(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】寄生容量が低減されたバルク弾性波共振器の製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 3/02 20060101AFI20240126BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
H03H3/02 B
H03H9/17 F
(21)【出願番号】P 2020534215
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(86)【国際出願番号】 FR2018053517
(87)【国際公開番号】W WO2019129979
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-13
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マリー・ゴリス
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ラミン・ブネッサ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-セバスチャン・ムレ
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-159123(JP,A)
【文献】特開2011-142613(JP,A)
【文献】国際公開第2017/068270(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の機能スタック及び第2の機能スタックを含む音響共振器の製造方法であって、
前記第1の機能スタックが、2つの構造化された導電層の間に挿入された圧電又は誘電材料の第1の層からなる少なくとも1つの第1の要素を含み、前記導電層の被覆表面が第1のアクティブ領域を規定し、
前記第2の機能スタックが、第1及び第2の電極の間に挿入された圧電材料の第2の層からなる少なくとも1つの第2の要素を含み、前記第1及び第2の電極の被覆表面が第2のアクティブ領域を規定し、
前記製造方法が、
前記第1のアクティブ領域を規定する、前記2つの構造化された導電層に加えて、前記圧電又は誘電材料の第1の層を含む第1の機能スタックを提供する段階と、
前記第1のアクティブ領域に前記第1の電極が位置合わせされるように前記第1の機能スタックに前記第2の機能スタックの第1の電極を形成し、前記第1の電極に電気絶縁材料の第1の結合層を形成する段階と、
少なくとも1つの電気絶縁材料の第2の結合層と前記圧電材料の第2の層とを含む前記第2の機能スタックの一部を提供する段階と、
前記第1及び第2の結合層を接触させることによって、前記第1の機能スタックと、少なくとも1つの第2の結合層及び前記圧電材料の第2の層を含む前記第2の機能スタックの一部と、を組み立てる段階と、
前記第1のアクティブ領域に位置合わせされる前記第2のアクティブ領域を規定するように、前記第2の機能スタックの第2の電極を形成する段階と、
を含む、音響共振器の製造方法。
【請求項2】
前記第1の機能スタックと前記第2の機能スタックの一部との間の組み立てが、直接結合である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の結合層が誘電材料である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第1及び第2の結合層が、10nmから50nmの厚さを有する中間層を形成するようなものである、請求項1から3の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1のアクティブ領域との前記第1の電極の位置合わせ、及び、前記第2のアクティブ領域が前記第1のアクティブ領域と位置合わせされるような前記第2の電極の製造が、フォトリソグラフィ中にマスクアライナー又はフォトリピーターを実施することによって実現される、請求項1から4の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1の機能スタックがトランスデューサであり、前記圧電材料の第2の層を含む前記第2の機能スタックが、前記トランスデューサのための周波数調整手段を形成する、請求項1から5の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第2の機能スタックを形成する前に、前記第2の機能スタックの前記圧電材料の第2の層の所定の厚さの一部を所定の厚さまで除去する段階を含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1の要素が圧電材料の第1の層からなる場合、前記圧電材料の第2の層の所定の厚さを有する部分を除去する段階が、前記第2の機能スタックの圧電材料の第2の層を破砕することによって達成され、前記圧電材料の第2の層が、前記第1の機能スタックの圧電材料の第1の層の所定の深さより大きい深さまで事前にイオン注入を受けている、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第1の要素が圧電材料の第1の層からなる場合、前記第1の機能スタックが、前記第1及び第2の電極を支持する支持基板及び前記圧電材料の第1の層を含む、請求項6から8の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記支持基板を構造化して、前記音響共振器の下にキャビティを形成する段階を含む、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記支持基板を構造化して、前記音響共振器の下にキャビティを形成する段階が、犠牲層をエッチングすることにより行われる、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第1の要素が圧電材料の第1の層からなる場合、前記圧電材料の第1の層が、イオン注入及び破砕によって製造される、請求項6から11の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記第1の機能スタックが、ブラッグミラーを形成し、前記第1の機能スタック及び前記第2の機能スタックが、ブラッグミラー上にバルク弾性波共振器を形成する、請求項1から5の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの第1の要素が圧電材料の第1の層からなる場合、前記圧電材料の第1の層及び/又は第2の層が、Xカットのニオブ酸リチウ
