(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】格子設計を通したキュービットの周波数衝突の減少
(51)【国際特許分類】
G06N 10/00 20220101AFI20240126BHJP
【FI】
G06N10/00
(21)【出願番号】P 2020542845
(86)(22)【出願日】2019-02-28
(86)【国際出願番号】 EP2019054934
(87)【国際公開番号】W WO2019179741
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-07-21
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、ジェリー
(72)【発明者】
【氏名】マゲサン、イースワー
(72)【発明者】
【氏名】ステファン、マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ガンベッタ、ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】瀧田 舞花
【審査官】▲はま▼中 信行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/078734(WO,A1)
【文献】特表2008-525873(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0032993(US,A1)
【文献】OTTERBACH, J.S. et al.,Unsupervised Machine Learning on a Hybrid Quantum Computer,[オンライン],2017年12月15日,[検索日: 2022.06.30], インターネット: <URL: https://arxiv.org/pdf/1712.05771.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 10/00
G06N 5/00- 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッジによって接続された頂点を有する隣接構造を含む格子配列に配列される第1のキュービットを備えるデバイスであって、前記第1のキュービットが、前記頂点上に配置され、第1のキュービットが、3つ以下の他の第1のキュービット
に直接接続され、
もしくは頂点上の2つの第1のキュービット間のエッジ上の連結キュービットを介
して別の第1のキュービット
に接続され、
前記隣接構造が、六角形を含み、前記六角形が、前記六角形の頂点の間の前記エッジ上に連結キュービットを有する、デバイス。
【請求項2】
エッジによって接続された頂点を有する隣接構造を含む格子配列に配列される第1のキュービットを備えるデバイスであって、前記第1のキュービットが、前記頂点上に配置され、第1のキュービットが、3つ以下の他の第1のキュービット
に直接接続され、
もしくは頂点上の2つの第1のキュービット間のエッジ上の連結キュービットを介
して別の第1のキュービット
に接続され、
前記隣接構造が、十二角形を含む、デバイス。
【請求項3】
前記十二角形が、前記十二角形の頂点の間の前記エッジ上に連結キュービットを有する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
エッジによって接続された頂点を有する隣接構造を含む格子配列に配列される第1のキュービットを備えるデバイスであって、前記第1のキュービットが、前記頂点上に配置され、第1のキュービットが、3つ以下の他の第1のキュービット
に直接接続され、
もしくは頂点上の2つの第1のキュービット間のエッジ上の連結キュービットを介
して別の第1のキュービット
に接続され、
前記隣接構造が、八角形を含む、デバイス。
【請求項5】
前記八角形が、前記八角形の頂点の間の前記エッジ上に連結キュービットを有する、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
エッジによって接続された頂点を有する隣接構造を含む格子配列に配列される第1のキュービットを備えるデバイスであって、前記第1のキュービットが、前記頂点上に配置され、第1のキュービットが、3つ以下の他の第1のキュービット
に直接接続され、
もしくは頂点上の2つの第1のキュービット間のエッジ上の連結キュービットを介
して別の第1のキュービット
に接続され、
前記連結キュービットが、制御キュービットを含み、それぞれの第1のキュービットが、ターゲット・キュービットを含む、デバイス。
【請求項7】
