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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240126BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20240126BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/175 501
B41J2/165 211
B41J2/01 451
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021111268
(22)【出願日】2021-07-05
(65)【公開番号】P2023008035
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】澤田 哲平
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-179541(JP,A)
【文献】特開2020-142387(JP,A)
【文献】米国特許第10717284(US,B1)
【文献】特開2021-59087(JP,A)
【文献】特開2022-111069(JP,A)
【文献】特開2018-79573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルを有するインクヘッドと、
前記インクヘッドに接続されたダンパーと、
前記ダンパー内のダンパー圧力を検出する圧力センサと、
前記ノズルを覆うように前記インクヘッドに装着されるキャップと、
前記インクヘッドに対して前記キャップを相対的に昇降させる昇降機構と、
前記キャップに接続された吸引ポンプと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記キャップを前記インクヘッドに装着させた状態で、前記吸引ポンプを駆動させる吸引処理を実行する吸引制御部と、
前記吸引処理の間、前記キャップを前記インクヘッドに装着させた状態で、前記圧力センサによって検出された前記ダンパー圧力を取得する圧力取得部と、
前記ダンパー圧力の変化量が基準変化量以下か否かを判定する判定制御部と、
前記変化量が前記基準変化量以下のとき、前記インクヘッドに向かって前記キャップを上昇させる昇降制御部と、
を備えた、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記制御装置は、前記キャップが前記インクヘッドに装着され、かつ、前記吸引ポンプが駆動されていないときの前記ダンパー圧力である基準圧力が記憶された記憶部を備え、
前記判定制御部は、前記基準圧力と、前記圧力取得部によって取得された前記ダンパー圧力との差を前記変化量にする、請求項1に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記吸引制御部は、前記吸引ポンプを駆動させる前に、前記圧力センサによって検出された前記ダンパー圧力を前記基準圧力として前記記憶部に記憶させる、請求項2に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記ノズルは、第1ノズルと、第2ノズルとを有し、
前記ダンパーは、
前記第1ノズルに接続された第1ダンパーと、
前記第2ノズルに接続された第2ダンパーと、
を有し、
前記圧力センサは、
前記第1ダンパーの第1ダンパー圧力を検出する第1圧力センサと、
前記第2ダンパーの第2ダンパー圧力を検出する第2圧力センサと、
を有し、
前記圧力取得部は、前記吸引処理の間、前記第1ダンパー圧力、および、前記第2ダンパー圧力を取得し、
前記判定制御部は、前記第1ダンパー圧力の第1変化量、および、前記第2ダンパー圧力の第2変化量の両方が前記基準変化量以下であるか否かを判定し、
前記昇降制御部は、前記第1変化量および前記第2変化量の両方が前記基準変化量以下であるとき、前記インクヘッドに向かって前記キャップを上昇させる、請求項1から3までの何れか1つに記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項5】
他のインクヘッドと、
前記他のインクヘッドに接続された他のダンパーと、
前記他のダンパー内の他のダンパー圧力を検出する他の圧力センサと、
前記他のインクヘッドに装着される他のキャップと、
前記他のキャップに接続された他の吸引ポンプと、
を備え、
前記昇降機構は、前記キャップと前記他のキャップとをまとめて昇降させるように構成され、
前記圧力取得部は、前記吸引処理の間、前記他の圧力センサによって検出された前記他のダンパー圧力を取得し、
前記判定制御部は、前記ダンパー圧力の前記変化量、および、前記他のダンパー圧力の他の変化量のうちの少なくとも何れかが前記基準変化量以下であるか否かを判定し、
前記昇降制御部は、前記変化量、および、前記他の変化量のうちの少なくとも何れかが前記基準変化量以下であるとき、前記キャップおよび前記他のキャップを上昇させる、請求項1から4までの何れか1つに記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記昇降制御部は、前記キャップを基準距離、上昇させ、
前記圧力取得部は、前記昇降制御部によって前記キャップが前記基準距離、上昇した後、前記ダンパー圧力を取得する、請求項1から5までの何れか1つに記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記制御装置は、前記昇降制御部による前記キャップの上昇距離が、エラー距離以上のとき、エラー制御を行うエラー制御部を備えた、請求項1から6までの何れか1つに記載されたインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、インクを噴射するノズルを有する液体噴射部と、液体噴射部に装着されるキャップと、を備えたプリンタが開示されている。キャップは、ノズルから噴射されるインクの噴射特性を維持するためのものである。
【0003】
キャップは、移動機構によって液体噴射部に装着されたり、液体噴射部から離間したりするように構成されている。キャップは、液体噴射部に接触して、ノズルが臨む空間を覆うようにして液体噴射部に装着される。このとき、ノズルが臨む空間は、密閉空間となり得る。このように、液体噴射部にキャップが装着されることで、ノズルからインクが蒸発することを抑制することができると共に、ノズルから排出されたインクを回収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-55478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、キャップには、例えば吸引ポンプが接続される。液体噴射部にキャップが装着された状態で吸引ポンプが駆動することで、液体噴射部内のインクが吸引される吸引処理が行われる。キャップは、例えばゴム製であり、経年劣化することで伸縮することがあり得る。また、ゴム製のキャップは、インクが触れることで膨張、伸縮、硬化、軟化などの経時変化が起きることがあり得る。