ムである、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの第1の要素が圧電材料の第1の層からなる場合、前記圧電材料の
第1の層及び/又は第2の層が、Y+163°カットのニオブ酸リチウ
ムである、請求項13に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寄生容量が低減された共振器、例えば、バルク弾性波共振器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話などのために調整可能な無線周波数(RF)フィルターを作成し、同じフィルターを使用していくつかの周波数帯域に対応することで、携帯電話に実装されるフィルターの数を減らすことができる。
【0003】
このようなRFフィルターは、既に存在し、例えば、バルク弾性波(BAW)フィルターであるが、調整ができない。
【0004】
バルク弾性波フィルターは、圧電材料の層、圧電層の面上の電極、及び、他の面上の電極を含む。共振器特性を制御するために、電極は、例えばエッチングによって区切られ、従って、それらが形成される圧電層の全面をそれらは覆っていない。
【0005】
調整可能なバルク弾性波フィルターを得るために、圧電材料の層及び圧電層の両側の電極を含む別のスタックが、既に作られたスタック上に配され、電気絶縁材料によってそれから絶縁される。
【0006】
第1のスタックは、共鳴を生成し、これは、変換層(トランスダクション層)と呼ばれ、第2のスタックは、第1のスタックによって生成された波の伝播の条件を変更できるようにし、これは、調整層(チューニング層)と呼ばれる。
【0007】
加えて、一方で、例えば、携帯電話の要件を満たすバンドパスフィルターの合成を可能にするために、強力な電気機械的カップリングを備え、他方で、顕著な周波数俊敏性(アジリティ)を備えた波を変換層及び調整層に利用することを試みる。この強い結合は、強い圧電特性を有する材料を使用することで実現できる。例えば、LNOとも呼ばれる、Xカットの、すなわち、基板の平面に垂直な結晶面の方向Xを有するニオブ酸リチウム又はLiNbO3は、ターゲットモードで45%の理論的な電気機械結合を実現することができる。別の興味深い結晶方位は、いわゆるY+163°カットであり、この場合、結晶軸Xは、平面内にあり、軸Yは、基板の法線に対して163°の角度で傾斜している。この配向により、Xカット(35%程度で)よりも低い電気機械結合係数を有する波を励起することができるが、一度に励起できる波は1つだけなので、寄生共振の数が減少する。
【0008】
携帯電話への適用では、ターゲット周波数は、数百MHzから数GHzである。このために、圧電層は、非常に薄くなければならず、例えば数百ナノメートルであり、その厚さは、所望の周波数に依存する。
【0009】
そのような厚さを有し、所定の結晶配向を有するLNO層は、堆積によって作ることができない。次に、2つのスタックの作成は、注入、直接結合及び破砕による移動、又は、直接結合及び薄化による移動のいずれかによって行われる。
【0010】
フィルターが適切に動作するためには、両方のスタックの厚さは、共振器に必要なパラメータの関数として計算された比率を維持する必要がある。しかし、数百nmの意図された厚さを考慮して、スタックの平面に垂直な結晶軸を有するLNOの堆積は、考えられない。この配向を有する数百nmのLNO層は、注入、直接結合及び破砕によって得られる。
【0011】
そのような調整可能なフィルターは、現在、第1、第2及び第3の基板から作られる。
【0012】
次に、基板上に電極を作製し、基板を接合し、破砕する段階が行われる。
【0013】
スタックには4つの電極が重ねられている。共振器のアクティブ領域、つまり4つの電極が互いに覆う領域が規定される。波が予想される挙動をするのは、この領域の内側である。スタックの電気特性を制御するために、電極の非常に良好な位置合わせが捜索される。
【0014】
この製造方法により、電極間にずれが生じる。製造方法の終わりに所望の表面積を有する活性領域を有するために、電極にガードが提供される。電極は、アクティブ領域と同じ寸法ではない。一般に、アクティブ領域の寸法を有するのは、最後に作成された電極である。他の電極には、ミスアライメントを考慮に入れるための十分なガードが備わっている。
【0015】
一方では、これらのガードは、共振器のコンパクトさにとって有害である。一方、アクティブ領域の外側の電極及び調整層の圧電材料の部分が寄生容量と同等であることに気づき、寄生容量は、共振器の共振周波数を調整するのに使用される外部容量に並列に接続されていると見なされる。従って、その存在により、周波数調整設定値がオフセットされる。それにより、共振器の周波数俊敏性の範囲が制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、それぞれが少なくとも1つの要素を含み、両方の要素が互いに位置合わせされている2つのスタックを含む構造体を製造するための新しい方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述の目的は、少なくとも1つの第1の要素を含む第1スタック、少なくとも第2の要素を含む第2スタックを含み、第1の要素及び第2の要素が互いに位置合わせされる構造体の製造方法によって達成され、第1の要素と位置合わせされるように第1のスタック上に第2の要素を形成する段階、及び、形成された構造体上に第2のスタックの残りを結合することによって転写する段階を含む。
【0018】
本発明によれば、第1及び第2の要素の位置合わせは、例えば、リソグラフィ及びエッチングによって達成され、転写中の他方に対するプレートの位置合わせによっては達成されない。リソグラフィ段階中の位置合わせにより、結合中に専用の位置合わせステーションに頼ることなく、フォトリソグラフィで使用されるマスクアライナー又はさらに優れたフォトリピーターを使用して、正確な位置合わせを実現することができる。
【0019】
また、本発明の目的は、寄生容量が低減されたバルク弾性波共振器の製造方法を提供することである。
【0020】
前述の目的は、圧電材料及び2つの電極を含む第1のスタックと、層の両側にある2つの導電性金属層を含む第2のスタックとを少なくとも含むバルク弾性波共振器の製造方法によって達成され、電極と金属層との位置合わせは、リソグラフィ及びエッチングによって行われ、転写中のプレート同士の位置合わせによっては行われない。リソグラフィ段階中の位置合わせにより、結合中に専用の位置合わせステーションに頼ることなく、フォトリソグラフィで使用されるマスクアライナー又はさらに優れたフォトリピーターを使用して、正確な位置合わせを実現することができる。
