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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】縦型スーパーインダクタ・デバイス
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/12 20230101AFI20240126BHJP
   H10N 60/01 20230101ALI20240126BHJP
【FI】
H10N60/12 A
H10N60/01 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021560676
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2020058405
(87)【国際公開番号】W WO2020212105
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】16/387,420
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】サンドバーグ、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】アディガ、ヴィヴェカンナンダ
(72)【発明者】
【氏名】トパログ、ラジット、オヌール
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03296932(EP,A1)
【文献】米国特許第09455391(US,B1)
【文献】米国特許第09324767(US,B1)
【文献】国際公開第2017/217961(WO,A1)
【文献】G. Filatrella et al.,Emission of radiation from square arrays of stacked Josephson junctions,Journal of Applied Physics,2001年08月21日,VOLUME 90, NUMBER 11,pp.5675-5679,DOI: 10.1063/1.1412576
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/01、60/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラクソニウム・キュービットであって、
基板、
前記基板の表面から垂直方向に延び、前記垂直方向に沿って直列に接続された第1のジョセフソン接合および第2のジョセフソン接合を含む第1の垂直積層、
前記基板の前記表面から前記垂直方向に延び、前記第1の垂直積層から離隔され、第3のジョセフソン接合を含む第2の垂直積層、ならびに
前記第1のジョセフソン接合、前記第2のジョセフソン接合、および前記第3のジョセフソン接合が直列に接続されるように、前記第1の垂直積層および前記第2の垂直積層を直列に接続する超電導コネクタ、
を備えたスーパーインダクタと、
前記スーパーインダクタの直列の前記第1のジョセフソン接合、前記第2のジョセフソ
ン接合、および前記第3のジョセフソン接合と並列に接続されるように、超電導ワイヤによって前記スーパーインダクタに接続されたシャント・ジョセフソン接合と、
を備えたフラクソニウム・キュービット。
【請求項2】
前記第1の垂直積層および前記第2の垂直積層がそれぞれ、少なくとも5つのジョセフソン接合を含む、請求項1に記載のフラクソニウム・キュービット。
【請求項3】
前記第1の垂直積層および前記第2の垂直積層が、同じ数のジョセフソン接合を有する、請求項1または2に記載のフラクソニウム・キュービット。
【請求項4】
前記第1の垂直積層および前記第2の垂直積層を接続する前記超電導コネクタが、前記基板の前記表面と平行な方向に延びる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のフラクソニウム・キュービット。
【請求項5】
前記第1の垂直積層と前記第2の垂直積層との間で、前記超電導コネクタの下側に配設された支持材料をさらに備えた、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のフラクソニウム・キュービット。
