(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】微細化形状及び微細構造を有する銅合金スパッタリングターゲットの形成方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20240126BHJP
B21J 1/04 20060101ALI20240126BHJP
B21J 5/08 20060101ALI20240126BHJP
C22C 9/05 20060101ALI20240126BHJP
C22F 1/08 20060101ALI20240126BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20240126BHJP
【FI】
C23C14/34 A
B21J1/04
B21J5/08 Z
C22C9/05
C22F1/08 N
C22F1/00 683
C22F1/00 694A
C22F1/00 684C
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 604
C22F1/00 613
C22F1/00 682
(21)【出願番号】P 2020541898
(86)(22)【出願日】2019-01-31
(86)【国際出願番号】 US2019016044
(87)【国際公開番号】W WO2019152646
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-24
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】フェラッセ、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】アルフォード、フランク シー.
(72)【発明者】
【氏名】ノランダ―、イラ ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ターナー、エリック エル.
(72)【発明者】
【氏名】アンダーウッド、パドリック
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-535518(JP,A)
【文献】特表2005-533187(JP,A)
【文献】国際公開第2008/041535(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/136673(WO,A1)
【文献】特開2013-067857(JP,A)
【文献】特開2000-034562(JP,A)
【文献】国際公開第2007/020981(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0020192(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
B21J 1/04
B21J 5/08
C22C 9/05
C22F 1/08
C22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅マンガン合金スパッタリングターゲットを形成する方法であって、
90重量%超の主成分としての銅と、10重量%未満の副成分としてのマンガンとを含む銅マンガン合金ビレットを、銅マンガン合金ビレットの高さが、第1の一方向鍛造工程前の銅マンガン合金ビレットの高さと比較して約10パーセント~約33パーセント低減され、
銅マンガン合金ビレット中の結晶粒の総数が少なくとも10倍増加し、銅マンガン合金ビレットの結晶粒構造が少なくとも10倍微細化されるように、第1の一方向鍛造工程に供することと、
第1の熱処理工程において、
既存の結晶粒の80%~100%が再結晶化され、銅マンガン合金ビレット中の結晶粒の総数が少なくとも10倍増加し、銅マンガン合金ビレットの結晶粒構造が少なくとも約10倍微細化されるように、前記第1の一方向鍛造工程後に、650℃~750℃の温度で1~3時間、前記銅マンガン合金ビレットを加熱することと、
前記銅マンガン合金ビレットの高さが第2の一方向鍛造工程前の銅マンガン合金ビレットの高さと比較して約40パーセント~95パーセント低減されるように、前記銅マンガン合金ビレットを第2の一方向鍛造工程に供することと、
第2の熱処理工程において、前記第2の一方向鍛造工程後に、500℃~650℃の温度で4~8時間、前記銅マンガン合金ビレットを加熱することと、
前記銅マンガン合金ビレットを銅マンガン合金スパッタリングターゲットに形成することと、を含み、
R比が、
断面積が銅マンガン合金ビレットの基部に対して垂直に取られた場合の、銅マンガン合金ビレット断面当たりの結晶粒の総数として定義され、第2の熱処理工程後に銅マンガン合金ビレットが500以上のR比を有
し、かつ銅マンガン合金ビレットが、150μm未満の平均結晶粒径を有する、方法。
【請求項2】
