(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】構造を識別する方法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/34 20060101AFI20240126BHJP
G01N 21/41 20060101ALI20240126BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20240126BHJP
G01N 23/04 20180101ALI20240126BHJP
G01N 23/2251 20180101ALI20240126BHJP
G01Q 30/20 20100101ALI20240126BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20240126BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
G02B21/34
G01N21/41 101
G01N21/27 A
G01N23/04
G01N23/2251
G01Q30/20
G01N1/28 F
G02B21/36
(21)【出願番号】P 2021530111
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(86)【国際出願番号】 IB2019060307
(87)【国際公開番号】W WO2020110070
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-09-29
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】521227252
【氏名又は名称】ラ トローブ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アビー,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】バラウル,エウゲーニウ
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-528405(JP,A)
【文献】特表2018-532132(JP,A)
【文献】特開2009-222401(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02653903(EP,A1)
【文献】特表2015-514225(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0334398(US,A1)
【文献】特表2019-505824(JP,A)
【文献】特表2020-521146(JP,A)
【文献】Tetsuo Kan ET AL,Sub-micron aperture plate for intracellular calcium transient measurement,TRANSDUCERS'05: The 13th International Conference on Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems, Seoul, Korea, June 5-9, 2005,2005年06月06日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 - 21/36
G01N 21/00 - 21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間的に分布した異なる構造特性を含む試料の分析の方法であって、
上側表面及び下側表面を有する試料保持器を提供することであって、前記上側表面は、それに関連するプラズモニック層を有し、前記プラズモニック層は、サブミクロン構造の周期的アレイを含
むことと、
前記試料を前記試料保持器の前記上側表面に貼り付けることと、
光が前記試料及び試料保持器と相互作用するように、前記光で前記試料を照明することと、
前記試料及び試料保持器との相互作用後の前記光を使用して画像を形成することであって、前記試料の少なくとも1つの局所化構造特性は、前記受け取られた光の色に基づいて前記画像内で可視であ
ることと、
形成された前記画像に基づいて後続の分析処理を制御す
ることと
を含む方法。
【請求項2】
形成された前記画像に基づいて後続の分析処理を制御す
ることは、
後続の分析において使用される1つ又は複数のデータ点及び/又は座標系を定義すること、
前記試料の少なくとも一部の色に少なくとも部分的に基づいて、さらなる分析のために試料の領域を選択すること、及び
前記後続の分析の順序又はスケジュールを判断すること
の1つ又は複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択された関心領域に対応する後続分析試料に対して後続の分析を行うことをさらに含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料は組織試料であり、前記試料の前記関心領域を選択することは、選択された関心領域に対応す
る後続分析試料を生成するために、前記選択された関心領域を含む前記
組織試料の一部分を切断することを含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項5】
前記試料は組織試料であり、前記選択された関心領域に対応する前記後続分析試料は、
前記組織試料から取得される、前記選択された関心領域に空間的に対応する異なる
組織試料であり得る、請求項
3に記載の方法。
【請求項6】
前記後続分析試料は、その隣接部分における又はその隣接部分の近くの
前記組織試料から導出される、前記選択された関心領域に平面視でほぼ空間的に対応する