【請求項6】
前記第1のジョセフソン接合、前記第2のジョセフソン接合、および前記第3のジョセフソン接合がそれぞれ、2つの超電導層間に配設されたトンネル障壁層を含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のフラクソニウム・キュービット。
【請求項7】
前記スーパーインダクタが、
前記垂直方向に延び、前記垂直方向に沿って直列に接続された第4のジョセフソン接合および第5のジョセフソン接合を含む第3の垂直積層と、
前記基板の前記表面から前記垂直方向に延び、第6のジョセフソン接合を含む第4の垂直積層と、
前記第1のジョセフソン接合、前記第2のジョセフソン接合、前記第3のジョセフソン接合、前記第4のジョセフソン接合、前記第5のジョセフソン接合、および前記第6のジョセフソン接合が直列に接続されるように、前記第1の垂直積層および前記第2の垂直積層と直列に前記第3の垂直積層および前記第4の垂直積層を接続する超電導コネクタと、
をさらに備え、
前記スーパーインダクタの直列の前記第1のジョセフソン接合、前記第2のジョセフソン接合、前記第3のジョセフソン接合、前記第4のジョセフソン接合、前記第5のジョセフソン接合、および前記第6のジョセフソン接合と並列に接続されるように、前記シャント・ジョセフソン接合が、前記スーパーインダクタに接続された、請求項1に記載のフラクソニウム・キュービット。
【請求項8】
フラクソニウム・キュービットを製造する方法であって、
基板の表面から垂直方向に延び、前記垂直方向に沿って直列に接続された第1のジョセフソン接合および第2のジョセフソン接合を含む第1の垂直積層を前記基板上に形成することと、
前記基板の前記表面から前記垂直方向に延び、前記第1の垂直積層から離隔され、第3のジョセフソン接合を含む第2の垂直積層を前記基板上に形成することと、
前記第1のジョセフソン接合、前記第2のジョセフソン接合、および前記第3のジョセフソン接合が直列に接続されるように、前記第1の垂直積層および前記第2の垂直積層を直列に接続する超電導コネクタを形成して、スーパーインダクタを得ることと、
前記スーパーインダクタの直列の前記第1のジョセフソン接合、前記第2のジョセフソン接合、および前記第3のジョセフソン接合と並列に接続されるように、シャント・ジョセフソン接合を前記第1の垂直積層および前記第2の垂直積層に接続することと、
を含む、方法。
【請求項9】
量子コンピュータであって、
格納容器を備えた真空下の冷却システムと、
前記格納容器により規定された冷却真空環境内に含まれ、複数のフラクソニウム・キュービットを含むキュービット・チップと、
前記複数のフラクソニウム・キュービットのうちの選択された少なくとも1つに対する電磁エネルギーの移動および電磁エネルギーの受容を行うように前記冷却真空環境内に配置された複数の電磁導波路と、
を備え、
前記複数のフラクソニウム・キュービットがそれぞれ、
基板、
前記基板の表面から垂直方向に延び、前記垂直方向に沿って直列に接続された第1のジョセフソン接合および第2のジョセフソン接合を含む第1の垂直積層、
前記基板の前記表面から前記垂直方向に延び、前記第1の垂直積層から離隔され、第3のジョセフソン接合を含む第2の垂直積層、ならびに
前記第1のジョセフソン接合、前記第2のジョセフソン接合、および前記第3のジョセフソン接合が直列に接続されるように、前記第1の垂直積層および前記第2の垂直積層を直列に接続する超電導コネクタ、
を備えたスーパーインダクタと、
前記スーパーインダクタの直列の前記第1のジョセフソン接合、前記第2のジョセフソン接合、および前記第3のジョセフソン接合と並列に接続されるように、超電導ワイヤによって前記スーパーインダクタに接続されたシャント・ジョセフソン接合と、
を備えた、量子コンピュータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ・デバイスに関し、より詳細には、垂直方向に積層されたジョセフソン接合インダクタを有するスーパーインダクタ・デバイスに関する。
【0002】
一部の超電導量子用途(たとえば、フラクソニウム型量子ビットおよび進行波パラメトリック増幅器)においては、インダクタンスが大きい無損失インダクタが望ましい。このようなインダクタを製造する1つの方法は、ジョセフソン接合のアレイを使用することである。従来、これらのアレイは、平面構成となるように構成されている。ただし、ジョセフソン接合の数が増えると、平面アレイに必要な表面積が非常に大きくなる。