前記銅マンガン合金ビレットが、第2の熱処理工程後に80μm未満の平均結晶粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記銅マンガン合金ビレットが、前記第2の熱処理工程後に、約100,000~100,000,000のR比を有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、銅マンガン合金及び銅マンガン合金を形成する方法に関する。より具体的には、本開示は、微細化形状及び微細構造を有する銅マンガン合金に関する。いくつかの実施形態では、銅マンガン合金は、スパッタリングターゲットに形成され、様々なスパッタリング用途で使用され得る。
【背景技術】
【0002】
物理蒸着法(physical vapor deposition、「PVD」)は、様々な基板の表面に材料の薄膜を形成するために広く使用されている。スパッタリングとして知られる1つのPVDプロセスでは、原子は、プラズマなどのガスイオンとの衝突によって、スパッタリングターゲットの表面から排出される。そのため、スパッタリングターゲットは、基板上に堆積される材料の供給源である。
【0003】
例示的なスパッタリングアセンブリの一部の概略図を、
図1に示す。スパッタリングアセンブリ10は、結合されたスパッタリングターゲット14を有するバッキングプレート12を備える。半導体ウェハ18は、アセンブリ内に配置され、スパッタリングターゲット14のスパッタリング表面16から離間している。動作中、粒子又はスパッタリングされた材料22は、スパッタリングターゲット14の表面16から変位し、半導体ウェハ18の表面上に堆積して、ウェハ上にコーティング(又は薄膜)20を形成する。
図1に示されるスパッタリングアセンブリ10は、例えば、ターゲット14とバッキングプレート12の両方が任意の好適なサイズ又は形状であり得るため、例示的な構成であることを理解されたい。いくつかの実施形態では、物理蒸着装置10は、バッキングプレート12を伴わずにスパッタリングターゲット14を含み得る。この構成は、モノリシック構成と称される。
【0004】
様々な金属及び合金は、PVD技術を使用して蒸着することができ、例えば、Al、Ti、Cu、Ta、Ni、Mo、Au、Ag、Pt、及びこれらの元素の合金が挙げられる。1つのそのような合金は、例えば、半導体産業で使用される様々な金属相互接続を形成するために、スパッタリングターゲットで使用されている銅マンガン(copper manganese、「CuMn」)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スパッタリングターゲットは、金属又は金属合金ビレットから形成又は鍛造されてもよい。より遅い冷却速度によって特徴付けられる様々な注型技術の使用は、ビレットの全体的な不純物を低減し、注型ビレットを得、したがって、より高い純度でスパッタリングターゲットを得るために有利であり得る。しかしながら、注型中の冷却がより遅くなると、更なる処理中に有害であり得る大きな微細構造をもたらし得る。したがって、業界では、ますます微細化された金属及び金属合金、並びにそのような微細化された金属及び金属合金、例えば、ビレットとして形成するための方法が望まれている。
【0006】
本開示の様々な態様は、銅マンガンスパッタリングターゲットを形成する方法に関する。方法は、銅マンガンビレットの結晶粒の数が少なくとも10倍増加するように、銅マンガンビレットを第1の一方向鍛造工程に供することを含む。方法はまた、第1の熱処理工程において、約650℃~約750℃の温度で約1時間~約3時間、銅マンガンビレットを加熱することを含む。方法はまた、ビレットの高さが約40パーセント~95パーセント低減されるように、銅マンガンビレットを第2の一方向鍛造工程に供することを含む。方法はまた、第2の熱処理工程において、約500℃~約650℃の温度で約4時間~約8時間、銅マンガンビレットを加熱して、銅合金を形成することを含む。
【0007】
本開示の様々な態様は、銅合金スパッタリングターゲットを形成する方法に関する。方法は、銅合金ビレットの結晶粒の数が少なくとも10倍増加するように、銅合金ビレットを第1の一方向鍛造工程に供することを含む。方法はまた、銅合金の100パーセントの再結晶化を達成するために十分な温度及び時間で、第1の熱処理工程において、第1の鍛造工程後に、銅合金ビレットを加熱することを含む。方法はまた、銅合金ビレットの高さが約40パーセント~95パーセント低減されるように、銅合金ビレットを第2の鍛造工程に供することを含む。方法はまた、実質的に微細化された結晶粒構造を達成するために十分な温度及び時間で、第2の熱処理工程において、第2の鍛造工程後に、銅合金ビレットを加熱することを含む。方法はまた、銅合金ビレットを銅合金スパッタリングターゲットに形成することを含む。
【0008】
