IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テーイー オートモーティブ テクノロジー センター ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許-回転弁 図1
  • 特許-回転弁 図2
  • 特許-回転弁 図3
  • 特許-回転弁 図4
  • 特許-回転弁 図5
  • 特許-回転弁 図6
  • 特許-回転弁 図7
  • 特許-回転弁 図8
  • 特許-回転弁 図9
  • 特許-回転弁 図10
  • 特許-回転弁 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】回転弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/083 20060101AFI20240126BHJP
   F16K 27/06 20060101ALI20240126BHJP
   F01P 7/16 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
F16K11/083 Z
F16K27/06 A
F01P7/16 503
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021195880
(22)【出願日】2021-12-02
(65)【公開番号】P2022101486
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】20211671.1
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518148098
【氏名又は名称】テーイー オートモーティブ テクノロジー センター ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ウィンター
(72)【発明者】
【氏名】トシュテン シェーファー
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン デイベル
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ビー.オルブリッヒ
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-127628(JP,U)
【文献】特開2013-092176(JP,A)
【文献】特開2017-223299(JP,A)
【文献】特開平11-344142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00-11/24
F16K 5/00- 5/22
F16K 27/00-27/12
F01P 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室(3)を有する弁箱(2)を備える回転弁(1)であって、
前記弁室(3)は、少なくとも2つの流体開孔(5)が設けられた箱壁(4)を有し、
前記弁室(3)は、端面側に、収容開口(6)を有し、
前記弁室(3)は、弁体(7)を収容し、
前記弁体(7)には、前記流体開孔(5)と互いに作用するチャネル構造体(8)が設けられており、
前記弁体(7)は、回転可能な態様で、前記弁室(3)に支持されており、
前記弁室(3)は、円錐形に形成されており、
前記弁体(7)は、切替シャフト(10)を収容することを特徴とする
回転弁。
【請求項2】
請求項1に記載の回転弁であって、
前記弁体(7)は、外周側が円錐形に形成されている
ことを特徴とする回転弁。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転弁であって、
前記弁室(3)は、前記箱壁(4)と箱底(9)とにより定められ、
前記箱壁(4)は、前記弁体(7)を取り囲んでおり、
前記箱壁(4)の直径は、前記箱底(9)から前記収容開口(6)へ向かって広くなっている
ことを特徴とする回転弁。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の回転弁であって、
前記弁体(7)は、並進するように、前記弁室(3)にて支持されている
ことを特徴とする回転弁。
【請求項5】
請求項3に記載の回転弁であって、
前記箱底(9)に、又は、前記弁体(7)の、前記箱底(9)に対向する部分に、又は、その両方に、調整装置が形成される
ことを特徴とする回転弁。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の回転弁であって、
前記切替シャフト(10)は、回転運動可能であるか、又は、並進運動可能であるか、又は、その両方である