【発明の概要】
【0003】
本発明の一実施形態によれば、フラクソニウム・キュービットは、スーパーインダクタを備える。スーパーインダクタは、基板、および基板の表面から垂直方向に延び、垂直方向に沿って直列に接続された第1のジョセフソン接合および第2のジョセフソン接合を含む第1の垂直積層を備える。スーパーインダクタは、基板の表面から垂直方向に延び、第1の垂直積層から離隔された第2の垂直積層をさらに備える。第2の垂直積層は、第3のジョセフソン接合を含む。スーパーインダクタは、第1のジョセフソン接合、第2のジョセフソン接合、および第3のジョセフソン接合が直列に接続されるように、第1の垂直積層および第2の垂直積層を直列に接続する超電導コネクタを備える。このフラクソニウム・キュービットは、スーパーインダクタの直列の第1のジョセフソン接合、第2のジョセフソン接合、および第3のジョセフソン接合と並列に接続されるように、超電導ワイヤによってスーパーインダクタに接続されたシャント・ジョセフソン接合をさらに備える。
【0004】
本発明の一実施形態によれば、フラクソニウム・キュービットを製造する方法は、基板の表面から垂直方向に延び、垂直方向に沿って直列に接続された第1のジョセフソン接合および第2のジョセフソン接合を含む第1の垂直積層を基板上に形成することを含む。この方法は、基板の表面から垂直方向に延び、第1の垂直積層から離隔された第2の垂直積層を基板上に形成することをさらに含む。第2の垂直積層は、第3のジョセフソン接合を含む。この方法は、第1のジョセフソン接合、第2のジョセフソン接合、および第3のジョセフソン接合が直列に接続されるように、第1の垂直積層および第2の垂直積層を直列に接続する超電導コネクタを形成することと、スーパーインダクタの直列の第1のジョセフソン接合、第2のジョセフソン接合、および第3のジョセフソン接合と並列に接続されるように、シャント・ジョセフソン接合を第1の垂直積層および第2の垂直積層に接続することと、をさらに含む。
【0005】
本発明の一実施形態によれば、スーパーインダクタは、基板と、基板の表面から垂直方向に延び、垂直方向に沿って直列に接続された第1のジョセフソン接合および第2のジョセフソン接合を含む第1の垂直積層とを備える。このスーパーインダクタは、基板の表面から垂直方向に延び、第1の垂直積層から離隔された第2の垂直積層をさらに備える。第2の垂直積層は、第3のジョセフソン接合を含む。このスーパーインダクタは、第1、第2、および第3のジョセフソン接合が直列に接続されるように、第1および第2の垂直積層を直列に接続する超電導コネクタを備える。
【0006】
本発明の一実施形態によれば、量子コンピュータは、格納容器を備えた真空下の冷却システムと、格納容器により画定された冷却真空環境内に含まれるキュービット・チップとを備える。キュービット・チップは、複数のフラクソニウム・キュービットを含む。この量子コンピュータは、複数のフラクソニウム・キュービットのうちの選択された少なくとも1つに対する電磁エネルギーの移動および電磁エネルギーの受容を行うように冷却真空環境内に配置された複数の電磁導波路をさらに備える。複数のフラクソニウム・キュービットはそれぞれ、スーパーインダクタを備える。スーパーインダクタは、基板および基板の表面から垂直方向に延びた第1の垂直積層を備える。第1の垂直積層は、垂直方向に沿って直列に接続された第1のジョセフソン接合および第2のジョセフソン接合を含む。スーパーインダクタは、基板の表面から垂直方向に延び、第1の垂直積層から離隔された第2の垂直積層をさらに備える。第2の垂直積層は、第3のジョセフソン接合を含む。スーパーインダクタは、第1のジョセフソン接合、第2のジョセフソン接合、および第3のジョセフソン接合が直列に接続されるように、第1の垂直積層および第2の垂直積層を直列に接続する超電導コネクタを備える。各フラクソニウム・キュービットは、スーパーインダクタの直列の第1のジョセフソン接合、第2のジョセフソン接合、および第3のジョセフソン接合と並列に接続されるように、超電導ワイヤによってスーパーインダクタに接続されたシャント・ジョセフソン接合をさらに備える。
【0007】
