(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】エンドキャップされたポリ(アリールエーテルスルホン)ポリマー、ポリ(アリールエーテルスルホン)ブロックコポリマー、及び対応する合成方法
(51)【国際特許分類】
C08G 65/48 20060101AFI20240126BHJP
C08G 65/40 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
C08G65/48
C08G65/40
(21)【出願番号】P 2020558572
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(86)【国際出願番号】 EP2019060543
(87)【国際公開番号】W WO2019207013
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-24
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ポリーノ, ジョーエル
(72)【発明者】
【氏名】ジェオル, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ブランハム, ケリー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ブーハー, マシュー
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-509569(JP,A)
【文献】特表2016-522849(JP,A)
【文献】特開平01-182320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式:
(式中、
- R
1~R
16は水素であり;
- Tは、結合、-SO
2-及び-C(CH
3)
2-からなる群から選択される)
により表される繰り返し単位R
PAESと;
次式:
(式中、
- R
17~R
19は、水素又はC
1~C
18の置換又は無置換のアルキル基からなる群から独立して選択され;
- A
1、A
2、A
4、及びA
5は、式:-(CH
2)
nCH
3(nは0~12の整数である)で表される独立して選択されたアルキル基であり;
- A
3及びA
6は、H及び式:-(CH
2)
n’CH
3(n’は0~12の整数である)で表されるアルキル基からなる群から独立して選択され;
- R
1~R
16及びTは、繰り返し単位R
PAESに関して上で定義したものと同じである)
により表されるPAESポリマーの少なくとも一端であるフタル酸ジアルキルラジカルと;
を含む、フタル酸ジアルキルでエンドキャップされたポリ(アリールエーテルスルホン)(「PAES」)ポリマー。
【請求項2】
前記PAESポリマーが、ポリスチレン標準を用いて移動相として塩化メチレンを使用するゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)により測定される、最大約25,000g/mol、最大約15,000g/mol、又は最大約14,000g/molの数平均分子量を有する、請求項1に記載のエンドキャップされたPAESポリマー。
【請求項3】
前記PAESポリマーが少なくとも1,000g/mol又は少なくとも2,000g/molの数平均分子量を有する、請求項1又は2に記載のエンドキャップされたPAESポリマー。
【請求項4】
塩基及び溶媒の存在下、繰り返し単位R
PAESと、次式:
(式中、R
1~R
16及びTは、請求項1で定義したものと同じである)
により表されるヒドロキシルエンドキャップ単位であるPAESポリマー鎖の少なくとも一端とを含むヒドロキシル末端PAESポリマーを、
次式:
(式中、R
17~R
19及びA
1~A
6は、請求項1で定義したものと同じであり、XはCl又はFである)
により表されるハロフタル酸ジアルキルエステルエンドキャップ剤と反応させることを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のエンドキャップされたPAESポリマーの合成方法。
【請求項5】
前記ハロフタル酸ジアルキルエステルがフルオロフタル酸ジイソプロピルエステル、好ましくは4-フルオロフタル酸ジアルキルエステルである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記塩基が、カリウムt-ブトキシド、ナトリウムt-ブトキシド、セシウムt-ブトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムイソプロポキシド、セシウムイソプロポキシド、1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(「DBU」)、1,5-ジアザビシクロ(4.3.30)ノン-5-エン(「DBN」)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(「DIPEA」)、水素化ナトリウム、水素化カリウム、金属ナトリウム、金属カリウム、K
2CO
3、Na
2CO
3、Cs
2CO
3、及びトリエチルアミンからなる群から選択される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒が、200℃超、少なくとも250℃、少なくとも300℃、少なくとも350℃、又は少なくとも400℃の沸点を有する極性非プロトン性溶媒である、請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒が、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、ジメチルアセトアミド(「DMAC」)、N-メチルピロリドン(「NMP」)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(「HMPA」)、ジメチルスルホキシド(「DMSO」)、及びスルホランからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
250℃~
500℃、好ましくは260℃~500℃の温度で請求項1~3のいずれか1項に記載のフタル酸ジアルキルでエンドキャップされたPAESポリマーを加熱することを含む、PAESポリマーの少なくとも一端が無水フタル酸ラジカルでエンドキャップされたPAESポリマーの合成方法。
【請求項10】
請求項1に記載のエンドキャップされたPAESポリマーを、式H
2N-Z-NH
2又はZ-NH
2(式中、Zは、アルカン及びポリオレフィン、ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)、ポリアルキレンオキシド(「PAO」)、パーフルオロエラストマー、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリ(アリールエーテルスルホン)、ポリエーテルイミド(「PEI」)、ポリイミド、ポリアミドイミド(「PAI」)、及びポリ(エーテルエーテルスルホン)(「PEES」)からなる群から選択される)により表されるアミンでエンドキャップされたポリマーと溶融状態で反応させることを含む、PAESブロックコポリマーの合成方法。
【請求項11】
前記PAESブロックコポリマーがABマルチブロックコポリマーである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記PAESブロックコポリマーがABAトリブロックコポリマーである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
次式:
(式中、
- PAESは、次式:
(式中、
- R
1~R
16は水素であり;
- Tは、結合、-SO
2-及び-C(CH
3)
2-からなる群から選択される)
により表される繰り返し単位R
PAESを含むポリ(アリールエーテルスルホン)ポリマーであり;
- Qは次式:
(式中、
- R
1~R
16及びTは、上で定義したものと同じである)で表され;
- R
17~R
19は、水素
又はC
1
~C
18
の置換又は無置換のアルキル基からなる群から独立して選択され;
- Zは、アルカン及びポリオレフィン、ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)、ポリアルキレンオキシド(「PAO」)、パーフルオロエラストマー、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリ(アリールエーテルスルホン)(「PAES」)、ポリエーテルイミド(「PEI」)、ポリイミド、ポリアミドイミド(「PAI」)、及びポリ(エーテルエーテルスルホン)(「PEES」)からなる群から選択され、好ましくはポリアミド、PAES、PAI、及びPEIからなる群から選択される)により表されるPAESブロックコポリマー。
【請求項14】
次式:
(式中、
- PAESは、次式:
(式中、
- R
1~R
16は水素であり;
- Tは、結合、-SO
2-及び-C(CH
3)
2-からなる群から選択される)
により表される繰り返し単位R
PAESを含むポリ(アリールエーテルスルホン)ポリマーであり;
- Qは次式:
(式中、
- R
1~R
16及びTは、上で定義したものと同じである)で表され;
- R
17~R
19は、水素
又はC
1
~C
18
の置換又は無置換のアルキル基からなる群から独立して選択され;
- Zは、アルカン及びポリオレフィン、ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)、ポリアルキレンオキシド(「PAO」)、パーフルオロエラストマー、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリ(アリールエーテルスルホン)(「PAES」)、ポリエーテルイミド(「PEI」)、ポリイミド、ポリアミドイミド(「PAI」)、及びポリ(エーテルエーテルスルホン)(「PEES」)からなる群から選択され、好ましくはポリアミド、PAES、PAI、及びPEIからなる群から選択される)により表されるPAESブロックコポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月26日出願の米国仮特許出願第62/663,034号及び2018年7月17日出願の欧州特許出願公開第18183930.9号に基づく優先権を主張するものであり、これらの出願のそれぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、エンドキャップされたポリ(アリールエーテルスルホン)(「PAES」)ポリマー、及び優れた変換率を有する対応する合成方法に関する。本発明は、更に、PAESブロックコポリマー及びPAESブロックコポリマーの合成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリ(アリールエーテルスルホン)(「PAES」)ブロックコポリマーは、商業的に非常に関心を集めている。PAESブロックコポリマーは、PAESブロックの望ましい性能(例えば耐加水分解性、高耐熱性-Tg-及び安定性、並びに化学的安定性)と第2のポリマーの性能(例えばポリジメチルシロキサンにより付与される可撓性、ポリエチレングリコールにより付与される親水性挙動、及びポリアミドにより付与される塩素化溶媒に対する耐性)を兼ね備えている。