組織試料である、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記試料は、前記後続分析試料として使用される、請求項
4に記載の方法。
【請求項8】
前記後続の分析処理は、後続の画像処理である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記後続の分析処理は、後続の顕微鏡検査処理である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記後続の顕微鏡検査処理は、
光学顕微鏡検査処理、
電子顕微鏡検査処理、
走査プローブ顕微鏡検査処理、
X線顕微鏡検査処理、
TEM処理
の少なくとも1つを含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記後続の分析における使用のために前記試料から1つ又は複数のデータ点及び/又は座標系を転送することを含む、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1つ又は複数のデータ点を物理的に標識付けすることを含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記画像を形成する方法は、データ点及び/又は座標系を有する基準座標系を作成することを含み、前記方法は、
前記基準座標系
のデータ点及び/又は座標系と、前記後続の分析を行う際に使用され
る基準座標系
のデータ点又は座標系
とを整合させることを含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項14】
前記局所化構造特性は、ある位置における前記試料の誘電定数である、請求項1~
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法を使用して画像を形成するためのシステム
であって、
画像形成システムを有する顕微鏡と、照明システムと、上側表面及び下側表面を有する試料保持器であって、前記上側表面は、それに関連するプラズモニック層を有し、前記プラズモニック層は、サブミクロン構造の周期的アレイを含む、試料保持器とを含む
、システム。
【請求項16】
前記試料のデジタル画像を生成するための画像捕捉システムを含む、請求項
15に記載のシステム。
【請求項17】
後続の分析のためのシステムを含む、請求項
15又は16に記載のシステム。
【請求項18】
前記後続の分析のためのシステムは、以下のシステム:
光学顕微鏡、
電子顕微鏡、
走査プローブ顕微鏡、
X線顕微鏡、
TEM顕微鏡
の任意の1つ又は複数を含む、請求項
17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本開示は、顕微鏡検査、組織学及び病理学の分野に関する。1つの形式では、本開示は、光学顕微鏡及び増強型試料保持器を使用して組織学を行うシステム及び方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
開示の背景
La Trobe Universityの名義におけるPCT/オーストラリア特許出願公開第2018/050496号(その内容全体が参照により本明細書に援用される)は、サブミクロン構造の周期的アレイを含むプラズモニック層を有する試料保持器の使用を通して増強型画像コントラストを提供する光学顕微鏡検査のシステム及び方法を開示している。この開示では、ナノスライドへの参照は、その両方の内容がすべての目的のために参照により本明細書に援用されるPCT/オーストラリア特許出願公開第2018/050496号又は2018年11月29日出願の本出願人の同時係争中の「Microscopy method and system」という名称のオーストラリア特許出願公開第2018904553号及び本出願と同じ日に出願されたオーストラリア特許出願公開第2018904553号に対する優先権を主張する国際特許出願の教示による試料保持器への参照である。このような試料保持器を使用する顕微鏡検査は、本明細書において組織学的プラズモニックス又は色コントラスト顕微鏡検査(CCMと略称される)と呼ばれる。試料は、プラズモニック層に隣接して試料保持器上に置かれる。使用中、試料及び試料保持器が光、通常、広帯域の白色光で照明され、試料の画像が生成される。本発明者らは、試料及びプラズモニック層と光との相互作用を介して色コントラストが生成対象画像内に呈示され得ることを観測した。特に、異なる誘電定数を有する試料の領域は、異なる色で画像内に出現する。強度コントラストも実現される。これとは対照的に、染色試料を使用する従来の光学顕微鏡検査から取得される画像は、通常、使用される染色に対応する単一色の強度コントラストを呈示するのみである。
【0003】
このタイプのナノスライドを使用する1つの利点は、色コントラストが、染色することなく及び/又は比較的薄い試料により表示され得ることである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
開示の概要
本発明者らは、ナノスライドの使用が、これらの独特の利点の1つ又は両方を活用する顕微鏡検査技術に対する有用な改善を可能にすることを理解した。
【0005】
第1の態様では、後続の分析処理において使用される試料の関心領域を選択する方法が提供される。本方法は、
上側表面及び下側表面を有する試料保持器を提供することであって、上側表面は、それに関連するプラズモニック層を有し、プラズモニック層は、サブミクロン構造の周期的アレイを含む、提供することと、
関心領域が判断される試料を試料保持器の上側表面に貼り付けることと、
光が試料及び試料保持器と相互作用するように、前記光で試料を照明することと、
前記試料及び試料保持器との相互作用後の前記光を使用して画像を形成することであって、試料の少なくとも1つの局所化構造特性は、受け取られた光の色に基づいて画像内で可視である、形成することと、