エッジによって接続された頂点を有する隣接構造を含む格子配列に配列される第1のキュービットを備えるデバイスであって、前記第1のキュービットが、前記頂点上に配置され、第1のキュービットが、3つ以下の他の第1のキュービット
に直接接続され、
もしくは頂点上の2つの第1のキュービット間のエッジ上の連結キュービットを介
して別の第1のキュービット
に接続され、
前記格子配列が、超伝導キュービット格子であり、前記第1のキュービットが、超伝導ターゲット・キュービットであり、前記連結キュービットが、超伝導制御キュービットであり、前記超伝導キュービット格子が、エッジによって接続された頂点を有する隣接構造を含み、前記超伝導ターゲット・キュービットが、前記頂点上に配置され、前記超伝導制御キュービットが、前記エッジ上に配置され、第1の超伝導ターゲット・キュービットが、前記第1の超伝導ターゲット・キュービットと第2の超伝導ターゲット・キュービットとの間のエッジ上の超伝導制御キュービットを介して前記第2の超伝導ターゲット・キュービットに接続する、デバイス。
【請求項8】
前記隣接構造が、六角形の頂点の間の前記エッジ上に超伝導制御キュービットを有する前記六角形を含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記隣接構造が、十二角形の頂点の間の前記エッジ上に超伝導制御キュービットを有する前記十二角形を含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項10】
前記隣接構造が、八角形の頂点の間の前記エッジ上に超伝導制御キュービットを有する前記八角形を含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項11】
エッジによって接続された4つの頂点を有する矩形の隣接構造を含む格子配列に配列される第1のキュービットを備えるデバイスであって、前記第1のキュービットが、前記頂点上に配置され、第1のキュービットが、頂点上の2つの第1のキュービット間のエッジ上の連結キュービットを介して別の第1のキュービット
に接続され、
前記格子配列が、超伝導キュービット格子であり、前記第1のキュービットが、超伝導ターゲット・キュービットであり、前記連結キュービットが、超伝導制御キュービットであり、前記超伝導キュービット格子が、エッジによって接続された頂点を有する隣接構造を含み、前記超伝導ターゲット・キュービットが、前記頂点上に配置され、前記超伝導制御キュービットが、前記エッジ上に配置され、第1の超伝導ターゲット・キュービットが、前記第1の超伝導ターゲット・キュービットと第2の超伝導ターゲット・キュービットとの間のエッジ上の超伝導制御キュービットを介して前記第2の超伝導ターゲット・キュービットに接続する、デバイス。
【請求項12】
エッジによって接続された頂点を有する隣接構造を含む格子配列に配列される第1のキュービットを備えるデバイスであって、前記第1のキュービットが、前記頂点上に配置され、第1のキュービットが、3つ以下の他の第1のキュービット
に直接接続され、
もしくは頂点上の2つの第1のキュービット間のエッジ上の連結キュービットを介
して別の第1のキュービット
に接続され、
前記格子配列が、超伝導キュービット格子であり、前記第1のキュービットが、超伝導キュービットであり、超伝導キュービットが、3つ以下の他の超伝導キュービットに接続し、
前記隣接構造が、十二角形、および八角形のうちの1つを含む、デバイス。
【請求項13】
前記超伝導キュービットが、連結超伝導キュービットを介して前記3つ以下の他の超伝導キュービットに間接的に接続し、第1の超伝導キュービットが、第1の頂点上の前記第1の超伝導キュービットと第2の頂点上の第2の超伝導キュービットとの間のエッジ上の連結超伝導キュービットを介して前記第2の超伝導キュービットに接続する、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
エッジによって接続された6つの頂点を有する六角形の隣接構造を含む格子配列に配列される第1のキュービットを備えるデバイスであって、前記第1のキュービットが、前記頂点上に配置され、第1のキュービットが、3つ以下の他の第1のキュービット
に直接接続され、
もしくは頂点上の2つの第1のキュービット間のエッジ上の連結キュービットを介
して別の第1のキュービット
に接続され、
前記格子配列が、超伝導キュービット格子であり、前記第1のキュービットが、超伝導キュービットであり、超伝導キュービットが、3つ以下の他の超伝導キュービットに接続し、
前記超伝導キュービットが、連結超伝導キュービットを介して前記3つ以下の他の超伝導キュービットに間接的に接続し、第1の超伝導キュービットが、第1の頂点上の前記第1の超伝導キュービットと第2の頂点上の第2の超伝導キュービットとの間のエッジ上の連結超伝導キュービットを介して前記第2の超伝導キュービットに接続する、デバイス。