【0021】
この製造方法により、電極の位置ずれを考慮するための予防策として提供されるガードを大幅に削減することができ、寄生容量を削減することができる。さらに、このようにして作られた共振器をよりコンパクトにすることができる。
【0022】
調整可能なバルク弾性波フィルターの場合、第1のスタックは、電気機械変換に使用され、第2のスタックは、調整層であり得、各スタックには2つの電極が含まれる。本発明による製造方法は、第1の電極を製造した後、既に電極を含むスタック上に他の電極を製造することを提供し、これは、位置合わせを簡単にする。
【0023】
有利には、圧電材料は、Xカット又はY+163°カットのニオブ酸リチウム又はLiNbO3である。
【0024】
SMRフィルターの場合、第2のスタックは、共振器と基板との間の機械的デカップリングを保証する音響ブラッグミラーである。ブラッグミラー上に第1の電極を形成し、共振器の圧電層を結合した後、第1の電極に直接位置合わせることによってリソグラフィ及びエッチングにより第2の電極を作る。
【0025】
本発明による音響共振器の製造方法は、電極と圧電層との間に誘電材料の結合層を実装する。そのような層の存在に関する偏見とは逆に、同じ周波数俊敏性を維持しながら、同じ圧電結合係数、又は、増加した結合係数を維持するフィルターを作成することが可能である。
【0026】
好ましくは、結合層の厚さは、10nmから50nmである。
【0027】
従って、本発明の1つの主題は、少なくとも1つの第1の機能スタック及び第2の機能スタックを含む構造体の製造方法であって、第1の機能スタックが、少なくとも第1の要素及び第1の部分を含み、第2の機能スタックが、少なくとも第2の要素及び第2の部分を含み、第1の要素が、第2の要素と位置合わせされ、
前記方法が、
(a)第1の機能スタックを提供する段階と、
(b)第1の要素と位置合わせされるように、第1の機能スタック上に第2要素を形成する段階と、
(c)第2の要素を含まない第2のスタックを提供する段階と、
(d)第1の機能スタック及び第2の機能スタックを組み立てる段階と、
を含む、製造方法である。
【0028】
例示的な一実施形態では、製造方法は、段階(c)の後に、第2の部分に第3の要素を形成する段階(e)であって、第2の要素と位置合わせされるようになる段階を含む。
【0029】
この製造方法は、第3の要素を形成する前に、圧電材料の前記基板の所定の厚さを有する部分を所定の厚さまで除去する段階(c1)を含むことができる。
【0030】
好ましくは、段階(d)の組み立ては、直接結合である。例えば、段階(d)は、第2の要素上に第1の結合層、例えばSiO2を形成し、第2の要素なしで第2のスタック上に第2の結合層、例えばSiO2を形成する段階であって、前記直接結合が、前記結合で行われる、段階を含む。第1及び第2の結合層は、例えば、それらが10nmから50nmの間の厚さを有する中間層を形成するようなものである。
【0031】
段階(c)及び(e)の位置合わせが、フォトリソグラフィ段階中にマスクアライナー又はフォトリピーターを実施することによって得られる。
【0032】
有利には、段階(c1)は、圧電材料の基板を破砕することによって達成され、前記圧電材料の基板は、圧電材料の第1の層の所定の厚さより僅かに高い深さで事前にイオン注入を受けている。
【0033】
例示的な一実施形態では、第1のスタックは、圧電材料の第1の層の両側に規定された電極を形成する、少なくとも2つの導電性の規定された部分を含み、第2のスタックは、圧電材料の第2の層を含み、第2及び第3の要素は、圧電材料の第2の層の両側に規定された第1及び第2の電極を形成し、第1のスタック又は第2のスタックは、バルク弾性波共振器を形成し、調整可能なバルク弾性波共振器を製造するように第2又は第1のスタックは、前記共振器を同調する手段を形成する。
【0034】
次に、この方法は、第1のスタックの導電性部分のうちの規定された部分の上に電気絶縁層を形成する段階を含むことができる。
【0035】
例えば、段階(a)中に、第1のスタックは、電極及び圧電材料の第1の層を支持する支持基板を含む。
【0036】
この製造方法は、例えば犠牲層をエッチングすることにより、共振器の下にキャビティを形成するように支持基板を構造化する段階(f)を含むことができる。
【0037】
有利には、段階(a)中に、圧電材料の第1の層は、イオン注入及び破砕によって作られる。
【0038】
別の例示的な実施形態では、第1のスタックは、第1の層の両側に少なくとも2つの導電性の規定された部分を含み、第2のスタックは、圧電材料の第2の層を含み、第2及び第3の要素は、圧電材料の第1の層の両側に規定される第1及び第2の電極を形成し、前記方法は、第1のスタックの規定された導電性部分の1つに電気絶縁層を形成する段階を含み、第1のスタックは、電気絶縁層が形成されない導電性の規定された部分の他の部分に接触しており、ブラッグミラーを形成し、第1のスタック及び第2のスタックが、ブラッグミラーにバルク弾性波共振器を形成するように、所定の材料は、電気絶縁材料、例えばSiO2である。
【0039】
例えば、圧電材料の層は、有利には100nmから数百nmの厚さを有するXカットのニオブ酸リチウム又はLiNbO3である。変形例として、圧電材料の層は、Y+163°カットのニオブ酸リチウム又はLiNbO3であり、有利には100nmから数百nmの厚さを有する。
【0040】
本発明の別の主題は、少なくとも第1のスタック及び第2のスタックを含むバルク弾性波共振器であり、第1のスタックは、所与の材料の一部の両側に少なくとも2つの導電性の規定された部分を含み、第2のスタックは、圧電材料の第1層、圧電材料の第1の層の両側に規定された第1及び第2の電極、並びに、第1電極と電気材料の第1の層との間の電気絶縁材料の中間層を含む。
【0041】
第2のスタックの導電性部分は、有利に規定された電極であり、所定の材料の部分は、圧電材料であり、スタックの一方は、トランスデューサを形成し、スタックの他方は、前記トランスデューサの周波数調整手段を形成する。
【0042】
第1のスタックは、ブラッグミラーであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明は、以下の説明及び添付の図面に基づいて、よりよく理解されるであろう。
【0044】
【
図1】
図1は、本発明による例示的な方法によって得られる調整可能なバルク弾性波フィルターの例の概略図である。
【
図2A】
図2Aは、
図1のフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図2B】