本明細書に開示のデバイスおよび方法によれば、従来のジョセフソン接合アレイよりも大幅に小さな平面の表面積において、多くのジョセフソン接合を直列に接続可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本発明の一実施形態に係る、少なくとも3つのジョセフソン接合を含むスーパーインダクタの模式図である。
図1B】第1の垂直積層に2つのジョセフソン接合を含み、第2の垂直積層に2つのジョセフソン接合を含むスーパーインダクタの模式図である。
図2】支持材料を具備するスーパーインダクタの模式図である。
図3A】少なくとも5つのジョセフソン接合をそれぞれ含む第1の垂直積層および第2の垂直積層を有するスーパーインダクタの模式図である。
図3B】4つの垂直積層を具備するスーパーインダクタの模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係る、フラクソニウム・キュービットの模式図である。
図5】本発明の一実施形態に係る、フラクソニウム・キュービットを製造する方法を示したフローチャートである。
図6】スーパーインダクタを形成するプロセスの模式図である。
図7】スーパーインダクタを形成するプロセスの模式図である。
図8】スーパーインダクタを形成するプロセスの模式図である。
図9】スーパーインダクタを形成するプロセスの模式図である。
図10】スーパーインダクタを形成するプロセスの模式図である。
図11】スーパーインダクタを形成するプロセスの模式図である。
図12】スーパーインダクタを形成するプロセスの模式図である。
図13】スーパーインダクタを形成するプロセスの模式図である。
図14】スーパーインダクタを形成するプロセスの模式図である。
図15】スーパーインダクタを形成するプロセスの模式図である。
図16】スーパーインダクタを形成するプロセスの模式図である。
図17】スーパーインダクタを形成するプロセスの模式図である。
図18】スーパーインダクタを形成するプロセスの模式図である。
図19】スーパーインダクタを形成するプロセスの模式図である。
図20】スーパーインダクタを形成するプロセスの模式図である。
図21】本発明の一実施形態に係る、量子コンピュータの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1Aは、本発明の一実施形態に係る、スーパーインダクタ100の模式図である。スーパーインダクタ100は、基板102および基板102の表面106から垂直方向Dに延びた第1の垂直積層104を具備する。第1の垂直積層104は、垂直方向Dに沿って直列に接続された第1のジョセフソン接合108および第2のジョセフソン接合110を含む。スーパーインダクタ100は、基板102の表面106から垂直方向Dに延びた第2の垂直積層112を具備する。第2の垂直積層112は、第3のジョセフソン接合114を含む。第2の垂直積層112は、第1の垂直積層104から離隔されている。
【0010】
スーパーインダクタ100は、第1のジョセフソン接合108、第2のジョセフソン接合110、および第3のジョセフソン接合114が直列に接続されるように、第1および第2の垂直積層104、112を直列に接続する超電導コネクタ118を具備する。
【0011】
いくつかの実施形態において、この上部接続は、2つの垂直積層をシャントする必要がない。両垂直積層は、たとえばトンネル障壁終端を有し得るが、トンネル障壁に限定されず、また、上部からシャント可能である。これにより、2つのインダクタがさらに直列で追加されることになる。本実施形態は、製造の柔軟性をいくらか高め得る。
【0012】
図1Bは、本発明の一実施形態に係る、スーパーインダクタ132の模式図である。図1Aに示す特徴のほか、スーパーインダクタ132の第2の垂直積層112は、垂直方向Dに沿って第3のジョセフソン接合114と直列に接続された第4のジョセフソン接合116を含む。超電導コネクタ118は、第1のジョセフソン接合108、第2のジョセフソン接合110、第3のジョセフソン接合114、および第4のジョセフソン接合116が直列に接続されるように、第1および第2の垂直積層104、112を直列に接続する。
【0013】
