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特許7427027容量性微細加工超音波トランスデューサ(CMUT)デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】容量性微細加工超音波トランスデューサ(CMUT)デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20240126BHJP
   H04R 19/00 20060101ALI20240126BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
A61B8/00
H04R19/00 330
H04R1/40 330
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021564446
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 EP2020061742
(87)【国際公開番号】W WO2020221733
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】19171719.8
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ファン レンズ アントニア コルネリア
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-157320(JP,A)
【文献】特表2017-508315(JP,A)
【文献】国際公開第2019/030045(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
H04R 19/00
H04R 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波トランスデューサデバイスのセットであって、各超音波トランスデューサデバイスは、第1及び第2の端子を各々が有する1つ又は複数の容量性微細加工超音波トランスデューサセルを備える、超音波トランスデューサデバイスのセットと、
前記超音波トランスデューサデバイスのセットを動作させるための駆動回路であって、前記駆動回路は、前記超音波トランスデューサデバイスのセットのうちの少なくとも1つに関連付けられた駆動回路ポートにおいてAC駆動信号を送達するとともに反射された信号を受信し、前記駆動回路はASICを備える、駆動回路と、
前記駆動回路と前記超音波トランスデューサデバイスのセットとの間にある中間回路であって、前記中間回路は、結合回路のアレイを備え、各結合回路は、前記駆動回路ポートと、前記超音波トランスデューサデバイスのセットのうちの関連付けられた前記少なくとも1つとを結合し、各結合回路は、バイアス電圧端子と前記第1の端子との間に接続されたバッファ要素と、前記第1の端子と前記駆動回路ポートとの間に直列に接続されたキャパシタとを備え、前記中間回路は受動集積技術回路を備える、中間回路と、を備え、
各駆動回路ポートは、各結合回路を介して単一の超音波トランスデューサデバイスに接続する、超音波システム。
【請求項2】
前記バッファ要素は、レジスタを備える、請求項1に記載の超音波システム。
【請求項3】
前記第2の端子は全て一緒に接続され、前記駆動回路ポートは単一の駆動回路端子を備える、請求項1に記載の超音波システム。
【請求項4】
前記駆動回路は、前記単一の駆動回路端子に接続された送信器と受信器とを備える、請求項3に記載の超音波システム。
【請求項5】
前記駆動回路ポートは、第1及び第2の駆動回路端子を備え、前記駆動回路は、前記第1及び第2の駆動回路端子に接続された差動送信器と、前記第1及び第2の駆動回路端子に接続された差動受信器とを備える、請求項1に記載の超音波システム。
【請求項6】
前記駆動回路ポートは、第1及び第2の駆動回路端子を備え、前記駆動回路は、前記第1の駆動回路端子に接続された送信器と、前記第2の駆動回路端子に接続された受信器とを備える、請求項1に記載の超音波システム。
【請求項7】
前記超音波トランスデューサデバイスのセットは、トランスデューサデバイスの1Dアレイである、請求項1に記載の超音波システム。
【請求項8】
前記中間回路は、前記超音波トランスデューサデバイスのセットに物理的に近接して位置する、請求項1に記載の超音波システム。
【請求項9】
前記超音波トランスデューサデバイスのセットの各々は、崩壊モードにおいて動作する容量性微細加工超音波トランスデューサ(CMUT)セルを備える、請求項1に記載の超音波システム。
【請求項10】
前記超音波トランスデューサデバイスのセットの各々は、容量性微細加工超音波トランスデューサ(CMUT)セルを備え、各CMUTセルは、
基板と、
前記CMUTセルの中央軸の周りに形成された前記基板に接続された第1の電極と、
