込水槽へと返送する戻り管が備えられ、前記戻り管は、前記揚水管から分岐して横向きに延びる横向管路部と、前記ポンプ室の床部を貫通して縦向きに延びる縦向管路部と、前記横向管路部と前記縦向管路部とを連通可能な曲管路部と、を有し、前記横向管路部と前記曲管路部とは連通自在に構成され、前記縦向管路部と前記曲管路部とは連通自在に構成され、前記横向管路部と前記曲管路部には、前記曲管路部を、前記横向管路部に対して、前記横向管路部及び前記曲管路部の外部の左右いずれか一方に設けられた縦向軸心まわりに回動可能な回動機構が備えられ、前記回動機構は、前記曲管路部を前記縦向軸心まわりに回動させる際に、前記曲管路部を前記横向管路部に対して前記縦向軸心に沿って上方へ押し上げ、前記曲管路部と前記縦向管路部とを離間させることができる押上機構が備えられている点にある。
【0012】
本発明における、「横」や「縦」の用語は、「水平」や「鉛直」のみならず、当該「水平」や当該「鉛直」に対して傾斜することも含み、「横」は「縦」より水平に近い姿勢であり、「縦」は「横」より鉛直に姿勢であればよい。また、「左」や「右」とは、曲管路部のほうから横向管路部を見たときに、当該曲管路部の中心より「左」や「右」であることをいう。
【0013】
上述の構成によると、戻り管は、横向管路部と曲管路部とが連通されるとともに、曲管路部と縦向管路部とが連通された導通姿勢と、横向管路部と曲管路部との連通が解除されるとともに、曲管路部と縦向管路部との連通が解除され、曲管路部が回動機構によって縦向軸心まわりの所定の軌道に沿って回動させられた開放姿勢とに姿勢変更可能となる。
【0014】
ところで横向管路部と曲管路部との間や、曲管路部と縦向管路部との間にはシール部材が配設されている。数カ月から数年に一度に行われるメンテナンスの際に曲管路部の取り外しが行われるのであるが、曲管路部をそのまま回動しようとすると、シール部材が曲管路部によって摺動されることにより所定の位置からずれたり、よれたりする虞がある。また、シール部材が長期間にわたって密接されることにより曲管路部や縦向管路部に固着することもあり、回動には困難を伴う場合がある。
【0015】
上述の構成によると、回動機構の押上機構によって、横向管路部に対して曲管路部を縦向軸心に沿って上方へ押し上げることで、曲管路部と縦向管路部との間を離間させることができる。したがって、曲管路部と縦向管路部との間に配設されたシール部材と、曲管路部や縦向管路部との摺動が回避されるため、摺動によってシール部材が所定の位置からずれたりよれたりする虞を回避しながら、曲管路部を円滑に回動させることができる。
【0016】
また、押上機構によって曲管路部を横向管路部に対して縦向軸心に沿って上方へ押し上げ、曲管路部と縦向管路部とを離間させることができることから、曲管路部と縦向管路部との接続箇所にインロー構造を採用することもできる。
【0017】
なお、揚水管の上流側には羽根車が収容されたポンプケーシングが連通され、揚水管の下流側には吐出管が連通されている。吐出管には吐出弁が設けられている。また、横向管路部又は縦向管路部には戻り弁が設けられおり、曲管路部は、戻り弁に対して連通自在に構成されてもよい。
【0018】
本発明においては、前記回動機構は、前記横向管路部と前記曲管路部のうち、一方に設けられ前記縦向軸心を有する軸部材と、他方に設けられ前記軸部材を軸支可能な貫通孔を有する筒部材とから構成され、前記押上機構は、前記貫通孔に対する前記軸部材の挿通方向とは逆方向から、前記貫通孔に挿通可能であり、前記貫通孔の内部において前記軸部材の先端に当接可能な当接部を有すると好適である。
【0019】
上述の構成によると、貫通孔に挿通された当接部によって同じく貫通孔に挿通されている軸部材を筒部材からいくらか押し出すという簡単な構成により、曲管路部を横向管路部に対して縦向軸心に沿って上方へ押し上げることができる。
【0020】
本発明においては、前記当接部はボルトから構成され、前記筒部材に、前記ボルトに形成された雄ネジが螺合可能な雌ネジが形成されたブラケットが設けられていると好適である。
【0021】
上述の構成によると、雄ネジと雌ネジとの螺合という簡単な構成により、当接部を筒部材に対して所望の長さだけ挿通し、その状態を保持することができる。
【0022】