垂直方向Dは、基板102の表面106と実質的に垂直であってもよい。垂直方向Dは、基板102の表面106と厳密に垂直であってもよいし、基板102の表面106と略垂直であってもよい。本発明の一実施形態によれば、たとえば図1Bに示すように、第1の垂直積層104および第2の垂直積層112は、同じ数のジョセフソン接合を有する。本発明の一実施形態によれば、第1および第2の垂直積層104、112を接続する超電導コネクタ118は、基板102の表面106と実質的に平行な方向に延びている。本発明の一実施形態によれば、第1、第2、第3、および第4のジョセフソン接合はそれぞれ、2つの超電導層間に配設されたトンネル障壁層を具備する。たとえば、図1Aにおいて、第2のジョセフソン接合110は、2つの超電導層122、124間に配設されたトンネル障壁層120を具備する。第3のジョセフソン接合114は、2つの超電導層128、130間に配設されたトンネル障壁層126を具備する。各トンネル障壁層の高さは、たとえば約1nmであってもよい。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態に係る、スーパーインダクタ200の模式図である。スーパーインダクタ200は、図1Aに示すスーパーインダクタ100の特徴を含むとともに、第1および第2の垂直積層204、206間で、超電導コネクタ208の下側に配設された支持材料202をさらに具備する。支持材料202は、誘電体材料であってもよい。たとえば、支持材料202は、酸化ケイ素またはスピンオン・ガラスであってもよい。支持材料202は、たとえばエッチングによって容易に除去可能な誘電体材料であってもよい。
【0015】
垂直積層に少なくとも2つのジョセフソン接合を形成することにより、これら2つのジョセフソン接合が覆う基板の表面積は、横並びで形成される場合よりも小さくなる。さらに、積層当たりのジョセフソン接合の数をさらに増やす場合でも、表面積が犠牲にならない。たとえば、図3Aは、少なくとも5つのジョセフソン接合をそれぞれ含む第1の垂直積層302および第2の垂直積層304を有するスーパーインダクタ300の模式図である。第1の垂直積層302は、直列に接続された5つのジョセフソン接合306、308、310、312、314を含む。第2の垂直積層304は、直列に接続された5つのジョセフソン接合316、318、320、322、324を含む。超電導コネクタ326は、第1の垂直積層302中の5つのジョセフソン接合306、308、310、312、314および第2の垂直積層304中の5つのジョセフソン接合316、318、320、322、324が直列に接続されるように、第1および第2の垂直積層302、304を直列に接続する。
【0016】
図1Aおよび図1Bとの比較として図3Aに示すように、垂直積層当たり3つまたは4つのジョセフソン接合の追加によっても、基板328の表面上の第1および第2の垂直積層302、304の表面積は増加しない。本発明の一実施形態によれば、各垂直積層の表面積は、約1μmである。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、第1の垂直積層および第2の垂直積層はそれぞれ、少なくとも20個、50個、100個、または200個のジョセフソン接合を含む。第1および第2の垂直積層が接続されている場合、スーパーインダクタは、直列に接続された40個、100個、200個、または400個のジョセフソン接合を含む。ここに記載するジョセフソン接合の数は、非限定的な例として提供している。第1および第2の垂直積層は、異なる数のジョセフソン接合を含むことも可能である。積層当たりのジョセフソン接合の数は、スーパーインダクタの所望のインダクタンスおよび個々のジョセフソン接合の形成に用いられる材料によって決まり得る。個々のジョセフソン接合のインダクタンスが大きくなると、所定の合計インダクタンスを満たすのに必要なジョセフソン接合の数が減る。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、スーパーインダクタは、3つ以上の垂直積層を具備する。図3Bは、4つの垂直積層を具備するスーパーインダクタ330の模式図である。3つのジョセフソン接合336、338、340を含む第1および第2の垂直積層332、334のほか、スーパーインダクタ330は、垂直方向Dに延びた第3の垂直積層342を具備する。第3の垂直積層は、垂直方向Dに沿って直列に接続された第4のジョセフソン接合344および第5のジョセフソン接合346を含む。