前記第1の電極から少なくとも部分的に空間的に離間される、可撓性メンブレンと、
前記可撓性メンブレンに接続された第2の電極であって、前記第2の電極は前記第1の電極と同心である、第2の電極と
を備える、請求項1に記載の超音波システム。
【請求項11】
超音波トランスデューサデバイスの行及び列のアレイを備える超音波トランスデューサデバイスのセットであって、前記超音波トランスデューサデバイスのセットの各々は、第1及び第2の端子を各々が有する1つ又は複数の容量性微細加工超音波トランスデューサセルを備える、超音波トランスデューサデバイスのセットと、
前記超音波トランスデューサデバイスのセットを動作させるための第1の駆動回路であって、前記第1の駆動回路は、前記超音波トランスデューサデバイスのセットのうちの少なくとも1つに関連付けられた第1の駆動回路ポートにおいてAC駆動信号を送達するとともに反射された信号を受信し、前記第1の駆動回路はASICを備える、第1の駆動回路と、
前記第1の駆動回路と前記超音波トランスデューサデバイスのセットとの間にある第1の中間回路であって、前記第1の中間回路は、結合回路のアレイを備え、各結合回路は、前記第1の駆動回路ポートと、前記超音波トランスデューサデバイスのセットのうちの関連付けられた前記少なくとも1つとを結合し、バイアス電圧端子と前記第1の端子との間に接続された第1のバッファ要素と、前記第1の端子と前記第1の駆動回路ポートとの間に直列に接続されたキャパシタとを備え、前記第1の中間回路は、受動集積技術回路を備え、前記第1の駆動回路の各駆動回路ポートは、前記第1の中間回路を通じて超音波トランスデューサデバイスの行の前記第1の端子に接続する、第1の中間回路と、
前記超音波トランスデューサデバイスのセットのうちの少なくとも1つに関連付けられた第2の駆動回路ポートにおいてAC駆動信号を送達するとともに反射された信号を受信する第2の駆動回路であって、前記第2の駆動回路はASICを備える、第2の駆動回路と、
前記第2の駆動回路と前記超音波トランスデューサデバイスのセットとの間にある第2の中間回路であって、前記第2の中間回路は、結合回路のアレイを備え、各結合回路は、前記第2の駆動回路ポートと、関連付けられた前記超音波トランスデューサデバイスのセットのうちの前記少なくとも1つとの間にあり、バイアス電圧端子と前記第2の端子との間に接続された第2のバッファ要素と、前記第2の端子と前記第2の駆動回路ポートとの間に直列に接続されたキャパシタとを備える、第2の中間回路と
を備え、
前記第2の駆動回路の各駆動回路ポートは、前記第2の中間回路を通じて超音波トランスデューサデバイスの列の前記第2の端子に接続し、前記第2の中間回路は、受動集積技術回路を備える、超音波システム。
【請求項12】
前記第2の中間回路の各結合回路の前記第2のバッファ要素も、レジスタを備える、請求項11に記載の超音波システム。
【請求項13】
前記第1及び第2のバッファ要素の各々は、レジスタを備える、請求項11に記載の超音波システム。
【請求項14】
前記第2の端子は全て一緒に接続され、前記第1及び第2の駆動回路ポートは各々、単一の駆動回路端子を備える、請求項11に記載の超音波システム。
【請求項15】
前記第1の駆動回路は、前記単一の駆動回路端子に接続された送信器と受信器とを備える、請求項14に記載の超音波システム。
【請求項16】
前記第1の駆動回路は、第1及び第2の駆動回路端子を備え、前記第1の駆動回路は、前記第1及び第2の駆動回路端子に接続された差動送信器と、前記第1及び第2の駆動回路端子に接続された差動受信器とを備える、請求項11に記載の超音波システム。
【請求項17】
前記第1の駆動回路は、第1及び第2の駆動回路端子を備え、前記第1の駆動回路は、前記第1の駆動回路端子に接続された送信器と、前記第2の駆動回路端子に接続された受信器とを備える、請求項11に記載の超音波システム。
【請求項18】
前記超音波トランスデューサデバイスのセットは、トランスデューサデバイスの1Dアレイであり、各駆動回路ポートは、単一の超音波トランスデューサデバイスに接続する、請求項11に記載の超音波システム。
【請求項19】
前記第1及び第2の中間回路は、前記超音波トランスデューサデバイスのセットに物理的に近接して位置する、請求項11に記載の超音波システム。
【請求項20】
前記超音波トランスデューサデバイスのセットの各々は、崩壊モードにおいて動作する容量性微細加工超音波トランスデューサ(CMUT)セルを備える、請求項11に記載の超音波システム。
【請求項21】
前記超音波トランスデューサデバイスのセットの各々は、容量性微細加工超音波トランスデューサ(CMUT)セルを備え、各CMUTセルは、
基板と、
前記CMUTセルの中央軸の周りに形成された前記基板に接続された第1の電極と、
前記第1の電極から少なくとも部分的に空間的に離間される、可撓性メンブレンと、
前記可撓性メンブレンに接続された第2の電極であって、前記第2の電極は前記第1の電極と同心である、第2の電極と