【請求項15】
隣接する超伝導ターゲット・キュービットおよび超伝導制御キュービットの間の論理演算が、前記超伝導ターゲット・キュービットの周波数において、または前記周波数付近で、前記超伝導制御キュービットを駆動することによって実施される、請求項7に記載のデバイス。
【請求項16】
前記隣接構造が、六角形の頂点の間の前記エッジ上に超伝導制御キュービットを有する前記六角形を含む、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記隣接構造が、十二角形の頂点の間の前記エッジ上に超伝導制御キュービットを有する前記十二角形を含む、請求項15に記載のデバイス。
【請求項18】
前記隣接構造が、八角形の頂点の間の前記エッジ上に超伝導制御キュービットを有する前記八角形を含む、請求項15に記載のデバイス。
【請求項19】
前記隣接構造が、矩形の頂点の間の前記エッジ上に超伝導制御キュービットを有する前記矩形を含む、請求項15に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、量子コンピューティングに関し、より詳細には、量子計算のためのキュービットの格子配列(lattice arrangement)に関する。
【背景技術】
【0002】
量子情報処理(量子コンピューティング)は、従来の機械計算では手に負えないあるカテゴリの数学問題を解くための潜在能力を持つ。量子コンピューティングは、情報を符号化するために量子物理学を活用する。例えば、量子コンピュータは、量子情報の基本単位である量子ビット(キュービット)を活用することができ、したがって、量子コンピュータは、キュービットを活用して情報を符号化することができる。非常に有用な量子コンピュータの構築には、おそらくおよそ数百万の物理キュービットを有する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多くの従来の量子コンピュータ・アーキテクチャは、最近接のキュービットに垂直および水平に連結される物理キュービットで配列され、2次元グリッドを形成する。しかしながら、キュービットの周波数が、キュービットを実施するいくつかの物理系において十分に制御可能ではなく、実際には、キュービットは、製造後の欠陥に起因する周波数の拡散を有する。周波数のいくつかの範囲では、2つの近隣キュービット(neighboring qubit)で構成されるゲートが、動作するとしても十分に動作しない。これは周波数衝突(frequency collision)と呼ばれ、それらのキュービット間の論理演算を妨げる。極端な場合、周波数範囲は、結果として役に立たないキュービットが生じるほど悪く、基本的には格子内の穴となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下では、本発明の1つまたは複数の実施形態の基本的理解を提供するための概要を提示する。本概要は、重要なもしくは重大な要素を識別することを意図するものではなく、または特定の実施形態のいかなる範囲、もしくは特許請求の範囲のいかなる範囲も描写することを意図するものではない。その唯一の目的は、後で提示される、より詳細な説明の前置きとして、簡略化した形式で概念を提示することである。
【0005】
本発明の実施形態によれば、デバイスは、格子配列に配列されるキュービットを含み、格子配列は、エッジによって接続された頂点を有する隣接構造(adjacent structure)を含む。キュービットは、頂点上に配置され、格子配列内のキュービットは、3つ以下の他のキュービットに直接接続するか、または頂点上の2つのキュービット間のエッジ上の連結キュービット(coupling qubit)を介して別のキュービットに接続する。このように、デバイスは、キュービット間の接続数を減少させ、同様に、周波数衝突の機会を減少させる。
【0006】
隣接構造は、六角形、十二角形、または八角形を含み得る。隣接構造は、六角形の頂点間のエッジ上にキュービットを有する六角形、十二角形の頂点間のエッジ上にキュービットを有する十二角形、八角形の頂点間のエッジ上にキュービットを有する八角形、または矩形の頂点間のエッジ上にキュービットを有する矩形を含み得る。頂点上の2つのキュービット間のエッジ上の連結キュービットは、制御キュービット(control qubit)を含んでもよく、頂点上の2つのキュービットは、ターゲット・キュービット(target qubit)を含んでもよい。このように、構造は、キュービット間の接続数を減少させ、同様に、周波数衝突の機会を減少させる。
【0007】