図2Bは、
図1のフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図2C】
図2Cは、
図1のフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図2D】
図2Dは、
図1のフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図2E】
図2Eは、
図1のフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図2F】
図2Fは、
図1のフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図2G】
図2Gは、
図1のフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図2H】
図2Hは、
図1のフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図2I】
図2Iは、
図1のフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図2J】
図2Jは、
図1のフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図2K】
図2Kは、
図1のフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図2L】
図2Lは、
図1のフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図2M】
図2Mは、
図1のフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図2N】
図2Nは、
図1のフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図2O】
図2Oは、
図1のフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図3】
図3は、本発明による方法によって得られた理想的な共振器及び共振器RのGHz単位の周波数の関数としての電気的応答(オーム単位のインピーダンスI)のグラフ表示である。
【
図4】
図4は、従来技術の方法によって得られた理想的な共振器及び共振器R’のGHz単位の周波数の関数としての電気的応答(オーム単位のインピーダンスI)のグラフ表示である。
【
図5A】電極の周囲のみが表されている、本発明による方法で得られた
図1のフィルターの上面図である。
【
図5B】電極の周囲のみが表されている、従来技術の調整可能なバルク弾性波フィルターの上面図である。
【
図6】
図6は、本発明による方法によって得られた、中間層のnm単位の厚さhの関数として示される、調整可能な音響共振器の電気機械結合係数の変化を%で表したグラフ表示である。
【
図7】
図7は、本発明による方法によって得られた調整可能な音響共振器の調整層の、中間層の厚さ(nm)の関数として開回路及び短絡におけるGHzでの共振及び反共振周波数の変化のグラフ表示である。
【
図8A】
図8Aは、SMRフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図8B】
図8Bは、SMRフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図8C】
図8Cは、SMRフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図8D】
図8Dは、SMRフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図8E】
図8Eは、SMRフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図8F】
図8Fは、SMRフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図8G】
図8Gは、SMRフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図8H】
図8Hは、SMRフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図8I】
図8Iは、SMRフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図8J】
図8Jは、SMRフィルターを製造するための例示的な製造方法の段階の概略図である。
【
図9A】
図9Aは、1つの第1の要素、少なくとも1つの第2の要素を含む第2のスタックを含み、第1及び第2の要素が互いに位置合わせされている構造体の製造のための例示的な方法の段階の概略図である。
【
図9B】
図9Bは、1つの第1の要素、少なくとも1つの第2の要素を含む第2のスタックを含み、第1及び第2の要素が互いに位置合わせされている構造体の製造のための例示的な方法の段階の概略図である。
【
図9C】
図9Cは、1つの第1の要素、少なくとも1つの第2の要素を含む第2のスタックを含み、第1及び第2の要素が互いに位置合わせされている構造体の製造のための例示的な方法の段階の概略図である。
【
図9D】
図9Dは、1つの第1の要素、少なくとも1つの第2の要素を含む第2のスタックを含み、第1及び第2の要素が互いに位置合わせされている構造体の製造のための例示的な方法の段階の概略図である。
【
図9E】
図9Eは、1つの第1の要素、少なくとも1つの第2の要素を含む第2のスタックを含み、第1及び第2の要素が互いに位置合わせされている構造体の製造のための例示的な方法の段階の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下の説明は、主に音響共振器に関するが、これに限定されない。
図9Aから
図9Eの説明は、少なくとも1つの第1の要素、少なくとも1つの第2の要素を含む第2のスタックを含み、第1及び第2の要素が互いに位置合わせされている、より一般的な構造体の製造に関する。
【0046】
本願では、「整列された部分」とは、この部分が、電極であり得、スタックの材料の第1の規定部分と垂直に整列された層に規定される材料の第2の部分を作ることを意味し、第1の部分の平面における第2の部分の投影の外周と第1の部分の外周との間の距離が、2μm未満、有利には500nm未満、さらにより有利には250nm未満である。「整列された要素」という用語は、「整列された部分」と同義である。
【0047】
