(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】車体カバーの開閉機構
(51)【国際特許分類】
B62D 25/12 20060101AFI20240126BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20240126BHJP
E02F 9/16 20060101ALI20240126BHJP
B62D 25/10 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
B62D25/12 N
E02F9/00 N
E02F9/16 F
B62D25/10 K
(21)【出願番号】P 2021120766
(22)【出願日】2021-07-21
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000150154
【氏名又は名称】株式会社竹内製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 進悟
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-248491(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0306647(US,A1)
【文献】特開2005-23727(JP,A)
【文献】特開2006-21750(JP,A)
【文献】特開2019-209769(JP,A)
【文献】米国特許第2952328(US,A)
【文献】実開昭59-167868(JP,U)
【文献】特開2007-120042(JP,A)
【文献】特開2009-203729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/10,
E02F 9/00,
E05B 83/16,83/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業用車両の車体に対して分離可能に着脱される車体カバーの開閉機構であって、
前記車体カバーの上部を前記車体に係止する係止部と、
前記車体カバーの下部を前記車体にロックするロック部と、を備え、
前記ロック部は、前記車体カバーに設けられるストライカーと、前記車体に設けられて前記ストライカーが係脱されるフックと、前記ストライカーが前記フックに係合されてロックされた状態を解除するロック解除部と、を有し、
前記ロック解除部は、前記車体に設けられた開口部に正対したときに開口視野内に視認されない位置であって、且つ、前記開口部から作業者が内部に手を入れて開口視野内から視野外へ指を伸ばすことによって把持できる位置に配設されて
おり、
前記開口部は、前記車体に設けられる固縛ポイントに対して固縛部材を進入させて固縛を行うための進入口として兼用される構成であること
を特徴とする車体カバーの開閉機構。
【請求項2】
作業用車両の車体に対して分離可能に着脱される車体カバーの開閉機構であって、
前記車体カバーの上部を前記車体に係止する係止部と、
前記車体カバーの下部を前記車体にロックするロック部と、を備え、
前記ロック部は、前記車体カバーに設けられるストライカーと、前記車体に設けられて前記ストライカーが係脱されるフックと、前記ストライカーが前記フックに係合されてロックされた状態を解除するロック解除部と、を有し、
前記ロック解除部は、前記車体に設けられた開口部に正対したときに開口視野内に視認されない位置であって、且つ、前記開口部から作業者が内部に手を入れて開口視野内から視野外へ指を伸ばすことによって把持できる位置に配設されており、
前記ロック部は、前記開口部の内部において、その内周を覆って前記ロック解除部に触れることを規制する内部カバーをさらに有すること
を特徴とする車体カバーの開閉機構。
【請求項3】
作業用車両の車体に対して分離可能に着脱される車体カバーの開閉機構であって、
前記車体カバーの上部を前記車体に係止する係止部と、
前記車体カバーの下部を前記車体にロックするロック部と、を備え、
前記ロック部は、前記車体カバーに設けられるストライカーと、前記車体に設けられて前記ストライカーが係脱されるフックと、前記ストライカーが前記フックに係合されてロックされた状態を解除するロック解除部と、を有し、
前記ロック解除部は、前記車体に設けられた開口部に正対したときに開口視野内に視認されない位置であって、且つ、前記開口部から作業者が内部に手を入れて開口視野内から視野外へ指を伸ばすことによって把持できる位置に配設されており、
前記係止部は、前記車体カバーに設けられて上向きに開口する係止溝と、対応する前記車体の所定位置に設けられていると共に前記係止溝と係止される係止突起と、を有し、
前記係止溝に前記係止突起を係止させた状態で、前記車体カバーが前記車体に対して回動可能に開閉される構成であること
を特徴とする車体カバーの開閉機構。
【請求項4】
前記係止部は、前記車体に設けられて、前記係止溝の外面側に当接可能で前記車体カバーの位置ずれを防止する位置ずれ防止部をさらに有すること
を特徴とする請求項
3に記載の車体カバーの開閉機構。