を備える、請求項11に記載の超音波システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば医療診断超音波撮像のための、容量性微細加工超音波トランスデューサ(CMUT)を使用する超音波トランスデューサプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用撮像のために使用される超音波トランスデューサは、高品質の診断用画像を生むことにつながる多くの特性を有する。
【0003】
従来、圧電性材料が超音波トランスデューサのために使用されてきた。例としては、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)材料があり、選択される材料としてPZTがとりわけ一般的である。単結晶の圧電性材料は、高性能のトランスデューサのための高い圧電性及び電気機械的結合定数を達成するために使用される。
【0004】
近年の開発は、医療用超音波トランスデューサは半導体プロセスによってバッチ製造され得るという見通しにつながっている。望ましくは、これらのプロセスは、CMOSプロセスなど、特に3D超音波に関して超音波プローブによって必要とされる特定用途向け集積回路(ASIC)の生産に使用されるものと同一のものであるべきである。これらの開発は、微細加工超音波トランスデューサすなわちMUTを生み出した。MUTトランスデューサは、電極を有する微小なダイアフラム状のデバイスであり、受信された超音波信号の音響振動を変調信号に変換する。
【0005】
2つのこのようなトランスデューサのタイプとして、圧電性微細加工超音波トランスデューサ(PMUT)と呼ばれる、メンブレンの上の圧電性材料を利用するものと、容量性微細加工超音波トランスデューサ(CMUT)と呼ばれる、導電メンブレンと別の電極との間の容量効果を利用するものとがある。
【0006】
特には、CMUTトランスデューサは、広範な帯域幅にわたって機能可能であり、高解像度及び高感度の撮像を可能とし、超音波周波数において大きな被写界深度の音響信号が受信され得るように大きな圧力出力を生む。
【0007】
送信のために、デバイスのダイアフラムを振動/運動させ、それによって超音波を送信するために、電極に印加された容量電荷が変調される。これらのダイアフラムは半導体プロセスによって製造されるので、デバイスは、概して、10~500マイクロメートルの範囲の寸法を有し得、ダイアフラムの寸法は、例えば、ダイアフラムの所望の共鳴周波数(範囲)にダイアフラムの寸法が合致し、個々のダイアフラムの間に数マイクロメートル未満の空間を有するように選択される。多くのこのような個々のCMUTセルが一緒に接続され得、単一のトランスデューサ要素として調和して動作し得る。例えば、4つから16個のCMUTセルが一緒に結合されて単一のトランスデューサ要素として調和して機能し得る。例として、典型的な2Dトランスデューサアレイは、2000個から10000個のCMUTトランスデューサ要素又はセルを有し得る。
【0008】
これらのセルは非常に小さいので、各MUTセルは小量の音響エネルギーしか生まず、又は少量の音響エネルギーに反応する。MUTデバイスの音響効率を増加させるために2つの手法が一般的に使用される。
【0009】
1つは、DCバイアス電圧によってセルをバイアスすることであり、CMUTの場合、これは、振動するメンブレンを対向する電極に極めて近接させ、デバイスの感度を増加させる。これは、動作の崩壊モードと呼ばれる。このようにして、CMUTセルによって生み出される音響パワー(出力圧力)が最適化される。セルには、設定周波数を有する刺激信号が提供され、これは設定周波数においてダイアフラム又は可撓性メンブレンを共鳴させる。メンブレンが崩壊するDC電圧は崩壊電圧Vと呼ばれる。DCバイアス電圧は、典型的には、全てのセルへの共通信号である。
【0010】
別の手法は、互いに非常に接近したセルのアレイを形成して、基板上でのセルの密度を最大化し、単一のトランスデューサ要素として調和して動作する多数のセルを提供することである。セルを高密度で作成することは、それらのグレーティングローブ特性も向上させ、結果的な超音波画像におけるクラッタを減少させる。
【0011】
こうして、トランスデューサアレイ又は個々の要素でさえもが、DCバイアス電圧によってバイアスされる数百個から数千個の個別のMUTセルを備え得る。上述されたように、このようなアーキテクチャは数多くの性能面での利点を有するが、単一のMUTセルの欠陥が膨大な数のセルを動作不能にしてしまうという問題も生じる。高DCバイアス電圧による対向する電極へのメンブレンの崩壊によって、1つのセルに欠陥が起こることがある。これは、欠陥の生じたセルを短絡させるだけでなく、共通してバイアスされる数百個から数千個の他のセルも全て短絡させる。1つのセルの欠陥は、それ自体では感知できるほどの影響をトランスデューサプローブの性能に及ぼさないが、多数の他のセルの短絡は、全体的なトランスデューサプローブを動作不能にしてしまうことがある。