本発明の別の実施形態によれば、超伝導キュービット格子(superconductingqubit lattice)は、超伝導ターゲット・キュービットおよび超伝導制御キュービットを含み、超伝導キュービット格子は、エッジによって接続された頂点を有する隣接構造を含む。超伝導ターゲット・キュービットは、頂点上に配置され、超伝導制御キュービットは、エッジ上に配置される。第1の超伝導ターゲット・キュービットは、第1の超伝導ターゲット・キュービットと第2の超伝導ターゲット・キュービットとの間のエッジ上の超伝導制御キュービットを介して、第2の超伝導ターゲット・キュービットに接続する。隣接構造は、六角形の頂点間のエッジ上に超伝導制御キュービットを有する六角形、十二角形の頂点間のエッジ上に超伝導制御キュービットを有する十二角形、八角形の頂点間のエッジ上に超伝導制御キュービットを有する八角形、または矩形の頂点間のエッジ上に超伝導制御キュービットを有する矩形を含む。このように、超伝導キュービット格子および構造は、キュービット間の接続数を減少させ、同様に、周波数衝突の機会を減少させる。
【0008】
さらに別の実施形態によれば、超伝導キュービット格子は、超伝導キュービットを含み、超伝導キュービット格子は、エッジによって接続された頂点を有する隣接構造を含む。超伝導キュービットは、頂点上に配置される。超伝導キュービットは、3つ以下の他の超伝導キュービットに接続する。隣接構造は、六角形、十二角形、または八角形を含む。超伝導キュービットは、連結超伝導キュービットを介して3つ以下の他の超伝導キュービットに間接的に接続する。第1の超伝導キュービットは、第1の頂点上の第1の超伝導キュービットと第2の頂点上の第2の超伝導キュービットとの間のエッジ上の連結超伝導キュービットを介して第2の超伝導キュービットに接続する。このように、超伝導キュービット格子および構造は、キュービット間の接続数を減少させ、同様に、周波数衝突の機会を減少させる。
【0009】
本発明のさらに別の実施形態によれば、超伝導キュービット格子は、超伝導ターゲット・キュービットおよび超伝導制御キュービットを含む。超伝導キュービット格子は、エッジによって接続された頂点を有する隣接構造を含み得る。超伝導ターゲット・キュービットは、頂点上に配置され、超伝導制御キュービットは、エッジ上に配置される。第1の超伝導ターゲット・キュービットは、第1の超伝導ターゲット・キュービットと第2の超伝導ターゲット・キュービットとの間のエッジ上の超伝導制御キュービットを介して、第2の超伝導ターゲット・キュービットに接続する。隣接する超伝導ターゲット・キュービットおよび超伝導制御キュービットの間の論理演算は、超伝導ターゲット・キュービットの周波数において、または周波数付近で、超伝導制御キュービットを駆動することによって実施され得る。このように、超伝導キュービット格子は、キュービット間の接続数を減少させ、同様に、周波数衝突の機会を減少させる。
【0010】
隣接構造は、六角形、十二角形、または八角形を含み得る。隣接構造は、六角形の頂点間のエッジ上に超伝導制御キュービットを有する六角形、十二角形の頂点間のエッジ上に超伝導制御キュービットを有する十二角形、八角形の頂点間のエッジ上に超伝導制御キュービットを有する八角形、または矩形の頂点間のエッジ上に超伝導制御キュービットを有する矩形を含み得る。構造は、キュービット間の接続数を減少させ、同様に、周波数衝突の機会を減少させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】例えば、
図2~11を参照して記載されるキュービット格子配列が、本発明の実施形態に従って実施され得るブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態による、六角構造がキュービット接続の減少をもたらすキュービット格子配列の図である。
【
図3】本発明の実施形態による、六角構造が、2つのキュービット・ゲートを含みキュービット接続の減少をもたらす、キュービット格子配列の図である。
【
図4】本発明の実施形態による、頂点上にキュービットを有し、エッジ上に連結キュービットを有する六角構造が、キュービット接続の減少をもたらす、キュービット格子配列の図である。
【
図5】本発明の実施形態による、頂点上のキュービットを連結キュービットのみに直接連結させることによって、六角構造がキュービット接続の減少をもたらす、キュービット格子配列の図である。
【
図6】本発明の実施形態による、制御キュービットが頂点上に配置されたターゲット・キュービット間のエッジ上に配置される、格子配列の概して六角構造における20個のキュービットの図である。
【
図7】本発明の実施形態による、十二角構造がキュービット接続の減少をもたらす、キュービット格子配列の図である。
【
図8】本発明の実施形態による、頂点上にキュービットを有し、エッジ上に連結キュービットを有する十二角構造が、キュービット接続の減少をもたらす、キュービット格子配列の図である。
【