【請求項5】
前記車体に設けられるカウンターウェイトの上端部が、前記位置ずれ防止部として用いられる構成であること
を特徴とする請求項
4に記載の車体カバーの開閉機構。
【請求項6】
作業用車両の車体に対して分離可能に着脱される車体カバーの開閉機構であって、
前記車体カバーの上部を前記車体に係止する係止部と、
前記車体カバーの下部を前記車体にロックするロック部と、を備え、
前記ロック部は、前記車体カバーに設けられるストライカーと、前記車体に設けられて前記ストライカーが係脱されるフックと、前記ストライカーが前記フックに係合されてロックされた状態を解除するロック解除部と、を有し、
前記ロック解除部は、前記車体に設けられた開口部に正対したときに開口視野内に視認されない位置であって、且つ、前記開口部から作業者が内部に手を入れて開口視野内から視野外へ指を伸ばすことによって把持できる位置に配設されており、
前記係止部は、前記車体カバーに設けられている係止突起と、対応する前記車体の所定位置に設けられていると共に上向きに開口する前記係止突起と係止される係止溝と、を有し、
前記係止溝に前記係止突起を係止させた状態で、前記車体カバーが前記車体に対して回動可能に開閉される構成であること
を特徴とする車体カバーの開閉機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用車両の車体カバーの開閉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、クローラ、タイヤ等を有する走行装置と、走行装置上に設けられた車体と、車体の前部に設けられて油圧駆動される作業装置と、車体の後部に設けられて駆動源やバッテリー等の各種機器が配置される機器室と、を備えて構成される作業用車両として、エクスカベータ、クローラローダ(トラックローダ)等が知られている。
【0003】
上記の作業用車両においては、機器室内の機器のメンテナンス作業等を行う場合があるため、機器室に作業用の開口部および開口部を開閉するカバー(車体カバー)が設けられた構成が一般的となっている(特許文献1:特開2009-203729号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に例示されるような従来の車体カバーは、ヒンジ等を用いて開閉可能に車体に固定されており、車体から取外す(分離させる)ことが容易に行えない構造となっていた。そのため、メンテナンスの内容によっては、作業が行いづらい場合があった。それと共に、車体カバーを車体にロックするロック部の鍵穴(解除部)が外部から視認できる構造となっており、第三者によるアクセスが容易である点に関して、防犯上、改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、車体に対して分離可能に着脱することができる構成を実現し、内部の機器に対するメンテナンス作業の作業性の向上を図ることが可能で、且つ、車体カバーを車体にロックするロック部へのアクセスを容易に行えないようにして防犯性の向上を図ることが可能な車体カバーの開閉機構を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
本発明に係る車体カバーの開閉機構は、作業用車両の車体に対して分離可能に着脱される車体カバーの開閉機構であって、前記車体カバーの上部を前記車体に係止する係止部と、前記車体カバーの下部を前記車体にロックするロック部と、を備え、前記ロック部は、前記車体カバーに設けられるストライカーと、前記車体に設けられて前記ストライカーが係脱されるフックと、前記ストライカーが前記フックに係合されてロックされた状態を解除するロック解除部と、を有し、前記ロック解除部は、前記車体に設けられた開口部に正対したときに開口視野内に視認されない位置であって、且つ、前記開口部から作業者が内部に手を入れて開口視野内から視野外へ指を伸ばすことによって把持できる位置に配設されており、前記開口部は、前記車体に設けられる固縛ポイントに対して固縛部材を進入させて固縛を行うための進入口として兼用される構成であることを要件とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車体に対して車体カバーを分離可能に着脱することができる構成を実現し、内部の機器に対するメンテナンス作業の作業性の向上を図ることができる。また、車体カバーを車体にロックするロック部へのアクセスを容易に行えないようにして防犯性の向上を図ることができる。このように、車体カバーの分離作業の容易化と防犯性の向上という相反する課題に対して、両立した解決策を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る車体カバーの開閉機構を備える作業用車両の例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の作業用車両の車体カバーの開閉状態を示す説明図である。
【
図3】
図3は、