「規定された部分」又は「規定された電極」とは、スタック全体に広がるフルプレート層又はフルプレート電極とは対照的に、フォトリソグラフィ及びエッチングによって層から作られ、外周を有する部分又は電極を意味する。
【0048】
さらに、「機能スタック」とは、例えば非限定的な方法で機能を提供するスタック、アクチュエータ機能、フィルター機能、変換機能、調整機能、共振器機能、ブラッグミラー機能、センサー機能、読み取り回路機能を意味する。
【0049】
図1では、2つのスタックE1、E2を含む、本発明による調整可能なバルク弾性波共振器の例示的な実施形態を見ることができる。
【0050】
スタックE1は、トランスデューサとして指定され、圧電材料の層2、層2の面上の電極4、及び、層2の他方の面上の電極6を含む。電極4、6は、変換のための能動部品と、能動部品を外部回路に接続するための1つ以上の接触部品とを含む。
【0051】
電極4及び6は、アクティブ領域に規定され、互いに位置合わせされる。
【0052】
スタックE2は、調整スタック(チューニングスタック)と呼ばれ、圧電材料の層8、層8の面上の電極10、及び、層8の他方の面上の電極12を含む。電極10及び12は、互いに垂直に位置合わせされており、活性領域で実質的に同じ表面積を有する。
【0053】
スタックE2はまた、電極10と圧電層8との間に挿入された中間層13を含む。この層は、本発明による製造方法から生じ、結合機能を保証する層である。以下で分かるように、この層13は、スタックE1の電極4と圧電層2との間に挿入することができる。
【0054】
電極10、12は、調整のための能動部品と、能動部品を外部回路に接続するための1つ以上の接触部品とを含む。
【0055】
優先的には、圧電材料は、強力な圧電特性を持ち、構造体で利用できる合計(電気及び弾性)エネルギーに関して、電場から機械場に、又は、その逆に、変換されたエネルギー分率として定義される「電気機械結合係数」k2によって定量化される。圧電材料は、例えば、優先的に、LiNbO3、好ましくはX又はY+163°カットのLiNbO3から選択され、LNO、LiTaO3、又は、KNbO3と呼ばれる。好ましくは、層2及び層8は、同じ圧電材料で作られる。変形例として、層2及び層8の両方は、2つの異なる圧電材料から、又は、さらには異なる結晶配向から作ることができる。
【0056】
電極は、例えば、タングステン又はアルミニウムである。電極は、異なる導電性材料で作ることができる。
【0057】
図示の例では、スタックは、両方のスタックE1とスタックE2との間、より具体的には電極6と電極10との間に挿入された電気絶縁体14、例えばSiO2を含む。しかし、他の代替案によれば、電極6及び電極10は、同じであり得、単一の金属層のみを形成し得る。
【0058】
電極は、それらが形成される圧電層の面の表面積よりも小さい表面積を有する。電極は、例えば、フルプレート堆積及びエッチングによって作られる。
【0059】
本発明による方法によって、従来技術の共振器に対して、共振器のアクティブ領域の外側の電極の部分の表面積が実質的に減少し、それによって寄生容量が減少する。その後、フィルターの動作が改善される。
【0060】
次に、
図1の共振器を製造するための本発明による例示的な製造方法について説明する。
【0061】
【0062】
この方法により、圧電材料と同じくらい薄いLNOを実装することができる。以下の説明では、実装される圧電材料は、LNOであるが、この方法は、他の圧電材料を実装することもできる。
【0063】
LNO薄層は、例えば、約100nmと数百ナノメートルの間の厚さを有する。LNOの厚さは、ターゲット周波数範囲の関数として選択される。さらに、LNOが所定の結晶配向を有することが好ましく、好ましくは、XカットのLNO層を利用可能にすることが望ましい。
【0064】
しかし、バルク波フィルター業界で従来使用されている材料であるが、周波数アジャイルフィルターでの使用には圧電特性が不十分なAlNとは異なり、堆積によるLNO薄層の製造は考えられない。
【0065】
第1のフェーズでは、トランスデューサを形成するためのスタックが作成される。変形例として、この方法は、調整用のスタックを形成することから開始することができる。このために、例えばシリコンの基板100と、例えばLNOの基板101が使用される。
【0066】
第1の段階中に、所定の深さに脆化領域102を生成するために、基板101にイオン注入が行われる。脆化領域は、破線で示される。脆化領域102は、スタック内のLNO層の所望の厚さよりも僅かに高い、例えば、目標の最終的な厚さよりも50から200nm程度高い深さに作られる。脆化領域に最も近い基板101の面は、前面として示されている。脆化領域102は、基板を2つの部分102.1及び102.2に区切り、ここで、部分102.2は、LNO薄層を形成するものである。
【0067】
このようにして得られた要素は、
図2Aに示されている。
【0068】
次の段階中に、例えば、アルミニウム、タングステン、白金又はモリブデンの金属層が、電極を作るために、例えば、スパッタリング堆積によって、基板101の前面に形成される。次に、金属層は、例えばフォトリソグラフィによって構造化され、規定された電極4を作る。
【0069】
このようにして得られた要素は、
図2Bに示されている。
【0070】
次の段階中に、犠牲層105は、例えば、スパッタリングによってアモルファスシリコンを堆積させることによって、電極4及び前面上に形成される。
【0071】
このようにして得られた要素は、
図2Cに示されている。
【0072】
次の段階中に、アモルファスシリコンの犠牲層105は、例えばフッ化ガス、例えばSF6及び/又はCH2F2を使用する反応性イオンエッチングによって構造化される。これにより、将来の吊り下げられた膜の位置に対応するボックスが形成される。
【0073】
このようにして得られた要素は、
図2Dに示されている。
【0074】
次の段階中に、例えばSiO2の結合層106は、前面及び犠牲層105上に形成される。
【0075】
基板100上には、例えばSiO2の結合層107も形成される。
【0076】
次に、例えば化学機械的研磨によって、結合層106及び107を平坦化する段階を行うことができる。
【0077】
このようにして得られた要素は、
図2Eに示されている。
【0078】
次の段階中に、両方の基板の組み立ては、結合層106及び107を接触させることによって実行され、組み立ては、例えば直接結合によって達成される。変形例として、組み立ては、ポリマー結合によって達成することができる:犠牲層のボックスを形成した後、樹脂、例えば、BCB(ビスベンゾシクロブテン)のスピンコーティングが行われる。次に、プレート間アライメント装置に両方の基板を接触させ、最後に、樹脂の重合と硬化を可能にするアニーリングを実行する。
