IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サノフィ・バイオテクノロジーの特許一覧 ▶ リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッドの特許一覧

特許7426940心血管リスクを低減するためのPCSK9阻害剤の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】心血管リスクを低減するためのPCSK9阻害剤の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240126BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240126BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240126BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240126BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20240126BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240126BHJP
   G01N 33/92 20060101ALI20240126BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20240126BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P9/10
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C07K16/40
C07K16/46
G01N33/92 Z
C12P21/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020546481
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 US2019021034
(87)【国際公開番号】W WO2019173530
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】62/639,407
(32)【優先日】2018-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/640,361
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/641,082
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/641,918
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/657,495
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/683,695
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/688,622
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/717,530
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/736,284
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/744,008
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/746,319
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/770,530
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/775,219
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/797,680
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/802,545
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/806,313
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19305247.9
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515337475
【氏名又は名称】サノフィ・バイオテクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス・ベサック
(72)【発明者】
【氏名】コリンヌ・アノタン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ポーディー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・サシーラ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・シュウォルツ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・シュテグ
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-509624(JP,A)
【文献】特表2014-508142(JP,A)
【文献】特表2014-527967(JP,A)
【文献】特表2017-522316(JP,A)
【文献】ODYSSEY LONG TERM,https://www.wikijournalclub.org/wiki/ODYSSEY_LONG_TERM
【文献】The New England Journal of Medicine,2015年,Vol. 372, No. 16,pp. 1489-1499
【文献】Circulation,2016年,Vol. 134,pp. 1931-1943
【文献】Lancet,2017年,Vol. 390,pp. 1962-1971
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大許容スタチン療法を受けており、100mg/dL以上の血清LDL-C値を有する高コレステロール血症を有し、急性冠症候群(ACS)を経験した、それを必要とする患者における全死因死のリスクを低減する方法で使用するための、治療上有効な量のプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物であって、該方法は:
患者に、該医薬組成物を少なくとも3年間投与することを含み、
該PCSK9抗体またはその抗原結合断片が、配列番号1および6にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)の相補性決定領域(CDR)を含
記医薬組成物。
【請求項2】
患者が、
(a)臨床アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD);
(b)末梢動脈疾患(PAD);
(c)脳血管疾患(CeVD);または
(d)多血管疾患
を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
患者が、以前冠動脈バイパス術(CABG)を受けていた、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
抗体またはその抗原結合断片が、配列番号2、3、4、7、8および10を有する重鎖および軽鎖CDRアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
投与工程が:
(i)患者に、1回またはそれ以上の75mgの抗体またはその抗原結合断片の初回用量を、4~8週間およそ2週間毎に投与する工程と、
(ii)工程(i)後の患者におけるLDL-Cレベルが、閾値レベル以上である場合は、患者に1回またはそれ以上の150mgの抗体またはその抗原結合断片の後続用量をおよそ2週間毎に投与する工程と
を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
閾値レベルが50mg/dLである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
投与工程が、患者に:
(a)75mgの抗体またはその抗原結合断片の1回またはそれ以上の用量をおよそ2週間毎に;または
(b)150mgの抗体またはその抗原結合断片の1回またはそれ以上の用量をおよそ2週間毎に;または
(c)300mgの抗体またはその抗原結合断片の1回またはそれ以上の用量をおよそ4週間毎に投与する工程を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
最大許容スタチン療法が:
(a)約40mg~約80mgのアトルバスタチンの1日用量;
(b)約20mg~約40mgのロスバスタチンの1日用量;
(c)低~中用量のアトルバスタチンまたはロスバスタチン;または
(d)アトルバスタチンまたはロスバスタチン以外のスタチン
を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
抗体またはその抗原結合断片がアリロクマブである、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記投与は、患者に75mgのアリロクマブを1回またはそれ以上の用量をおよそ2週毎に、少なくとも3年間投与することを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記投与は、患者に150mgのアリロクマブを1回またはそれ以上の用量をおよそ2週毎に、少なくとも3年間投与することを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
アリロクマブは大腿、腹部または上腕に皮下投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2018年3月6日に出願された米国仮特許出願第62/639,407号、2018年3月8日に出願された第62/640,361号、2018年3月9日に出願された第62/641,082号、2018年3月12日に出願された第62/641,918号、2018年4月13日に出願された第62/657,495号、2018年6月12日に出願された第62/683,695号、2018年6月22日に出願された第62/688,622号、2018年8月10日に出願された第62/717,530号、2018年9月25日に出願された第62/736,284号、2018年10月10日に出願された第62/744,008号、2018年10月16日に出願された第62/746,319号、2018年11月21日に出願された第62/770,530号、2018年12月4日に出願された第62/775,219号、2019年1月28日に出願された第62/797,680号、2019年2月7日に出願された第62/802,545号、2019年2月15日に出願された第62/806,313号および2019年3月4日に出願された欧州特許出願第19305247.9号の優先権を主張し、それらの全開示内容を、その全文で参照によって本明細書に組み入れる。
【0002】
本発明は、脂質およびリポタンパク質のレベルの上昇と関連する疾患および障害の治療的処置の分野に関する。より詳しくは、本発明は、死亡を含む心血管リスクを低減するための、および最大許容スタチン療法にもかかわらず急性冠動脈症候群後の高心血管リスク患者においてアテローム生成性リポタンパク質を低下させるためのPCSK9阻害剤の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
迅速な冠血行再建、併用抗血小板療法および強化スタチン処置を含む最新の療法にもかかわらず、急性冠動脈症候群(ACS)後に、心血管事象は高頻度で生じる。レジストリデータは、5年で13%ほどの高い心血管死亡率を示し、圧倒的な多数は、病院からの最初の退院後に生じる。最近の急性冠動脈症候群(ACS)を有する患者は、近いうちに再発性冠動脈事象を患う極めて高いリスクにある。ACSを有する患者のうちおよそ10%において、1年以内に心血管死、再発性心筋梗塞または卒中が生じる。大きな臨床治験の結果に基づいて、早期強化スタチン療法は、ACSを有する患者の推奨処置として正式に推奨されるものになった。疫学的および薬理学的介入治験の両方とも、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)のレベルと心血管(CV)事象の間の強力な、直線の関係を実証した。しかし、多数の高CVリスク患者は、現在利用可能な脂質低下薬を用いてこのようなレベルを達成できない。さらに、著しい数の高リスク患者でさえ、その推奨されるLDL-C標的レベルを達成できず、ほとんどのCV事象は、実際に防止されず、患者の実質的な「残存するリスク」が残る。したがって、死亡率を低減することを含む、高心血管リスクを有する患者を処置するためのさらなる薬理学的療法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、PCSK9阻害剤を使用して高心血管リスク患者において心血管リスクを低減し、アテローム生成性リポタンパク質を低下させる方法を提供する。本発明の方法は、心血管リスクおよび/または事象を低減するのに特に有用である。このような方法は、幾分かは、PCSK9阻害剤による処置が、最大許容スタチン療法を受けている高心血管リスク患者における死亡のリスクの低減と関連していたことを初めて実証する、本明細書において開示される臨床治験結果に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、一態様では、本発明は、高心血管リスク患者の死亡のリスクを低減する方法であって、
(a)それを必要とする高心血管リスク患者を選択することと、
(b)患者にプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤を投与し、それによって、患者の死亡のリスクを低減することと
を含む方法を提供する。
【0006】
一実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定の実施形態では、患者の死亡のリスクが、約15%低減される。その他の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず、100mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定のその他の実施形態では、患者の死亡のリスクは、約29%低減される。特定の実施形態では、方法は、患者の生存時間を延長する。特定の実施形態では、死亡は、心血管疾患死(「CV死」)である。その他の実施形態では、死亡は、非心血管死(「非CV死」)である。特定の実施形態では、非CV死は、肺の感染、肺の悪性腫瘍、胃腸の/肝胆道の/膵臓の感染、胃腸の/肝胆道の/膵臓の悪性腫瘍、出血、卒中/出血ではない神経学的プロセス、自殺、非心血管手順もしくは手術、事故もしくは外傷、腎臓の感染、腎臓の悪性腫瘍、その他の非心血管感染またはその他の非心血管悪性腫瘍による。
【0007】
別の態様では、本発明は、高心血管リスク患者において冠動脈心疾患(CHD)死、非致死性心筋梗塞、入院を必要とする不安定狭心症または虚血性脳卒中のリスクを低減する方法であって、
(a)それを必要とする高心血管リスク患者を選択することと、
(b)患者にプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤を投与し、それによって、患者のCHD死、非致死性心筋梗塞、入院を必要とする不安定狭心症または虚血性脳卒中のリスクを低減することと
を含む方法を提供する。
【0008】
一実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定の実施形態では、患者のCHD死、非致死性心筋梗塞、入院を必要とする不安定狭心症または虚血性脳卒中のリスクが、約15%低減される。その他の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず100mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定のその他の実施形態では、患者のCHD死、非致死性心筋梗塞、入院を必要とする不安定狭心症または虚血性脳卒中のリスクが、約24%低減される。特定の実施形態では、方法は、患者におけるCHD死、非致死性心筋梗塞、入院を必要とする不安定狭心症または虚血性脳卒中の最初の出現までの時間を延長する。特定の実施形態では、高心血管リスク患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず自動化ラテックス強化比濁分析アッセイによって測定される、20mg/dL以上のLp(a)レベルを有する。いくつかの実施形態では、高心血管リスク患者は、末梢動脈疾患(PAD)を有する。いくつかの実施形態では、高心血管リスク患者は、脳血管疾患(CeVD)を有する。いくつかの実施形態では、患者は、多血管(polyvascular)疾患を有する。いくつかの実施形態では、高心血管リスク患者は、以前に冠動脈バイパス術(CABG)を受けていた。
【0009】
特定の実施形態では、高心血管リスク患者は、糖尿病を有する。特定の実施形態では、方法は、糖尿病患者の冠動脈心疾患(CHD)死、非致死性心筋梗塞、入院を必要とする不安定狭心症または虚血性脳卒中のリスクを約16%低減する。
【0010】
別の態様では、本発明は、高心血管リスク患者において冠動脈心疾患(CHD)事象のリスクを低減する方法であって、
(a)それを必要とする高心血管リスク患者を選択することと、
(b)患者にプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤を投与し、それによって、患者のCHD事象のリスクを低減することと
を含む方法を提供する。
【0011】
一実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態では、CHD事象は、CHD死、非致死性心筋梗塞、入院を必要とする不安定狭心症または虚血駆動性冠血行再建術を含む。特定の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定の実施形態では、患者のCHD事象のリスクが、約12%低減される。その他の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず100mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定のその他の実施形態では、患者のCHD事象のリスクは、約22%低減される。特定の実施形態では、方法は、患者においてCHD事象の最初の出現までの時間を延長する。
【0012】
別の態様では、本発明は、高心血管リスク患者において主要なCHD事象のリスクを低減する方法であって、
(a)それを必要とする高心血管リスク患者を選択することと、
(b)患者にプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤を投与し、それによって、患者の主要なCHD事象のリスクを低減することと
を含む方法を提供する。
【0013】
一実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態では、主要なCHD事象は、CHD死または非致死性心筋梗塞を含む。特定の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定の実施形態では、患者の主要なCHD事象のリスクが、約12%低減される。その他の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず100mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定のその他の実施形態では、患者の主要なCHD事象のリスクが、約23%低減される。特定の実施形態では、方法は、患者において主要なCHD事象の最初の出現までの時間を延長する。
【0014】
別の態様では、本発明は、高心血管リスク患者においてCHD死のリスクを低減する方法であって、
(a)それを必要とする高心血管リスク患者を選択することと、
(b)患者にPCSK9阻害剤を投与し、それによって、患者のCHD死のリスクを低減することと
を含む方法を提供する。
【0015】
一実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず100mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定の実施形態では、患者のCHD死のリスクが、約28%低減される。特定の実施形態では、方法は、患者においてCHD死の最初の出現までの時間を延長する。
【0016】
別の態様では、本発明は、高心血管リスク患者において心血管事象のリスクを低減する方法であって、
(a)それを必要とする高心血管リスク患者を選択することと、
(b)患者にプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤を投与し、それによって、患者の心血管事象のリスクを低減することと
を含む方法を提供する。
【0017】
一実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態では、心血管事象は、非致死性CHD事象、心血管死または非致死性虚血性脳卒中を含む。特定の実施形態では、非致死性CHD事象は、非致死性心筋梗塞、入院を必要とする不安定狭心症または虚血駆動性冠血行再建術を含む。特定の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定の実施形態では、患者の心血管事象のリスクが、約13%低減される。その他の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず100mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定のその他の実施形態では、患者の心血管事象のリスクが、約22%低減される。特定の実施形態では、方法は、患者において心血管事象の最初の出現までの時間を延長する。
【0018】
別の態様では、本発明は、高心血管リスク患者において心血管死のリスクを低減する方法であって、
(a)それを必要とする高心血管リスクを選択することと、
(b)患者にPCSK9阻害剤を投与し、それによって、患者の心血管死のリスクを低減することと
を含む方法を提供する。
【0019】
一実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず100mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定の実施形態では、患者の心血管事象のリスクが、約31%低減される。特定の実施形態では、方法は、患者において心血管死の最初の出現までの時間を延長する。
【0020】
別の態様では、本発明は、高心血管リスク患者において非致死性心血管事象のリスクを低減する方法であって、
(a)それを必要とする高心血管リスクを選択することと、
(b)患者にPCSK9阻害剤を投与し、それによって、患者の非致死性心血管事象のリスクを低減することと
を含む方法を提供する。
【0021】
一実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態では、非致死性心血管事象は、心筋梗塞、卒中、入院を必要とする不安定狭心症、入院を必要とする心不全または虚血駆動性冠血行再建術を含む。特定の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定の実施形態では、患者の非致死性心血管事象のリスクが、約15%低減される。
【0022】
別の態様では、本発明は、高心血管リスク患者において最初の非致死性CV事象後のその後の非致死性心血管(CV)事象または死亡のリスクを低減する方法であって、
(a)最初の非致死性CV事象を経験している、それを必要とする高心血管リスク患者を選択することと、
(b)患者にプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤を投与し、それによって、患者におけるその後の非致死性CV事象のリスクを低減することと
を含む方法を提供する。
【0023】
一実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態では、非致死性CV事象は、心筋梗塞、卒中、入院を必要とする不安定狭心症、入院を必要とする心不全または虚血駆動性冠血行再建術を含む。特定の実施形態では、患者は、1つ、2つ、3つ、4つまたは4つより多い非致死性心血管事象を経験している。一実施形態では、最初の非致死性CV事象は、第1の非致死性CV事象であり、その後の非致死性CV事象は、第2の非致死性CV事象である。別の実施形態では、最初の非致死性CV事象は、第2の非致死性CV事象であり、その後の非致死性CV事象は、第3の非致死性CV事象である。別の実施形態では、最初の非致死性CV事象は、第3の非致死性CV事象であり、その後の非致死性CV事象は、第4の非致死性CV事象である。別の実施形態では、最初の非致死性CV事象は、第4の非致死性CV事象であり、その後の非致死性CV事象は、第5の非致死性CV事象である。特定の実施形態では、患者は、4を超える非致死性CV事象を経験している。
【0024】
別の態様では、本発明は、高心血管リスク患者において非致死性心血管(CV)事象の総数を低減する方法であって、
(a)それを必要とする高心血管リスク患者を選択することと、
(b)患者にプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤を投与し、それによって、患者において非致死性CV事象の総数を低減することと
を含む方法を提供する。
【0025】
一実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態では、非致死性心血管事象は、非致死性心筋梗塞、非致死性卒中または非致死性不安定狭心症を含む。特定の実施形態では、患者の非致死性心血管事象のリスクが低減され、それによって、患者の非心血管死のリスクの低減につながる。特定の実施形態では、患者の非心血管死のリスクが約19%低減される。
【0026】
別の態様では、本発明は、高心血管リスク患者において死亡、非致死性心筋梗塞または非致死性虚血性脳卒中のリスクを低減する方法であって、
(a)それを必要とする高心血管リスク患者を選択することと、
(b)患者にプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤を投与し、それによって、患者の死亡、非致死性心筋梗塞または非致死性虚血性脳卒中のリスクを低減することと
を含む方法を提供する。
【0027】
一実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定の実施形態では、患者の死亡、非致死性心筋梗塞または非致死性虚血性脳卒中のリスクが、約14%低減される。その他の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず100mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定のその他の実施形態では、患者の死亡、非致死性心筋梗塞または非致死性虚血性脳卒中のリスクが、約23%低減される。特定の実施形態では、方法は、患者において死亡、非致死性心筋梗塞または非致死性虚血性脳卒中の最初の出現までの時間を延長する。特定の実施形態では、死亡は、CV死である。その他の実施形態では、死亡は、非CV死である。
【0028】
別の態様では、本発明は、高心血管リスク患者において虚血性脳卒中のリスクを低減する方法であって、
(a)それを必要とする高心血管リスク患者を選択することと、
(b)患者にPCSK9阻害剤を投与し、それによって、患者の虚血性脳卒中のリスクを低減することと
を含む方法を提供する。
【0029】
一実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定の実施形態では、患者の虚血性脳卒中のリスクが、約27%低減される。その他の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず100mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定のその他の実施形態では、患者の虚血性脳卒中のリスクが、約40%低減される。特定の実施形態では、方法は、患者において虚血性脳卒中の最初の出現までの時間を延長する。
【0030】
別の態様では、本発明は、高心血管リスク患者において入院を必要とする不安定狭心症のリスクを低減する方法であって、
(a)それを必要とする高心血管リスク患者を選択することと、
(b)患者にPCSK9阻害剤を投与し、それによって、患者の入院を必要とする不安定狭心症のリスクを低減することと
を含む方法を提供する。
【0031】
一実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定の実施形態では、患者の入院を必要とする不安定狭心症のリスクが、約39%低減される。その他の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず100mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定のその他の実施形態では、患者の入院を必要とする不安定狭心症のリスクが、約52%低減される。特定の実施形態では、方法は、患者において入院を必要とする不安定狭心症の最初の出現までの時間を延長する。
【0032】
別の態様では、本発明は、高心血管リスク患者において非致死性心筋梗塞のリスクを低減する方法であって、
(a)それを必要とする高心血管リスク患者を選択することと、
(b)患者にプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤を投与し、それによって、患者の非致死性心筋梗塞のリスクを低減することと
を含む方法を提供する。
【0033】
一実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定の実施形態では、患者の非致死性心筋梗塞のリスクが、約14%低減される。
【0034】
一実施形態では、心筋梗塞は、1型心筋梗塞である。特定の実施形態では、患者の1型心筋梗塞のリスクが、約13%低減される。別の実施形態では、心筋梗塞は、2型心筋梗塞である。特定の実施形態では、患者の2型心筋梗塞のリスクが、約23%低減される。特定の実施形態では、方法は、患者において非致死性心筋梗塞の最初の出現までの時間を延長する。
【0035】
別の態様では、本発明は、高心血管リスク患者において虚血駆動性冠血行再建術を受けるリスクを低減する方法であって、
(a)それを必要とする高心血管リスク患者を選択することと、
(b)患者にプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤を投与し、それによって、患者の虚血駆動性冠血行再建術を受けるリスクを低減することと
を含む方法を提供する。
【0036】
一実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定の実施形態では、患者の虚血駆動性冠血行再建術を受けるリスクが、約12%低減される。特定の実施形態では、方法は、高心血管リスク患者において虚血駆動性冠血行再建術の出現の速度を延長する。特定の実施形態では、方法は、患者において虚血駆動性冠血行再建術の最初の出現までの時間を延長する。
【0037】
別の態様では、本発明は、将来のアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)事象の極めて高いリスクを有する患者において、冠動脈心疾患(CHD)死、非致死性心筋梗塞、入院を必要とする不安定狭心症または虚血性脳卒中のリスクを低減する方法であって、
(a)それを必要とする将来のASCVD事象の極めて高いリスクを有する患者を選択することと、
(b)患者にプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤を投与し、それによって、患者のCHD死、非致死性心筋梗塞、入院を必要とする不安定狭心症または虚血性脳卒中のリスクを低減することと
を含む方法を提供する。
【0038】
一実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態では、極めて高いリスクの患者は、複数の主要なASCVD事象の病歴または1つの主要なASCVD事象および複数の高いリスクの状態のいずれかを有することによって選択される。特定の実施形態では、高いリスクの状態は、ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症、以前の冠動脈バイパス術または経皮的冠動脈インターベンション、糖尿病、高血圧症の病歴、CKD(eGFR15~59mL/分/1.73m)、現在の喫煙、最大許容スタチン療法およびエゼチミブにもかかわらず持続的に上昇したLDL-C(LDL-C≧100mg/dL[≧2.6mmol/L])またはうっ血性心不全の病歴を含む。