そのため、PEASブロックコポリマーは、限定するものではないが、膜(親水性及び疎水性の膜)、自動車(mutomotive)(可撓性且つ耐衝撃性のダクト)、航空宇宙(熱可塑性エラストマー)、及び健康管理機器(ソフトタッチPAES)などの多様な用途の状況で望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本明細書では、エンドキャップされたポリ(アリールエーテルスルホン)(「PAES」)ポリマー及び対応する合成方法が記述される。エンドキャップされたPAESポリマーは、ハロフタル酸ジアルキルエステルエンドキャップ剤でPAESポリマーを官能基化することによりエンドキャップされる。驚くべきことに、得られるフタル酸ジアルキルでエンドキャップされたPAESポリマーが、従来の無水フタル酸エンドキャップ剤で直接官能基化されたエンドキャップされたPAESポリマーと比較して、大幅に改善されたエンドキャップ変換率で合成できることが見出された。エンドキャップ変換率とは、(2)エンドキャップ剤で官能基化する前のこれらの反応性末端基のモル数に対する(1)エンドキャップ剤で官能基化した後のエンドキャップ剤でエンドキャップされたポリマー上の反応性末端基(通常はフェノール性OH)のモル数の比率を指す。エンドキャップ変換率は、下の実施例で説明される通りに測定することができる。驚くべきことに、フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPAESポリマーを加熱することにより、ポリマーが対応する無水フタル酸でエンドキャップされたPAESポリマーに変換され、無水フタル酸でエンドキャップされたPAESポリマーへのより効率的な合成経路が得られることも見出された。更に、ハロフタル酸ジアルキルエステルエンドキャップ剤でエンドキャップされたポリマー、及びそれらから製造される無水フタル酸でエンドキャップされたポリマーの高い末端基変換効率により、より低い末端基変換率でエンドキャップされたポリマーから合成されたものと比較して、より高分子量且つ未反応の鎖がより少ない、より純粋なブロックコポリマーを入手する経路が提供される。分子量と材料特性は密接に関連するため、高い末端基変換率は、優れた物理特性を有するより純粋且つより高分子量のブロックコポリマーをもたらす。
【0005】
無水フタル酸でエンドキャップされたPAESポリマーは、特に溶融加工時に、アミンでエンドキャップされたポリマーとのブロックコポリマー(「PAESブロックコポリマー」)の形成が容易であるため、非常に望ましい。より具体的には、末端無水フタル酸基は、末端アミン基と容易に反応して、PAESブロックコポリマーの形成を可能にする。大きい反応速度及び無水フタル酸とアミン基との間の反応により形成されるイミド結合の高い強度のため、PAESブロックコポリマーは、溶融加工技術を使用して形成することができる。液相合成及びそれに付随する溶媒除去、凝固、並びに精製を必要とする従来のブロックコポリマー合成と比較して、PAESブロックコポリマーの合成は単純な溶融加工により実現することができる。例えば、無水フタル酸でエンドキャップされたPAESポリマーとアミンでエンドキャップされたポリマーは、それぞれの粉末を溶媒あり又はなしで溶融ミキサー(例えば押出機)に供給して溶融状態で直接重合することによりブロック共重合することができる。加えて、ポリマー組成物が望まれる場合、ポリマー組成物の成分(例えばガラス繊維、顔料、酸化防止剤)も溶融ミキサーに導入することができ、PAESブロックコポリマーを含有するポリマー組成物を形成することができる。
【0006】
しかしながら、無水フタル酸でPAESポリマーをエンドキャップする従来の方法では、目的のポリマー系においてエンドキャップ変換率が低くなる(典型的には35%~55%)。例えば、WilliamsらのJ.Org.Chem.,42,3425(1977)(「Williams」)(参照により本明細書に組み込まれる)には、無水3-フルオロフタル酸とナトリウムフェノキシドとの反応が記載されており、85%~95%の変換率が報告されている。ただし、下の実施例で示されるように、PAESポリマー系では、無水ハロフタル酸を使用すると、わずか約37%のエンドキャップ変換率しか得られない(実施例5及び6を参照のこと)。
【0007】
驚くべきことに、ハロフタル酸ジアルキルエステルエンドキャップ剤でPAESポリマーをエンドキャップすることにより(フタル酸ジアルキルでエンドキャップされたPAESポリマーを形成)、大幅に増加したエンドキャップ変換率が達成されると同時に、無水フタル酸でエンドキャップされたPAESポリマーを用いて合成されたものと同一のPAEKブロックコポリマー得られることが発見された。更に、驚くべきことに、ハロフタル酸ジアルキルエステルエンドキャップ剤を使用すると、クロロフタル酸ジアルキルエステルエンドキャップ剤と比較してエンドキャップ変換率が更に増加することも発見された。上述したように、フタル酸ジアルキルでエンドキャップされたPAESポリマーをPAESブロックコポリマー合成に組み込むことで、全体の合成効率を向上させることができる。(1)フタル酸ジアルキルでエンドキャップされたPASEポリマーと、アミンでエンドキャップされたポリマー、及び(2)対応する無水ジアルキルフタル酸でエンドキャップされたPAESポリマーと、アミンでエンドキャップされたポリマー、の間の縮合反応により形成されるPAESブロックコポリマーは同一である。したがって、少なくともフタル酸ジアルキルでエンドキャップされたPAESの合成では対応する無水フタル酸合成に対するエンドキャップ変換率(conversation rate)が大幅に増加するため、前者の全体の反応効率は後者に比べて大幅に増加する。
【0008】
以下でエンドキャップされたPAESポリマー及びPAESブロックコポリマー、並びに対応する合成方法について説明する。参照し易くするために、それぞれの合成方法を説明する前にPAESポリマーとPAESブロックコポリマーについて説明する。
【0009】
エンドキャップされたPAESポリマー
本明細書に記載のエンドキャップされたPAESポリマーには、少なくともPAESポリマー主鎖の一端がフタル酸ラジカルで官能基化されたPAESポリマーが含まれる。本明細書において、PAESポリマーとは、PAESポリマー中の繰り返し単位の総数に対して、50モルパーセント(「mol%」)を超える繰り返し単位RPAESを含む任意のポリマーを指す。いくつかの実施形態では、PAESポリマーは、PAESポリマー中の繰り返し単位の総数に対して、少なくとも60mol%、少なくとも70mol%、少なくとも80mol%、少なくとも90mol%、少なくとも95mol%、少なくとも98mol%、少なくとも99mol%、又は少なくとも99.9mol%の繰り返し単位RPAESを有する。
【0010】
繰り返し単位(R
PAES)は、以下の式:
により表され、
式中、R
1~R
16は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;Tは、結合、-CH
2-;-O-;-SO
2-;-S-;-C(O)-;-C(CH
3)
2-;-C(CF
3)
2-;-C(=CCl
2)-;-C(CH
3)(CH
2CH
2COOH)-;-N=N-;-R
aC=CR
b-(各R
a及びR
bは、水素、C
1~C
12-アルキル、C
1~C
12-アルコキシ、及びC
6~C
18-アリール基からなる群から独立して選択される);-(CH
2)
m-及び-(CF
2)
m-(mは1~6の整数である);最大6個の炭素原子の直鎖又は分岐の脂肪族二価基;並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。本明細書において使用される破線の結合(“----”)は、描かれている構造の外側の原子への結合(例えば、別の繰り返し単位R
PAES、PAESポリマーの異なる繰り返し単位、又はフタル酸ラジカルエンドキャッパーへの結合)を表す。好ましくは、R
1~R
16は全て水素である。好ましくは、Tは、結合、-C(CH
3)
2-、及び-SO
2-からなる群から選択され、それぞれのPAESポリマーはポリ(フェニルスルホン)(「PPSU」)、ポリスルホン(「PSU」)、及びポリ(エーテルスルホン)(「PES」)である。前述した実施形態では、好ましくは、R
1~R
16は全て水素である。
【0011】
繰り返し単位R
PAESに加えて、エンドキャップされたPAESポリマーは、PAESポリマー鎖の少なくとも一端に、次の式のいずれか1つで表されるエンドキャッパーを含む:
(式中、R
17~R
19は、水素又はC
1~C
18の置換又は無置換のアルキル基からなる群から独立して選択され;A
1、A
2、A
4、及びA
5は、式:-(CH
2)
nCH
3(nは0~12の整数である)で表される独立して選択されたアルキル基であり;A
3及びA
6は、H及び式:-(CH
2)
n’CH
3(n’は0~12の整数である)で表されるアルキル基からなる群から独立して選択される)。好ましくは、R
17~R
19は全て水素である。加えて、又は代わりに、好ましくは、A
1、A
2、A
4、及びA
5は全て-CH
3であり、A
3及びA
6は共に水素である。本明細書において、式(2)及び(3)によるエンドキャッパーは、それぞれ、フタル酸ジアルキルラジカル及び無水フタル酸ラジカルと呼ばれる。更に、本明細書において、「エンドキャップされたPAESポリマー」とは、フタル酸ジアルキルラジカル又は無水フタル酸ラジカルでエンドキャップされたPAESポリマーを指し、どちらか一方が明確に意図されている場合は明示的に記述される。当業者であれば、エンドキャッパーが繰り返し単位R
PAESを組み込んでいることを認識するであろう。したがって、式(1)のR
1~R
16及びTは、式(2)のR
1~R
16及びTとそれぞれ同一である。前述した結果は、以下で詳細に説明するように、エンドキャップされたPAESポリマーの合成に由来する。
【0012】
いくつかの実施形態では、PAESポリマーは直鎖ポリマーである。そのような実施形態では、PAESポリマーは2つの末端を有し、エンドキャップされたPAESポリマーは、PAESポリマー鎖の一端又は両端でエンドキャップされていてもよい。エンドキャップされたPAESポリマーがPAESポリマー鎖の1つだけでエンドキャップされている実施形態では、エンドキャップされたPAESポリマーは、好ましくはフタル酸ジアルキルラジカルでエンドキャップされている。エンドキャップされたPAESポリマーがPAESポリマー鎖の両端でフタル酸ラジカルによりエンドキャップされている実施形態では、これは、両端がフタル酸ジアルキルラジカルで、両端が無水フタル酸ラジカルで、又は一端がフタル酸ジアルキルラジカルで且つ他端が無水フタル酸ラジカルで、のいずれかでエンドキャップされており、好ましくは、PAESポリマー鎖は、PAESポリマー鎖の両端でフタル酸ジアルキルラジカルでエンドキャップされている。別の実施形態では、PAESポリマーは、「星形」ポリマーとしても知られている超分岐ポリマーである。そのような実施形態では、PAESポリマーは2つより多くの末端を有し、エンドキャップされたPAESポリマーは、1つ、複数、又は全ての鎖末端でエンドキャップされていてもよい。いくつかの実施形態では、PAESポリマーは、フタル酸ジアルキルラジカル、無水フタル酸ラジカル、又はそれらの組み合わせのいずれかでエンドキャップされている。好ましくは、PAESポリマーは、フタル酸ジアルキルラジカルでエンドキャップされている。
【0013】
いくつかの実施形態では、エンドキャップされたPAESポリマーは、最大約20,000グラム毎モル(「g/mol」)、最大約15,000g/mol、又は最大約14,000g/molの数平均分子量を有する。加えて、又は代わりに、いくつかの実施形態では、PAESポリマーは、少なくとも1,000g/mol又は少なくとも2,000g/molの数平均分子量を有する。数平均分子量は、ポリスチレン標準とともに、移動相として塩化メチレンを使用するゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)によって測定することができる。
