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特許7427003速度および周波数-依存液圧負荷同時調節部を備える緩衝器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】速度および周波数-依存液圧負荷同時調節部を備える緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/516 20060101AFI20240126BHJP
【FI】
F16F9/516
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021539011
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 ES2019070854
(87)【国際公開番号】W WO2020141238
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】P201930008
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】516025221
【氏名又は名称】ケイワイビー ヨーロッパ ゲーエムベーハー ナバラ ブランチ
【氏名又は名称原語表記】KYB EUROPE GMBH,SUCURSAL EN NAVARRA
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リサラガ セナール ハビエル
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-517683(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0276005(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/516
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端がロッドピン(2)となっている端部を有するロッド(1)を備え、前記ロッドピン(2)には、緩衝器内に伸側室(8)と圧側室(9)を区画すると共に両方の室(8,9)を連通する貫通孔(31,32)を備えるピストン(10)が固定されている、速度および周波数-依存液圧負荷同時調節部を備える緩衝器であって、
前記ロッドピン(2)は、縦方向チャネル(22)を備え、
前記ピストンに接触して配置される一次バルブ(23)と、
ガイドブッシング(21)であって、前記ロッドピン(2)に固定され、前記チャネル(22)の一部を囲み、前記ガイドブッシング(21)の2つの端部間で前記チャネル(22)を通じた流体の流通を許容し、前記ピストン(10)とケース(18)の間に配置され、前記チャネル(22)と増幅室(29)との間の液圧の連通を許容するガイドブッシング(21)と、
前記ガイドブッシング(21)を囲い、フローティングピストン(19)に接触して配置される弾性要素(25)と、
周波数増幅部(28)と、を備え、
前記周波数増幅部(28)は、
前記ロッドピン(2)に固定され、前記ロッドピン(2)と同心状である基部および壁により構成される前記ケース(18)と、
前記ガイドブッシング(21)と前記ケース(18)の前記壁との間を摺動可能であり、前記ガイドブッシング(21)および前記ケース(18)と一緒になって前記増幅室(29)を構成する基部を備えるフローティングピストン(19)と、
圧力制御バルブ(20,36)と、
を備える緩衝器において、
前記フローティングピストン(19)は、摺動中に液密性を維持すること可能であり、
前記緩衝器は、スペーサ(34)により前記一次バルブ(23)と接触し、かつ、前記弾性要素(25)と接触して配置される二次バルブ(24)をさらに備え
前記圧力制御バルブ(20,36)は、前記増幅室(29)から流体が流出するのを許容する固定開口部(27a,37a)を備えると共に、前記増幅室(29)が特定の圧力レベルに達した際に開いて、前記増幅室(29)から流体が高流量で流出するのを許容するように構成されており、
前記増幅室(29)の前記圧力が前記フローティングピストン(19)に作用し、前記フローティングピストン(19)が変位して前記弾性要素(25)を押し、前記弾性要素(25)が次いで前記二次バルブ(24)に作用して特定の圧力レベルまで前記一次バルブ(23)の開口を調節するように、圧力調節バルブ(36)によって制御されることを特徴とする、緩衝器。
【請求項2】
請求項1に記載の速度および周波数-依存液圧負荷同時調節部を備える緩衝器であって、
前記ガイドブッシング(21)は、長さ方向の中間領域にステップ状の制限ストッパ(30)を構成する小径部を備え、前記小径部は前記ケース(18)に接触する端部を有し、
前記フローティングピストン(19)は、第1の固定開口部(27a)を形成する圧力制限バルブ(20)により閉止され前記フローティングピストン(19)を貫通する流出流路(27)と、前記ガイドブッシング(21)の前記制限ストッパ(30)を補完するステップ状突出部と、を備え、
前記フローティングピストン(19)の前記変位および前記弾性要素(25)に作用する圧力は、機械的に制限されており、
前記増幅室(29)の前記圧力は、前記圧力制限バルブ(20)の動作圧力に制限されることを特徴とする緩衝器。
【請求項3】
請求項1に記載の速度および周波数-依存液圧負荷同時調節部を備える緩衝器であって、
前記ケース(18)は、第2の固定開口部(37a)の存在により前記圧力調節バルブ(36)によって部分的に閉止され、前記増幅室(29)が特定の圧力に達した際に開く通路(37)を備えることを特徴とする緩衝器。
【請求項4】
請求項1に記載の速度および周波数-依存液圧負荷同時調節部を備える緩衝器であって、
前記一次バルブ(23)および前記二次バルブ(24)は、前記ピストン(10)と前記ガイドブッシング(21)との間に組み込まれたバルブ、および、前記ガイドブッシング(21)を囲うバルブから選択されることを特徴とする緩衝器。
【請求項5】
請求項2に記載の速度および周波数-依存液圧負荷同時調節部を備える緩衝器であって、
前記一次バルブ(23)の変形は、
前記弾性要素(25)、
前記二次バルブ(24)、
前記一次バルブ(23)と二次バルブ(24)との間に配置された前記スペーサ(34)、
前記ガイドブッシング(21)の長さに沿った前記制限ストッパ(30)の位置、
前記圧力調節バルブ(36)の起動値、および
上記の組み合わせ、
から選択される構成要素によって定義されることを特徴とする緩衝器。
【請求項6】
請求項1に記載の速度および周波数-依存液圧負荷同時調節部を備える緩衝器であって、
前記ガイドブッシング(21)は、リリーフディスクの組み込み、および、少なくとも1つの細い流路(26)が構成される前記ガイドブッシング(21)の前記端部の切欠端部から選択される構成により前記ケース(18)に取り付けられていることを特徴とする緩衝器。
【請求項7】
請求項1に記載の速度および周波数-依存液圧負荷同時調節部を備える緩衝器であって、
前記弾性要素(25)は、弾性、外径および数の観点で設定可能なディスクスプリングの組立体であることを特徴とする緩衝器。
【請求項8】
請求項1に記載の速度および周波数-依存液圧負荷同時調節部を備える緩衝器であって、
前記二次バルブ(24)は、弾性およびサイズの観点で設定可能であることを特徴とする緩衝器。
【請求項9】
請求項8に記載の速度および周波数-依存液圧負荷同時調節部を備える緩衝器であって、
前記二次バルブ(24)の外径は、前記一次バルブ(23)で所望される圧力に応じて設定されることを特徴とする緩衝器。
【請求項10】
請求項1に記載の速度および周波数-依存液圧負荷同時調節部を備える緩衝器であって、
前記スペーサ(34)は、外径および厚さの観点で設定可能であることを特徴とする緩衝器。
【請求項11】
請求項1に記載の速度および周波数-依存液圧負荷同時調節部を備える緩衝器であって、
前記周波数増幅部(28)は、前記伸側室(8)、前記圧側室(9)、および、その両方から選択される位置に配置されることを特徴とする緩衝器。
【請求項12】
請求項1に記載の速度および周波数-依存液圧負荷同時調節部を備える緩衝器であって、
第二周波数増幅部(28)は、リザーブ室(7)に直接接触する支持バルブ(16)に配置されていることを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮および伸長作動の両方について、同時に作用する速度および周波数依存液圧デバイスによって発生する負荷を調節可能である緩衝器に関する。