【0039】
別の態様では、本発明は、高心血管リスク患者において心血管リスクを低減する方法であって、
(a)それを必要とする高心血管リスク患者を選択することと、
(b)患者にプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤を投与し、ここで、患者におけるLp(a)レベルが低減され、それによって、患者の心血管リスクが低減されることと
を含む方法を提供する。
【0040】
一実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態では、Lp(a)レベルは、自動化ラテックス強化比濁分析アッセイによって測定される。
【0041】
前記の態様のいずれか1つの特定の実施形態では、患者は、心血管疾患を確立している。特定の実施形態では、患者は、臨床アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を有する。特定の実施形態では、患者は、急性冠動脈症候群(ACS)事象を有していた。特定の実施形態では、患者は、過去12ヶ月以内にACS事象を有していた。特定の実施形態では、ACS事象は、(1)推定または証明された閉塞性冠動脈疾患による、予定外の入院の72時間以内の安静時または極めて軽度の労作時に生じる心筋虚血の不安定な症状ならびに(2)以下のうち少なくとも1つ:(i)急性心筋梗塞と一致する心臓バイオマーカーの上昇および(ii)局所灌流画像化または壁運動異常からの閉塞性冠動脈疾患のさらなるエビデンス、血管造影による心外膜冠動脈狭窄≧70%または事象と関連する冠血行再建の必要性を伴う、虚血または梗塞と一致する安静時ECG変化によって定義される。
【0042】
前記の態様のいずれか1つの特定の実施形態では、患者に、PCSK9阻害剤が少なくとも1年間投与される。その他の実施形態では、患者に、PCSK9阻害剤が少なくとも3年間投与される。
【0043】
特定の実施形態では、PCSK9阻害剤は、患者に、最大許容スタチン療法と組み合わせて投与される。特定の実施形態では、最大許容スタチン療法は、約40mg~約80mgのアトルバスタチンの1日用量を含む。特定の実施形態では、最大許容スタチン療法は、約20mg~約40mgのロスバスタチンの1日用量を含む。特定の実施形態では、最大許容スタチン療法は、低~中用量のアトルバスタチンまたはロスバスタチンである。特定の実施形態では、最大許容スタチン療法は、アトルバスタチンまたはロスバスタチン以外のスタチンを含む。特定の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法によって少なくとも2週間処置されている。
【0044】
特定の実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9と特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1および6にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)の相補性決定領域(CDR)を含む。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2、3、4、7、8および10を有する重鎖および軽鎖CDRアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を有するHCVRおよび配列番号6のアミノ酸配列を有するLCVRを含む。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2、3、4、7、8および10を有する重鎖および軽鎖CDRアミノ酸配列を含む抗体と同一の、PCSK9上のエピトープと結合する。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2、3、4、7、8および10を有する重鎖および軽鎖CDRアミノ酸配列を含む抗体と、PCSK9との結合について競合する。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、それぞれ配列番号85および89に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)の相補性決定領域(CDR)を含む。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号86、87、88、90、91および92を有する重鎖および軽鎖CDRアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号85に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、95%または99%同一のアミノ酸配列を有するHCVRおよび配列番号89に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、95%または99%同一のアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
【0045】
本明細書において開示される方法の特定の実施形態では、PCSK9抗体またはその抗原結合断片を投与する工程(工程(b))は、
(i)患者に、1回またはそれ以上の75mgの抗体またはその抗原結合断片の初回用量をおよそ2週間毎に投与する工程と、
(ii)工程(i)後の患者におけるLDL-Cレベルが、閾値レベルよりも低い場合は、患者に1回またはそれ以上の75mgの抗体またはその抗原結合断片の後続用量をおよそ2週間毎に投与する工程、または工程(i)後の患者におけるLDL-Cレベルが、閾値レベル以上である場合は、患者に1回またはそれ以上の150mgの抗体またはその抗原結合断片の後続用量をおよそ2週間毎に投与する工程
を含む。
【0046】
特定の実施形態では、閾値レベルは、50mg/dLである。特定の実施形態では、前記の方法の工程(b)は、患者に150mgの抗体またはその抗原結合断片の1回またはそれ以上の用量をおよそ2週間毎に投与することを含む。その他の実施形態では、前記の方法の工程(b)は、患者に300mgの抗体またはその抗原結合断片の1回またはそれ以上の用量をおよそ2週間毎またはおよそ4週間毎に投与することを含む。
【0047】
特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、およそ2週間毎に患者に少なくとも1年または1年超の間投与される。
【0048】
別の態様では、本発明は、冠動脈心疾患(CHD)死、非致死性心筋梗塞、入院を必要とする不安定狭心症または虚血性脳卒中のリスクを低減する方法であって、
(a)それを必要とする高心血管リスク患者を選択し、ここで、患者は、スタチン療法を現在受けていないことと、
(b)プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤をそれを必要とする患者に投与し、それによって、患者のCHD死、非致死性心筋梗塞、入院を必要とする不安定狭心症または虚血性脳卒中のリスクを低減することと
を含む方法を提供する。
【0049】
特定の実施形態では、患者は、スタチンに対して忍容性がない、またはスタチン療法に対して有害反応の病歴を有する。特定の実施形態では、患者の冠動脈心疾患(CHD)死、非致死性心筋梗塞、入院を必要とする不安定狭心症または虚血性脳卒中のリスクが、約35%低減される。
【0050】
本発明のその他の実施形態は、以下の詳細な説明の再検討から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1-1】図1A図1Gは、オントリートメント集団におけるマーカーレベルを図によって表す図である。図1Aは、プラセボまたはアリロクマブを受け取っている患者の48ヶ月にわたるオントリートメント集団のLDL-C値のグラフを表す。図1B図1Gは、プラセボまたはアリロクマブを受け取っている患者の非HDLコレステロール(図1B)、ApoB(図1C)、トリグリセリド(図1D)、HDLコレステロール(図1E)、リポタンパク質(a)(図1F)および総コレステロール(図1G)のレベルを示すグラフを表す。破線で示される治療企図(ITT)レベルは、早期処置中止、盲検アリロクマブ用量滴定またはアリロクマブからプラセボへの盲検切り替え後に測定されるものを含むすべての値を含む。実線で示されるオントリートメントレベルは、早期処置中止またはアリロクマブからプラセボへの盲検切り替え後に得られる値を除外する(ただし、盲検アリロクマブ下方滴定後に得られた値を含む)。
図1-2】図1-1の続き。
図1-3】図1-2の続き。
図2図2は、アリロクマブまたはプラセボを用いて処置された患者における主要な効能エンドポイント、MACEのグラフを表す図である。アリロクマブは、MACEのリスクを15%低減した(HR=0.85、0.78~0.93、p<0.001)。挿入図は、拡大されたy軸での同一データを示す。P値は、地理的領域によって層別化されたログランク検定を使用して算出した。
図3図3は、アリロクマブまたはプラセボを用いて処置された患者における全死因死亡のハザード比を用いるグラフを表す図である。挿入図は、拡大されたy軸での同一データを示す。P値は、地理的領域によって層別化されたログランク検定を使用して算出した。
図4図4は、異なる亜群間の相互作用の試験から得たP値を含む、種々の予め指定された亜群の解析のハザード比を含む結果を表す図である。予め指定されたCox比例ハザード回帰分析を、主要なアウトカム(冠動脈心疾患死、非致死性心筋梗塞、虚血性脳卒中または不安定狭心症のための入院の最初の出現)に関して患者の亜群において実施した。Apo、アポリポタンパク質;CI、信頼区間;HR、ハザード比;hs-CRP、高感受性C反応性タンパク質;NSTEMI、非ST部分上昇型心筋梗塞;LDL-C、低密度リポタンパク質コレステロール;STEMI、ST部分上昇型心筋梗塞。
図5図5A図5Cは、ベースラインLDL-Cレベル(<80mg/dL(図5A)、80~100mg/dL(図5B)および≧100mg/dL(図5C))によって層別化された、アリロクマブおよびプラセボを用いて処置された患者の3つの異なる亜群におけるMACEの、ハザード比を用いるグラフのセットを表す図である。
図6図6A図6Bは、ベースラインLDL-Cレベル(<100mg/dL(図6A)および>100mg/dL(図6B))によって層別化された、アリロクマブおよびプラセボを用いて処置された患者の2つの異なる亜群におけるMACEの、ハザード比を用いるグラフのセットを表す図である。
図7図7A図7Cは、<80mg/デシリットル(図7A)、80~<100mg/デシリットル(図7B)または>100mg/デシリットル(図7C)のベースラインLDLコレステロールレベルに従って亜群において調べられたLDL-Cレベルを示す図である。
図8図8A図8Cは、ベースラインLDL-Cレベル(<80mg/dL(図8A)、80~100mg/dL(図8B)および≧100mg/dL(図8C))によって層別化された、アリロクマブおよびプラセボを用いて処置された患者の3つの異なる亜群における全死因死亡のハザード比を用いるグラフのセットを示す図である。相対リスク低減(RRR)相互作用p=0.12;絶対リスク低減(ARR)相互作用p=0.005。
図9図9は、ベースラインLp(a)レベルの分布を示すヒストグラムである。mg/dLからnmol/Lへのおよその変換は、Lp(a)mg/dL*0.357としてコンピュータによって計算できる。
図10図10は、プラセボ群のベースラインLp(a)四分位数によって示されるMACE、非致死性心筋梗塞、虚血性脳卒中、CHD死、CV死および全死因死の発生率を示すグラフである。
図11図11は、全体の25パーセンタイル(6.7mg/dL)、中央値(21.2mg/dL)、および75パーセンタイル(59.6mg/dL)に位置する、自然3次および3ノットの3次のスプライン(区分的3次曲線)を示すグラフである。スコア試験に基づくスプライン効果のP値。全体のベースライン中央値(21.2mg/dL)で1.00に設定されるハザード比。スプライン効果についてP<0.0001。
図12図12は、プラセボと比較したアリロクマブを用いた場合の相対および絶対リスク低減を表すフォレストプロットである。Lp(a)のベースライン四分位数によって層別化されたアリロクマブおよびプラセボ群の、ならびに全体集団のMACE発生率が示されている。
図13図13は、ベースラインLp(a)およびベースラインLDL-Cによって層別化された、MACEの絶対リスク低減を表すグラフである。Lp(a)について補正されていないベースラインLDL-C。
図14図14は、Lp(a)のベースライン四分位数によって層別化された、ベースライン、4ヶ月および12ヶ月でのアリロクマブおよびプラセボ群におけるLp(a)の分布(中央値および四分位範囲)を表す図である。
図15図15A図15Bは、アリロクマブ処置群(図15A)およびプラセボ群(図15B)におけるLp(a)四分位数によって層別化されたLDL-コレステロール、補正LDL-コレステロールおよびLp(a)のベースラインから4ヶ月への絶対変化の中央値および四分位範囲を表す図である。
図16図16A図16Bは、ベースラインリポタンパク質(a)対リポタンパク質(a)における絶対変化(図16A)およびベースラインリポタンパク質(a)対LDL-C補正における絶対変化(図16B)の相関のプロットを表す図である。ベースラインリポタンパク質(a)およびリポタンパク質(a)およびLDL-C補正における絶対変化間のピアソン相間は、それぞれ、-0.56(P<0.0001)および0.05(P<0.0001)である。
図17図17A図17Bは、2~150mg/dLのベースラインLp(a)の分布にわたって示される、4ヶ月でのLp(a)の絶対変化とMACEのリスクの間の関係を表す図である。図17Aは、LDL-C補正におけるベースラインおよびベースラインから4ヶ月の変化について調整するモデルから得た結果を示す(モデル3A)。図17Bは、非HDL-C補正におけるベースラインおよびベースラインから4ヶ月の変化について調整するモデルから得た結果を示す(モデル3B)。
図18図18Aは、研究の過程にわたる、プラセボまたはアリロクマブを受け取っている患者におけるLp(a)レベルの第1の四分位数(「1Q」)、中央値および第3の四分位数(「3Q」)を示すグラフである。図18Bは、研究の過程にわたる、プラセボまたはアリロクマブを受け取っている患者におけるLp(a)レベルの絶対変化の第1の四分位数(「1Q」)、中央値および第3の四分位数(「3Q」)を示すグラフである。
図19図19A図19Cは、領域によって層別化されたすべての患者の連続治療企図4ヶ月LDL-Cの全死因死スプライン解析を示す図である(図19A;*HRは、4ヶ月LDL-C中央値に対する相対である(1.68mmol/L[65mg/dL])。次数=3、4ヶ月LDL-C四分位数に位置する3ノット(0.80、1.68および2.38mmol/L[31、65および92mg/dL])、モデルのp値=0.0070);領域によって層別化されたプラセボ処置患者(図19B;HRは、4ヶ月LDL-C中央値に対する相対である(2.25mmol/L[87mg/dL])。次数=3、4ヶ月LDL-C四分位数に位置する3ノット(1.86、2.25および2.64mmol/L[72、87および102mg/dL])、モデルのp値=0.0007);ならびに領域によって層別化されたアリロクマブ処置患者(図19C;HRは、4ヶ月LDL-C中央値に対する相対である(0.80mmol/L[31mg/dL])。次数=3、4ヶ月LDL-C四分位数に位置する3ノット(0.52、0.80および1.27mmol/L[20、31および49mg/dL])、モデルのp値=0.0083。LDL-C=低密度リポタンパク質コレステロール;HR=ハザード比)。
図20図20A図20Dは、総集団(図20Aおよび図20C)および>3年のフォローアップに適格な患者(図20Bおよび図20D)における、MACE(図20Aおよび図20B)および全死因死亡(図20Cおよび図20D)のハザード比を用いるグラフのセットを示す図である。
図21図21A図21Bは、死のデータを図によって表す。図21Aは、アリロクマブまたはプラセボを用いて処置された患者の総集団における、全死因死、心血管(CV)死および非心血管(非CV)死を示すグラフである。図21Bは、≧3年のフォローアップに適格な患者における死の低減を示す。
図22図22は、非致死性心血管(CV)事象の平均累積関数およびカプラン・マイヤー曲線を表す図である。平均累積関数曲線は、ランダム化後所与の時間でのプラセボおよびアリロクマブ群中の所与の患者の非致死性心血管事象の予測される総数を表す。
図23図23A図23Bは、種々の患者群における非致死性CV事象の平均累積関数およびカプラン・マイヤー曲線を示す図である。図23Aは、ベースラインLDL-C≧100mg/dL(n=5,629)を有する患者間での非致死性CV事象を例示する。図23Bは、ベースラインLDL-C<100mg/dL(n=13,295)を有する患者間での非致死性CV事象を例示する。
図24図24は、処置群による第1の、その後の、および総CV事象ならびに死を表す図である。
図25図25は、ベースラインLDL-C亜群に従う関節脆弱性モデルを表す図である。
図26図26は、正常血糖の、前糖尿病のおよび糖尿病患者におけるランダム化(治療企図解析)の16週後の脂質レベルを示すグラフを表す。ベースラインからのパーセント変化中央値は、各バーの下に示されている。
図27図27は、2.8(2.3,3.4)年のフォローアップ期間の中央値を上回る(Q1,Q3)、正常血糖の、前糖尿病のおよび糖尿病患者における心血管事象の発生率を示すグラフを表す。糖尿病を有する人におけるハザード対正常血糖または前糖尿病の人におけるハザードの比較についてP<0.0001。
図28図28は、A1cおよび空腹時グルコースの反復測定混合効果モデルを使用した、ベースライン糖代謝状態による、ランダム化後A1c、空腹時グルコースおよび新規発症糖尿病を示す一連のグラフを示す図である。糖尿病投薬の開始に先立つランダム化後の値のみを解析に含めた。糖尿病なし=前糖尿病または正常血糖。
図29A図29Aおよび図29Bは、アリロクマブ(ALI;太い線で)またはプラセボ(PBO)による処置後の1(冠動脈疾患およびPADまたはCeVDなし)、2(冠動脈疾患およびPADまたはCeVD)または3(冠動脈疾患ならびにPADおよびCeVD)血管床において動脈疾患を有する患者における主要なMACEエンドポイント(図29A)および全死因死(図29B)のカプラン・マイヤー曲線を示す図である。ARRは、絶対リスク低減を示す。
図29B図29Aおよび図29Bは、アリロクマブ(ALI;太い線で)またはプラセボ(PBO)による処置後の1(冠動脈疾患およびPADまたはCeVDなし)、2(冠動脈疾患およびPADまたはCeVD)または3(冠動脈疾患ならびにPADおよびCeVD)血管床において動脈疾患を有する患者における主要なMACEエンドポイント(図29A)および全死因死(図29B)のカプラン・マイヤー曲線を示す図である。ARRは、絶対リスク低減を示す。
図30図30は、単血管疾患(公知のPADまたはCeVDを伴わない冠動脈疾患)、2血管床における多血管疾患(冠動脈疾患およびPADまたはCeVDのいずれか)および3血管床における多血管疾患(PADおよびCeVDの両方を有する冠動脈疾患)を有する患者におけるMACEおよび全死因死および対応する絶対リスク低減(ARR)のハザード比を表す図である。
図31図31は、以前の冠動脈バイパス術(CABG)状態に従うMACEの出現のカプラン・マイヤー曲線を表す図である。曲線は、(1)以前のCABGなし(「なし」)、(2)インデックスACS後であるがランダム化前のCABG(「インデックス」)および(3)インデックスACS前のCABG(「前」)を有する患者を表す。
図32図32は、以前の冠動脈バイパス術(CABG)状態に従う患者におけるMACE(主要なエンドポイント)および全死因死および対応する絶対リスク低減(ARR)のハザード比を表す図である。
図33図33は、1型または2型心筋梗塞(MI)の出現および経時的なアリロクマブ対プラセボの効果のカプラン・マイヤー曲線を表す図である。
図34図34は、全死因死の予測変数としてのフォローアップの間の1型または2型心筋梗塞(MI)のフォレストプロットを表す図である。モデルに含まれる予後因子:年齢群(<65、65~<75または≧75歳)、地理的領域、糖尿病の病歴、COPDの病歴、インデックス事象の前のMIの病歴、PADの病歴、高血圧症の病歴、GFR群(<60対≧60mL/分/1.73m、LDL-C群(<100対≧100mg/dL)。
図35図35は、1型または2型心筋梗塞(MI)の前後の全死因死および死因別死に対する処置効果のハザード比を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明が説明される前に、本発明は、記載される特定の方法および実験条件に限定されないが、これは、このような方法および条件は変わり得るからであるということは理解されるべきである。また、本方法の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書において使用される技術用語は、単に特定の実施形態を説明する目的のためであり、限定を意図するものではないということも理解されるべきである。本明細書において記載されるすべての刊行物は、その全文で参照によって本明細書に組み入れる。
【0053】
定義
別に定義されない限り、本明細書において記載されるすべての技術および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書において、用語「約」とは、特定の列挙された数値に関して使用される場合、値は、列挙された値から1%以下まで変わり得ることを意味する。例えば、本明細書において、表現「約100」は、99および101および間のすべての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0054】
本明細書において、「高心血管リスク患者」とは、高コレステロール血症および/または少なくとも1種のアテローム生成性リポタンパク質のレベルの上昇を有する患者を指す。特定の実施形態では、高心血管リスク患者は、高コレステロール血症および/または例えば、最大許容スタチン療法を含む脂質修飾療法(LMT)によって適切に制御されない、少なくとも1種のアテローム生成性リポタンパク質のレベルの上昇を有する。特定の実施形態では、高心血管リスク患者は、臨床アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を有する患者である。臨床ASCVDを有する患者は、ACSを有する患者、心筋梗塞、安定もしくは不安定狭心症または冠動脈もしくはその他の動脈血行再建、卒中、一過性脳虚血発作(TIA)または大動脈瘤を含む末梢動脈疾患、アテローム動脈硬化性起源のすべての病歴を有するものを包含する。
【0055】
本明細書において、「急性冠動脈症候群事象」または「ACS事象」とは、推定または証明された閉塞性冠動脈疾患による、予定外の入院の72時間以内の安静時または極めて軽度の労作時に生じる心筋虚血の不安定な症状を指す。特定の実施形態では、ACS事象は、以下の基準のうち少なくとも1つが満たされることを必要とする:急性心筋梗塞と一致する心臓バイオマーカーの上昇または局所灌流画像化または壁運動異常からの閉塞性冠動脈疾患のさらなるエビデンス、血管造影による心外膜冠動脈狭窄≧70%または事象と関連する冠血行再建の必要性を伴う、虚血もしくは梗塞と一致する安静時ECG変化。
【0056】
本明細書において、「主要有害心血管事象」または「MACE」とは、冠動脈心疾患からの死(CHD死)、非致死性心筋梗塞、入院を必要とする不安定狭心症および致死性または非致死性虚血性脳卒中のうち1つまたはそれ以上を指す。
【0057】
本明細書において、「死亡」、「全死因死亡」および「全死因死」は、同義的に使用され、任意の理由によって引き起こされる死を指す。
【0058】
本明細書において、「冠動脈心疾患事象」または「CHD事象」とは、冠動脈心疾患、非致死性心筋梗塞、入院を必要とする不安定狭心症または虚血駆動性冠血行再建術からの死を指す。用語「主要冠動脈心疾患事象」とは、冠動脈心疾患または非致死性心筋梗塞からの死を指す。
【0059】
用語「虚血駆動性冠血行再建」とは、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)または冠動脈バイパス術(CABG)を指す。本明細書において開示される臨床研究については、以前のPCI部位で再狭窄のために単独で実施される冠血行再建術は、この定義から排除された。特定の実施形態では、虚血駆動性冠血行再建は、以下のうち1つによって駆動されなければならない:a)急性虚血、b)新規もしくは進行性の症状(狭心症または同等のもの)または3)新規もしくは進行性の機能検査異常(例えば、ストレス検査または画像化)。
【0060】
本明細書において、「冠動脈心疾患死」、「CHD死」および「冠動脈心疾患による死」は、同義的に使用され、急性心筋梗塞(MI)に続発する死を含む根底にある冠動脈心疾患と明確な関係がある心血管死、突然死、心不全、症状のために実施された冠血行再建術の合併症、冠動脈疾患の進行または死因が手順と明確に関連する新規心筋虚血、観察されなかったおよび予測されなかった死ならびに非血管性原因が原因であると明確にできないその他の死のサブセットを指す。
【0061】
本明細書において、用語「心血管事象」または「CV事象」とは、非致死性冠動脈心疾患事象、任意の心血管死および任意の非致死性虚血性脳卒中を指す。例示的CV事象として、それだけには限らないが、心筋梗塞、卒中、入院を必要とする不安定狭心症、入院を必要とする心不全および虚血駆動性冠血行再建術が挙げられる。
【0062】
本明細書において、用語「心血管死」、「CV死」および「心血管死亡」は、同義的に使用され、急性心筋梗塞を患う死、心臓突然死、心不全による死、卒中による死およびその他の心血管原因による死を指す。特定の実施形態では、CV死は、CHD死である。その他の実施形態では、CV死は、心不全または心原性ショック、卒中、虚血性心血管原因または虚血以外の心血管原因からなる群から選択される。
【0063】
本明細書において、用語「非致死性心血管事象」とは、死をもたらさない任意のCV事象を指す。特定の実施形態では、非致死性CV事象は、最初の(例えば、第1の)CV事象にその後の(例えば、第2、第3または第4の)事象が続く、時間的に継続的に起こり得る。
【0064】
本明細書において、「非心血管死」および「非CV死」は、同義的に使用され、心血管死であると考えられない任意の死を指す。非心血管死の例として、それだけには限らないが、肺の感染、肺の悪性腫瘍、胃腸の/肝胆道の/膵臓の感染、胃腸の/肝胆道の/膵臓の悪性腫瘍、出血、卒中/出血ではない神経学的プロセス、自殺、非心血管手順または手術、事故もしくは外傷、腎臓の感染、腎臓の悪性腫瘍、その他の非心血管感染およびその他の非心血管悪性腫瘍が挙げられる。
【0065】
本明細書において、「非致死性心筋梗塞」は、心筋梗塞のACC/AHA/ESCユニバーサル定義に従って定義され、下位分類される(参照によってその全文を本明細書に組み入れる、Thygesenら、2012年.Third universal definition of myocardial infraction. Journal of the American College of Cardiology. 60巻(16号):1581~98頁を参照のこと)。本明細書において開示される臨床研究については、無症候性心筋梗塞は、主要エンドポイントの一部と考えられなかった。
【0066】
本明細書において、「1型心筋梗塞」とは、結果として生じる冠動脈の1つまたはそれ以上における腔内血栓を伴い、心筋血流の減少または遠位血小板塞栓と後に続く筋細胞壊死につながる、動脈硬化性プラーク破裂、潰瘍、亀裂、びらんまたは解離と関連する事象と関連する自然発生的心筋梗塞を指す(Thygesenら、2012年. JACC 60巻(16号):1581~98頁を参照のこと)。いくつかの実施形態では、1型心筋梗塞は、99パーセンタイル上限基準値(URL)を超える少なくとも1つの値を有する心臓トロポニン(cTn)の上昇および/または低下の検出および以下:急性心筋虚血の症状、新規虚血性ECG変化、病的Q波の発生、虚血性病因論と一致するパターンでの生存心筋の新規喪失もしくは新規局所壁運動異常の画像化エビデンスまたは冠内画像化を含む血管造影によるもしくは剖検による冠動脈血栓の同定のうち少なくとも1つを有するとして定義される。
【0067】
本明細書において、「2型心筋梗塞」とは、冠動脈疾患以外の状態が心筋酸素供給および/または需要間の不均衡の一因となる、壊死を伴う心筋傷害の症例を指す(Thygesenら、2012年. JACC 60巻(16号):1581~98頁を参照のこと)。いくつかの実施形態では、2型心筋梗塞は、99パーセンタイルURLを超える少なくとも1つの値を有するcTnの上昇および/または低下の検出および以下:急性心筋虚血の症状、新規虚血性ECG変化、病的Q波の発生または虚血性病因論と一致するパターンでの生存心筋の新規喪失もしくは新規局所壁運動異常の画像化エビデンスのうち少なくとも1つを必要とする、冠動脈血栓症と無関係の心筋酸素供給および需要間の不均衡のエビデンスとして定義される。
【0068】
本明細書において、「3型心筋梗塞」とは、心臓死に苦しむ、推定新規虚血性心電図(ECG)変化または新規左脚ブロックを伴うが、入手可能なバイオマーカー値を有さない心筋虚血を示唆する症状を有する患者を指す(Thygesenら、2012年 JACC 60巻(16号):1581~98頁を参照のこと)。
【0069】
本明細書において、「4a型心筋梗塞」とは、経皮的冠動脈インターベンションと関連する心筋梗塞を指す。本明細書において、「4b型心筋梗塞」とは、ステント血栓症と関連する心筋梗塞を指す(Thygesenら、2012年 JACC 60巻(16号):1581~98頁を参照のこと)。
【0070】
本明細書において、「5型心筋梗塞」とは、冠動脈バイパス術(CABG)と関連する心筋梗塞を指す(Thygesenら、2012年 JACC 60巻(16号):1581~98頁を参照のこと)。
【0071】
本明細書において、「冠動脈バイパス術(CABG)」とは、動脈硬化性プラークによって部分的または完全に閉塞している冠動脈をバイパスするためのグラフトとして自己動脈または静脈が使用される手順を指す(参照によってその全文を本明細書に組み入れる、Alexander & Smith、2016年、Coronary-Artery Bypass Grafting.NEJM 374巻:1954~64頁を参照のこと)。
【0072】
本明細書において、用語「入院を必要とする不安定狭心症」および「不安定狭心症のための入院」は、同義的に使用され、48時間以内の速度を加速する心筋虚血の症状および/または安静時胸部不快感≧20分を有し、さらに以下:a)2つの連続リードにおけるST低下>0.5mm、顕著なR波もしくはR/S>1を有する2つの連続リードにおけるT波逆転>1mm、>2の連続リードにおける男性におけるV2もしくはV3におけるST上昇>0.2mV、女性におけるV2もしくはV3における>0.15mVまたはその他のリードにおける>0.1mVまたはLBBBによって定義される新規もしくは推定新規虚血性ECG変化およびb)冠血行再建術または少なくとも1つの心外膜狭窄の必要性≧70%による冠動脈閉塞の確たる現代のエビデンスの両方を必要とする、病院または救急部門への入院を指す。本明細書において開示される臨床治験については、以前のPCI部位での再狭窄のみによる冠血行再建術または狭窄は排除された。
【0073】
本明細書において、「虚血性脳卒中」とは、1)以下:a)規定の血管分布における急性、局所脳の、脊髄のもしくは網膜の虚血性傷害の、病理学的画像化もしくはその他の客観的エビデンスまたはb)24時間もしくは死まで持続する急性の脳の、脊髄のもしくは網膜の虚血性傷害の症状のうち少なくとも1つによって定義され、その他の病因論が排除される、梗塞によって引き起こされる局所脳の、脊髄のまたは網膜の機能不全の急性エピソード、2)出血性梗塞、ただし大脳内もしくはくも膜下出血によって引き起こされる卒中ではない、または3)他に下位分類されていない卒中を指す。
【0074】