図1の作業用車両の車体カバーの例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1の作業用車両の車体の例を示す側面断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る車体カバーの開閉機構の係止部の例を示す拡大図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る車体カバーの開閉機構のロック部の例を示す拡大図である。
【
図7】
図7は、
図1の作業用車両の背面図であり、本実施形態に係る車体カバーの開閉機構の開口部に正対した図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る車体カバーの開閉機構の内部カバーの例を示す分解斜視図である。
【
図9】
図9は、
図1の作業用車両の固縛ポイントの例を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係る車体カバーの開閉機構の位置ずれ防止部の例を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、本実施形態に係る車体カバーの開閉機構の位置ずれ防止部の例を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本実施形態に係る車体カバー40の開閉機構2を備える作業用車両1の例を示す概略図(後部右側からの斜視図)である。また、
図2は、
図1の作業用車両1の車体カバー40の開閉状態を示す説明図である。また、
図3は、車体カバー40の正面側(車体開口部42に対向する側)の概略図(前部上側からの斜視図)である。また、
図4は、車体10の概略図(側面断面図)である。なお、説明の便宜上、図中において矢印により上下、左右、前後の方向を示す場合がある。また、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0012】
はじめに、作業用車両1の全体構成について説明する。ここでは、油圧モータ等により駆動されるクローラを備えて走行するエクスカベータを例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。
【0013】
作業用車両1は、
図1に示すように、左右一対のクローラ30を有する走行装置12と、走行装置12上に旋回可能に設けられる車体10と、車体10等に支持されて設けられる作業装置(一例として、ショベル装置16、ブレード装置18等)と、を備えて構成されている。また、車体10には、中央部に作業者(オペレータ)が乗車して走行装置12や作業装置16、18等の操作を行う操縦室14が設けられ、後部に駆動源やバッテリー等が搭載される機器室20が設けられている。なお、走行装置12や作業装置16、18を駆動する駆動源には、エンジン(内燃機)やバッテリー電源による電気モータ等が用いられる(不図示)。
【0014】
先ず、操縦室14は、作業者が搭乗して着座するシート44や、走行装置12等の作動を操作するための各種の操作レバー、操作スイッチおよび種々の車両情報を表示するディスプレイ装置等を備えて構成されている(いずれも不図示)。本実施形態に係る操縦室14は、開放型のキャノピーである。ただし、これに限定されるものではなく、密閉型のキャビンであってもよい(不図示)。
【0015】
次に、作業装置について説明する。先ず、ショベル装置16は、車体10の前部にブームブラケット(不図示)を介して上下揺動可能に枢結されるブーム22およびアーム24を備えている(なお、ブームブラケットを備えない構成としてもよい)。さらに、アームの先端部に上下揺動可能に枢結されるアタッチメント(例えば、バケット等)26を備えている。これらのブーム22、アーム24、アタッチメント26は、それぞれ、油圧シリンダ32、34、36によって駆動される。
【0016】
一方、ブレード装置18は、走行装置12の前部に上下揺動可能に枢結されるブレード28を備えている。このブレード28は、油圧シリンダ38によって駆動される。
【0017】
上記の各油圧シリンダ32、34、36、38の駆動を行うための機構として、駆動源(エンジンや電気モータ等)によって駆動される油圧ポンプ、コントロールバルブ等を備えている(不図示)。なお、作業用車両1における走行および作業のためのその他の機構(駆動機構、制御機構等)については、公知の作業用車両(ここでは、エクスカベータ)と同様であるため、詳細の説明を省略する。
【0018】
続いて、本実施形態に係る車体カバー40の開閉機構2について詳しく説明する。前述の駆動源(エンジンや電気モータ等)、バッテリー、油圧ポンプ、コントロールバルブ等の機器は、車体10の機器室20内や床下等に、適宜、分散して配置されている。本実施形態においては、機器室20内に、バッテリーおよび周辺装置が主として配置されている(ただし、これらの機器に限定されるものではない)。また、機器室20は、当該機器のメンテナンス作業等を行うための車体開口部42、および車体開口部42を開閉する車体カバー40を備えている。一例として、機器室20(外壁等の構造部材)および車体カバー40は、金属材料を用いて構成されている。ただし、この構成に限定されるものではなく、例えば、樹脂材料を用いて車体カバー40を構成してもよい。