試料の少なくとも一部分の色に少なくとも部分的に基づいて、試料保持器に貼り付けられた前記試料の関心領域を選択することと
を含む。
【0006】
局所化構造特性は、好ましくは、ある位置における試料の誘電定数である。
【0007】
本方法は、選択された関心領域に対応する後続分析試料に対して後続の分析を行うことを含み得る。
【0008】
関心領域を選択することは、選択された関心領域に対応する後続分析試料を生成するために、関心領域を含む試料の一部分を切断することを含み得る。
【0009】
別の態様では、本発明は、試料を分析する方法を提供し、本方法は、
上側表面及び下側表面を有する試料保持器を提供することであって、上側表面は、それに関連するプラズモニック層を有し、プラズモニック層は、サブミクロン構造の周期的アレイを含む、提供することと、
試料を試料保持器の上側表面に貼り付けることと、
光が試料及び試料保持器と相互作用するように、前記光で試料を照明することと、
前記試料及び試料保持器との相互作用後の前記光を使用して画像を形成することであって、試料の少なくとも1つの局所化構造特性は、受け取られた光の色に基づいて画像内で可視である、形成することと、
後続の分析処理を制御するために、形成された画像を使用することと
を含む。
【0010】
後続の分析処理を制御するために、形成された画像を使用することは、
後続の分析において使用される1つ又は複数のデータ点及び/又は座標系を定義すること、
さらなる分析のために試料の領域を選択すること、及び
前記後続の分析の順序又はスケジュールを判断すること
の任意の1つ又は複数を含み得る。
【0011】
上記態様のいずれかのいくつかの実施形態では、本方法は、試料保持器に張り付けられた前記試料の関心領域を選択し、且つ選択された関心領域に対応する後続分析試料に対して後続の分析を行うことを含み得る。試料の関心領域を選択することは、選択された関心領域に対応する後続分析試料を生成するために、選択された関心領域を含む試料の一部分を切断することを含み得る。
【0012】
第1又は第2の態様のいくつかの実施形態では、選択された関心領域に対応する後続分析試料は、同じ組織試料から取得される、選択された関心領域に空間的に対応する異なる試料であり得る。例えば、後続分析試料は、その隣接部分における又はその隣接部分の近くの同じ組織試料から導出される、選択された関心領域に平面視でほぼ空間的に対応する試料であり得る。
【0013】
同じ試料が後続分析試料として使用され得る。
【0014】
上記態様のいくつかの実施形態では、後続の分析処理は、後続の画像処理である。好ましい実施形態では、後続の分析処理は、後続の顕微鏡検査処理である。
【0015】
いくつかの実施形態では、後続の顕微鏡検査処理は、光学顕微鏡検査処理である。
【0016】
いくつかの実施形態では、後続の顕微鏡検査処理は、電子顕微鏡検査処理である。
【0017】
いくつかの実施形態では、後続の顕微鏡検査処理は、走査プローブ顕微鏡検査処理である。
【0018】
いくつかの実施形態では、後続の顕微鏡検査処理は、X線顕微鏡検査処理である。
【0019】
後続の分析処理は、TEM処理であり得る。
【0020】
第1又は第2の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、本方法は、前記後続の分析の順序又はスケジュールを判断することを含む。本方法は、後続の分析を関心領域に対して優先的に行うことを含み得る。これは、後続の分析を関心領域のみに対して行うことを含み得る。代替的に、本方法は、関心領域でない他の領域の前に関心領域に対して後続の分析を行うことを含む。
【0021】
第1又は第2の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、本方法は、後続の分析における使用のために試料から1つ又は複数のデータ点及び/又は座標系を転送することを含み得る。これは、1つ又は複数のデータ点を物理的に標識付けすることを含み得る。代替的に、本方法は、画像が前記光を使用して形成されたときに使用された基準座標系と、後続の分析を行う際に使用された基準座標系との間で既存のデータ点又は座標系を整合させることを含み得る。例えば、試料の配向は、試料保持器に関係する1つ又は複数のデータ点又は座標系に関して判断され得る。
【0022】
別の態様では、試料を分析する方法が提供され、前記方法は、関心領域を含む試料を提供することを含み、関心領域は、関心領域に基づく後続の分析前に本開示の第1の態様の実施形態に従って選択される。
【0023】
分析処理は、後続の画像処理であり得る。画像処理は、顕微鏡検査処理であり得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、後続の顕微鏡検査処理は、光学顕微鏡検査処理である。
【0025】
いくつかの実施形態では、後続の顕微鏡検査処理は、電子顕微鏡検査処理である。
【0026】
いくつかの実施形態では、後続の顕微鏡検査処理は、走査プローブ顕微鏡検査処理である。
【0027】
いくつかの実施形態では、後続の顕微鏡検査処理は、X線顕微鏡検査処理である。
【0028】
後続の顕微鏡検査処理は、TEM処理であり得る。
【0029】
別の態様では、上に記載の態様の任意の1つの態様の実施形態を使用して画像を形成するためのシステムが提供される。本システムは、画像形成システムと、照明システムと、上側表面及び下側表面を有する試料保持器であって、上側表面は、それに関連するプラズモニック層を有し、プラズモニック層は、サブミクロン構造の周期的アレイを含む、試料保持器とを有する顕微鏡を含み得る。本システムは、試料の画像を生成するための画像捕捉システムを含み得る。
【0030】
本システムは、後続の分析のためのシステムを含み得る。
【0031】
本開示の上記態様では、試料は、生体試料であり得る。
【0032】