本明細書において、「糖尿病」および「糖尿病性」とは、身体が、十分なインスリンを産生しないために、または細胞が、産生されるインスリンに応答しないために、人が高い血糖レベルを有する代謝疾患の群を指す。糖尿病の最も一般的な型として、(1)身体がインスリン産生できない1型糖尿病、(2)経時的なインスリン欠乏の増大と組み合わさった、身体がインスリンを適宜使用できない2型糖尿病および(3)女性がその妊娠のために糖尿病を発生する妊娠糖尿病がある。特定の実施形態では、糖尿病は、糖尿病1型または2型の病歴、ヘモグロビンA1cレベル≧6.5%、空腹時血清または血漿グルコース(FPG)≧126mg/dLの2つの値または糖尿病投薬の使用として定義される。特定の実施形態では、糖尿病は、米国糖尿病協会によって推奨される標準に従って診断される(参照によってその全文を本明細書に組み入れる、Standards of Medical Care in Diabetes-2012年. Diabetes Care. 2012年1月;35巻 付録1:S11~63を参照のこと)。特定の実施形態では、糖尿病は、高血糖症の古典的な症状または高血糖性発作を有する患者における、126mg/dL以上のFPG、200mg/dL以上の75グラム経口グルコース許容量耐性試験(OGTT)における2時間値、6.5%以上のヘモグロビンA1cレベルまたは200mg/dL以上のランダム血漿グルコースレベルを有すると診断される。本明細書において、「前糖尿病」とは、ベースラインでA1c≧5.7%および<6.5%または2つのFPG値>100mg/dL、ただし、1つ以下は≧126mg/dLを指す。本明細書において、「正常血糖」とは、糖尿病または前糖尿病のこれらの列挙されたパラメータのうちいずれも指さない。本明細書において、「新規発症糖尿病」とは、以下:A1cの少なくとも2つの値≧6.5%、少なくとも2つのFPG測定値≧126mg/dL、研究者によって報告される糖尿病関連有害事象または糖尿病投薬の開始のうちいずれかを指す。
【0075】
本明細書において、「末梢の動脈疾患」または「PAD」は、大動脈、その内臓動脈枝および下肢の動脈の正常構造および機能を変更するアテローム性動脈硬化症および血栓塞栓性病態生理学プロセスによって主に引き起こされる血管性疾患を包含する。PADとは、大動脈およびその分枝動脈の狭窄性、閉塞性および動脈瘤性疾患を表し、冠動脈を含まないことを指す(参照によってその全文を本明細書に組み入れる、Hirschら、2006年、ACC/AHA 2005 practice guidelines for the management of patients with peripheral artery disease, Circulation.113巻:1475~1547頁を参照のこと)。
【0076】
本明細書において「脳血管疾患」または「CeVD」とは、脳の一範囲が、虚血または出血によって一時的または永久に影響を受ける、および脳血管の1つまたはそれ以上が、病理学的プロセスに関与しているすべての障害の病歴を指す。CeVDとして、それだけには限らないが、卒中、頸動脈狭窄、椎骨狭窄および頭蓋内狭窄、動脈瘤および血管奇形が挙げられる(参照によってその全文を本明細書に組み入れる、Advisory Council for the National Institute of Neurological and Communicative Disorders and Stroke, 1975, A Classification and Outline of Cerebrovascular Diseases II, Stroke.6巻:564~616頁を参照のこと)。
【0077】
本明細書において「多血管疾患」、「PoVD」または「PVD」とは、アテローム動脈硬化性関与を有する複数の動脈テリトリーまたは2つもしくはそれ以上の血管テリトリー(床)における既存の疾患を指す(参照によってその全文を本明細書に組み入れる、Bhattら、2009年. Eur. Heart J. 30巻:1195~1202頁)。特定の実施形態では、多血管疾患を有する患者は、同時発生的末梢動脈疾患(PAD)、脳血管疾患(CeVD)または両方を有する冠動脈疾患を有する。
【0078】
本明細書において、「高強度スタチン療法」および「高用量アトルバスタチン/ロスバスタチン」は、同義的に使用され、毎日40~80mgのアトルバスタチンまたは毎日20~40mgのロスバスタチンの投与を指す。
【0079】
本明細書において、「最大許容スタチン療法」または「スタチン療法の最大許容用量」は、同義的に使用され、患者において容認できない有害副作用を引き起こさずに個々の患者に投与できるスタチンの最高用量であるスタチンの1日用量の投与を含む治療レジメンを意味する。最大許容スタチン療法は、それだけには限らないが、高強度スタチン療法を含む。
【0080】
本明細書において、患者が、毎日のスタチン治療レジメンで開始または増大し、スタチン療法が中断された場合に停止した1つまたはそれ以上の有害反応を経験する病歴を有する場合に、患者は「スタチン不忍容性」または「スタチンに対して忍容性がない」と見なされる。特定の実施形態では、有害反応は、骨格筋疼痛、痛み、脱力または筋痙攣(例えば、筋肉痛、筋疾患、横紋筋融解など)のような、事実上筋骨格のものである。このような有害反応は、運動または労作後に強化されることが多い。スタチン関連有害反応としてまた、スタチン投与と相関する肝臓の、胃腸のおよび精神の症状が挙げられる。特定の実施形態によれば、例えば、以下:(1)少なくとも2つの異なる別個の毎日のスタチン治療レジメンと関連する骨格筋関連症状の病歴を有する、(2)1つまたはそれ以上のスタチンの最低承認1日用量に対して1つまたはそれ以上のスタチン関連有害反応を示す、(3)最低承認錠剤サイズの7倍の累積毎週スタチン用量を許容できない、(4)低用量スタチン療法を許容できるが、用量が増大される(例えば、標的とされるLDL-Cレベルを達成するために)と症状を発生する、または(5)スタチンが患者にとって禁忌となるのうちいずれかが患者に当てはまる場合に、患者は「スタチン不忍容性」または「スタチンに対して忍容性がない」と思われる。
【0081】
本明細書において、高コレステロール血症に関して「適切に制御されない」とは、スタチンの安定1日用量を含む治療レジメンで少なくとも4週間後に、患者の血清低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)濃度、総コレステロール濃度および/またはトリグリセリド濃度が、認識される医学的に許容されるレベルに低減されない(患者の冠動脈心疾患の相対リスクを考慮して)ことを意味する。例えば、スタチンによって適切に制御されない高コレステロール血症を有する患者として、患者が少なくとも4週間の安定毎日スタチンレジメンにあった後に、約70mg/dL、80mg/dL、90mg/dL、100mg/dL、110mg/dL、120mg/dL、130mg/dL、140mg/dL以上またはそれより多い血清LDL-C濃度(患者の根底にある心疾患のリスクに応じて)を有する患者(単数または複数)が挙げられる。
【0082】
本明細書において、アテローム生成性リポタンパク質に関して表現「適切に制御されない」とは、スタチンの安定1日用量を含む治療レジメンで少なくとも4週間後に、患者の血清低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)濃度、非高密度リポタンパク質コレステロールおよび/またはアポリポタンパク質B濃度が、認識される医学的に許容されるレベルに低減されない(患者の冠動脈心疾患の相対リスクを考慮して)ことを意味する。例えば、スタチンによって適切に制御されないアテローム生成性リポタンパク質のレベルが上昇した患者として、患者が少なくとも4週間の安定毎日スタチンレジメンにあった後に、約70mg/dL、80mg/dL、90mg/dL、100mg/dL、110mg/dL、120mg/dL、130mg/dL、140mg/dL以上またはそれより多い血清LDL-C濃度(患者の根底にある心疾患のリスクに応じて)、約100mg/dL以上の非高密度リポタンパク質コレステロール濃度または約80mg/dL以上のアポリポタンパク質B濃度を有する患者(単数または複数)が挙げられる。
【0083】
最大許容用量スタチン療法によって適切に制御されない高コレステロール血症およびその他のアテローム生成性リポタンパク質
本発明は、概して、スタチンによって適切に制御されない高コレステロール血症、すなわち、毎日のスタチンの最大許容用量を含む治療レジメンによって適切に制御されない高コレステロール血症を有する高心血管リスク患者を処置するための方法および組成物に関する。
【0084】
特定の実施形態によれば、本発明の方法によって処置可能である高心血管リスク患者は、少なくとも4週間、5週間、6週間またはそれより長く、スタチンの安定1日用量を服用しているにもかかわらず(その他の脂質修飾療法ととともに、またはともなわずに)高コレステロール血症(例えば、70mg/dL以上の血清LDL-C濃度)を有する。特定の実施形態では、高心血管リスク患者の高コレステロール血症は、最大許容用量スタチン療法によって不適切に制御される。
【0085】
本発明はまた、概して、スタチンによって適切に制御されないアテローム生成性リポタンパク質のレベルが上昇した、すなわち、毎日のスタチンの最大許容用量を含む治療レジメンによって適切に制御されないアテローム生成性リポタンパク質のレベルが上昇した高心血管リスク患者を処置するための方法および組成物に関する。
【0086】
特定の実施形態によれば、本発明の方法によって処置可能である高心血管リスク患者は、少なくとも4週間、5週間、6週間またはそれより長く、スタチンの安定1日用量を服用しているにもかかわらず(その他の脂質修飾療法ととともに、またはともなわずに)、アテローム生成性リポタンパク質のレベルが上昇している(例えば、70mg/dL以上の血清LDL-C濃度)。特定の実施形態では、高心血管リスク患者のアテローム生成性リポタンパク質のレベルの上昇は、スタチン療法の最大許容用量によって不適切に制御される。
【0087】
本発明はまた、スタチン療法の最大許容用量によって適切に制御されない、高コレステロール血症を有し、アテローム生成性リポタンパク質のレベルの上昇した高心血管リスク患者を処置する方法を含む。スタチン療法の最大許容用量は、セリバスタチン、ピタバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチンおよびプラバスタチンのようなスタチンの毎日投与を含む。
【0088】
患者選択
本発明は、毎日最大許容スタチン療法によって適切に制御されない、高コレステロール血症を有し、アテローム生成性リポタンパク質のレベルの上昇した高心血管リスク患者を処置するのに有用な方法および組成物を含む。
【0089】
本発明の特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、食事の補助剤として投与される。
【0090】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、最近の急性冠動脈症候群(ACS)を有する患者における心血管事象(例えば、ACS事象の過去1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18ヶ月以内のACS事象)の低減のために投与される。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、最近のACSを有する患者において心血管リスクの低減のために投与される。特定の実施形態では、ACS事象は、心筋梗塞である。特定の実施形態では、ACS事象は、不安定狭心症である。
【0091】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、スタチンと組み合わせて、またはスタチン不忍容性である患者においてを含めて、単剤療法としてのいずれかで使用される。
【0092】
本発明の方法によって処置可能である高心血管リスク患者として、ACSのために入院している患者が挙げられる。
【0093】
特定の実施形態では、高心血管リスク患者は、アトルバスタチン40~80mg毎日、ロスバスタチン20~40mg毎日またはこれらの薬剤の一方の最大許容用量を用いる定常状態(少なくとも2週)処置にもかかわらず、実証されたアテローム生成性リポタンパク質の不適切制御に基づいて選択できる。いくつかの実施形態では、患者は、高強度または最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず、70、80、90、100、110、120、130または140mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。いくつかの実施形態では、患者は、高強度または最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず、100mg/dL以上の非HDL-Cレベルを有する。いくつかの実施形態では、患者は、高強度または最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず、80mg/dL以上のアポリポタンパク質Bレベルを有する。いくつかの実施形態では、患者は、高強度または最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず、自動化ラテックス強化比濁分析アッセイによって測定される、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55または60mg/dL以上のLp(a)レベルを有する。一実施形態では、患者は、高強度または最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず、自動化ラテックス強化比濁分析アッセイによって測定される、21.2mg/dL以上のLp(a)レベルを有する。
【0094】
特定の実施形態によれば、高心血管リスク患者は、年齢(例えば、40、45、50、55、60、65、70、75または80歳よりも高齢)、人種、国籍、性別(男性または女性)、運動習慣(例えば、通常の運動者、非運動者)、その他の既存の医学的状態(例えば、糖尿病、高血圧症など)および現在の投薬状態(例えば、ベータブロッカー、ナイアシン、エゼチミブ、フィブラート、オメガ-3脂肪酸、胆汁酸樹脂などを現在服用している)からなる群から選択される1つまたはそれ以上のさらなるリスク因子を有することに基づいて選択できる。特定の実施形態では、高心血管リスク患者は、単独で、または最近のACSおよび/またはアテローム生成性リポタンパク質の不適切制御に基づく前記の選択基準と組み合わせて、既存の糖尿病(例えば、I型糖尿病またはII型糖尿病)に基づいて選択される。
【0095】
特定の実施形態では、高心血管リスク患者は、臨床アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を有する。臨床ASCVDは、ACS、MI、安定もしくは不安定狭心症または冠動脈もしくはその他の動脈血行再建、卒中、TIAまたは大動脈瘤を含むPAD、アテローム動脈硬化性起源のすべての病歴を有するものを包含する。
【0096】
本発明によれば、高心血管リスク患者は、前記の選択基準または治療特徴のうち1つまたはそれ以上の組合せに基づいて選択できる。高心血管リスクまたは極めて高い心血管リスク患者も、例えば、米国心臓協会(AHA)および米国心臓学会議(ACC)臨床実践ガイドラインを含む臨床ガイドラインに基づいて選択できる。例えば、その各々が、その全文で参照によって本明細書に組み入れる、Stoneら2013年ACC/AHA Guideline on the Treatment of Blood Cholesterol to Reduce Atherosclerotic Cardiovascular Risk in Adults:A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines. Circulation(2014年)129:S1-45. Grundy SMら 2018年AHA/ACC/AACVPR/AAPA/ABC/ACPM/ADA/AGS/APhA/ASPC/NLA/PCNA Guideline on the Management of Blood Cholesterol, Journal of the American College of Cardiology (2018年)(2018年11月10日印刷中-オンラインで入手可能)を参照のこと。
【0097】
最大許容用量スタチン療法への追加療法としてのPCSK9阻害剤の投与
PCKS9と特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片のようなPCSK9阻害剤を用いる、高心血管リスク患者の処置の方法を含む処置の方法であって、ここで、患者は、PCSK9阻害剤の不在下で、スタチン療法の最大許容または高強度用量によって適切に制御されない、高コレステロール血症および/またはその他のアテローム生成性リポタンパク質のレベルの上昇を有する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、PCSK9阻害剤は、患者の既存の毎日の治療用スチンレジメンへの追加のような、患者の既存の脂質修飾処置(LMT)への追加として(適当な場合)投与できる。
【0098】
例えば、方法は、PCSK9阻害剤が、PCSK9阻害剤を受け取る前に患者が行っていた同一安定毎日治療用スタチンレジメン(すなわち、スタチンの同一投薬量)への追加療法として投与される追加の治療レジメンを含む。その他の実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9阻害剤を受け取る前に患者が行っていたスタチンの用量よりも多い、またはそれよりも少ない量のスタチンを含む治療用スタチンレジメンへの追加療法として投与される。例えば、特定の投薬頻度および量で投与されるPCSK9阻害剤を含む治療レジメンを開始した後に、患者に投与または処方されるスタチンの1日用量は、患者がPCSK9阻害剤治療レジメンを開始する前に摂取していた1日スタチン用量と比較して、患者の治療必要性に応じて、(a)同一のまま、(b)増大するまたは(c)減少する場合がある(例えば、上方滴定または下方滴定)。
【0099】
治療効能
本発明の方法は、LDL-C、ApoB100、非HDL-C、総コレステロール、VLDL-C、トリグリセリド、Lp(a)およびレムナントコレステロールからなる群から選択される1つまたはそれ以上の脂質成分の血清レベルの低減をもたらす。例えば、本発明の特定の実施形態によれば、PCSK9阻害剤を含む医薬組成物の、スタチン療法の安定毎日最大許容用量によって適切に制御されない、高コレステロール血症またはその他のアテローム生成性リポタンパク質のレベルの上昇を有する高心血管リスク患者への投与、(例えば、スタチン療法の高心血管リスク患者の最大許容用量に加えたPCSK9阻害剤の投与)は、少なくとも約25%、約30%、約40%、約50%、約60%の、もしくはそれより大きい血清低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)のベースラインからの平均パーセント低減、少なくとも約25%、約30%、約40%、約50%、約60%の、もしくはそれより大きいApoB100のベースラインからの平均パーセント低減、少なくとも約25%、約30%、約40%、約50%、約60%の、もしくはそれより大きい非HDL-Cのベースラインからの平均パーセント低減、少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%の、もしくはそれより大きい総コレステロールのベースラインからの平均パーセント低減、少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%の、もしくはそれより大きいVLDL-Cのベースラインからの平均パーセント低減、少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%の、もしくはそれより大きいトリグリセリドのベースラインからの平均パーセント低減および/または少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%もしくはそれより大きいLp(a)のベースラインからの平均パーセント低減(例えば、自動化ラテックス強化比濁分析アッセイによって測定される)をもたらすであろう。
【0100】
特定の実施形態では、本発明の方法はまた、心血管リスクを低減する。特定の実施形態では、本発明の方法は、心血管リスクを低減するために使用される。心血管リスクの例示的種類として、それだけには限らないが、冠動脈心疾患(CHD)死、非致死性心筋梗塞、虚血性脳卒中(致死性または非致死性)または入院を必要とする不安定狭心症の出現のリスクもしくは速度、任意のCHD事象のリスク、主要なCHD事象のリスク、任意の心血管事象のリスク、死亡(すなわち全死因死)のリスク、非致死性心筋梗塞または非致死性虚血性脳卒中、CHD死のリスク、心血管死のリスク、死亡(すなわち全死因死)のリスク、非致死性心筋梗塞のリスク、致死性もしくは非致死性虚血性脳卒中のリスク、入院を必要とする不安定狭心症のリスク、虚血駆動性冠血行再建術のリスク、入院を必要とするうっ血性心不全のリスク、非致死性心血管事象のリスクおよび非致死性心筋梗塞、卒中もしくは不安定狭心症のリスクが挙げられる。
【0101】
一態様では、本開示は、高心血管リスク患者の死亡のリスクの低減において使用するためのPCSK9阻害剤を提供する。特定の実施形態では、患者は、このような療法の必要性に基づいて選択される。特定の実施形態では、本明細書において開示される方法に従う高心血管リスク患者へのPCSK9阻害剤の投与は、患者の死亡のリスクを低減する。特定の実施形態では、患者の死亡のリスクは、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%低減される。一実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有し、患者の死亡のリスクは、約15%低減される。別の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず100mg/dL以上のLDL-Cレベルを有し、リスクは、約29%低減される。特定の実施形態では、患者の生存時間は、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%延長される。
【0102】
特定の実施形態では、本明細書において開示される方法に従ってさらなる疾患を患う高心血管リスク患者へのPCSK9阻害剤の投与は、患者の死亡のリスクを低減する。いくつかの実施形態では、患者は、末梢動脈疾患(PAD)を有し、患者の死亡のリスクは、PADを有する患者において約29%低減される。特定の実施形態では、死亡の絶対リスクは、PADを有する患者において約2.8%低減される。その他の実施形態では、高心血管リスク患者は、脳血管疾患(CeVD)を有する。特定の実施形態では、死亡のリスクは、CeVDを有する患者において約42%低減される。特定の実施形態では、死亡の絶対リスクは、CeVDを有する患者において約4.9%低減される。特定の実施形態では、死亡のリスクは、開示されるPCSK9阻害剤を投与されるPADおよびCeVDの両方を有する患者において約80%低減される。特定の実施形態では、絶対リスクは、PADおよびCeVDの両方を有する患者において約16.2%低減される。いくつかの実施形態では、患者は、以前に冠動脈バイパス術(CABG)を受けていた。特定の実施形態では、高心血管リスク患者は、CABGの前に最初の急性冠動脈症候群(ACS)事象を起こしていた。特定の実施形態では、死亡のリスクは、CABGの前に最初のACS事象を起こしている患者において約15%低減される。特定の実施形態では、死亡の絶対リスクは、CABGの前に最初のACS事象を起こしている患者において約0.5%低減される。特定の実施形態では、高心血管リスク患者は、CABG後にACS事象を起こしていた。特定の実施形態では、死亡のリスクは、CABG後にACS事象を起こしている患者において約33%低減される。特定の実施形態では、死亡の絶対リスクは、CABG後にACS事象を起こしている患者において約3.6%低減される。
【0103】
別の態様では、本開示は、高心血管リスク患者の主要有害心血管事象(MACE)のリスクの低減において使用するためのPCSK9阻害剤を提供する。特定の実施形態では、患者は、このような療法の必要性に基づいて選択される。特定の実施形態では、本明細書において開示される方法に従う高心血管リスク患者へのPCSK9阻害剤の投与は、患者においてMACEのリスクを低減する。特定の実施形態では、虚血性脳卒中は、致死性虚血性脳卒中および非致死性虚血性脳卒中を含む。特定の実施形態では、MACEのリスクは、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%低減される。一実施形態では、患者は、スタチン療法の最大許容用量による処置にもかかわらず、70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有し、MACEのリスクは約15%低減される。別の実施形態では、患者は、スタチン療法の最大許容用量による処置にもかかわらず100mg/dL以上のLDL-Cレベルを有し、MACEのリスクは、約24%低減される。別の実施形態では、患者は、スタチン療法を現在受けておらず、MACEのリスクは、約35%低減される。別の実施形態では、患者は、糖尿病を有し、MACEのリスクは、約16%低減され、および/または絶対リスクは、約2.3%低減される。一実施形態では、患者は、高強度またはスタチン療法の最大許容用量による処置にもかかわらず、自動化ラテックス強化比濁分析アッセイによって測定される、21.2mg/dL以上のLp(a)レベルを有する。特定の実施形態では、患者におけるCHD死、非致死性心筋梗塞、入院を必要とする不安定狭心症または虚血性脳卒中の最初の出現までの時間が、例えば、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%延長される。
【0104】
特定の実施形態では、本明細書において開示される方法に従うさらなる疾患を患う高心血管リスク患者へのPCSK9阻害剤の投与は、患者においてMACEのリスクを低減する。いくつかの実施形態では、患者は、末梢動脈疾患(PAD)を有し、MACEのリスクは、PADを有する患者において約17%低減される。特定の実施形態では、MACEの絶対リスクは、PADを有する患者において約3.4%低減される。いくつかの実施形態では、患者は、脳血管疾患(CeVD)を有し、MACEのリスクは、CeVDを有する患者において約19%低減される。特定の実施形態では、MACEの絶対リスクは、CeVDを有する患者において約4.5%低減される。特定の実施形態では、MACEのリスクは、PADおよびCeVDの両方を有する患者において約46%低減される。特定の実施形態では、MACEの絶対リスクは、PADおよびCeVDの両方を有する患者において約13%低減される。いくつかの実施形態では、患者は、以前に冠動脈バイパス術(CABG)を受けていた。特定の実施形態では、高心血管リスク患者は、CABGの前に最初の急性冠動脈症候群(ACS)事象を起こしていた。特定の実施形態では、MACEのリスクは、CABGの前に最初のACS事象を起こしている患者において約15%低減される。特定の実施形態では、MACEの絶対リスクは、CABGの前に最初のACS事象を起こしている患者において約0.9%低減される。特定の実施形態では、高心血管リスク患者は、CABG後にACS事象を起こしていた。特定の実施形態では、MACEのリスクは、CABG後にACS事象を起こしている患者において約23%低減される。特定の実施形態では、MACEの絶対リスクは、CABG後にACS事象を起こしている患者において約6.4%低減される。
【0105】
別の態様では、本開示は、高心血管リスク患者の虚血性脳卒中のリスク(致死性または非致死性)の低減において使用するためのPCSK9阻害剤を提供する。特定の実施形態では、患者は、このような療法の必要性に基づいて選択される。特定の実施形態では、本明細書において開示される方法に従う高心血管リスク患者へのPCSK9阻害剤の投与は、患者において虚血性脳卒中のリスク(致死性または非致死性)を低減する。特定の実施形態では、リスクは、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%低減される。一実施形態では、患者は、スタチン療法の最大許容用量による処置にもかかわらず、70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有し、リスクは、約27%低減される。別の実施形態では、患者は、スタチン療法の最大許容用量による処置にもかかわらず、100mg/dL以上のLDL-Cレベルを有し、リスクは、約40%低減される。特定の実施形態では、患者における虚血性脳卒中の最初の出現までの時間が、例えば、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%延長される。特定の実施形態では、虚血性脳卒中は、致死性である。特定の実施形態では、虚血性脳卒中は、非致死性である。
【0106】
別の態様では、本開示は、高心血管リスク患者の入院を必要とする不安定狭心症のリスクの低減において使用するためのPCSK9阻害剤を提供する。特定の実施形態では、患者は、このような療法の必要性に基づいて選択される。特定の実施形態では、本明細書において開示される方法に従う高心血管リスク患者へのPCSK9阻害剤の投与は、患者において入院を必要とする不安定狭心症のリスクを低減する。特定の実施形態では、リスクは、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%低減される。一実施形態では、患者は、スタチン療法の最大許容用量による処置にもかかわらず、70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有し、リスクは、約39%低減される。別の実施形態では、患者は、スタチン療法の最大許容用量による処置にもかかわらず、100mg/dL以上のLDL-Cレベルを有し、リスクは、約52%低減される。特定の実施形態では、患者における入院を必要とする不安定狭心症の最初の出現までの時間が、例えば、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%延長される。
【0107】
別の態様では、本開示は、高心血管リスク患者のCHD死のリスクの低減において使用するためのPCSK9阻害剤を提供する。特定の実施形態では、患者は、このような療法の必要性に基づいて選択される。特定の実施形態では、本明細書において開示される方法に従う高心血管リスク患者へのPCSK9阻害剤の投与は、患者においてCHD死のリスクを低減する。特定の実施形態では、リスクは、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%低減される。別の実施形態では、患者は、スタチン療法の最大許容用量による処置にもかかわらず、100mg/dL以上のLDL-Cレベルを有し、リスクは、約28%低減される。特定の実施形態では、患者におけるCHD死の最初の出現までの時間が、例えば、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%延長される。
【0108】
別の態様では、本開示は、高心血管リスク患者の心血管死のリスクの低減において使用するためのPCSK9阻害剤を提供する。特定の実施形態では、患者は、このような療法の必要性に基づいて選択される。特定の実施形態では、本明細書において開示される方法に従う高心血管リスク患者へのPCSK9阻害剤の投与は、患者において心血管死のリスクを低減する。本明細書において、「心血管死」、「CV死」および「心血管死亡」は、同義的に使用される。特定の実施形態では、リスクは、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%低減される。別の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず、100mg/dL以上のLDL-Cレベルを有し、リスクは、約31%低減される。特定の実施形態では、患者における心血管死の最初の出現までの時間が、例えば、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%延長される。
【0109】
別の態様では、本開示は、高心血管リスク患者のCHD事象のリスクの低減において使用するためのPCSK9阻害剤を提供する。特定の実施形態では、患者は、このような療法の必要性に基づいて選択される。特定の実施形態では、本明細書において開示される方法に従う高心血管リスク患者へのPCSK9阻害剤の投与は、患者におけるCHD事象のリスクを低減する。特定の実施形態では、CHD事象は、CHD死、非致死性心筋梗塞、入院を必要とする不安定狭心症または虚血駆動性冠血行再建術として定義される。特定の実施形態では、リスクは、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%低減される。一実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず、70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有し、リスクは、約12%低減される。特定の実施形態では、患者におけるCHD事象の最初の出現までの時間が、例えば、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%延長される。
【0110】