スーパーインダクタ330は、基板の表面から垂直方向Dに延びた第4の垂直積層348を具備する。第4の垂直積層348は、第6のジョセフソン接合350を含む。スーパーインダクタ330は、第1のジョセフソン接合336、第2のジョセフソン接合338、第3のジョセフソン接合340、第4のジョセフソン接合344、第5のジョセフソン接合346、および第6のジョセフソン接合350が直列に接続されるように、第3および第4の垂直積層342、348を第1および第2の垂直積層332、334と直列に接続する超電導コネクタ352、354を具備する。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、スーパーインダクタがジョセフソン接合と並列に接続されて、フラクソニウム・キュービットを形成する。図4は、本発明の一実施形態に係る、フラクソニウム・キュービット400の模式図である。フラクソニウム・キュービット400は、スーパーインダクタ402を具備する。スーパーインダクタ402は、基板404および基板404の表面408から垂直方向Dに延びた第1の垂直積層406を具備する。第1の垂直積層406は、垂直方向に沿って直列に接続された第1のジョセフソン接合410および第2のジョセフソン接合412を含む。スーパーインダクタ402は、基板404の表面408から垂直方向Dに延びた第2の垂直積層414を具備する。第2の垂直積層414は、第3のジョセフソン接合416を含む。第2の垂直積層414は、第1の垂直積層406から離隔されている。スーパーインダクタ402は、第1のジョセフソン接合410、第2のジョセフソン接合412、および第3のジョセフソン接合416が直列に接続されるように、第1および第2の垂直積層406、414を直列に接続する超電導コネクタ420をさらに具備する。図4は6つのジョセフソン接合を含む一例であるが、本発明の一般概念は、このような特定の数に限定されない。他の実施形態においては、合計で7つ以上のジョセフソン接合が存在することも可能であるし、合計で5つ以下のジョセフソン接合が存在することも可能である。
【0020】
スーパーインダクタ402のほか、フラクソニウム・キュービット400は、スーパーインダクタ402の直列の第1のジョセフソン接合410、第2のジョセフソン接合412、および第3のジョセフソン接合416と並列に接続されるように、超電導ワイヤ424、426によってスーパーインダクタ402に接続されたシャント・ジョセフソン接合422を具備する。フラクソニウム・キュービット400は、図3Bに模式的に示したスーパーインダクタ330のように、3つ以上の垂直積層を有するスーパーインダクタを具備していてもよい。
【0021】
図5は、本発明の一実施形態に係る、フラクソニウム・キュービットを製造する方法500を示したフローチャートである。なお、図5のステップの順序は、何ら限定的なものではない。たとえば、いくつかの実施形態においては、図5の最後に現れるステップを最初のステップにすることも可能である。方法500は、基板の表面から垂直方向に延びた第1の垂直積層を基板上に形成すること502を含む。第1の垂直積層は、垂直方向に沿って直列に接続された第1のジョセフソン接合および第2のジョセフソン接合を含む。方法500は、基板の表面から垂直方向に延びた第2の垂直積層を基板上に形成すること504をさらに含む。第2の垂直積層は、第3のジョセフソン接合を含む。第2の垂直積層は、第1の垂直積層から離隔されている。方法500は、第1、第2、および第3のジョセフソン接合が直列に接続されるように、第1および第2の垂直積層を直列に接続する超電導コネクタを形成すること506をさらに含む。方法500は、スーパーインダクタの直列の第1、第2、および第3のジョセフソン接合と並列に接続されるように、シャント・ジョセフソン接合を第1および第2の垂直積層に接続すること508をさらに含む。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、形成するプロセスは、全体として除去ステップを伴う付加プロセスである。図6図20は、本発明の一実施形態に係る、スーパーインダクタの形成に使用可能な付加プロセスの模式図である。図6図20においては、同様の参照番号が同じ特徴を表す(たとえば、図6の参照番号600および図7の700はともに、基板を表す)。
【0023】