本発明においては、前記回動機構は、前記縦向軸心を有するとともに、長手方向中央にフランジ部を有する軸部材と、前記縦向管路部に設けられ前記軸部材のうち前記フランジ部より一方側を軸支可能な第一貫通孔を有する第一筒部材と、前記曲管路部に設けられ前記軸部材のうち前記フランジ部より他方側を軸支可能な第二貫通孔を有する第二筒部材とから構成され、前記押上機構は、前記第一貫通孔又は前記第二貫通孔に対する前記軸部材の挿通方向とは逆方向から、前記第一貫通孔又は前記第二貫通孔に挿通可能であり、前記第一貫通孔又は前記第二貫通孔の内部において前記軸部材の先端に当接可能な当接部を有すると好適である。
【0023】
上述の構成によると、第一貫通孔又は第二貫通孔に挿通された軸部材を当接部により第一筒部材又は第二筒部材からいくらか押し出すという簡単な構成により、曲管路部を横向管路部に対して縦向軸心に沿って上方へ押し上げることができる。
【0024】
本発明においては、前記当接部はボルトから構成され、前記第一筒部材又は前記第二筒部材に、前記ボルトに形成された雄ネジが螺合可能な雌ネジが形成されたブラケットが設けられていると好適である。
【0025】
上述の構成によると、雄ネジと雌ネジとの螺合という簡単な構成により、当接部を第一筒部材又は第二筒部材に対して所望の長さだけ挿通し、その状態を保持することができる。
【0026】
上述の目的を達成するための、本発明による着脱方法の特徴構成は、上流端が吸込水槽に位置し、下流端が前記吸込水槽の上方にあるポンプ室に位置するように、前記ポンプ室の床部を貫通した状態で当該床部に据え付けられる揚水管が備えられ、前記ポンプ室において、前記揚水管を通る液体を前記吸込水槽へと返送する戻り管が備えられ、前記戻り管は、前記揚水管から分岐して横向きに延びる横向管路部と、前記ポンプ室の床部を貫通して縦向きに延びる縦向管路部と、前記横向管路部と前記縦向管路部とを連通可能な曲管路部と、を有し、前記横向管路部と前記曲管路部とは連通自在に構成され、前記縦向管路部と前記曲管路部とは連通自在に構成され、前記横向管路部と前記曲管路部には、前記曲管路部を、前記横向管路部に対して、前記横向管路部及び前記曲管路部の外部の左右いずれか一方に設けられた縦向軸心まわりに回動可能な回動機構が備えられた排水ポンプにおける前記曲管路部の着脱方法であって、前記回動機構によって、前記曲管路部を前記縦向軸心まわりに回動させる際に、前記曲管路部を前記横向管路部に対して前記縦向軸心に沿って上方へ押し上げ、前記曲管路部と前記縦向管路部とを離間させる点にある。
【0027】
上述の構成によると、排水ポンプの揚水管に連通された戻り管が有する曲管路部の着脱作業性が良くなる。
【0028】
上述の目的を達成するための、本発明による管路構造の特徴構成は、横向きに延びる横向管路部と、縦向きに延びる縦向管路部と、前記横向管路部と前記縦向管路部とを連通可能な曲管路部と、を有し、前記横向管路部と前記曲管路部とは連通自在に構成され、前記縦向管路部と前記曲管路部とは連通自在に構成され、前記横向管路部と前記曲管路部には、前記曲管路部を、前記横向管路部に対して、前記横向管路部及び前記曲管路部の外部の左右いずれか一方に設けられた縦向軸心まわりに回動可能な回動機構が備えられ、前記回動機構は、前記曲管路部を前記縦向軸心まわりに回動させる際に、前記曲管路部を前記横向管路部に対して前記縦向軸心に沿って上方へ押し上げ、前記曲管路部と前記縦向管路部とを離間させることができる押上機構が備えられている点にある。
【0029】
上述の構成によると、戻り管は、横向管路部と曲管路部とが連通されるとともに、曲管路部と縦向管路部とが連通された導通姿勢と、横向管路部と曲管路部との連通が解除されるとともに、曲管路部と縦向管路部との連通が解除され、曲管路部が回動機構によって縦向軸心まわりの所定の軌道に沿って回動させられた開放姿勢とに姿勢変更可能となる。
【0030】
その際、回動機構の押上機構によって、横向管路部に対して曲管路部を縦向軸心に沿って上方へ押し上げることで、曲管路部と縦向管路部との間を離間させることができる。したがって、曲管路部と縦向管路部との間に配設されたシール部材と、曲管路部や縦向管路部との摺動が回避されるため、摺動によってシール部材が所定の位置からずれたりよれたりする虞を回避しながら、曲管路部を円滑に回動させることができる。
【0031】
また、押上機構によって曲管路部を横向管路部に対して縦向軸心に沿って上方へ押し上げ、曲管路部と縦向管路部とを離間させることができることから、曲管路部と縦向管路部との接続箇所にインロー構造を採用することもできる
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明に係る排水ポンプが設置されたポンプ設備の概略図である。