【0006】
このように、キャップが経年劣化や経時変化することで、液体噴射部にキャップが装着されたにも関わらず、液体噴射部にキャップが密着せず、ノズルが臨む空間が密閉されないことがあった。その結果、吸引処理を実行した場合であっても、液体噴射部からインクが吸引されず、吸引処理が適切に行われないことがあった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸引処理を適切に行うことが可能なインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインクジェットプリンタは、インクヘッドと、ダンパーと、圧力センサと、キャップと、昇降機構と、吸引ポンプと、制御装置と、を備えている。前記インクヘッドは、インクを吐出するノズルを有している。前記ダンパーは、前記インクヘッドに接続されている。前記圧力センサは、前記ダンパー内のダンパー圧力を検出する。前記キャップは、前記ノズルを覆うように前記インクヘッドに装着される。前記昇降機構は、前記インクヘッドに対して前記キャップを相対的に昇降させる。前記吸引ポンプは、前記キャップに接続されている。前記制御装置は、吸引制御部と、圧力取得部と、判定制御部と、昇降制御部と、を備えている。前記吸引制御部は、前記キャップを前記インクヘッドに装着させた状態で、前記吸引ポンプを駆動させる吸引処理を実行する。前記圧力取得部は、前記吸引処理の間、前記圧力センサによって検出された前記ダンパー圧力を取得する。前記判定制御部は、前記ダンパー圧力の変化量が基準変化量以下か否かを判定する。前記昇降制御部は、前記変化量が前記基準変化量以下のとき、前記インクヘッドに向かって前記キャップを上昇させる。
【0009】
上記インクジェットプリンタによれば、吸引処理の間、ダンパー圧力の変化量が大きい場合には、キャップ内が負圧状態になっており、インクヘッドからインクを吸引できていると言える。一方、吸引処理の間、ダンパー圧力の変化量が小さい場合には、キャップがインクヘッドに適切に装着されておらず、インクヘッドからインクを適切に吸引できていないと言える。ここでは、ダンパー圧力の変化量が基準変化量以下の場合には、当該変化量が小さいために、吸引処理が適切に行われていないと判定され、キャップを上昇させる。このことで、キャップがインクヘッド側に移動し、インクヘッドとキャップとの密着性を高めることができ、キャップ内をより負圧状態にすることができる。したがって、吸引処理を適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸引処理を適切に行うことが可能なインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るプリンタを示す正面図である。
図2】キャリッジおよびインクヘッドの底面の構成を模式的に示す底面図である。
図3】実施形態に係るプリンタのブロック図である。
図4】インクヘッドとインク供給ユニットとの関係を示す概念図である。
図5】インクヘッドおよびインク供給ユニットの構成を示す模式図である。
図6】キャリッジ、インクヘッドおよびキャップユニットを示す正面図である。
図7】キャリッジ、インクヘッドおよびキャップユニットを示す正面図である。
図8】インクヘッド、インク供給ユニットおよびキャップを示す正面図であり、インクヘッドからキャップが離間している状態を示す図である。
図9】インクヘッド、インク供給ユニットおよびキャップを示す正面図であり、吸引処理の間の状態を示す図である。
図10】吸引処理を実行する際の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るインクジェットプリンタの実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化される。
【0013】
以下、本実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタという。)10について説明する。図1は、本実施形態に係るプリンタ10を示す正面図である。図2は、プリンタ10のキャリッジ17およびインクヘッド40の底面の構成を模式的に示す底面図である。図3は、実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれプリンタ10の前、後、左、右、上、下を意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向である。図面中の符号Xは副走査方向を示している。本実施形態では、副走査方向Xは、前後方向であり、平面視において主走査方向Yと交差(ここでは直交)する方向である。図面中の符号Zは、昇降方向である。本実施形態では、昇降方向Zは上下方向である。ただし、これら方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0014】
プリンタ10は、インクジェット方式のプリンタである。プリンタ10は、図1に示す媒体5に対して印刷を行うものである。媒体5は例えばロール状の記録紙であり、いわゆるロール紙である。しかしながら、媒体5は、ロール状の記録紙に限定されない。例えば媒体5は、普通紙やインクジェット用印刷紙などの紙類以外に、ポリ塩化ビニルやポリエステルなどの樹脂製のシートやフィルム、板材、織布や不織布などの布帛、その他の媒体であってもよい。
【0015】
図1に示すように、プリンタ10は、プリンタ本体11と、プラテン13と、搬送機構20と、ガイドレール15と、キャリッジ17と、ヘッド移動機構30と、インクヘッド40(図2参照)と、インク供給ユニット50(図4参照)と、キャップユニット70(図6参照)と、制御装置90とを備えている。
【0016】
プリンタ本体11は、主走査方向Yに延びたケーシングを有している。プリンタ本体11は、脚12によって支持されている。脚12は、プリンタ本体11の下面に設けられ、当該下面から下方に延びている。
【0017】
プラテン13は、媒体5を支持する。ここでは、媒体5は、プラテン13に載置されている。プラテン13上において媒体5に対して印刷が行われる。プラテン13は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がっている。
【0018】
プラテン13に支持された媒体5は、搬送機構20によって副走査方向Xに搬送される。なお、搬送機構20の構成は、特に限定されない。本実施形態では、搬送機構20は、ピンチローラ21と、グリットローラ22と、フィードモータ23とを備えている。ピンチローラ21は、プラテン13の上方かつガイドレール15よりも下方に設けられ、媒体5を上から押さえ付けるものである。ピンチローラ21は、平面視においてキャリッジ17よりも後方に配置されている。グリットローラ22は、プラテン13に設けられ、外周形状が円柱状の部材である。グリットローラ22は、その上面部を露出させた状態でプラテン13に埋設されている。グリットローラ22は、ピンチローラ21と対向している。グリットローラ22には、フィードモータ23が接続されている。