図6に示すように、スーパーインダクタを製造するため、超電導材料が基板600上に形成される。第1の部分602および第1の部分602から離隔された第2の部分604を有するように、マスク・シャドー蒸着技術の使用によって、超電導材料を適用するようにしてもよい。本発明の一実施形態によれば、第1の部分602は、第2の部分604から約1μmだけ離隔されている。基板600は、たとえばシリコン基板であってもよいが、本発明の実施形態はシリコン基板に限定されない。超電導材料は、たとえばニオブであってもよいし、量子コンピューティング用途に適した如何なる超電導材料であってもよい。
【0024】
図7に示すように、超電導材料の第1の部分702および第2の部分704が形成されたら、第1の部分702、第2の部分704、および基板700上にレジスト706をスピン塗布して焼成することができる。レジストは、たとえば紫外線フォトレジストであってもよいし、電子ビーム・レジストであってもよい。その後、図8に示すように、レジストのパターニングによって、2つの孔808、809を形成することができる。
【0025】
図8に示すパターニングの追加または代替として、レジストのイオン・ミリングにより、逆プロファイルを形成することも可能である。図9は、イオン・ミリングにより形成された孔908、909を示している。孔908、909は、レジスト906の上面よりも、超電導材料の第1の部分902および第2の部分904の上面において広くなっている。逆プロファイルによって、製造プロセスの後で行うレジストの除去が容易化され得る。
【0026】
図10は、トンネル障壁層1010の堆積を示している。トンネル障壁層1010は、超電導材料の第1の部分1002および第2の部分1004の上に形成されている。トンネル障壁層1010は、誘電体材料であってもよい。たとえば、トンネル障壁層1010は、酸化アルミニウム等の酸化物であってもよい。あるいは、トンネル障壁層1010は、材料の堆積によって形成する代わりに、超電導材料の第1の部分902および第2の部分904の上面を酸素に曝露して酸化物を形成することにより、形成されるようになっていてもよい。本発明の一実施形態によれば、トンネル障壁層1010の厚さは、約0.5nm~1.5nmである。本発明の一実施形態によれば、トンネル障壁層1010の厚さは、約1nmである。
【0027】
図11に示すように、トンネル障壁層1110が形成されたら、超電導材料の層1112がトンネル障壁層上に形成される。第1の部分1102、トンネル障壁層1110、および超電導材料1112の組み合わせが第1のジョセフソン接合を構成する。同様に、第2の部分1104、トンネル障壁層1110、および超電導材料1112の組み合わせが第2のジョセフソン接合を構成する。本発明の一実施形態に係る超電導材料1112の厚さは、約30~35nmであってもよい。本発明の一実施形態によれば、レジスト1006の厚さは、約1μmであるため、トンネル障壁および超電導材料の多くの交互層を孔1108、1109の内部に形成可能である。本発明の一実施形態によれば、レジスト1006の厚さは、1μmよりも大きい。
【0028】
図12は、たとえば堆積または酸素曝露による付加的なトンネル障壁層1214および付加的な超電導材料の層1216の形成の結果を示している。超電導材料1212、トンネル障壁層1214、および超電導材料1216の組み合わせが各垂直積層における付加的なジョセフソン接合を構成する。付加的なジョセフソン接合は、トンネル障壁および超電導材料の層を交互に形成することにより追加されるようになっていてもよい。
【0029】
このプロセスは、レジストのリフトオフが続き、その結果として、図13に示す構造が得られる。この構造は、2つの垂直積層1318、1320を含む。これら垂直積層の少なくとも一方が2つ以上のジョセフソン接合を含む。いくつかの実施形態によれば、各垂直積層は、少なくとも5つ、20個、50個、または100個のジョセフソン接合を含む。第1および第2の垂直積層は、同じ数のジョセフソン接合を含んでいてもよい。あるいは、第1および第2の垂直積層は、異なる数のジョセフソン接合を含んでいてもよい。
【0030】