本明細書において開示される態様の実施形態における関心構造又は領域の識別は、以下の任意の1つの実施形態に従って行われ得る。
各出願の内容をすべての目的のために参照により本明細書に援用する、
2018年11月29日出願の本出願人の同時係争中の「Method of identifying a structure」という名称のオーストラリア特許出願公開第2018904550号及び本出願と同じ日に出願されたオーストラリア特許出願公開第2018904550号に対する優先権を主張する国際特許出願、
2018年11月29日出願の本出願人の同時係争中の「Automated method of identifying a structure」という名称のオーストラリア特許出願公開第2018904551号及び本出願と同じ日に出願されたオーストラリア特許出願公開第2018904551号に対する優先権を主張する国際特許出願。
【0033】
本明細書では、「画像を形成する」ことは、ユーザが試料(又はその一部)の画像を知覚し得るように人間認知可能画像を形成すること(例えば、光を集束することにより)又は格納、伝送、表示若しくは他の下流処理のために試料(若しくはその一部)のデジタル又は写真画像を生成することを含む。
【0034】
上側表面及び下側表面という用語は、試料調製又は使用中のいずれかの試料保持器の特定の配向を指すように意図されていないことに留意すべきである。
【0035】
図面の簡単な説明
本発明の例示的実施形態は、添付図面を参照して非限定的例として説明されことになる。本国際出願と共に出願された添付図面は、本発明の実施形態において使用されるカラー画像であって、その使用から生じるカラー画像を含む。色情報は、実施形態の本開示の一部を形成する。画像の白黒再生又は階調再生が発生すれば、色開示は、元々申請された文書から取得され得る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1a】本開示の実施形態において使用される例示的試料保持器の詳細を示す。本発明は、この図に示される特定微細構造アレイを有する試料保持器の使用に限定されると考えるべきではない。
【
図1b】本開示の実施形態において使用される例示的試料保持器の詳細を示す。本発明は、この図に示される特定微細構造アレイを有する試料保持器の使用に限定されると考えるべきではない。
【
図1c】本開示の実施形態において使用される例示的試料保持器の詳細を示す。本発明は、この図に示される特定微細構造アレイを有する試料保持器の使用に限定されると考えるべきではない。
【
図2a】本発明の実施形態における使用のために試料が置かれる
図1aからの例示的試料保持器を示す。
【
図2b】本発明の実施形態における使用のために試料が置かれる
図1aからの例示的試料保持器を示す。
【
図3】本発明の実施形態を行うために使用可能なシステムの概略図である。
【
図4】本発明の実施形態において行われる1つの方法内の工程を示すフローチャートである。
【
図5】従来の顕微鏡用スライド上の非染色試料を使用して形成された画像(一番上)、試料の構造を識別するために使用され得る第1の色コントラスト画像を示す第1の偏極の光を使用するナノスライド上の非染色試料(中間)、試料の構造を識別するために使用され得る第2の色コントラスト画像を示す第1の偏極に対して90°の第2の偏極の光を使用するナノスライド上の非染色試料(第3番目)、後続の分析処理で捕捉された対応する資料のSEM画像(一番下)を示す。
【
図6a】識別されたROIに基づいて後続分析試料を調製するためにいくつかの実施形態において使用可能な工程を示す。
【
図6b】識別されたROIに基づいて後続分析試料を調製するためにいくつかの実施形態において使用可能な工程を示す。
【
図6c】識別されたROIに基づいて後続分析試料を調製するためにいくつかの実施形態において使用可能な工程を示す。
【
図6d】識別されたROIに基づいて後続分析試料を調製するためにいくつかの実施形態において使用可能な工程を示す。
【
図6e】識別されたROIに基づいて後続分析試料を調製するためにいくつかの実施形態において使用可能な工程を示す。
【
図7】後続の分析のための1つ又は複数のROIの識別を可能にするためにいくつかの試料が置かれるナノスライド試料保持器の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
実施形態の詳細な説明
本発明者らは、ナノスライドの使用が、ナノスライドの独特の利点の1つ又は複数を活用する分析技術に対する有用な改善を可能にすることを理解した。
【0038】
特定の実施形態では、ナノスライドの使用は、色をコントラストする(通常、試料を染色する必要なく)際に構造的差異が提示されるため、試料内の構造を速やかに識別する能力を強化する。他の実施形態では、ナノスライドの使用は、試料の一部分内の色コントラストを選択的に呈示することにより試料内の構造を見る能力を強化し得、色コントラストを選択的に呈示する試料の部分は、試料保持器からの固有減衰距離内の部分(例えば、平面領域)である。対照的に、照明されると試料内の強度コントラストを強化するか又は引き起こすために染色液又は染料を使用する従来の光学顕微鏡検査は、試料の全幅を通したそのようなコントラストを示す。これは、試料のビュー(又はその撮影された画像)が実際には試料の全厚さを介した全光吸収の2次元投影であるという欠点を有する。これは、見る人にとって試料の詳細を曖昧にする影響があり得る。対照的に、ナノスライドによる組織学は、試料保持器に最も近い試料の一部分内の色コントラストのみを誘起し、したがって受け取られた光における強度コントラストを生成するために染色のみに依存する従来の顕微鏡検査より小さい構造を有用に示し得る。さらに、染色は、使用可能な試料を生成するために何分以上も必要とし得る。
【0039】