【0019】
ピンチローラ21とグリットローラ22との間に媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ23が駆動すると、グリットローラ22が回転する。このことで、プラテン13上の媒体5は、副走査方向Xに搬送される。
【0020】
ガイドレール15は、プラテン13の上方に配置されている。ガイドレール15は、プラテン13と平行に配置され、主走査方向Yに延びている。ガイドレール15には、キャリッジ17が係合している。キャリッジ17は、ガイドレール15に摺動可能に設けられ、主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0021】
ヘッド移動機構30は、プラテン13に支持された媒体5に対して、キャリッジ17およびインクヘッド40(図2参照)を主走査方向Yに相対的に移動させる機構である。ここでは、ヘッド移動機構30は、キャリッジ17およびインクヘッド40を主走査方向Yに移動させる。なお、ヘッド移動機構30の構成は特に限定されない。
【0022】
本実施形態では、図1に示すように、ヘッド移動機構30は、左右のプーリ31a、31bと、ベルト32と、スキャンモータ33とを備えている。左のプーリ31aは、ガイドレール15の左端部の周囲に設けられている。右のプーリ31bは、ガイドレール15の右端部の周囲に設けられている。ベルト32は、無端状のベルトであり、左右のプーリ31a、31bに巻き掛けられている。ベルト32には、キャリッジ17が取り付け固定されている。右のプーリ31bには、スキャンモータ33が接続されている。
【0023】
ここでは、スキャンモータ33が駆動することで、右のプーリ31bが回転し、ベルト32が走行する。このことで、キャリッジ17およびインクヘッド40は、ガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動する。
【0024】
図2に示すように、インクヘッド40は、キャリッジ17に設けられている。インクヘッド40は、その下面を露出するように、キャリッジ17に支持されている。インクヘッド40の数は特に限定されない。本実施形態では、インクヘッド40の数は4つである。4つのインクヘッド40は、主走査方向Yに並んで配置されている。
【0025】
なお、以下の説明では、4つのインクヘッド40について、左から右へ向かう順に、第1インクヘッド41、第2インクヘッド42、第3インクヘッド43、第4インクヘッド44とも称することとする。インクヘッド40は、第1インクヘッド41と、第2インクヘッド42と、第3インクヘッド43と、第4インクヘッド44とを有している。以下の説明では、第1インクヘッド41~第4インクヘッド44の全てに対する共通の説明の場合には、インクヘッド40という文言を適宜使用することとする。
【0026】
インクヘッド40(詳しくは第1インクヘッド41~第4インクヘッド44)は、ノズル面45を有している。ノズル面45は、インクヘッド40の底面を構成している。各ノズル面45には、ノズル46が形成されている。ノズル46は、第1ノズル46aと、第2ノズル46bを有している。第1ノズル46aは、ノズル面45に複数形成されており、複数の第1ノズル46aは副走査方向Xに並んで配列されている。第2ノズル46aも、ノズル面45に複数形成されており、複数の第2ノズル46bは副走査方向Xに並んで配置されている。
【0027】
ここでは、各ノズル面45において、複数の第1ノズル46aの列のことを第1ノズル列48といい、複数の第2ノズル46bの列のことを第2ノズル列49という。ノズル列48、49は、主走査方向Yに並んでいる。第1インクヘッド41~第4インクヘッド44は、2つのノズル列48、49を有している。ここでは、第1ノズル列48と、第2ノズル列49とを合わせた合計のノズル列の数は、8つである。
【0028】
図4は、インクヘッド40とインク供給ユニット50との関係を示す概念図である。本実施形態では、図4に示すインク供給ユニット50は、インクヘッド40(例えばノズル46)にインクを供給するユニットである。インク供給ユニット50は、インクヘッド40のノズル46に接続されている。ここでは、インク供給ユニット50は、インクヘッド40の第1ノズル46aにインクを供給する第1インク供給ユニット51と、インクヘッド40の第2ノズル46bにインクを供給する第2インク供給ユニット52とを有している。インク供給ユニット51、52は、第1インクヘッド41~第4インクヘッド44に接続されている。第1インク供給ユニット51の数は、第1ノズル46aを構成する第1ノズル列48(図2参照)の数と同じ4つである。第2インク供給ユニット52の数は、第2ノズル46bを構成する第2ノズル列49(図2参照)の数と同じ4つである。そのため、ここでのインク供給ユニット50の数は、8つである。
【0029】
図5は、インクヘッド40およびインク供給ユニット50の構成を示す模式図である。インク供給ユニット50は、インクタンク55と、インク供給路56と、送液ポンプ57と、ダンパー58と、圧力センサ59とを有している。インクタンク55は、インクが収容される容器である。インクタンク55は、例えばインクカートリッジであってもよいし、パウチ状のものであってもよい。
【0030】
インクタンク55に収容されているインクは、例えばプロセスカラーインク、および、特色インクのうちの1つのインクである。ここで、プロセスカラーインクには、例えばシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどが含まれる。特色インクは、プロセスカラーインク以外の色のインクである。特色インクには、例えばホワイトインク、クリアインク、グロスインク、プライマーインク、蛍光インク、メタリックインク、オレンジインク、レッドインク、バイオレットインク、ブルーインク、グリーンインクなどが含まれる。ただし、インクタンク55に収容されているインクの色は特に限定されない。また、インクの材料も何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよい。あるいは、上記インクは、水性染料インクや、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型インクなどであってもよい。
【0031】
本実施形態では、インクタンク55は、第1インクタンク55aと、第2インクタンク55bとを有している、第1インクタンク55aは、第1インク供給ユニット51の一部を構成しており、第1ノズル46aに接続される。第2インクタンク55bは、第2インク供給ユニット52の一部を構成しており、第2ノズル46bに接続されている。
【0032】
インク供給路56は、インクタンク55と、インクヘッド40とを接続する流路である。インク供給路56の一端は、インクタンク55に接続され、インク供給路56の他端は、インクヘッド40に接続されている。インク供給路56の構成は特に限定されないが、インク供給路56は、例えば可撓性を有するチューブによって構成されている。インクタンク55内のインクは、インク供給路56を流れてインクヘッド40に供給される。