複数の実施形態が開示されるが、当業者には、本発明の例示的実施形態を図示及び説明する以下の発明を実施するための形態から、本発明の更に他の実施形態が明らかになるであろう。したがって、図面及び発明を実施するための形態は、制限的なものではなく、本質的に実例とみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】いくつかの実施形態による、例示的なスパッタリングアセンブリの一部の概略図である。
【0010】
【0011】
【
図3】いくつかの実施形態による、銅マンガン合金を形成する方法のブロックフロー図である。
【0012】
【
図4A】銅マンガン合金に対する従来の処理方法の効果を示す写真である。
【
図4B】銅マンガン合金に対する従来の処理方法の効果を示す写真である。
【
図4C】銅マンガン合金に対する従来の処理方法の効果を示す写真である。
【0013】
【
図5】いくつかの実施形態による、2工程鍛造プロセスの効果を示す写真である。
【0014】
【
図6A】いくつかの実施形態による、25%鍛造プロセス後の追加の熱処理工程の効果を示す写真である。
【
図6B】いくつかの実施形態による、25%鍛造プロセス後の追加の熱処理工程の効果を示す写真である。
【
図6C】いくつかの実施形態による、25%鍛造プロセス後の追加の熱処理工程の効果を示す写真である。
【0015】
【
図7A】いくつかの実施形態による、17%鍛造プロセス後の追加の熱処理工程の効果を示す写真である。
【
図7B】いくつかの実施形態による、17%鍛造プロセス後の追加の熱処理工程の効果を示す写真である。
【
図7C】いくつかの実施形態による、17%鍛造プロセス後の追加の熱処理工程の効果を示す写真である。
【0016】
【
図8A】いくつかの実施形態による、12%鍛造プロセス後の追加の熱処理工程の効果を示す写真である。
【
図8B】いくつかの実施形態による、12%鍛造プロセス後の追加の熱処理工程の効果を示す写真である。
【
図8C】いくつかの実施形態による、12%鍛造プロセス後の追加の熱処理工程の効果を示す写真である。
【0017】
【
図9】いくつかの実施形態による、第1の鍛造工程における熱処理温度と鍛造/降温率との間の関係を示すグラフである。
【0018】
【
図10A】いくつかの実施形態による、様々な大型銅マンガン合金ビレットの結晶粒構造の顕微鏡写真である。
【
図10B】いくつかの実施形態による、様々な大型銅マンガン合金ビレットの結晶粒構造の顕微鏡写真である。
【0019】
【
図10C】いくつかの実施形態による、
図10A及び
図10Bの銅マンガン合金についてそれぞれR比及び結晶粒径を示すグラフである。
【
図10D】いくつかの実施形態による、
図10A及び
図10Bの銅マンガン合金についてそれぞれR比及び結晶粒径を示すグラフである。
【0020】
【0021】
【
図12A】いくつかの実施形態による、銅マンガン合金ビレットのR比のグラフである。
【0022】
【
図12B】いくつかの実施形態による、銅マンガン合金ビレットの結晶粒径のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
例えば、スパッタリングターゲットにおいて使用するための銅マンガン合金が本明細書に開示される。銅マンガン合金を形成する方法もまた本明細書に開示される。より具体的には、微細化形状及び微細化された、均一な微細構造を有する銅マンガン合金を形成する方法が本明細書に開示される。
【0024】
銅マンガン合金は、例えば、徐冷と組み合わせて使用される様々な注型技術などのある特定の処理技術に供したときに、大きな結晶粒及び/又は不均一な結晶粒構造を形成し得ることが見出されている。本明細書で使用される場合、徐冷とは、注型銅マンガン材料をその溶融温度から周囲温度まで調節又は自然冷却することを指す。徐冷中、注型材料は、加熱及び溶融工程中に使用されるものと同じるつぼ内に留まり、るつぼ内で冷却される。この技術は、第1のるつぼから、溶融した材料の温度よりも著しく低い温度を有する第2のるつぼへの溶融材料のクエンチ又は注入などの、他のより速い冷却技術とは対照的である。銅マンガン材料を徐冷に供することは、例えば、ビレットが処理されてスパッタリングターゲットを形成するため、変形したビレット、ビレットの亀裂の増加、及び更なる塑性変形中の様々な他の欠陥の一因となり得る。この徐冷は、ビレットの全体的な不純物を低減することができ、より高い純度を有する注型ビレットを得ることを可能にする。しかしながら、徐冷は、更なる処理中に有害であり得る大きな微細構造をもたらし得る。本明細書に開示される合金及び方法は、更なる塑性変形中に、改善された形状、低減された亀裂、及び/又は低減された欠陥を有する銅マンガン合金を生成する。
【0025】