別の態様では、本開示は、高心血管リスク患者の主要なCHD事象のリスクの低減において使用するためのPCSK9阻害剤を提供する。特定の実施形態では、患者は、このような療法の必要性に基づいて選択される。特定の実施形態では、本明細書において開示される方法に従う高心血管リスク患者へのPCSK9阻害剤の投与は、患者において主要なCHD事象のリスクを低減する。特定の実施形態では、主要なCHD事象は、CHD死および非致死性心筋梗塞として定義される。特定の実施形態では、リスクは、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%低減される。一実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず、70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有し、リスクは、約12%低減される。特定の実施形態では、患者における主要なCHD事象の最初の出現までの時間が、例えば、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%延長される。
【0111】
別の態様では、本開示は、高心血管リスク患者の心血管事象のリスクの低減において使用するためのPCSK9阻害剤を提供する。特定の実施形態では、患者は、このような療法の必要性に基づいて選択される。特定の実施形態では、本明細書において開示される方法に従う高心血管リスク患者へのPCSK9阻害剤の投与は、患者において心血管事象のリスクを低減する。特定の実施形態では、心血管事象は、非致死性CHD事象、心血管死および非致死性虚血性脳卒中として定義される。特定の実施形態では、心血管事象は、非致死性心筋梗塞、入院を必要とする不安定狭心症、虚血駆動性冠血行再建術、心血管死および非致死性虚血性脳卒中として定義される。特定の実施形態では、リスクは、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%低減される。一実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず、70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有し、リスクは、約13%低減される。特定の実施形態では、患者における心血管事象の最初の出現までの時間が、例えば、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%延長される。
【0112】
別の態様では、本開示は、高心血管リスク患者の死亡、非致死性心筋梗塞または非致死性虚血性脳卒中のリスクの低減において使用するためのPCSK9阻害剤を提供する。特定の実施形態では、患者は、このような療法の必要性に基づいて選択される。特定の実施形態では、本明細書において開示される方法に従う高心血管リスク患者へのPCSK9阻害剤の投与は、患者において死亡、非致死性心筋梗塞または非致死性虚血性脳卒中のリスクを低減する。特定の実施形態では、リスクは、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%低減される。一実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず、70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有し、リスクは、約14%低減される。特定の実施形態では、患者における全死因死、非致死性心筋梗塞または非致死性虚血性脳卒中の最初の出現までの時間が、例えば、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%延長される。
【0113】
別の態様では、本開示は、高心血管リスク患者の非致死性心筋梗塞のリスクの低減において使用するためのPCSK9阻害剤を提供する。特定の実施形態では、患者は、このような療法の必要性に基づいて選択される。特定の実施形態では、本明細書において開示される方法に従う高心血管リスク患者へのPCSK9阻害剤の投与は、患者において非致死性心筋梗塞のリスクを低減する。特定の実施形態では、リスクは、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%低減される。一実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず、70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有し、リスクは、約14%低減される。別の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず、100mg/dL以上のLDL-Cレベルを有し、リスクは、約21%低減される。特定の実施形態では、患者は、高強度または最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず自動化ラテックス強化比濁分析アッセイによって測定される、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55または60mg/dL以上のLp(a)レベルを有する。一実施形態では、患者は、高強度または最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず、自動化ラテックス強化比濁分析アッセイによって測定される、21.2mg/dL以上のLp(a)レベルを有する。特定の実施形態では、患者における非致死性心筋梗塞の最初の出現までの時間が、例えば、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%延長される。
【0114】
別の態様では、本開示は、高心血管リスク患者の虚血駆動性冠血行再建術の出現の速度の低減において使用するためのPCSK9阻害剤を提供する。特定の実施形態では、患者は、このような療法の必要性に基づいて選択される。特定の実施形態では、本明細書において開示される方法に従う高心血管リスク患者へのPCSK9阻害剤の投与は、患者における虚血駆動性冠血行再建術の出現の速度を低減する。特定の実施形態では、リスクは、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%低減される。一実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず、70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有し、リスクは、約12%低減される。特定の実施形態では、患者における虚血駆動性冠血行再建術の最初の出現までの時間が、例えば、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%延長される。
【0115】
別の態様では、本開示は、高心血管リスク患者の入院を必要とするうっ血性心不全のリスクの低減において使用するためのPCSK9阻害剤を提供する。特定の実施形態では、患者は、このような療法の必要性に基づいて選択される。特定の実施形態では、本明細書において開示される方法に従う高心血管リスク患者へのPCSK9阻害剤の投与は、患者における入院を必要とするうっ血性心不全のリスクを低減する。特定の実施形態では、リスクは、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%低減される。特定の実施形態では、患者における入院を必要とするうっ血性心不全の最初の出現までの時間が、例えば、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%延長される。
【0116】
別の態様では、本開示は、高心血管リスク患者の非致死性心血管事象のリスクの低減において使用するためのPCSK9阻害剤を提供する。特定の実施形態では、患者は、このような療法の必要性に基づいて選択される。特定の実施形態では、本明細書において開示される方法に従う高心血管リスク患者へのPCSK9阻害剤の投与は、患者において非致死性心血管事象のリスクを低減する。特定の実施形態では、リスクは、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%低減される。特定の実施形態では、患者における総非致死性心血管事象の出現の速度は、例えば、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%低減される。
【0117】
別の態様では、本開示は、高心血管リスク患者の非致死性心筋梗塞、卒中または不安定狭心症のリスクの低減において使用するためのPCSK9阻害剤を提供する。特定の実施形態では、患者は、このような療法の必要性に基づいて選択される。特定の実施形態では、本明細書において開示される方法に従う高心血管リスク患者へのPCSK9阻害剤の投与は、患者における非致死性心筋梗塞、卒中または不安定狭心症のリスクを低減する。特定の実施形態では、リスクは、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%低減される。特定の実施形態では、患者において総非致死性心筋梗塞、卒中または不安定狭心症の出現の速度が、例えば、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%低減される。
【0118】
別の態様では、本開示は、高心血管リスク患者における1型または2型心筋梗塞のリスクの低減において使用するためのPCSK9阻害剤を提供する。特定の実施形態では、患者は、このような療法の必要性に基づいて選択される。特定の実施形態では、本明細書において開示される方法に従う高心血管リスク患者へのPCSK9阻害剤の投与は、患者における1型または2型心筋梗塞のリスクを低減する。特定の実施形態では、1型心筋梗塞のリスクは、例えば、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%低減される。特定の実施形態では、1型心筋梗塞のリスクは、約13%低減される。特定の実施形態では、2型心筋梗塞のリスクは、例えば、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約65%、約70%、約75%または約80%低減される。特定の実施形態では、2型心筋梗塞のリスクは、約23%低減される。特定の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず、70mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。特定の実施形態では、患者は、最大許容スタチン療法による処置にもかかわらず、100mg/dL以上のLDL-Cレベルを有する。
【0119】
PCSK9阻害剤
方法は、患者に、PCSK9阻害剤を含む治療用組成物を投与することを含む。本明細書において、「PCSK9阻害剤」とは、ヒトPCSK9と結合する、またはヒトPCSK9と相互作用し、in vitroまたはin vivoでPCSK9の正常な生物学的機能を阻害する任意の薬剤である。PCSK9阻害剤のカテゴリーの限定されない例として、小分子PCSK9アンタゴニスト、PCSK9発現または活性の核酸ベースの阻害剤(例えば、siRNAまたはアンチセンス)、PCSK9と特異的に相互作用するペプチドベースの分子(例えば、ペプチボディ)、PCSK9と特異的に相互作用する受容体分子、LDL受容体のリガンド結合部分を含むタンパク質、PCSK9結合スキャフォールド分子(例えば、DARPins、HEAT反復タンパク質、ARM反復タンパク質、テトラトリコペプチド反復タンパク質、フィブロネクチンベースのスキャフォールド構築物および天然に存在する反復タンパク質をベースとするその他のスキャフォールドなど(例えば、各々、参照によってその全文で本明細書に組み入れる、BoersmaおよびPluckthun、2011年、Curr. Opin. Biotechnol.22巻:849~857頁およびそこで引用される参考文献を参照のこと)および抗PCSK9アプタマーまたはその一部が挙げられる。特定の実施形態によれば、本方法の状況で使用できるPCSK9阻害剤として、抗PCSK9抗体またはヒトPCSK9と特異的に結合する抗体の抗原結合断片がある。
【0120】
用語「ヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型」または「ヒトPCSK9」または「hPCSK9」とは、本明細書において、配列番号197に示される核酸配列および配列番号198のアミノ酸配列を有するPCSK9またはその生物学的に活性な断片を指す。
【0121】
用語「抗体」とは、本明細書において、4つのポリペプチド鎖、ジスルフィド結合によって相互接続された2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子ならびにその多量体(例えば、IgM)を指すものとする。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書において、HCVRまたはVと略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、C1、C2およびC3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてLCVRまたはVと略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(C1)を含む。VおよびV領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存されている領域が散在している、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらにわけることができる。各VおよびVは、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された3つのCDRおよび4つのFRから構成される。異なる実施形態では、抗PCSK9抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一である場合もあり、天然にもしくは人工的に修飾される場合もある。アミノ酸コンセンサス配列は、2つまたはそれ以上のCDRの比較解析に基づいて定義できる。
【0122】
用語「抗体」はまた、本明細書において、全抗体分子の抗原結合断片も含む。用語抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」などは、本明細書において、抗原と特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然に存在する、酵素的に得ることができる、合成性、または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合断片は、例えば、抗体可変および場合により定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を含む、タンパク質分解消化または組換え遺伝子工学技術のような任意の適した標準技術を使用して全抗体分子から誘導できる。このようなDNAは、公知であり、および/または例えば、市販の供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ-抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であり、または合成できる。DNAは、配列決定し、化学的に、または分子生物学の技術を使用して操作し、例えば、1つまたはそれ以上の可変および/または定常ドメインを適した立体配置に配置できる、またはコドンを導入できる、システイン残基を作出できる、アミノ酸を修飾、付加または欠失できるなど。
【0123】
抗原結合断片の限定されない例として、(i)Fab断片、(ii)F(ab’)2断片、(iii)Fd断片、(iv)Fv断片、(v)一本鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAb断片および(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、CDR3ペプチドのような単離された相補性決定領域(CDR))または制約付きFR3-CDR3-FR4ペプチドが挙げられる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディー、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小分子免疫医薬品(SMIP)およびサメ可変IgNARドメインのようなその他の遺伝子操作された分子も、本明細書において、表現「抗原結合断片」に包含される。
【0124】
抗体の抗原結合断片は、通常、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成のものであってよく、一般に、1つまたはそれ以上のフレームワーク配列に隣接する、またはそれとインフレームにある少なくとも1つのCDRを含む。Vドメインと関連しているVドメインを有する抗原結合断片では、VおよびVドメインは、互いに対して任意の適した配置で位置し得る。例えば、可変領域は、二量体であり、V-V、V-VまたはV-V二量体を含有し得る。あるいは、抗体の抗原結合断片は、単量体VまたはVドメインを含有し得る。
【0125】
特定の実施形態では、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合によって連結された少なくとも1つの可変ドメインを含有し得る。抗体の抗原結合断片内に見出すことができる、可変および定常ドメインの限定されない例示的立体配置は、(i)V-C1、(ii)V-C2、(iii)V-C3、(iv)V-C1-C2、(v)V-C1-C2-C3、(vi)V-C2-C3、(vii)V-C、(viii)V-C1、(ix)V-C2、(x)V-C3、(xi)V-C1-C2、(xii)V-C1-C2-C3、(xiii)V-C2-C3および(xiv)V-Cが挙げられる。上記で列挙された例示的立体配置のいずれかを含む、可変および定常ドメインの任意の立体配置では、可変および定常ドメインは、互いに直接連結される、または全もしくは部分ヒンジもしくはリンカー領域によって連結される、のいずれかであり得る。ヒンジ領域は、少なくとも2個(例えば、5、10、15、20、40、60個またはそれ以上)のアミノ酸からなることができ、これは、単一ポリペプチド分子中の隣接する可変および/または定常ドメイン間の可動性または半可動性連結をもたらす。さらに、抗体の抗原結合断片は、互いにおよび/または1つもしくはそれ以上の単量体VもしくはVドメインと非共有結合にある(例えば、ジスルフィド結合(複数可)によって)上記で列挙された可変および定常ドメイン立体配置のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(またはその他の多量体)含み得る。
【0126】
全抗体分子と同様に、抗原結合断片は、単一特異性である場合も、多重特異性(例えば、二重特異性)である場合もある。抗体の多重特異性抗原結合断片は、通常、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、ここで、各可変ドメインは、別個の抗原とまたは同一抗原上の異なるエピトープと特異的に結合可能である。本明細書において開示される例示的二重特異性抗体形式を含む任意の多重特異性抗体形式は、当技術分野で利用可能な通常の技術を使用して本方法の抗体の抗原結合断片に関連して使用するために適合させることができる。
【0127】
抗体の定常領域は、抗体の補体を固定し、細胞依存性細胞毒性を媒介する能力において重要である。したがって、抗体のアイソタイプは、抗体が細胞毒性を媒介するのに望ましいか否かに基づいて選択できる。
【0128】
用語「ヒト抗体」とは、本明細書において、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する抗体を含むものとする。それにもかかわらず、ヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroで、またはin vivoで体細胞突然変異によってランダムまたは部位特異的突然変異誘発によって導入された突然変異)を、例えば、CDR中に、特に、CDR3中に含み得る。しかし、用語「ヒト抗体」とは、本明細書において、マウスのような別の哺乳類種の生殖系列に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含むように意図されない。
【0129】
用語「組換えヒト抗体」とは、本明細書において、宿主細胞(以下にさらに記載される)中にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現される抗体、組換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリー(以下にさらに記載される)から単離される抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子にとってトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離される抗体(例えば、Taylorら(1992年)Nucl. Acids Res.20巻:6287~6295頁)またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列のその他のDNA配列へのスプライシングを含む任意のその他の手段によって製造、発現、作出または単離される抗体のような、組換え手段によって製造、発現、作出または単離されるすべてのヒト抗体を含むものとする。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変および定常領域を有する。しかし、特定の実施形態では、このような組換えヒト抗体は、in vitro突然変異誘発(または、ヒトIg配列にとってトランスジェニックの動物が使用される場合は、in vivo体細胞突然変異誘発)に付され、したがって、組換え抗体のVおよびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VおよびV配列に由来し、それと関連しながら、in vivoでヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在しない場合もある配列である。
【0130】
ヒト抗体は、ヒンジ不均一性と関連する2つの形態で存在し得る。1つの形態では、免疫グロブリン分子は、二量体が鎖間重鎖ジスルフィド結合によって一緒になっているおよそ150~160kDaの安定な4鎖構築物を含む。第2の形態では、二量体は、鎖間ジスルフィド結合によって連結されず、共有結合によって結合された軽鎖および重鎖から構成される約75~80kDaの分子が形成される(半抗体)。これらの形態は、アフィニティー精製後でさえ分離することが極めて困難である。
【0131】
種々の無傷のIgGアイソタイプにおいて第2の形態が現れる頻度は、それだけには限らないが、抗体のヒンジ領域アイソタイプと関連する構造的相違による。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一アミノ酸置換は、第2の形態が現れることを、ヒトIgG1ヒンジを使用した場合に通常観察されるレベルに著しく低減し得る(Angalら(1993年) Molecular Immunology 30巻:105頁)。本方法は、例えば、所望の抗体形態の収率を改善するために、製造において望ましいものであり得る、ヒンジ、C2またはC3領域中の1つまたはそれ以上の突然変異を有する抗体を包含する。
【0132】
「単離された抗体」とは、本明細書において、その天然環境の少なくとも1種の成分から同定および分離および/または回収されている抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも1種の成分から、または抗体が天然に存在する、もしくは天然に産生される組織もしくは細胞から分離または回収されている抗体は、本方法の目的上「単離された抗体」である。単離された抗体はまた、組換え細胞内の生体内原位置の抗体を含む。単離された抗体は、少なくとも1つの精製または単離ステップに付されている抗体である。特定の実施形態によれば、単離された抗体は、その他の細胞性物質および/または化学物質を実質的に含まないものであり得る。
【0133】
用語「特異的に結合する」などは、抗体またはその抗原結合断片が、生理学的条件下で比較的安定である抗原と複合体を形成することを意味する。抗体が、抗原と特異的に結合するか否かを調べる方法は、当技術分野で周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などが挙げられる。例えば、本方法に関連して使用されるように、PCSK9と「特異的に結合する」抗体として、表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定されるような約1000nM未満の、約500nM未満の、約300nM未満の、約200nM未満の、約100nM未満の、約90nM未満の、約80nM未満の、約70nM未満の、約60nM未満の、約50nM未満の、約40nM未満の、約30nM未満の、約20nM未満の、約10nM未満の、約5nM未満の、約4nM未満の、約3nM未満の、約2nM未満の、約1nM未満のまたは約0.5nM未満のKでPCSK9またはその一部と結合する抗体が挙げられる。しかし、ヒトPCSK9と特異的に結合する単離された抗体は、その他の(非ヒト)種由来のPCSK9分子のようなその他の抗原に対する交差反応性を有する。
【0134】
本方法にとって有用な抗PCSK9抗体は、抗体が由来した対応する生殖系列配列と比較して、重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域中に1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を含み得る。このような突然変異は、本明細書において開示されるアミノ酸配列を、例えば、公的な抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列に対して比較することによって容易に確認することができる。方法は、本明細書において開示されるアミノ酸配列のいずれかに由来する抗体およびその抗原結合断片の使用を含み、ここで、1つまたはそれ以上のフレームワークおよび/またはCDR領域内の1つまたはそれ以上のアミノ酸は、抗体が由来した生殖系列配列の対応する残基(複数可)に対して、または別のヒト生殖系列配列の対応する残基(複数可)に対して、または対応する生殖系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換に対して突然変異される(このような配列変化は、本明細書においてまとめて「生殖系列突然変異」と呼ばれる)。当業者は、本明細書において開示される重鎖および軽鎖可変領域配列を用いて出発して、1つまたはそれ以上の個々の生殖系列突然変異またはそれらの組合せを含む多数の抗体および抗原結合断片を容易に製造できる。特定の実施形態では、Vおよび/またはVドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残基のすべてが、抗体が由来した元の生殖系列配列において見出される残基に突然変異で戻される。その他の実施形態では、特定の残基のみ、例えば、FR1の最初の8個のアミノ酸内またはFR4の最後の8個のアミノ酸内で見出される突然変異された残基のみ、またはCDR1、CDR2もしくはCDR3内で見出される突然変異された残基のみが、元の生殖系列配列に突然変異で戻される。その他の実施形態では、フレームワークおよび/またはCDR残基(複数可)のうち1個またはそれ以上が、異なる生殖系列配列(すなわち、抗体が元々由来した生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基(複数可)に突然変異される。さらに、抗体は、フレームワークおよび/またはCDR領域内の2つまたはそれ以上の生殖系列突然変異の任意の組合せを含有し得る、例えば、ここで、ある特定の個々の残基が特定の生殖系列配列の対応する残基に突然変異され、元の生殖系列配列とは異なるある特定のその他の残基は維持される、または異なる生殖系列配列の対応する残基に突然変異される。1つまたはそれ以上の生殖系列突然変異を含有する抗体および抗原結合断片は、ひとたび得られると、改善された結合特異性、増大された結合親和性、改善または増強されたアンタゴニスト性もしくはアゴニスト性生物学的特性(場合によって)、低減された免疫原性などのような、1つまたはそれ以上の所望の特性について容易に試験できる。この一般的な方法で得られた抗体および抗原結合断片の使用は、本方法内に包含される。
【0135】
方法は、1つまたはそれ以上の保存的置換を有する本明細書において開示されるHCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列のいずれかのバリアントを含む抗PCSK9抗体の使用を含む。例えば、本方法は、本明細書において開示されるHCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列のうちいずれかに対して、例えば、10以下、8以下、6以下、4以下などの保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列を有する抗PCSK9抗体の使用を含む。
【0136】
用語「表面プラズモン共鳴」とは、本明細書において、例えば、BIAcore(商標)システム(Biacore Life Sciences division of GE Healthcare、ニュージャージー州、ピスカタウェイ)を使用する、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化の検出によるリアルタイム相互作用の解析を可能にする光学的現象を指す。
【0137】
用語「K」とは、本明細書において、特定の抗体抗原相互作用の平衡解離定数を指すものとする。
【0138】
用語「エピトープ」とは、パラトープとして公知の抗体分子の可変領域において特定の抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一抗原は、2つ以上のエピトープを有することもある。したがって、異なる抗体は、抗原上の異なる範囲と結合することもあり、異なる生物学的効果を有することもある。エピトープは、コンホメーションまたは線形のいずれかであり得る。コンホメーションエピトープは、線形ポリペプチド鎖の異なるセグメントから空間的に並置されたアミノ酸によって産生される。線形エピトープは、ポリペプチド鎖中の隣接するアミノ酸残基によって産生されるものである。特定の場合では、エピトープは、抗原上の糖類、ホスホリル基またはスルホニル基の部分を含み得る。
【0139】
特定の実施形態によれば、方法において使用される抗PCSK9抗体は、pH依存性結合特徴を有する抗体である。本明細書において、表現「pH依存性結合」とは、抗体またはその抗原結合断片が、「中性pHと比較して酸性pHでPCSK9との低減された結合」を示す(本開示の目的上、両表現は同義的に使用できる)ことを意味する。例のために、「pH依存性結合特徴を有する抗体」は、酸性pHでよりも中性pHでPCSK9とより高い親和性で結合する抗体およびその抗原結合断片を含む。特定の実施形態では、抗体および抗原結合断片は、酸性pHでよりも中性pHで少なくとも3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100倍またはそれより高い親和性でPCSK9と結合する。
【0140】
この態様によれば、pH依存性結合特徴を有する抗PCSK9抗体は、親の抗PCSK9抗体に対して1つまたはそれ以上のアミノ酸変動を有し得る。例えば、pH依存性結合特徴を有する抗PCSK9抗体は、例えば、親の抗PCSK9抗体の1つまたはそれ以上のCDR中に1つまたはそれ以上のヒスチジン置換または挿入を含有し得る。したがって、特定の実施形態によれば、親の抗体の1つまたはそれ以上のCDRの1つまたはそれ以上のアミノ酸の、ヒスチジン残基との置換を除いて、親の抗PCSK9抗体のCDRアミノ酸配列と同一であるCDRアミノ酸配列(例えば、重鎖および軽鎖CDR)を含む抗PCSK9抗体を投与することを含む方法が提供される。pH依存性結合を有する抗PCSK9抗体は、親抗体の単一CDR内または親の抗PCSK9抗体の複数の(例えば、2、3、4、5または6の)CDR全体に分布する、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9またはそれより多いヒスチジン置換を有し得る。例えば、本方法は、親の抗PCSK9抗体のHCDR1中の1つもしくはそれ以上のヒスチジン置換、HCDR2中の1つもしくはそれ以上のヒスチジン置換、HCDR3中の1つもしくはそれ以上のヒスチジン置換、LCDR1中の1つもしくはそれ以上のヒスチジン置換、LCDR2中の1つもしくはそれ以上のヒスチジン置換および/またはLCDR3中の1つもしくはそれ以上のヒスチジン置換を含む、pH依存性結合を有する抗PCSK9抗体の使用を含む。
【0141】
本明細書において、表現「酸性pH」とは、6.0以下(例えば、約6.0未満、約5.5未満、約5.0未満など)のpHを意味する。表現「酸性pH」は、約6.0、5.95、5.90、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0またはそれより低いpH値を含む。本明細書において、表現「中性pH」とは、約7.0~約7.4のpHを意味する。表現「中性pH」は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35および7.4のpH値を含む。