【0033】
本実施形態では、インク供給路56は、第1インク供給路56aと、第2インク供給路56bとを有している。第1インク供給路56aは、第1インク供給ユニット51の一部を構成しており、第2インク供給路56は、第2インク供給ユニット52の一部を構成している。第1インク供給路56aにおいて、一端は第1インクタンク55aに接続され、他端はインクヘッド40の第1ノズル46aに接続されている。第1インクタンク55aに収容されたインクは、第1インク供給路56aを通じて第1ノズル46aに供給される。第2インク供給路56bにおいて、一端は第2インクタンク55bに接続され、他端はインクヘッド40の第2ノズル46bに接続されている。第2インクタンク55bに収容されたインクは、第2インク供給路56bを通じて第2ノズル46bに供給される。
【0034】
送液ポンプ57は、インク供給路56に設けられている。送液ポンプ57は、インクタンク55に収容されたインクをインクヘッド40に供給すると共に、インクヘッド40からの吐出に適した圧力に調整するためのポンプである。送液ポンプ57は、駆動時、インクタンク55からインクヘッド40に向かってインクを送液する。なお、送液ポンプ57の種類は特に限定されないが、送液ポンプ57は、例えばダイヤフラムポンプやチューブポンプなどである。
【0035】
本実施形態では、送液ポンプ57は、第1送液ポンプ57aと、第2送液ポンプ57bとを有している。第1送液ポンプ57aは、第1インク供給ユニット51の一部を構成している。第1送液ポンプ57aは、第1インク供給路56aに設けられており、第1インクタンク55aからインクヘッド40の第1ノズル46aに向かってインクを送液する。第2送液ポンプ57bは、第2インク供給ユニット52の一部を構成している。第2送液ポンプ57bは、第2インク供給路56bに設けられており、第2インクタンク55bからインクヘッド40の第2ノズル46bに向かってインクを送液する。
【0036】
ダンパー58は、インクの圧力変動を緩和して、インクヘッド40のインクの吐出を安定させるものである。例えばダンパー58に流入するインクの流量(言い換えると、ダンパー58内の圧力)に応じて、送液ポンプ57の駆動が制御される。ダンパー58は、インクヘッド40(ここでは、ノズル46)に接続されている。ここでは、ダンパー58は、インクヘッド40の上部に設けられている。
【0037】
本実施形態では。ダンパー58は、第1ダンパー58aと、第2ダンパー58bとを有している。第1ダンパー58aは、第1インク供給ユニット51の一部を構成しており、インクヘッド40の第1ノズル46aに接続される。第2ダンパー58bは、第2インク供給ユニット52の一部を構成しており、インクヘッド40の第2ノズル46bに接続されている。第1ダンパー58aと第2ダンパー58bとは、インクヘッド40の上方において並んで配置されている。
【0038】
なお、ダンパー58(詳しくは、第1ダンパー58aおよび第2ダンパー58b)の構成は特に限定されない。本実施形態では、ダンパー58は、インクが一時的に貯留されるインク室60を有している。インク室60は、貯留されるインクの量に応じて伸縮する。ここでは、インク室60では、貯留されるインクの量に応じて圧力が変化する。例えばインク室60のインクの量が多くなると、インク室60が大きくなり、圧力が大きくなる。一方、インク室60のインクの量が少なくなると、インク室60が小さくなり、圧力が小さくなる。インク室60は、インク供給路56およびインクヘッド40に連通している。図示は省略するが、インク室60には、インク供給路56に接続される流入口、および、インクヘッド40に接続される流出口が形成されている。
【0039】
本実施形態では、第1ダンパー58aのインク室60は、第1インク供給路56a、および、インクヘッド40の第1ノズル46aに連通している。第2ダンパー58bのインク室60は、第2インク供給路56b、および、インクヘッド40の第2ノズル46bに連通している。
【0040】
圧力センサ59は、ダンパー58内の圧力を検出するものである。ここで、「ダンパー58内の圧力」とは、ダンパー58を構成するインク室60の圧力のことを意味する。圧力センサ59は、例えばインク室60の大きさ(例えば伸縮の程度)に基づいてダンパー58内の圧力を検出する。
【0041】
本実施形態では、圧力センサ59は、第1圧力センサ59aと、第2圧力センサ59bとを有している。第1圧力センサ59aは、第1インク供給ユニット51の一部を構成しており、第1ダンパー58a内の圧力を検出する。第2圧力センサ59bは、第2インク供給ユニット52の一部を構成しており、第2ダンパー58b内の圧力を検出する。
【0042】
次に、キャップユニット70について説明する。図6および図7は、キャリッジ17、インクヘッド40およびキャップユニット70を示す正面図である。図8および図9は、インクヘッド40、インク供給ユニット50およびキャップ71を示す正面図である。図6に示すように、キャップユニット70は、キャップ71と、昇降機構72と、吸引ポンプ73とを有している。
【0043】
キャップ71は、ノズル46(図2参照)を覆うようにインクヘッド40に装着されるものである。1つのキャップ71が装着されるインクヘッド40の数は1つである。そのため、キャップ71の数は、インクヘッド40の数と同じ4つである。本実施形態では、キャップ71は、第1キャップ71Aと、第2キャップ71Bと、第3キャップ71Cと、第4キャップ71Dとを有している。図7に示すように、第1キャップ71A、第2キャップ71B、第3キャップ71C、第4キャップ71Dは、それぞれ第1インクヘッド41、第2インクヘッド42、第3インクヘッド43、第4インクヘッド44に装着される。以下の説明では、第1キャップ71A~第4キャップ71Dの全てに対する共通の説明の場合には、キャップ71という文言を適宜使用することとする。
【0044】
本実施形態では、図8に示すように、キャップ71は、リップ部74を有している。リップ部74は、キャップ71の上端部を構成している。図9に示すように、リップ部74は、キャップ71がインクヘッド40に装着されたとき、ノズル面45と接触する部分である。リップ部74は、環状のものである。リップ部74は、上端に向かうにしたがって幅が小さくなっている。ここで、「リップ部74の幅」とは、リップ部74の周方向に対して直交する方向の長さのことをいう。リップ部74は、先細り形状を有している。
【0045】
リップ部74は、弾性変形可能なものである。そのため、リップ部74がインクヘッド40のノズル面45に接触したときに、弾性変形することがあり得る。なお、リップ部74を形成する具体的な材料は、特に限定されない。本実施形態では、リップ部74は、ゴム製である。具体的には、リップ部74は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)またはブチルゴムによって形成されている。ここでは、リップ部74以外のキャップ71の部分もゴム製である。
【0046】