【0012】
この問題を防止するための1つの手法が、米国特許第7,293,462号(Leeら)において説明されている。Leeらの手法は、相互接続されたMUTセルの行又は列の端部に、行又は列における1つのセルが短絡すると開くヒューズを形成することである。これは、トランスデューサの動作からセルの行又は列を除去し、トランスデューサにおける他のセルが機能を維持することを可能とする。
【0013】
しかしながら、この手法にはいくつかの欠点がある。1つは、相互接続されたセルの各行又は列は別個にバイアスされなければならず、プローブにおけるセルの全てにバイアス電圧を提供する複雑さを増加させてしまうことである。別の欠点は、ヒューズがMUT基板上で比較的大きな面積を占有してしまい、MUTセルが使用できる基板上の面積を減少させ、従って、トランスデューサの感度を低下させることである。更に別の欠点は、複数のセルが、つまり欠陥の生じたセルと同様にそれが接続された他のセルも、プローブにおける動作から除去されることであり、これも超音波プローブの性能を低下させる。
【0014】
WO2015/086413は、一体化されたRCフィルタ回路を有するCMUTセルを開示している。米国特許出願第2018/164418号は、バイアスティ回路に各々が関連付けられた超音波トランスデューサの2Dアレイを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
欠陥の生じたセルが存在するときであっても、他の完全に機能するセルの動作を維持可能とすることによって、システムの動作を維持できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は特許請求の範囲によって定められる。
【0017】
本発明の態様に従った実施例によると、超音波システムが提供され、超音波システムは、
超音波トランスデューサデバイスのセットであって、各超音波トランスデューサデバイスは、第1及び第2の端子を各々が有する1つ又は複数の容量性微細加工超音波トランスデューサセルを備える、超音波トランスデューサデバイスのセットと;
超音波トランスデューサデバイスを動作させ、超音波トランスデューサデバイスのうちの少なくとも1つに関連付けられた駆動回路ポートにおいてAC駆動信号を送達するとともに反射された信号を受信するための駆動回路であって、駆動回路はASICを備える、駆動回路と;
駆動回路と超音波トランスデューサデバイスのセットとの間にある中間回路であって、中間回路は、結合回路のアレイを備え、各結合回路は、駆動回路ポートと関連付けられた少なくとも1つの超音波トランスデューサデバイスとの間にあり、バイアス電圧端子と第1の端子との間に接続されたバッファ要素と、第1の端子と駆動回路ポートとの間に直列に接続されたキャパシタとを備え、中間回路は、例えば、受動集積技術回路を備える、中間回路と
を備える。
【0018】
このシステムは、追加的なシステムコンポーネント、すなわち中間回路を使用し、これは、CMUTトランスデューサ要素のセットと駆動/感知電子機器との間の接続リンクとして働く。バッファ要素は、CMUTセルドラム短絡の場合に、CMUTセルのバイアスノード(ここからDCバイアス電圧がCMUTセルに供給される)と対向電極との間の低インピーダンス短絡を防止する。このようにして、個々のセルの欠陥が全体的なCMUTアレイの故障を引き起こすことも、駆動電子機器の故障を引き起こすこともない。バイアス電圧端子は、例えば、共通のバイアス電圧供給装置に全て一緒に接続される。
【0019】
第1の端子に直列なキャパシタとは、中間回路が、CMUTセルの間のクロストークの低減を可能とすることを意味する。このようなクロストークは、例えば、CMUTバイアス電圧の安定化のために共通のキャパシタが使用されているときに起こる可能性がある。直列キャパシタのセットを設けることによって、単一の共通のキャパシタは、回路アレイにおける多くの、より小さなキャパシタによって置き換えられる。
【0020】
受動集積技術回路としての中間回路の実施態様、すなわち、受動集積されたデバイス技術を使用した実施態様とは、中間回路の生産が最適化され、高い性能を有する数百個のコンパクトな受動コンポーネントの実現のために受動集積技術が最適化されることを意味する。
【0021】
中間回路は、以下において更に議論されるように、CMUTアレイを駆動及び感知する新たなやり方も可能とする。
【0022】
バッファ要素は、例えば、レジスタを備える。故に、これはバイアス電圧に実インピーダンスを提供する。
【0023】
レジスタ-キャパシタのペアは、Tネットワークを定め、故に、中間回路はこのようなバイアスTネットワークのアレイを備える。
【0024】