【0019】
車体カバー40の開閉機構2の具体的な構成として、
図4に示すように、車体カバー40の上部を車体10に係止する係止部50と、車体カバー40の下部を車体10にロックするロック部60とを備えて構成されている。ここで、係止部50の拡大図(
図4におけるV部拡大図)を
図5に示す。また、ロック部60の拡大図(
図4におけるVI部拡大図)を
図6に示す。
【0020】
先ず、ロック部60は、車体カバー40に設けられるストライカー64と、車体10に設けられてストライカー64が係脱されるフック66およびストライカー64がフック66に係合されてロックされた状態を解除するロック解除部68としてのロック解除レバー68と、を有している。なお、フック66およびストライカー64には公知の機構を用いることができ、ストライカー64がフック66内の所定位置に係合されたときにロック状態となる。一方、当該フック66の解除部に連結されるロック解除レバー68を作動(本実施形態においては、引動)することによってロックの解除が行われる機構となっている。なお、解除用のキーは備えていない。
【0021】
一例として、ロック解除レバー68は、リンク式であってロッド68a(複数要素が連結された構成を含む)およびその端部(下端部)に設けられる把手68bを備えて構成されている。作業者が把手68bを把持して引動することでロッド68aが引き下げられ、フック66の解除部に作用して解除動作が行われる。これにより、ストライカー64がフック66に係合されている状態すなわちロック状態を解除することができる。なお、変形例として、ロック解除部68は、ワイヤー式、すなわち、ロッド68aに代えてワイヤーを用いてフック66の解除部を作動させる構成としてもよい(不図示)。
【0022】
さらに、別の変形例として、ロック解除レバー68は、電気駆動式、すなわち、ソレノイド等を備えた電気駆動機構を用いてフック66の解除部を作動させ、ストライカー64とフック66とのロック状態を解除する構成としてもよい(不図示)。その場合は、無線通信を行うリモコンによって当該電気駆動機構を動作させる構成を好適にロック解除レバー68と共に併用することができる。
【0023】
ここで、本実施形態に係るロック解除レバー68は、
図7に示すように開口部62に正対したときに開口視野内(開口領域内)に視認できない位置、すなわち、端部(一例として、下端部)の把手68bが開口視野内(開口領域内)に出現しない配置で設けられている。より具体的には、ロック解除レバー68は、車体10の後部の下側に設けられた開口部62から作業者が内部に手を入れて、内周面が終端する位置よりもさらに奥の位置において、開口視野内(開口領域内)から開口視野外へ(すなわち、開口領域内から周囲の領域外へ)指を伸ばすことによって把持できる位置に把手68bが配置されている。したがって、作業者がロック解除の動作を行うときに、開口部62の内周における上面62a(いわゆる、天井面)が、把手68bを引く際に掌を当てて力を掛ける支持面として機能する。開口部62は、固縛ポイント72の上面と、車体10の後部の下側に形成された開口部62の一部を規定する開口部規定面63とで規定されており、この開口部62は、機器室20と、車体開口部42とに連通している。
【0024】
上記の構成によれば、車体カバー40を車体10にロックするロック部60が外部から視認できない構成を実現できる。したがって、当該ロック部60へのアクセスを容易に行えないようにして防犯性の向上を図ることが可能となる。特に、操縦室14が開放型のキャノピーである場合には、防犯上、操縦室14内に車体カバー40を開閉するレバー等を露出状態で設置することができない。そのため、本実施形態に係るロック部60の構成がより一層、有効となる。
【0025】
また、ロック部60は、鍵穴が無く、すなわち施錠・開錠が不要の開閉動作を可能としている。したがって、車体カバー40の開閉動作を極めて容易に行うことができる。このように、本実施形態に係る車体カバー40の開閉機構2によれば、防犯性の向上と開閉(着脱)動作の容易化という相反する課題に対して、両立した解決策を提供することができる。
【0026】
上記構成に加えて、
図8に示すように、開口部62の内部において、その内周を覆ってロック解除レバー68に触れることを規制する内部カバー70がボルト等で固定される構成を備えていてもよい。これにより、内部カバー70が固定されるボルト等を取外す工具が無ければ、内部カバー70を外すことができず、ロック解除レバー68に対してアクセスすることができないため、より一層、防犯性の向上を図ることが可能となる。
【0027】
さらに、本実施形態においては、
図9に示すように、開口部62が、車体10に設けられる固縛ポイント72に対して固縛部材(ワイヤー、ロープ、チェーン、固定用フック等)を進入させて固縛を行うための進入口として兼用される構成となっている。このように、輸送用として必須となる固縛ポイント72用の構成(進入口)を車体カバー40の開閉機構2用の構成(開口部62)として兼用することによって、別途、車体カバー40の開閉機構2専用の開口部を設けなくて済むため、車体構造および製造工程のいずれにおいても簡素化を図ることが可能となる。
【0028】