【0142】
本方法に関連して使用できる抗PCSK9抗体の限定されない例として、例えば、アリロクマブ、エボロクマブ(以下のアミノ酸配列特徴を有する:配列番号86を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1);配列番号87を含むHCDR2;配列番号88を含むHCDR3;配列番号90を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1);配列番号91を含むLCDR2および配列番号92を含むLCDR3);ボコシズマブ、ロデルシズマブ(lodelcizumab)、ラルパンシズマブ(ralpancizumab)、LY3015014または前記抗体のいずれかの抗原結合部分が挙げられる。
【0143】
ヒト抗体の製造
トランスジェニックマウスにおいてヒト抗体を作製する方法は、当技術分野で公知である。ヒトPCSK9と特異的に結合するヒト抗体を作製するために、本方法に関連して任意のこのような公知の方法を使用できる。
【0144】
VELOCIMMUNE(商標)技術(例えば、US6,596,541、Regeneron Pharmaceuticalsを参照のこと)またはモノクローナル抗体を作製するための任意のその他の公知の方法を使用して、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有するPCSK9に対する高親和性キメラ抗体が、最初に単離される。VELOCIMMUNE(登録商標)技術は、内因性マウス定常領域遺伝子座に作動可能に連結されたヒト重鎖および軽鎖可変領域を含むゲノムを有し、その結果、マウスが抗原刺激に応じてヒト可変領域およびマウス定常領域を含む抗体を産生するトランスジェニックマウスの作製を含む。抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAは、単離され、ヒト重鎖および軽鎖定常領域をコードするDNAに作動可能に連結される。次いで、DNAは、完全ヒト抗体を発現可能な細胞において発現される。
【0145】
一般に、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスは、目的の抗原を用いて負荷され、リンパ細胞(lymphatic cells)(B細胞のような)が、抗体を発現するマウスから回収される。リンパ細胞を、骨髄腫細胞株と融合して、不死のハイブリドーマ細胞株を製造でき、このようなハイブリドーマ細胞株をスクリーニングおよび選択して、目的の抗原に対して特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定する。重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、重鎖および軽鎖の望ましいアイソタイプの定常領域に連結できる。このような抗体タンパク質は、CHO細胞のような細胞において製造できる。あるいは、抗原特異的キメラ抗体または軽鎖および重鎖の可変ドメインをコードするDNAを、抗原特異的リンパ球から直接単離できる。
【0146】
最初に、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する高親和性キメラ抗体を単離する。当業者に公知の標準手順を使用して、抗体を特性決定し、親和性、選択性、エピトープなどを含む望ましい特徴について選択する。マウス定常領域を、所望のヒト定常領域と置き換え、完全ヒト抗体、例えば、野生型または修飾IgG1またはIgG4を作製する。選択された定常領域は、特定の使用に従って変わり得るが、高親和性抗原結合および標的特異性特徴は、可変領域にある。一般に、使用できる抗体は、固相上に固定化されている、または溶液相中のいずれかの抗原との結合によって測定される場合に、上記のように高親和性を有する。
【0147】
方法に関連して使用できる、PCSK9と特異的に結合するヒト抗体または抗体の抗原結合断片の特定の例として、配列番号1および11からなる群から選択されるアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する重鎖可変領域(HCVR)内に含有される3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)を含む任意の抗体または抗原結合断片が挙げられる。あるいは、方法に関連して使用できる、PCSK9と特異的に結合するヒト抗体または抗体の抗原結合断片の特定の例として、配列番号37、45、53、61、69、77、85、93、101、109、117、125、133、141、149、157、165、173、181および189からなる群から選択されるアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する重鎖可変領域(HCVR)内に含有される3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)を含む任意の抗体または抗原結合断片が挙げられる。抗体または抗原結合断片は、配列番号6および15からなる群から選択されるアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)内に含有される3つの軽鎖CDR(LCVR1、LCVR2、LCVR3)を含み得る。あるいは、抗体または抗原結合断片は、配列番号41、49、57、65、73、81、89、97、105、113、121、129、137、145、153、161、169、177、185および193からなる群から選択されるアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)内に含有される3つの軽鎖CDR(LCVR1、LCVR2、LCVR3)を含み得る。
【0148】
2つのアミノ酸配列間の配列同一性は、参照アミノ酸配列、すなわち、最良の配列アラインメントを使用して配列番号を用いて同定されるアミノ酸配列の全長にわたって、および/または2つのアミノ酸配列の間の最良配列アラインメントの領域にわたって決定され、ここで、最良配列アラインメントは、技術分野で公知のツール、例えば、標準設定、好ましくは、EMBOSS::needle、Matrix:Blosum62、Gap Open10.0、Gap Extend 0.5を使用するAlignを用いて得ることができる。
【0149】
特定の実施形態では、抗体または抗原結合タンパク質は、配列番号1/6および11/15からなる群から選択される重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸配列対(HCVR/LCVR)からの6つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む。あるいは、特定の実施形態では、抗体または抗原結合タンパク質は、配列番号37/41、45/49、53/57、61/65、69/73、77/81、85/89、93/97、101/105、109/113、117/121、125/129、133/137、141/145、149/153、157/161、165/169、173/177、181/185および189/193からなる群から選択される重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸配列対(HCVR/LCVR)からの6つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む。
【0150】
特定の実施形態では、方法において使用できる抗PCSK9抗体または抗原結合タンパク質は、配列番号2/3/4/7/8/10(mAb316P[「REGN727」または「アリロクマブ」とも呼ばれる])、12/13/14/16/17/18(mAb300N)(参照によってその全文で本明細書に組み入れる、米国特許出願公開番号第2010/0166768号を参照のこと)および12/13/14/16/17/18(ここで、配列番号16は、アミノ酸残基30でのヒスチジンのロイシンとの置換(L30H)を含む)および86/87/88/90/91/92から選択されるHCDR1/HCDR2/HCDR3/LCDR1/LCDR2/LCDR3アミノ酸配列を有する。
【0151】
特定の実施形態では、抗体または抗原結合タンパク質は、配列番号1/6および11/15からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。特定の例示的実施形態では、抗体または抗原結合タンパク質は、配列番号1のHCVRアミノ酸配列および配列番号6のLCVRアミノ酸配列を含む。特定の例示的実施形態では、抗体または抗原結合タンパク質は、配列番号11のHCVRアミノ酸配列および配列番号15のLCVRアミノ酸配列を含む。特定の例示的実施形態では、抗体または抗原結合タンパク質は、配列番号11のHCVRアミノ酸配列およびアミノ酸残基30でのヒスチジンのロイシンとの置換(L30H)を含む配列番号15のLCVRアミノ酸配列を含む。
【0152】
医薬組成物および投与の方法
本方法は、PCSK9阻害剤を患者に投与することを含み、ここで、PCSK9阻害剤は、医薬組成物内に含有される。医薬組成物は、適した担体、賦形剤および適した移動、送達、許容量耐性などを提供するその他の薬剤とともに製剤化される。多くの適当な製剤は、すべての製薬化学者にとって公知の処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、ペンシルバニア州、イーストンに見出すことができる。これらの製剤として、例えば、散剤、ペースト、軟膏、ゼリー剤、ワックス、オイル、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有小胞(LIPOFECTIN(商標)のような)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油型および油中水型エマルジョン、エマルジョンカーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲルおよびカーボワックスを含有する半固体混合物が挙げられる。参照によってその全文で本明細書に組み入れる、Powellら「Compendium of excipients for parenteral formulations」PDA (1998年) J Pharm Sci Technol 52巻:238~311頁も参照のこと。
【0153】
本方法に関連して使用できる抗PCSK9抗体を含む例示的医薬製剤として、各々、参照によってその全文で本明細書に組み入れるUS8,795,669に(とりわけ、アリロクマブを含む例示的製剤を説明する)、またはWO2013/166448もしくはWO2012/168491に示されるような製剤のいずれかが挙げられる。
【0154】
種々の送達系が公知であり、医薬組成物を投与するために、例えば、リポソームへのカプセル封入、微粒子、マイクロカプセル、突然変異体ウイルスを発現可能な組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシス(例えば、Wuら、1987年、J. Biol. Chem. 262巻:4429~4432頁を参照のこと)を使用できる。投与の方法として、それだけには限らないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外および経口経路が挙げられる。組成物は任意の好都合な経路によって、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮内層または皮膚粘膜内層(例えば、経口粘膜、直腸および腸管粘膜など)を介した吸収によって投与でき、またその他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与できる。
【0155】
医薬組成物は、標準ニードルおよびシリンジを用いて皮下にまたは静脈内に送達できる。さらに、皮下送達に関して、ペン送達デバイスは、医薬組成物の送達において容易に適用を有する。このようなペン送達デバイスは、再使用可能である場合も、ディスポーザブルである場合もある。リユース可能ペン送達デバイスは、一般に、医薬組成物を含有する交換可能なカートリッジを利用する。ひとたび、カートリッジ内の医薬組成物のすべてが投与されると、カートリッジは空であり、空のカートリッジは容易に廃棄し、医薬組成物を含有する新規カートリッジと交換できる。次いで、ペン送達デバイスをリユースできる。ディスポーザブルペン送達デバイスでは、交換可能カートリッジはない。むしろ、ディスポーザブルペン送達デバイスは、デバイス内のリザーバー中に保持される医薬組成物を用いて充填済みとなる。ひとたび、リザーバーから医薬組成物が空になると、デバイス全体が廃棄される。
【0156】
多数のリユース可能なペンおよび自動注入装置送達デバイスが、医薬組成物の皮下送達において適用を有する。例として、それだけには限らないが、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford、Inc.、英国、ウッドストック)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems、スイス、ブルクドルフ)、HUMALOG MIX75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.、インディアナ州、インディアナポリス)、NOVOPEN(商標)I、IIおよびIII(Novo Nordisk、デンマーク、コペンハーゲン)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、デンマーク、コペンハーゲン)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、ニュージャージー州、フランクリンレイクス)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)およびOPTICLIK(商標)(Sanofi-Aventis、ドイツ、フランクフルト)などが挙げられる。本方法の医薬組成物の皮下送達において適用を有するディスポーザブルペン送達デバイスの例として、それだけには限らないが、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)自動注入装置(Amgen、カリフォルニア州、サウザンドオークス)、PENLET(商標)(Haselmeier、ドイツ、シュトゥットガルト)、EPIPEN (Dey、L.P.)およびHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs、イリノイ州、アボットパーク)などが挙げられる。
【0157】
特定の状況では、医薬組成物は、制御放出系で送達できる。一実施形態では、ポンプを使用できる(Langer、前掲;Sefton、1987年、CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14巻:201頁を参照のこと)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用できる;Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise(編)、1974年、CRC Pres.、Boca Raton、Floridaを参照のこと。さらに別の実施形態では、制御放出系を組成物の標的に近接して配置することができ、従って、系の用量のほんの一部のみを必要とする(例えば、Goodson、1984年、Medical Applications of Controlled Release中、前掲、2巻、115~138頁)。その他の制御放出系は、Langer、1990年、Science 249巻:1527~1533頁による概説において論じられている。
【0158】
注射用製剤は、静脈内、皮下、皮内および筋肉内注射、点滴などのための投与形を含み得る。これらの注射用製剤は、公知の方法によって製造できる。例えば、注射用製剤は、例えば、上記の抗体またはその塩を、注射に従来使用される滅菌水性媒体または油性媒体に溶解、懸濁または乳化することによって製造できる。注射のための水性媒体として、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]などのような適当な可溶化剤と組み合わせて使用できる、例えば、グルコースおよびその他の補助剤などを含有する生理食塩水、等張性溶液がある。油性媒体として、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどのような可溶化剤と組み合わせて使用できる、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが使用される。このように製造された注射は、好ましくは、適当なアンプル中に充填される。
【0159】
上記の経口または非経口使用のための医薬組成物は、有効成分の用量に適合するように合わせられた単位用量の投与形に製造されることが有利である。このような単位用量の投与形として、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射(アンプル)、坐剤などが挙げられる。
【0160】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、単回使用事前充填ペンまたは単回使用事前充填シリンジを使用して、皮下注射として大腿、腹部または上腕に投与される。注射部位は、各注射でローテーションしてもよい。抗体またはその抗原結合断片は、日焼け、皮膚発疹、炎症もしくは皮膚感染のような活性皮膚疾患または傷害の範囲には注射してはならない。
【0161】
投与量
患者に投与されるPCSK9阻害剤(例えば、抗PCSK9抗体)の量は、一般に、治療上有効な量である。本明細書において、語句「治療上有効な量」とは、LDL-C、ApoB、ApoB100、非HDL-C、総コレステロール、VLDL-C、トリグリセリド、ApoC3、TRL粒子、Lp(a)およびレムナントコレステロール)からなる群から選択される1種またはそれ以上のパラメータの検出可能な低減(例えば、ベースラインから少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%またはそれより多い)をもたらすPCSK9阻害剤の用量を意味する。
【0162】
抗PCSK9抗体の場合は、治療上有効な量は、抗PCSK9抗体の約0.05mg~約600mg、例えば、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約75mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mgまたは約600mgであり得る。特定の例示的実施形態によれば、抗PCSK9抗体の治療上有効な量は、30mg、40mgもしくは75mgである(例えば、体重50kg未満および/または17歳以下の患者のためのアリロクマブの場合)、50mg、75mgもしくは150mgである(例えば、体重50kg以上および/または17歳以下の患者のためのアリロクマブの場合)または140mgもしくは420mgである(例えば、エボロクマブの場合)。PCSK9阻害剤のその他の投薬量は、当業者には明らかとなろう。
【0163】
個々の用量内に含有される抗PCSK9抗体の量は、患者体重1キログラムあたりの抗体のミリグラムの単位として(すなわち、mg/kg)表すことができる。例えば、抗PCSK9抗体は、患者に、約0.0001~約10mg/体重1kgの用量で投与できる。
【0164】
投与レジメン
特定の実施形態によれば、PCSK9阻害剤(すなわち、PCSK9阻害剤を含む医薬組成物)の複数回用量を患者に規定の経時的推移にわたって投与できる(例えば、毎日の治療用スタチンレジメンまたはその他のバックグラウンドLMTに加えて)。この態様に従う方法は、患者にPCSK9阻害剤の複数回用量を逐次投与することを含む。本明細書において、「逐次投与すること」とは、PCSK9阻害剤の各用量が、患者に種々の時点で、例えば、所定の間隔(例えば、数時間、数日、数週間または数ヶ月)によってわけられた異なる日に投与されることを意味する。本方法は、患者にPCSK9阻害剤の単回の初回用量と、それに続く、1回またはそれ以上のPCSK9阻害剤の第2の用量および場合により、それに続く、1回またはそれ以上のPCSK9阻害剤の第3の用量を逐次投与することを含む。
【0165】
用語「初回用量」、「第2の用量」および「第3の用量」とは、PCSK9阻害剤を含む医薬組成物の個々の用量の投与の時間的な順序を指す。したがって、「初回用量」は、処置レジメンの開始時に投与される用量であり(「ベースライン用量」とも呼ばれる)、「第2の用量」は、初回用量の後に投与される用量であり、「第3の用量」は、第2の用量の後に投与される用量である。初回、第2および第3の用量は、すべて同一量のPCSK9阻害剤を含有する場合もあるが、一般に、投与の頻度の点で互いに異なることもある。しかし、特定の実施形態では、最初の、第2のおよび/または第3の用量中に含有されるPCSK9阻害剤の量は、処置の過程の間に互いに変わる(例えば、必要に応じて上方または下方に調整される)。特定の実施形態では、「負荷用量」として2回またはそれ以上の(例えば、2、3、4または5回の)用量が、処置レジメンの開始時に投与され、より頻繁でなく投与されるその後の用量(例えば、「維持量」)が続く。
【0166】
例示的実施形態によれば、各第2のおよび/または第3の用量は、直前の用量の1~26(例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5またはそれ以上)週後に投与される。語句「直前の用量」とは、本明細書において、複数の投与の順序において、介在する用量のない順序ですぐ次の用量の投与の前に患者に投与される抗原結合分子の用量を意味する。
【0167】
この態様の方法は、患者に、任意の数のPCSK9阻害剤の第2のおよび/または第3の用量を投与することを含み得る。例えば、特定の実施形態では、単回の第2の用量のみが、患者に投与される。その他の実施形態では、2回またはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8回またはそれ以上)の第2の用量が、患者に投与される。同様に、特定の実施形態では、単回の第3の用量のみが、患者に投与される。その他の実施形態では、2回またはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8回またはそれ以上)の第3の用量が、患者に投与される。
【0168】
複数の第2の用量を含む実施形態では、各第2の用量は、その他の第2の用量と同一の頻度で投与できる。例えば、各第2の用量は、患者に、直前の用量の1~2、4、6、8週後またはそれ以上後に投与できる。同様に、複数の第3の用量を含む実施形態では、各第3の用量は、その他の第3の用量と同一の頻度で投与できる。例えば、各第3の用量は、患者に、直前の用量の1~2、4、6、8週後またはそれ以上後に投与できる。あるいは、第2のおよび/または第3の用量が患者に投与される頻度は、処置レジメンの過程にわたって変わり得る。投与の頻度もまた、臨床検査後に個々の患者の必要性に応じて医師によって処置の過程の間に調整することもできる。
【0169】
本方法は、上方滴定選択肢(本明細書において「用量修飾」とも呼ばれる)を含む投与レジメンを含む。本明細書において、「上方滴定選択肢」とは、特定の数のPCSK9阻害剤の用量を受け取った後、患者が、1つまたはそれ以上の既定の治療パラメータにおいて指定の低減に達していない場合は、PCSK9阻害剤の用量がその後増大されることを意味する。例えば、患者への2週毎に1回の頻度での抗PCSK9抗体の75mgの用量の投与を含む治療レジメンの場合は、4週(すなわち、2用量)または8週(すなわち、0週、2週、4週、6週および8週に投与された5用量)後に、患者が50mg/dL未満の血清LDL-C濃度に達していない場合、抗PCSK9抗体の用量が例えば、2週ごとに1回投与される150mgに増大される(例えば、10週または12週で、またはより遅くに開始して)。
【0170】
特定の実施形態では、PCSK9と特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、約75mgの用量で、2週毎に1回の頻度で患者に投与される。特定の実施形態では、1回もしくはそれ以上、2回もしくはそれ以上、3回もしくはそれ以上、4回もしくはそれ以上または5回もしくはそれ以上の用量後に測定された患者のLDL-Cが<70mg/dLである場合は、約75mg用量が維持される。特定の実施形態では、1回もしくはそれ以上、2回もしくはそれ以上、3回もしくはそれ以上、4回もしくはそれ以上または5回もしくはそれ以上の用量後に測定された患者のLDL-Cが、≧70mg/dLのままである場合は、約75mg用量が中止され、PCSK9と特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、患者に、約150mgの用量で、2週毎に1回の頻度でその後投与される。
【0171】
特定の実施形態では、PCSK9と特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、患者に、約150mgの用量で、2週毎に1回の頻度で投与される。特定の実施形態では、PCSK9と特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片が、患者に、約150mgの用量で、2週毎に1回の頻度で投与される場合は、少なくとも1回の用量または少なくとも2、3、4または5回の連続用量後に測定された患者のLDL-Cが、<10、15、20または25mg/dLである場合は、約150mg用量は中止され、PCSK9と特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、患者に、約75mgの用量で、2週毎に1回の頻度でその後投与される。特定の実施形態では、約150mg用量が患者に一定用量として投与される。特定の実施形態では、本明細書において開示されような(例えば、2週ごとに約75mgから、または4週ごとに約300mgから)用量調整後に、約150mg用量が患者に投与される。
【0172】
特定の実施形態では、PCSK9と特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、患者に、約300mgの用量で、4週毎に1回の頻度で投与される。特定の実施形態では、1回もしくはそれ以上、2回もしくはそれ以上、3回もしくはそれ以上、4回もしくはそれ以上または5回もしくはそれ以上の用量後に測定された患者のLDL-Cが<70mg/dLである場合は、約300mg用量が維持される。特定の実施形態では、1回もしくはそれ以上、2回もしくはそれ以上、3回もしくはそれ以上、4回もしくはそれ以上または5回もしくはそれ以上の用量後に測定された患者のLDL-Cが、≧70mg/dLのままである場合は、約300mg用量が中止され、PCSK9と特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、患者に、約150mgの用量で、2週毎に1回の頻度でその後投与される。
【0173】
特定の実施形態では、抗PCSK9抗体は、患者に、2週毎に約75mgの用量で、例えば、少なくとも2回の用量の間投与される。
【0174】
特定の実施形態では、抗PCSK9抗体は、患者に、2週毎に約150mgの用量で、例えば、少なくとも2回の用量の間投与される。
【0175】
いくつかの実施形態では、抗体は、患者に、2週毎にまたは4週毎に約300mgの用量で投与される。
【0176】
さらなる実施形態では、患者のLDL-Cが、150mgの用量で任意の2連続測定値で25mg/dL未満である場合は、用量はその後75mgに低減される。
【0177】
併用療法
本明細書において別の場所に記載されたように、方法は、PCSK9阻害剤を、患者のこれまでに処方された脂質修飾療法(LMT)と組み合わせて(「に加えて」)患者に投与することを含み得る。LMTとして、それだけには限らないが、スタチン、フィブラート、ナイアシン(例えば、ニコチン酸およびその誘導体)、胆汁酸捕捉剤、エゼチミブ、ロミタピド、フィトステロール、オルリスタットなどが挙げられる。例えば、PCSK9阻害剤は、安定な毎日治療用スタチンレジメンと組み合わせて患者に投与できる。PCSK9阻害剤を本方法と関連して組み合わせて投与できる例示的な毎日治療用スタチンレジメンとして、例えば、アトルバスタチン(10、20、40または80mg毎日)、(アトルバスタチン/エゼチミブ10/10または40/10mg毎日)、ロスバスタチン(5、10または20mg毎日)、セリバスタチン(0.4または0.8mg毎日)、ピタバスタチン(1、2または4mg毎日)、フルバスタチン(20、40または80mg毎日)、シンバスタチン(5、10、20、40または80mg毎日)、シンバスタチン/エゼチミブ(10/10、20/10、40/10または80/10mg毎日)、ロバスタチン(10、20、40または80mg毎日)、プラバスタチン(10、20、40または80mg毎日)およびそれらの組合せが挙げられる。特定の実施形態では、スタチン療法は、患者の最大許容スタチン療法である。PCSK9阻害剤を本方法と関連して組み合わせて投与できるその他のLMTとして、例えば、(1)コレステロール取り込みおよびもしくは胆汁酸再吸収を阻害する薬剤(例えば、エゼチミブ)、(2)リポタンパク質異化作用を増大する薬剤(ナイアシンのような)および/または(3)22-ヒドロキシコレステロールのような、コレステロール排出において役割を果たす LXR転写因子のアクチベーターが挙げられる。
【0178】
方法に関連して、さらなる治療上活性な成分(複数可)、例えば、上記で列挙された薬剤またはその誘導体のいずれかを、PCSK9阻害剤の投与の直前に、それと同時に、そのわずか後に投与できる(本開示の目的上、このような投与レジメンは、さらなる治療上活性な成分「と組み合わせた」PCSK9阻害剤の投与と考えられる)。本方法は、PCSK9阻害剤が、本明細書において別の場所に記載されるような1種またはそれ以上のさらなる治療上活性な成分(複数可)と同時製剤化される医薬組成物およびその使用の方法を含む。
【実施例
【0179】
以下の実施例は、当業者に本発明の方法および組成物の作製および使用方法の完全な開示および説明を提供するために提示されるのであって、本発明者らが発明と見なすものの範囲を制限するものではない。使用される数(例えば、量、温度など)に関して正確性を確実にするために努力をしてきたが、いくつかの実験誤差および偏差は考慮されなければならない。別に示されない限り、「部」は重量部であり、「分子量」は、平均分子量であり、温度は、摂氏度であり、圧力は、大気圧でのまたはその近傍である。
【実施例1】
【0180】
ヒトPCSK9に対するヒト抗体の作製
ヒト抗PCSK9抗体を、参照によってその全文で本明細書に組み入れる、米国特許第8,062,640号に記載されるとおりに作製した。以下の実施例において使用される例示的PCSK9阻害剤は、「mAb316P」と名付けられ、「REGN727」または「アリロクマブ」としても公知のヒト抗PCSK9抗体である。mAb316Pは、以下のアミノ酸配列特徴を有する:配列番号5を含む重鎖および配列番号9を含む軽鎖;配列番号1を含む重鎖可変領域(HCVR)および配列番号6を含む軽鎖可変ドメイン(LCVR);配列番号2を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号3を含むHCDR2、配列番号4を含むHCDR3、配列番号7を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号8を含むLCDR2および配列番号10を含むLCDR3。
【実施例2】
【0181】
急性冠動脈症候群後の長期心血管アウトカムに対するアリロクマブ、PCSK9に対するモノクローナル抗体の効果:プロトコール
導入
スタチンは、1987年から臨床使用のために承認されている。しかし、その時以来、非スタチン脂質低下療法は、任意の死因による死の低減と関連していなかった。PCSK9の阻害は、LDL-Cおよびその他のアテローム生成性リポタンパク質の実質的なさらなる低減が、死亡の低減に対する影響を含めてスタチンによって提供されたものを超えて心血管アウトカムをさらに改善することを提供できるか否かを決定する機会を提供する。
【0182】
この研究は、アリロクマブ、PCSK9に対する完全ヒトモノクローナル抗体が、最適スタチン療法に追加される場合に死亡を含む心血管リスクを低減できるか否かを問うた。最近の急性冠動脈症候群を有する患者を、研究集団として選択したが、これは、彼らが、安定心血管疾患を有する患者よりも再発性事象のより高いリスクに直面しており、したがって、有効な新規処置からより大きな絶対利益を導き出し得るからであった。研究集団を、アテローム生成性リポタンパク質のさらなる低減によって残存する心血管リスクが改変される可能性が高いものを標的とするために、これらのリポタンパク質の最小認定レベルによってさらに規定した。この研究はまた、PCSK9阻害の安全性に関する実質的な情報も提供した。
【0183】
研究目的