【0002】
本発明は、特に自動車産業を中心とする、流体を減衰媒体として用いる緩衝器に関連する産業分野において特に適用される。
【背景技術】
【0003】
緩衝器は、懸架装置がその平衡位置を回復するまで運動エネルギーを消散させることによって、前記懸架装置の振動を減衰させることを意図するデバイスである。きわめて一般的な開発事例は、自動車への適用が中心である。
【0004】
自動車分野に注目すると、緩衝器は、安定性および快適性の両方に決定的な影響を有する。実際には、発生する液圧負荷の調整は、両方の因子間における妥協である。
・安定性の観点では、車両の動的制御は、懸架装置の伸長および圧縮速度が低く、かつ、乗用車について典型的には1~2Hzの範囲である、ばね上質量(キャビン)の固有振動数に対応する低振動周波数で行われる。この作動管理においては、高いレベルの減衰、すなわち、高い液圧負荷が必要とされる。
・快適性の観点では、制御は主に、中または高振動周波数で生じる、懸架装置の中速および高速における伸長および圧縮速度に関連する。基準周波数は、乗用車について典型的には8~15Hzの範囲である、ばね下質量(車輪/懸架装置)の固有振動数である。快適性をより高くするためには減衰レベルを下げる必要があり、これにより、車輪の動きとシャシーの振動とを分離することが可能である。
【0005】
従って、緩衝器は、減衰が必要である振動特性に対して、負荷レベルを調整可能であることが好ましい。
【0006】
従って、一方では、緩衝器は、懸架装置の振動速度に応じて適応可能でなければならない。現在の技術においては、緩衝器およびそのバルブの内部構成は、低速では、中速および高速域よりも高い減衰係数が発生するよう考慮されている。緩衝器の負荷とその振動速度を関連付ける関数が緩衝器の主な特性であると共に、安定性と快適性との妥協点を最適化する際に作用する曲線である。
【0007】
図14は、緩衝器の振動速度に応じた減衰力を表すグラフを示す。勾配は減衰係数を示す。勾配が急であるほど減衰係数が高い。従って、減衰係数、すなわち、曲線の勾配は、中速および高速域よりも低速で急である。
【0008】
他方では、緩衝器は、懸架装置の振動周波数に応じて適応可能でなければならない。図15aおよび15bのグラフは、いかなる周波数調整デバイスも備えていない場合と、周波数調整デバイスを備えている場合とのそれぞれにおけるピストンの行程に応じた減衰力の変動を表す。ここでは、低周波数では変動はないが、高周波数では、周波数調整デバイスが用いられた場合には、単一の同じ行程長について、力が低減し、すなわち、減衰レベルが大きく低減しており、これによって、よりソフトな懸架装置が得られ、快適性の上昇が伴うことが確認可能である。
【0009】
従来の緩衝器は、振動周波数に対する応答に対応することができていない。現在の技術においては、この特性を上記の緩衝器に組み込む解決法が存在している。第1のタイプでは、緩衝器の主ピストンに並列に配置されて一定の振動周波数の後に流体の通過を許容するバルブが追加されている。
【0010】
これらのデバイスの1つが米国特許第7395907号明細書に記載されている。この文献の目的は、周波数-依存減衰負荷の調節を行う補助デバイスがロッドピンの端部に設けられた油圧緩衝器である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、この発明では一連の問題または制限が提示される。
【0012】
第1に、伸長行程で発生した減衰の周波数調節が行われるのみである。
【0013】
第2に、ロッドピンの端部に加えられたデバイスであるため、軸方向に追加の空間が占有されることとなり、緩衝器の最大行程を減らす必要があるか、または、空間不足のためにいくつかの懸架装置への実装が不可能となってしまう。緩衝器のストロークの減少は、懸架装置のストローク端に達する頻度が増えてしまうため、快適性が低下してしまう。
【0014】
第3に、周波数バルブを並列に設けるためには、システムにおいて、交換される流量が重要である中速での効率を維持するために、ロッドピンにかなり大きな寸法の孔を開けなければならない。これにより、ピンの強度が低下し、耐えることが可能である油圧および機械的応力が制限されてしまう。
【0015】
第4に、孔の流路断面とロッドピンの強度との良好な妥協点に達するために、高速作動について周波数効果が制限されてしまう。
【0016】
第5に、周波数制御チャンバは、流体循環に係る両方向において実質的に対称の細い流路により、ピストン上方に位置する緩衝器のトラクションチャンバと接続されている。この発明の作動法は、付随する遅延により周波数調節が実施されるよう、周波数チャンバに流入する流体の流通に大きく制限を与える前記流路に基づいている。この遅延は周波数チャンバからトラクションチャンバに戻る流体にも同様に存在し、この流れは、低周波数での作動後にシステムの初期位置を回復するために必須である。従って、高周波数減衰調節は、この発明において、初期位置への復帰に必要な時間によって制限されてしまい、これは、周波数調節部において特に深刻である。さらに、緩衝器の伸長作動中におけるトラクションチャンバおよび圧縮チャンバの圧力の組み合わせでは周波数チャンバが充填される傾向にあり、伸長作動と圧縮作動のいずれの最中においても空になることはない。
【0017】
緩衝器が低周波数で作動する場合、周波数チャンバは充填され、その後、可能な限りすみやかに利用可能となるよう、空にされなければならない。この文献において記載されているシステム遅延ではトラクションチャンバへの流体の迅速な戻りが許容されておらず、その後に高周波数の入力を受けた場合に緩衝器の応答に条件付けがなされてしまうことが問題となっている。
【0018】
米国特許第9534653号明細書には、緩衝器の高周波数の状況および低周波数の状況の両方において作用することにより走行状況における快適性を向上させることが可能であるピストンを備えた緩衝器が記載されている。この目的のために、ロッドピンに形成された2つの平らな凹部により形成された縦方向バイパスチャネルがロッドピンに設けられている。ピストンは周波数チャンバを有し、これが次いで2つのサブチャンバに分割されており、これらはロッドピンに設けられているブッシングに形成された孔のそれぞれに接続されており、前記周波数チャンバが、周波数-依存型緩衝器に係る調節を担当している。
【0019】
米国特許第9534653号明細書は、米国特許第7395907号明細書に係る問題のいくつかを以下に示すように、部分的に解決している。
【0020】
一方では、ロッドピン孔が排除されており、その代わりに、ピンの機械強度の低減を向上させる平らな面で置き換えられている。
【0021】
他方では、緩衝器中において軸方向に必要とされる空間が小さく、懸架装置においてより長いストロークが可能となる。
【0022】
しかしながら、一連の点が未だ解決されていない。例えば、上記の文献と同様に、伸長行程において発生する減衰に係る周波数調節のみが行われ、圧縮行程における実施は不可能である。
【0023】
さらに、高周波数減衰の低減はなお、低周波数減衰を調節するメインバルブのものと並列に作用する流路への流体の排出に基づいている。利用可能な流路断面もなお極めて限定されており、これにより、中速および高速域に対する周波数効果がかなり低減されてしまう。
【0024】
上方側周波数サブチャンバへの充填と、低周波数での作動後において下方側周波数サブチャンバを空にすることとにおける困難さのために、システムの初期位置への復帰は遅い。また、周波数チャンバとトラクションサブチャンバとの圧力差は、伸長作動中における緩衝器の調節には好ましいが、システムを待機位置に復帰させるには好ましくない。このすべてによってまた、高周波数での調節効果が制限されてしまう。
【0025】
もっとも近似する従来技術と考えられる国際公開第2017/112978号には、ピストンのメインバルブに直接作用し、これにより周波数依存減衰負荷を調節する周波数チャンバを有する緩衝器が記載されている。この文献においては、上記文献に記載されている周波数依存減衰調節要素としての、緩衝器のメインバルブと並列に流出する流れは排除されている。従って、これにより、前記文献において存在していた以下の問題が解決されている。
・伸長行程および圧縮行程の両方で発生する減衰の周波数調節を行うことが可能である。
・調節要素としての並列な流体流れの排除は、著しく大きな流路断面を有する流体路およびピストンのメインバルブが用いられることで、高速での周波数効果の維持に係る関連する問題を最小限とする。
【0026】
しかしながら、国際公開第2017/112978号に記載の緩衝器には、既述の問題のいくつかがなお存在し、且つ、以下のものなどの他の追加の問題がさらに加わってしまう。