好ましい形式では、ナノスライドは、分析処理における初期段階として使用され得る。ナノスライドを使用する撮像段階は、試料の後続の分析前に有用なトリアージ処理を提供し得る。トリアージ処理は、後続の分析のための試料内の関心領域を識別するために使用され得る。例えば、所与の構造又は構造の特性(例えば、細胞、細胞の一部、組織など)の有無が後続の分析処理の関心領域を規定するために使用され得る。
【0040】
例えば、染色することなく、且つ多くの場合に専門の試料調製なしに従来の光学顕微鏡を使用して試料内のコントラストの有用な外観を提供するナノスライドの能力は、後続の分析を必要とする試料又は試料の一部の迅速な識別を可能にし得る。さらに、ナノスライドは、そうでなければ著しい視覚コントラストを提供しないことがあり得る試料内の視覚撮像を可能にする。
【0041】
いくつかの分析技術の試料調製要件に起因して、ナノスライドを使用して撮像された試料が後続の分析処理において使用されることは、非実用的であり得る。このような場合又は追加試料が分析のために必要とされる場合、対応する試料が後続の分析のために使用され得、例えば同じ組織の隣又はごく近くの部分が後続の分析において使用され得る。ナノスライド上で撮像された試料及び対応する後続分析試料は、平面視で(すなわちスライス面に垂直な方向に)見ると同じ又は同様に構造物を有するように同じ組織試料のスライスに重なり(好ましくは、しかし必ずしもでないが、隣接し)得る。
【0042】
図1aは、本開示の一例において使用される試料保持器の実施形態を示す。
図1aは、本発明における使用に好適な試料保持器全体に渡る断面を示す。試料保持器100は、プラズモニック層102が蒸着される基板を含む。
図1b及び1cは、作製され、且つ実施形態において使用され得るサブミクロンアレイを有する2つのタイプのプラズモニック層102を示す。1次元アレイの線を含む他のアレイが他の実施形態において使用され得る。プラズモニック層は、それぞれ150nm厚さの銀塩フィルムであるが、他の好適な材料が使用され得る。
図1aは、六角形パターンで配置された450nm周期を有する円形状ナノ開口の形式のサブミクロンアレイを有する。
図1cは、長方形パターン上の十字形ナノ開口を有する。十字形ナノ開口は、一方向(ここでは、0°方向として定義される)に450nm周期を、且つ直交方向(90°方向として定義される)に400nm周期を有する。これらのアレイは、470~550nm範囲(電磁スペクトルの可視領域内である)内のSPP共振モードを有する。プラズモニック層102の表面を保護するために、ガラス様材料である水素シルセスキオキサン(HSQ)の層104(10nm±1nm)がプラズモニック層102の製作後に蒸着される。HSQによりキャッピングした後、試料保持器100は、試料が支持され得る従来の顕微鏡用スライドのものと同様の上側表面を有する。他の実施形態では、金属酸化物キャッピング層(例えば、SiO
2)がHSQの代わりに使用され得る。
【0043】
撮像される試料は、La Trobe Universityの名義におけるPCT/オーストラリア特許出願公開第2018/050496号又は2018年11月29日出願の本出願人の同時係争中の「Microscopy method and system」という名称のオーストラリア特許出願公開第2018904553号並びに本出願と同じ日に出願されたオーストラリア特許出願公開第2018904553号に対する優先権を主張する国際特許出願の実施形態に従って調製され、試料保持器上に置かれる。本発明の好ましい実施形態において染色される必要がない試料106(通常、生体組織のスライス)は、
図2aに示すようにプラズモニック層に隣接する試料保持器上に置かれる。
【0044】
図3は、本開示による方法を行うように構成されたシステム300の概略図である。概観では、システム300は、試料保持器100を収容するように適合された顕微鏡310を含む。試料保持器100は、プラズモニック層を有するナノスライド(PCT/オーストラリア特許出願公開第2018/050496号の態様に従って作製された試料保持器)である。撮像される試料106は、試料保持器上に置かれる。いくつかの実施形態では、顕微鏡は、ユーザにより見るための接眼レンズを有する従来の光学顕微鏡であるが、表示、格納又は他の後の使用のためのデジタル画像を生成するために画像捕捉システムを代替的に又は追加的に含み得る。いくつかの形式では、顕微鏡310は、自動化スライドスキャナの一部分を形成し得る。示された例示的システム300は、試料の捕捉されたデジタル画像の表示のためのユーザ端末312及び捕捉された画像を格納するためのデータ格納システム314を含む。システム300は、後続の分析システム316をさらに含む。使用中、ナノスライド画像処理を使用することにより、試料106内の関心領域が選択される場合、さらなる分析が後続の分析システム316を使用して行われ得る。システム316の要件により、後続分析試料106aは、試料106と同じであり得る。代替的に、試料106は、試料106aを生成するために処理及び/又は切断され得る。別の例では、異なるが、対応する試料106s(図示せず)は、システム316を使用して後続の分析処理において使用され得る。
【0045】
後続の分析処理は、後続の画像処理であり得る。例えば、後続の分析処理は、光学、電子、走査プローブ又はX線顕微鏡検査などの後続の顕微鏡検査処理であり得る。例示的実施形態では、分析システム316は、透過型電子顕微鏡である。
図4は、後続の分析のための関心領域を選択するために使用され得る本開示の態様の工程を示すフローチャートである。初期段階では、方法401は、後続の分析処理405において使用される試料の関心領域を選択するための処理403を含む。この場合、試料は、