キャップ71内には、吸収体75が設けられている。吸収体75は、キャップ71に収容されている。吸収体75は、インクヘッド40からキャップ71内にインクが吐出(または排出)されたとき、当該インクを受ける部材である。吸収体75が受けたインクは、吸収体75に吸収される。吸収体75は、リップ部74の上端よりも下方に配置されており、リップ部74は、吸収体75から上方に突出している。吸収体75を形成する材料は、インクを吸収するものであれば特に限定されない。ここでは、吸収体75は、多孔質の材料によって形成されている。例えば吸収体75は、ポリビニルアルコールから形成されたスポンジ(PVAスポンジ)である。
【0047】
図6および図7に示すように、昇降機構72は、インクヘッド40に対してキャップ71を相対的に昇降させる機構である。ここでは、昇降機構72は、キャップ71(詳しくは、第1キャップ71A~第4キャップ71D)を昇降させるように構成されている。昇降機構72は、インクヘッド40に対してキャップ71を装着させたり、離間させたりする機構である。図7に示すように、例えばキャップ71を上昇させることでインクヘッド40に装着させ、図6に示すように、キャップ71を下降させることでインクヘッド40から離間させるように構成されている。
【0048】
なお、昇降機構72の構成は特に限定されない。本実施形態では、昇降機構72は、支持部材77と、昇降モータ78とを有している。支持部材77は、例えば主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がった板状の部材であり、第1キャップ71A~第4キャップ71Dを支持する。昇降モータ78は、支持部材77に接続されている。ここでは、昇降モータ78が駆動することで、支持部材77が昇降する。この支持部材77の昇降に伴い、第1キャップ71A~第4キャップ71Dは、同時にまとめて昇降する。そして、第1キャップ71A~第4キャップ71Dが昇降することで、ノズル面45に対してキャップ71をまとめて装着させたり、離間させたりすることができる。
【0049】
吸引ポンプ73は、キャップ71に接続されている。吸引ポンプ73は、接続されたキャップ71内のインクや、接続されたキャップ71に装着されたインクヘッド40内のインクを吸引する。ここでは、1つのキャップ71につき、1つ吸引ポンプ73が接続されている。そのため、吸引ポンプ73の数は、キャップ71の数と同じ4つである。本実施形態では、吸引ポンプ73は、第1吸引ポンプ73Aと、第2吸引ポンプ73Bと、第3吸引ポンプ73Cと、第4吸引ポンプ73Dとを有している。第1吸引ポンプ73A、第2吸引ポンプ73B、第3吸引ポンプ73C、第4吸引ポンプ73Dは、それぞれ第1キャップ71A、第2キャップ71B、第3キャップ71C、第4キャップ71Dに接続されている。以下の説明では、第1吸引ポンプ73A~第4吸引ポンプ73Dの全てに対する共通の説明の場合には、吸引ポンプ73という文言を適宜使用することとする。
【0050】
本実施形態では、吸引ポンプ73の種類は特に限定されないが、例えば真空ポンプである。吸引ポンプ73は、チューブ79の途中部分に設けられている。チューブ79の一端はキャップ71に接続され、チューブ79の他端は廃液タンク(図示せず)に接続されている。廃液タンクは、例えば1つであり、4つのチューブ79を介して、第1キャップ71A~第4キャップ71Dに接続されている。
【0051】
例えばキャップ71がインクヘッド40に装着された状態で吸引ポンプ73が駆動すると、図9に示すように、インクヘッド40に接続されたインク供給路56内の負圧よりも低い負圧をキャップ71内に形成するように構成されている。このことで、ノズル46(ここでは第1ノズル46aおよび第2ノズル46b)からインクが吸い出され、インクヘッド40内のインクがキャップ71に排出される。吸引ポンプ73に吸引されたキャップ71内のインクなどは、チューブ79を介して廃液タンクに排出される。
【0052】
本実施形態では、図1に示すように、プリンタ10のプリンタ本体11の右端部には、操作パネル80が設けられている。操作パネル80には、機器状態を表示する表示画面81と、ユーザによって操作される入力キー82などが設けられている。
【0053】
次に、制御装置90について説明する。制御装置90は、印刷に関する制御、および、インクヘッド40内のインクを吸引する制御などを行う装置である。制御装置90の構成は特に限定されない。制御装置90は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されない。制御装置90は、例えばI/Fと、CPUと、ROMと、RAMと、を備えている。制御装置90は、プリンタ本体11の内部に設けられている。ただし、制御装置90は、プリンタ本体11の外部に設置されたコンピュータなどで実現されてもよい。この場合、制御装置90は、有線または無線を介してプリンタ10の制御基板(図示せず)と通信可能に接続されている。
【0054】
本実施形態では、図3に示すように、制御装置90は、搬送機構20(詳しくはフィードモータ23)と、ヘッド移動機構30(詳しくはスキャンモータ33)と、インクヘッド40(詳しくは第1インクヘッド41~第4インクヘッド44(図2参照))と、送液ポンプ57(詳しくは第1送液ポンプ57aおよび第2送液ポンプ57b(図5参照))と、圧力センサ59(詳しくは第1圧力センサ59aおよび第2圧力センサ59b(図5参照))と、キャップユニット70の昇降機構72(詳しくは昇降モータ78)と、キャップユニット70の吸引ポンプ73(詳しくは第1吸引ポンプ73A~第4吸引ポンプ73D(図6参照))と、操作パネル80に通信可能に接続されている。制御装置90は、搬送機構20、ヘッド移動機構30、インクヘッド40、送液ポンプ57、圧力センサ59、昇降機構72、吸引ポンプ73および操作パネル80を制御する。
【0055】
ところで、本実施形態に係るプリンタ10では、インクヘッド40においてノズル46の吐出異常の発生を抑制するために、インクヘッド40に対してクリーニング処理が実行される。ここで、ノズル46の吐出異常とは、ノズル46から吐出されるインクのヨレや、インクが吐出されないノズル抜けなどの異常であり、印刷の品質を低下させるものをいう。
【0056】
上記のクリーニング処理には、吸引処理が含まれる。吸引処理とは、図9に示すように、キャップ71をインクヘッド40に装着した状態でノズル46からインクを吸引する処理のことである。
【0057】
本実施形態では、吸引処理を実行するため、図3に示すように、制御装置90は、記憶部91と、キャッピング制御部92と、吸引制御部93と、圧力取得部94と、判定制御部95と、昇降制御部96と、エラー制御部97とを備えている。なお、上述した制御装置90の各部91~97は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば制御装置90の各部91~97は、1つまたは複数のプロセッサによって実現されるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
【0058】
次に、本実施形態に係るプリンタ10における吸引処理を実行するための制御手順について、図10のフローチャートに沿って説明する。