【0014】
明確化のために述べておくと、いくつかの実施形態では、PAESポリマーは、繰り返し単位RPAES以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。例えば、そのような一実施形態では、PAESポリマーは、繰り返し単位RPAESとは異なる式(1)によって表される1種以上の繰り返し単位を更に含むことができる。加えて、又は代わりに、いくつかの実施形態では、PAESポリマーは、式(1)によっては表されない1種以上の繰り返し単位を含み得る。
【0015】
エンドキャップされたPAESポリマーの合成
エンドキャップされたPAESポリマーの合成は、塩基及び溶媒の存在下でハロフタル酸ジアルキルエステルエンドキャップ剤をヒドロキシル末端化PAESポリマーと反応させることを含む。反応の結果、フタル酸ジアルキルでエンドキャップされたPAESポリマーが形成される。フタル酸ジアルキルでエンドキャップされたPAESを更に加熱すると、対応する無水フタル酸でエンドキャップされたPAESポリマーが生成する。
【0016】
合成に使用されるエンドキャップ剤は、次の式:
(式中、Xは-Cl又は-Fのいずれかであり、好ましくは-Fである)で表されるハロフタル酸ジアルキルエステルである。上で詳しく説明したように、ハロフタル酸ジアルキルエステルをエンドキャップ剤として使用する合成スキームは、無水ハロフタル酸を用いた直接エンドキャップを含む合成スキームと比較して、大幅に増加した変換効率を有することが見出された。更に、驚くべきことには、下の実施例で示すように、Xが-Fである合成方法では、Xが-Clである類似の合成方法と比較して、変換効率が更に増加することが示された。
【0017】
エンドキャップされたPAESポリマーの合成は、次の反応スキーム:
(これらのスキーム中、PAESは上で定義したPAESポリマーであり、Qは次の式:
で表される)のいずれか1つに従って進行する。
【0018】
式(5)において、R13~R16を有するフェニル基は、上のスキーム(S1)及び(S2)において酸素原子に結合する一方で、Qの他端はPAESポリマーに結合する。当業者であれば、---Q-OHがヒドロキシルでエンドキャップされた繰り返し単位RPAESであることを理解するであろう。例えば、HO-Q-PAES-Q-OH及びPAES-Q-OHは、PAESポリマーが直鎖ポリマーであるヒドロキシル末端PAESポリマーである。参照し易くするために、---Q-OHは、ヒドロキシルエンドキャップ単位と呼ばれる場合がある。更に、無機塩基の場合には、Mは、以下で詳細に説明するように、使用される塩基のカチオンである(例えばPAES-Q-O-M+は、PAES-Q-OHと塩基との反応から形成される共役塩基である)。有機塩基の場合には、Mは、有機塩基がヒドロキシル末端PAESポリマーを脱プロトン化する際に形成される共役酸である。スキーム(S1)は、PAESポリマーを鎖末端の1つでエンドキャップする合成方法を示しており、スキーム(S2)は、PAESポリマーの両端でPAESポリマーをエンドキャップする合成方法を示している。
【0019】
スキーム(S1)及び(S2)を参照すると、ヒドロキシル末端PAESポリマーは、塩基及び溶媒の存在下でハロフタル酸ジアルキルエステルエンドキャップ剤と反応する。いくつかの実施形態では、ヒドロキシル末端PAESポリマーは、最初に溶媒の存在下で塩基と反応して末端ヒドロキシル基を脱プロトン化し、その後、脱プロトン化されたヒドロキシル末端PAESポリマーは、溶媒の存在下でハロフタル酸ジアルキルエステルエンドキャップ剤と反応する。別の実施形態では、ヒドロキシル末端PAESポリマーは、塩基及び溶媒の存在下でハロフタル酸ジアルキルエステルエンドキャップ剤と反応する。いずれの場合においても、ヒドロキシル末端PAESポリマーの脱プロトン化は約25℃~200℃の温度で行われ、脱プロトン化ヒドロキシル末端PAESポリマーの反応は約100℃~約200℃の温度で行われる。
【0020】
塩基は、フェノールを脱プロトン化するのに十分な程度に塩基性であるが、PAES主鎖の一部を脱プロトン化するほど強くはない非求核性塩基である。適切な塩基としては、限定するものではないが、カリウムt-ブトキシド、ナトリウムt-ブトキシド、セシウムt-ブトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムイソプロポキシド、セシウムイソプロポキシド、1,8-ジアザビシクロウンデク-7-エン(「DBU」)、1,5-ジアザビシクロ(4.3.30)ノン-5-エン(「DBN」)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(「DIPEA」)、水素化ナトリウム、水素化カリウム、金属ナトリウム、金属カリウム、K2CO3、Na2CO3、Cs2CO3、及びトリエチルアミンが挙げられる。適切な溶媒としては、限定するものではないが、無水極性非プロトン性溶媒が挙げられる。いくつかの実施形態では、極性非プロトン性溶媒は少なくとも140℃の沸点を有する。適切な極性非プロトン性溶媒の例としては、限定するものではないが、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、ジメチルアセトアミド(「DMAC」)、N-メチルピロリドン(「NMP」)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(「HMPA」)、DMSO、及びスルホランが挙げられる。
【0021】
上述した反応スキームは、驚くべきことに高いエンドキャップ変換率を有する。いくつかの実施形態では、エンドキャップ変換率は、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約97%である。加えて、又は代わりに、いくつかの実施形態では、エンドキャップ変換率は、約99%以下又は約98%以下である。したがって、上述した合成プロセスにより、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%のPAESポリマーがエンドキャップされたPAESポリマーであるPAESポリマー粉末が可能になる。下で説明するように、そのような粉末は、望ましくは、ポリマー組成物の処理中にPAESブロックコポリマー合成に組み込むことができる。
【0022】
無水フタル酸でエンドキャップされたPAESポリマーの合成は、フタル酸ジアルキルでエンドキャップされたPAESポリマーを加熱することを含む。理論に制限されるものではないが、加熱が、フタル酸ジアルキルの熱的閉環及び対応する無水フタル酸でエンドキャップされたPAESポリマーの付随的な形成を誘発すると考えられている。一部の実施形態では、フタル酸ジアルキルでエンドキャップされたPAESポリマーは、少なくとも約250℃又は少なくとも約260℃の温度で加熱される。温度の上限は理論的には制限されないものの、実用的な限界、すなわちPAESポリマーの分解温度が存在する。いくつかの実施形態では、フタル酸ジアルキルでエンドキャップされたPAESポリマーは、約500℃以下、約450℃以下、約400℃以下、約350℃以下、約330℃以下、又は320℃以下の温度で加熱される。いくつかの実施形態では、フタル酸ジアルキルでエンドキャップされたPAESポリマーは、約250℃~約500℃、約260℃~約500℃、約260℃~約450℃、約260℃~約400℃、約260℃~約350℃、約260℃~約330℃、又は約260℃~約320℃の温度で加熱される。本明細書の開示に基づいて、当業者であれば、加熱時間を経験的に選択する方法を容易に認識するであろう。
【0023】
PAESブロックコポリマー
上述したように、PAESブロックコポリマーは、エンドキャップされたPAESポリマーとアミンでエンドキャップされたポリマーとの直接反応によって容易に合成することができる。
【0024】
PAESブロックコポリマーは、ABAトリブロックコポリマーであってもよく、或いはABマルチブロックコポリマーであってもよい。PAESブロックコポリマーがABマルチブロックコポリマーである実施形態では、それらは、PAESブロックコポリマー中の繰り返し単位の総数に対して、50mol%を超える繰り返し単位R
ABを有し、これは以下の式:
(式中、Zは分子又はポリマー主鎖である)により表される。いくつかの実施形態では、ABマルチブロックポリマーは、ブロックコポリマー中の繰り返し単位の総数に対して少なくとも60mol%、少なくとも70mol%、少なくとも80mol%、少なくとも90mol%、少なくとも95mol%、少なくとも99mol%、又は少なくとも99.9mol%の繰り返し単位R
ABを含む。PAESブロックコポリマーがABAトリブロックコポリマーである実施形態では、これはそれぞれ以下の式により表される:
【0025】
Zの例としては、限定するものではないが、アルカン及びポリオレフィン、ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)、ポリアルキレンオキシド(「PAO」)、パーフルオロエラストマー、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリ(アリールエーテルスルホン)、ポリエーテルイミド(「PEI」)、ポリイミド、ポリアミドイミド(「PAI」)、及びポリ(エーテルエーテルスルホン)(「PEES」)が挙げられる。
【0026】
アルカン及びポリオレフィンは、少なくとも得られるPAESブロックコポリマーに対してより多くの可撓性を付与できるため、望ましい。Zがアルカン又はポリオレフィンである実施形態の例としては、限定するものではないが、以下の式により表されるものが挙げられる:
-----(CR
iR
j)
n-----
及び(8)
(式中、各位置におけるR
i及びR
j、並びにR
20~R
23は、水素及びC
1~C
18の置換又は無置換のアルキル基からなる群から独立に選択され、nは1~400の整数であり、mは1~20の整数である)。式(8)に関し、いくつかの実施形態では、R
i及びR
jは、各位置において水素である。加えて、又は代わりに、nは好ましくは5~400である。式(9)に関し、いくつかの実施形態では、R
i及びR
jは、各位置において水素である。加えて、又は代わりに、いくつかの実施形態では、R
20、R
21、R
22、及びR
23のうちの少なくとも2つは水素である。一実施形態では、Zは、以下の式により表される:
【0027】
PDMSは、少なくとも低温(例えば室温未満-20℃未満)で可撓性と靭性を付与するため、望ましい。ZがPDMSポリマーである実施形態の例としては、限定するものではないが、以下の式:
(R
i及びR
jは、各位置において、水素及びC
1~C
18の置換又は無置換のアルキル基からなる群から独立して選択され、nとmは1~18の整数から独立に選択される。いくつかの実施形態では、nとmのいずれも同じであり、R
iとR
jは、各位置において水素である;又はその両方である)により表されるものが挙げられる。更に、PDMSポリマーは、200グラム毎モル(「g/mol」)~10,000g/mol、400g/mol~5,000g/mol、又は600g/mol~3,000g/molの数平均分子量を有する。
【0028】
PAOは、少なくともPAESブロックコポリマーに疎水性を付与し、これにより水濾過膜及び血液透析膜に特に適したものになることから、望ましい。ZがPAOである実施形態の例としては、限定するものではないが、以下の式:
(式中、nは1~300の整数である)により表されるもの、及びプロピレンオキシド主鎖、エチレンオキシド主鎖、又はプロピレンオキシドとエチレンオキシドの主鎖のいずれかを含むものが挙げられる。後者の例としては、商品名Jeffamine(登録商標)ポリエーテルアミンとして販売されているHuntsman Corporationから市販されているものが挙げられる。
【0029】
ポリアミドは、少なくともPAESブロックコポリマーに改善された耐薬品性(例えば塩素化溶媒に対するもの)を付与するため、望ましい。Zがポリアミドである実施形態の例としては、限定するものではないが、以下の式:
(式中、R
i及びR
jは、各位置において、水素又はメチル基から独立して選択され、n、m、及びpは独立して選択される1~16の整数であり、tは1~100の整数である)により表される脂肪族ポリアミドが挙げられる。いくつかの実施形態では、n、m、及びpは全て1である。加えて、又は代わりに、いくつかの実施形態では、R
i及びR
jは、各存在において水素である。式(14)に関し、描かれている構造の外側の原子へは1つの結合(破線)しか存在しない。したがって、Zが式(16)によって表される実施形態では、得られるPAESブロックコポリマーはABAブロックコポリマーである。脂肪族ポリアミドの例としては、更に、限定するものではないが、PA6;PA11;PA12;PA6,6;PA6,10;PA10,10;PA10,6;PA6,12;PA12,12;PA10,12;及びPA12,10が挙げられる。いくつかの実施形態では、Zは半芳香族ポリアミドである。半芳香族ポリアミドの例としては、限定するものではないが、ポリフタルアミド(「PPA」)が挙げられる。ポリフタルアミド(polythalamide)の例としては、限定するものではないが、PA4,T;PA5,T;PA6,T;PA8,T;PA9,T;PA10,T;PA12,T;PA4,I;PA5,I;PA6,I;PA8,T;PA9,I;PA10,I、PA12,I;PA6,I/6,6;PA6,T/6,6;PA6,T/6,I/6,6;及びPA9T/8Tが挙げられる。他の半芳香族ポリアミドとしては、限定するものではないが、MXD6、MXD10、PXD6、及びPXD10が挙げられる。
【0030】
PEAS及びPEESは、少なくともPAESブロックコポリマーの透明性を保持し、異なるPAESポリマーとPEESポリマーの異なる性能プロファイルを組み合わせるため、望ましい。ZがPAESポリマー又はPEESポリマーである実施形態の例は、限定するものではないが、下記式により表されるものが挙げられる:----PAES*----及び----PEES*---。PAES*は、上で定義したPAESポリマーとは異なり、PAES*ポリマー中の繰り返し単位の総数に対して50mol%を超える繰り返し単位R*PAESを有するポリ(アリールエーテルスルホン)ポリマーである。いくつかの実施形態では、PAES*は、PAES*中の繰り返し単位の総数に対して少なくとも60mol%、少なくとも70mol%、少なくとも80mol%、少なくとも90mol%、少なくとも95mol%、少なくとも98mol%、少なくとも99mol%、又は少なくとも99.9mol%の繰り返し単位R*PAESを有する。PEES*は、PEES*ポリマー中の繰り返し単位の総数に対して50mol%を超える繰り返し単位R*PEESを有するポリ(エーテルエーテルスルホン)ポリマーである。いくつかの実施形態では、PEES*ポリマーは、PEES*ポリマー中の繰り返し単位の総数に対して少なくとも60mol%、少なくとも70mol%、少なくとも80mol%、少なくとも90mol%、少なくとも95mol%、少なくとも98mol%、少なくとも99mol%、又は少なくとも99.9mol%の繰り返し単位R*PEESを有する。
【0031】
繰り返し単位R*
PAESとR*
PEESは、それぞれ以下の式:
(式中、R*
1~R*
16は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;T*は、結合、-CH
2-;-O-;-SO
2-;-S-;-C(O)-;-C(CH
3)
2-;-C(CF
3)
2-;-C(=CCl
2)-;-C(CH
3)(CH
2CH
2COOH)-;-N=N-;-R
aC=CR
b-(各R
a及びR
bは、水素、C
1~C
12-アルキル、C
1~C
12-アルコキシ、及びC
6~C
18-アリール基からなる群から独立して選択される);-(CH2)m-及び-(CF2)m-(mは1~6の整数である);最大6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の脂肪族二価基;並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される)により表される。好ましくは、R*
1~R*
16は全て水素である。好ましくは、Tは、結合、-C(CH
3)
2-、及び-SO
2-(それぞれPPSU、PSU、及びPES)からなる群から選択される。前述の実施形態では、好ましくは、R*
1~R*
16は全て水素である。
【0032】
いくつかの実施形態では、PAES*及びPEES*は、最大約20,000g/mol、最大約15,000g/mol、又は最大約14,000g/molの数平均分子量を有する。加えて、又は代わりに、いくつかの実施形態では、PAES*及びPEES*は、少なくとも1,000g/mol又は少なくとも2,000g/molの数平均分子量を有する。数平均分子量は、ポリスチレン標準を用いて移動相として塩化メチレンを使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定することができる。
【0033】
複数の実施形態では、ZはPEIである。PEIは、少なくとも1つの芳香環、少なくとも1つのイミド基(それ自体及び/又はそのアミド酸形態)、並びに少なくとも1つのエーテル基を含む繰り返し単位(R
PEI)を、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数を基準として少なくとも50mol%含む任意のポリマーを指す。繰り返し単位(R
PEI)は、イミド基のアミド酸形態に含まれない少なくとも1つのアミド基を任意選択的に更に含んでいてもよい。ある実施形態によれば、繰り返し単位(R
PEI)は、下記式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V):
及びそれらの混合物からなる群から選択され、
式中、
- Arは、四価の芳香族部分であり、5~50個の炭素原子を有する置換若しくは無置換の、飽和、不飽和の又は芳香族の単環式及び多環式の基からなる群から選択され;
- Ar’は、三価の芳香族部分であり、5~50個の炭素原子を有する置換、無置換の、飽和、不飽和の、芳香族単環式及び芳香族多環式の基からなる群から選択され;
- Rは、例えば、
(a)6~20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカル及びそれらのハロゲン化誘導体;
(b)2~20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキレンラジカル;
(c)3~20個の炭素原子を有するシクロアルキレンラジカル;並びに
(d)式(VI):
(式中、
- Yは、1~6個の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH
3)
2-及び-C
nH
2n-(nは、1~6の整数である);1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF
3)
2-及び-C
nF
2n-(nは、1~6の整数である);4~8個の炭素原子のシクロアルキレン;1~6個の炭素原子のアルキリデン;4~8個の炭素原子のシクロアルキリデン;-O-;-S-;-C(O)-;-SO
2-;-SO-からなる群から選択され、
- R’’は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され、
- iは、各R’’について、独立してゼロ又は1~4の範囲の整数である)
の二価ラジカル;
からなる群から例えば選択される、置換及び無置換の二価有機ラジカルからなる群から選択される。但し、Ar、Ar’及びRのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つのエーテル基を含み、そのエーテル基はポリマー鎖主鎖中に存在することを条件とする。
【0034】
一実施形態によれば、Arは、式:
(式中、
Xは、3,3’、3,4’、4,3’’若しくは4,4’位に二価の結合を有する二価の部分であり、1~6個の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH
3)
2-及び-C
nH
2n-(nは、1~6の整数である);1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF
3)
2-及び-C
nF
2n-(nは、1~6の整数である);4~8個の炭素原子のシクロアルキレン;1~6個の炭素原子のアルキリデン;4~8個の炭素原子のシクロアルキリデン;-O-;-S-;-C(O)-;-SO
2-;-SO-からなる群から選択されるか、
又はXは、式-O-Ar’’-O-(式中、Ar’’は、5~50個の炭素原子を有する置換若しくは無置換の、飽和、不飽和の若しくは芳香族の単環式及び多環式の基からなる群から選択される芳香族部分である)の基である)
からなる群から選択される。
【0035】
ある実施形態によれば、Ar’は、式:
(式中、
Xは、3,3’、3,4’、4,3’’若しくは4,4’位に二価の結合を有する二価の部分であり、1~6個の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH
3)
2-及び-C
nH
2n-(nは、1~6の整数である);1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF
3)
2-及び-C
nF
2n-(nは、1~6の整数である);4~8個の炭素原子のシクロアルキレン;1~6個の炭素原子のアルキリデン;4~8個の炭素原子のシクロアルキリデン;-O-;-S-;-C(O)-;-SO
2-;-SO-からなる群から選択されるか、又はXは、式-O-Ar’’-O-(式中、Ar’’は、5~50個の炭素原子を有する置換若しくは無置換の、飽和、不飽和の若しくは芳香族の単環式及び多環式の基からなる群から選択される芳香族部分である)の基である)からなる群から選択される。
【0036】
本開示のある実施形態によれば、PEI中の繰り返し単位の少なくとも50mol%、少なくとも60mol%、少なくとも70mol%、少なくとも80mol%、少なくとも90mol%、少なくとも95mol%、少なくとも99mol%又は全てが、上記定義された、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又はそれらの混合物の繰り返し単位(RPEI)である。
【0037】
ある実施形態によれば、ポリ(エーテルイミド)(PEI)は、ポリマー中の総モル数を基準として、少なくとも50mol%の式(VII):
の繰り返し単位(RPEI)を含む任意のポリマーを指し、
式中、
- Rは、例えば、
(a)6~20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカル及びそれらのハロゲン化誘導体;
(b)2~20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキレンラジカル;