【0079】
このようにして得られた要素は、
図2Fに示されている。
【0080】
次の段階中に、LNO層は、注入領域102で破砕され、部品102.1が除去される。
【0081】
次に、LNOの薄層102.2及びその面の1つに電極4を備えた要素が得られる。
【0082】
次に、層の厚さを目標値にするために、研磨を有利に行うことができる。
【0083】
このようにして得られた要素は、
図2Gに示されている。
【0084】
変形例として、LNOの薄層は、注入段階に頼ることなく研磨することにより、基板100を所望の厚さまで薄くすることによって得ることができる。
【0085】
次の段階中に、LNOの薄層102.2の上に導電材料の層が形成され、その層は、電極4と位置合わせされた規定された電極6を形成するように構造化される。例えば、フォトリソグラフィ及びマスクアライナステップ中に、電極6は、電極4と位置合わせされるように区切られる。次に、エッチングにより、電極6が規定される。この位置合わせは、基板の透明な性質と、基板を電極から分離する酸化物層のために可能になる。
【0086】
このようにして得られた要素は、
図2Hに表されている。
【0087】
次の段階中に、例えばSiO2の電気絶縁材料の層110は、調整スタックを生成するために電極6に形成される。この要素の前面全体に層が形成される。この層は、変換スタックE1と調整スタックE2を電気的に絶縁するためのものである。
【0088】
このようにして得られた要素は、
図2Iに示されている。
【0089】
次の段階中に、導電性材料の層が層110に堆積され、電極10は、電極4、6と位置合わせされるように構造化される。
【0090】
この位置合わせは、電極6を製造するために上述したように、例えばフォトリソグラフィ及びマスクアライナーによって有利に達成することができる。次に、層をエッチングして、電極10を規定する。
【0091】
次に、樹脂の除去又はストリッピングの段階を実行することができる。
【0092】
このようにして形成された要素は、
図2Jに表されている。
【0093】
その上、LNOの第3の基板114では、所定の深さに脆化領域116を形成するためにイオン注入が行われる。脆化領域は、破線で示されている。脆化領域の深さは、調整スタックのLNO層の厚さを規定する。脆化領域に最も近い基板の面は、前面と呼ばれる。脆化領域は、基板を2つの部分114.1及び114.2で区切り、ここで、部分114.2は、LNOの薄層を形成するためのものである。このようにして得られた要素は、
図2Kに示されている。
【0094】
別の例によれば、基板114は、LNOとは異なる圧電材料で作ることができる。
【0095】
次に、電気絶縁材料、例えばSiO2の層118は、電極10に形成される。平坦化工程は、例えば化学機械研磨により有利に行われる。
【0096】
このようにして得られた要素D2は、
図2Lに表されている。
【0097】
次の段階中に、電気絶縁材料の層117は、例えばSiO2の基板114の前面に形成される。平坦化段階は、例えば、要素D2に結合するための化学機械研磨によって有利に行われる。
【0098】
このようにして、要素D1が形成される。
【0099】
【0100】
次の段階中に、要素D1及びD2は、例えば直接結合によって、層118及び層117によって組み立てられる。要素D1が電極を含まないので、この組み立て工程は、位置合わせを必要としない。層117及び層118の厚さは、組み立て時に、総厚さが両方のスタック間の電気絶縁材料の所望の厚さに対応するように選択される。このようにして得られた要素は、
図2Mに示されている。
【0101】
次の段階中に、LNOの部分114.1は、破砕によって除去される。
【0102】
変形例として、LNOの薄層を形成するために、基板114は、注入段階に頼ることなく、研磨によって薄くされる。
【0103】
このようにして得られた要素は、
図2Nに示されている。
【0104】
次の段階中に、導電性材料の層は、例えば堆積によって、LNOの薄層114.2上に形成される。
【0105】
例えば、フォトリソグラフィ及びマスクアライナーによって、規定された電極12は、電極10と位置合わせされるように区切られ、次いでエッチング段階により、電極12が形成される。
【0106】
図示された例において、非限定的な方法で、圧電層114.2及び絶縁層110の、並びに、最後に圧電層114.2、絶縁層110及び圧電層102.2の連続したエッチング段階がさらに行われ、3つ全てが、例えば、それぞれ電極10、6及び4上の電気接点を再確立するために、イオン加工によって行われる。最後に、まだ例えばイオン加工などによって犠牲層105で停止してスタック全体をエッチングし、続いて、例えばアモルファスシリコンボックスをXeF2エッチングすることによって犠牲層104を気相エッチングすると、空気膜の上に吊るされた共振器を開放することができる。
【0107】
このようにして得られた要素は、
図2Oに示されている。
【0108】
この方法は、SMR共振器を作成するために実装することができる。
【0109】
この方法により、異なる電極レベルを互いに位置合わせするために、結合時に2つのプレート間の位置合わせを行う必要がなくなり、位置合わせは、リソグラフィ中にマスクアライナー又はフォトリピーターによって達成され、それは、より単純で、何よりもはるかに正確である。この方法では、結合中に専用の位置合わせステーションに頼る必要がないため、製造コストを削減することができる。
【0110】
本発明による製造方法は、電極の正確な位置合わせを達成することを可能にし、それにより、起こり得る位置ずれを克服するために構造体を設計する際に通常採用されるマージンが低減されることを可能にする。
【0111】
本発明によれば、フォトリピーターを使用して行われる位置合わせを想定することにより、レベルごとの位置合わせの不確実性、並びに、リソグラフィ及びエッチングの段階に関連する寸法損失を含む、各金属レベル間の1μmオーダーのミスアラインメントを埋めるガードを検討することが可能である。
図5Aでは、本発明による方法で得られた共振器の上面図を見ることができ、電極の周囲のみが表されており、4つの電極の共通領域に対応する、共振器のアクティブ領域は、AZとして指定される。ガードは、非常に少なくなる。この図では、従来技術の調整可能なバルク弾性波フィルターの上面図を見ることができ、電極の周囲のみが示されている。4つの電極の共通領域は、AZ’と指定されている。
【0112】