本研究は、最近の急性冠動脈症候群(ACS)を有するおよそ18,000人の患者における医師主導型の国際多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照試験であった。主目的は、インデックスACS事象後1~12ヶ月で開始されたアリロクマブ(2週毎の皮下注射による75~150mg)が、冠動脈心疾患死、主要非致死性冠動脈事象(急性心筋梗塞または不安定狭心症のための入院)または虚血性脳卒中の複合アウトカムの発生率を低減したか否かを評価することであった。
【0184】
研究集団
主な組み入れ基準は、1)推定もしくは証明された閉塞性冠動脈疾患による予定外入院の72時間以内の安静時もしくは極めて軽度の労作時に生じる、不安定なパターンを有する心筋虚血の症状ならびに以下のうち少なくとも1つ:a)心臓バイオマーカーの上昇またはb)虚血もしくは梗塞と一致する安静時ECG変化および局所壁運動もしくは灌流異常からの閉塞性冠動脈疾患のさらなるエビデンス、血管造影による≧70%心外膜冠動脈狭窄もしくは冠血行再建術の必要性によって定義されるACSのための入院、ならびに2)以下のうち少なくとも1つ:a)LDL-C≧70mg/dl、b)非HDL-C≧100mg/dLまたはc)アポリポタンパク質B≧80mg/dlによって定義される、アトルバスタチン40~80mgもしくはロスバスタチン20~40mg毎日もしくはこれらの薬剤の一方の最大許容用量によって不適切に制御される脂質レベルとした。
【0185】
主な除外基準は、1)年齢<40歳;2)適格インデックスACS事象<4またはランダム化の>52週前;3)ランダム化前少なくとも2週間、安定脂質修飾療法を行っていない;4)制御されない高血圧症(ランダム化訪問時に>180mm Hg収縮期および/または>110mm Hg弛緩期);5)処置にもかかわらず持続するニューヨーク心臓協会クラスIIIまたはIVうっ血性心不全または測定された場合にLVEF<25%;6)出血性卒中の病歴;7)適格実験室訪問時に空腹時トリグリセリド>400mg/dL(4.52mmol/L);8)ランダム化訪問前2週以内の再発性ACS事象;9)ランダム化訪問前2週以内に実施された、またはランダム化後に計画される冠血行再建術;10)肝臓トランスアミナーゼ正常の上限の3倍超;現在のB型肝炎またはC型肝炎の感染の実験室エビデンス;クレアチンキナーゼ正常の上限の>3倍;推定される糸球体濾過速度<30ml/分/1.73m2;陽性尿または血清妊娠試験;11)適格実験室訪問の1ヶ月以内に開始された処置による甲状腺機能低下症の最近の診断;12)適切に処置された基底または扁平細胞皮膚癌または上皮内子宮頸癌を除く過去5年間の癌;13)任意のPCSK9抗体を用いる以前の処置;14)慣らし期間の間のフェノフィブラートまたはフェノフィブリン酸以外のフィブラートの使用および15)インフォームドコンセントを提供できないことまたは研究必要条件に従えないこと;妊娠、授乳または有効な避妊を使用しない妊娠可能性とした。
【0186】
治験は、推定または証明された閉塞性冠動脈疾患による予定外の入院の72時間以内の安静時または極めて軽度の労作時に生じる心筋虚血の不安定な症状によって定義される、ACSのために入院していた少なくとも40歳の男性および女性患者を登録していた。さらに、認定ACS事象は、以下の基準のうち少なくとも1つが満たされることを必要とした:急性心筋梗塞と一致する心臓バイオマーカーの上昇、または局所灌流画像化もしくは壁運動異常からの閉塞性冠動脈疾患のさらなるエビデンス、血管造影による心外膜冠動脈狭窄≧70%もしくは事象と関連する冠血行再建の必要性を伴う、虚血もしくは梗塞と一致する安静時ECG変化。
【0187】
認定患者は、アトルバスタチン40~80mg毎日、ロスバスタチン20~40mg毎日またはこれらの薬剤の一方の最大許容用量を用いる定常状態(少なくとも2週)処置にもかかわらず、実証されたアテローム生成性リポタンパク質の不適切制御を有していなくてはならなかった。したがって、治験におけるバックグラウンドスタチン処置は、血液コレステロールレベルの低減のための米国心臓協会および米国心臓学会議の二次予防ガイドラインと一致していた(Stoneら、Circulation(2014)129:S1-45を参照のこと)。アテローム生成性リポタンパク質の不適切制御は、以下のうち少なくとも1つによって定義された:LDL-C≧70mg/dL(1.81mmol/L)、非高密度リポタンパク質コレステロール(非HDL-C)≧100mg/dL(2.59mmol/L)またはアポリポタンパク質B≧80mg/dL(0.8mmol/L)。
【0188】
研究手順
患者は、2~16週間の慣らし期間に入った。この期間の間に、患者は、研究用自己注射器デバイスを使用する自己注射の技術を指導された。アトルバスタチン(40~80mg毎日)またはロスバスタチン(20~40mg毎日)を開始および/または必要に応じて調整して、最大許容用量を決定した。研究者の判断で、慣らし期間の間にその他の排除されない脂質修飾療法が開始されることもあった。少なくとも2週間の定常状態脂質修飾療法の後、空腹時血液サンプルを得て、認定リポタンパク質基準の少なくとも1つに合致するか否かを調べた。
【0189】
慣らし期間の最後に、すべての組み入れ基準に合致し、除外基準に合致しなかった患者を、アリロクマブ75mg(1ml注射容量)皮下、2週毎または対応するプラセボを用いる最初の処置にランダムに割り当てた。フォローアップ訪問は、ランダム化の1、2、4、8、12、16、20および24ヶ月後、次いで、共通の研究終了日まで6ヶ月間隔で発生した。ランダム化時およびランダム化後複数時点で、患者を研究エンドポイントおよび有害事象について評価し、リポタンパク質およびアポリポタンパク質を含む測定;肝臓、筋肉および腎臓機能検査を含む血液学的および化学的研究;ヘモグロビンA1c;高感受性C反応性タンパク質(hsCRP)、抗アリロクマブ抗体;および妊娠の可能性のある女性における妊娠検査のために血液および尿サンプルを採取した。LDL-Cは、直接測定によって値<15mg/dlが確認された場合(ならびにTG値が400mg/dL(4.52mmol/L)を超えた場合)を除いてFriedewald式を使用して算出した。サンプルはまた、PCSK9レベル、リポタンパク質細画分および炎症および心血管リスクのその他のメディエーターの測定のためにも採取した。ランダム化時および研究完了時に心電図を記録した。ランダム化処置期間の間に、リポタンパク質レベルは、患者および研究者に対して盲検のままとし、処置医師は、通常の臨床リポタンパク質試験を控えるように指示された。
【0190】
この研究は、生理学的範囲の下方部分のLDL-Cレベルを達成することが、臨床アウトカムを改善するか否か;治験が、持続した生理学的LDL-Cレベル以下の安全性を探求するように設計されていないか否かを決定しようとしていた。したがって、以下のとおりに、プロトコールに盲検用量調整およびモニタリング手順が組み込まれた。アリロクマブによる処置に割り当てられた患者の中で、ランダム化の1ヶ月後(すなわち、アリロクマブ75mgを2週毎に2用量後)に測定されたLDL-Cが、≧50mg/dlのままであった場合は、アリロクマブの用量を、盲検様式で150mgを2週毎に増大した。ランダム化の1ヶ月後に測定したLDL-Cが<50mg/dlであった場合は、アリロクマブの用量を75mgで維持した。アリロクマブ150mgで、LDL-Cが、任意の2回の連続測定で<25mg/dlであった場合は、用量を75mgに低減した。アリロクマブ75mgで、LDL-Cが、2回の連続測定で<25mg/dlであるが、≧15mg/dlであった場合は、用量を継続したが、患者を、個々のおよび集約した知見をデータ安全監視委員会(Data Safety Monitoring Board)(DSMB)に報告し、データが、有害事象が処置と必然的に関連していることを示す場合に、処置の盲検中止を推奨する独立した安全性医師によって関連する可能性がある有害事象についてモニタリングした。アリロクマブ75mgによる処置の間に、LDL-Cが2回の連続測定で<15mg/dlであった場合は、次の研究訪問で積極的処置を中止し、研究の残りの期間、盲検法でプラセボ注射に置換した。複合的に、これらの盲検用量調整は、LDL-C<15mg/dlの持続レベルを有する患者の数を最小化しながら、LDL-C<50mg/dlを有するアリロクマブ群の患者の数を最大化するように意図された。
【0191】
研究アウトカム
主要効能尺度は、冠動脈心疾患死、主要非致死性冠動脈事象(心筋梗塞または不安定狭心症のための入院)または虚血性脳卒中の最初の出現までの時間とした。
【0192】
副次的エンドポイントは、虚血駆動性冠血行再建術、うっ血性心不全のための入院および全死因死亡を含んでいた。
【0193】
主要効能尺度は、冠動脈心疾患死、非致死性急性心筋梗塞、致死性もしくは非致死性虚血性脳卒中または入院を必要とする不安定狭心症の最初の出現までの時間とした。
【0194】
主要な副次的効能尺度は、以下とした(階層的順序で):1)ランダム化から主要冠動脈心疾患事象(冠動脈心疾患死または非致死性心筋梗塞)、入院を必要とする不安定狭心症または虚血駆動性冠血行再建術の最初の出現までの時間;2)ランダム化から主要冠動脈心疾患事象の最初の出現までの時間;3)ランダム化から任意の心血管事象(任意の心血管死、任意の非致死性冠動脈心疾患事象または非致死性虚血性脳卒中)の最初の出現までの時間;4)ランダム化から全死因死亡、非致死性心筋梗塞または非致死性虚血性脳卒中の最初の出現までの時間;および5)ランダム化から死(全死因死亡)までの時間。
【0195】
その他の副次的効能尺度は、以下とした:1)ランダム化から冠動脈心疾患死までの時間;2)ランダム化から非致死性心筋梗塞の最初の出現までの時間;3)ランダム化から虚血性脳卒中の最初の出現までの時間;4)ランダム化から入院を必要とする不安定狭心症の最初の出現までの時間;5)ランダム化から虚血駆動性冠血行再建術の最初の出現までの時間;および6)ランダム化から入院を必要とするうっ血性心不全の最初の出現までの時間。
【0196】
安全性尺度は以下とした:すべての有害事象;心拍数および血圧;血液学;および生化学評価。
【0197】
その他の尺度は以下とした:1)研究を通じて評価された抗アリロクマブ抗体;および2)LDLコレステロール、アポリポタンパク質B、非HDLコレステロールおよび高感受性C反応性タンパク質の変化パーセント。
【0198】
検査効能エンドポイントは、算出されたLDL-C、アポリポタンパク質B、非HDL-CおよびhsCRPのベースラインからの変化を含んでいた。アリロクマブ処置の安全性は、有害事象および臨床検査を報告することによって評価した。この治験において特に興味深い有害事象には、アレルギー事象、局所注射部位反応、肝臓酵素増大および溶血性貧血が含まれた。
【0199】
統計的考察
プラセボ群における主要エンドポイント事象の予測されるカプラン・マイヤー発生率は、12ヶ月で3.8%、24ヶ月で6.4%、36ヶ月で9.0%および48ヶ月で11.4%であった。その他の仮定として、24ヶ月でフォローアップ不能例となる患者の1%、90mg/dlのベースラインでのLDL-C中央値およびアリロクマブ処置を用いた場合のベースラインからのLDL-Cの50%低減、その結果生じる15%のハザード低減を含めた。これらの仮定に基づいて、2つの中間解析を説明するために片側2.49%有意レベルでのログランク検定を指定することで、治験は、1613の主要エンドポイント事象を用いて90%検出力を有し、40ヶ月にわたるランダム化された18,000人の患者のサンプルサイズに対応していた。安全性および効能の徹底的な評価のためにアリロクマブに対する十分な期間の曝露を可能にするために、治験は、1613の主要エンドポイント事象が生じ、すべての評価可能生存患者が少なくとも2年間フォローアップされるまで継続した。主要なアウトカムについて、性別、年齢、人種、地理的領域およびACS事象からランダム化までの時間に従って分類された亜群にわたって処置効果を調べた。事象までの時間という副次的アウトカムは、主要エンドポイントと同一の方法論を使用して解析した。主要な副次的アウトカムについては、全体的な第1種過誤は、逐次推論アプローチの使用によって制御した。比例ハザード回帰モデルは、LDL-Cおよびその他の脂質パラメータの変化またはそれらの絶対値を含むように構築した。カテゴリー変数および連続変数によって定義される亜集団の解析は、予め指定された統計分析計画に従って実施した。安全性結果は、正式な推論試験を行わずに処置群別に示した。
【0200】
3人の心臓病専門医、1人の脂質代謝専門医(lipidologist)および1人の統計家から構成される独立DSMBが、定期的な間隔で中間データを再検討して、安全性および効能を評価した。事象のおよそ50%が生じた時点で、DSMBは、無益性(ハザード比>1.008に相当する非拘束境界)についての中間解析を実施した。事象のおよそ75%が生じた時点で、DSMBは、無益性(ハザード比>0.951に相当する非拘束境界)および圧倒的な効能(亜群および領域にわたる一貫性を有する主要エンドポイントのp<0.0001に相当するハザード比<0.802、全死因死亡を含む副次的エンドポイントの陽性傾向および過度の非心血管死亡なし)についての第2の中間解析を実施した。
【実施例3】
【0201】
急性冠動脈症候群後の長期心血管アウトカムに対するアリロクマブ、PCSK9に対するモノクローナル抗体の効果:結果
この研究は、非スタチン脂質低下療法が、任意の死因による死の低減と関連していることを初めてかつ唯一示した。
【0202】
研究患者
この研究では57か国の1,315拠点で、合計18,924人の患者が登録された。認定急性冠動脈症候群(ACS)は、患者の83.2%における心筋梗塞および患者の16.8%における不安定狭心症とした。ほとんどの患者(92.1%)が、70mg/デシリットルまたはそれ以上のLDLコレステロールに適していた。さらなる4.2%は、非HDL-コレステロール基準のみを満たし、0.3%は、アポリポタンパク質B基準のみを満たした。認定急性冠動脈症候群からランダム化までの時間の中央値は、全集団について2.6ヶ月(四分位範囲、1.7~4.3)、アリロクマブ処置群について2.6ヶ月(四分位範囲、1.7~4.4)およびプラセボ処置群について2.6ヶ月(四分位範囲、1.7~4.3)であった。
【0203】
これらの患者の中で、そのうち9,462人はアリロクマブ処置群にあり、そのうち9,462人はプラセボ処置群にあった。ランダム化時に、2つの処置群のベースライン特徴は十分に釣り合っていた(表1)。ほとんどの患者は、ガイドラインによって推奨される二次予防薬物療法によって処置され、インデックス事象のための冠血行再建を行った。ランダム化時に、患者の88.8%が、アトルバスタチン40~80mg毎日またはロスバスタチン20~40mg毎日を用いて処置された。1年および3年のフォローアップ後、対応するパーセンテージは、アリロクマブ群では84.7%および82.8%、プラセボ群では86.2%および86.6%であった。ベースライン特徴では2群の間に名目上有意差はなかった。
【0204】
【表1】
【表2】
【0205】
研究処置
ランダム化後第1の評価時に、アリロクマブを用いて処置された2615人(27.6%)の患者は、50mg/デシリットルまたはそれ以上のLDL-コレステロールレベルを有しており、その後、75mgから150mgへのアリロクマブの盲検の上方滴定を受けた。これらの2615人の患者のうち、805人が後に、25mg/デシリットル未満の2回の連続LDLコレステロール測定値後に75mgへの盲検の下方滴定を受けた。アリロクマブを用いて処置されたすべての患者のうち、730人(7.7%)が、75mg用量で15mg/デシリットル未満の2回の連続LDLコレステロール測定値を有しており、ランダム化から8.3カ月の中央値でプラセボ注射への盲検の切り替えに至った。プラセボに盲検で切り替えた患者の間では、ベースラインLDLコレステロール中央値は、71(四分位範囲、58~83)mg/デシリットルであった。アリロクマブによる処置での全時間のうち、78%および22%は、それぞれ、75mgおよび150mg用量でであった。
【0206】
患者は、2.8(四分位範囲、2.3~3.4)年の中央値の間フォローアップされた。死以外の理由のための早期処置中止は、アリロクマブ処置群では1,343人(14.2%)の患者において、プラセボ処置では1,496人(15.8%)の患者において生じた。さらに、それぞれ、アリロクマブおよびプラセボ処置群中14人および9人の患者が、フォローアップ不能例となった(生存状態)。15mg/dL未満の2回の連続LDL値を有するために、アリロクマブ処置群中の730人(7.7%)の患者が、盲検法でプラセボ処置群に切り替えた。総フォローアップ時間のパーセンテージとしての、意図される処置(アリロクマブからプラセボへの盲検切り替えを含む)に対する曝露は、それぞれ、アリロクマブおよびプラセボ群において86%および91%であった。それぞれ、主要エンドポイントおよび死のフォローアップの可能性のある患者の年齢の99.1%および99.8%について、確認を完了した。
【0207】
患者を、33ヶ月の平均値(中央値)の間処置した。
【0208】
リポタンパク質に対する処置の効果
ベースライン時に、LDLコレステロールは、92±31mg/デシリットル(2.39±0.80mmol/リットル)、(平均±標準偏差)であった。アリロクマブ群において治療企図に基づいて、平均LDLコレステロールは、4ヶ月で40mg/デシリットル(1.03mmol/リットル)の最下点に達し、12ヶ月で48mg/デシリットル(1.24mmol/リットル)および48ヶ月で66mg/デシリットル(1.72mmol/リットル)に上昇した(図1A)。アリロクマブの中止後に集められた値を除外して、4、12および48ヶ月での平均LDL-コレステロールレベルは、それぞれ、38、42および53mg/デシリットル(0.97、1.09および1.38mmol/リットル)であり、62.7%、61.0%および54.7%の平均値プラセボ補正低減に相当した。プラセボ群に対する、アリロクマブ群における平均LDL-コレステロールレベルの絶対低減は、それぞれ、4、12および48ヶ月で55.7mg/dL、54.1mg/dLおよび48.1mg/dLであった。プラセボ群では、4、12および48ヶ月での平均LDL-コレステロールレベル(治療企図)は、それぞれ、93、96および103mg/デシリットル(2.42、2.50および2.67mmol/リットル)であった。その他の脂質測定値は、図1B~1Gに提供されている。
【0209】
効能エンドポイント
主要エンドポイントは、アリロクマブ群では903人(9.5%)の患者において、プラセボ群では1052人(11.1%)において生じ(表2);4年カプラン・マイヤー率推定値は、それぞれ、アリロクマブおよびプラセボ群において12.5%および14.5%であった(ハザード比0.85;95%信頼区間、0.78~0.93;P<0.001)(図2)。したがって、このエンドポイントで、アリロクマブは、MACEのリスクを15%低減した。1つの主要エンドポイント事象を防ぐために、49人の患者が4年間処置される必要があるであろう。MACEは、(1)冠動脈心疾患(CHD)による死、(2)非致死性心筋梗塞、(3)致死性もしくは非致死性虚血性脳卒中または(4)入院を必要とする不安定狭心症を起こした患者を含む複合エンドポイントであった。表2に示されるように、MACEエンドポイントの各成分が、アリロクマブ処置患者において低下し、これは、非致死性心筋梗塞、致死性または非致死性虚血性脳卒中および入院を必要とする不安定狭心症についてプラセボと比較して、統計的に有意な差を示した。
【0210】
【表3】
【0211】
アリロクマブは、任意の冠動脈心疾患事象、主要冠動脈心疾患事象、任意の心血管事象および総死亡、非致死性心筋梗塞および非致死性卒中のリスクを低減した(表2)。冠動脈心疾患死の低減または心血管死の低減は、統計的に有意ではないが、全死因死は、アリロクマブ群の患者の間でより少ない頻度で生じた(334人対392人の患者;推定4年事象率、5.3%対6.4%;ハザード比、0.85;95%信頼区間、0.73~0.98;P=0.026;図3)。主要副次的エンドポイントの階層において、全死因死が、冠動脈心疾患および心血管死に続くので、全死因死のP値は、名目上有意と考えられる。1つの死を防ぐために、87人の患者が4年間処置される必要があるであろう。アリロクマブはまた、非致死性心筋梗塞、非致死性虚血性脳卒中、不安定狭心症のための入院および虚血駆動性冠血行再建のリスクを低減したが、うっ血性心不全のための入院のリスクは低減しなかった。
【0212】
主要エンドポイントに対するアリロクマブの効果は、ベースラインLDLコレステロール(80mg/デシリットル未満、80から最大100mg/デシリットルおよび100mg/デシリットルまたはそれ以上;相互作用のP値、0.09)の3つの予め定義された亜群(図5A、5Bおよび5Cを参照のこと)を含む予め定義された亜群(図4)にわたって一貫していた。しかし、プラセボに割り当てられた患者の間の主要エンドポイントの累積発生率は、それぞれこれら3つの亜群において9.5%、9.5%および14.9%であった。したがって、最高のベースラインLDLコレステロールおよび最大の絶対リスクを有する亜群において、アリロクマブは、プラセボと比較して最大の絶対リスク低減をもたらした(図5C)。
【0213】
100mg/dLを上回るベースラインLDLコレステロールレベルを有するこれらの患者において、MACEが24%有意に低減され(HR=0.76(95%信頼区間0.65~0.87))、これが、100mg/dL未満のベースラインLDLコレステロールレベルを有する患者から有意に異なっていた(p=0.05)ことは、特に興味深い(図6)。この亜群では1つの主要エンドポイントを防ぐために、16人の患者が4年間処置される必要があるであろう。治療企図(ITT)に基づく3つの予め定義された亜群各々のLDL-Cの対応するレベルは、図7A、7Bおよび7Cに示されている。
【0214】
ベースラインLDLコレステロールの3つの予め定義された亜群にわたる事後解析では、死に対するアリロクマブの効果の有意な不均一性はない(ARR相互作用のP値、0.12)(図8A、8Bおよび8Cを参照のこと)。主要エンドポイントと同様に、プラセボ群における死の絶対リスクならびにアリロクマブおよびプラセボ群の間の死の絶対差は、少なくとも100mg/デシリットルのベースラインLDLコレステロールを有する亜群において最大であった。死のリスクは、100mg/dLの、または100mg/dLを上回るベースラインLDL-Cレベルを有する患者において29%有意に低減された(HR=0.71(95%信頼区間0.56~0.90))(表3A)。
【0215】
リスク低減において有意差がないことが、年齢(<65対>65)、性別(男性対女性)、領域(東欧、西欧、北米、南米、アジアおよび世界のその他の地域)またはランダム化からの時間別に解析された患者において見られた。
【0216】
表3Aおよび3Bは、ベースラインLDL-C>100mg/dLを有する患者に焦点を当てている。表3Aは、100mg/dLの、または100mg/dLを上回るベースラインLDL-Cレベルを有していた患者の亜集団におけるさらなる解析を示す。この亜群の患者では、アリロクマブは、主要心血管事象のリスクを24%有意に低減し、さらなる事後解析によって、アリロクマブは、冠動脈心疾患(CHD)による死を28%低減し、任意の死因による死を29%低減したことが見い出された。リスク低減はまた、CHD事象、主要なCHD事象、死、非致死性心筋梗塞または非致死性虚血性脳卒中および心血管死の副次的エンドポイントにおいても有意であった。<80mg/dL、80~<100mg/dLまたは≧100mg/dLのベースラインLDLコレステロールレベル(ベースラインLDL-C中央値:118mg/dL)に従う亜群の予め指定された解析において、同様の結果が観察された(表3B)。
【0217】
【表4】
【0218】
【表5】
【表6】
【0219】
安全性
a.有害事象
アリロクマブを用いて処置された患者の中で、プラセボを用いて処置されたものと比較して、注射部位反応(それぞれ、3.8%対2.1%)を除いて過度の有害事象または検査異常はなかった(表4)。神経認知事象は、アリロクマブで患者の1.5%において、プラセボで1.8%において、新規発症糖尿病は、それぞれ、9.6%対10.1%において、出血性卒中(判定によって確認された)は、<0.1%対0.2%において生じた。中和抗薬物抗体は、アリロクマブで患者の0.5%において、プラセボで<0.1%において検出された。
【0220】
b.極めて低いLDL-C
アリロクマブの安全性および効能を、極めて低いLDL-Cに達した患者において、プラセボ群に由来するマッチした患者と比較して解析した。
【0221】
アリロクマブを受け取るようにランダム化された9462人の患者のうち、730人(7.7%)が、2回の連続する測定値で極めて低いLDL-C(<15mg/dLまたは0.39mmol/L)に達し、ランダム化8.3ヶ月後の中央値でプラセボの置換を行った。傾向スコアマッチングを使用して、それらを、最初にプラセボに割り当てられた2152人の患者と比較した(3:1)。また傾向スコアマッチングを使用して、2回の連続する極めて低いLDL-Cレベルを有し、プラセボの置換を行ったベースラインで糖尿病を有さなかった525人の患者において、新規発症糖尿病を、プラセボ群の1675人のマッチした患者と比較した。神経認知事象および出血性卒中も、極めて低いLDL-Cと関連して評価した。
【0222】
極めて低いLDL-Cと関連し、傾向スコアマッチングにおいて使用された特徴は、男性、糖尿病、低いベースラインLDL-Cおよびリポタンパク質(a)、ならびにアジアでの登録を含んでいた。アリロクマブで極めて低いLDL-Cを有する患者は、プラセボへ切り替えているにもかかわらず、プラセボ群由来のマッチした患者よりもMACEの発生率を低下させた(6.4%対8.5%、HR0.71、95% CI 0.52~0.98、P=0.039)。アリロクマブでの極めて低いLDL-Cは、プラセボ群由来のマッチした患者と比較して、新規発症糖尿病のより高いリスクと関連していなかった(15.1%対13.0%、HR1.10、95% CI 0.85~1.43、P=0.46)。極めて低いLDL-Cと神経認知事象または出血性卒中の同定される関連もなかった。
【0223】
【表7】
【0224】
結論
要約すると、ODYSSEY OUTCOMESは、検出力を有するようにその主要エンドポイントに合致した(主要CV事象/MACEの15%相対リスク低減)。すべての個々のエンドポイントにおいて一貫した利益が達成された(MI、虚血性脳卒中、入院を必要とする不安定狭心症および虚血駆動性冠血行再建について有意であり、CHDおよびCV死について陽性傾向を有する)。これは、全死因死亡に対する名目上有意な利益を実証するための最初の非スタチン治験であった。LDL>100mg/dLを有する患者については、CHD死、CV死および全死因死亡についてを含めて、すべてのMACEエンドポイントが有意に改善された。最大5年の二重盲検フォローアップ期間を用いて、アリロクマブおよびプラセボ群の間で全体的な安全性および目的の安全性事象において不均衡は観察されなかった(新規発症糖尿病、白内障、神経認知事象および出血性卒中を含む)。
【0225】
ACS後患者においてプラセボと比較して、LDL-Cレベル25~50mg/dLを標的とし、15mg/dLほどの低いレベルを可能にするアリロクマブ75または150mg Q2Wは、(1)MACE、MIおよび虚血性脳卒中を低減し;(2)より低率の全死因死と関連し、(3)安全であり、治験の期間にわたって十分に許容された。具体的には、6000人を超える≧3年間処置された患者を含む、この19,000人近い患者のプラセボ対照試験において、アリロクマブを用いた場合に安全性シグナルはなかった。
【0226】
ACSおよびベースラインLDL-C≧100mg/dLを有する患者の中で、アリロクマブは、プラセボと比較してMACEを24%(ARR:3.4%)、全死因死を29%(ARR:1.7%)低減した。科学的理論に束縛されることを意図するものではないが、これらは、処置から最も恩恵を受け得る患者である。
【実施例4】
【0227】
ベースラインLp(a)の、MACEおよび死のリスクとの関係
リポタンパク質(a)(Lp(a))レベルの上昇は、心血管疾患の独立リスク因子である。Lp(a)は、アテローム動脈硬化促進性および血栓形成促進性/抗線維素溶解脂質であり、スタチンまたはエゼチミブによって低減されない。Lp(a)を低下させることの利益の可能性を示そうとする試みは、過去30年成功してこなかった。この実施例は、ODYSSEY OUTCOMES臨床研究におけるLp(a)を低下させることにおけるアリロクマブの特定の利益を実証する。
【0228】
a.方法
Lp(a)は、ベースライン、最初のアリロクマブまたはプラセボ投与から4ヶ月、最初のアリロクマブまたはプラセボ投与から12ヶ月、および自動化ラテックス比濁法による研究の最後に測定した(Siemens Healthcare Diagnostics、イリノイ州、ディアフィールド)。アポリポタンパク質(a)の大きさの不均一性は、アッセイにおけるLp(a)回収に対して中程度の効果しか有していなかった。変動のアッセイ間係数は、Lp(a)濃度に応じて3.1%~4.8%であった。Lp(a)およびLDL-Cレベルの分布を、ベースラインで、ならびにランダム化後4および12ヶ月(±4週)で、集団全体について、ならびにアリロクマブおよびプラセボ群において別個に評価した。患者が、これらの訪問ウィンドウの各々内で複数の値を有していた場合は、ウィンドウ内の最新の値を解析した。
【0229】
算出または直接測定されたLDL-Cレベルは、Lp(a)中に含有されるコレステロールを含み、Lp(a)質量のおよそ30%に相当する。これを説明し、LDL粒子中に含有されるコレステロールの推定値を導くために、LDL-C-0.3×[Lp(a)]としてLDL-C補正を算出した。同様に、Lp(a)以外のすべてのアポ-B含有粒子で行われたコレステロールの推定値を導くために、補正非HDLコレステロールを、関係、非HDL C補正=(総コレステロール-HDL-C)-0.3×[Lp(a)]を使用して算出した。
【0230】
ベースラインLp(a)の四分位数に従ってMACEに対するアリロクマブ処置の相対および絶対効果に不均一性があるか否かを決定した。前者を評価するために、ベースラインLp(a)四分位数、処置およびそれらの相互作用の項を用いる、地理的領域によって層別化されたCox比例ハザードモデルを構築した。後者を評価するために、2つの処置群における観察された発生率の差として定量化される、アリロクマブ処置を用いる絶対リスク低減を、Gail-Simon試験を使用してベースラインLp(a)の四分位数にわたって比較した。MACEのリスクの絶対低減に対する処置の影響も、Lp(a)のカテゴリー(<中央値、≧中央値)およびベースラインLDL-C(<100mg/dL、≧100mg/dL[<2.59mmolL、≧2.59mm/L])に従って評価した。
【0231】
b.ベースライン特徴
18,924人の患者の中で、ベースラインLp(a)レベルの平均(SD)は、39.0(43.2)mg/dLであった。ベースラインLp(a)の分布は、高度に歪んでおり、21.2mg/dLの中央値を有していた(四分位範囲6.7~59.6mg/dL)(図9)。最小レベルは、1mg/dLであり、90パーセンタイルレベルは、101mg/dLであり、最大レベルは、361mg/dLであった。Lp(a)四分位数に従うベースライン特徴を、カイ二乗検定(カテゴリー変数)またはランクベースの検定(連続変数)によって比較した。ベースラインLp(a)別の、人口統計および臨床特徴は、それぞれ、表5および6に示されている。上部Lp(a)四分位数中の参加者は、女性、黒人および北米出身である可能性がより高いが、喫煙または糖尿病を有する可能性がより低い。高強度スタチンを用いて処置された患者のLDL-C濃度およびパーセンテージは、Lp(a)の最高の四分位数において最大であった。逆に、LDL-C補正および非HDL-C補正は、Lp(a)の四分位数の増加にわたって減少した。より高いLp(a)四分位数中の参加者は、アリロクマブの盲検の上方滴定を有していた可能性が高く、盲検のプラセボのアリロクマブとの置き換えを有していた可能性が低かった。
【0232】
【表8】
【0233】
【表9】
【表10】
【0234】
c.プラセボ群におけるベースラインLp(a)、心血管事象および死亡
MACE、CHD死および非致死性心筋梗塞(MI)の発生率を、ベースラインLp(a)を用いるCox回帰モデルを使用して四分位数に従って分けられた4つのベースラインLp(a)カテゴリーにわたって比較した。年齢、性別、人種、地理的領域、インデックス事象からの時間、BMI、喫煙歴、糖尿病、ベースラインLDL-Cおよび/または処置割り当てについて調整を実施した。プラセボ群におけるベースラインLp(a)四分位数と事象の発生率の間の関係は、図10に示されており、この関係のモデリングは、以下の表7に示されている。
【0235】
【表11】
【0236】
表8に示されるように、ベースラインLp(a)レベルが増大するにつれ、MACE、CHD死および非致死性MIの有意により高い発生率が観察された。未調整Coxモデルでは、最低のLp(a)ベースライン四分位数と比較した、最高中の個体は、MACEまたは非致死性心筋梗塞を起こす可能性が46~58%より高かった。Lp(a)のベースライン四分位数と、MACE、非致死性心筋梗塞および心血管死の間の関係は、ベースラインLDL-C補正の調整後強化された。連続ベースラインLp(a)およびMACEのハザード比のスプライン解析(図11)は、ベースラインLp(a)とMACEの間の比較的線形の関係を示した。調整モデルにおけるMACE、非致死性MIおよびCHD死の、アリロクマブ処置との相互作用p値は、それぞれ、0.44、0.19および0.52であった。調整モデルにおける、MACE、非致死性MIおよびCHD死の、ベースラインLDL-Cレベルとの相互作用p値は、それぞれ、0.67、0.25および0.92であった。ベースラインLp(a)四分位数と、虚血性脳卒中、CHD死または全死因死の間の関係は観察されなかった。