(c)3~20個の炭素原子を有するシクロアルキレンラジカル;並びに
(d)式(VI):
(式中、
- Yは、1~6個の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH
3)
2-及び-C
nH
2n-(nは、1~6の整数である);1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF
3)
2-及び-C
nF
2n-(nは、1~6の整数である);4~8個の炭素原子のシクロアルキレン;1~6個の炭素原子のアルキリデン;4~8個の炭素原子のシクロアルキリデン;-O-;-S-;-C(O)-;-SO
2-;-SO-からなる群から選択され、
- R’’は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され、
- iは、各R’’について、独立してゼロ又は1~4の範囲の整数である)の二価ラジカル;
からなる群から例えば選択される、置換及び無置換の二価有機ラジカルからなる群から選択される。但し、Ar、Ar’及びRのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つのエーテル基を含み、エーテル基はポリマー鎖主鎖中に存在することを条件とする。
-Tは、-O-又は-O-Ar’’-O-のいずれであってもよく、-O-若しくは-O-Ar’’-O-基の二価の結合は、3,3’、3,4’、4,3’、若しくは4,4’の位置であり、Ar’’は、5~50個の炭素原子を有する置換若しくは無置換の飽和、不飽和若しくは芳香族の単環式及び多環式基からなる群から選択される芳香族部位であり、例えば置換若しくは無置換のフェニレン、置換若しくは無置換のビフェニル基、置換若しくは無置換のナフタレン基、又は2つの置換若しくは無置換のフェニレンを含む部位である。
【0038】
本開示のある実施形態によれば、Ar’’は、上に詳述されたような一般式(VI)のものであり、例えばAr’’は、式(XIX)のものである:
【0039】
ある実施形態によれば、ポリ(エーテルイミド)(PEI)は、ポリマー中の総モル数を基準として、少なくとも50mol%の、イミド形態、又はそれらの対応するアミド酸形態及びそれらの混合での、式(XXIII)又は(XXIV)の繰り返し単位(R
PEI)を含む任意のポリマーを指す:
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、PEI中の繰り返し単位の少なくとも50mol%、少なくとも60mol%、少なくとも70mol%、少なくとも80mol%、少なくとも90mol%、少なくとも95mol%、少なくとも99mol%又は全てが、イミド形態、又はそれらの対応するアミド酸形態及びそれらの混合での、式(XXIII)又は(XXIV)の繰り返し単位(RPEI)である。
【0041】
そのような芳香族ポリイミドは、とりわけ、ULTEM(登録商標)ポリエーテルイミドとしてSabic Innovative Plasticsから市販されている。
【0042】
特定の実施形態において、PEIポリマーは、ポリスチレン標準を使用してゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される、10,000~150,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0043】
特定の実施形態において、PEIポリマーは、25℃でm-クレゾール中で測定される1グラム当たり0.2デシリットル(dl/g)超の、有利には0.35~0.7dl/gの固有粘度を有する。
【0044】
いくつかの実施形態では、PEIのメルトフローレイト又はメルトフローインデックス(ASTM D1238に従って6.6kgの荷重下、337℃で)(MFR又はMFI)は、0.1~40g/10分、例えば2~30g/10分又は3~25g/10分であり得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、PEIポリマーは、ASTM D3418に従って示差走査熱量法(DSC)により測定される、160~270℃の範囲、例えば170~260℃、180~250℃、又は190~240℃の範囲のTgを有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、ZはPAIポリマーである。PAIポリマーは、少なくとも1つの芳香環と、そのまま及び/又はそのアミド酸形態での少なくとも1つのイミド基と、イミド基のアミド酸形態に含まれない少なくとも1つのアミド基とを含む繰り返し単位[繰り返し単位(RPAI)]を50mol%超の含む任意のポリマーを意味する。
【0047】
繰り返し単位(R
PAI)は、有利には、以下の式:
(式中、
Arは三価の芳香族基であり;通常はArは、以下の構造:
及び任意選択的に置換されていてもよい対応する構造からなる群から選択され、Xは、-O-、-C(O)-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-(CF
2)
q-であり、qは、1~5の整数であり;Rは二価の芳香族基であり;通常、Rは、以下の構造:
及び対応する任意選択的に置換されていてもよい構造からなる群から選択され、Yは、-O-、-S-、-SO
2-、-CH
2-、-C(O)-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-(CF
2)
qであり、qは、1~5の整数である)のものの中から選択される。
【0048】
好ましくは、芳香族ポリアミド-イミドは、イミド基が繰り返し単位(RPAI-a)におけるようにイミド基自体として及び/又は、繰り返し単位(RPAI-b)におけるようにそのアミド酸形態で存在するイミド基を含む繰り返し単位(RPAI)を50%超含む。
【0049】
繰り返し単位(R
PAI)は、好ましくは、それらのアミド-イミド(a)又はアミド-アミド酸(b)形態での繰り返し単位(l)、(m)及び(n):
(式中、(l-b)に示すように芳香環への2個のアミド基の結合は、1,3及び1,4ポリアミド-アミド酸の立体配置を表すと理解される);
(式中、(m-b)に示すように芳香環への2個のアミド基の結合は、1,3及び1,4ポリアミド-アミド酸の立体配置を表すと理解される);及び
(式中、(n-b)に示すように芳香環への2個のアミド基の結合は、1,3及び1,4ポリアミド-アミド酸の立体配置を表すと理解される)
から選択される。
【0050】
より好ましくは、ポリマー(PAI)は、90モル%超の繰り返し単位(RPAI)を含む。更により好ましくは、これは、繰り返し単位(RPAI)以外の繰り返し単位を全く含有しない。TORLON(登録商標)ポリアミド-イミドとして、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.C.によって商業化されているポリマーは、この判定基準を満たしている。Torlon(登録商標)4000Tは、Solvay Specialty Polymers USA,LLC.から市販されている芳香族ポリアミド-イミドポリマーである。
【0051】
PAIポリマーは、当該技術分野で公知の方法に従って製造することができる。
【0052】
Zがパーフルオロエラストマーである実施形態の例としては、限定するものではないが、以下の式:
(式中、R
i及びR
jは、各位置において、水素又はアルキル基からなる群から独立して選択され、pは0~10の整数であり;x、y、及びzは、1~100の整数から独立して選択される)により表されるものが挙げられる。好ましくは、R
i及びR
jは、各位置においてHである。加えて、又は代わりに、好ましくは、pは1~4である。
【0053】
Zがポリビニルピロリドンである実施形態の例としては、限定するものではないが、以下の式:
(式中、R
i及びR
jは、各位置において、水素又はアルキル基からなる群から独立して選択され、pは0~10の整数である)により表されるものが挙げられる。好ましくは、R
i及びR
jは、各位置において水素である。加えて、又は代わりに、好ましくは、pは1~4である。
【0054】
上のPAESブロックコポリマーは、フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPAESポリマーをアミンでエンドキャップされた分子又はポリマーZ:H
2N-Z-NH
2又はZ-NH
2と反応させることにより合成することができる。例えば、ABAマルチブロックコポリマーは、以下のスキームに従って合成することができる。
【0055】
ABAトリブロックコポリマーも同様に合成することができる。ただし、ABAトリブロックコポリマーの場合には、Zは、一端のみがアミン(例えばZ-NH2)でエンドキャップされる。反応は、通常少なくとも280℃の温度で行われるが、本明細書の開示に基づいて、当業者は適切な反応温度を経験的に選択することができるであろう。
【0056】
いくつかの実施形態では、PAESブロックコポリマー合成は、溶融状態で行われる。そのような実施形態では、フタル酸ジアルキルでエンドキャップされたPAESポリマー粉末の粉末及びアミンでエンドキャップされたZの粉末は、溶媒なしでブレンドされ、反応温度で加熱される。反応温度は、通常、ガラス転移温度(アモルファスポリマーブロックの場合)又は融点(半結晶性ポリマーブロックの場合)よりも高くなるように選択される。いくつかの実施形態では、反応温度は、ガラス転移温度よりも約60℃高くなるように、又は融点よりも約20℃高くなるように選択される。いくつかの実施形態では、反応温度は約150℃~約400℃である。一実施形態では、PAESブロックコポリマー合成は、溶融ミキサー中で行われる。溶融ミキサーの例としては、限定するものではないが、押出機、ブラベンダーミキサー、及びニーダーが挙げられる。
【0057】
ポリマーブレンド
PAESブロックコポリマーは、ポリマーブレンドの中に配合することができる。ブレンドは、PAESブロックコポリマー(上述した通り)1重量%~30重量%と、PAESブロックコポリマーとは異なる少なくとも1種の熱可塑性ポリマー70重量%~30重量%とを含む。いくつかのそのような実施形態では、熱可塑性ポリマーは、上の式(6)及び(7)におけるZと同じ主鎖を有する(例えば同一である)ように選択される。そのような実施形態では、ポリマー組成物は、Zが組み込まれたPAESブロックコポリマーと共にポリマーZのブレンドを含む。当然、別の実施形態では、熱可塑性ポリマーは、Zとは異なっていてもよい。望ましい熱可塑性ポリマーの例としては、限定するものではないが、ポリ(アリールエーテルケトン)ポリマー、PAES、PEES、PEI、及びPASが挙げられる。
【0058】
参照により本明細書中に組み込まれている任意の特許、特許出願、及び公開資料の開示が、これがある用語を不明確とし得る程度まで本出願の記載と対立する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0059】
以下の実施例は、フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPAESポリマーの合成及びPAESブロックコポリマーの合成を実証する。表記を簡潔にするために、以下の実施例では、文及び構造において「iPr」と言及する。iPrは「イソプロピル」を指す。例えば、-OiPrは-O-CH(CH3)2を指す。同様に、以下の構造において、ポリマーはその名称で言及する。例えば、A-PPSU-Bは、Aがポリマー鎖の一端に結合しておりBがポリマー鎖の他端に結合しているPPSUポリマーを指す。更に、エンドキャップ変換率は、エンドキャップ剤で鎖末端をエンドキャップする前後に存在する反応性フェノールOH基のモル数を測定することにより決定される。その後、エンドキャップ変換率は、反応したフェノール性OH基の数を、反応の開始時に存在する利用可能なフェノール性OH基の数で割り、100倍することにより得られる。