図2a又は2bなどの試料106であり得る。方法401は、試料106を試料保持器100(この場合にはナノスライド)に貼り付けることにより工程400において始まる。スライド及び試料保持器100は、402において設定されるように照明され、画像が形成される。任意選択的に、画像は、工程404においてデジタル形式で捕捉される。これに続いて、ユーザにより直接知覚された画像、すなわち工程404において捕捉された画像は、分析され、且つ試料内の1つ又は複数の構造的特徴は、408において、後続の分析が行われる関心領域(ROI)として識別され得る。分析工程406におけるROIの選択は、その両方の内容がすべての目的のために参照により本明細書に援用される、2018年11月29日出願の本出願人の同時係争中の「Automated method of identifying a structure」という名称のオーストラリア特許出願公開第2018904551号及び本出願と同じ日に出願されたオーストラリア特許出願公開第2018904551号に対する優先権を主張する国際特許出願に記載されたように、人により又は自動的な方法でのいずれかで行われ得る。
【0046】
ROIの識別工程406は、試料の少なくとも画像内に呈示された色を使用して行われる。画像内の特定位置における色は、試料の局所的物理的性質を表す。特に、サブミクロン構造の周期的アレイを含むプラズモニック層を有する試料保持器(ナノスライド)を使用することにより、試料内の局所化誘電定数を符号化する色コントラストが呈示される。画像からのROIの選択は、さらなる分析が望ましい試料内の興味ある1つ又は複数の構造を識別及び選択することを求めるものである。興味ある構造は、例えば、細胞、細胞の群、細胞の一部、細胞間の間質腔、細胞内の空隙又は上記のいずれかの形態を含み得る。最も好ましくは、興味ある特徴及び/又は構造は、試料又はその一部の健康状態を指示する。
【0047】
画像内の著しい光学コントラストの基礎をなす機構は、試料保持器のプラズモニック層の金属面における自由電子の集合的振動との光の共振相互作用(表面プラズモンポラリトン(SPP)として知られる)である。誘電体試料に接触するサブ波長開口のアレイを通る透過光のスペクトル変化は、SPP共振モードλ
θ
SPP,dの波長シフトΔλの関数であり、ここで、上付き文字θは、入射偏光角度(符号は、非偏光に関して除去される)を表し、下付き文字は、誘電定数が試料(d=s)又は空気(d=a)のものであるかどうかを指示する。SPPモードは、透過スペクトル内のピークにより特徴付けられ、厚さtの試料がナノ開口の上に置かれる場合の空気に対する対応波長シフトは、以下の式により与えられる。
Δλ≒(λ
θ
SPP,s-λ
θ
SPP,a)(1-exp(-2t/l
d)) (1)
ここで、l
d≒λ/2√ε
dは、SPP電磁場の固有減衰長であり、それ自体、試料の誘電定数ε
dの関数である。試料が、
図2bの例に示される試料の固有減衰長より厚い場合である。この例では、固有減衰長l
dは、参照番号110により指示される。分かるように、試料保持器100上の試料108は、減衰長110より厚い。膜厚が増加すると、透過SPP共鳴ピークは、λ
θ
SPPに等しくなるまで一層赤方偏移され、その後、これ以上の色変化は、発生しない。要するに、標準的透過明視野顕微鏡を使用する際、試料内の局所的誘電定数の変化に直接関係する色の空間分解分布が結果として生じることになる。光学スペクトルにおいて符号化された局所的誘電定数により、顕著な色コントラスト効果が生成される。これは、光学的に透明な試料内のいかなる構造(コントラストの欠如に起因して検出することが以前に困難であった)も画像内の捕捉された色コントラストのために可視光透過画像内で検出可能であることを意味する。さらに且つ照明されると、試料内の強度コントラストを誘起又は強化するために染色液又は染料を使用する従来の光学顕微鏡検査とは対照的に、好ましい実施形態では、試料内の狭い(約200nm未満の)層を表す識別可能な色コントラストを生成する。従来の顕微鏡検査は、試料の全厚さにわたる強度コントラストを示す。これは、試料の画像が実際には試料の全厚さ(200nmより著しく厚いことができる)にわたる全光吸収の2次元投影であるという欠点(従来の顕微鏡検査において)を有する。これは、見る人にとって試料内の詳細を曖昧にする影響があり得る。視覚的に、これは、画像内で可視である構造を不鮮明又は曖昧にし得る。対照的に、ナノスライドによる組織学は、試料保持器に最も近い試料の一部分における色コントラストのみを誘起し、したがって染色のみに依存する従来の顕微鏡検査より小さい寸法を有する構造を有用に示し得る。従来の光学顕微鏡検査の技術分野の当業者によって理解されるように、より薄いスライスは、にじみ又はぼやけの問題をいくぶん改善し得るが、薄いスライスは、薄いスライスで感知可能強度コントラストを示さないことがあり得るという付随する欠点を引き起こす。
【0048】
サブミクロン構造の周期的アレイを含む関連するプラズモニック層を有する上側表面及び下側表面を有するナノスライド試料保持器を使用する光学顕微鏡検査の能力であって、延長された試料調製の必要なしに(ほとんどの顕微鏡検査技術と比較して)構造をカラーで可視にする能力は、後続の分析のための試料の関心領域を識別するための迅速且つ潜在的に非破壊的な処理に理想的に適することを意味する。工程410における後続の分析は、例えば、以下のように関心領域の以前の選択を利用するような方法で差分析モダリティを使用して行われ得る:
後続の分析が行われる試料は、処理403から判断される1つ又は複数のデータ点及び/又は座標系に基づいて配向又はマッピングされ得るか、
試料の一部分の物理的選択は、ROIが例えば元の試料の残りを分析することなくより効果的又は効率的に分析され得るように、例えば後続分析試料を生成するために、関心領域を含む試料の一部分を切断することにより行われ得るか、又は
前記後続の分析の順序付け又はスケジューリングは、ROIを優先的に処理する(例えば、ROIを最初に又はより詳細に分析するなど)ために行われ得る。
【0049】
図5は、処理403を使用して捕捉された画像のいくつかの例を示し、例示的試料の構造を識別する能力を示す。画像は、顕微鏡下で出現すると染色又は標識付けなしに提示される。