銅マンガン合金は、主成分としての銅と、副成分としてのマンガンと、を含む。主成分としての銅は、副成分であるマンガンよりも高い重量パーセントで存在する。例えば、銅マンガン合金は、90重量%超、98重量%超、又は99重量%超の銅、及び10重量%未満、2.0重量%未満、1.0重量%未満のマンガン、0.1重量%未満のマンガン、又は0.01重量%未満のマンガンを含み得る。いくつかの実施形態では、銅マンガン合金は、銅、マンガン、及び1つ以上の追加の副成分を含み得る。他の実施形態では、銅マンガン合金は、銅、マンガン、並びに酸素、炭素、及び他の微量元素などの不可避不純物からなり得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、銅マンガン合金は、微細化された微細構造を有し得る。様々な例では、微細構造の微細化の量は、その所与の断面における結晶粒の平均面積にわたるビレットの断面積の比Rによって特徴付けることができる。言い換えると、Rは、ビレット断面当たりの結晶粒の総数として定義することができる。
図2を参照すると、ビレットの断面積は、ビレットがその高さHに沿って直径Dで半分に切断されるときのビレットの面Fの面積である(すなわち、円筒形ビレットの基部に対して垂直に取られた断面積)。いくつかの実施形態では、銅マンガン合金の微細構造は、約500以上の比Rを有することを特徴とする。銅マンガン合金は、例えば、ビレット断面当たり500個超の結晶粒と同等である、500超の比Rを有し得る。一実施例では、10インチの高さ及び10インチの直径を有する円筒形ビレットは、100インチ
2又は64,500mm
2の断面積を有する。そのビレット中の結晶粒の平均直径が約12.82mm又は0.5インチである場合、結晶粒の平均面積は、約130mm
2又は0.2インチ
2である。したがって、比Rは、約500である(すなわち、所与の断面積に約500個の結晶粒が存在する)。他の実施例では、銅マンガン合金は、1,000超、10,000超、100,000超、1,000,000超、又は10,000,000超の比Rを有し得る。一般に、ビレットは、鍛造中の全ての方向における等方性及び均一な変形を容易にするために、所与のビレットサイズに必要とされるある特定の最小数の結晶粒を有する。いくつかの実施形態では、銅マンガン合金は、直径が約150μm未満、直径が約100μm未満、直径が約80μm未満、直径が約50μm未満、直径が約25μm未満、又は直径が約1μm未満である平均結晶粒径を有し得る。一般に、所与のビレットの平均結晶粒径は、ビレットのサイズ及び/又は断面積に応じて変化するであろう。
【0027】
いくつかの実施形態では、銅マンガン合金ビレットは、微細化形状を有し得る。ビレットは、実質的に等軸、円形、又は丸い形状である上面及び/又は底面を有し得る。例えば、ビレットの上面及び/又は底面は、全ての方向においてほぼ等しい寸法を有し得る。言い換えると、一方向における上面及び/又は底面の直径は、反対方向/垂直方向における上面及び/又は底面の直径とほぼ等しい。いくつかの実施形態では、ビレットの上面及び底面は均一であり、かつ/又は質感が滑らかである。ビレットはまた、ビレットの縁部に検出可能な実質的な突出部がないように形成されてもよい。
【0028】
銅マンガン合金を形成する方法100を
図3に示す。方法100は、初期処理工程110において出発材料を形成することを含む。例えば、銅材料は、上に記載されるように、徐冷と組み合わせて様々な注型技術を使用してビレット形態に注型され得る。銅材料は、銅と合金化して銅合金を形成する、他の元素などの添加剤を含み得る。例えば、銅材料は、主成分として銅、及び副成分として1つ以上の元素を含み得る。一実施例では、銅材料は、副成分としてマンガンを含み得る。いくつかの実施形態では、銅マンガン材料は、銅及びマンガンの両方を含む銅合金の標準注型方法を使用して形成され得る。
【0029】
初期処理後、銅マンガン合金は、第1の処理工程102に供される。いくつかの実施形態では、第1の処理工程102は、第1の鍛造工程112又は第1の熱処理工程114を含む。様々な実施形態では、第1の鍛造工程112は、銅マンガンビレットの高さを約10%~約33%低減することを含み得る。例えば、第1の鍛造工程112は、銅マンガンビレットの高さの10%低減~25%低減、12%低減~25%低減、約15%低減~25%低減、又は17%低減から25%低減を含み得る。いくつかの実施形態では、第1の鍛造工程112は、ビレットが1つの平面又は軸に沿って鍛造されるように、一方向鍛造又は一軸鍛造である。いくつかの実施形態では、結晶粒構造は、第1の鍛造工程112の結果として、銅マンガンビレット中の全既存の結晶粒数が少なくとも約10倍増加するように、第1の鍛造工程112中に少なくとも約10倍微細化され得る。例えば、鍛造後に、銅マンガンビレット中の結晶粒の総数は、鍛造前の銅マンガンビレット中の結晶粒の総数と比較して、少なくとも10倍増加される。別の例では、第1の鍛造工程112の前に合計約10個の結晶粒を有する材料は、第1の鍛造工程112の後に、合計で少なくとも約100個の結晶粒を有する。
【0030】