次に、係止部50は、車体カバー40の上部40aに設けられて上向きに開口する断面U字状、断面V字状もしくは断面円弧状の係止溝52と、対応する車体10の所定位置(本実施形態においては、車体開口部42の上縁部)に設けられて下向きに突起して係止溝52と係止される係止突起54と、を有している。
【0029】
具体的に、係止溝52は車体10の左右方向に連続する溝状に形成されている。一方、係止突起54は車体10の左右方向に連続する板状に形成されている。ただし、係止突起54は、連続的な形状に限定されるものではなく、断続的な形状(板状、円錐状等)としてもよい(不図示)。
【0030】
上記の構成によれば、ロック解除状態(ストライカー64がフック66から外れた状態)において、係止溝52に係止突起54を係止させた状態で、車体カバー40が車体10に対して回動(すなわち、開閉)を行うことができる(
図2参照)。さらに、車体カバー40を所定角度、上方へ回動させた状態で後方(角度によっては後部上方もしくは後部下方の場合もある)へ引くことによって、車体カバー40を車体10(具体的には、機器室20)から分離(すなわち、取外し)を行うことができる。なお、本実施形態においては、いずれも金属材料等からなる係止溝52と係止突起54とが直接、摺接して摩耗することを防止するため、ゴムもしくはエラストマー等の材料からなり弾性変形可能な保護キャップ56が係止突起54の先端部等に取付けられている。
【0031】
このように、係止部50は、ヒンジ、蝶番等が無く、車体カバー40を車体10から容易に分離させる(取外す)ことができる。これにより、車体カバー40を分離させた(取外した)状態で機器室20の車体開口部42を露出させることができる。したがって、車体カバー40によって遮られない広い作業スペースが確保できるため、機器室20の内部に配置された機器に対するメンテナンス作業を行う際に、作業性を格段に向上させることが可能となる。なお、係止部50における係止溝52は、車体10の左右方向に連続する溝状に形成されているため、本発明によれば、雨樋として雨水を係止溝52の左右方向の端部へ通流させて、雨水を排出させる効果をも得られる。
【0032】
上記構成に加えて、本実施形態に係る係止部50は、車体10に設けられて、係止溝52の外面52a側に当接可能で車体カバー40の位置ずれを防止する位置ずれ防止部80をさらに備えている。これにより、回動途中で、意図しない分離を発生させず、安定した開閉を行うことができる。
【0033】
具体的な構成として、
図10(車体カバー40を分離した(取外した)状態)および
図11(
図10におけるXI部拡大図)に示すように、車体10に設けられるカウンターウェイト82の左右方向において上下方向に延びた一対のリブ82bの上端部82aが、位置ずれ防止部80として用いられる構成となっている。この構成によれば、カウンターウェイト82(リブ82b)を上下方向に延設することによって水平方向のコンパクト化を図りつつ、その上端部82aを位置ずれ防止部80として兼用することが可能となる。したがって、別途、位置ずれ防止部を設けなくて済むため、車体構造および製造工程のいずれにおいても簡素化を図ることが可能となる。一例として、カウンターウェイト82の上端部82aにおいて、車体カバー40の係止溝52の外面52a側に対向する部位が、車体カバー40が後方にずれた際にその外面52aと当接可能となるように構成されている。さらに、当該部位が、車体カバー40の設定軌跡位置に対して所定寸法離間した位置に配置されると共に、車体カバー40(外面52a)と当接した際に滑らかな摺動が行われるように外方に凸の曲面状に形成されている。
【0034】
なお、係止部50の変形例として、上記の構成とは逆に、車体カバー40の上部に下向きに突起する係止突起を備え、対応する車体10の所定位置(車体開口部42の上縁部)に上向きに開口する断面U字状、断面V字状もしくは断面円弧状の係止溝を備え、係止突起を係止溝に係止させて回動させる構成としてもよい(不図示)。
【0035】
以上説明した通り、本発明に係る車体カバーの開閉機構によれば、車体に対して車体カバーを分離可能に着脱することができる構成を実現し、内部の機器に対するメンテナンス作業の作業性の向上を図ることができる。また、車体カバーを車体にロックするロック部へのアクセスを容易に行えないようにして防犯性の向上を図ることができる。
【0036】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。特に、作業用車両としてエクスカベータを例に挙げて説明を行ったが、これに限定されるものではなく、例えば、ローダ、キャリア等の他の作業用車両に対しても同様に適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0037】
1 作業用車両
2 車体カバーの開閉機構
10 車体
20 機器室
40 車体カバー
42 車体開口部
50 係止部
52 係止溝
54 係止突起
60 ロック部
62 開口部
64 ストライカー
66 フック
68 ロック解除部(ロック解除レバー)
70 内部カバー
72 固縛ポイント
80 位置ずれ防止部
82 カウンターウェイト