【0059】
ここでは、図10のステップS101では、図3のキャッピング制御部92は、インクヘッド40にキャップ71を装着させるように、昇降機構72を制御する。ここでは、キャッピング制御部92は、図6に示すように、第1キャップ71A~第4キャップ71Dの真上に、それぞれ第1インクヘッド41~第4インクヘッド44が配置されるように、ヘッド移動機構30(図1参照)を制御する。その後、キャッピング制御部92は、第1キャップ71A~第4キャップ71Dを上昇させるように昇降機構72の昇降モータ78を駆動させる。このことで、図7に示すように、第1インクヘッド41~第4インクヘッド44に、それぞれ第1キャップ71A~第4キャップ71Dが装着される。
【0060】
次に、図10のステップS103では、吸引処理を開始する。図3の吸引制御部93は、キャップ71をインクヘッド40に装着させた状態で、吸引ポンプ73を駆動させる。本実施形態では、第1キャップ71A~第4キャップ71Dが、それぞれ第1インクヘッド41~第4インクヘッド44に装着された状態で、第1吸引ポンプ73A~第4吸引ポンプ73Dを同時に駆動させる。そのため、第1インクヘッド41~第4インクヘッド44に対して吸引処理が同時に開始される。
【0061】
なお、このステップS103において、吸引制御部93は、吸引処理が開始される前、すなわち吸引ポンプ73を駆動させる前に、圧力センサ59によって検出された圧力(ここでは、ダンパー圧力P1という。)を取得する。ここで、ステップS103において、圧力センサ59によって検出されたダンパー圧力P1を、基準圧力P2とする。吸引制御部93は、図3に示すように、基準圧力P2を記憶部91に記憶させる。なお、基準圧力P2は、ダンパー58毎に取得される圧力であり、ここでは8つの基準圧力P2が記憶部91に記憶されている。
【0062】
なお、基準圧力P2は、ステップS103で取得されなくてもよい。例えば基準圧力P2は、一定であり、予め記憶部91に記憶されているものであってもよい。
【0063】
次に、図10のステップS105では、図3の圧力取得部94は、吸引処理の間、各ダンパー58のダンパー圧力P1を取得する。ここでは、圧力取得部94は、圧力センサ59によって検出されたダンパー圧力P1を取得する。例えば圧力取得部94は、各圧力センサ59に圧力信号を送信する。圧力信号を受信した圧力センサ59は、ダンパー58内のダンパー圧力P1を検出し、圧力取得部94に送信する。圧力取得部94は、圧力センサ59から送信されたダンパー圧力P1を受信することで取得することができる。
【0064】
本実施形態では、ダンパー圧力P1のうち、第1圧力センサ59a(図9参照)から取得された第1ダンパー58a内のダンパー圧力P1のことを第1ダンパー圧力ともいう。また、第2圧力センサ59b(図9参照)から取得された第2ダンパー58b内のダンパー圧力P1のことを第2ダンパー圧力ともいう。なお、圧力取得部94によって取得されたダンパー圧力P1は、記憶部91に記憶される。
【0065】
次に、図10のステップS107では、吸収処理の間にキャップ71を上昇させるか否かの判定を行う。ここでは、吸引処理において、インクヘッド40内のインクの吸引が適切に行われていない場合に、キャップ71を上昇させる。本実施形態では、吸収処理の開始前後においてダンパー58内のダンパー圧力P1の変化量C1に基づいて、吸収処理が適切に行われているか否かを判断する。
【0066】
ステップS107では、判定制御部95は、ダンパー圧力P1の変化量C1が基準変化量C2以下であるか否かを判定する。ここで、ダンパー圧力P1の変化量C1とは、記憶部91に記憶された基準圧力P2と、ステップS105において圧力取得部94によって取得されたダンパー圧力P1に基づいて算出される。ここでは、ダンパー圧力P1の変化量C1は、基準圧力P2と、ダンパー圧力P1との差である。
【0067】
本実施形態では、ダンパー圧力P1の変化量C1のうち、第1ダンパー圧力の変化量C1のことを第1変化量という。また、第2ダンパー圧力の変化量C1のことを第2変化量という。図3に示すように、基準変化量C2は、記憶部91に予め記憶されている。
【0068】
本実施形態では、吸引処理が適切に行われているとき、インクヘッド40内のインクが吸引されているため、ダンパー圧力P1の変化量C1が大きくなる。そのため、判定制御部95は、ダンパー圧力P1の変化量C1が基準変化量C2より大きいときには、吸引処理が適切に行われていると判定する。
【0069】
一方、吸引処理が適切に行われていないときには、インクヘッド40内のインクが適切に吸引されていないため、ダンパー圧力P1の変化量C1が小さくなる。そのため、判定制御部95は、ダンパー圧力P1の変化量C1が基準変化量C2以下のときには、吸引処理が適切に行われていないと判定する。
【0070】
本実施形態のように、図9に示すように、1つのインクヘッド40に対して2つのダンパー58(ここでは、第1ダンパー58aと第2ダンパー58b)が接続されている場合には、2つのダンパー58のうち、少なくとも一方のダンパー圧力P1の変化量C1が大きい場合には、吸引処理が適切に行われていると判定される。そのため、判定制御部95は、1つのインクヘッド40に対して、第1ダンパー圧力の第1変化量、および、第2ダンパー圧力の第2変化量の両方が基準変化量C2以下であるか否かを判定する。そして、第1ダンパー圧力の第1変化量、および、第2ダンパー圧力の第2変化量のうち、少なくとも一方が基準変化量C2より大きいときには、吸引処理が適切に行われていると判定する。
【0071】
一方、1つのインクヘッド40に対して2つのダンパー58のうち両方のダンパー圧力P1の変化量C1が小さい場合には、吸引処理が適切に行われていないと判定される。そのため、判定制御部95は、1つのインクヘッド40に対して、第1ダンパー圧力の第1変化量、および、第2ダンパー圧力の第2変化量の両方が基準変化量C2以下のときには、1つのインクヘッド40に対して吸引処理が適切に行われていないと判定する。
【0072】
本実施形態のように、図2に示すように、複数のインクヘッド40が存在する場合、例えば第1インクヘッド41~第4インクヘッド44の4つのインクヘッド40が存在する場合には、4つのインクヘッド40の全てにおけるダンパー圧力P1の変化量C1が大きい場合には、吸引処理が適切に行われていると判定される。そのため、判定制御部95は、第1インクヘッド41~第4インクヘッド44のうちの少なくとも何れかのダンパー圧力P1の変化量C1が基準変化量C2以下であるか否かを判定する。そして、第1インクヘッド41~第4インクヘッド44の全てのダンパー圧力P1の変化量C1が基準変化量C2よりも大きいときには、吸引処理が適切に行われていると判定する。
【0073】
一方、第1インクヘッド41~第4インクヘッド44のうちの少なくとも何れかのダンパー圧力P1の変化量C1が小さい場合には、吸引処理が適切に行われていないと判定される。そのため、判定制御部95は、第1インクヘッド41~第4インクヘッド44のうちの少なくとも何れかのダンパー圧力P1の変化量C1が基準変化量C2以下である場合には、吸引処理が適切に行われていないと判定する。