図9】本発明の実施形態による、八角構造がキュービット接続の減少をもたらす、キュービット格子配列の図である。
【
図10】本発明の実施形態による、頂点上にキュービットを有し、エッジ上に連結キュービットを有する八角構造が、キュービット接続の減少をもたらす、キュービット格子配列の図である。
【
図11】本発明の実施形態による、頂点上にキュービットを有し、エッジ上に連結キュービットを有する矩形(例えば、正方形)構造がキュービット接続の減少をもたらす、例としてのキュービット格子配列の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明は単なる例示であり、本発明の実施形態または本発明の実施形態の適用もしくは使用、あるいはその両方を限定することを意図するものではない。さらに、前の項目、または本項目において提示されるいかなる明示的または暗示的な情報にも拘束されることを意図するものではない。
【0013】
本発明の実施形態が、ここで図面を参照して記載され、類似の参照番号は、全体を通して類似の要素を参照するために使用される。以下の記載では、説明の目的で、本発明のより完全な理解をもたらすために、多数の具体的詳細が記載されている。しかしながら、様々な場合において、これらの具体的詳細がなくても本発明が実施され得ることは明白である。
【0014】
さらに、本発明は、所与の例示的アーキテクチャに関して記載されるが、他のアーキテクチャ、構造、または動作、ならびにそれらの組み合わせが、本発明の範囲内において変化し得ると理解されるべきである。
【0015】
キュービットなどの要素が、別の要素に連結され、または接続されていると言われるとき、それは、1つまたは複数の介在要素によって、他の要素に直接または間接的に連結され、または接続され得ることも理解される。これに対して、要素が、「直接」連結または接続されていると言われる場合にのみ、介在要素が存在せず、すなわち、要素が、別の要素に「直接接続されている」または「直接連結されている」と言われる場合にのみ、介在要素が存在しない。
【0016】
本発明の「1つの実施形態」または「実施形態」に対する明細書内の参照は、それらの他の変形と同様に、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、特性などが、発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。よって、明細書全体を通して様々な場所に現れる、「1つの実施形態において」または「実施形態において」という句の出現は、任意の他の変形と同様に、必ずしも全てが本発明の同一の実施形態を指すものではない。
【0017】
従来のキュービット配列での問題は、2次元の水平および垂直グリッドが、その4つの直接接続された近隣を考慮すると、任意のキュービットが4つの潜在的な周波数衝突を有することを意味することである(本来、グリッドの周辺上の所与のキュービットは、より少ない近隣を有するが、大きなグリッド構造内のこれらのキュービットは、非周辺部のキュービットと比較して比較的数が少なく、ここでは別途記載されない)。水平、垂直、および対角線の接続を有することも実現可能であり、8つの潜在的な周波数衝突に対応して、それがさらに問題となりそうであることに留意されたい。
【0018】
本明細書で記載される1つの解決策は、異なる格子幾何形状でキュービットを配列することによって、個々のキュービットの他の近隣キュービットとの接続性を減少させることであり、それによって、近隣キュービット間の周波数衝突の可能性を低下させる。本明細書で記載される別の解決策は、異なる格子幾何形状でキュービットを配列すること、および異なる役割をキュービットに割り当てることによって、個々のキュービットの他の近隣キュービットとの接続性を減少させることである。例えば、1つの幾何形状が、格子を作り上げる幾何学(多角形)構造の頂点上にターゲット・キュービットを配列し、頂点間のエッジ上に制御キュービットを配列する。
【0019】
図1は、本発明が実施され得る汎用システム100を示す。
図1において、従来または専用のコンピューティング・マシン102などの制御デバイスは、プログラム、プロセス、ユーザ、または他の適当なエンティティなどからの入力104を受信する。入力104に基づいて、制御デバイス102は、キュービット格子配列110におけるキュービットのうちの選択された1つを動作させる、量子信号108を生成する。格子配列110からの出力は、実験結果などを表す対応する出力114を提供することなどのために、制御デバイス102にフィードバックされるキュービット状態の測定値を含み得る。
【0020】
キュービット格子配列110を形成するために使用され得る例としての構造を参照すると、
図2は、例えば破線の枠において強調される六角構造222によって表されるように、六角構造として配列されたキュービット(