第1の鍛造工程112の後、銅マンガン合金は、第1の熱処理工程114に供される。第1の熱処理工程114は、約650℃~約750℃、約675℃~約750℃、又は約675℃~約700℃の温度で、約0.5時間~約3時間の期間、又は約1.5~約2時間の期間、銅マンガンビレットを加熱することを含み得る。例えば、一実施形態では、銅マンガンビレットは、約700℃の温度で約2時間の期間加熱され得る。いくつかの実施形態では、第1の熱処理工程114は、ビレット内の温度均一性及び平衡に達するために十分な時間実施され得る。他の実施形態では、第1の熱処理工程114は、結晶粒が再成長しないように、十分な温度及び時間で実施され得る。更に他の実施形態では、第1の熱処理工程114は、既存の結晶粒構造の約80%~100%再結晶化、既存の結晶粒構造の約90%~100%再結晶化、又は既存の結晶粒構造の完全な再結晶を得るために十分な温度及び時間で実施され得る。いくつかの実施例では、結晶粒構造は、第1の熱処理工程114の結果として、上に記載されるように、銅マンガンビレット中の全既存の結晶粒数が少なくとも約10倍増加するように、少なくとも約10倍微細化され得る。例えば、第1の熱処理工程114の前の所与の断面において、合計約100個の結晶粒を有する銅マンガンビレットは、第1の熱処理工程後に、合計で少なくとも約1,000個の結晶粒を有する。他の実施形態では、結晶粒構造は、少なくとも約50、少なくとも約100、少なくとも約1,000、少なくとも約10,000、少なくとも約100,000、又は100,000超倍微細化され得る。
【0031】
第1の熱処理工程114の後、銅マンガン合金は、第2の鍛造工程116及び第2の熱処理工程118を含む第2の処理工程104に供され得る。いくつかの実施形態では、第2の鍛造工程116は、ビレットの高さを最終的な所望の高さまで低減することを含み得る。ビレットの最終的な所望の高さは、様々な要因に応じて変化する。いくつかの実施形態では、第2の鍛造工程116は、所望される場合、ビレットの高さを約40%~約80%、又は約50%~約70%低減し得る。いくつかの実施形態では、銅マンガンビレットは、第2の鍛造工程116の後に実質的に等軸形状である。例えば、ビレットは、第1の鍛造工程112の後よりも第2の鍛造工程116の後に、より等軸形状であり得る。いくつかの実施形態では、第2の鍛造工程116は、ビレットが1つの平面又は軸に沿って鍛造されるように、一方向鍛造又は一軸鍛造である。
【0032】
第2の鍛造工程116の後、銅マンガンビレットは、第2の熱処理工程118に供され得る。いくつかの実施形態では、銅マンガンビレットは、第1の熱処理工程114の温度よりも低い温度まで加熱され得る。例えば、銅マンガンビレットは、約500℃~約650℃、約550℃~約650℃、又は約600℃~約650℃の温度まで約4時間~約8時間の期間加熱され、銅マンガン合金を形成し得る。いくつかの実施形態では、銅マンガン合金は、第2の熱処理工程118の後に、実質的に微細化された結晶粒構造を有し得る。例えば、銅合金は、第2熱処理工程118の後に、約150μm未満、約100μm未満、約80μm未満、約50μm未満、約25μm未満、又は約1μm未満の直径の平均結晶粒径を有し得る。
【0033】
第2の熱処理工程118の後、最終処理工程120において、銅合金は、所望される場合、更なる処理を受けることができる。いくつかの実施形態では、銅マンガンビレットは、上に記載されるように、追加の処理工程に供され得る。他の実施形態では、銅マンガンビレットは、所望される場合、微細構造を更に微細化するために、任意選択的な追加の鍛造、圧延、及び/又は側方押出法(ECAE)などの激しい塑性変形などの様々な従来の処理技術に供され得る。更に他の実施形態では、銅合金は、様々なスパッタリング用途で使用するためのスパッタリングターゲットに形成され得る。
【0034】
本開示の様々な実施形態及び実施例は、微細化された形状及び/又は微細化された均一な微細構造を有する銅マンガン合金を形成するための方法を記載する。一般に、合金ビレットは、鍛造、圧延、ECAE、及び/又は他の処理技術を受けたときに均一な様式で変形するために、合金ビレット(すなわち、実質的に微細化された微細構造)のサイズに関連して、ある特定の最小数の結晶粒を有しなければならない。したがって、開示される合金の利点としては、例えば、処理中の合金ビレットの均一な変形が挙げられる。追加の鍛造、圧延、及び/又はECAEなどの更なる処理が所望されるある特定の実施例では、本方法は、より少ない、得られる合金製品における亀裂及び/又は他の表面欠陥を容易にし得る。
【実施例】
【0035】
以下の非限定的な実施例は、本発明の様々な特徴及び特性を説明するものであり、これらに限定されるものではない。
【0036】
銅マンガン合金ビレットの形状及び結晶粒構造に対する、様々な量の鍛造低減及び熱処理温度の効果を評価するために、以下の実験を行った。以下の全ての実験で使用された材料は、主成分としての銅と、0.69重量%の濃度の副成分としてのマンガンと、を有する、6N銅マンガン(CuMn)合金であった。初期の注型時の結晶粒径は、平均直径数センチメートルであり、結晶粒は、全体にわたって不均一であった。