・周波数調節を起動させるための充填を遅延させてしまう細い流路によってここでも周波数チャンバがトラクションチャンバに接続されており、これにより、システムを待機位置に復帰させることは他の文献における場合と同様に代償が伴うものである。従って、ここにおいても上記の文献において問題として考えられるものに関するすべてがあてはまり、高い動作周波数で調節を行うシステムの能力が制限されてしまう。国際公開第2017/112978号に記載の緩衝器では、チェックバルブに基づく向上が提案されているが、適用は、複雑さ、寸法および入り組んだ幾何学的形状、ならびに、得られる周波数挙動における重大な拡散問題のために、代償が伴ってしまう。
・国際公開第2017/112978号に記載の緩衝器に追加される顕著な問題は、周波数チャンバの圧力がピストンのメインバルブにいかなる制限もなく直接適用され、後者に対する流体の流路の制限が増加することである。次いで、これにより周波数チャンバの圧力が高まり、これにより、フィードバックシステムが構成される。これは、この発明におけるいくつかの構成部材の機械的強度、ならびに、高速および/または増幅作動のための緩衝器の機械的強度を危険にさらしてしまう。さらに、速度-依存減衰の正確な分布が大きく制限されて、低速で高い減衰係数、および、高速で低い減衰係数を有することが不可能となってしまう。図16は、フィードバックによって緩衝器の調節がどのように変動するかを示す。メインバルブに力が直接加わるため、緩衝器の作動に制限がかかり、快適性を向上させると共にソフトな懸架装置を得るために可能な限り低い減衰力(従って制限)が注目される中速および高速域に影響が及ぼされる。これは既述のシステムにおいて生じることはなく、これは、デバイスが未結合のデバイスであるために、低周波数に対する速度依存減衰特性は高周波数に対する速度依存減衰特性とは完全に無関係であるためである。従って、周波数に応じて快適性を向上させるが、速度に応じて快適性が低減される。換言すると、国際公開第2017/112978号に記載の緩衝器は周波数に応じて調整されるが、速度依存調整が犠牲になるという代償が伴う。
・最後に、本文献は、単一の周波数バルブに基づく、緩衝器のメインバルブと、周波数システムのフィードバックとの完全な連結を考慮する。従って、周波数チャンバ中において発生した圧力は、構成部材間にまったく隙間を伴うことなくメインバルブに直接印加され、これにより、特に中周波数、さらに高周波数に対する減衰低減能が低減される。
【0027】
本発明は、緩衝器において低周波数作動の後に高周波数作動に入る準備を整わせる、迅速に空になる周波数増幅部の容量によって、および、圧力制限ストッパと共に作動する圧力制限バルブと圧力調節バルブとからなる、周波数増幅部における圧力制御バルブに追加された、一方が一次バルブであると共に他方が二次バルブである2つの独立したバルブを用いることにより達成される周波数増幅部の圧力の制限によって、周波数および速度を考慮した減衰負荷調節をさらに可能とすることにより、これらの制限を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本目的を達成すると共に前述の欠点を防止するために、本発明は、速度および周波数-依存液圧負荷同時調節部を備える緩衝器を記載する。緩衝器は、以下に記載の機能を有する縦方向チャネルを備えるロッドピンに追加して、ガイドブッシング、一次バルブ、二次バルブ、弾性要素、および、周波数増幅部を備える。周波数増幅部は、主構成要素として、ケース、フローティングピストン、および、圧力制御バルブを備える。
【0029】
ケースは、ロッドピンの周囲に固定されると共に、ロッドピンと同心状である基部および壁により形成される円筒状の構成を有する。
【0030】
ガイドブッシングもまた、ロッドピンの周囲に固定され、縦方向チャネルの一部と重複し、および、ガイドブッシングの内側に沿った縦方向チャネルであるピストンの貫通孔を通って、ピストンの反対側に位置する流体が自由に直接流通可能である一端部が形成されている。ガイドブッシングもまた、他方の端部でケースに取り付けられており、これにより、ガイドブッシングの端部の切欠構成によって形成された細い流路によって、または、ガイドブッシングの端部に配置されたリリーフディスクによって、ケースによって形成される容積の内側に達するように、縦方向チャネルからガイドブッシングの外側に流体の流通が許容される。
【0031】
弾性要素はガイドブッシングを囲んでいる。汎用性を考慮すると、皿ばねの組立体であることが好ましく、これは、弾性、外径および数の観点で構成可能であり、システムにおける応力を設定する際に幅広い定義が可能である。
【0032】
一次バルブはピストンと接触して配置されており、リリーフディスクを介していることが好ましい。二次バルブは次いで2つのスペーサ間に配置されており、その一方は二次バルブを一次バルブから離間させると共に、他方が二次バルブを弾性要素から離間させる。スペーサは、例えば座金であることが可能である。
【0033】
一次バルブが二次バルブに押された際に一次バルブの湾曲を許容するために、二次バルブの外径は一次バルブの外径よりも小さい。
【0034】
一次バルブ、二次バルブ、リリーフディスクおよびスペーサにより形成された組立体は、2つの位置で配置可能である。一方では、ガイドブッシングを囲むと共に、ピストンと弾性要素との間に配置される。他方では、ピストンとガイドブッシングとの間に組み込まれる。
【0035】
最後に、フローティングピストンは、ケースによって形成される容積内に配置される。フローティングピストンはガイドブッシングとケースの壁との間で摺動可能であり、摺動中に液密性を維持し、そのために、例えばOリングなどの一対のシーリング部材であって、一方が内径用であると共に他方が外径用であるものが用いられる。
【0036】
フローティングピストンは、ガイドブッシングおよびケースと一緒になって増幅室を構成する段差基部を有する。増幅室は、流体が流入して圧力が増大すると、フローティングピストンが押されてガイドブッシングに沿って摺動して容積が大きくなる。フローティングピストンの反対側は、弾性要素と接触しており、ケースの基部に対向して押す。
【0037】
フローティングピストンは、好ましくはロッドの軸と平行に貫通する流出流路を備えていてもよく、この流出流路は、片側において増幅室に向けて開放され、反対側において、この場合、圧力制限バルブである圧力制御バルブによって閉止される。この場合、ガイドブッシングは、長さ方向の中間領域にステップ状の制限ストッパを構成する小径部を備え、ケースに接触するその端部は直径が小さな端部である。フローティングピストンもまた内径側にステップ状突出部を備えており、その形状が、しかしながら、ガイドブッシングの制限ストッパによって形成されたステップとは逆向きになっており、これにより、これら2つのステップは補完的であり、すなわち、ケースに近いフローティングピストン側は、ピストンに近い側よりも大きな内径を有する。従って、ガイドブッシングに沿ったフローティングピストンの摺動は、制限ストッパによって定められる特定の長さに制限される。
【0038】
これに代えて、フローティングピストンが貫通する流路を有さず、ケースが、この場合、特定の動作圧力を受けた場合に起動される圧力調節バルブである圧力制御バルブによって閉止される通路を備える。この場合、フローティングピストンの変位は増幅室における圧力値によって制限され、これが、動作圧力に達して圧力調節バルブが起動されると増大を停止させる。
【0039】
作動が伸長作動であるか圧縮作動であるかに応じて、伸側室または圧側室のそれぞれにおける圧力はピストンの反対側に伝達され、流体の流路の一次バルブを変形させる。この圧力はまた、チャネルおよび細い流路を通じて伝達され、同様に、増幅室の容積を増大させ、フローティングピストンが押され、次いで、これにより弾性要素が押され、その後、一次バルブにカップリングされて流体の直接的な圧力によって一次バルブの変形を制限する二次バルブが押される。
【0040】
しかしながら、二次バルブに次いで一次バルブに作用するフローティングピストンの押圧、および、弾性要素の押圧は、制限されている。これは、既述のとおり、周波数増幅部の構成に係る制限ストッパまたは圧力調節バルブによって、フローティングピストンの変位が制限されているからである。同様に、フローティングピストンの変位は制限されているために、制限ストッパが存在している場合、チャネルを介した追加の圧力増大は、増幅室中における圧力の増大に変換される。しかしながら、増幅部の構成部材が機械応力に耐えることが出来ない可能性もあるため、この圧力は無制限に増大可能ではない。無制限な圧力の増大を防止するために、増幅室中の圧力は、フローティングピストンの変位を制限するための機械的制限が形成されるよう、制限ストッパが用いられる場合には圧力制限バルブによって制限され、または、増幅室中の圧力を調節するための液圧調節が形成されるよう圧力調節バルブによって制限される。増幅室は、上記の2つのいずれの場合においても、特定の圧力に達したら、開かれて、周波数増幅部が配置されている室、すなわち、圧側室または伸側室への流体の流出を許容する。