図2において円で表される)を含む格子配列210を示す。六角構造は、互いに隣接し、2つの頂点および1つのエッジを隣接する六角構造と共有する。また、これは、内部の六角構造についての汎用ルールであり、格子配列210の周辺部上の六角構造を扱っていない。
【0021】
図2におけるキュービットは、六角構造の頂点上にあり、概して、キュービットは、格子配列210内において全体的に対称的に分散される。
図2において表される六角構造は、正六角形として示されていないが、それらは、正六角形であってもよいことに留意されたい。隣接する他の六角構造であることに加えて、キュービットは、概して格子配列210内に均一に分散される。
【0022】
内部のキュービットが4つの直接接続を有する水平および垂直グリッドとは異なり、
図2のキュービットは多くとも3つの他のキュービットに直接接続されると、容易に理解され得る。よって、例えば、キュービット224(
図2において黒い円で強調される)は、キュービット227~229(十字が描かれた円で強調される)のみに直接接続される。接続数の減少(2つの水平および垂直グリッドと比較して)によって、
図2の六角構造のうちの1つにおけるキュービットは、統計的に、その近隣キュービットのうちの1つとの周波数衝突を有する可能性が低い。
【0023】
図3は、六角格子配列210において、バス333によって接続される2つの近隣キュービット330、332(キュービットは、黒い円として表され、例えば2つのキュービット・ゲートを形成する)が、2つのキュービット330、332によって形成されるゲートに隣接する4つのキュービット336~339とクロストークを引き起こし得る、4つの他のキュービット周波数のみをどのように有するかを示す。容易に理解され得るように、水平および垂直グリッド配列における類似の2つのキュービット・ゲートは、6つの近隣キュービットを有し、周波数衝突の可能性が増加する。
【0024】
図4に表される本発明の別の実施形態は、周波数衝突の可能性をさらに減少させるために、キュービットに役割を割り当てていること、および格子配列上にそれらのキュービットを配置することを対象とする。
図4において、小さな黒い円は連結キュービットを表し、大きな白い円は他のキュービットを表す。1つまたは複数の実施において、連結キュービットは制御キュービットであり、他のキュービットはターゲット・キュービットである(制御キュービットおよびターゲット・キュービットの概念および機能性は、量子コンピューティングにおいて周知であり、よって本明細書では詳細に記載されない)。円の大きさは、実際の相対的な大きさを伝えることを意図するものではなく、キュービットの2つの役割を視覚的に区別することを助けることを意図するものであることに留意されたい。
【0025】
図4において、六角構造(例えば、その1つが、破線の枠442によって表される)は、いくつかのキュービットが六角構造の頂点上に配置され、六角構造が互いに隣接し、キュービットが概して均一に間隔が保たれるなどの点において、
図2および
図3のものと概して類似である。しかしながら、
図2および
図3とは対照的に、頂点間のエッジは、その上に配置された連結(例えば、制御)キュービットを有する。図から分かるように、キュービット444(例えば、ターゲット・キュービット)は、連結キュービット445を通して接続され、それによって、キュービット446に間接的に接続される。よって、バス毎に2つのキュービット、すなわち、エッジ配置の連結(例えば、制御)キュービットおよび頂点配置の(例えば、ターゲット・)キュービットが存在する。
【0026】
したがって、
図5に表されるように、制御がターゲットにおいて駆動される、2つのキュービット・ゲート(それぞれ、小さな黒い円552および大きな黒い円554)毎に、1つの他のキュービット(「十字が描かれた」キュービット556によって表される)のみが、制御キュービット552に直接連結され、したがって、周波数衝突の数が減少する。
【0027】
図6は、六角構造の格子内の20個のキュービットを示し、制御キュービット(数は12個、Cとラベル付けされている)は、2つのターゲット・キュービット(4つがT1とラベル付けされ、4つがT2とラベル付けされている)にのみ最近接連結され、別個の周波数が3つだけ必要とされる。ωがキュービットの周波数を表す場合に、衝突タイプ(衝突ウィンドウ(collision window)上において10MHzの半値幅)は、タイプ1:
【数1】
およびタイプ2:
【数2】
である(jおよびkが最近接である)。Δが、制御キュービットとターゲット・キュービットとの周波数差であり、εが、ターゲット周波数が制御周波数より大きいことが許容される量であり、δが、キュービットの非調和性(anharmonicity)である場合に、他の衝突は、タイプ3:Δ
jk=ω
j-ω