【0060】
実施例1:ヒドロキシルでエンドキャップされたPPSU
本実施例は、以下の反応スキームに従うヒドロキシルでエンドキャップされたPPSUの合成を実証する:
【0061】
ヒドロキシルでエンドキャップされたPPSUを合成するために、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(107.56g、0.375mol、1.00当量)、4,4’-ビフェノール(73.86g、0.397mol、1.06当量)、K2CO3(57.56g、0.417mol、1.11当量)、及びスルホラン(350g、固形分30重量%)を、メカニカルスターラーと、ヒートテープ(約100℃)で包まれたDean-Starkトラップと、窒素スパージ管とを備えた4口ケトルトップの1リットルのケトルの中で混合した。得られた混合物を、撹拌しながら及び少しの窒素を流しながら210℃まで加熱し(約30分)、その温度で3.5時間保持した。その間、反応溶液は濃いオフホワイトのスラリーとして始まり、その後、温度が100℃を超えると明るい金色/黄色に変化した。重合の間、溶液は明るい金色/黄色を維持し、着実に粘稠になっていった。3.5時間の反応時間後、温度を150℃に下げ、NMP(150g)を添加して希釈した。
【0062】
希釈した後、溶液をガラス繊維フィルター(2.7ミクロンの孔径)を通して50psiで加圧濾過し、完全に透明な金色/黄色の溶液を得た。その後、この溶液を高温のH2O(2.5L、1度に1/2ずつ)の中で凝固させて、中程度の大きさの白色粉末を生成した。粉末固体を高温のH2O(5×2.5L)で繰り返し洗浄し、濾過し、純粋なメタノール(5×2.5L)で再洗浄し、最終生成物を濾過により回収し、真空オーブン(110℃、36mmHg)中で16時間乾燥することで、ヒドロキシルでエンドキャップされたPPSUポリマー(Mn約7,000g/mol)を白色固体(135g、90%)として得た。この材料を、ポリスチレン標準を使用したGPC(Mn=9,640g/mol、Mw=20,985g/mol、PDI=2.18)及び末端基滴定(Cl=6.8ueq/g、PhOH=257ueq/g)により特性評価した。末端基滴定の結果から、滴定により数平均分子量を決定した(Mn=7,424g/mol)。
【0063】
実施例2:4-クロロフタル酸イソプロピルを使用した、フタル酸ジアルキルでエンドキャップされたPPSUの合成
本実施例は、以下の反応スキームに従うフタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPPSUの合成を実証する:
【0064】
フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPPSUを合成するために、カリウムtert-ブトキシド(0.401g、3.57mmol、PhOH鎖末端に対して1.25当量)、ヒドロキシルでエンドキャップされたPPSU(10g)(実施例1より、滴定によるMn=7,424g/mol)、及び無水ジメチルホルムアミド(「DMF」)(49.2g、固形分20重量%)を、メカニカルスターラーと、断熱布で包まれたDean-Starkトラップと、窒素スパージ管とを備えた4口ケトルトップの100mLのケトルの中で混合した。続いて、トルエン(5g、共沸剤)を添加し、撹拌されている混合物を150℃まで加熱して共沸蒸留を誘発した。約5mLのトルエンとtert-ブチルアルコール(「t-BuOH」)がDean-Starkトラップの中に回収された後、2回目のトルエン(5mL)と新鮮なDMF(3mL)を追加して、Dean-Starkトラップの中に第2のフラクション(5mL)を生成させた。Dean-Starkトラップを取り外し、その場所に還流冷却器を取り付けた後、4-クロロフタル酸イソプロピル(中国特許出願公開第101016284A号明細書に開示の方法に従って合成、参照により本明細書に組み込まれる)(2.44g、8.59mmol、PhOK末端基に対して3当量)を一度に150℃で添加し、反応を一晩(16時間)還流させながら撹拌した。
【0065】
続いて、H2O(500mL)が入っているブレンダー中での凝固により反応を単離し、ブフナー漏斗を使用して得られた白色固体を回収した。白色の固体を高温のH2O(3×500mL)で繰り返し洗浄し、濾過し、純粋なメタノール(4×500mL)で再洗浄し、最終生成物を濾過により回収し、真空オーブン(110℃、36mmHg)の中で16時間乾燥することで、フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPPSU(Mn約7,000g/mol)を白色固体として得た(8g、79%)。この材料を、末端基滴定(PhOH=58.3ueq/g、77%の末端基変換)、1HNMR、及びポリスチレン標準を使用したGPC(Mn=10,639g/mol、Mw=23,691g/mol、PDI=2.23)によって特性評価した。末端基滴定から、4-クロロフタル酸イソプロピルを使用した末端基変換は77%であった。1HNMR分析から、これらの変換された鎖末端の約73%が目的のフタル酸ジメチルエステル基を含み、残りの4%が対応するフェニルイソプロピルエーテル(「PhOiPr」)基へのアルキル化によるものであることが判明した。残りの23%は未反応のフェノール性鎖末端(PhOH)を含むことが1HNMRにより確認された。
【0066】
実施例3:4-フルオロフタル酸イソプロピル使用した、フタル酸ジアルキルでエンドキャップされたPPSUの合成、及び対応する無水物変換
本実施例は、以下の反応スキームに従って4-フルオロフタル酸イソプロピルを使用する、フルオロフタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPPSUの合成を実証する:
【0067】
本実施例は、フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPPSUから対応する無水物でエンドキャップされたPPSUへの熱変換も実証する。
【0068】
フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPPSUを合成するために、カリウムtert-ブトキシド(0.601g、5.36mmol、PhOH鎖末端に対して1.25当量)、ヒドロキシルでエンドキャップされたPPSU(15g)(実施例1より、滴定によるMn=7,424g/mol)、及び無水DMF(73.80g、固形分20重量%)を、メカニカルスターラーと、断熱布で包まれたDean-Starkトラップと、窒素スパージ管とを備えた4口ケトルトップの250mLのケトルの中で混合した。続いて、トルエン(7g、共沸剤)を添加し、撹拌されている混合物を150℃まで加熱して共沸蒸留を誘発した。約6mLのトルエンとt-BuOHがDean-Starkトラップの中に回収された後、2回目のトルエン(5mL)と新鮮なDMF(2mL)を追加して、Dean-Starkトラップの中に第2のフラクション(5mL)を生成させた。Dean-Starkトラップを取り外し、その場所に還流冷却器を取り付けた後、4-フルオロフタル酸ジイソプロピル(3.45g、12.9mmol、PhOK末端基に対して3当量)を一度に150℃で添加し、反応を一晩(16時間)還流させながら撹拌した。
【0069】
続いて、H2O(500mL)が入っているブレンダー中での凝固により反応を単離し、ブフナー漏斗を使用して得られた白色固体を回収した。白色の固体を高温のH2O(3×500mL)で繰り返し洗浄し、濾過し、純粋なメタノール(4×500mL)で再洗浄し、最終生成物を濾過により回収し、真空オーブン(110℃、36mmHg)の中で16時間乾燥することで、フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPPSU(Mn約7,000g/mol)を白色固体(12g、80%)として得た。この材料を、末端基滴定(PhOH=12.2ueq/g、96%の末端基変換)、1HNMR、及びポリスチレン標準を使用したGPC(Mn=10,777g/mol、Mw=22,582g/mol、PDI=2.10)によって特性評価した。末端基滴定から、4-フルオロフタル酸イソプロピルを使用した末端基変換は96%であった。1HNMR分析から、これらの変換された鎖末端の約96%が目的のフタル酸ジメチルエステル基を含み、対応するフェニルイソプロピルエーテル(「PhOiPr」)への低い変換率(0.05%未満)が判明した。
【0070】
フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPPSUの示差走査熱量測定(DSC)による熱分析からは、204℃のガラス転移温度(「Tg」)を有する完全なアモルファスであることが示された。熱重量分析は2段階の分解プロファイルを示し、最初の段階は260℃と320℃の間で発生し、2.5重量%の減少であった。2番目の段階は494℃で始まり、破壊的な60重量%の減少の原因となった。
1HNMR分析、理論上の重量減少の定量化(2.6%)、及び昇温脱離質量分析実験の組み合わせから、260℃から320℃までの熱転移は、フタル酸イソプロピル鎖末端から対応する無水物鎖への容易な変換に起因していた。前述の結果は、次の反応スキームにより対応するイソフタレートでエンドキャップされたポリマーから無水物でエンドキャップされた芳香族ポリマーを製造する簡便な方法を示している:
【0071】
実施例4:4-クロロフタル酸メチルエステルを使用した、フタル酸ジメチルでエンドキャップされたPPSUの比較合成
本実施例は、以下の反応スキームに従って4-クロロフタル酸メチルエステルエンドキャップ剤を使用する、フタル酸メチルでエンドキャップされたPPSUの合成を実証する比較例である:
【0072】
フタル酸メチルでエンドキャップされたPPSUの合成を実証するために、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(17.9g、0.062mol、1.00当量)、4,4’-ビフェノール(12.3g、0.066mol、1.06当量)、K2CO3(9.59g、0.069mol、1.11当量)、及びスルホラン(70.50g、固形分30重量%)を、メカニカルスターラーと、ヒートテープ(約110℃)で包まれたDean-Starkトラップと、窒素導入口とを備えた200mLの3口丸底フラスコの中で混合した。得られた混合物を、撹拌しながら及び少しの窒素を流しながら210℃まで加熱し(約45分)、その温度で3時間保持した。重合後、4-クロロフタル酸ジメチル(6.73g、0.029mol、ヒドロキシ末端基に対して4.0当量)を210℃で反応容器に添加し、更に3時間撹拌した。エンドキャッパーを添加した後、反応が黄金色から暗い黄金色に変わり始めた。次いで、反応温度を190℃に下げ、反応を一晩20時間継続した。熱源を外し、温度が約150℃に下がった後、反応混合物に更にNMP(51g)を追加し、溶液を加圧濾過してカリウム塩を除去した。次いで、反応混合物を、メタノール:H2O=50:50の混合物150mLが入っているブレンダーの中で凝固させ、得られた白色固体を濾過により回収した。続いて、凝固した粉末を高温のH2O(3×500mL)、メタノール(3×500mL)、エタノール(2×500mL)で洗浄し、その後真空オーブン(110℃、36mmHg)中で16時間乾燥することで、最終的なポリマーを白色固体として得た。
【0073】