ことを特徴とする回転弁。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の回転弁であって、
前記切替シャフト(10)には、第1滞留構造(11)が設けられており、
前記弁体(7)には、第2滞留構造(12)が設けられており、
前記第1滞留構造(11)と前記第2滞留構造(12)とは、動作可能に接続されている
ことを特徴とする回転弁。
【請求項8】
請求項7に記載の回転弁であって、
前記第1滞留構造(11)及び前記第2滞留構造(12)により、前記弁体(7)は、前記弁箱(2)に対して、回転運動と並進運動が重ね合わされた運動を行う
ことを特徴とする回転弁。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の回転弁であって、
前記第1滞留構造(11)は、星形であり、且つ、前記切替シャフト(10)から径方向に突出する斜面要素(13)を有する
ことを特徴とする回転弁。
【請求項10】
請求項3又は5に記載の回転弁であって、
ばね(17)が設けられており、
前記ばね(17)は、前記弁体(7)を前記箱底(9)に自動的に押し付ける
ことを特徴とする回転弁。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の回転弁であって、
前記弁箱(2)は、外側を、流体コレクターによって取り囲まれている
ことを特徴とする回転弁。
【請求項12】
請求項11のいずれか1項に記載の回転弁であって、
前記弁箱(2)と、前記弁体(7)と、前記流体コレクターとのうち少なくとも1つは、プラスチック製である
ことを特徴とする回転弁。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の回転弁であって、
前記流体開孔(5)は、接続片として形成されている
ことを特徴とする回転弁。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の回転弁を少なくとも1つ備える温度制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁室を有する弁箱を備えた回転弁に関する。この回転弁においては、弁室は、中に少なくとも2つの流体開孔が設けられた周壁と、端面側にある収容開口とを有する。弁室は、弁体を収容しており、弁体には、流体開孔と互いに作用するチャネル構造体が設けられており、弁体は、回転可能な態様で弁室に支持されている。
【背景技術】
【0002】
このような回転弁は、例えば特許文献1により知られている。言及されている種類の回転弁は、冷却剤の流れを制御するために冷却回路内でよく使用される。冷却液が、弁箱内に設けられた流体開孔を通って流入したり流出したりすることができる。弁体内に設けられたチャネル構造体は、冷却剤の流れを制御する。流体開孔の設計及び数によって異なる冷却回路を活性化したり、体積流量を調節したり、流れ方向を調整したりすることができる。
【0003】
回転弁としての設計することは優位性があるが、それは、弁体が回転することにより冷却剤の流れが調整されており、弁体回転用の対応するアクチュエータは、簡易な設計となっており且つ容易に制御することができるからである。そのため、回転弁及び関連するアクチュエータを、安価に製造することができる。更に、回転弁は、必要な設置するスペースが非常に小さくて済む。
【0004】
また、回転弁の要素がプラスチックから形成されていることも知られている。ところが、弁体と弁箱との間を密封接触した場合、必要な接触圧が原因となって、摩擦力が高くなり、これにより損耗が増大するという問題が生じ得る。また一方で、弁体が、遊びがある状態で弁箱内に配置されると、回転に必要な力及び損耗は減少するが、不要の漏出が弁箱と弁体との間の隙間を介して発生する可能性がある。
【0005】
このような回転弁は、電気を利用した移動手段の分野における温度制御回路内での使用に関して特に有利である。電気自動車の航続距離を長くするには、例えば電気部品の温度を制御することが必要である。その温度制御が必要な電気自動車の部品としては、特にバッテリが挙げられるが、パワーエレクトロニクス機器、急速充電装置のプラグ接続部も挙げられる。バッテリは非常に狭い温度範囲においてのみ、可能な最高容量を有する。従って、電気自動車のバッテリは、周囲温度が低いときには加熱し、外気温が高いとき又は負荷需要が高いときには冷却する必要がある。
【0006】
このため、温度制御媒体が流れる温度制御回路を提供することが知られている。温度制御媒体は、要件に応じて、加熱装置で加熱したり、又は、冷却装置で冷却したり、いずれかをすることができる。温度制御媒体の流れは、回転弁により制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開 DE 10 2018 009 680 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、漏出が少なく且つ損耗が少なく、調整が容易なことを特徴とする回転弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1の特徴により解決される。従属請求項は、有利な実施形態を示している。