【0037】
第1の鍛造プロセスは、温度均一性及び平衡に達するために十分な時間、炉内で銅マンガンビレットを加熱することを含んだ、一方向2工程熱鍛造プロセスを含んだ。ほとんどの実施例では、これは、約1.5時間~2時間の期間の約550℃の平均温度を含んだ。加熱後、銅マンガンビレットを、以下の実施例で考察されるように、所望の低減パーセントまで鍛造した。
【0038】
第1の熱処理プロセスは、銅マンガンビレットを、再結晶化を誘発するために十分な温度まで加熱することを含んだ。ほとんどの実施例では、これは、ビレットを約700℃の平均温度に約2時間の期間加熱することを含んだ。しかしながら、これらのパラメータは、限定することを意図するものではない。
実施例1:銅マンガンビレットに対する従来の処理方法の効果
【0039】
銅マンガンビレットの形状及び結晶粒構造に対する従来の処理方法(例えば、1工程鍛造)の効果を観察した。第1の熱処理では、ビレットを約550℃の温度に約2時間の期間加熱した。次いで、ビレットを、高さの合計約70%低減を伴う単一の鍛造工程に供した。第2の熱処理では、次いで、以下に記載されるように、ビレットを約1.5時間の期間様々な選択された温度まで加熱した。
【0040】
1工程鍛造の結果を
図4A~
図4Cに示す。
図4Aは、第2の熱処理工程中に約550℃の温度に加熱された銅マンガンビレットを示す。
図4Bは、第2の熱処理工程中に約650℃の温度に加熱された銅マンガンビレットを示す。
図4Cは、第2の熱処理工程中に約800℃の温度に加熱された銅マンガンビレットを示す。示されるように、3つの実施例全てにおいて、ビレットは、実質的に楕円形であり、形状が不均一であった。したがって、1工程鍛造は、実質的に等軸のビレットを生成するために十分ではなく、第2の熱処理の温度を上昇させることは、この欠陥を克服しないと判定した。
実施例2:25%低減を伴う2工程鍛造の効果
【0041】
銅マンガンビレットの形状及び結晶粒構造に対する第1の鍛造工程の25%低減を伴う2工程鍛造の効果を観察した。第1の鍛造工程に続いて、ビレットを700℃の温度まで2時間の期間加熱した第1の熱処理工程を行った。次いで、ビレットを第2の鍛造工程において最終的な所望の厚さ(70%低減)に鍛造した。第2の熱処理工程は、適用されなかった。
【0042】
図5に示されるように、実施例2のビレットは、1工程鍛造で処理された実施例1のビレットと比較して、実質的に等軸形状であった。実施例2のビレットはまた、第2の鍛造工程後に微細な再結晶化微細構造を有した。
実施例3:追加の熱処理の効果
【0043】
銅マンガンビレットの形状及び結晶粒構造に対する第2の鍛造工程後の追加の熱処理工程の効果を観察した。銅マンガンビレットを実施例2のプロセスに供した。第1の鍛造工程は、25%低減を伴い、続いて、ビレットを700℃の温度まで2時間の期間加熱した第1の熱処理工程を行った。次いで、ビレットを第2の鍛造工程に供し、そこでビレットを最終的な所望の厚さ(70%低減)まで低減した。次いで、第2の鍛造工程後、ビレットを以下の表1に示されるように第2の加熱工程に供した。
【表1】
【0044】
実施例3の結果を
図6A~
図6Cに示す。
図6Aは、第2の鍛造工程後及び第2の熱処理工程前の、受け取り時の銅マンガンビレットの結晶粒構造を示す。
図6Bは、第2の熱処理工程後の実験Aの銅マンガンビレットの結晶粒構造を示す。示されるように、結晶粒構造は、
図6Aの受け取り時のビレットの結晶粒構造よりも微細化されている。
図6Cは、第2の熱処理工程後の実験Bの銅マンガンビレットの結晶粒構造を示す。示されるように、結晶粒構造は、受け取り時のビレット及び
図6Bのビレットの両方の結晶粒構造よりも微細化されている。したがって、第2の鍛造工程後の追加の熱処理工程が、ますます微細化された微細構造を生成すると判定した。
実施例4:17%低減を伴う2工程鍛造の効果
【0045】
銅マンガンビレットの形状及び結晶粒構造に対する第1の鍛造工程の17%低減を伴う2工程鍛造の効果を観察した。第1の鍛造工程に続いて、ビレットを700℃の温度まで2時間の期間加熱した熱処理工程を行った。次いで、ビレットを第2の鍛造工程において最終的な所望の厚さ(70%低減)に鍛造した。
【0046】
実施例4のビレットは、1工程鍛造で処理された実施例1のビレットと比較して、実質的に等軸形状であった。実施例4のビレットはまた、第2の鍛造工程後に微細な再結晶化微細構造を有した。
実施例5:追加の熱処理の効果
【0047】
銅マンガンビレットの形状及び結晶粒構造に対する第2の鍛造工程後の追加の熱処理工程の効果を観察した。銅マンガンビレットを実施例4のプロセスに供した。ビレットを、17%低減を伴う2工程鍛造を使用した第1の鍛造工程に供した。第1の鍛造工程に続いて、ビレットを700℃の温度まで2時間の期間加熱した第1の熱処理工程を行った。次いで、ビレットを第2の最終鍛造工程に供し、そこでビレットを最終的な所望の厚さ(70%低減)まで低減した。第2の鍛造工程後、ビレットを以下の表2に示されるように様々な選択された温度まで加熱した。