図2】本発明に係る排水ポンプの要部の説明図である。
図3図2に示す要部の側面図である。
図4図2に示す要部の説明図であって、押上機構による押上げの説明図である。
図5図2に示す要部の説明図であって、回動機構による回動の説明図である。
図6図5に示す要部の平面図である。
図7】本発明に係る排水ポンプの別実施形態の説明図である。
図8】本発明に係る排水ポンプの別実施形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る排水ポンプの実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、ポンプ設備1は、吸込水槽2と、吸込水槽2の水3(液体の一例)を揚水する排水ポンプ10と、排水ポンプ10により揚水された水3を下流側へ排水する吐出管4と、吐出管4を開閉する吐出弁5等を備えている。
【0034】
排水ポンプ10は、羽根車11が収容されたポンプケーシング12、当該ポンプケーシング12に連結された揚水管13を備えている。揚水管13は、直管14及び曲管15から構成されている。直管14は、例えば吸込水槽2の深さに応じて、単一の鋼管、又は、複数の鋼管を連結して構成される。
【0035】
吸込水槽2の上方にあるポンプ室6の床部7の開口部8のまわりにはベースプレート9が設けられている。揚水管13のうち曲管15は、90°ベンド管から構成され、上流側の開口のまわりに円環状のポンプベース16が設けられている。ポンプベース16をベースプレート9に固定することによって、排水ポンプ10は、揚水管13が開口部8を貫通して、ポンプ室6から吸込水槽2に向けて吊り下げられた状態で、床部7に据え付けられる。揚水管13は、上流端、すなわち下端が吸込水槽2に位置し、下流端、すなわち上端がポンプ室6に位置することとなる。
【0036】
ポンプケーシング12、揚水管13、すなわち直管14及び曲管15の内部には、上下に延びる回転軸17が回転可能に支持され、その下端に羽根車11が連結されている。回転軸17の上端は曲管15に設けられた軸貫通部を介して外方に延び、図示しないカップリングを介して原動機の駆動軸に連結されている。
【0037】
前記原動機が羽根車11を回転させると吸込水槽2の水3がポンプケーシング12の吸込口から吸い込まれ、ポンプケーシング12及び揚水管13を通って吐出管4へと吐き出される。
【0038】
上述のように構成された排水ポンプ10において、揚水管13の曲管15には揚水管13を通る水3を吸込水槽2へと返送する戻り管20が備えられている。
【0039】
図2及び図3に示すように、戻り管20は、揚水管13の曲管15から分岐して横向きに延びる横向管路部21と、ポンプ室6の床部7を貫通して縦向きに延びる縦向管路部22と、横向管路部21と縦向管路部22とを連通可能な曲管路部23と、縦向管路部22と曲管路部23との間に配設される戻り弁24を有している。
【0040】
横向管路部21には第一縦向継手25が設けられている。なお、横向管路部21は、単一の鋼管、又は、複数の鋼管を連結して構成される。
【0041】
戻り弁24はバタフライバルブ等のバルブから構成され、縦向管路部22に対して継手接続されている。本実施形態においては、戻り弁24も縦向管路部22に含まれる。縦向管路部22には、具体的には戻り弁24には第一横向継手28が設けられている。なお、縦向管路部22は、単一の鋼管、又は、複数の鋼管を連結して構成される。
【0042】
曲管路部23は、90°エルボ管から構成されている。ただし、曲管路部23は、45°エルボ管や60°エルボ管であってもよい。曲管路部23には、横向きの開口に第二縦向継手26が設けられ、下向きの開口に第二横向継手29が設けられている。
【0043】
第一縦向継手25と第二縦向継手26とは、対向面間にパッキン等のシール部材27を介した状態で、ボルト及びナットによって連通自在となっている。第一横向継手28と第二横向継手29とは、対向面間にパッキン等のシール部材30を介した状態で、ボルト及びナットによって連通自在となっている。
【0044】
第一縦向継手25及び第二縦向継手26はそれぞれ、図2における左方に向けて延設された延設部を有し、曲管路部23を、横向管路部21に対して、当該延設部の端部に設けられた縦向軸心41まわりに回動可能な回動機構40が備えられている。ただし、当該延設部は、図2において右方に向けて延設されていてもよい。
【0045】