【0010】
本発明による回転弁は、弁室を有する弁箱を備える。弁室は、中に少なくとも2つの流体開孔が設けられた周壁と、端面側にある収容開口とを有する。弁室は、弁体を収容しており、弁体には、流体開孔と互いに作用するチャネル構造体が設けられており、弁体は、回転可能な態様で弁室に支持されている。
【0011】
弁体は、好ましくは、弁室と合致するように形成され、さらに外側が円錐形になるように形成されている。これにより、弁体と弁箱との間の隙間ができても非常に小さくなるような態様で弁体を弁箱内に装着することが可能であり、これは漏出のリスクを低減する。
【0012】
弁室は、好ましくは、箱壁と箱底とにより定められ、箱壁は弁体を取り囲んでおり、箱壁の直径は、箱底から収容開口へ向かって広くなっている。ここで、弁体が弁室内に特に簡易に装着可能であることで優位性がある。この実施形態では、弁体が弁室内へ完全に差し込まれて初めて、弁体の外周が箱壁に接触する。これにより、回転弁の組立てが簡素化される。この理由は、弁体が弁箱内へ完全に差し込まれて初めて弁体と弁箱とが互いに触れ合うからである。また、これにより、チャネル構造体等の弁体の構成部品が組立て中に損傷することを防止することもできる。
【0013】
弁体の、外周側の境界は、弁箱の箱壁に直接当接することができる。一方、弁体の、外周側の境界に、特にチャネル構造体の領域において、密封外郭を設けることも考えられる。
【0014】
好ましくは、弁体は、並進するように、弁室にて支持されている。この実施形態において、動作中、弁体は、回転運動のみ、又は、並進運動のみ、又は、並進運動と回転運動が重ね合わされた運動を行うことができる。並進運動と回転運動が重ね合わされた運動では、弁体は並進運動するものであり、このとき、弁室及び弁体が円錐形の設計であることに起因して、弁体は箱壁から離間している。これにより隙間が生じ、弁体は、弁箱に対してごく僅かな摩擦で回転することができる。
【0015】
好ましくは、弁体の調整は、次のように実行される。まず、並進運動が行なわれ、このとき弁箱の箱壁から弁体が離間する。次に、弁体の回転運動が行われ、チャネル構造体が所望の態様で流体開孔に位置合わせされる。同時に並進運動をもう一回行うことができ、最終的に、並進運動がもう一回行われる。このとき、弁体の外周が弁箱の箱壁にほぼ隙間無しに当接するように、弁体が弁箱内へ再挿入される。一方で、これにより、弁体は、漏出が少なく且つ損耗が少ないように調整することが可能になる。更に、流体は、弁箱の開口及び弁体のチャネル構造体を介して、漏出を回避しつつ搬送することができる。
【0016】
弁体は切替シャフトを収容することができる。切替シャフトは、回転対称である弁体の中心軸を通って延在することが好ましい。弁体を調整するために、切替シャフトは、並進運動と回転運動が重ね合わされた運動を行うことができるアクチュエータに、動作可能に接続することができる。
【0017】
それ故に、切替シャフトは、回転運動可能であり、且つ、並進運動可能である。この場合、切替シャフトは弁箱内で支持されることができ、好ましくは、弁体が弁箱内へ完全に差し込まれると支持されるようになる。これに対して、並進運動に起因して弁体が弁箱から離間している場合、必ずしも支持される必要はない。第1代替実施形態によれば、切替シャフトは回転運動可能であり、第2代替実施形態によれば、切替シャフトは並進運動可能である。
【0018】
第1代替実施形態の場合、弁体は、切替動作中に切替シャフトにより回転され、並進運動は、弁体及び弁箱に関連する装置により自動的に行われる。これは、例えば、調整装置によって達成することができ、この調整装置は、弁体及び箱底内に、周方向に山・谷を有する構造の形態に成形されている。
【0019】
第2代替実施形態の場合、弁体は切替シャフトにより並進運動を行い、回転運動は、弁体及び弁箱に関連する装置により自動的に行われる。このことは、例えば、弁体と弁箱との間に配置された、係止張力調整機構の形態の調整装置によって達成することができる。
【0020】
切替シャフトには第1滞留構造を設けてもよく、弁体には第2滞留構造を設けてもよい。このとき、第1滞留構造と第2滞留構造とは動作可能に接続されている。これらの滞留構造により、弁体が切替シャフトに対して離れた位置になるため、チャネル構造体を流体開孔に正確に関連付けることが更に確実になる。この場合、弁箱に対して弁体を位置決めするのは、回転弁の外側に配置されるアクチュエータとは無関係に実行可能である。このことは、弁体を運動させるアクチュエータを、特に簡易かつ安価に設計できることを意味する。弁体の位置は、回転弁の内側に配置される滞留構造により予め決められる。そのため、回転弁の調整又は較正又はその両方を目的として、回転弁の外側に配置されるアクチュエータを、回転弁又は切替位置又はその両方に位置合わせする必要はない。