【0237】
【表12】
【0238】
d.ベースラインLp(a)四分位数によって層別化されたMACEに対するアリロクマブの効果
プラセボ処置群と比較した、アリロクマブ処置群におけるMACE、非致死性MI、CHD死および全死因死の相対発生率を、4つのベースラインLp(a)四分位数にわたって比較した。年齢、性別、人種、地理的領域、インデックス事象からの時間、BMI、喫煙歴、糖尿病およびベースラインLDL-Cの調整を実施した。ベースラインLp(a)四分位数によって層別化された、MACEに対する相対および絶対処置効果は、図12に示されている。表9に示されるように、ベースラインLp(a)レベルが増大するにつれ、アリロクマブ処置によるMACEおよび非致死性MIの発生率のより大きい低減が観察された。ベースラインLp(a)四分位数と、CHD死または全死因死の発生率の低減におけるアリロクマブの効果の間の関係は観察されなかった。
【0239】
全体的に、MACEのハザード比(アリロクマブ/プラセボ)は、0.85(95%信頼区間[CI]0.78~0.93、P<0.001)であり、1.6%の絶対リスク低減を有していた。MACEの相対リスクに対する、処置およびベースラインLp(a)四分位数の統計的に有意な相互作用はなかった。対照的に、アリロクマブを用いた場合の絶対リスク低減は、ベースラインLp(a)の下部四分位数(0.4%および1.4%、相互作用P値0.0011)よりも、上部四分位数において数倍大きかった(2.3%および2.1%)。1つのMACEを防ぐために、2.8年の中央値の間、アリロクマブを用いて処置することを必要とする患者数は、ベースラインLp(a)の四分位数1、2、3および4それぞれにおいて250、71、43および47であった。
【0240】
ベースラインLDL-C>100mg/dL(>2.59mmol/l)、ベースラインLp(a)>中央値(21.2mg/dl)または両方を有する患者を、アリロクマブ処置から恩恵を受けた患者として同定した(図13)。
【0241】
【表13】
【0242】
e.Lp(a)レベルに対するアリロクマブの効果
研究の経過にわたる患者におけるLp(a)レベルも解析した。図14は、Lp(a)のベースライン四分位数および処置群別の、Lp(a)濃度中央値を示す。Lp(a)のベースライン分布は、両処置群において同様であった。図18Aおよび18Bに示されるように、アリロクマブは、最初の処置から4ヶ月の患者においてLp(a)レベルを有意に低減し、低減は、研究の最後まで維持された。さらに、LDL-CおよびLp(a)のベースラインから4ヶ月での絶対変化を、四分位数に従って分けられた4つのベースラインLp(a)カテゴリーにおいてアリロクマブ群内で比較した。図15は、アリロクマブ群(図15A)およびプラセボ群(図15B)におけるLp(a)、LDL-CおよびLDL-C補正のベースラインから4ヶ月への絶対変化を示す。絶対Lp(a)変化は、Lp(a)四分位数にわたる規模で増大した一方で、絶対LDL-C変化は、Lp(a)四分位数にわたって一定であった(表10)。したがって、これらの患者においてLDL-C低下とLp(a)低下の間で相関は観察されなかった。
【0243】
全体として、アリロクマブ群におけるベースラインから4ヶ月への相対および絶対変化中央値は、それぞれ、-23%(IQR-47%、0%)および-5.0mg/dl(IQR-13.5、0)であった。アリロクマブ処置を用いた場合のLp(a)の相対変化は、ベースラインLp(a)四分位数にわたって同様であったが、四分位数1の0mg/dlから四分位数4の-20.2mg/dlの範囲の、絶対変化中央値の実質的な勾配があった。LDL-Cの変化は、すべてのLp(a)四分位数において同様であったが、対照的に、LDL-C補正の変化は、上部Lp(a)四分位数において小さく、-51.1mg/dl(IQR-67.2、-33.7)の全体の変化中央値を有していた(図15A)。ベースラインLp(a)は、Lp(a)のベースラインから4ヶ月への変化を用いて強力に補正され、補正LDL-Cおよび補正非HDL-Cの変化を用いて弱く補正された(図16A、16Bおよび16C)。プラセボ群において経時的なLp(a)レベルの系統的な変化はなかった(図15B)。
【0244】
【表14】
【0245】
f.アウトカムに対するLp(a)変化の効果
アリロクマブ処置によるLp(a)レベルの修飾と、エンドポイント事象の間の関連を決定するために、ベースラインから4ヶ月へのLp(a)の変化と、4ヶ月後のMACEのリスクおよび副次的エンドポイントの間の関係を、アリロクマブ群の患者の間でのCox比例ハザード回帰モデルを用いて説明した。目的の各アウトカムのために4つのモデルを開発した:共変数を用いないモデル(未調整モデル;モデル1)、ベースラインLp(a)について調整されたモデル(モデル2);ベースラインLDL C補正およびLDL C補正のベースラインから4ヶ月の変化(モデル3A)またはベースライン非HDL C補正および非HDL C補正のベースラインから4ヶ月の変化(モデル3B)のいずれかについてさらに調整されたモデル;ならびにモデル3におけるすべての変数ならびにLDL C補正(モデル4A)または非HDL C補正(モデル4B)のいずれかとともに上記で列挙された人口統計および臨床変数について調整されたモデル。したがって、この第4のモデルは、LDL-C補正および非HDL C補正の変化に対するアリロクマブの効果と独立している、アリロクマブによる処置別の、目的のアウトカムに対するLp(a)の変化の効果を示す。
【0246】
モデル2および3Aの比較は、Lp(a)の変化とMACEの間の関係が、LDL C補正の同時変化についての調整によって修飾されるか否か示す。同様に、モデル2および3Bの比較は、Lp(a)の変化とMACEの間の関係が、すべてのその他のアポB含有リポタンパク質の同時変化についての調整によって修飾されるか否かを示す。効果は、4ヶ月でのLp(a)(すべてのモデル)における、およびLDL C補正または非HDL C補正における1mg/dl低減あたりのハザード比によってまとめられた(モデル3A、3B、4Aおよび4B)。Lp(a)の低下およびLDL C補正(モデル3A)または非HDL C補正(モデル3B)の同時低下に起因し得る、アリロクマブを用いるMACEのリスクの推定される低減を、ベースラインLp(a)の分布にわたって算出した。表11は、補正LDL-Cまたは補正非HDL-Cについての同時調整を伴う、アリロクマブ処置下でのLp(a)の変化を、MACEのリスクと関連付ける逐次Cox比例ハザードモデルの結果を示す。
【0247】
【表15】
【0248】
表12は、CHD死または非致死性心筋梗塞、CV死および全死因死のモデリングを示す。未調整モデルでは、Lp(a)の変化とMACEのリスクの間で有意な関係は見出されなかった(モデル1)。ベースラインLp(a)の調整後、Lp(a)の変化とMACEの有意な関係が明らかであった(モデル2)。これは、アリロクマブ処置での、より高いベースラインLp(a)が、より大きい心血管リスクおよびLp(a)のより大きい低減と関連しているからであり、従って、前者を考慮すると、後者のMACEのリスクとの関係が顕在化される。重要なことに、LDL-C補正のベースラインおよびベースラインから4ヶ月への変化または非HDL-C補正のベースラインおよびベースラインから4ヶ月への変化についてのさらなる調整は、関係を減弱しなかった(それぞれ、モデル2および3Aおよび3Bの比較)。LDL-C補正または非HDL-C補正について調整されたモデルでは(モデル3Aおよび3B)、Lp(a)の1mg/dl低下は、それぞれ、0.994(95% CI 0.990~0.998)および0.994(95% CI 0.990~0.998)のMACEのハザード比と関連していた。これは、アリロクマブ処置下でのLp(a)の低減は、LDL-C補正または非HDL-C補正の同時低減と独立したMACEのリスクの低減と関連していたことを示す。人口統計および臨床変数のさらなる調整は、関係に対して最小の効果しか有していなかった(モデル4Aおよび4B)。
【0249】
【表16】
【表17】
【0250】
アリロクマブ処置下でのLp(a)変化の規模は、ベースラインLp(a)濃度につれて増大した。例えば、ベースラインLp(a)分布の25、50および75パーセンタイルの患者は、-1.6、-4.8および-13.4mg/dlのアリロクマブ処置下でのLp(a)の予測される変化を有していた。図17AおよびBは、ベースラインLp(a)について調整された4ヶ月でのLp(a)の絶対変化、ならびにLDL-C補正のベースラインおよび絶対変化(図17A)または非HDL-C補正のベースラインおよび絶対変化(図17B)の間の関係を示す。これらのモデルでは、Lp(a)およびLp(a)に起因し得るLDL-C補正の変化による組み合わされた相対リスク低減の割合は、ログハザード比をベースとして、それぞれ、ベースラインLp(a)の25、50および75パーセンタイルで4%、11%および27%である。非HDL-C補正モデルにおけるLp(a)の変化による組み合わされた相対リスク低減の対応する割合は、それぞれ、ベースラインLp(a)の25、50および75パーセンタイルで4%、12%および29%である。したがって、低いベースラインLp(a)を有する患者の中では、アリロクマブを用いるLp(a)の低減は、MACEの低減に最小にしか寄与しない。対照的に、高いベースラインLp(a)を有する患者の中では、アリロクマブを用いるLp(a)の低減は、MACEの低減に実質的に寄与するが、補正LDL(または非HDL)-Cの低減の効果は、主要なままである。
【0251】
したがって、アリロクマブ処置下でのLp(a)変化の規模および心血管リスク低減へのその寄与は、ベースラインLp(a)濃度につれて増大した。例えば、ベースラインLp(a)の25、50および75パーセンタイルで、-1.6、-4.8および-13.4mg/dlのLp(a)変化と関連するMACEのハザード比は、それぞれ、0.991、0.973および0.928であり、Lp(a)の変化に起因し得るMACEのリスクの低減の割合は、4%、10%および26%であった。したがって、より高いベースラインLp(a)を有する患者の中では、アリロクマブを用いるLp(a)低減は、MACEの低減に対する突出した寄与体となる。これらの結果は、Lp(a)低減とMACEまたは非致死性MIの間の関係は、LDL-Cレベルと独立していたことを示唆する。絶対Lp(a)変化の時間加重移動平均と、虚血性脳卒中、CHD死、CV死または全死因死の間に関係はなかった。
【0252】
g.総事象に対するLp(a)変化の効果
アリロクマブ処置を用いた場合に観察された総事象(非致死性CV事象および死)の減少に対するLp(a)低減の寄与を調べるために、強化または最大許容スタチン療法にある、ACSおよびLDL-C≧70mg/dL、非HDL-C≧100mg/dLまたはアポB≧80mg/dLを有する患者を、アリロクマブ処置またはプラセボに1:1ランダム化した。ベースラインから4ヶ月へのLp(a)変化とその後の事象の間の関係は、人口統計および臨床変数、ベースラインLp(a)ならびにLDL-Cおよびベースラインから4ヶ月へのLDL-C変化について調整された脆弱性モデル別のアリロクマブ群において記載された。効果は、ベースラインLp(a)パーセンタイルでのハザード比別にまとめられた(表13を参照のこと)。
【0253】
アリロクマブ群では、1,636例の非致死性事象および299例の死が起こった。Lp(a)およびLDL-C低下の組み合わされた効果のうち、Lp(a)変化に起因し得るリスク低減の割合は、それぞれ、ベースラインLp(a)の25、50および75パーセンタイルで5%、13%および30%であった。したがって、アリロクマブによるLp(a)低下は、特に、より高いベースラインLp(a)レベルを有する患者の中で、総事象の低減に寄与した。LDL-C変化についての調整後でさえ、アリロクマブによって誘導されたLp(a)低下は、総事象の低リスクと関連していた。
【0254】
【表18】
【0255】
結論
ベースラインLp(a)レベルは、ベースラインLDL-Cレベルおよび人口統計および臨床変数と独立して、アリロクマブおよびプラセボ群の両方においてMACE、CHD死および非致死性MIを予測した。ベースラインLp(a)は、死または虚血性脳卒中を予測しなかった。ベースラインLp(a)はまた、MACEおよび非致死性MIに対するアリロクマブ処置の利益と関連していた。したがって、ベースラインLp(a)レベルは、アリロクマブによる処置およびベースラインLDL-Cとは独立した、最近のACSを有する患者の中での、MACEおよび非致死性MIの独立予測変数であった。
【0256】
さらに、Lp(a)レベルのベースラインからの変化中央値は、アリロクマブを用いた場合におよそ-5mg/dL、プラセボを用いた場合に0mg/dLであった。アリロクマブ群では、Lp(a)の低減は、人口統計および臨床変数、ベースラインLDL-CおよびベースラインからのLDL-C変化を説明するモデルにおいて、MACEおよび非致死性MIの低減を予測した。Lp(a)低減と、卒中または死亡の間に関係は観察されなかった。プラセボ群では、ベースラインからの系統的な変化がなかった場合、Lp(a)の変化は、任意のアウトカム事象を予測しなかった。この研究では、コホート中央値(21mg/dL)の、もしくはそれより上のLp(a)のレベルを有する、または100mg/dLの、もしくはそれより上のLDL-Cのレベルを有する患者は、アリロクマブ処置から利益を導き出した。したがって、アリロクマブによるLp(a)低下は、ベースラインLDL-Cおよび同時LDL-C低下と独立して、MACEのリスクの低減、非致死性MIおよび総事象の低減と関連していた。
【実施例5】
【0257】
二次解析:1年より長く処置された患者における急性冠動脈症候群後の死亡およびMACEに対するアリロクマブの効果
二次(事後)解析による、特に興味深い患者の群は、12ヶ月より長い間処置されてきたものである。表14に示されるように、12ヶ月未満の間アリロクマブの処置を受けた、100mg/dLの、もしくはそれより上のベースラインLDL-Cレベルを有する患者は、MACEの低減(HR=0.81(信頼区間0.66~1.01))を示した。同一集団がアリロクマブを用いて12ヶ月よりも長い間処置された場合は、MACE事象の低減は増大され、有意であった(HR=0.71(信頼区間0.58~0.87))。全死因死について、同様の傾向が観察された。アリロクマブの処置を12ヶ月未満の間受けた、100mg/dLを上回るベースラインLDL-Cを有する患者は、全死因死の低減を示した(HR=0.79(信頼区間0.51~1.22))。同一集団がアリロクマブを用いて12ヶ月よりも長い間処置された場合は、全死因死が減少し、有意であった(HR=0.67(信頼区間0.50~0.89))。少なくとも3年のフォローアップに適格であった8242人の患者におけるMACEおよび全死因死のさらなる予め指定された解析が、図20に示されている。治療企図(ITT)集団の44%より多くが、3年を超えて処置された。本明細書において示されるように、総研究集団におけるMACE事象(図20A;HR0.85)および全死因死(図20C;HR0.85)と比較して、少なくとも3年間処置された集団において、低率のMACE事象(図20B;HR0.83)および全死因死(図20D;HR0.78)が観察された。
【0258】
これらの結果は、アリロクマブ処置の利益は生じ続け、全集団において、ならびに100mg/dLの、またはそれより上のベースラインLDL-Cレベルを有する患者において、最初の1年を超える大きなリスク低減を有することを示す。
【0259】
【表19】
【実施例6】
【0260】
二次解析-1年より長く処置された患者における全死因死、心血管死および非心血管死に対するアリロクマブの効果
a.全死因死に対する効果
合計726人(3.8%)の患者が治験の間に死亡した。総患者コホート、生存者および死亡した患者のベースライン特徴が、表16にまとめられている。アリロクマブ群では、プラセボ群よりも死亡が少なかった(それぞれ、334人[3.5%]対392人[4.1%]、;HR0.85、95%CI 0.73~0.98;p=0.026;表15)。アリロクマブおよびプラセボ群における、それぞれ、5.3%および6.4%の4年での死の4年カプラン・マイヤー推定値に基づいて、絶対リスク低減は、1.1%であり、1つの死を防ぐために4年間処置される必要がある患者数は87であった。
【0261】
【表20】
【0262】
主要エンドポイントと同様に、全死因死で一定でない処置ハザード率を可能にすると、アリロクマブの処置効果の遅れを示唆し;最初の1年の間処置利益はなかった(HR1.01、95%CI 0.77~1.32;p=0.95)が、最初の1年の後には明らかであった(HR0.79、95%CI 0.66~0.94;p=0.0073;モデルフィット対一定ハザードモデル[0.85のHRを有する]における改善についてp=0.13)。
【0263】
多数のスタチン治験における脂質低下の遅延された利益の以前の証拠を考慮して、予め指定された解析によって、アリロクマブを用いた場合の死の低減が、処置の期間の可能性と関連しているか否かを調べた。死は、3年以上のフォローアップに適格な8242人の患者(全研究コホートの44%)の中で調べられた。共通の研究終了日の前の3年未満の間に登録された患者のこのサブセットおよび残りのサブセットのベースライン特徴が、表17に記載されている。3年以上のフォローアップに的確な患者の中で、全死因死に対するアリロクマブの利益は、治験集団全体においてよりも明白であった、すなわち、アリロクマブは、死を22%低減した(HR0.78、95%CI 0.65~0.94;p=0.01;図20D)。3年未満のフォローアップに適格な患者については、全死因死亡の処置ハザード比は、0.96であった(95%CI 0.76~1.21;p=0.71;相互作用p=0.19)。
【0264】
【表21】
【表22】
【0265】
【表23】
【表24】
【0266】
b.心血管および非心血管死に対する効果
CHD死は、アリロクマブ群では205人(2.2%)の患者において、プラセボ群では222人(2.3%)の患者において生じ(HR0.92、95%CI 0.76~1.11;p=0.38)、726の全死亡数のうち427人(58.8%)に相当した。心血管死は、アリロクマブ群では240人(2.5%)の患者において、プラセボ群では271人(2.9%)の患者において生じ(HR0.88、95%CI 0.74~1.05;p=0.15)、全死因死亡のうち511人の死(70.4%)に相当した。非CV死は、プラセボと比較してアリロクマブを用いた場合に、数値的に、ただし有意ではなく低かった(94[1.0%]対121[1.3%];HR0.77、95%CI 0.59~1.01;p=0.06)(表15)。判定されたCVおよび非CV死因は、表18および19にまとめられている。低割合の未確定の死因があった。プラセボ群においてよりも31人少ないアリロクマブ群におけるCV死の中で、群間の最大の差は、致死性心筋梗塞(n=10)および心臓突然死(n=8)についてであった。プラセボ群に対して27人少ないアリロクマブ群における非CV死因の中で、最大の差は、肺性(n=14)の死因による死についてであった。
【0267】
【表25】
【0268】
【表26】
【0269】
c.非致死性心血管事象と非心血管死の間の関係
全体的に、プラセボ群においてよりも206人少ないアリロクマブ群における非致死性CV事象があった(HR0.83、95%CI 0.76~0.91;p<0.0001)。非致死性CV事象および非CV死が、順序関数として記載される場合は(表20)、第1の事象、第2の事象および第3またはそれ以上の事象として、プラセボを用いた場合よりもアリロクマブを用いた場合に数値的により少ない両種類の事象があり、これは、2種類の事象間の連関を示唆した。
【0270】
さらに、非致死性CV事象を有することを条件として、その後の非CV死のリスクはより高かった。アリロクマブおよびプラセボ群において第1の事象のリスクにある患者の中で、非CV死は、それぞれ、0.8%および0.9%において第1の事象として生じた。ランダム化後1.1(0.4、1.9)年の全中央値で第1の非致死性CV事象が生じた後、非CV死は、アリロクマブおよびプラセボ群における患者のそれぞれ、1.8%および2.0%において第2の事象として生じた。同様に、ランダム化後1.5(0.9、2.3)年の全中央値で第2の非致死性CV事象が生じた後、非CV死は、アリロクマブおよびプラセボ群における患者のそれぞれ、3.7%および6.2%において第3の事象として生じた。定性的に、これらのデータは、連続する以前の非致死性CV事象各々が、非CV死のその後のリスクの増大と関連していることを示す。
【0271】
【表27】
【0272】
この可能性を定量的に調査するために、ハザード関数において処置割り当ておよび登録の領域を用いる共同セミパラメトリックモデルを構築した(表21)。モデルは、アリロクマブがCV死亡の低減の予測変数であり(p=0.043)、2.15(95%CI 1.61~2.69)の関連パラメータを提供することを示し、非致死性CV事象のより高いリスクにある患者はまた、CV死のより高いリスクにあることを示した。したがって、先行する非致死性CV事象と、その後の致死性CV事象の間の依存性は、アリロクマブを用いた場合の前者の低減と相まって、非致死性CV事象の防止が、アリロクマブを用いた場合のCV死の少ない数を説明し得ることを示す。
【0273】
【表28】
【0274】
非致死性CV事象と非CV死の間の関係の強度が、非致死性CV事象および/または非CV死の予後である因子についての調整によって影響を受けたか否かを調査するために、一連の単変量共同セミパラメトリックモデルを、これらの事象を予測するものであると予想される予測変数を用いてフィットした。調整モデルの収束を可能にした単変量モデルに、非致死性CV事象または非CV死と有意に関連していたすべての因子を含めた後、推定される関連パラメータは有意なままであり(1.82、95%CI:1.08~2.55;p<0.0001)、これは、非致死性CV事象と非CV死の間の持続的で、強力な関係を示した。
【0275】
d.死とベースラインおよび達成されたLDL-Cレベルとの関係
事後解析では、死を、ベースラインLDL-Cレベルの3つの予め定義された亜群(<80mg/dL[2.07mmol/L]、80~<100mg/dL[2.07~<2.59mmol/L]および≧100mg/dL[2.59mmol/L];図8A~8C)において調べた。死のHRは、ベースラインLDL-C≧100mg/dLを有する亜群において数値的に最低であった(HR0.71、95%CI 0.56~0.90)が、ベースラインLDL-Cのカテゴリーにわたる死の相対リスクに対してアリロクマブの効果の有意な不均一性はなかった(p相互作用=0.12)。対照的に、プラセボ群における死の絶対リスクの有意な勾配ならびにベースラインLDL-C亜群にわたるアリロクマブおよびプラセボ群の間の死の絶対差があり、プラセボ群において最大リスクを有し、ベースラインLDL-C≧100mg/dLを有する亜群においてアリロクマブを用いた場合に最大のリスク低減が観察された(P相互作用<0.005)。ベースラインLDL-C値≧100mg/dLを有する患者の4年での全死因死のカプラン・マイヤー推定値を使用して(5.8%対9.6%)、絶対リスク低減は、3.8%であり、その患者サブセットにおいて1つの死を避けるために4年間処置される必要がある数は26であった。
【0276】
さらなる解析によって、ランダム化の4ヶ月後に達成されたLDL-Cレベルと、その時間の後に生じる死の間の関係が調査された。達成されたLDL-Cの四分位数に従う線形モデルでは、4ヶ月で達成されたLDL-C値が低い患者ほど、全死因死のリスクが低かった(p=0.005)(表22)。治験集団が、処置割り当てによって層別化された場合は、プラセボ群では4ヶ月で達成されたLDL-C値と、その後の死の間に関係はなく、4ヶ月でのLDL-C値中央値は87mg/dL(2.25mmol/L)であった(表23)。対照的に、アリロクマブ群では強力な関係が明白であり(表4)、4ヶ月の達成LDL-C値中央値は、31mg/dL(0.80mmol/L)であった。達成されたLDL-Cの連続値を、全死因死のリスクと関連付けるスプライン解析は、同様の知見をもたらした:全治験コホートにおける4ヶ月で達成されたLDL-Cと、その後の死の間の関係は、ほぼ単調関数であり(モデルのp値=0.007)(図19A)、アリロクマブ群においてより明白であった(図19C)。対照的に、プラセボ群における関係は、U型であり、患者の死亡率が高いほど、4ヶ月で達成されるLDL-Cは最低または最高のいずれかであった(図19B)。
【0277】
【表29】
【0278】
【表30】
【0279】
結論
アリロクマブは、強化スタチン処置でアテローム生成性リポタンパク質が上昇した患者においてACS後の死を低減し、CVおよび非CV死に対する一致した効果を有していた。ベースラインでより高いLDL-Cを有する、または≧3年間フォローアップされた患者は、アリロクマブを用いた場合の死において特に突出した低減を有していた。達成されたLDL-Cが低いほど、より少ない死と関連しており、特に、アリロクマブを用いる4ヶ月の処置で低いLDL-Cレベルを達成している患者は、死のリスクの低減を経験した。共同セミパラメトリックモデル解析は、非CV死のリスクが、非致死性CV事象(例えば、非致死性MI、入院を必要とする不安定狭心症および非致死性虚血性脳卒中)のリスクと連関していることおよびアリロクマブが非致死性CV事象に対して強力な効果を有することを実証した。したがって、アリロクマブを用いる非致死性CV事象の防止は、非CV死の低減と関連していた。
【実施例7】
【0280】
二次解析-致死性および非致死性心血管事象の総数に対するアリロクマブの効果
非CV死のリスクは、非致死性CV事象のリスクとは独立しており、LDL-C低下によって修飾可能ではないと日常的に仮定される。さらに、以前の治験(FOURIER、SPIRE)は、非CV死に対する効果を実証できなかった。したがって、さらなる二次解析では、非致死性および致死性事象間の潜在的関係を説明する共同脆弱性モデルを使用して、総(第1のおよびその後の)非致死性心血管(CV)事象および全死因死に対するアリロクマブの効果を解析した。この解析は、全死因死および総非致死性CV事象(MI、卒中、UAもしくは心不全のための入院または虚血駆動性冠血行再建)を含んでいた。感度解析は、非致死性事象をMI、卒中またはUAに制限した。総非致死性および致死性事象ハザード関数は、患者にわたるリスク不均一性を説明し、患者内非致死性事象を相関させる共有脆弱性によって連関される共同モデルによって別個に推定した。モデルはまた、非致死性事象が死のリスクの増大と関連しているか否かを決定した。モデルは、非致死性事象が死のリスクの増大と関連している場合は、非致死性事象リスクの正確な相対推定値を提供する。処置効果は、HRによってまとめられ、第1の非致死性CV事象または死の通例の解析に対して比較した。
【0281】
5425人の総死亡数または非致死性CV事象があり、第1の事象(3064人)よりも77%多かった。アリロクマブは、プラセボと比較して、第1の、および総事象において同様の相対低減をもたらした。重要なことに、190少ない第1の非致死性心血管または死事象(プラセボの1,627事象、アリロクマブの1,437事象)に対して、アリロクマブを用いた場合に385少ない総非致死性心血管または死事象(プラセボの2,905事象、アリロクマブの2,520事象)があった(図23)。したがって、第1の事象の解析は、2.8年の中央値を超えるアリロクマブ処置と関連する総事象低減の約半分のみを反映する。
【0282】
4年で、ランダム化後所与の時間でのプラセボおよびアリロクマブ群中の所与の患者の非致死性心血管事象の予測される総数の推定値は、それぞれ0.357および0.301であった。対照的に、プラセボおよびアリロクマブ群における第1の非致死性心血管事象を有する患者の予測される割合は、それぞれ0.183および0.160であった。1つの非致死性事象を防ぐために4年間処置する必要がある数は、総事象に基づいて18(11~53)および第1の事象に基づいて44(26~129)である。
【0283】
非致死性CV事象は、著しく高い死のリスクと関連しており、脆弱性分散は、リスクの実質的な患者内不均一性を示した(表24)。
【0284】
【表31】
【0285】
4年での推定される割合に基づいて、1つの非致死性事象を防ぐために処置する必要がある数(95%CI)は、第1の事象に基づいて44(26~129)であり、総事象に基づいて18(11~53)である。したがって、総事象を説明することによって、研究集団における進行中の疾患の高負荷およびアリロクマブによるその負荷の減少が例示される(図22)。ベースラインLDL-C亜群による対応する(事後)プロットが、図23Aおよび23Bに示されている。図23Aでは、4年でのプラセボおよびアリロクマブ群におけるベースラインLDL-C≧100mg/dLを有する所与の患者の非致死性心血管事象の予測された数は、それぞれ、0.489および0.380であり、一方で、プラセボおよびアリロクマブ群における第1の非致死性心血管事象を有する患者の予測される割合は、それぞれ、0.237および0.183であった。1つの非致死性事象を防ぐために4年間処置する必要がある数(95%CI)は、第1の事象に基づいて19(12~45)および総事象に基づいて9(5~46)である。総事象に基づいてLDL-C≧100mg/dL亜群において1つの非致死性事象を防ぐために処置する必要がある数は、9(5~46)である。図23Bでは、4年でプラセボおよびアリロクマブ群においてベースラインLDL-C<100mg/dLを有する所与の患者について、非致死性心血管事象の予測される数は、それぞれ、0.160および0.151であり、一方で、プラセボおよびアリロクマブ群における第1の非致死性心血管事象を有する患者の予測される割合は、それぞれ、0.302および0.267であった。1つの非致死性事象を防ぐために4年間処置する必要がある数(95%CI)は、第1の事象に基づいて103(38~-140)および総事象に基づいて29(14~-217)である(CIにおける負の値は、害を反映する)。
【0286】
ランダム化後の判定された非致死性心血管事象の種類およびカウントが、以下の表25にまとめられている。心筋梗塞および冠血行再建は、最も一般的な種類の事象であり、処置群内の各事象の種類の割合は同様であった。アリロクマブにランダム化された患者は、入院を必要とする心不全を除いて、どの種類の非致死性心血管事象も数値的に少なかった。
【0287】
【表32】
【0288】
研究集団全体の、および100mg/dLのベースラインレベルで層別化されたLDL-C亜群の総非致死性心血管および死共同脆弱性モデル結果が、図24に示されている。相互作用p値(非致死性事象についてp=0.02、死についてp=0.03)に基づいて、総非致死性心血管事象および死の両方に対する相対アリロクマブ処置効果において有意に不均一性のエビデンスがあり、ランダム化時に≧100mg/dLの亜群が、より大きな相対利益を導き出した。この結果はまた、図23Aおよび23Bにおける知見と一致する。
【0289】
表26には、順序事象別の死および非致死性心血管事象の分布がまとめられている。5,425の総死亡数または非致死性心血管事象があり、第1の事象(n=3,064)よりも77%多かった。患者の大部分が、研究の間に事象を経験しなかったが、患者の大きなサブセットが、1を超える事象を経験した(1,261人の患者)。アリロクマブおよびプラセボ群において第1の事象のリスクにある患者の中で、死はそれぞれ2.2%および2.5%で第1の事象として生じた。注目すべきことに、第1の非致死性心血管事象を有することを条件とすると、その後の死のリスクはより大きかった。ランダム化後1.0(0.4、1.7)年の全体の中央値で第1の非致死性心血管事象が生じた後、死はそれぞれアリロクマブおよびプラセボ群の患者の5.7%および5.0%で第2の事象として生じた。同様に、ランダム化後1.2(0.6、2.0)年の全体の中央値で第2の非致死性心血管事象が生じた後、死はそれぞれアリロクマブおよびプラセボ群の患者の6.2%および6.6%で第3の事象として生じた。定性的に、これらのデータは、連続する以前の非致死性心血管事象各々が、死のその後のリスクの増大と関連していることを示す。共同脆弱性モデルは、非致死性心血管事象のリスクと死を関連付ける2.04(1.78~2.29)の関連パラメータ(95%CI)を用いるこの知見を確認する。
【0290】
【表33】
【0291】
事象頻度カテゴリーによって定義される群別のベースライン特徴が、以下の表27にまとめられている。糖尿病、高血圧症およびACSインデックス事象以前のMIを含めて、少なくとも1つの事象を有する患者は、研究の間に、事象を有さない患者よりも、より高齢であり、より高いベースラインLDL-Cを有し、ACSインデックス事象以前の糖尿病、高血圧症およびMIを含む併存疾患を有する可能性がより高かった。少なくとも1つの事象を有する群と比較して、複数の事象または死の事象のみを有する患者は、単一の非致死性事象を有する患者に対して、より高いベースラインLDL-Cを有しており、併存疾患の点でいくつかの相違があった。
【0292】
【表34】
【表35】
【0293】