【0050】
これらの組織学的試料に関して、遺伝子組み換えマウスは、38の未翻訳配列19のイントロン1、エクソン2~3及び316bpの一部を含む、1.3KbのMBP 58配列及び3.4Kbのc-mycゲノムDNAで構成される4.7Kb DNA断片のマイクロインジェクションにより生成された。2-50系図は、染色体9上の構造の約10の複製を担持し、7つの元々生成されたものから、その系図のみにおいて明らかな振戦表現型に基づいて分離された。遺伝子組み換えマウス及び非遺伝子組み換え同腹子は、2分間37℃においてリン酸塩緩衝食塩水により左心室を介して潅流され、続いてリン酸緩衝液(200IUヘパリン/100mlを含むpH7.4)中の4%パラホルムアルデヒド/2.5%グルタルアルデヒドにより潅流された。
図5bに関して、組織は、部分が顕微鏡切片作成法を介して視神経から切断される前に1時間にわたって4℃においてそのままにされた。組織は10%緩衝ホルマリン内で固定され、パラフィン包埋され、且つスライドガラス又はナノスライド上に切片化された。
【0051】
図5は、70nm厚さである視神経スライスから収集された画像を示す。このような部分は、通常、透過型電子顕微鏡検査(TEM)を使用することのみにより視られ得るが、非染色試料を示す最上部パネルにおいて分かるように、従来の光学顕微鏡検査を使用することではほぼ不可視である。中央及び下側パネルは、画像(左側)と、その拡大詳細図(右側)とを示す。中央パネルは、0°の入射偏光により照明された試料により捕捉された画像を示す。下側パネルは、同じ試料であるが、90°の入射偏極を有する光により照明された試料を示す。
【0052】
使用されるナノスライドは、集束イオンビーム(FIB)リソグラフィ技術(Helios NanoLab 600 Dual Beam FIB-SEM、FEI)又はフォトリトグラフィ(大面積用)のいずれかを使用して作製されたナノ開口の周期的アレイを含む。水素シルセスキオキサン(HSQ)保護層がアレイ製作後に回転塗布された。HSQは、電子への暴露を介してアモルファスシリコン酸化物に変換された。
図5の例では、周期的アレイは、
図1cに関連して述べられた長方形パターン上に十字形ナノ開口を有する構造を有する。十字形ナノ開口は、一方向(ここでは0°方向として定義される)に450nm周期を、且つ直交方向(90°方向として定義される)に400nm周期を有する。
【0053】
明視野及びDICデータは、60×(NA=0.7)対物鏡を有するNikon Ti-U顕微鏡システムを使用して収集され、スペクトルデータは、1200格子/mmにおいてIsoPlane SCT 320(Princeton Instruments)を使用し収集された。スペクトルデータは、ベア基板に対して正規化された。ここで提示されるすべての画像は、何であれいかなる画像操作も適用されることなく顕微鏡を介して「見られる」ものである。Bruker Dimension Icon AFMが地形学的データ及びライン走査を収集するために使用された。
【0054】
第2及び第3の画像において容易に分かるように、ナノスライドを使用することにより、試料内の構造は、画像内に呈示される色コントラストに起因して容易に視覚化され得る。試料内の様々な構造の色は、様々な誘電定数の領域を反映する。さらに、同じタイプの構造は、試料全体にわたり同じ色で出現する傾向もあり、このような構造の信頼できる識別を可能にする。
【0055】
入射偏光方向を変更すること(従来の明視野像への影響はなかった)は、広範囲の病理学に関して重大であるミエリン鞘などの組織の細胞下構造が選択的に増強されることを可能にすることが本発明者らにより観察された。これは、偏光角度のそれぞれに平行方向のサブミクロンアレイの様々な周期性に起因すると思われる。異なる周期性は、所与の誘電定数の構造が出現する色が変化するように透過スペクトルをチューニングすると考えられる。これは、いくつかの特性を有する構造の選択的強化又は着色を可能にする。要するに、典型的標的構造(例えば、細胞タイプ)の色チューニングは、標的構造が特徴的な色で又は色帯域内に出現するように、サブミクロン周期構造のパラメータ(例えば、周期、寸法、形状、アレイ幾何学形状の1つ又は複数)を選択することにより行われ得る。理解されるように、これは、標的構造の迅速な検出又はその特性の迅速な判断を大幅に強化する。
【0056】
選択処理403において視覚化のためのナノスライドを使用することにより、関心領域は、判断され、その後の撮像のために使用され得る。例えば、右側画像において拡大され左側画像において四角により指示される領域は、後続の分析処理405において分析される関心領域であることが判断され得る。
【0057】
理解されるように、癌と他の病気との識別は、細胞形態の微妙な変化(細胞骨格及び細胞核に対する変性など)に基づき得る。これは、細胞対称性、形状、核多形性/核構成を含む。細胞タイプを区別することは、細胞寸法、形状及び組織構成に基づき得る。本発明の実施形態の使用は、後続の分析処理のために関心領域を定義するためにナノスライドを使用することによって提供されるこのような特性及び構造の増強された可視性を可能にする。さらに、形態が低減される/欠陥がある場合(組織保存/調製技術に起因して又は発見することが困難になるごくわずかな癌スライドのみが存在する場合)、形態のみを根拠に癌の精確な診断を行うことは、非常に困難である。このような状況では、本発明の実施形態は、色を区別特徴として提示する。すなわち、色コントラストは、より大規模な形態が、欠陥があるとしても依然として可視であり得、ROIを定義することを可能にする。工程410における後続の分析処理の性質に依存して、好適な後続分析試料を生成するために好適な試料調製工程408を行うことが必要であり得る。いくつかの実施形態では、これは、選択された関心領域に対応する後続分析試料を生成するために、選択された関心領域を含む処理404において使用される試料の一部分を切断することを含み得る。