【0041】
先行技術文献に示されている問題の一つが、これにより解決される。もっとも近似する最新技術であるとみなされる国際公開第2017/112978号においては、周波数チャンバの変位を制限する構成要素は設けられておらず、これにより、速度-依存減衰特性が低減され、これにより、快適性が低減される。国際公開第2017/112978号は周波数チャンバの変位に対する制限をまったく伴っていないため、快適性を最大化させるための中速および高速域における低減衰は達成がきわめて困難であり、これは、周波数システムによって適用されるゲインは、速度の増加に伴う圧力の増加によって際限なく増大し続けるためである。
【0042】
同様に、周波数増幅部内の圧力を制御する圧力制御バルブによって、本発明は、緩衝器の構成要素を保護することに成功している。これは、その構成要素の完全性が保証されない国際公開第2017/112978号に記載されている発明においては、なされることはない。
【0043】
しかも、米国特許公報9534653号明細書において示されている発明は、圧力調節バルブを有する周波数増幅部が設けられている場合、本発明と視覚的に類似して見える場合がある。しかしながら、機能は完全に異なるものである。米国特許公報9534653号明細書の場合においては、チャンバ(401)中の最大圧力を制限する機能は有しているが、他方で、圧力調節バルブの機能は、後者に追加して、メインバルブに対する力を制御するものであり、これは米国特許公報9534653号明細書には当てはまらず、従って、この圧力調節バルブの機能は、全範囲の速度における減衰を制御することである。
【0044】
しかも、一次バルブによって達成される流体チャネルの絞り度は、とりわけ、弾性要素(これを構成する座金の弾性係数、外径および数を介して)、1つ以上のディスクで形成可能である二次バルブ(弾性およびサイズで)、一次バルブと二次バルブとの間に配置されたスペーサ(外径および厚さで)、残りの構成要素におけるフローティングピストンの最大位置を定義する、ガイドブッシングの全長に沿った制限ストッパの位置、ならびに、圧力調節バルブの動作値を含む一連の構成要素によって、または、同時に、当然のように数々の既述の構成要素によって設定可能である。
【0045】
周波数増幅部は、伸側室、圧側室またはその両方に配置されることが可能である。さらに、周波数増幅部は、リザーブ室に直接接触する支持バルブに配置されることも可能である。
【0046】
本発明の説明を完全なものとするために、および、その特性をより容易に理解可能なものとすることを補助することを目的として、本発明の好ましい例示的な実施形態によれば、図示のためであって限定をするものではないが、以下の図が表示される一連の図面が含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】伸長作動のための本発明の複筒型緩衝器の縦断面図を表す。
図2】第1の実施形態における、圧縮および伸長作動のための本発明の複筒型緩衝器の縦断面図を表す。
図3】第2の実施形態における、圧縮および伸長作動のための本発明の複筒型緩衝器の縦断面図を表す。
図4】伸長作動のためだけの本発明の単筒型緩衝器の縦断面図を表す。
図5】圧縮および伸長作動のための本発明の単筒型緩衝器の縦断面図を表す。
図6】待機状況における図1の緩衝器のピストン領域の詳細の縦断面図を表す。
図7】ガイドブッシングに組み込まれる代わりに、ガイドブッシングに対して摺動する構成でバルブが配置されている第2の実施形態の図6の緩衝器の図を表す。
図8】一次バルブおよび二次バルブがまだカップリングされていない、低周波数伸長作動を開始する図6の緩衝器の図を表す。
図9】バルブが既にカップリングされている図8の緩衝器の図を表す。
図10】制限ストッパによるフィードバック制限、および、圧力制限バルブの開放による圧力の放出を示す図9の緩衝器の図を表す。
図11】伸長作動が終了した後、システムが待機位置まで復帰移動を開始した場合における図8の緩衝器の図を表す。
図12】高周波数伸長作動における図8の緩衝器の図を表す。
図13】圧力調節バルブによる第2の実施形態におけるフィードバック制限を示す図9の緩衝器の図を表す。
図14】緩衝器の振動速度に応じる減衰力を示すグラフを表す。
図15a】いかなる周波数調整デバイスも設けられていない場合における、ピストンのストロークに応じた減衰力の変動を示すグラフを表す。
図15b】周波数調整デバイスが設けられている場合における、ピストンのストロークに応じた減衰力の変動を示すグラフを表す。
図16】制限されていない場合のフィードバックにより、緩衝器の調節がどのように変動するかを表す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
表記の通り、本発明は、同時に作用する速度および周波数依存液圧デバイスによって発生する負荷を調節可能である緩衝器に関する。
【0049】
図1~5は、複筒および単筒型緩衝器における、伸長行程の最中のみで作動するか、または、圧縮行程および伸長行程の最中で作動するかが意図された本発明の緩衝器の種々の実施形態を表す。
【0050】
図1は、伸長行程の最中にのみ負荷を調節可能な本発明に係る複筒型緩衝器の縦断面を表す。
【0051】
図2および3は、2つの異なる実施形態において、圧縮および伸長作動の最中に負荷を調節可能である本発明に係る複筒型緩衝器の縦断面を表す。
【0052】
図4は、伸長行程の最中にのみ負荷を調節可能である、本発明に係る単筒型緩衝器の縦断面を表す。
【0053】
図5は、圧縮行程および伸長行程の最中に負荷を調節可能である、本発明に係る単筒型緩衝器の縦断面を表す。
【0054】
本発明の緩衝器の動作を説明する前に、緩衝器を、その構成要素の各々について、これらがどのように位置されているか、および、これらがどのように互いに関連しているかを理解できるよう説明する。説明される緩衝器は、伸長作動について、単筒型緩衝器であっても、複筒型緩衝器であってもよい。作動は、緩衝器が圧縮作動のみについて作動する場合、または、その両方について作動する場合に係る記載から容易に推察可能である(このため、図面にも記載されていない)。
【0055】
緩衝器の構成要素、および、その動作態様が理解されるよう、図1~5について以下に簡潔に記載する。
【0056】
従って、本発明の緩衝器は、その一方の端部が閉じていると共に他方の端部においてロッド(1)が挿通される開口を有する外筒(5)により形成されている複筒型緩衝器(現在の技術において公知であるものなどの、単筒型緩衝器に拡大されることがない)に基づいており、ここで、問題が提起されている。ロッド(1)と外筒(5)の端部の間には、開口の液密性を保証するために、リテーナー(3)が配置されている。
【0057】
内筒(6)が、その端部が外筒(5)の閉止端に強固に固定されて外筒(5)と同心状に配置されており、内筒(6)の他方の端部は、外筒(5)に固定され、ロッド(1)を縦方向に移動するよう案内するガイド(4)が組み込まれている。外筒(5)と内筒(6)との間には、流体(13)が特定のレベル(14)まで充填されるリザーブ室(7)である空間が形成されており、リザーブ室(7)の特定のレベル(14)より上方にはガス(12)が充填されている。
【0058】
外筒(5)の閉止端は、圧側室(9)とリザーブ室(7)とを連通する孔を有するバルブサポート(16)が組み込まれた内筒(6)の端部に取り付けられている。作動がそれぞれ伸長作動であるか圧縮作動であるかに応じて対応するバルブ(15,17)が開くよう、いくつかの孔がチェックバルブ(15)により閉じられており、他の孔が圧縮バルブ(17)により閉じられている。
【0059】
ロッド(1)の一方の端部はロッドピン(2)で終端とされており、ロッドピン(2)に、内筒(6)に沿って嵌合するよう摺動すると共に、伸側室(8)と圧側室(9)とを連通する伸長貫通孔(31)と圧縮貫通孔(32)とが設けられたピストン(10)が組み付けられている。圧縮貫通孔(32)上に載置されている第2の圧縮バルブ(17)が、ピストン(10)の伸側室(8)側に配置されている。
【0060】