フェノール鎖末端の末端基変換は、末端基滴定により決定したところ、96%の鎖末端の変換が生じていた(PhOHの喪失として測定)。末端基滴定によるこの反応の明らかな成功にもかかわらず、1HNMR分析からは、これらの変換された鎖末端の50%のみが目的のフタル酸ジメチルエステル基を含み、残りの50%はアルキル化を伴う副反応によりフェニルメチルエーテル基(~PhOMe)に変換されたことが明らかになった。
【0074】
実施例5:無水3-フルオロフタル酸(Fluorophthlaic Anydride)を使用した、無水フタル酸でエンドキャップされたPAESの比較合成
本実施例は、以下の反応スキームに従って無水3-フルオロフタル酸エンドキャップ剤を用いた直接官能基化を使用する、無水フタル酸でエンドキャップされたPPSUの合成を実証する比較例である:
【0075】
合成を実証するために、カリウムtert-ブトキシド(0.200g、1.80mmol、PhOH鎖末端に対して1.25当量)、ヒドロキシル末端PPSU(5g、0.71mmol)(滴定によるMn=7,000g/mol)、及び無水DMF(15.6g、固形分25重量%)を、メカニカルスターラーと、断熱布で包まれたDean-Starkトラップと、窒素スパージ管とを備えた4口ケトルトップの100mLのケトルの中で混合した。続いて、トルエン(3g、共沸剤)を添加し、撹拌されている混合物を150℃まで加熱して共沸蒸留を誘発し、Dean-Starkトラップに蒸留液が約4mL回収されるまでその温度で約1時間保持した。100℃まで冷却し、Dean-Starkトラップを取り外し、その場所に還流冷却器を取り付けた後、無水3-フルオロフタル酸(1.42g、8.57mmol、PhOK末端基に対して6当量)を一度に添加し、反応を150℃に再度加熱し、6時間撹拌した。続いて、H2O(500mL)が入っているブレンダーの中での凝固により反応を単離し、ブフナー漏斗を使用して得られた白色固体を回収した。白色固体を高温のH2O(3×500mL)で繰り返し洗浄し、濾過し、純粋なメタノール(3×500mL)で再洗浄し、最終生成物を濾過により回収し、真空オーブン(110℃、36mmHg)中で16時間乾燥することで、最終生成物を黄色粉末として得た(4.5g、90%)。この材料を、末端基滴定(PhOH=178.8ueq/g、37.4%の末端基変換)、1HNMR、及びGPC(Mn=10,392g/mol、Mw=22,633g/mol、PDI=2.18)により特性評価した。末端基滴定から、無水3-フルオロフタル酸を使用した末端基変換率はわずか37.4%であった。1HNMR分析からは、かなりの数の未反応のPhOH鎖末端が最終サンプル中に存在することが明らかになった。
【0076】
実施例6:無水4-フルオロフタル酸(Fluorophthlaic Anydride)を使用した、無水フタル酸でエンドキャップされたPAESの比較合成
本実施例は、以下の反応スキームに従う、無水4-フルオロフタル酸エンドキャップ剤を使用した無水フタル酸でエンドキャップされたPPSUの合成を実証する比較例である:
【0077】
合成を実証するために、カリウムtert-ブトキシド(0.200g、1.80mmol、PhOH鎖末端に対して1.25当量)、ヒドロキシル末端PPSU(5g、0.71mmol)(滴定によるMn=7,000g/mol)、及び無水DMF(15.6g、固形分25重量%)を、メカニカルスターラーと、断熱布で包まれたDean-Starkトラップと、窒素スパージ管とを備えた4口ケトルトップの100mLのケトルの中で混合した。続いて、トルエン(3g、共沸剤)を添加し、撹拌されている混合物を150℃まで加熱して共沸蒸留を誘発し、Dean-Starkトラップに蒸留液が約4mL回収されるまでその温度で約1時間保持した。100℃まで冷却し、Dean-Starkトラップを取り外し、その場所に還流冷却器を取り付けた後、無水4-フルオロフタル酸(1.42g、8.57mmol、PhOK末端基に対して6当量)を一度に添加し、反応を150℃に再度加熱し、4時間撹拌した。続いて、H2O(500mL)が入っているブレンダーの中での凝固により反応を単離し、ブフナー漏斗を使用して得られた白色固体を回収した。白色固体を高温のH2O(3×500mL)で繰り返し洗浄し、濾過し、純粋なメタノール(3×500mL)で再洗浄し、最終生成物を濾過により回収し、真空オーブン(110℃、36mmHg)中で16時間乾燥することで、最終生成物を淡褐色粉末として得た(4g、80%)。この材料を、末端基滴定(PhOH=146.2ueq/g、49%の末端基変換)、1HNMR、及びGPC(Mn=9,884g/mol、Mw=22,304g/mol、PDI=2.26)により特性評価した。末端基滴定から、無水4-フルオロフタル酸を使用した末端基変換率はわずか49%であった。1HNMR分析からは、かなりの数の未反応のPhOH鎖末端が最終サンプル中に存在することが明らかになった。
【0078】
実施例7:PAES-エチレングリコールブロックコポリマーの合成
本実施例は、以下のスキームに従う、フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPPSUとエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル(「EGBAPE」)とからのPAESブロックコポリマーの合成を実証する:
合成を実証するために、フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPPSU(6.60g、268.59ueq/gの反応性末端基)、EGBAPE(0.156g、11,346.9ueq/gの反応性末端基)、及びジフェニルスルホン(1.68g、20重量%)を、メカニカルスターラーと窒素導入口と窒素排出口とを備えた3口フラスコの中で混合した。次いで、このフラスコをスチールショット加熱媒体から構成された金属浴の中に入れ、得られた透明な溶融固体を機械撹拌しながら290℃に60分間加熱した。加熱後、この材料を、まだ流動性を有している間に金属スパチュラを使用して3口フラスコから回収し、ガラスバイアルの中に入れて室温まで冷却した。GPC、FTIR、及びNMRの特性評価の組み合わせにより、ブロックコポリマー形成の証拠を得た。データから、ブロック共重合が生じてPPSU-b-EGBAPEブロックコポリマーが形成され、PEGアミン部位とイソプロピルエステル部位が高度に鎖延長されたイミドに完全に変換されたことが実証された。
【0079】
実施例8:PAES-脂肪族ジアミンブロックコポリマーの合成
本実施例は、以下の反応スキームに従う、フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPPSUと脂肪族ジアミンからのPAESブロックコポリマーの合成を実証する:
合成を実証するために、フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPPSU(6.21g、215.9ueq/gの反応性末端基)、脂肪族ジアミン(Croda International Plc.から商品名Priamine
TM 1075して市販)(0.378g、3,552ueq/gの反応性末端基)、及びジフェニルスルホン(1.65g、20重量%)を、メカニカルスターラーと窒素導入口と窒素排出口とを備えた3口フラスコの中で混合した。次いで、このフラスコをスチールショット加熱媒体から構成された金属浴の中に入れ、得られた透明な溶融固体を機械撹拌しながら280℃に40分間加熱した。加熱後、この材料を、まだ流動性を有している間に金属スパチュラを使用して3口フラスコから回収し、ガラスバイアルの中に入れて室温まで冷却した。得られた生成物は、約20重量%のジフェニルスルホン可塑剤を含有する7.4g(収率90%)のPriamine-b-PPSUブロックコポリマーを含んでいた。得られた生成物から、アセトンで繰り返し粉砕抽出することにより、ジフェニルスルホンを抽出した。GPC、FTIR、及び
1NMRの特性評価の組み合わせにより、ブロック共重合を確認した。
【0080】
実施例9:PAES-PDMSブロックコポリマーの合成。
本実施例は、以下の反応スキームに従う、フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPPSUとアミンでエンドキャップされたPDMSとからのPAESブロックコポリマーの合成を実証する:
合成を実証するために、フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPPSU(6.48g、277.19ueq/gの反応性末端基)、PDMS A21(4.49g、400ueq/gの反応性末端基)、及びジフェニルスルホン(2.74g、20重量%)を、メカニカルスターラーと窒素導入口と窒素排出口とを備えた3口フラスコの中で混合した。次いで、このフラスコをスチールショット加熱媒体から構成された金属浴の中に入れ、得られた不透明な白色-ベージュ色の溶融ガムを機械撹拌しながら280℃に60分間加熱した。加熱後、この材料を、まだ流動性を有している間に金属スパチュラを使用して3口フラスコから回収し、ガラスバイアルの中に入れて室温まで冷却した。これにより、約20重量%のジフェニルスルホン可塑剤を含む約(11.9g、87%)のPDMS-b-PPSUブロックコポリマーが得られた。
図52(GPC)、
図53(FT-IR)、及び
図54(HNMR)に記載のように、ポリスチレン標準を使用するGPC、FTIR、及びNMRの特性評価によって部分的なブロック共重合が確認された。データからは、かなりの程度の鎖延長/イミド化が示された。
【0081】
実施例10:アミンでエンドキャップされたポリスルホンを用いたPAES-PSUブロックコポリマーの合成。
本実施例は、以下の反応スキームに従う、フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPPSUとアミンでエンドキャップされたポリスルホン(「PSU」)とからのPAESブロックコポリマーの合成を実証する:
合成を実証するために、フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPPSU(5.0g、253ueq/gの反応性末端基)、アミンでエンドキャップされたPSU(3.09g、410ueq/gの反応性末端基)、及びジフェニルスルホン(2.02g、20重量%)を、メカニカルスターラーと窒素導入口と窒素排出口とを備えた3口フラスコの中で混合した。次いで、このフラスコをスチールショット加熱媒体から構成された金属浴の中に入れ、得られた暗色の透明な固体を機械撹拌しながら280℃に60分間加熱した。加熱後、この材料を、まだ流動性を有している間に金属スパチュラを使用して3口フラスコから回収し、ガラスバイアルの中に入れて室温まで冷却した。これにより、約20重量%のジフェニルスルホン可塑剤を含む約(7.5g、75%の変換率)のPSU-b-PPSUブロックコポリマーが得られた。GPC、FTIR、及びNMRの特性評価の組み合わせから、部分的なブロック共重合の証拠が確認された。
【0082】
実施例11:PAES-PEESブロックコポリマーの合成
本実施例は、以下の反応スキームに従う、フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPPSUポリマーとアミンでエンドキャップされたPEESポリマーとからのPAESブロックコポリマーの合成を実証する:
【0083】
フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPPSU(6.0g、253ueq/gの反応性末端基)、アミンでエンドキャップされたPEES(3.91g、388ueq/gの反応性末端基)、及びジフェニルスルホン(1.10g、10重量%)を、メカニカルスターラーと窒素導入口と窒素排出口とを備えた3口フラスコの中で混合した。次いで、このフラスコをスチールショット加熱媒体から構成された金属浴の中に入れ、得られた暗色の透明な固体を機械撹拌しながら290℃に45分間加熱した。加熱後、この材料を、まだ流動性を有している間に金属スパチュラを使用して3口フラスコから回収し、ガラスバイアルの中に入れて室温まで冷却した。これにより、約10重量%のジフェニルスルホン可塑剤を含む約(7.76g、78.3%)のPEES-b-PPSUブロックコポリマーが得られた。ジフェニルスルホンは、アセトンを用いた抽出により効果的に除去された。GPC、FTIR、NMR、及びTEMの特性評価の組み合わせから、ブロック共重合が確認された。
【0084】
実施例12:PAES-ポリアミド6ブロックコポリマーの合成
本実施例は、[1,1’-ビフェニル]-4-イルメタンアミンエンドキャップ剤による脂肪族ポリアミド6(「PA6」)のエンドキャップ化と、フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPPSUとPAとからのPAESブロックコポリマーの合成を実証する。
[1,1’-ビフェニル]-4-イルメタンアミンエンドキャップ剤によるPA6のエンドキャップは、次のスキームに従って進行した:
【0085】
エンドキャップ化を実証するために、DSM Xplor(登録商標)コニカル二軸押出機を使用して反応押出を行うことにより、PA6(Solvayから商品名Technyl(登録商標)として入手)を4-フェニルベンジルアミンと反応させることで、アミン末端を多く含むPA6(目標Mn=2,000g/mol)を最初に調製した。より具体的には、PA6(12g、EGTにより16,388g/mol、0.106molのカプロラクタム当量、18当量)を真空オーブン中で一晩乾燥させ、次いで4-フェニルベンジルアミン(1.08g、0.006mol、1当量)とドライブレンドし、その後250℃(設定温度=270℃)を目標とする溶融温度に予熱された混合速度200rpmの押出機に約4~5分間供給した。反応の過程で、600Ncmで開始し200Ncmで終了するスクリュートルクの顕著な減少が観察された。これは、PA6ポリマーと一官能性4-フェニルベンジルアミンのトランスアミド化による鎖の切断を示唆している。18当量のPA6対1当量の4-フェニルベンジルアミンの化学量論比を設定して、2,037g/molの分子量を有するアミンを多く含むPAポリマーを調製した。押出後、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)及び末端基滴定(EGT)データを収集して分子量の低下を特性評価し、また[1,1’-ビフェニル]-4-イルメタンアミンでエンドキャップされたPAポリマー中に存在する鎖末端の数及びタイプを定義した。新しいポリアミドは、GPCとEGTから分子量の大幅な減少を示し、これはアミン鎖末端の激しい増加を伴った(GPCから、PA6:Mn=15,207g/mol、Mw=45,722g/mol、PDI=3.01。アミンでエンドキャップされたPA6:Mn=8,688g/mol、Mw=16,524g/mol、PDI=1.90。EGTから、PA6:COOH末端=69ueq/g、NH2末端=53ueq/g、Mn=16,388g/mol。アミンでエンドキャップされたPA6:COOH末端=95ueq/g、NH2末端=303ueq/g、Mn=2,514g/mol)。
【0086】
以下のスキームによる、フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPPSUとPAとからのブロックコポリマーの合成:
【0087】
合成を実証するために、フタル酸イソプロピルでエンドキャップされたPPSU(6.00g、253.0ueq/gの反応性末端基)及びアミンを多く含むPA6(5.01g、303ueq/gの反応性末端基)を、メカニカルスターラーと窒素導入口と窒素排出口とを備えた3口フラスコの中で混合した。次いで、このフラスコをスチールショット加熱媒体から構成された金属浴の中に入れ、得られた溶融ガムを機械撹拌しながら280℃に45分間加熱した。このガムは、反応の過程で外観が不透明なベージュ色から部分的に透明に変化した。続いて、前述の材料を、まだ流動性を有している間に金属スパチュラを使用して3口フラスコから回収し、ガラスバイアルの中に入れて室温まで冷却した。このプロセスにより、HFIP、DMAc(1NのLiBrを含む)、及びDMFに不溶性の約(9g、82%)のPA6-b-PPSU-b-PA6ABAブロックコポリマーが得られた。
【0088】
ブロック共重合の証拠は、DSC、FTIR、及びTEMの組み合わせによって確認された。ブロックコポリマーの不溶性のため、NMRは不可能であった。DSCによれば、アミンを多く含むPA6サンプルの融点(Tm)は221℃であり、融解エンタルピー(DH)は70J/gであった。一方、ABAブロックコポリマーであるPA6-b-PPSU-b-PA6の融点(Tm)は215℃であり、溶融エンタルピーは27J/gであった。ブロックコポリマーのTmが低いことは、結晶化中の鎖の移動度(組織化能力)の低下により、ブロックコポリマーに予想される結晶子ドメインが小さいことを示唆している。一方、ブロックコポリマーの溶融エンタルピーは、アミンを多く含むPA6サンプルの溶融エンタルピーの約39%(27J/g対70J/g)であり、これはサンプル全体のPA6の量よりわずかに低い値にほぼ相関する(5.01g/11.0g=45%)。これは、アミンを多く含むPA6に比べて結晶化する能力が制約されているブロックコポリマーと一致する。FTIRからは、1720cm-1にあるイソプロピルエステルのC=O伸縮が1711cm-1と1770cm-1にあるアリールイミドC=Oの2つの新しいシグナルに分割される、イソプロピルエステルから対応するアリールイミドへの変換が確認された。これらの振動数は、脂肪族アミンとの反応によりイミド結合が生成されることを裏付けるアルキルアリールイミドについての文献で公開されているものと一致する。TEMにより、PA6-b-PPSU-b-PA6ブロックコポリマーは、ドメインサイズが200nm未満の球状又は円筒状のミクロ相分離を示した。これは、2つの非混和性ブロックセグメントで構成されるブロックコポリマーの自己組織化形態と一致する。
【0089】
追加的な発明概念
1.以下の式により表されるPAESブロックコポリマー:
(式中、
- R
17~R
19は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- Tは、結合、-CH
2--;-O-;-SO
2-;-S-;-C(O)-;-C(CH
3)
2-;-C(CF
3)
2-;-C(=CCl
2)-;-C(CH
3)(CH
2CH
2COOH)-;-N=N-;-R
aC=CR
b-(各R
a及びR
bは、水素、C
1~C
12-アルキル、C
1~C
12-アルコキシ、及びC
6~C
18-アリール基からなる群から独立して選択される);-(CH
2)
m-及び-(CF
2)
m-(mは1~6の整数である);最大6個の炭素原子の直鎖又は分岐の脂肪族二価基;並びにこれらの組み合わせからなる群から選択され;
- Zは、アルカン及びポリオレフィン、ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)、ポリアルキレンオキシド(「PAO」)、パーフルオロエラストマー、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリ(アリールエーテルスルホン)(「PAES」)、ポリエーテルイミド(「PEI」)、ポリイミド、ポリアミドイミド(「PAI」)、及びポリ(エーテルエーテルスルホン)(「PEES」)からなる群から選択され、好ましくはポリアミド、PAES、PAI、及びPEIからなる群から選択される)。
2.Zが、PA6;PA11;PA12;PA6,6;PA6,10;PA10,10;PA10,6;PA6,12;PA12,12;PA10,12;及びPA12,10からなる群から選択される脂肪族ポリアミドである、発明概念1のPAESブロックコポリマー。
3.Zが、PA4,T;PA5,T;PA6,T;PA8,T;PA9,T;PA10,T;PA12,T;PA4,I;PA5,I;PA6,I;PA8,T;PA9,I;PA10,I;PA12,I;PA6,I/6,6;PA6,T/6,6;PA6,T/6,I/6,6;PA9T/8T;MXD6、MXD10、PXD6、及びPXD10からなる群から選択される半芳香族ポリアミドである、発明概念1のPAESブロックコポリマー。
4.発明概念1~3のいずれか1つに記載のPAESブロックコポリマー1重量%~30重量%と、PAESブロックコポリマーとは異なる熱可塑性ポリマー70重量%~99重量%とを含有するポリマー組成物。
5.前記熱可塑性ポリマーが、ポリ(アリールエーテルケトン)、PAES、PEES、PEI、及びPASからなる群から選択される、発明概念4のポリマー組成物。
6.以下の式:
(式中、
- R
17~R
19は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- R
20は、芳香族又は脂肪族のアルキル基であり;
- Tは、結合、-CH
2-;-O-;-SO
2-;-S-;-C(O)-;-C(CH
3)
2-;-C(CF
3)
2-;-C(=CCl
2)-;-C(CH
3)(CH
2CH
2COOH)-;-N=N-;-R
aC=CR
b-(各R
a及びR
bは、水素、C
1~C
12-アルキル、C
1~C
12-アルコキシ、及びC
6~C
18-アリール基からなる群から独立して選択される);-(CH
2)
m-及び-(CF
2)
m-(mは1~6の整数である);最大6個の炭素原子の直鎖又は分岐の脂肪族二価基;並びにこれらの組み合わせからなる群から選択され;
- Zは、アルカン及びポリオレフィン、ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)、ポリアルキレンオキシド(「PAO」)、パーフルオロエラストマー、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリ(アリールエーテルスルホン)(「PAES」)、ポリエーテルイミド(「PEI」)、ポリイミド、ポリアミドイミド(「PAI」)、及びポリ(エーテルエーテルスルホン)(「PEES」)からなる群から選択され、好ましくはポリアミド、PAES、PAI、及びPEIからなる群から選択される)により表されるPAESブロックコポリマー。
7.Zが、PA6;PA11;PA12;PA6,6;PA6,10;PA10,10;PA10,6;PA6,12;PA12,12;PA10,12;及びPA12,10からなる群から選択される脂肪族ポリアミドである、発明概念6のPAESブロックコポリマー。
8.Zが、PA4,T;PA5,T;PA6,T;PA8,T;PA9,T;PA10,T;PA12,T;PA4,I;PA5,I;PA6,I;PA8,T;PA9,I;PA10,I;PA12,I;PA6,I/6,6;PA6,T/6,6;PA6,T/6,I/6,6;PA9T/8T;MXD6、MXD10、PXD6、及びPXD10からなる群から選択される半芳香族ポリアミドである、発明概念6のPAESブロックコポリマー。
9.発明概念6~8のいずれか1つに記載のPAESブロックコポリマーを1重量%~30重量%と、PAESブロックコポリマーとは異なる熱可塑性ポリマーを70重量%~99重量%含有するポリマー組成物。
10.前記熱可塑性ポリマーが、ポリ(アリールエーテルケトン)、PAES、PEES、PEI、及びPASからなる群から選択される、発明概念9のポリマー組成物。