【0021】
第1滞留構造及び第2滞留構造により、回転運動と並進運動が重ね合わされた運動が可能となる。このため、2つの滞留構造は、弁体が切替シャフトを介して並進運動を行う場合に弁体が自動的に回転運動を行うように設計可能である。これにより、切替シャフトを運動させるアクチュエータの設計を特に簡易にすることが可能となる。滞留構造により予め決められた回転運動が行われる。
【0022】
第1滞留構造は、星形にすることができ、且つ、切替シャフトから径方向に突出する斜面要素を有することができる。第2滞留構造は、好ましくは、単一片の材料として弁体に一体に成形されて、第1滞留構造と合致するように形成されている。弁体が切替シャフトを介して並進運動させられると直ちに、斜面要素により弁体がこれらの斜面要素に沿って運動する。弁体は、弁箱から並進運動を行うたびに規定の回転運動を行う。このとき、角度寸法は斜面要素の長さに由来する。
【0023】
好ましくは、弁体を箱底に自動的に押し付けるばねが設けられている。これにより、弁体が、弁箱に関して正しく位置決めされ、特に、切替動作後に弁体が弁箱内へ押し込まれることが確実になる。
【0024】
弁箱は、コレクターによって取り囲むことができる。この場合、コレクターは同時に弁箱の外壁をなすことができる。コレクターと、弁箱から形成される箱壁との間に、隙間があってもよい。これにより、回転弁が、特に軽量になるとともに、機械的にも安定する。
【0025】
弁箱及び弁体の少なくとも一方は、射出成形部材として形成することができる。その結果、弁箱と弁体の両方を、安価に製造することができる。コレクターは、ブロー成形部材として形成することができる。これにより、コレクターは、複雑な外部幾何学形状を有することができ、同時に安価に製造するも可能となる。
【0026】
弁箱と、弁体と、コレクターとのうち少なくとも1つは、プラスチック製であることが好ましい。好ましくは、射出成形可能な熱可塑性材料が使用される。これにより、回転弁は安価に製造することができる。弁箱及び弁体にとって好適な材料が、ポリオキシメチレン(POM)又はポリフェニレンスルファイド(PPS)又はポリアミド(PA)のプラスチックから選択される。プラスチックには、添加剤、例えばガラス繊維ベースの繊維強化材を提供することができる。切替シャフトは、繊維強化プラスチック材料から形成されていることが好ましい。これの代わりに、切替シャフトは、金属材料から形成することもできる。コレクターは、好ましくはポリプロピレン(PP)から形成されている。チャネル構造体の領域において、弁体に、外周側に密封外郭が設けられている場合は、密封外郭が熱可塑性エラストマーから形成され且つ弁体が二成分射出成形により製作されていることが特に考えられる。
【0027】
流体開孔は、接続片として設計されていることが好ましい。接続片は、パイプやホースの形態の流体路を収容することに適している。その際、これらの接続片は、容易に且つ安価に、回転弁に接続することができる。
【0028】
本発明による温度制御回路は、上に記載した種類の回転弁を少なくとも1つ備える。このような配置において、温度制御回路は、電気自動車の1つ又は複数の部品の温度を制御することができ、例えば、バッテリ、パワーエレクトロニクス機器、或いは、配管部品又はコネクタ部品の温度を制御することができる。このような部品は、限定的な温度範囲内でのみ、最適な性能を呈するため、周囲条件及び性能要件に応じて適切に加熱又は冷却されなければならない。
【0029】
それ故に、温度制御装置は、運搬装置の他に加熱装置及び冷却装置を含むことができる。温度制御する必要のある部品、加熱装置、冷却装置は、回転弁を介して制御される。
【0030】
以下、図面を参照して、本発明による回転弁の幾つかの実施形態を、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1実施形態による回転弁を断面図である。
図2】滞留構造も視野に入れた、第2実施形態における回転弁の断面図である。
図3図2における回転弁を、収容開口を視野に入れつつ示した断面図である。
図4図2における回転弁の弁体を詳細に示す。
図5図2における回転弁の弁箱を断面図で詳細に示す。
図6】カバーも視野に入れた、第3実施形態における回転弁の断面図である。
図7】滞留構造も視野に入れた、図6による回転弁の断面図である。
図8図6による回転弁の切替シャフトを詳細に示す。
図9図6における回転弁の、箱底の領域における弁箱を断面図である。
図10図6における回転弁の弁箱を詳細に示す。
図11図6における回転弁のコレクターを詳細に示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