図3では、電気的応答(オームでのインピーダンスZ)は、60nmの厚さを有する中間層13を含む、理想的な共振器Rid及び本発明に従って得られた共振器Rの周波数の関数として表されることが分かる。曲線Ridoは、調整圧電層が開回路にあるときの電気応答であり、RIdcは、調整圧電層が短絡にあるときの電気応答である。
【0113】
曲線Roは、調整圧電層が開回路にあるときの電気応答であり、Rcは、調整圧電層が短絡にあるときの電気応答である。
【0114】
図4では、比較として、アクティブ領域の外側で電極の延長がアクティブ領域の1.5倍の表面積に対応する従来技術の共振器R’の電気的応答を表すことができる。従って、寄生容量が大きくなる。
【0115】
曲線R’oは、調整圧電層が開回路にあるときの電気応答であり、R’cは、調整圧電層が短絡にあるときの電気応答である。
【0116】
点線の曲線RidosとRidcsは、本発明によって実現されるが、結合層を実装しない位置合わせを有する理論上のスタックに対応する。結合層の存在が、共振器の動作にあまり大きな影響を与えないことが認められる。
【0117】
開回路及び短絡状態は、周波数アジャイル共振器が到達可能な2つの終端位置を表す。
【0118】
本発明による方法によって達成される共振器の周波数俊敏性は、理想的な共振器のそれに対して低減されるが、この低減は、従来技術の共振器R’のそれよりも遥かに低いことに留意されたい。その結果、本発明により、従来技術のものに対して拡張された周波数俊敏性を有する調整可能なバルク弾性波フィルターを製造することができる。
【0119】
さらに、本発明による方法により、上述の方法によって得られるスタックは、圧電材料の1つと電極との間に結合層を含む。しかし、この層は、一般にSiO2であり、電気絶縁性である。
【0120】
従来技術のフィルターは、そのような層を含まない。通常、電極を圧電層と直接接触させることが望ましい。しかし、本発明者らは、この層の存在が調整可能な共振器の動作にとって許容できることを発見した。
【0121】
この中間層の存在がフィルターの動作に及ぼす影響を評価するために、次のフィルターを考慮して測定が行われた:
電極4、6、10、12は、Alであり、それぞれが100nmの厚さである。
【0122】
調整圧電層は、厚さが650nmのLNOである。
【0123】
トランスデューサの層は、625nmの厚さのLNOである。
【0124】
両方のスタック間の電気絶縁層は、厚さ200nmのSiO2で、結合層は、厚さhのSiO2である。
【0125】
frO及びfaOは、調整スタックが開回路にあるときの共振周波数及び反共振周波数を示し、frF及びfaFは、調整スタックが閉回路にあるときの共振周波数及び反共振周波数を示す。
【0126】
図6は、単位がnmの厚さhの関数として、電気機械結合係数ccの変化を%で表す。ccoは、開回路の電気機械結合係数を示し、cccは、短絡の電気機械結合係数を示す。
【0127】
電気機械結合係数は、圧電材料が電気エネルギーを機械エネルギーに、又は、その逆に、変換する能力を表す。フィルタリング用途の場合、この係数は、共振器の共振周波数と反共振周波数との間の相対偏差に比例し、結果として到達する可能性のある相対通過帯域について通知する。
【0128】
中間層の厚さが増加すると、係数ccは急速に減少することがわかる。結合を確実にするのに十分である最大60nmの厚さhを選択することが好ましいであろう。しかし、いくつかの条件下では、そのような厚さは、結合が複雑になる前に平坦化を行う可能性がある。
【0129】
第1の近似として、係数ccは、圧電層と全層の厚さの比率に比例する。
【0130】
図7では、調整層の開放回路froとfaro及び短絡回路frcとfarcにおけるGHzの共振周波数frと反共振周波数の変動は、nm単位の中間層13の厚さの関数として表すことができる。
図7の測定に使用されるスタックが、
図3に使用されるスタックとは異なることに注意されたい。
【0131】
開回路における共振周波数間の周波数差及び短絡における反共振周波数間の周波数差は、中間層の厚さが増加するにつれて増加することが認められる。従って、フィルターの俊敏性は、厚みが増すと増加する。従って、フィルターの初期の俊敏性を維持しながら、調整層と変換層との間の厚さの比率を変更することによって、結合係数ccの減少を補償するか、さらには増加させることができる。
【0132】
逆に、中間層が変換層に対して配置されている場合、同様の効果により、共振器の電気機械結合係数が増加する。
【0133】
電極と圧電層との間に結合層を実装する本発明による方法によって、調整層と変換層との間の結合をほとんど又は全く変更せずに寄生容量が低減される。
【0134】
さらに、結合層は、有利には、共振器の温度挙動を改善することができる。実際、LNOは、高い温度ドリフトを有する材料である。従って、LNOを実装する共振器は、温度に非常に敏感である。電極とLNOとの間に、例えばSiO2の接合層が存在することによって、少なくとも部分的な温度補償が保証され、共振器の温度に対する感度が低下する。
【0135】
別の例示的な実施形態によれば、本発明による方法は、音響ブラッグミラーを使用して、製造される共振器と基板との間の機械的減結合を保証する、固体実装共振器(SMR:Solidly Mounted Resonators)と呼ばれるブラッグミラー上のバルク弾性波共振器を可能にする。
【0136】
図2Oの調整可能な共振器に存在する空気キャビティは、交互に高インピーダンス層と低インピーダンス層の音響のスタックで置き換えられる。
【0137】
従来、これらのミラーは、一般に、音響低インピーダンス材料としてSiO2の層を使用し、音響高インピーダンス材料として高密度の金属、例えば、W、Moなどを使用して作られている。しかし、金属層は、電気トラックの下を走るときに寄生容量を生成する可能性がある。本発明による方法により、共振器と垂直に位置合わせされていない金属層の領域を低減するようにそれらを規定することが可能である。
【0138】
ここで、SMR共振器を作製することを可能にする本発明による例示的な方法を、
図8Aから
図8Jを使用して、ここに説明する。
【0139】
第1の段階中に、ブラッグミラーを形成するためのSiO2/W/SiO2/Wのスタックが、一連のPECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)によって作られる。SiO2及びMoの連続的な堆積は、例えば、噴霧によっても行うことができる。
【0140】
このようにして得られた要素は、
図8Aに示されている。
【0141】
次の段階中に、ミラーの構造化は、例えばW/SiO2/Wの3つの層のフォトリソグラフィ、ドライエッチングによって行われる。
【0142】
このようにして得られた要素は、