本発明の緩衝器は、ピストン(10)に加えて、ロッドピン(2)において、一次バルブ(23)と、二次バルブ(24)と、本発明の構成要素の主部を構成する周波数増幅部(28)とを備える。
【0061】
周波数増幅部(28)は、主構成部材として、円筒状でロッドピン(2)を囲むガイドブッシング(21)、同様にロッドピン(2)を囲むケース(18)、および、フローティングピストン(19)を備える。ケース(18)は円筒状であって、ロッドピン(2)に対して同心状に固定されている基部および壁により形成されており、他の移動可能な構成部材が配置される容積を形成している。ロッドピン(2)には、一端でピストン(10)から他端でケース(18)まで全長に沿って延びる少なくとも1つの内側チャネル(22)が設けられている。ケース(18)とガイドブッシング(21)との間に形成された空間には、ガイドブッシング(21)およびケース(18)の壁に沿って液密に摺動可能であり、一方が内径側用および他方が外径側用の例えばOリングなどの一対のシーリング部材(35)が用いられたフローティングピストン(19)が配置されている。フローティングピストン(19)は段差部分を備える基部を有しており、この段差部分がケース(18)およびガイドブッシング(21)と一緒になって増幅室(29)を区画しており、その容積は、ガイドブッシング(21)に沿ってフローティングピストン(19)が摺動するに伴って変動可能とされている。
【0062】
周波数増幅部(28)の第1の実施形態において、フローティングピストン(19)は増幅室(29)と圧側室(9)とを連通する流出流路(27)を備えており、流出流路(27)は、図7に表されているとおり、第1の固定開口部(27a)が常に開いたままであることで、圧力制限バルブ(20)によって部分的に閉止可能とされている。次いで、ガイドブッシング(21)は、長さ方向の中間領域に、ステップ状の制限ストッパ(30)を構成する小径部を有する。これにより、フローティングピストン(19)は、ケース(18)の基部と制限ストッパ(30)との間を摺動可能である。制限ストッパ(30)は、弾性要素(25)に作用し得る変形力を制限するための機械的制限として作用する。フローティングピストン(19)が制限ストッパ(30)に達すると、増幅室(29)中の圧力は、圧力制限バルブ(20)によって設定されるレベルまで増加する。圧力制限バルブ(20)の開口は、増幅室(29)中の圧力が増大し続けないように設定される。
【0063】
周波数増幅部(28)の第2の実施形態において、ケース(18)は、圧力調節バルブ(36)が作用する通路(37)を備える。この圧力調節バルブ(36)は、増幅室(29)中の圧力が特定の値に達したら開いて、増幅室(29)中の最大圧力、従って、弾性要素(25)によって二次バルブ(24)に加えられる力を液圧的に調節する。この事例においては、第2の固定開口部(37a)が設けられている。この実施形態は、制限ストッパ(30)およびフローティングピストン(19)により形成される組立体に関連する寸法制御が不要であるという点で、前述のものに対して利点を有する。
【0064】
これらの2つの実施形態間には本質的な差異が存在している。第1の実施形態においては、圧力制限バルブ(20)では、弾性要素(25)に加えられる変形によってなされるシステムによる負荷制御に干渉することなく構成要素の破損を防止することのみのために、圧力制限レベルが高く設定されている。第2の実施形態においては、制限ストッパ(30)を伴わずに、圧力調節バルブ(36)は、増幅部が一次バルブ(23)に加える力を調節する主機能を実施する。これは、きわめて低い圧力制限に設定され、緩衝器の液圧機能を決定する。
【0065】
両方の実施形態において、一次バルブ(23)は、好ましくは、流体のための固定流路断面を有するリリーフディスク(33)によって伸長貫通孔(31)上に載置されており、および、追加の実施形態においては、ピストン(10)とガイドブッシング(21)の一方の端部との間に組み込まれている。ガイドブッシング(21)の他方の端部は、ケース(18)上に載置されていると共に、端部に細い流体路(26)を有する。ガイドブッシング(21)の周囲に延び、他方の端部で二次バルブ(24)に接触するまで伸びる弾性要素(25)が、フローティングピストン(19)に載置されている。
【0066】
ガイドブッシング(21)は、ロッドピン(2)に備えられた縦方向表面チャネル(22)の一部を囲み、これにより、伸側室(8)は、増幅室(29)と液圧的に連通している。ガイドブッシング(21)の細い流体路(26)は、増幅室(29)とロッドピン(2)のチャネル(22)とを連通し、最終的に、伸側室(8)と連通する。一実施形態において、細い流体路(26)が、ガイドブッシング(21)の切欠端部によって形成されている。代替的な実施形態において、ガイドブッシング(21)の端部は細い流体路(26)を有しておらず、代わりに、連通流体路が設けられた第2のリリーフディスク(33)上に載置される。
【0067】
一次バルブ(23)は、好ましくはリリーフディスク(33)を介してピストン(10)と接触して配置されている。二次バルブ(24)が、次いで、2つのスペーサ(34)間に配置されており、その一方は二次バルブ(24)を一次バルブ(23)から分離させると共に、他方が二次バルブ(24)を弾性要素(25)から離間させ、二次バルブ(24)の剛性が決定される。スペーサ(34)は、例えば座金であることが可能である。一次バルブ(23)および二次バルブ(24)は従って、スペーサ(34)によって分離されて間に空間を形成し、これは、その厚さおよび外径に応じて構成することが可能である。
【0068】
図7に表すとおり、第2の実施形態において、一次バルブ(23)および二次バルブ(24)は、組み込まれる代わりに、リリーフディスク(33)およびスペーサ(34)と一緒に、ガイドブッシング(21)の周囲に配置されて摺動可能である。
【0069】
緩衝器の動作は図6~10を参照して以下に示されているとおりであり、順次、緩衝器の内筒(6)を摺動する、ピストン(10)、一次バルブ(23)、二次バルブ(24)、および、ロッドピン(2)に組み付けられた周波数増幅部(28)が表されている。
【0070】
明確さが失われないように、および、図中に必要以上の構成要素が挿入されないように、流線は、これらの図に表されている部分の片側にのみ表されており、実際には、これらは反対側においても見出されるであろうことが考慮されなければならない。
【0071】
図6および7のそれぞれは、バルブ(23,24)が、ピストン(10)とガイドブッシング(21)の一方の端部との間に組み込まれて配置される形態と、バルブ(23,24)が、ガイドブッシング(21)を囲うように配置される形態との2つの実施形態における待機状態の緩衝器を表す。
【0072】
図8に示すとおり、一旦圧力が伸側室(8)に導入されると、一次バルブ(23)は、スペーサ(34)によって二次バルブ(24)と隔てられたまま、前記スペーサ(34)に接触するよう湾曲し始める。緩衝器の伸長作動によって生じるこの湾曲が、並行に作動する2つの通路を通じた流体流路を生じさせる。一次流路は、伸側室(8)から一次バルブ(23)を通じて圧側室(9)に延びる。二次流路は、一次バルブ(23)に位置する流体を、縦方向チャネル(22)および細い流路(26)を通して増幅室(29)に流す。ここで、周波数増幅部(28)の実施形態に従って、増幅部は、流入する流体の一部を、第1の固定開口部(27a)を備えるために密閉性ではない圧力制限バルブ(20)によって、流出流路(27)を通して圧側室(9)に向かって流出させ、および、増幅部は、流体を圧側室(9)に向かって流出させるか、または、第2の固定開口部(37a)を備えるために同様に密閉性ではない圧力調節バルブ(36)を通して流出させる。この構成は、伸側室(8)の圧力を圧側室(9)の圧力に対して増大させ、これが部分的に増幅室(29)に伝えられることとなる。圧側室(9)に対する増幅室(29)中の過剰な圧力はフローティングピストン(19)に加えられ、これを摺動させ、これにより、弾性要素(25)が押され、次いで、二次バルブ(24)が押される。一次バルブ(23)と二次バルブ(24)との間にスペーサ(34)が存在していることは、フローティングピストン(19)の摺動は一次バルブ(23)に直ちに伝達されないことを意味している。
【0073】
低周波数で行われる緩衝器の伸長では、二次バルブ(24)が一次バルブ(23)に接触するために十分な時間がある。
【0074】