図4図5及び図6に示すように、回動機構40は、第一縦向継手25の延設部に設けられ縦向軸心41を有する軸部材42と、第二縦向継手26の延設部に設けられた筒部材43とから構成されている。軸部材42及び筒部材43は、一般構造用圧延鋼材またはステンレス鋼等を加工することによって形成され、それぞれ第一縦向継手25の延設部や第二縦向継手26の延設部に螺着又は溶接によって取り付けられている。筒部材43には、軸部材42を軸支可能な貫通孔44が設けられている。
【0046】
戻り管20は、第一縦向継手25と第二縦向継手26とが接続されるとともに、第一横向継手28と第二横向継手29とが接続された導通姿勢と、第一縦向継手25と第二縦向継手26との接続が解除されるとともに、第一横向継手28と第二横向継手29との接続が解除され、曲管路部23が回動機構40によって縦向軸心41まわりの所定の軌道に沿って回動させられた開放姿勢とに姿勢変更可能となっている。
【0047】
回動機構40は、上述のように曲管路部23を縦向軸心41まわりに回動させる際に、第一縦向継手25に対して第二縦向継手26を縦向軸心41に沿って押し上げ、曲管路部23の第二横向継手29と戻り弁24の第一横向継手28とを離間させることができる押上機構45を備えている。
【0048】
押上機構45は、貫通孔44に対する軸部材42の挿通方向とは逆方向から、貫通孔44に挿通可能であり、貫通孔44の内部において軸部材42の先端に当接可能な当接部の一例としてのボルト46を有する。
【0049】
筒部材43に、ボルト46に形成された雄ネジが螺合可能な雌ネジが形成されたブラケット47が設けられている。雄ネジ及び雌ネジは、右ネジとなるように切られている。なお、ボルト46に、当該ボルト46の頭部と、ブラケット47との間に、さらにナットが螺合され、ボルト46の緩み止めされていてもよい。
【0050】
ボルト46の先端が軸部材42の先端に当接した状態からボルト46を右に回すと、ボルト46に螺合しているブラケット47が上がることにより、当該ブラケット47が設けられている筒部材43が引き上げられることになり、第二縦向継手26は第一縦向継手25に対して押し上げられることとなる。
【0051】
回動機構40の押上機構45によって、第一縦向継手25に対して第二縦向継手26を縦向軸心41に沿って上方へ押し上げることで、第一横向継手28と第二横向継手29との間を離間させることができる。したがって、第一横向継手28と第二横向継手29との間に配設されたシール部材30と、第一横向継手28や第二横向継手29との摺動が回避されるため、摺動によってシール部材が所定の位置からずれたりよれたりする虞を回避しながら、曲管路部を円滑に回動させることができる。
【0052】
また、押上機構45によって曲管路部23を、第一縦向継手25に対して第二縦向継手26を縦向軸心41に沿って上方へ押し上げ、第一横向継手28と第二横向継手29との間を離間させることができることから、第一横向継手28と第二横向継手29とにインロー構造を採用することもできる。
【0053】
押上機構45による押し上げ距離は、第二横向継手29が、第一横向継手28に載置されているシール部材30に摺動せず、インロー構造が摺動しない程度であればよく、例えば2~5mm程度もあればよい。
【0054】
第二縦向継手26が第一縦向継手25に対して押し上げられた状態からボルト46を左に回すと、ボルト46に螺合しているブラケット47が下がることにより、第二縦向継手26は第一縦向継手25に対して、第一横向継手28と第二横向継手29とが接触する位置まで下げられる。
【0055】
上述の構成により、排水運転を行う場合には、吐出管4の吐出弁5を開き、戻り管20の戻り弁24を閉じた状態で、排水ポンプ10を駆動させる。これにより、吸込水槽2の水3が、ポンプケーシング12の吸込口から揚水され揚水管13を介して吐出管4へ吐出される。
【0056】
また、管理運転を行う場合には、吐出弁5を閉じ、戻り弁24を開いた状態で、排水ポンプ10を駆動させる。これにより、吸込水槽2の水3がポンプケーシング12の吸込口から揚水管13を揚水され、揚水管13に分岐して連通された戻り管20を介して吸込水槽2に返送される。
【0057】
排水ポンプ10の運転を停止した状態で戻り管20の曲管路部23を横向管路部21及び縦向管路部22から取り外すことにより横向管路部21を介して揚水管13の内部を点検することもできる。
【0058】