k∈(-ε,-δ
j)およびタイプ4:
【数3】
であり、jは、制御キュービットを表し、kは、ターゲット・キュービットを表す。さらに他の衝突は、タイプ5:
【数4】
、タイプ6:
【数5】
、およびタイプ7:
【数6】
である(iは、観客キュービット(spectator qubit)を表し、jは、制御キュービットを表し、kは、ターゲット・キュービットを表す)。
【0028】
図7は、十二角形を含む2次元構造を有する別の格子配列710を示し、1つのそのような構造が、破線の枠772の中に表される。
図7から分かる通り、キュービット774(黒い円によって表される)およびその近隣キュービット776~778(十字が描かれた円によって表される)を含む、格子配列710における任意の個々のキュービットが、最大3つの他のキュービットに直接接続する。別個に示されないが、
図7の格子配列710における任意の2つのキュービット・ゲートは、最大4つの他のキュービットに直接接続すると理解される。
【0029】
図8は、十二角形を含む2次元構造を有する別の格子配列810を示し、格子配列810において、連結(例えば、制御)キュービットは、頂点上に配置された他の(例えば、ターゲット・)キュービット間のエッジ上に配置される。
図8から分かるように、キュービット884および886を含む格子配列内の任意の個々のキュービットは、連結キュービット、例えば連結キュービット888のみに直接接続する。よって、
図4および
図5を参照して上述した同一の減少された周波数衝突統計値は、
図8の格子配列810に適用される。
【0030】
図9は、八角形を含む2次元構造を有する別の格子配列910を示し、1つのそのような構造が、破線の枠992の中に表される。
図9から分かる通り、キュービット994(黒い円によって表される)およびその近隣キュービット996~998(十字が描かれた円によって表される)を含む格子配列910における任意の個々のキュービットは、最大3つの他のキュービットに直接接続する。別個に示されないが、
図9の格子配列910における任意の2つのキュービット・ゲートは、最大4つの他のキュービットに直接接続すると理解される。
【0031】
図10は、八角形を含む2次元構造を有する別の格子配列1010を示し、格子配列1010において、連結(例えば、制御)キュービットは、頂点上に配置された他の(例えば、ターゲット・)キュービット間のエッジ上に配置される。
図10から分かるように、キュービット1014および1016を含む格子配列内の任意の個々のキュービットは、連結キュービット、例えば連結キュービット1018のみに直接接続する。よって、
図4および
図5を参照して上述した同一の減少された周波数衝突統計値は、
図10の格子配列1010に適用される。
【0032】
図11は、正方形(またはより概略的には、矩形)の頂点上に配置されるキュービットに関するグリッド状格子配列1110を示す。しかしながら、他のグリッド状配列とは対照的に、他のキュービット間のエッジ上に連結キュービットが存在し、頂点上のキュービットは、ターゲット・キュービットであってもよく、エッジ上のキュービットは、制御キュービットであってもよい。よって、例えば、キュービット1116は、連結キュービット1117(および他の連結キュービットのみ)に直接接続し、連結キュービット1117は、キュービット1118に直接接続する。よって、
図4および
図5を参照して上述した同一の減少された周波数衝突統計値は、
図11の格子配列1110に適用される。
【0033】
統計モデルは、周波数衝突の限定的な減少を示す。モデルに対する経験的入力は、「衝突ウィンドウ」の定義(量子モデリングまたは測定値から分かる)およびキュービット周波数の測定された統計分布を含み得る。統計モデルへの設計入力は、回路内のキュービットの数、回路内のキュービットの幾何学配列、回路内の様々なキュービットの機能(例えば、量子エラー訂正アルゴリムにおける「データ」または「アンシラ(ancilla)」としてのそれらの使用)、キュービット・タイプ(例えば、トランズモン、位相キュービット、磁束キュービット、または他の種類の超伝導キュービット)、キュービット非調和性(GHzまたはMHzにおける値)、バス毎のキュービット数、所期のキュービット周波数(GHzにおける値)、および交差共鳴(CR)ゲートについての所望のフィデリティ(fidelity)を含み得る。
【0034】
モンテ・カルロ・シミュレーション(Monte Carlo simulation)によって取得される、以下のデータ・テーブル(σは、標準偏差を表し、εは、ターゲット周波数が制御周波数より大きいことが許容される量を表し、δ_Cは、制御キュービットの非調和性を表し、δ_Tは、ターゲット・キュービットの非調和性を表す)は、(制御キュービット周波数)ωC=5.2GHzを有する六角格子(頂点およびエッジ)を要約する。