図9はその後の状況を表すと共に、弾性要素(25)および二次バルブ(24)を押すフローティングピストン(19)の変位が、部分的に開かれた一次バルブ(23)と二次バルブ(24)との間の接触を達成するために、如何様にしてここでは十分であるのかを示す。この構成では、増幅室(29)中の過剰な圧力によって加えられた力が一次バルブ(23)に伝えられ、伸側室(8)と圧側室(9)との間の流体チャネルがさらに大きく絞られる。より大きな圧力差が増幅室(29)に伝えられ、増幅室(29)に流入する流れが増加し、一次バルブ(23)による流体チャネルの絞りがまた増加する。このフィードバック現象が伸側室(8)と圧側室(9)との間に形成された圧力差を増大させ、従って、緩衝器によって発生される伸長作動に対向する力が増大する。二次バルブ(24)が存在していない場合、フィードバックサイクルが緩衝器の伸長作動におけるきわめて初期から生起されてしまい、提供される力の周波数制御が大きく妨げられてしまうために、二次バルブ(24)が存在していることがもっとも重要であることが理解可能である。換言すると、10Hzの他の作動に対して、1Hzの作動について異なる緩衝器応答を達成することは、プロセスがきわめて高速となることもあって、きわめて困難である。
【0075】
必要な体積の流体を増幅室(29)に移すのに作動周波数が十分に低い、および/または、伸長速度が十分に高い場合には、周波数増幅部(28)の第1の実施形態を考慮すると、図9に示されているとおり、フローティングピストン(19)は、制限ストッパ(30)に接触するまで摺動し、または、増幅室(29)が圧力調節バルブ(36)により形成される調節圧力に達するまで摺動する。この時、フィードバック現象は制限されており、周波数増幅部(28)から一次バルブ(23)への追加の力の伝達が防止される。力の伝達に対する前記制限は、構造的完全性の確保と、振動速度の関数として減衰力曲線として表記されている図14に示されている緩衝器の主機能の保守との両方のために必須である。上記のとおり、圧力制限バルブ(20)の唯一の機能はシステムの構成要素を保護することであり、弾性要素(25)において制限ストッパ(30)により許容されている最大の変形は、力-速度曲線により決定され、これにより、制限されている。しかしながら、圧力調節バルブ(36)の場合、システムの構成要素の構造的完全性の確保と、制限を伴わない力-速度曲線の再現との両方の機能が実際に発揮される。
【0076】
フィードバックは、この作動管理に必要とされる高い減衰値が周波数増幅部(28)によって増幅可能であるよう、低速で制限に達しないように設定される。圧力制限バルブ(20)の場合、制限は、緩衝器の中速の動作速度域、および、特に高速の動作速度域で用いられ、圧力調節バルブ(36)の場合には厳密には必須ではないが、その低速での動作が注目され得る。圧力調節バルブ(36)の場合、最大フィードバック力の制限に追加して、その全動作範囲における緩衝器の応答をも管理するため、その開口度は低速での作動について設定可能である。この圧力調節バルブ(36)の管理は、好ましくは各速度について最適な減衰レベルを発生するよう適応された一次バルブ(23)のものと同様の構成とすることにより達成される。従って、周波数増幅部(28)が一次バルブ(23)における流体絞りの大部分をもたらすよう構成可能であることで、その制限により、車両に安定性をもたらすために低速で要求される高度の減衰を、地面の凹凸のキャビンへの伝達を最低限とし、結果的に快適性を最大化させることが可能である高速での低減衰係数と組み合わせることが可能とされる。従って、本発明は、周波数ドメインおよび速度領域の両方において作用する。
【0077】
周波数増幅部(28)の第1の実施形態を考慮すると、フローティングピストン(19)が一旦制限ストッパ(30)に達すると、増幅室(29)の容積が、増大する可能性を伴うことなく固定化される。緩衝器の伸長サイクルが好適な条件下で持続した場合、増幅室(29)中の圧力が増加し、伸側室(8)の圧力に接近する。固定開口部(27a,37a)が存在していることで、周波数増幅部(28)を介した最低限の流出量が確保され、これにより、両者の圧力が完全に平衡化されることが防止される。この圧力制限は高速作動については不十分であり得、そのため、圧力制限バルブ(20)を備えていなければならない。図10に示されているとおり、流出流路(27)による増幅室(29)と圧側室(9)との間における差圧を受けているため、前記圧力制限バルブ(20)は上記の圧力差の予め設定された値で開かれることとなり、増幅室(29)から圧側室(9)に向けてさらなる量の流体を流出させる。従って、周波数増幅部(28)の構成部材は増幅室(29)中における過剰な圧力から保護されており、これにより、緩衝器の作動における多岐にわたる速度域に対する耐性および耐久性が確保される。これは、その減衰調節機能を介して同じ機能を発揮する、圧力調節バルブ(36)を備える周波数増幅部(28)の第2の実施形態を考慮した場合においても生じる。
【0078】
緩衝器の伸長作動が終わりに近づくと、その速度が低下し、一次バルブ(23)を通過する流量が減る。これには、伸側室(8)と圧側室(9)との間における圧力差の低減が伴い、次いで、増幅室(29)の減圧が付随する。そのため、流体の循環方向は、細い流路(26)で反転され、伸側室(8)に向かって増幅室(29)を出る。これは、共に細い流路(26)および流出流路(27)を通って、第1の固定開口部(27a)を通って、または、図13に表すとおり、第2の固定開口部(37a)を通って、流体が増幅室(29)を流出するよう図11において図示されている。流出流路(27)および圧力調節バルブ(36)は、周波数増幅部(28)の2つの実施形態における、増幅室(29)と伸側室(8)との間におけるものよりも大きな増幅室(29)と圧側室(9)との間での圧力差による、伸長作動の最終段階における主流体流出流通路である。これは、伸長作動の最中には、伸側室(8)中の圧力は常に圧側室(9)中の圧力よりも高いためである。緩衝器が圧縮段階を開始するに伴って、この関係は逆転し、増幅室(29)と伸側室(8)との間の差圧が最大となり、および、細いチャネル(26)が増幅室(29)を空にするための好ましい流通路となる。
【0079】
増幅室(29)が充填されている間、流体は細い流路(26)に流入すると共に固定開口部(27a,37a)を流出し、ここで、フローティングピストン(19)がどの程度速く摺動するかを調節するための基本的な構成要素である有効充填断面は、これら両方の差分である。周波数増幅部(28)の周波数挙動を制御するのはこの差であって、これが小さな断面でなければならないことから、断面の各々は従って、より大きな寸法を有することが可能である。これは、現在の技術において存在している解決法と比較してより大きな寸法が付随する制御チャネルのよりシンプルでよりロバストな製造を意味する。さらに、これらを同時に動作させることで、伸長作動の最終段階中、および、全圧縮行程中において流体を増幅室(29)から流出させることは、これが大流路断面であり、すなわち、両方の和であり、これがフローティングピストン(19)の待機位置への迅速な復帰を保証することを意味する。サイクルがきわめて早い高周波数調節を実施する準備がシステムにおいて常になされているよう、待機位置に復帰するまでのこの作動の時間は可能な限り短い必要がある。この構造は実装が容易であるために有利であり、本発明は、調節が必要であるものよりもかなり高い動作周波数を有することが可能である。
【0080】
伸長作動が高周波数で行われる場合、流量の分布は、図8に示されている低周波数作動で発生する分布に対して変化しておらず:一次流れは、伸側室(8)と圧側室(9)との間で一次バルブ(23)を通して形成される。二次流れは、増幅室(29)を流れる。この流体は、一次バルブ(23)の上部から流出して、ピン(2)のチャネル(22)および細い流路(26)により増幅室(29)に達する。流入する流体の一部は、流出流路(27)を通り、第1の固定開口部(27a)または第2の固定開口部(37a)を通じて前記チャンバ(29)を出て圧側室(9)に向かう。図10は、圧力制限バルブ(20)を有する高周波数サイクルに対する流れの配置を示す。両方の作動間の差はその時間であり、高周波数サイクルの場合はきわめて短い。周波数増幅部(28)がフィードバックサイクルを開始するためには、フローティングピストン(19)は、増幅室(29)の容積が増加する方向に変位しなければならない。実際には、フィードバックは、フローティングピストン(19)の変位が、スペーサ(34)によって隔てられている二次バルブ(24)と一次バルブ(23)とが接触することとなるのに十分となるまで開始されない。このフローティングピストン(19)の変位を達成するのに必要とされる圧力は、スペーサ(34)の厚さおよび直径、二次バルブ(24)の剛性、ならびに、弾性要素(25)の剛性に依存する。次いで、フローティングピストン(19)を最低限変位させるために増幅室(29)に流入しなければならない流体の体積は、上記のチャンバの断面に依存する。最後に、この充填が完了するために必要な時間は、伸側室(8)と、圧側室(9)と、増幅室(29)との間において発生する圧力差、ならびに、細い流路(26)を通る流体の流入および固定開口部(27a、37a)を通る流体の流出に対する制限に依存する。