【表2】
【0048】
実施例5の結果を
図7A~
図7Cに示す。
図7Aは、第2の鍛造工程後及び第2の熱処理工程前の、受け取り時の銅マンガンビレットの結晶粒構造を示す。
図7Bは、第2の熱処理工程後の実験Aの銅マンガンビレットの結晶粒構造を示す。示されるように、結晶粒構造は、
図7Aの受け取り時のビレットの結晶粒構造よりも微細化されている。
図7Cは、第2の熱処理工程後の実験Bの銅マンガンビレットの結晶粒構造を示す。示されるように、結晶粒構造は、
図7Aの受け取り時のビレットの結晶粒構造よりも微細化されている。したがって、第2の鍛造工程後の追加の熱処理工程が、ますます微細化された微細構造を生成すると判定した。
実施例6:12%低減を伴う2工程鍛造の効果
【0049】
銅マンガンビレットの形状及び結晶粒構造に対する第1の鍛造工程の12%低減を伴う2工程鍛造の効果を観察した。第1の鍛造工程に続いて、ビレットを700℃の温度まで2時間の期間加熱した熱処理工程を行った。次いで、ビレットを第2の鍛造工程において最終的な所望の厚さ(70%低減)に鍛造した。
【0050】
実施例6のビレットは、1工程鍛造で処理された実施例1のビレットと比較して、実質的に等軸形状であった。実施例6のビレットはまた、第2の鍛造工程後に微細な再結晶化微細構造を有した。
実施例7:追加の熱処理の効果
【0051】
銅マンガンビレットの形状及び結晶粒構造に対する第2の鍛造工程後の追加の熱処理工程の効果を観察した。銅マンガンビレットを実施例6のプロセスに供した。ビレットを、12%低減を伴う2工程鍛造を使用した第1の鍛造工程に供した。第1の鍛造工程に続いて、ビレットを700℃の温度まで2時間の期間加熱した第1の熱処理工程を行った。次いで、ビレットを第2の最終鍛造工程に供し、そこでビレットを最終的な所望の厚さ(70%低減)まで低減した。第2の鍛造工程後、次いでビレットを以下の表3に示されるように様々な選択された温度まで加熱した。
【表3】
【0052】
実施例7の結果を
図8A~
図8Cに示す。
図8Aは、第2の熱処理工程後の実験Aの銅マンガンビレットの結晶粒構造を示す。示されるように、結晶粒構造は、ビレットの上部中心及び底部中心の部分を除いて微細化されている。
図8Bは、第2の熱処理工程後の実験Bの銅マンガンビレットの結晶粒構造を示す。示されるように、結晶粒構造は、
図8Aのビレットの結晶粒構造よりも微細化されている。ビレットは、ビレットの上部中心及び底部中心に微細化されていない部分(例えば、大きな結晶粒)を含んでいた。
図8Cは、第2の熱処理工程後の実験Cの銅マンガンビレットの結晶粒構造を示す。結晶粒構造は、実験A及びBの両方のビレットの結晶粒構造よりも微細化されている。
【0053】
この実施例は、第1の鍛造工程における熱処理温度と鍛造/低減パーセントとの間の明らかな相互作用を示す。すなわち、同様の結晶粒構造を達成するために、第1の鍛造工程中に、より少ない低減パーセントに供されたビレットに対して、より高い熱処理温度が必要とされる。この関係を
図9に示す。例えば、第1の鍛造工程中に17%のみの低減を受けるビレットは、第2の熱処理工程中に約700℃の再結晶化(すなわち、熱処理温度)を必要とし、一方で、同様の結晶粒構造を達成するために、より高い低減パーセントを受けたビレットは、より低い熱処理温度を必要とした。
実施例8:大型ビレットに対する2工程鍛造の効果
【0054】
2つの大型(10インチ×10インチ)ビレットを以下のプロセスに供した。試料1と称される一方のビレットは、0.69重量%マンガンを有する6N銅マンガン合金であり、試料2と称される他方のビレットは、0.43重量%マンガンを有する銅マンガン合金であった。注型時のビレットの両方を、最初に25%低減を伴う第1の鍛造工程に供した。次いで、ビレットを約700℃の温度に約2時間の期間加熱した。次いで、ビレットを、70%低減を伴う第2の鍛造工程に供した。次いで、ビレットを約600℃の温度に約4時間の期間加熱した。
【表4】
【0055】
試料1及び2の両方は、実質的に等軸形状及び微細な再結晶化微細構造を有した。表4並びに
図10A、
図10B、及び
図10Dに示されるように、試料1の平均結晶粒構造は、25%低減を伴う第1の2工程鍛造及びその後の熱処理工程後に150μm(約121μm)未満であった。平均結晶粒構造は、第2の2工程鍛造及びその後の熱処理工程後に80μm(約61μm)未満であった。表4及び
図10Dに示されるように、同様のデータが、試料2について得られた。
【0056】
図10Cは、第1の2工程鍛造及びその後の熱処理工程、並びに第2の2工程鍛造工程及びその後の熱処理工程の両方の後の比R及び結晶粒径を示す。例えば、試料1の比Rは、第1の2工程鍛造工程及びその後の熱処理工程後に約35から400万超まで、並びに第2の2工程鍛造及びその後の熱処理工程後に1400万超まで増加した。表4及び