以下に別実施形態について説明する。別実施形態についての説明においては、上述した実施形態と同様の構成については説明を省略ないし同じ符号を付し説明を援用することができる。
【0059】
上述した実施形態においては、回動機構40は、軸部材42が第一縦向継手25の延設部に設けられ、筒部材43が第二縦向継手26の延設部に設けられていたが、この限りではない。
【0060】
例えば、図7に示すように、回動機構40は、軸部材42が第二縦向継手26の延設部に設けられ、筒部材43が第一縦向継手25の延設部に設けられていてもよい。この場合も、押上機構45のブラケット47は筒部材43に設けられ、当該ブラケット47にボルト46が螺合される。
【0061】
ボルト46の先端が軸部材42の先端に当接した状態からボルト46を右に回すと、ブラケット47に対してボルト46が上がることによって、軸部材42が押し上げられることになり、したがって第二縦向継手26は、第一縦向継手25に対して押し上げられることとなる。
【0062】
第二縦向継手26が第一縦向継手25に対して押し上げられた状態からボルト46を左に回すと、ブラケット47に対してボルト46が下がることにより、第二縦向継手26は第一縦向継手25に対して、第一横向継手28と第二横向継手29とが接触する位置まで下げられる。
【0063】
また、例えば図8に示すように、回動機構40は、縦向軸心41を有するとともに、長手方向中央にフランジ部52を有する軸部材53と、第一縦向継手25に設けられ軸部材53のうちフランジ部52より下方を軸支可能な第一貫通孔54を有する第一筒部材55と、第二縦向継手26に設けられ軸部材53のうちフランジ部52より上方を軸支可能な第二貫通孔56を有する第二筒部材57とから構成されてもよい。
【0064】
この場合は、押上機構45は、第二貫通孔56に対する軸部材53の挿通方向とは逆方向から、第二貫通孔56に挿通可能であり、第二貫通孔56の内部において軸部材53の先端に当接可能な当接部としてのボルト46を有する。
【0065】
第二筒部材57に、ボルト46に形成された雄ネジが螺合可能な雌ネジが形成されたブラケット47が設けられている。ただし、ブラケット47は、第一筒部材55に設けられていてもよい。
【0066】
上述した実施形態においては、戻り弁24が縦向管路部22に継手接続されているため、第一横向継手28は戻り弁24に設けられていたが、これに限らない。戻り弁24は、例えば横向管路部21に継手接続されていてもよく、この場合は、戻り弁24に第一縦向継手25が設けられ、縦向管路部22に第一横向継手28が設けられることとなる。
【0067】
上述した実施形態においては、一つの回動機構40のみが設けられている場合について説明したが、これに限らない。二つ以上の回動機構40がそれぞれの縦向軸心が一致するように設けられていてもよい。その際、少なくともいずれか一つの回動機構40に押上機構45が備えられる。
【0068】
上述した実施形態においては、縦向軸心は鉛直方向に沿っていたが、これに限らない。鉛直方向に対して傾斜していてもよい。
【0069】
上述した実施形態においては、排水ポンプ10に備えた戻り管20に回動機構40を設ける場合について説明したが、回動機構40の適用箇所はこれに限らない。管路構造の一部に横向管路部21と曲管路部23と縦向管路部22が順次接続されており、曲管路部23を着脱する必要性のある場合であれば適用可能である。
【0070】
上述した実施形態は、いずれも本発明の一例であり、当該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲において適宜変更設計可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 :ポンプ設備
2 :吸込水槽
3 :水
10 :排水ポンプ
13 :揚水管
15 :曲管
20 :戻り管
21 :横向管路部
22 :縦向管路部
23 :曲管路部
24 :戻り弁
25 :第一縦向継手
26 :第二縦向継手
27 :シール部材
28 :第一横向継手
29 :第二横向継手
30 :シール部材
40 :回動機構
41 :縦向軸心
42 :軸部材
43 :筒部材
44 :貫通孔
45 :押上機構
46 :ボルト(当接部)
47 :ブラケット
52 :フランジ部
53 :軸部材
54 :第一貫通孔
55 :第一筒部材
56 :第二貫通孔
57 :第二筒部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8