図8Bに示されている。
【0143】
次の段階中に、SiO2層200が形成され、次いで平坦化段階が実行される。
【0144】
このようにして得られた要素は、
図8Cに示されている。
【0145】
次の段階中に、別のSiO2層201が形成される。
【0146】
このようにして得られた要素は、
図8Dに示されている。
【0147】
次の段階中に、例えばMoの導電層202が層200上に形成される。次に、この層は、例えばフォトリソグラフィ、ドライエッチング、及び、樹脂除去によって、最初に規定された電極を形成するように構造化される。
【0148】
このようにして得られた要素は、
図8Eに示されている。
【0149】
次の段階中に、LNO基板と結合するために、SiO2層204が第1の電極上に形成される。平坦化段階を実行することができる。
【0150】
このようにして得られた要素は、
図8Fに示されている。
【0151】
さらに、LNOの基板206のイオン注入は、所定の深さに脆化領域208を生成するために行われる。脆化領域は、破線で示されている。脆化領域の深さは、共振器のLNO層の厚さを規定する。脆化領域に最も近い基板の面は、前面として指定される。脆化領域は、2つの部分206.1と206.2で基板の境界を定め、ここで、部分206.2は、LNOの薄層を形成するためのものである。
【0152】
次に、素子と結合するために、基板206の前面にSiO2層210が形成される。平坦化段階が行われ、その後、表面活性化が行われ、後続の結合段階が促進される。
【0153】
このようにして得られた要素は、
図8Gに示されている。
【0154】
次の段階中に、両方の要素は、例えば直接結合によって、層204及び210を結合することによって組み立てられる。次に、強化焼鈍し、続いて、破砕焼鈍を行う。基板206.1が除去される。転写層での注入及び破砕によって生成された欠陥を治癒するために、平坦化段階及び/又は治癒アニーリングを行うことができる。
【0155】
このようにして得られた要素は、
図8Hに示されている。
【0156】
次の段階中に、例えばMoのような導電性材料212の層が、例えば溶射によって形成される。
【0157】
例えば、フォトリソグラフィ及びマスクアライナーによって、第2の規定された電極は、第1の電極と位置合わせされるように区切られ、次いで、エッチング、例えば、ドライエッチング段階によって、第2の電極が形成される。
【0158】
このようにして得られた要素は、
図8Iに示されている。
【0159】
次の段階中に、LNO層は、フォトリソグラフィ、イオンビームエッチング、及び、樹脂除去によって構造化される。
【0160】
このようにして得られた要素は、
図8Jに示されている。
【0161】
本発明による方法により、共振器の電極と垂直方向に整列していないミラーの導電層の部分が最小化される。これにより、電気的寄生が減少する。
【0162】
図9Aから
図9Eには、少なくとも第1のスタック及び第2のスタックを含む構造体を生成するための本発明による例示的な方法を見ることができる。
【0163】
例えば、第1及び第2のスタックは、それぞれアクチュエータである。変形例として、スタックの1つは、アクチュエータであり、もう1つのスタックは、移動する構造体である。
【0164】
一例によれば、構造体は、焦電検出器に実装することができ、第1のスタックは、焦電センサーであり、第2のスタックは、読み取り回路であり得る。別の例によれば、構造体は、超小型電子システムで実施することができ、各スタックは、回路とすることができる。
【0165】
第1のスタック301は、協働する第1の要素又は構造体304及び第1の部分302を含み、第2のスタック310は、協働する第2の要素又は第2の構造体306及び第2の部分311を含み、第1の要素304は、第2の要素306と位置合わせされている。
【0166】
第1に、例えば、アクセプター基板と呼ばれる基板302を含む第1のスタック301(
図9A)、及び、この基板上に形成された規定の構造体304がある。
【0167】
第1の段階中に、要素又は構造306は、構造体304及び306の両方が互いに整列するように、構造体304上に形成される。この形成は、例えば、堆積及びフォトリソグラフィによって行われる。
【0168】
このようにして得られた要素は、
図9Bに示されている。
【0169】
次の段階中に、例えばSiO
2の結合層308は、
図9Bの要素の前面に形成される。
【0170】
このようにして得られた要素は、
図9Cに示されている。
【0171】
構造体306を含まない、ドナー基板と呼ばれる基板311を含む第2のスタック310上に、例えばSiO2の結合層312も形成される。
【0172】
次に、例えば化学機械的研磨により、結合層308及び312を平坦化する段階を行うことができる。
【0173】
このようにして得られた要素は、
図9Dに示されている。
【0174】
次の段階中に、両方の基板の組み立ては、結合層308及び310を共に接触させることによって実行され、組み立ては、例えば直接結合によって達成される。変形例として、組み立ては、ポリマー結合によって達成することができ、樹脂、例えば、BCB(ビスベンゾシクロブテン)をスピンコーティングすることが行われる。次に、プレート間アライメント装置で両方の基板を接触させ、最後にアニーリングを行って、樹脂を重合及び硬化させることが可能である。
【0175】
次の段階中に、基板311の厚さは、例えば、注入領域で破砕することによって減少させることができる。
【0176】
層の厚さを目標値にする前に、研磨工程を有利に行うことができる。
【0177】
このようにして得られた要素は、
図9Eに示されている。
【0178】
変形例として、基板311は、注入段階に頼ることなく研磨により薄くすることができる。
【0179】
この方法により、一例として、アクチュエータ、例えば焦電性検出器などの検出器、マイクロエレクトロニクスシステムなどを製造することができる。
【0180】
さらに、本発明による製造方法は、注入されたプレート上で行われるべき高いサーマルバジェットを必要とする段階(主に堆積段階)を実行する必要がない。従って、既知の従来技術では不可能であった高温で金属層又は絶縁層を堆積させることができ、従って音響損失を低くすることができる。さらに、それは、スタックに比較的高い累積応力を発生させない。
【0181】
本発明は、それぞれが他のスタックの要素と位置合わせされている平面内のいくつかの要素を有するスタックを含む構造体の製造にも適用可能である。
【符号の説明】
【0182】
2 圧電材料
4 電極
6 電極
8 圧電材料の層
10 電極
12 電極
E1 トランスデューサスタック
E2 調整スタック