共同脆弱性モデルも使用して、種々のベースラインLDL-C亜群を解析した(図25を参照のこと)。相互作用p値は、ベースラインLDL-C亜群別の総非致死性心血管事象および死に対する相対処置効果において有意な不均一性を示す。ベースラインLDL-C)レベル≧100mg/dLを有する5,629人の患者の中で、アリロクマブは、総非致死性心血管事象および死を255低減した。対照的に、ベースラインLDL-C<100mg/dLを有する13,295人の患者の中で、アリロクマブは、総非致死性心血管事象および死を130低減した。
【0294】
結論
結論として、28ヶ月の中央値の間フォローアップされたACSを有する患者において、アリロクマブを用いて防止された死および非致死性CV事象の総数は、防止された第1の事象の数の2倍であった。アリロクマブは、非致死性と致死性事象リスクの間の強力な関連の存在下で非致死性CV事象および死を低減した。低く達成されたLDL-Cは、より少ない死と関連していた。
【実施例8】
【0295】
二次解析-糖尿病性および前糖尿病ACS患者におけるアリロクマブの効果
特に興味深いACS患者のさらなる群は、糖尿病および前糖尿病を有するものであるが、これは、ACSを有する患者の大部分が、糖代謝異常を有するからである。糖尿病を有するACS患者は、糖尿病を有さないACS患者よりも再発性虚血性心血管事象のより高いリスクにあり、高強度スタチン療法またはエゼチミブおよびスタチン処置からより大きい絶対利益を導き出す。この予め指定された解析では、糖尿病、前糖尿病または正常血糖の人の中でアリロクマブまたはプラセボのCV効能および糖代謝安全性を比較した。
【0296】
a.ベースライン特徴
ランダム化時に、5444人(28.8%)の患者が糖尿病を有し、8246人(43.6%)の患者が前糖尿病を有し、5234人(27.7%)の患者が正常血糖を有していた。各糖代謝カテゴリーにおいて、ベースライン特徴は、アリロクマブおよびプラセボ群の間で十分に釣り合っていた。正常血糖の、前糖尿病の、および糖尿病患者のベースライン特徴は、表28に提供されており、処置群別の血糖層にわたるベースライン特徴は、表29に提供されている。ほとんどの患者は、インデックスACS事象のための冠血行再建を行い、二重抗血小板剤、β遮断薬およびレニン-アンジオテンシン系の阻害剤を用いるエビデンスベースの処置を受けた。肥満度指数、非HDLコレステロールおよびトリグリセリドのより高いベースライン値および低いレベルのHDLコレステロールが、糖代謝層にわたって観察された。糖代謝層にわたるLDLコレステロールレベルの勾配はなかった。
【0297】
【表36】
【0298】
【表37】
【0299】
b.糖代謝状態別のプラセボ群における心血管事象
16週の処置後(治療企図集団)、LDL-C、非HDL-C、HDL-Cおよびトリグリセリドのレベルは、アリロクマブアームおよびプラセボアームの両方において3つの正常血糖の、前糖尿病の、および糖尿病患者亜群の間で同様であった。プラセボ群では、主要エンドポイントの速度は、ベースライン時の糖尿病、前糖尿病および正常血糖を有するものについて、それぞれ6.5、3.4および3.1/100人-年であった(図26)。プラセボ群では、同様の脂質パラメータを有するにもかかわらず、糖尿病患者は、MACEの発生率が上昇した。糖尿病対正常血糖および前糖尿病対正常血糖を有するものの中の主要エンドポイントの対応する未調整ハザード比は、それぞれ、2.09(95%CI、1.78~2.46)および1.10(95%CI、0.93~1.30)であった(図27)。主要エンドポイントの個々の成分の類似のデータは、表30に提供されている。
【0300】
【表38】
【0301】
c.脂質に対するアリロクマブの効果
図26は、ベースライン糖代謝カテゴリーによって層別化された各処置群における4ヶ月での脂質パラメータの変化中央値を示す。4ヶ月でのLDL-Cにおけるベースラインからの変化は、各糖代謝カテゴリーにおいて同様であった(アリロクマブを用いた場合の中央値-64%~-65%;プラセボを用いた場合+1.0%~0%)。
【0302】
アリロクマブ処置患者では、4ヶ月でのLDL-C値中央値(四分位数1、四分位数3)は、プラセボに割り当てられた患者の中での87mg/dL(71、107)、87mg/dL(72、107)および88mg/dL(73、107)と比較して、それぞれ、糖尿病、前糖尿病および正常血糖を有する患者の中で31mg/dL(20、47)、31mg/dL(21、49)および31mg/dL(21、50)であった。
【0303】
d.糖代謝状態に従うエンドポイント事象に対するアリロクマブの効果
表31は、割り当てられた処置およびベースライン糖代謝状態別のMACEの発生率の予め指定された解析を示す。アリロクマブは、糖尿病(HR、0.84;95% CI、0.74~0.97)、前糖尿病(HR、0.86;95% CI、0.74~1.00)および正常血糖(HR、0.85;95% CI、0.70~1.03)を有する患者における主要エンドポイントのリスクの同様の相対低減をもたらし、糖代謝状態および処置の有意な相互作用はなかった。しかし、ベースライン時に糖尿病を有する患者の中で、ACS後の再発性虚血性事象のリスクは、強化スタチン処置にもかかわらず高かった。そのようなものとして、ベースライン時の実質的により高い絶対リスクは、糖尿病を有する患者の中で、アリロクマブ処置(-2.3%)を用いた場合に、前糖尿病(-1.2%)または正常血糖(-1.2%;P相互作用=0.0019)を有するものと比較して、より大きな絶対リスク低減をもたらした(表31)。したがって、最近のACSおよび糖尿病を有する患者は、最大許容スタチンに付加されたアリロクマブから最大の絶対利益を導き出した。
【0304】
【表39】
【0305】
e. アリロクマブの血糖安全性
図28は、ベースライン時に糖尿病を有さない患者における、別個に、前糖尿病または正常血糖を有する患者における、HbA1c、空腹時グルコースおよび新規発症糖尿病の発生率に対するアリロクマブの効果を示す。ベースライン時に糖尿病を有さない患者の中で、アリロクマブ処置は、プラセボと比較して、低い平均HbA1c(5.78%対5.80%、P=0.0008)、同様の平均空腹時グルコース(5.67対5.68mmol/L、P=0.84)をもたらし、新規発症糖尿病の過度のリスク(HR、1.00;95% CI、0.89~1.11)をもたらさなかった。ベースライン時に前糖尿病または正常血糖の別個のカテゴリーを考慮した場合、結果は同様であった。そのようなものとして、アリロクマブを用いた場合の空腹時血清グルコースまたはHbA1cの増大のエビデンスは、プラセボを用いた場合と比較して観察されなかった。さらに、この研究の期間にわたって、アリロクマブを用いた場合の新規発症糖尿病、予め指定された安全性エンドポイントの全体的な増大は、プラセボを用いた場合と比較して観察されなかった(図28および表4を参照のこと)。
【0306】
結論
最近のACSを有する、糖尿病性、前糖尿病の、および正常血糖の患者の予め指定された解析では、最近のACSおよび糖尿病を有する患者において、最大許容スタチンに付加されたアリロクマブから最大絶対利益が導き出された。最近のACSおよび糖尿病を有するこれらの患者について、LDL-Cレベル25~50mg/dlを標的とするアリロクマブによる処置は、前糖尿病または正常血糖を有する患者に対して糖尿病を有する患者の中で心血管事象のおよそ2倍の絶対低減を提供する。2.8年のフォローアップ中央値を有し、3~5年のフォローアップに適格な糖尿病を有さない2405人の患者を有し、アリロクマブは、糖血症の尺度(HbA1c、空腹時グルコース)に有害に影響を及ぼさず、または新規発症糖尿病のリスクを増大しなかった。
【実施例9】
【0307】
二次解析-末梢動脈疾患、脳血管疾患または両方を有する患者におけるアリロクマブの効果
2つ以上の血管床において明白なアテローム性動脈硬化症を有する患者は、主要有害心血管事象(MACE)および死の高いリスクを有する。ODYSSEY OUTCOMES治験の二次解析は、アリロクマブの利益が、同時末梢動脈疾患(PAD)、脳血管疾患(CeVD)または両方を伴う冠動脈疾患として定義される多血管疾患の存在に影響を受けたか否かを解析した。フォローアップ中央値は、2.8年であった。
【0308】
a.ベースライン特徴
この解析では、最近のACSを有する患者の3つの亜群は、その他の明白な血管性疾患の分布に基づいて定義された:1)単血管性疾患(公知のPADまたはCeVDをともなわない冠動脈疾患);2)2つの血管床における多血管疾患(冠動脈疾患およびPADまたはCeVDのいずれか);および3)3つの血管床における多血管疾患(PADおよびCeVDの両方を伴う冠動脈疾患)。ACSを有する患者の4つの亜群を用いてさらなる感度解析を実施した:1)PADもCeVDもない;2)同時CeVDをともなう、またはともなわないPAD;3)同時PADをともなう、またはともなわないCeVD;および4)PADおよびCeVDの両方。PADは、四肢または腹部大動脈瘤の動脈疾患を含んでいた。CeVDは、頸動脈内膜切除術、頸動脈ステント留置、以前の卒中または一過性脳虚血発作の病歴として定義された。
【0309】
表32は、単血管性(冠動脈)疾患、2つの床における多血管疾患(PADのみおよびCeVDのみによって分けられた)および3つの床における多血管疾患を有する患者のベースライン特徴をまとめている。ベースライン時に、17,370人の患者は、単血管性疾患を有しており(91.8%)、1,405人の患者は、2つの血管床における多血管疾患を有しており(7.4%;3.2%はPADのみ、4.2%はCeVDのみ)、149人は、3つの血管床における多血管疾患を有していた(0.8%)。単血管性疾患を有する患者と比較して、冠動脈疾患およびPAD、冠動脈疾患およびCeVDならびに3つの床の多血管疾患を有するものは、高齢であり(年齢中央値58、62、62および66歳、p<0.0001);冠動脈およびPADまたは冠動脈およびCeVDを有するものは、単血管性疾患を有するものよりも(24.7%、p<0.0001)、幾分か女性である可能性が高かった(それぞれ、26.7%および33.2%)。CeVDを有するすべての患者のうち、526人(66.2%)は、卒中の病歴を有していた。3つの床において多血管疾患を有する患者は、単血管性(冠動脈)疾患を有する患者と比較して、高血圧症、心筋梗塞および冠動脈バイパス術の病歴を含む、より多くの併存疾患を有していた(すべてp<0.0001)。さらに、単血管性疾患を有する患者に対して、3つの床において多血管疾患を有する患者は、糖尿病のより高い有病率を有しており(43.6%対27.7%;p<0.0001)、現在または以前喫煙者である可能性がより高かった(81.9%対64.9%;p<0.0001)。単血管性疾患を有する患者に対して、3つの床において多血管疾患を有するより多くの患者が、<60ml/分/1.73mの糸球体濾過速度(GFR)を有しており(39.6%対12.3%)、それぞれ、単血管性(冠動脈)疾患、冠動脈およびPAD、冠動脈およびCeVDならびに3つの床における多血管疾患を有する患者において78.5、73.5、72.3および67.0ml/分/1.73mのGFR中央値を有していた(p<0.0001)。表33は、PADまたはCeVDに基づく4つの重複する血管性群のベースライン特徴を示す。
【0310】
【表40】
【表41】
【0311】
【表42】
【表43】
【0312】
b.LDL-C低下
ベースライン時に、LDL-C中央値(四分位数1、四分位数3)は、多血管疾患を有する患者において高く、単血管性(冠動脈)疾患を有する患者において86(73、103)の値、冠動脈およびPAD疾患において91(76、108)、冠動脈およびCeVDにおいて90(75、109)および3つの床における多血管疾患を有する場合95mg/dl(80、115)であった(p<0.0001)。プラセボ群では、4ヶ月でのLDL-C中央値は、単血管性疾患を有する患者において87(72、106);PADのみにおいて90(73、108);CeVDのみにおいて90(73、115);および3つの床における多血管疾患において93mg/dl(78、118)であった。アリロクマブを用いて処置した患者では、4ヶ月のLDL-C中央値は、同一の4つの血管性疾患カテゴリーにおいて30(20、47);34(23、50);34(21、52);および31(20、42)であった。
【0313】
c.主要MACEエンドポイントおよび全死因死
全体的にODYSSEY OUTOCOMES治験において、プラセボおよびアリロクマブ群におけるMACEの発生率は、それぞれ、11.1%および9.5%であり、1.6%(95%信頼区間[CI]、0.7%、2.4%;p=0.0003)の対応する絶対リスク低減(ARR)を有していた(13)。図29Aは、MACEに対するこの全体的な効能が、病気の血管床の数に従う絶対リスクおよびARRの勾配を反映することを示す。1、2または3つの病気の血管床を有するプラセボ群における患者について、MACEの発生率は、それぞれ、10.0%、22.2%および39.7%であった。アリロクマブを用いた場合の対応するARRは、1.4%(0.6%、2.3%)、1.9%(-2.4%、6.2%)および13.0%(-2.0、28.0%)であり、3元相互作用p=0.0012を有していた。対応する1つのMACEを防ぐために処置する必要がある数(NNT)は、すべての患者について64、単血管性(冠動脈)疾患を有する患者について69、2つの床において多血管疾患を有する患者について53および3つの床において多血管疾患を有する患者について8であった。
【0314】
プラセボおよびアリロクマブ群における全死因死の全体的な発生率は、それぞれ、4.1%および3.5%であり、0.6%(95% CI 0.2%、1.2%)の対応するARRを有していた。MACEと同様に、図29Bは、全死因死に対する全体的な効能が、病気の血管床の数に従うアリロクマブを用いる場合の絶対リスクおよびARRの勾配を反映することを示す。プラセボ群では、1、2または3つの病気の血管床を有する死の発生率は、それぞれ、3.5%、10.0%および21.8%であった。アリロクマブを用いた場合、対応するARRは、0.4%(-0.1、1.0)、1.3%(-a1.8%、4.3%)および16.2%(5.5、26.8)であり、3元相互作用p=0.0025を有していた。1つの死を防ぐための対応するNNTは、すべての患者について163、単血管性(冠動脈)疾患を有する患者について236、2つの床において多血管疾患を有する患者について78および3つの床において多血管疾患を有する患者について6であった。
【0315】
単血管性(冠動脈)疾患、2つの床における多血管疾患(PADまたはCeVDによってわけられる)および3つの床における多血管疾患を有する患者の、主要エンドポイントおよび全死因死の、アリロクマブ対プラセボの、事象の総数および対応するHRおよびARRを含む、主要MACEエンドポイントおよび全死因死の詳細が、表34および図30に示されている。表35は、PADまたはCeVDに基づく4つの重複する血管性群のこれらの詳細を示す。
【0316】
【表44】
【0317】
【表45】
【0318】
d.安全性アウトカム
アリロクマブ群においてより多く発生した局所注射部位反応を除いて、全体的に、アリロクマブおよびプラセボ群間で有害事象または検査異常の発生率に差はなかった。表36は、単血管性(冠動脈)疾患、2つの床における多血管疾患(PADまたはCeVDによってわけられる)および3つの床における多血管疾患を有する患者のアリロクマブ対プラセボのすべての安全性エンドポイントを示す。群間で、大きな差は観察されなかった。
【0319】
【表46】
【0320】
結論
ACSおよび脂質代謝異常を有する患者では、強化スタチン療法にもかかわらず、同時PAD、CeVDまたは両方の病歴を含む多血管疾患を有する患者は、MACEおよび死の著しく高いリスクと関連している。これらの患者では、アリロクマブによる処置は、同時PADまたはCeVDをともなわない患者においてよりも大きなARRをもたらした(図30)。したがって、多血管疾患を有する患者は、ACS後のアリロクマブ処置の好ましい候補と考えられなければならない。
【実施例10】
【0321】
二次解析-以前冠動脈バイパス術を受けた患者におけるアリロクマブの効果
a.以前のCABG状態別のベースライン特徴
以前冠動脈バイパス術(CABG)を受けた患者は、広範囲の生来の冠動脈およびバイパス術アテローム性動脈硬化症を有しており、CV事象および死の増大したリスクにある。ODYSSEY OUTOCOMES治験の二次解析では、患者をCABG状態別に分類した:(1)CABGなし(n=16896);(2)インデックスACS前に以前CABGも受けている44人の患者を含む、インデックスACS後であるがランダム化前のCABG(インデックスCABG;n=1025);または(3)インデックスACS前のCABG(以前のCABG;n=1003)(表37)。以前のCABGもインデックスCABGも受けていない患者と比較して、以前のCABGを有するものは、高齢で、女性である頻度が低く、以前のMI、卒中、PAD、糖尿病および高血圧症を有する頻度が高かった。さらに、以前のCABGを有するものは、そのインデックスACSとして非ST部分上昇型MI(NSTEMI)を有する頻度が高く、レニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害剤を受けとっている可能性が高く、ベータ遮断薬を受ける可能性が低かった。以前のCABG患者は、高用量スタチンを受け取っている頻度が低く、その他の脂質低下療法(エゼチミブを含む)を受け取っている頻度が高く、より高いベースラインLDL-C、非HDL-C、アポBおよびリポタンパク質(a)値を有していた。各CABGカテゴリー内で、アリロクマブに、またはプラセボ処置に割り当てられたものの間でベースライン特徴に有意差はなかった。アリロクマブを受け取っており、以前CABGを受けていないもの(27.2%)、インデックスACSのためにCABGを受けているもの(28.3%)および以前CABGを受けたもの(34.5%)の中で、プロトコールによるランダム化後に、用量を75から150mgに盲検で増大した(表37)。プロトコールに従ってアリロクマブ用量の盲検調整を受けている患者の数は、各CABGカテゴリーにおいて同様であった(表37)。
【0322】
【表47】
【表48】
【0323】
b.以前のCABG状態別のエンドポイント
各カテゴリーにおいて、アリロクマブを用いた場合の、相対ハザード比(HR)、絶対リスク低減(ARR)および1つの主要エンドポイント(MACE)または死を防ぐために2.8年間処置する必要がある数(NNT)を決定した。主要複合エンドポイントの累積発生率は、インデックスACS入院の間にCABGを受けた患者(7.1%)またはCABGを受けていないもの(9.5%)の中よりも、以前のCABGを有する患者(27.7%)の中で有意に高かった(表38および図31)。以前CABGを受けた患者はまた、より高率の主要エンドポイントの、および副次的エンドポイントの個々の成分を有していた(表38)。
【0324】
【表49】
【0325】
アリロクマブは、全体的な研究集団において主要エンドポイントを低減し(HR0.85[0.78~0.93])、各CABGカテゴリーにおいて一貫した相対リスク低減を有していた(表39および図31)。対照的に、アリロクマブを用いた場合の主要エンドポイントの絶対リスク低減は、それぞれ、インデックスCABG(0.9%[-2.3%、4.0%])および以前CABGを受けていない患者(1.3%[0.5%、2.2%])と比較して、以前CABGを受けた患者の中で最も明白であった(6.4%[0.9%、12.0%]、NNT2.8年=16)(表39および図32)。
【0326】
知見は、副次的エンドポイントについて同様であった。アリロクマブを用いた場合の相対リスク低減は、虚血駆動性冠血行再建を除いて、CABGカテゴリーに従って不均一性をともなわなかった。副次的エンドポイントのリスクの絶対低減は、その他の2つのCABGカテゴリーと比較して、以前CABGを受けた患者の中で数値的に大きく、CHD死(3.0%対0.5%および0%)、非致死性MI(2.2%対1.2%および0%)、虚血性脳卒中(2.2%対-0.3%および0.4%)、冠血行再建(4.6%対3.7%および0.7%)、研究者によって報告されるPAD事象(2.8%対0.3%および0.3%)、CV死(3.6%対1.0%および0.1%)および全死因死(3.6%対0.5%および0.4%)を含んでいた。以前CABGを受けた患者の中で、1つの死を防ぐためのNNT2.8年は、28であった。CHD死を除く各副次的エンドポイントについて、絶対リスク低減に対する処置およびCABGカテゴリーの有意な相互作用があった(表39および図32)。
【0327】
【表50】
【表51】
【0328】
結論
最近のACSおよびアテローム生成性リポタンパク質の上昇を有する患者の中で、強化スタチン療法にもかかわらず、以前CABGを受けたものが、アリロクマブ処置を用いて、致死性および非致死性心血管事象において大きな絶対低減を導き出した。
【実施例11】
【0329】
二次解析-1型および2型心筋梗塞を有する患者におけるアリロクマブの効果
スタチンおよびPCSK9阻害剤を用いるLDLコレステロール(LDL-C)低減は、心筋梗塞(MI)のリスクを低減するが、MIの特定の型に対する効果は未知である。ODYSSEY OUTCOMES治験の予め指定された解析において、PCSK9阻害剤アリロクマブまたはプラセボを受け取るようにランダム化され、心血管アウトカムについてフォローアップされた、強化スタチン療法にもかかわらず最近の急性冠動脈症候群(ACS)およびLDL-Cの上昇を有する患者におけるMIの型の出現およびアウトカム(第3ユニバーサル定義に従う)。全体的に、ランダム化後MIは、1383人(7.3%)の患者において生じた(1860の総MI)。これらのうち、991人(71.7%)の患者は、合計1223の1型MI(42は、致死性と考えられた)を有しており、287人(20.1%)は、合計386の2型MI(1は、致死性と考えられた)を有しており、225人(16.3%)は、4型MIを有しており、7の残り(<0.01%)は、3型または5型MIを有していた。
【0330】
1型および2型MIを有する患者のベースライン特徴が、表40に示されている。2型MIを有する患者と比較して、1型MIを有する患者は、高齢であり、女性である可能性が高く、黒人である、北米または欧州出身である、ならびに高血圧症、うっ血性心不全、肺性疾患、糖尿病および悪性疾患の病歴を有する可能性が高い。LDL-C、Lp(a)および高感受性C反応性タンパク質(hsCRP)レベルは、MIを有さないものよりもMIを有する患者において高かった。LDL-CおよびhsCRPは、1型または2型MIを有するものの間で異ならなかったが、Lp(a)は、2型MIを有する患者において高かった。
【0331】
【表52】
【表53】
【0332】
図33は、アリロクマブおよびプラセボを用いて処置された患者における経時的な1型および2型MIの出現のカプラン・マイヤー曲線を示す。1型MIについては、最高リスクは、最初の12ヶ月にあり、次いで、曲線の分岐、その後、低い年間リスクがある。2型MIについては、経時的に比較的一貫したリスクがあり、およそ6ヶ月で始まる分岐を有する。
【0333】
MIの各型に対するアリロクマブの効果が、表41に示されている。全体的に、アリロクマブは、プラセボと比較してすべてのMIの出現を低減した(7.9%プラセボ対6.8%アリロクマブ、HR0.85、95% CI 0.77~0.95、p=0.003)。1型MI(HR0.87、95% CI 0.77~0.99、p=0.0317)および2型MI(HR0.77、95% CI 0.61~0.97、p=0.0251)の両方とも低減された。MI3~5型に対するアリロクマブ処置の効果は観察されなかった。4型MIについては、HRは0.94であった(CI 0.72~1.22、p=0.62)。
【0334】
ほとんどのMI(82.7%)は、非STEMI(ST上昇型心筋梗塞)であり、アリロクマブは、これらのMIを有意に低減した(HR 0.82(CI 0.72、0.93)、p=0.0020。STEMIに対する有意な効果はなかった。Q波MIは、解釈可能なECGを有する患者の少数派(10.5%)であった。Q波MIにおいてアリロクマブの効果は観察されなかったが、非Q波MIについては、アリロクマブを用いた場合に低減があった(HR0.86、CI 0.76、0.97)、p=0.0130。表42は、心筋梗塞の型の感度解析およびアリロクマブの効果を示し、これは、1日目に死亡した患者(n=7アリロクマブ;n=11プラセボ)を含む。
【0335】
【表54】
【0336】
【表55】
【0337】
表43は、種々のカットポイントでのバイオマーカーレベル、主に、心臓トロポニン(92%)に対するアリロクマブの効果を示す。アリロクマブ処置は、より小さいMI(ピークバイオマーカーレベルは正常の上限の<3倍を有する)における明らかな低減と関連はなかったが、ピークバイオマーカー値によって定義されるような大きいMIにおける大きい低減と関連していた。
【0338】
【表56】
【0339】
a.1型および2型心筋梗塞の予測変数
1型MIの候補予測変数は、年齢カテゴリー、人種、領域、インデックス事象、ランダム化時の脂質低下療法、LDL-C、HDL-C、Lp(a)、BMI、GFR、糖尿病、高血圧症、心筋梗塞、卒中、PCI、COPD、CABG、PAD、CHF、インデックス事象のための血行再建およびアリロクマブ処置(伝統的なCoxモデルにおける有意な予測変数(p<0.05))である。
【0340】
2型MIの候補予測変数は、年齢カテゴリー、女性、人種、領域、インデックス事象、ランダム化時の脂質低下療法、LDL-C、HDL-C、Lp(a)、BMI、GFR、現在喫煙者、糖尿病、高血圧症、心筋梗塞、卒中、悪性疾患、PCI、COPD、CABG、PAD、CHF、インデックス事象のための血行再建およびアリロクマブ処置(伝統的なCoxモデルにおける有意な予測変数(p<0.05))である。表44および45は、それぞれ、1型および2型MIの多変数予測モデルを示す。
【0341】
【表57】
【0342】
【表58】
【0343】
有意な因子のほとんどは、両MI型について同様であった。しかし、LDL-C、インデックス事象時の血行再建、現在喫煙者、人種および以前の卒中は、1型MIについて有意であったが、2型MIについては有意でなかった。さらに、年齢カテゴリー、慢性閉塞性肺疾患の病歴およびベースラインHDL-Cレベルは、2型MIについて有意であったが、1型MIについて有意でなかった。
【0344】
b.1型および2型心筋梗塞を有する患者の死亡
ランダム化後2型MIを有する患者の死亡(n=283、25.4%)は、ランダム化後1型MIを有する患者のもの(n=73、11.9%)の2倍を超えた。アリロクマブは、2型MIの頻度を低減したが、2型MI後の死亡を低減しなかった(24.8%対25.9%)。対照的に、アリロクマブは、プラセボと比較して、1型MI後の死亡を低減した(10.2%対13.4%)。
【0345】
図34は、全死因死の予測変数として、フォローアップの間の1型MIまたは2型MIのフォレストプロットを示す。処置および予後因子の調整後、1型MI、p=0.03に対して有意な効果があったが、2型MI、p=0.61に対してはなかった。
【0346】
図35は、1型または2型MIの出現前および出現後の全死因死、心血管および非心血管死のフォレストプロットを示す。MI前の全死因死の発生率は、1型および2型梗塞両方について同様であったが、1型MI後よりも2型MI後が、およそ2倍高かった。アリロクマブを用いた場合の1型MI後の全死因死の低減は、プラセボ群における71/528(13.4%)に対して47/463(10.2%)であった、HR0.69(CI 0.48、1.00)。2型MI後は、アリロクマブは、死亡に対して明らかな効果はなかった、31/125アリロクマブ(24.8%)対42/162(25.9%)、HR0.98(CI 0.62、1.56)。
【0347】
MI前の心血管死亡は、1型および2型MI両方について同様であった。心血管死亡は、1型MI後よりも2型MI後に高かった。MIのいずれかの型について、心血管死亡に対してアリロクマブの効果はなかった。非心血管死について、率は、1型および2型MI両方についてMI前は同様であった。MI後は、非心血管死率は、2型MIを有する患者において、1型MIを有する患者についてよりも3~4倍高かった。1型または2型MIについて非心血管死に対してアリロクマブの効果はなかった。
【0348】
結論
強化スタチン療法にもかかわらず、ACSおよびLDL-Cの上昇を有する患者では、アリロクマブは、1型および2型MI両方の発生率を低減し、1型MIにおいて死亡を低減し、これは、スタチンを用いて達成可能なレベルより下のLDL-C低減が、両方の型のMIのための有効な予防戦略であることを示した。
【実施例12】
【0349】
高いリスク対極めて高いリスクの患者における急性冠動脈症候群後のアリロクマブの心血管効能
2018年ACC/AHAガイドライン(Grundy SMら JACC (2018)(2018年11月10日印刷中-オンラインで入手可能))に従って.将来のアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)事象について「極めて高いリスク」と分類されたODYSSEY OUTCOMES患者において、複合虚血性事象の頻度およびアリロクマブを用いるPCSK9阻害の効能を調べた。
【0350】
2018年ACC/AHAガイドライン基準に基づいて、合計11,935人(63%)の患者が、極めて高いリスクとして分類され、6,989人(37%)が極めて高いリスクにないと分類された。「極めて高いリスク」の基準は、以前の(インデックスACS事象前)虚血性事象(そのうち19.2%の患者が以前の心筋梗塞(MI)を有し、2.8%が以前の虚血性卒中を有し、4.0%が以前のPADを有していた)または複数の高いリスクの臨床状態の存在(26.9%は≧65歳の年齢であり、28.8%は糖尿病を有し、13.4%は慢性腎臓疾患を有し、24.1%は現在喫煙者であった)含んでいた。
【0351】
アリロクマブ処置は、極めて高いリスクの構成を有する患者対極めて高いリスクの構成を有さない患者におけるMACE事象のリスクの一貫した相対低減と関連していた(表46)。しかし、アリロクマブを用いた場合のMACEの絶対リスクおよびMACE事象の絶対低減は、複数の以前の虚血性事象を有するものの中で強調された絶対利益を有する極めて高いリスクとして分類された患者の中で、その他の高いリスクの臨床状態のみを有するものと比較して大きかった。
【0352】
【表59】
【0353】
結論
「極めて高いリスク」のための2018年ACC/AHAコレステロールガイドライン基準の適用によって、アリロクマブ処置から大きな絶対利益を導き出す、ACSおよび脂質代謝異常を有する患者が正確に同定される。複数の以前の虚血性事象に基づいて極めて高いリスクとして分類された患者は、このアプローチから特に大きな利益を導き出す。
【実施例13】
【0354】
バックグラウンドスタチン処置に従うアリロクマブの効果
この解析では、変動するスタチン療法バックグラウンドを有するODYSSEY OUTCOMES患者の中でアリロクマブまたはプラセボの効能を比較した。18,924人の患者すべてを、ランダム化時にバックグラウンドスタチン療法別に分類した:高強度(アトルバスタチン40~80mg/dまたはロスバスタチン20~40mg/d)(n=16,811、88.8%);低-または中-強度(アトルバスタチン<40mg/dまたはロスバスタチン<20mg/d)(n=1653、8.7%);またはスタチン使用なし(n=460、2.4%)。この研究では、≧2種のスタチンに対する実証された不忍容性を用いて確立されたスタチン不忍容性の場合にバックグラウンドスタチンなしが許容された。すべての患者群について、MACEの相対リスク(ハザード比[HR])および絶対リスク低減(ARR)を決定した。
【0355】
ハザード比(HR)は、スタチンカテゴリーにわたって一貫していた(表47)。ベースラインLDL-Cは、高強度、低/中強度およびスタチンなしカテゴリーにわたって増大した。これらのカテゴリーにわたって、プラセボ群においてMACEのリスクの勾配があった(それぞれ、10.8%、10.7%および26%)。アリロクマブ処置を用いた場合、LDL-Cのベースラインから4ヶ月への平均低減は、3カテゴリーにわたって大きく(それぞれ、-1.37mmol/L、-1.47mmol/Lおよび-2.27mmol/L)、カテゴリーにわたるMACEのARRは、それぞれ、1.3%、3.2%および8.0%であった(P相互作用<.001)。
【0356】
【表60】
【0357】
結論
ODYSSEY OUTCOMES患者の中で、スタチン処置を受けていないものは、アリロクマブ処置を用いた場合に、スタチン処置を受けている患者よりも高い平均ベースラインLDL-C(3.82mmol/L)およびLDL-Cの大きい平均絶対低減(-2.27mmol/L)を示した。スタチン処置を受けていない患者はまた、高強度スタチン処置中のものと比較して(1.3%(0.3~2.2)P相互作用<.001)、MACEのより大きい絶対リスク低減(8.0%(0.4~15.5))を示した。したがって、スタチン不忍容性である、またはスタチンが禁忌となる患者を含むスタチン処置を受けていない患者は、ACS後にアリロクマブによる処置について考慮するために重要な群であり得る。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29A
図29B
図30
図31
図32
図33
図34
図35
【配列表】
0007426940000001.app