【0081】
固定開口部(27a,37a)によって、増幅室(29)は、空にされる場合よりもかなりゆっくりと充填される。
【0082】
減衰の周波数調節を行うために、増幅室(29)はゆっくりと充填され、且つ、比較的迅速に空にされなければならず、これにより、システムを新たなサイクルに対して準備させる。
【0083】
伸長作動の場合、伸側室と圧側室との圧力差は高く、従って、本システムは、周波数チャンバに対して小さい流通断面を用いて、前記チャンバをゆっくりと充填させる。しかしながら、小さい充填断面を用いることにより、周波数チャンバを空にすることは妨げられてしまう。周波数チャンバを空にすることは、伸側室に比した周波数チャンバの高い圧力によって行われ;しかしながら、この圧力差は、伸長段階の最中に周波数チャンバを充填する場合よりも小さく、そのため、空にするのは充填よりも遅い。次の高周波数サイクルを開始するまでにシステムが完全に空になっていなかった場合、調節部は効率を失ってしまう。
【0084】
本発明のシステムにおいては、増幅室(29)における制御された流体の流出のために固定開口部(27a,37a)が設けられていることで、前記制御された流体の流出が増幅室(29)の充填を妨げるために、より大きな断面を用いることが可能となる。従って、増幅室(29)はゆっくりと充填されると共に、迅速に空となり、これにより、その効率に影響が及ぼされることなく新たなサイクルに対してシステムを準備させることが可能である。
【0085】
高周波数作動の時間は短いため、増幅室(29)に移動する流体の体積は、フローティングピストン(19)の摺動が二次バルブ(24)を一次バルブ(23)に接触させるには不十分であり得る。このような事例において、フィードバックは存在せず、ならびに、緩衝器の負荷は伸長貫通孔(31)および一次バルブ(23)の構成によって決定される。作動またはその速度の程度が大きい場合、増幅室(29)に移動する流体の体積はより大きくなり、ここでは、図9に詳細に示されているとおり、フィードバックプロセスが開始されてもよい。前記段落において記載されている本発明の設定可能なパラメータは、フィードバックプロセスが予め決められたものよりも高い周波数において作動の限界に達するためには時間が十分ではないよう選択される。高周波数作動に対して緩衝器によって発生される力は従って、いずれの場合においても低周波数作動に付随するものよりも小さい。
【0086】
一次バルブ(23)は、高周波数で緩衝器により発生される作動に対向する力を最低限とするために、低い予変形および低い剛性を有するよう構成されることが可能である。従って、典型的には高い振動周波数で道路の凹凸の伝達を最低限とすることにより、快適性が最大化される。
【0087】
圧力が増加する速度を条件付ける他の要因は、増幅室(29)自体の容積または二次バルブ(24)の剛性と弾性要素(25)の剛性の組み合わせである。弾性要素(25)の剛性および二次バルブ(24)の剛性により、一次バルブ(23)と二次バルブ(24)との間のカップリングの程度を設定することが可能となる。同様に、一次バルブ(23)と二次バルブ(24)との間にスペーサ(34)によって形成される距離と一緒になって、このシステムには汎用性の高い構成が提供されている。
【0088】
1Hzの低周波数作動では、例えば、システムは、フローティングピストン(19)の変位が制限ストッパ(30)に達するよう構成可能である。この点が、増幅部(28)によって、弾性要素(25)および二次バルブ(24)を介して一次バルブ(23)に伝達される最大の力が制限されるように、フローティングピストン(19)のストローク制限を構成する。換言すると、作動の時間がどれくらい長くても、または、一次バルブ(23)に適用される圧力の程度がどれくらい大きくても、フィードバックサイクルが制限ストッパ(30)によって中断されるために、周波数増幅部(28)によってもたらされる最大の力のゲインは制限されている。これにより、高速では制限されている前提で、低速で顕著なゲインが適用可能とされている。
【0089】
その後、図10に示されているとおり、伸側室(8)は特定の圧力レベルを超えている。フローティングピストン(19)は既に制限ストッパ(30)に接触していると共にこれ以上の変位は不可能であり、そのため、増幅室(29)は容積および圧力がこれ以上高まることは不可能であり、流出流路(27)中の流体を案内して圧力制限バルブ(20)を開き、圧力の増大が増幅室(29)を流出する流体によって相殺される。これは、周波数増幅部(28)の第1の実施形態において生じる。図13に示されている第2の実施形態においては、増幅室(29)が所望の調節圧力に達すると、圧力調節バルブ(36)が開き、ここで、圧力は増幅室(29)を流出する流体によって相殺される。そのため、フローティングピストン(19)から弾性要素(25)および二次バルブ(24)の両方が受ける力もまた制限されており、これは、変位が制限ストッパ(30)によって機械的に制限されるか、または、増幅室(29)から圧力調節バルブ(36)を介して加えられる圧力、従って、これらが一次バルブ(23)に加える力の制限によって変位が液圧的に制限されるためである。図10に示されているとおり、これは、既述のとおり、伸側室(8)中の圧力の増大により、および、二次バルブ(24)から受ける力が制限されることにより、一次バルブ(23)がさらに湾曲するであろうことを意味する。これにより、高圧の状況に関与する部品の耐性が負けてしまうことが防止される。
【0090】
一旦伸側室(8)中における一瞬の最大圧力に耐えたら、フローティングピストン(19)は待機位置に向けて変位を開始する。サイクルがきわめて早い高周波数調節を実施する準備がシステムにおいて常になされているよう、この作動の時間は可能な限り短い必要がある。この状況においては、図11は、増幅室(29)を空にする時間の最中における流体分布流を表し、ここで、本発明は、流体を増幅室(29)から流出させるための第1の固定開口部(27a)および細い流路(26)の両方を有する。
【0091】
図8に示されているとおり、増幅室(29)を充填している間、第1の固定開口部(27a)は圧側室(9)に向けて流体を流出させ、ここで、この流量は、ガイドブッシング(21)の細い流路(26)を通って増幅室(29)に流入する流量から差し引かれる。
【0092】
しかしながら、増幅室(29)を空にしている間、流体の流出する流れは、ピストン(10)の変位に起因する伸側室(8)における容積の増大によって発生する低い圧力のために、固定開口部(27a,37a)とガイドブッシング(21)の細い流路(26)との両方のそれぞれによって形成され、これにより、ロッドピン(2)のチャネル(22)に追加して、ピストン(10)に配置された圧縮チャネル(32)をも介して増幅室(29)から伸側室(8)に向かう流体の流れが生じるが、これは、圧縮バルブ(17)が同じ理由で開くからである。従って、充填段階とは異なり、空にする段階では、両方の断面(26,27)を通る流体の流量は加算されて、増幅室(29)が迅速に空とされ、および、システムが迅速に待機位置に復帰される。
【0093】
この構造は実装が容易であるために有利であり、本発明は、調節が必要であるものよりもかなり高い動作周波数を有することが可能である。従って、緩衝器が伸長サイクルの終了時に流体の出口を2つ有しているということは、周波数増幅部(28)がその待機位置にきわめて迅速に復帰することを意味する。増幅室(29)の復帰速度は、圧力制限バルブ(20)または圧力調節バルブ(36)の応力レベルの設計と共に、細い流路(26)のサイズおよび流出流路(27)により形成される組立体のサイズに依存じる。
【0094】
図10および13における記載は、フローティングピストン(19)の作動が制限ストッパ(30)または圧力調節バルブ(36)のそれぞれによって制限されることの重要性を明確に示す。そうでなければ、伸側室(8)の圧力、従って増幅室(29)の圧力が過剰に増大すると、フローティングピストン(19)の作動は制限されることがなく、弾性要素(25)の押圧、この弾性要素の二次バルブ(24)への押圧、および、この二次バルブの一次バルブ(23)への押圧が停止されず、ここでは、伸長貫通孔(31)が閉止されるのみならず、これらが受けることとなる過剰な機械的応力によって既述の構成部材のいくつかに損傷も及び得る。しかも、制限ストッパ(30)、または、周波数増幅部(28)中の圧力調節バルブ(36)が設けられていることにより、増幅室(29)は容積を増大させることは出来ず、そのため、この増幅室(29)中の圧力は、特定の圧力レベルに達した際に開くよう構成された圧力制御バルブ(20,36)を設けることにより制限される。