【0035】
【0036】
以下のテーブルは、ωC=5.2GHzを有する六角格子と正方形格子(頂点およびエッジ)の比較を要約する。
【0037】
【0038】
上記から分かるように、格子設計における幾何形状によって個々のキュービットと他のキュービットとの間の接続性を減少させ、それによって周波数衝突の可能性を低下させる技術が記載される。格子設計は、個々のキュービットが直接接続される最大3つの他のキュービットを有するように、または連結キュービットによって接続されるキュービットを有するように提供する構造を含む。
【0039】
本発明の1つまたは複数の態様は、格子配列に配列されるキュービットを含むデバイスを対象とし、格子配列は、エッジによって接続された頂点を有する隣接構造を含む。キュービットは、頂点上に配置され、格子配列内のキュービットは、3つ以下の他のキュービットに直接接続するか、または頂点上の2つのキュービット間のエッジ上の連結キュービットを介して別のキュービットに接続する。
【0040】
隣接構造は、六角形、十二角形、八角形、または矩形を含んでもよく、それぞれが、頂点間のエッジ上にキュービットを有する。
【0041】
頂点上の2つのキュービット間のエッジ上の連結キュービットは、制御キュービットを含んでもよく、頂点上の2つのキュービットは、ターゲット・キュービットを含んでもよい。
【0042】
本発明の1つまたは複数の態様は、超伝導ターゲット・キュービットおよび超伝導制御キュービットを含む超伝導キュービット格子を対象とし、格子は、エッジによって接続された頂点を有する隣接構造を含む。ターゲット・キュービットは、頂点上に配置されてもよく、制御キュービットは、エッジ上に配置されてもよい。第1のターゲット・キュービットは、第1のターゲット・キュービットと第2のターゲット・キュービットとの間のエッジ上の制御キュービットを介して、第2のターゲット・キュービットに接続し得る。
【0043】
隣接構造は、六角形、十二角形、八角形、または矩形を含んでもよく、それぞれが、矩形の頂点間のエッジ上に超伝導制御キュービットを有する。
【0044】
本発明の1つまたは複数の態様は、超伝導キュービットを含む超伝導キュービット格子を対象とし、キュービット格子は、エッジによって接続された頂点を有する隣接構造を含む。キュービットは、頂点上に配置され得る。キュービットは、3つ以下の他のキュービットに接続する。
【0045】
隣接構造は、六角形、十二角形、または八角形を含み得る。キュービットは、連結キュービットを介して3つ以下の他のキュービットに間接的に接続し得る。第1のキュービットは、第1の頂点上の第1の超伝導キュービットと第2の頂点上の第2のキュービットとの間のエッジ上の連結キュービットを介して第2のキュービットに接続し得る。
【0046】
1つまたは複数の態様は、超伝導ターゲット・キュービットおよび超伝導制御キュービットを含む超伝導キュービット格子を対象とする。キュービット格子は、エッジによって接続された頂点を有する隣接構造を含み得る。ターゲット・キュービットは、頂点上に配置されてもよく、制御キュービットは、エッジ上に配置されてもよい。第1のターゲット・キュービットは、第1のターゲット・キュービットと第2のターゲット・キュービットとの間のエッジ上の制御キュービットを介して、第2のターゲット・キュービットに接続し得る。隣接する超伝導ターゲット・キュービットおよび超伝導制御キュービットの間の論理演算は、ターゲット・キュービットの周波数において、または周波数付近で、制御キュービットを駆動することによって実施され得る。
【0047】
隣接構造は、六角形、十二角形、八角形、または矩形を含んでもよく、それぞれが、頂点間のエッジ上に制御キュービットを有する。
【0048】
上述したものは、単なる例を含む。本発明を説明する目的で格子配列、コンポーネント、材料などのあらゆる考えられる組み合わせを記載することは、当然ながらできないが、当業者は、本発明の多くのさらなる組み合わせおよび交換が可能であると認識し得る。さらに、「含む」、「有する」、「所有する」などの用語が、詳細な説明、特許請求の範囲、添付、および図面において使用される限り、そのような用語は、「備える」が特許請求の範囲で転換語として使用される際に解釈されるように、「備える」という用語と同様に包含的であることを意図する。
【0049】
本発明の様々な実施形態の記載は、例示の目的で提示されているが、網羅的であること、または開示される本発明の実施形態に限定することを意図するものではない。多くの変更および変形が、本発明の範囲から逸脱することなく当業者には明らかである。本明細書で使用される専門用語は、本発明の原理、実用的な適用、もしくは市場で見出される技術に対する技術的改善を最もよく説明するため、または他の当業者が本発明を理解可能にするために、選択された。