レジストが除去されると、図14に示すように、新たなレジスト層1422が堆積され、焼成される。その後、図15に示すように、パターニングによって、2つの垂直積層1518、1520間の基板1500を曝露させる。その後、このプロセスは、図16に示すように、2つの垂直積層1618、1620間に酸化物または犠牲材料1624を堆積させることを含む。酸化物または犠牲材料1624は、2つの垂直積層1618、1620間のトンネリングを防止するのに十分な幅である。酸化物または犠牲材料1624は、後で形成される超電導コネクタの支持材料として作用する。酸化物または犠牲材料1624が堆積されたら、レジスト1622を除去可能である。結果としての構造を図17に示す。
【0031】
その後、このプロセスは、2つの垂直積層1818、1820を直列に接続する超電導コネクタを形成することを含む。超電導コネクタの堆積の前に、レジスト1826の堆積、焼成、およびその後のエッチングによって、図18に示すように、酸化物または犠牲材料1824および2つの垂直積層1818、1820の最上超電導層を曝露させる孔1828を形成する。
【0032】
図19に示すように、レジスト1926中の孔1928に超電導材料の層1930が堆積される。超電導材料1930は、2方向蒸着により堆積されることができるが、本発明の実施形態は、超電導材料1930の2方向蒸着に限定されない。超電導材料1930は、2つの垂直積層1918、1920の最上超電導層に接触する。さらに、超電導材料1930は、第1の垂直積層1918のジョセフソン接合を第2の垂直積層1920のジョセフソン接合と直列に接続する。本発明の一実施形態によれば、超電導材料1930は、基板1900の表面と実質的に平行な方向に延びている。
【0033】
このプロセスは、レジスト1926を除去することをさらに含み、その結果として、図20に示すスーパーインダクタ2032が得られる。図20のスーパーインダクタ2032は酸化物または犠牲材料2024を含むが、このプロセスは、酸化物または犠牲材料2024をエッチング除去することをさらに含んでいてもよく、その結果として、図1Aに示すスーパーインダクタ100に類似のスーパーインダクタが得られ、超電導材料の層2030が2つの垂直積層2018、2020のみで支持されている。
【0034】
図21は、本発明の一実施形態に係る、量子コンピュータ2100の模式図である。量子コンピュータ2100は、格納容器2102を含む真空下の冷却システムを具備する。また、量子コンピュータ2100は、格納容器2102により規定された冷却真空環境内に含まれるキュービット・チップ2104を具備する。キュービット・チップ2104は、複数のフラクソニウム・キュービット2106、2108、2110を含む。フラクソニウム・キュービット2106、2108、2110はそれぞれ、別個の基板を具備していてもよいし、キュービット・チップ2104上に形成され、そのキュービット・チップ2104が共有基板として作用するようになっていてもよい。また、量子コンピュータ2100は、複数のフラクソニウム・キュービット2106、2108、2110のうちの選択された少なくとも1つに対する電磁エネルギーの移動および電磁エネルギーの受容を行うように冷却真空環境内に配置された複数の電磁導波路2112、2114を具備する。図21に示すように、電磁導波路2112、2114は、キュービット・チップ2104上に形成されていてもよい。
【0035】
フラクソニウム・キュービット2106、2108、2110はそれぞれ、本明細書に記載の縦型構造を有していてもよい。フラクソニウム・キュービット2106、2108、2110の縦型構造は、従来のアレイよりも設置面積を大幅に縮小する。この製造は、従来の超電導回路技術と両立する。垂直積層は、従来の方向性蒸着接合よりも優れた品質および低い損失を有し得るエピタキシャル積層に基づいて、アレイを製造可能とする。
【0036】
以上、例示を目的として本発明の種々の実施形態を説明したが、これらは、何ら網羅的でもなければ、開示の実施形態に限定されることを意図したものでもない。当業者には、添付の特許請求の範囲に規定されるような本発明の範囲から逸脱することなく、多くの改良および変形が明らかとなるであろう。本明細書に使用の専門用語は、実施形態の原理、実際の適用、もしくは市場に見られる技術の技術的改良の最良の説明のため、または、本明細書に開示の実施形態の当業他者による理解を可能にするために選定したものである。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21