【0095】
図中に記載されている状況は、低周波数で作動する緩衝器について有効であると考えられる。しかしながら、高周波数の状況においては、サイクルの時間はきわめて短く、緩衝器はかなり長い通路を通して流体を送る時間を有しておらず、完了するまで過度に長い時間が必要とされ、従って、流体は増幅室(29)を充填する時間がなく、従って、フローティングピストン(19)が変位される。これが、周波数増幅部が高周波数で作動しない理由である。
【0096】
高周波数伸長サイクルにおける作動方法は、図12において考慮可能である。この状況においては、一次バルブ(23)が減衰負荷をもたらすものである。フローティングピストン(19)は反応時間が足りないためにほとんど変位せず、全減衰効果は一次バルブ(23)によって発揮されると考えることが可能であるが、流体の一部はチャネル(22)を通って増幅室(29)に向かう傾向にある。
【0097】
スペーサ(34)による一次バルブ(23)と二次バルブ(24)との間の隔たり、ならびに、前記バルブ(23,24)の剛性によって、周波数に応じた緩衝器の負荷を調整することが可能となる。
【0098】
図1~5に関して、本発明の緩衝器は、増幅限界を有する周波数増幅部(28)と、一次バルブ(23)と、二次バルブ(24)とを備えていることに基づいていることが理解されると、以下のとおり記載が可能である。
図1は、圧側室(9)中のピストン(10)に取り付けられており、そのため、伸長時に作動が意図された周波数増幅部(28)を含む。
図2は、ピストン(10)の片側にそれぞれ配置され、従って、伸長時および圧縮時に作動が意図された2つの周波数増幅部(28)を含む。
図3は2つの周波数増幅部(28)を含み、一方は圧側室(9)中のピストン(10)に取り付けられており、そのため、伸長時に作動が意図され、他方はバルブサポート(16)に配置されており、圧縮時に作動が意図されている。
図4は、単筒型緩衝器の圧側室(9)中のピストン(10)に取り付けられた周波数増幅部(28)を含み、そのため、図1と同様に、これは伸長時に作動が意図されている。
図5は、2つの周波数増幅部(28)を含み、各々単筒型緩衝器におけるピストン(10)の片側に配置されており、従って、図2と同様、これらは伸長時および圧縮時における作動が意図されている。
【0099】
圧縮作動のために伸側室(8)中のピストン(10)に取り付けられた単一の周波数増幅部(28)を備える緩衝器は、圧側室(9)に配置される場合における記載と同じ理由のために、図示されていない。
【0100】
リザーブ室(7)に直接連通するバルブサポート(16)に圧縮作動のための周波数増幅部(28)が配置されている図3に示されている場合において、動作は、伸側室(8)中のピストン(10)に取り付けられているように周波数増幅部(28)が配置されている場合と同じである。
【0101】
従って、本発明は、カップリングレベルが部分的、且つ、設定可能である、弾性要素(25)に支持された一次バルブ(23)および二次バルブ(24)である2つのバルブ、ならびに、周波数増幅部(28)の残りの構成部材によって実施される液圧-機械的増幅ステップを含む。
【0102】
一次バルブ(23)は、従来の緩衝器に対して現在の技術において用いられるものと同じである。任意選択により、これは、制御された固定流出流を含んでいることが可能であり、ならびに、所望の減衰特性を達成するために事前に設定可能である剛性および変形性を有する。この図において、一次バルブ(23)は、ピストン(10)に接触していると共に制御された流出流のレベルを設定するリリーフディスク(33)に取り付けられて示されている。一次バルブ(23)は、高周波数での減衰特性を定義するためのものである。
【0103】
二次バルブ(24)は、弾性要素(25)と組み合わされて、低周波数での減衰特性を定義するためのものである。弾性要素(25)は、好ましい説明では、構成に優れた汎用性がもたらされるため、皿ばねまたはディスクスプリングとも称される、バネを構成するディスクワッシャの積層体である。第1に、圧縮コイルばね、または、ウェーブスプリングとして公知であるものでは達成できない、負荷、ストロークおよびコンパクトさの間における関係性が提供される。第2に、その剛性は圧縮されるに伴って低減し、これにより、低速での高い減衰レベルと、高速での低い減衰レベルとを組み合わせることが可能となり、本発明は、車両にとってもっとも有利な方法で周波数および速度挙動を同時に調節することが可能となる。これが、周波数調節効果を高めて、乗り心地を向上させる鍵である。
【0104】
一次バルブ(23)と二次バルブ(24)とのカップリングは、フローティングピストン(19)が最大ストロークに達したら二次バルブ(24)に対する一次バルブ(23)の湾曲が可能となるよう、例えば二次バルブ(24)の外径を選択することにより、これら2つのバルブ(23,24)のサイズおよび特性でさらに設定可能である。これは、高速時における減衰の増大を最低限とすることに寄与する。
【0105】
カップリングはまた、スペーサ(34)の厚さまたは直径により設定可能であり、これは、二次バルブ(24)が一次バルブ(23)に接触するために加えられなければならない力を可変要素とする。
【0106】
カップリングはまた、二次バルブ(24)および弾性要素(25)が可撓性である前提で、これらの2つの構成要素の柔軟性を操作することによって設定が可能である。従って、きわめて剛性である二次バルブ(24)ときわめて可撓性である弾性要素(25)とが選択される場合、増幅部(28)から一次バルブ(23)に力を伝達するためには、より大きなフローティングピストン(19)の変位が必要となる。反対の構成では、力の伝達をより小さなフローティングピストン(19)の変位で生じさせることが可能となる。これらの構成の可能性が、システムにより高い汎用性を提供する。
【0107】
カップリングはまた、ガイドブッシング(21)の長さ方向に沿って制限ストッパ(30)を配置することにより設定可能である。制限ストッパ(30)の位置がケース(18)に近いということは、フローティングピストン(19)の最大変位が小さく、従って、弾性要素(25)の最大変形が小さくなり、これにより、二次バルブ(24)が一次バルブ(23)に印加する最大圧力が小さくなることを示す。これにより、低周波数作動で得られる緩衝器の最大負荷を低減することが可能である。
【0108】
増幅室(29)における流体の入口および出口における制限レベルをそれぞれ設定する細い流路(26)および第1の固定開口部(27a)はまた、流路断面の差が小さい場合には、フローティングピストン(19)の上方への移動はゆっくりであり、他方で流路断面の差が大きい場合には、フローティングピストン(19)のより迅速な移動が可能とされるよう、設定可能である。この構成は、緩衝器に適用される作動周波数に応じたシステムの応答の調整を可能とする。
【0109】
最後に、本発明は本明細書中に記載の実施形態によって限定されないことが考慮されなければならない。本明細書に基づいて、当業者により他の構成が実施され得る。従って、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。
【符号の説明】
【0110】
図面中において用いられている参照符号を以下に列挙する。
1 ロッド
2 ロッドピン
3 リテーナー
4 ガイド
5 外筒
6 内筒
7 リザーブ室
8 伸側室
9 圧側室
10 ピストン
11 下カバー
12 ガス
13 流体
14 流体レベル
15 チェックバルブ
16 バルブサポート
17 圧縮バルブ
18 ケース
19 フローティングピストン
20 圧力制限バルブ
21 ガイドブッシング
22 チャネル
23 一次バルブ
24 二次バルブ
25 弾性要素
26 細い流路
27 流出チャネル
27a 第1の固定開口部
28 周波数増幅部
29 増幅室
30 制限ストッパ
31 伸長貫通孔
32 圧縮貫通孔
33 リリーフディスク
34 スペーサ
35 シーリング部材
36 圧力調節バルブ
37 通路
37a 第2の固定開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15a
図15b
図16