【0058】
しかし、他の実施形態では、選択された関心領域に対応する後続分析試料は、同じ組織試料から取得される、選択された関心領域に空間的に対応する異なる試料であり得る。例えば、後続分析試料は、その隣接部分における又はその隣接部分の近くの同じ組織試料から導出される、選択された関心領域に平面視でほぼ空間的に対応する試料であり得る。
【0059】
図5の一番下のパネルは、選択された関心領域の走査型電子顕微鏡により捕捉された画像を示す(すなわち右側に示され全試料画像上のボックスにより指示された拡大部分)。この場合のSEM撮像は、ナノスライド光学顕微鏡検査に使用されるものと同じ試料に対して行われるが、
図5の上の3つのパネルにおいて撮像されたものに空間的に対応する後続分析試料に対して行われ得る。
【0060】
工程410では、ROIが最重要であるため、SEM処理は、いずれかのROIに限定され得る。代替的に、ROIは、試料の他の部分の前に撮像され得る。いくつかの実施形態では、後続の分析処理はROIにより誘導され得、例えば、後続の分析に使用される分析パラメータは、関心領域の分析を最適化するために選択され得る。
【0061】
図5のSEM像において観測されるように、試料保持器のプラズモニック層内のサブミクロン構造は、SEM像内の一系列の黒点のように見える。
【0062】
これらの状況の各状況の例が
図6に示される。この例では、第1の試料108が組織試料600から切断される。試料108は、
図2bに示すようにナノスライドに貼り付けられ、且つ上述のように撮像される。この場合、2つの構造602及び604がナノスライド上の試料内で可視である。しかし、互いに対して及び/又は周囲組織に対して比較された構造の相対的色に起因して、部分602は、さらなる分析を必要とすると判断され、且つ関心領域となるように選択される。試料108の厚さに起因して、部分602は、TEM分析に使用されるためにより薄いスライス且つより小さい部分に切断される必要があるであろう(例えば、部分602は、70nmの厚さを有する約3mm径の円盤に切断される必要があるであろう)。適切な固定、樹脂湿潤及び設定並びにTEM顕微鏡検査の当業者に知られた他の処理も必要になるであろう。これは、可能であるが、実際的でないことがあり得る(例えば、非互換処理が試料108の調製のために必要とされる場合)。したがって、いくつかの実施形態では、関心領域に対応する異なる後続分析試料が生成され得る。例えば、試料108と同じ組織試料からスライスされた組織部分を使用することが可能であり得る。これは、
図6aに示される。部分606は、組織試料600内のスライス重なり試料108である。分かるように、平面視では、部分606は、特に平面視(すなわちスライスの方向に対して垂直な方向に視た場合)において密に対応し得る試料108と同様の特徴(602a及び604a)を有することになる。スライス606は、試料108に直接隣接するが、実際には、後続分析試料606は、後続の分析が効果を有するかなりの程度まで試料108内のROIと構造的特徴を共有すると期待される限り、試料108から分離された位置から導出され得ることが理解される。
【0063】
試料606のさらなる切断は、関心領域602に対応する試料の部分が後続の分析のために調製されるように行われ得る。
【0064】
理解されるように、TEM例に関して、これは、通常、調製済み試料を、
図6dに示されるようなTEPグリッド600上に置くことを意味する。TEMグリッドは、その上に定義された識別可能データ612又は軸を有し得ることが可能である。これは、ナノスライド画像処理において定義されたいかなるデータ又は座標軸もデータ612又はTEMグリッドの座標軸との既知の関係で配置されるように、後続分析試料と整合され得る。
図6eは、関心領域602aがTEM処理において撮像され得るようにグリッド610に張り付けられた
図6cの試料を示す。
【0065】
図7は、本方法の代替実施形態を示す。この実施形態では、ナノスライド100が提供される。一系列のTEMグリッド及び関連試料(例えばグリッド610及び試料602a)がナノスライド100の上に置かれる。次に、一系列の試料は、選択処理403との関連で説明したようにナノスライドを使用して一緒に撮像され得、TEMグリッド及び関連試料の1つ又は複数は後続の分析のための関心領域として選択され得る。この例では、これは、それらのTEMグリッド上の選択された試料を撮像のためにTEM内にロードすることを単に必要とし得る。この場合、不要なTEM撮像は、初期画像処理においていかなる関心も呈示しない試料に対して行われる必要がない。この実施形態では、ナノスライド100の上側表面が離型層を備え得るか、又はTEM分析が行われることを可能にするために、ナノスライドからのTEMグリッドの除去を容易にするための他の技術が使用され得る。例えば、TEMグリッドは、ナノスライドから浮いていることができるか、又は静電気又は音響エネルギーの印加により解放され得る。
【0066】
例えば、この場合、試料602a及び700の青着色は、それらが関心領域であることを指示し得る一方、緑色試料702及び704は、もはや分析を必要としない健康な組織を指示し得る。
【0067】
TEMがこの実施形態では説明されたが、本開示は、そのように限定されるものと考えるべきではない。実施形態は、他の後続分析技術を使用し得る。後続分析システムの実際的な効率及び有用なスループットは、全初期試料を苦労して分析する代わりに、分析に好適なROIのみを選択することにより改善され得ることが理解されることになる。
【0068】
本明細書において開示され定義された本発明は、述べられた又は本文若しくは図面から明らかな個々の特徴の2つ以上のすべての代替組み合わせに拡張することが理解されるであろう。これらの様々な組み合わせのすべてが本発明の様々な代替態様を構成する。