【0074】
本実施形態では、吸引処理が適切に行われている判定された場合、吸引処理の間、キャップ71は上昇されることなく、図10のフローチャートは終了する。一方、吸引処理が適切に行われていないと判定された場合には、吸引処理を適切に行うために、次に図10のステップS109に進む。
【0075】
ステップS109では、図3の昇降制御部96は、インクヘッド40に向かってキャップ71を上昇させるように昇降機構72を制御する。ここでは、昇降制御部96は、キャップ71を所定の基準距離L5、上昇させる。ここで、図3に示すように、基準距離L5は、記憶部91に予め記憶されている。基準距離L5の具体的な数値は特に限定されず、例えば昇降機構72がキャップ71を上昇させることが可能な最小距離である。基準距離L5は、例えば0.1mmである。
【0076】
次に、図10のステップS111では、図3のエラー制御部97は、昇降制御部96によるキャップ71の合計の上昇距離L1が、エラー距離L2以上であるか否かを判定する。ここで、上昇距離L1とは、1回の吸引処理の間において、キャップ71が上昇した距離のことである。上昇距離L1は、ステップS109において昇降制御部96がキャップ71を上昇させた合計の距離である。本実施形態では、上昇距離L1は、基準距離L5に、ステップS109が実行された回数を乗算することで算出される。
【0077】
エラー距離L2とは、例えばキャップ71に収容された吸収体75がノズル面45に接触する程度の距離のことである。図3に示すように、エラー距離L2は、記憶部91に予め記憶されている。
【0078】
ステップS111において、昇降制御部96によるキャップ71の合計の上昇距離L1が、エラー距離L2未満の場合には、ステップS105に戻り、圧力取得部94が各ダンパー58のダンパー圧力P1を取得する。一方、ステップS111において、キャップ71の合計の上昇距離L1が、エラー距離L2以上の場合には、次に図10のステップS113に進む。
【0079】
ステップS113では、図3のエラー制御部97は、エラー制御を行う。ここでは、エラー制御とは、吸引処理が適切に行われない旨をユーザに知らせるための制御のこという。エラー制御の具体的な制御は、特に限定されない。エラー制御部97は、エラー制御として、例えば操作パネル80の表示画面81(図1参照)に、エラーメッセージを表示する。エラーメッセージとは、例えば吸引処理が適切に行われない旨を示すメッセージである。ユーザは、表示画面81に表示されたエラーメッセージを見ることで、吸引処理が適切に行われなかったことを知ることができ、例えばカスタマーセンターに問い合わせることができる。
【0080】
以上のように、エラー制御が行われると、図10のフローチャートは終了する。ここでは、エラー制御が行われた後、吸引ポンプ73が停止されることで、吸引処理が終了する。
【0081】
以上、本実施形態では、図9に示すように、プリンタ10は、インクヘッド40と、ダンパー58と、圧力センサ59と、キャップ71と、昇降機構72(図6参照)と、吸引ポンプ73(図6参照)と、制御装置90(図3参照)とを備えている。インクヘッド40は、インクを吐出するノズル46を有している。ダンパー58は、インクヘッド40に接続されている。圧力センサ59は、ダンパー58内のダンパー圧力を検出する。キャップ71は、ノズル46を覆うようにインクヘッド40に装着される。図6および図7に示すように、昇降機構72は、インクヘッド40に対してキャップ71を相対的に昇降させる。吸引ポンプ73は、キャップ71に接続されている。図3に示すように、制御装置90は、吸引制御部93と、圧力取得部94と、判定制御部95と、昇降制御部96とを備えている。吸引制御部93は、図10のステップS103に示すように、キャップ71をインクヘッド40に装着させた状態で、吸引ポンプ73を駆動させる吸引処理を実行する。圧力取得部94は、図10のステップS105に示すように、吸引処理の間、圧力センサ59によって検出されたダンパー圧力P1を取得する。判定制御部95は、図10のステップS107に示すように、ダンパー圧力P1の変化量C1が基準変化量C2以下か否かを判定する。昇降制御部96は、ダンパー圧力P1の変化量C1が基準変化量C2以下のとき、図10のステップS109に示すように、インクヘッド40に向かってキャップ71を上昇させる。
【0082】
本実施形態によれば、吸引処理の間、ダンパー圧力P1の変化量C1が大きい場合には、キャップ71内が負圧状態になっており、インクヘッド40からインクを適切に吸引できていると言える。一方、吸引処理の間、ダンパー圧力P1の変化量C1が小さい場合には、キャップ71がインクヘッド40に適切に装着されておらず、キャップ71内が十分に負圧状態になっていない。この場合、インクヘッド40からインクを適切に吸引できていないと言える。ここでは、ダンパー圧力P1の変化量C1が基準変化量C2以下の場合には、当該変化量C1が小さいために、吸引処理が適切に行われていないと判定され、キャップ71を上昇させる。このことで、キャップ71がインクヘッド40側に移動し、インクヘッド40とキャップ71との密着性を高めることができ、キャップ71内をより負圧状態にすることができる。したがって、吸引処理を適切に行うことができる。
【0083】
本実施形態では、キャップ71はゴム製であるが、ゴムにも様々な種類が存在する。例えば柔らかいゴムもあれば、硬いゴムもある。例えばゴムはインクに触れると経時変化することがあり得るため、インクに適さないゴムもあれば、インクに適するゴムもある。本実施形態では、吸引処理が適切に行われていない場合には、例えば経時変化を引き起こす可能性があるゴムで形成されたキャップ71であっても、キャップ71を上昇させて密着性を向上させることができる。よって、経時変化を引き起こす可能性があるゴムで形成されたキャップ71であっても、吸引処理を適切に行うことが可能となる。したがって、キャップ71を形成するゴムの種類の選択肢を広げることができる。
【0084】
また、本実施形態では、経年劣化したキャップ71であっても、吸引処理の間、キャップ71を上昇させて密着性を向上させることができる。よって、経年劣化したキャップ71であっても、吸引処理を適切に行うことが可能となる。
【0085】
本実施形態では、制御装置90は、キャップ71がインクヘッド40に装着され、かつ、吸引ポンプ73が駆動されていないときのダンパー圧力P1である基準圧力P2(図3参照)が記憶された記憶部91を備えている。図3の判定制御部95は、基準圧力P2と、図10のステップS107において、圧力取得部94によって取得されたダンパー圧力P1との差をダンパー圧力P1の変化量C1とする。このことによって、ダンパー圧力P1の変化量C1を、吸引処理が行われていないときの基準圧力P2からの変化量C1に設定することができる。よって、基準圧力P2からの変化量C1に基づいて、吸引処理が適切に行われているか否かの判定を行うことができる。
【0086】