図10Cに示されるように、同様のデータが、試料2について得られた。
実施例9:大型ビレットに対する更なる変形の効果
【0057】
実施例8の2つの大型ビレットを、実施例8に記載される第2の2工程鍛造工程及びその後の熱処理工程の後にECAEで更に処理した。結晶粒径及び質感における微細構造の微細化を達成するために、ビレットを4つのECAEパス(例えば、同等の低減パーセントで99.9%を超える全変形)に供した。試料1の平均結晶粒径を以下の表5に示す。
【表5】
【0058】
ECAEプロセス中にビレットの有害な亀裂は観察されず、微細かつ均一な微細構造が得られた。
図11A及び
図11Bに示されるように、試料1の平均結晶粒構造は、ECAEプロセス後、1ミクロン未満であった。
図11Aは、ビレットの上面の中心における結晶粒構造を示す。
図11Bは、ビレットの上面の縁部における結晶粒構造を示す。試料2は、上記の表5に示されるものと同様の微細構造を有した。
実施例10:小型ビレットに対する2工程鍛造の効果
【0059】
試料1及び試料2として参照される、約1インチの高さ及び約1.5インチの直径を有する2つの小型ビレットを以下のプロセスに供した。両方のビレットは、0.69重量%のマンガンを有する6N銅マンガン合金であった。試料1及び試料2は、それぞれ約18,500μm及び16,000μmの初期注型時結晶粒径を有した。
【0060】
試料1を、12%低減を伴う第1の鍛造工程に供した。試料2を、25%低減を伴う第1の鍛造工程に供した。次いで、両方のビレットを、約700℃の温度に約2時間の期間加熱した。次いで、両方のビレットを、70%低減を伴う第2の鍛造工程に供し、約600℃の温度に約4時間の期間加熱した。結果を以下の表6に示す。
【表6】
【0061】
両方のビレットは、実質的に等軸形状及び微細な再結晶化微細構造を有した。表6及び
図12Bに示されるように、試料2の平均結晶粒構造は、第1の25%鍛造工程及びその後の熱処理工程後、150μm(約101μm)未満であった。試料2の平均結晶粒構造は、第2の鍛造工程及びその後の熱処理工程後、80μm(約60μm)未満であった。示されるように、同様のデータが、試料1について得られた。
【0062】
表6及び
図12Aは、両方の試料について第1の鍛造工程及び熱処理工程、並びに第2の鍛造工程及び熱処理工程後のR比の増加を示す。例えば、試料2のR比は、第1の鍛造工程及びその後の熱処理工程後に4~約100,660まで増加した。次いで、試料2のR比は、第2の鍛造工程及びその後の熱処理工程後に約285,232まで増加した。示されるように、同様のデータが、試料1について得られた。
【0063】
本発明の範囲から逸脱することなく、考察された例示的な実施形態に対して様々な修正及び付加を行うことができる。例えば、上に記載される実施形態は、特定の特徴に言及するものであるが、この発明の範囲はまた、特徴の異なる組み合わせを有する実施形態及び上に記載される特徴の全てを含むわけではない実施形態を含む。
本明細書は以下の発明の態様を包含する。
[1]
銅合金スパッタリングターゲットを形成する方法であって、
鍛造後に、銅合金ビレット中の結晶粒の総数が、鍛造前の前記銅合金ビレット中の前記結晶粒の総数と比較して、少なくとも10倍増加するように、前記銅合金ビレットを第1の鍛造工程に供することと、
前記銅合金の100パーセントの再結晶化を達成するために十分な温度及び時間で第1の熱処理工程において、前記第1の鍛造工程後に、前記銅合金ビレットを加熱することと、
前記銅合金ビレットの高さが約40パーセント~95パーセント低減されるように前記銅合金ビレットを第2の鍛造工程に供することと、
実質的に微細化された結晶粒構造を達成するために十分な温度及び時間で、第2の熱処理工程において、前記第2の鍛造工程後に、前記銅合金ビレットを加熱することと、
前記銅合金ビレットを銅合金スパッタリングターゲットに形成することと、を含む方法。
[2]
前記銅合金が、主成分としての銅と、副成分としてのマンガンと、を含む、[1]に記載の方法。
[3]
前記第1の熱処理工程が、前記結晶粒が再成長しないような温度及び時間で行われる、[1]に記載の方法。
[4]
前記第1の熱処理工程が、約650℃~約750℃の温度で約1時間~約3時間行われる、[1]に記載の方法。
[5]
前記銅合金が、前記第2の熱処理工程後に、少なくとも500のR比を有する、[1]に記載の方法。
[6]
前記R比が、約100,000~100,000,000である、[5]に記載の方法。
[7]
前記第2の熱処理工程後に、ECAE側方押出法(ECAE)で前記銅合金ビレットを処理することを更に含む、[1]に記載の方法。
[8]
前記ビレットの形状が、前記第2の鍛造工程後に実質的に等軸である、[1]に記載の方法。
[9]
前記第1の鍛造工程及び前記第2の鍛造工程が、一方向鍛造を含む、[1]に記載の方法。
[10]
前記銅合金が、前記第2の熱処理工程後に、約80μm未満の平均結晶粒径を有する、[1]に記載の方法。