これらの図は、空調を行う対象の装置の冷却回路の一部としての回転弁1を示す。回転弁1は、電気を利用した移動手段の用途において使用されることが好ましい。これに関連して、回転弁1は、電気自動車の電気モータドライブの温度制御回路に一体化することができる。例えば、バッテリ、電気モータ、パワーエレクトロニクス機器等の温度を制御することができる。回転弁1は、温度制御回路の冷却剤の流れを変更するために使用可能である。これに関連して、冷却剤の体積流量を変更する、つまり増加させたり減少させたりすることが考えられる。更に、弁体の弁位置を変化させることにより、冷却剤の流れ方向を変化させることができる。最終的には、温度制御が必要な装置の様々な部品に、冷却剤を選択的に供給したり、冷却剤の供給を停止したりすることができる。例えば、周囲温度及び電力要件に応じて、冷却剤の流れを最初はバッテリのみに向け、そこで周囲温度に応じてバッテリを冷却又は加熱することができる。電力要件が高ければ、冷却剤の流れをパワーエレクトロニクス機器に向け、更に電気モータにも向けて、これらの部品を冷却することができる。冷却剤の流れの変更は回転弁1によって行われる。この場合、数個の電磁弁の代わりに回転弁1を使用することができるため、温度制御回路を安価に製作することができる。
【0033】
図1図2、及び図6による実施形態に示す回転弁1は、弁室3を有する弁箱2を備える。弁室3は、箱壁4を有する。箱壁4には、6つの流体開孔5が設けられている。弁室3は、回転対称に形成されており、略円錐形の箱壁4を有する。収容開口6が、弁室3の前方に設けられており、この収容開口を介して弁体7が弁室3内に挿入される。弁体7には、チャネル構造体8が設けられており、このチャネル構造体8は、流体開孔5と互いに作用する。弁体7は、回転可能な態様で、弁室3に支持されている。流体開孔5に位置合わせされるチャネル構造体8と、弁室3の位置とに応じて、流体開孔5を介して流入・流出する流体の搬送方向が異なる。
【0034】
弁箱2は、外側を、コレクター14によって囲まれている。弁箱2、弁体7、及び、コレクター14は、熱可塑性材料製である。弁箱2及び弁体7は、射出成形部材として形成される。コレクター14は、ブロー成形部材として形成される。
【0035】
流体開孔5は、接続片として設計されている。これに関連して、流体開孔5の管状部分が、コレクター14内へ延在している。コレクター14は、これに対応し且つ接続片として形成されている部分を有する。これらは、管路又はホースを収容するように設計されている。
【0036】
図1は、第1実施形態による回転弁1の断面図を示す。図1から、弁室3は円錐形に形成されていることが分かる。弁体7は、外周側が弁室3と一致しており、よって同様に円錐形となっている。弁室3は、箱壁4及び箱底9によって定められる。箱壁4は、弁体7を取り囲んでおり、箱壁4の直径は、箱底9から収容開口6へ向かって広くなっている。弁体7を調整し、且つ、チャネル構造体8を流体開孔5に対して回転するために、弁体は、弁箱2に対して並進運動と回転運動の両方を行うことができる。この場合、弁体7にアクチュエータを係合させることができ、このアクチュエータは、回転運動と並進運動が重ね合わされた運動を行う。並進運動によって弁箱2と弁体7との間に隙間が生じ、これにより、弁体7は弁箱2に対して低摩擦で回転可能となる。
【0037】
図2は、第2実施形態による回転弁1の断面図を示す。図2による設計においても、弁室3は円錐形に形成されている。弁体7は、外周側が弁室3と一致しており、よって同様に円錐形となっている。弁室3は、箱壁4及び箱底9によって定められる。箱壁4は、弁体7を取り囲んでおり、箱壁4の直径は、箱底9から収容開口6へ向かって広くなっている。
【0038】
弁体7は、回転するように且つ並進するように、弁室3にて支持されている。弁体7を調整し且つチャネル構造体8を流体開孔5に対して回転させるために、弁体は、弁箱2に対して並進運動及び回転運動の両方が可能である。
【0039】
しかしながら、本実施形態においては、アクチュエータは1つのみ必要であり、このアクチュエータは、回転運動のみを行う。弁体7が回転する際に並進運動を同時にすることを確実にするために、周方向に山・谷を有する構造の形態の各斜面要素13を、箱底9の領域において、弁箱2内に設ける。これらの斜面要素は調整装置をなす。弁体7には、これと合致する斜面要素が、箱底に対向する側に設けられる。回転中、弁体7の斜面要素13は弁箱2の斜面要素13に接した状態で摺動し、弁体7は回転運動を行うと同時に並進運動も行う。弁体は、次の位置に到達するとすぐに再び下降して、箱壁4に再び当接する。並進運動によって弁箱2と弁体7との間に隙間が生じ、これにより、弁箱2に対して弁体7が回転しやすくなる。
【0040】