本実施形態では、吸引制御部93は、図10のステップS103において、吸引ポンプ73を駆動させる前に、圧力センサ59によって検出されたダンパー圧力P1を基準圧力P2として記憶部91に記憶させる。このことによって、吸引処理を開始する前のダンパー圧力P1(基準圧力P2)と、吸引処理の間のダンパー圧力P1との差を変化量C1とすることができるため、変化量C1をより正確に算出することができる。
【0087】
本実施形態では、図9に示すように、ノズル46は、第1ノズル46aと、第2ノズル46bとを有している。ダンパー58は、第1ノズル46aに接続された第1ダンパー58aと、第2ノズル46bに接続された第2ダンパー58bと、を有している。圧力センサ59は、第1ダンパー58aの第1ダンパー圧力を検出する第1圧力センサ59aと、第2ダンパー58bの第2ダンパー圧力を検出する第2圧力センサ59bと、を有している。図3の圧力取得部94は、図10のステップS105において、吸引処理の間、第1ダンパー圧力、および、第2ダンパー圧力を取得する。図3の判定制御部95は、図10のステップS107において、第1ダンパー圧力の第1変化量、および、第2ダンパー圧力の第2変化量の両方が基準変化量C2以下であるか否かを判定する。図3の昇降制御部96は、第1変化量および第2変化量の両方が基準変化量C2以下であるとき、図10のステップS109において、インクヘッド40に向かってキャップ71を上昇させる。
【0088】
このように、1つのインクヘッド40に対して2つのダンパー58a、58bが設けられている場合、少なくとも一方のダンパー圧力P1の変化量C1が小さい場合には、1つのインクヘッド40に対して吸引処理が適切に行われていると判定することができる。逆に、両方のダンパー圧力P1の変化量C1が大きい場合には、吸引処理が適切に行われていないと判定することができる。
【0089】
本実施形態では、プリンタ10には、図2に示すように、複数のインクヘッド40(ここでは、第1インクヘッド41~第4インクヘッド44)が設けられており、図9に示すように、各インクヘッド40に対して、ダンパー58、圧力センサ59、キャップ71,吸引ポンプ73が設けられている。図6および図7に示すように、昇降機構72は、複数のキャップ71(ここでは第1キャップ71A~第4キャップ71D)をまとめて昇降させるように構成されている。図3の圧力取得部94は、図10のステップS105において、吸引処理の間、各インクヘッド40に対応した圧力センサ59によって検出されたダンパー圧力P1を取得する。図3の判定制御部95は、図10のステップS107において、各インクヘッド40に対応したダンパー圧力P1の変化量C1のうちの少なくとも何れかが基準変化量C2以下であるか否かを判定する。図3の昇降制御部96は、各インクヘッド40に対応したダンパー圧力P1の変化量C1のうちの少なくとも何れかが基準変化量C2以下であるとき、図10のステップS109において、複数のキャップ71を上昇させる。このように、複数のキャップ71をまとめて(すなわち同時に)上昇させる構成の場合、複数のインクヘッド40のうち、1つのインクヘッド40に対して吸引処理が適切に行われていない場合には、キャップ71を上昇させている。よって、全てのインクヘッド40に対する吸引処理を適切に行わせることができる。
【0090】
なお、本実施形態では、例えば第2インクヘッド42が他のインクヘッドに対応している。第2インクヘッド42に接続されたダンパー58が他のダンパーに対応し、第2インクヘッド42に接続されたダンパー58の圧力を検出する圧力センサ59が他の圧力センサに対応している。また、第2キャップ71Bが他のキャップに対応し、第2吸引ポンプ73Bが他の吸引ポンプに対応している。
【0091】
本実施形態では、昇降制御部96は、図10のステップS109において、キャップ71を基準距離L5、上昇させる。圧力取得部94は、昇降制御部96によってキャップ71が基準距離L5、上昇した後、図10のステップS105において、ダンパー圧力P1を取得する。このことによって、ダンパー圧力P1の変化量C1が大きくなるまで、すなわち基準変化量C2以上になるまで、キャップ71を基準距離L5分、徐々に上昇させることができる。よって、キャップ71が上昇され過ぎることを抑制することができる。
【0092】
本実施形態では、制御装置90は、図10のステップS111において、昇降制御部96によるキャップ71の合計の上昇距離L1が、エラー距離L2以上のとき、図10のステップS113において、エラー制御を行うエラー制御部97(図3参照)を備えている。例えばキャップ71の上昇距離L1が大き過ぎると、例えばキャップ71内の吸収体75がノズル面45に接触することがあり得る。ノズル面45に吸収体75が接触すると、ノズル46のメニスカスを整えることができないおそれがあり、吸収体75はノズル面45に接触しない方がよい。そのため、本実施形態では、キャップ71の合計の上昇距離L1が、エラー距離L2以上のときには、エラー制御を行い。吸引処理を終了する。よって、キャップ71の上昇距離L1が大き過ぎて、キャップ71内の吸収体75がノズル面45に接触することを防止することができる。
【0093】
本実施形態では、1つのインクヘッド40に対して2つのダンパー58(ここでは、第1ダンパー58a、第2ダンパー58b)が設けられていた。しかしながら、1つのインクヘッド40に設けられるダンパー58は、1つであってもよく、例えば3つ以上であってもよい。
【0094】
本実施形態では、圧力センサ59は、所定の時点におけるダンパー58のダンパー圧力P1を検出するものであった。圧力センサ59は、ダンパー圧力P1を数値で検出するものであった。しかしながら、圧力センサ59は、ダンパー圧力P1を数値で検出するものに限定されない。例えば圧力センサ59は、ダンパー58のダンパー圧力P1が所定の圧力(例えば下限圧力)以上か否かを検出するものであってもよい。圧力センサ59として、例えば特開2019-107852号公報に開示されたフィラーセンサを採用してもよい。この場合、フィラーセンサが、吸引処理の際のダンパー圧力P1が所定の圧力以上か否かを検出する。例えばフィラーセンサがヒットすることによって、吸引処理を行ったときのダンパー圧力P1が所定の圧力よりも小さい圧力に変化したと検出されたとき、判定制御部95は、吸引処理が適切に行われていると判定する。一方、吸引処理を行ってもフィラーセンサがヒットしない状態が続くことによって、ダンパー圧力P1が所定の圧力以上のままであると検出されたとき、判定制御部95は、吸引処理が不適切であると判定し、昇降制御部96によって、インクヘッド40に向かってキャップ71が上昇される。
【符号の説明】
【0095】
10 プリンタ(インクジェットプリンタ)
40 インクヘッド
42 第2インクヘッド(他のインクヘッド)
45 ノズル面
46 ノズル
58 ダンパー
59 圧力センサ
71 キャップ
71B 第2キャップ(他のキャップ)
72 昇降機構
73 吸引ポンプ
73B 第2吸引ポンプ(他の吸引ポンプ)
90 制御装置
91 記憶部
93 吸引制御部
94 圧力取得部
95 判定制御部
96 昇降制御部
97 エラー制御部
図1
図2
図3
図4
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図8
図9
図10