弁箱2の収容開口6はカバー16により閉じられており、切替シャフト10はこのカバー16を通して突出している。切替シャフト10は、相対回転不能に回転要素15に接続されており、このとき、回転要素15は、弁体7に形成された凹部21に係合している。回転要素15は、外周側に複数の歯状突起を有し、これらの歯状突起は、凹部21の内周に形成された、これに合致する歯状突起に係合する。これにより、切替シャフト10から弁体7にトルクを伝達することができる。これにより、回転要素15は、凹部21内で並進運動可能であるように配置される。この設計によって、斜面要素13により生じる弁体7の並進運動は、切替シャフト10内へは伝達されない。
【0041】
カバー16と弁体7との間にばね17が配置されており、このばねは、弁体7を箱底9に押し付ける。
【0042】
図3は、図2における回転弁1を、斜め上から見た断面図である。図4は、図2における回転弁1の弁体7を詳細に示す。図5は、図2における回転弁の弁箱2を断面図で詳細に示す。
【0043】
図6は、第3実施形態による回転弁1の断面図を示す。図6による設計においても、弁室3は円錐形に形成されている。弁体7は、外周側が弁室3と一致しており、よって同様に円錐形となっている。弁室3は、箱壁4及び箱底9によって定められる。箱壁4は、弁体7を取り囲んでおり、箱壁4の直径は、箱底9から収容開口6へ向かって広くなっている。
【0044】
弁体7は、回転するように且つ並進するように、弁室3にて支持されている。弁体7を調整し且つチャネル構造体8を流体開孔5に対して回転させるために、弁体は、弁箱2に対して並進運動及び回転運動の両方が可能である。
【0045】
しかしながら、本実施形態においては、アクチュエータは1つのみ必要であり、このアクチュエータは、並進運動のみを行う。
【0046】
弁体7の中心軸において、軸方向に延在する孔が設けられており、この孔は切替シャフト10を収容する。箱底9の領域において、切替シャフト10に第1滞留構造11が設けられている。このため、第1滞留構造11は、星形であり、且つ、切替シャフト10から径方向に突出する各斜面要素13を有する。これらの斜面要素は、弁体7の、箱底9に対向する側において、弁体7に当接する。弁体7上では、対応する領域に、第2滞留構造12が形成されている。この第2滞留構造も、斜面要素13を有する。
【0047】
弁体7は、切替シャフト10に対して並進運動及び回転運動が可能である。切替シャフト10は、弁箱2に対して並進運動のみ可能である。切替シャフト10の中心合わせをするために、十字形の中心合わせピン19が箱底9から形成されている。この十字形の構成は、同時に、切替シャフト10の回転を防止する。斜面要素13を有する第3滞留構造20が、箱底から形成されている。
【0048】
弁箱2の収容開口6はカバー16により閉じられており、切替シャフト10はこのカバー16を通して突出している。カバー16と弁体7との間にばね17が配置されており、このばねが、弁体7を箱底9に押し付ける。カバー16と弁箱2との間には、Oリングの形態のシール18が配置されている。カバー16と切替シャフト10との間には更なる密封要素が配置されており、この更なる密封要素は、カバー16を通る切替シャフト10の通路を密封する。
【0049】
本実施形態においては、カバー16は、摩擦接続/形状接続により、弁箱2上に保持される。代わりの実施形態においては、カバー16を材料接続により弁箱2に固定することもできる。材料接続は、例えば溶接又は接着により行うことができる。この実施形態では、弁箱2とカバー16との間を個別に密封する必要はない。
【0050】
切替シャフト10を並進運動させることにより、弁箱2に対して弁体7が回転する。そうする際に、切替シャフト10が弁体7を持ち上げ、第1滞留構造11と第2滞留構造12とが互いに当接する。第1滞留構造11と第3滞留構造20との互いに向き合う縁同士が同じ高さになる地点まで弁体7が持ち上げられると、弁体7は、回転運動と並進運動が重ね合わされた運動により、ばね17により付勢された状態で、第2滞留構造12を介して、第1滞留構造11及び第3滞留構造20の傾斜に沿って摺動する。これにより、各流体開孔5に関連するチャネル構造体8が変化する。この場合、回転運動の程度は、斜面要素13の傾斜の設計に依存する。この場合、弁体7が回転する角度は、滞留構造11、12、20の設計により予め決まっている。これらの滞留構造は、それぞれの位置が、各流体開孔5に対するチャネル構造体8の所望の位置に対応するように、チャネル構造体8に合わせられている。
【0051】
図7は、図6における回転弁を、斜め下から見た断面図である。図8は、図6における回転弁1の切替シャフト10を詳細に示す。図8は、図6における回転弁1の、箱底9の領域における弁箱2を断面図で示す。図10は、図6における回転弁1の弁箱2を詳細に示す。図11は、図6における回転弁1のコレクター14を詳細に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11