実施例の1つのセットにおいて、第2の端子は全て一緒に接続され、駆動回路ポートは単一の駆動回路端子を備える。このことは、単純な接続スキームを提供し、ただ1つのCMUTセル端子だけが駆動回路への接続を必要とする。故に、駆動回路は単一の駆動回路端子に接続される送信器及び受信器を備える。
【0025】
実施例の別のセットにおいて、駆動回路ポートは第1及び第2の駆動回路端子を備える。このことは、第1及び第2のデバイス端子への別個の接続を可能とする。
【0026】
2つの駆動回路端子を有する1つの実施例において、駆動回路は、第1及び第2の駆動回路端子に接続された差動送信器と第1及び第2の駆動回路端子に接続された差動受信器とを備える。このことは、差動的な実施態様を提供する。中間回路によって達成されるバイアス電圧の分離は、差動的な実施態様のより単純な実現を可能とする。差動駆動は、例えば、駆動パルスが供給電圧の2倍の振幅を有し得るという利点を有する。
【0027】
2つの駆動回路端子を有する別の実施例において、駆動回路は、第1の駆動回路端子に接続された送信器と、第2の駆動回路端子に接続された受信器とを備える。このことは、別々の駆動及び受信電子機器を可能とする。バイアス電圧の分離は、送信器及び受信器が同一のグランドリファレンスを有することを可能とする。また、このことは、送信-受信スイッチの必要性を回避することも可能とする。
【0028】
上記の全ての実施例において、超音波トランスデューサデバイスのセットはトランスデューサデバイスの1Dアレイであり、各駆動回路ポート(単一の端子又は2つの端子であるかに関わらず)は、単一の超音波トランスデューサデバイスに接続する。
【0029】
しかしながら、実施例の別のセットは、トランスデューサデバイスの2Dアレイを利用する。故に、超音波トランスデューサデバイスのセットは、トランスデューサデバイスの行及び列のアレイである。
【0030】
そのため、駆動回路は第1の駆動回路であり、中間回路は第1の中間回路であり、第1の駆動回路の各駆動回路ポートは、第1の中間回路を通じて超音波トランスデューサデバイスの行の第1の端子に接続する。
【0031】
そのため、デバイスは、
超音波トランスデューサデバイスのうちの少なくとも1つに関連付けられた第2の駆動回路ポートにおいてAC駆動信号を送達するとともに反射された信号を受信するための第2の駆動回路(330)であって、駆動回路はASICである、第2の駆動回路(330)と;
第2の駆動回路と超音波トランスデューサデバイスのセットとの間にある第2の中間回路(332)であって、第2の中間回路は、結合回路のアレイを備え、各結合回路は、第2の駆動回路ポートと関連付けられた少なくとも1つの超音波トランスデューサデバイスとの間にあり、バイアス電圧端子と第2の端子との間に接続されたバッファ要素と、第2の端子と第2の駆動回路ポートとの間に直列に接続されたキャパシタとを備え、第2の中間回路は受動集積技術回路を備える、中間回路(332)と
を更に備える。
【0032】
第2の駆動回路の各第2の駆動回路ポートは、第2の中間回路を通じて超音波トランスデューサデバイスの列の第2の端子に接続する。
【0033】
このようにして、二平面1Dアレイが形成される。行及び列は、同一のやり方によって制御され、同等の品質の画像が2つの平面において取得される。
【0034】
前記又は各駆動回路は、例えば、ASICを備える。前記又は各中間回路は、好ましくは、超音波トランスデューサデバイスのセットに物理的に近接して位置する。
【0035】
各超音波トランスデューサデバイスの前記又は各CMUTセルは、好ましくは、崩壊モードにおいて動作するように適合される。このことは、印加されるバイアス電圧によって達成される。本発明は、崩壊モードにおいて動作するCMUTセルであって、DCバイアスが崩壊を制御するCMUTセルを備えるデバイスのために特に適している。
【0036】
各超音波トランスデューサデバイスの前記又は各CMUTセルは、例えば、
基板と;
中央軸の周りに形成された基板に接続された第1の電極と;
可撓性メンブレンであって、可撓性メンブレンは第1の電極から少なくとも部分的に空間的に離間される、可撓性メンブレンと;
可撓性メンブレンに接続された第2の電極であって、第2の電極は第1の電極と同心である、第2の電極と
を備える。
【0037】
これは、崩壊可能なCMUTセルのための電極レイアウトを定める。
【0038】
例えば、駆動電子機器は、入射した超音波刺激に対するセルの応答としてのセルの容量の変化を測定し、それによって超音波撮像を可能とするために使用される容量感知回路を備える。超音波システムは、例えば、撮像システムを備える。
【0039】
本発明の実施形態は、より詳細に、非限定的な例として、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】崩壊モードにおいて動作可能な超音波システムの典型的なCMUTセルを概略的に示す。
図2a】このようなCMUTセルの動作原理を示す。
図2b】このようなCMUTセルの動作原理を示す。
図3a】このようなCMUTセルの動作原理を示す。
図3b】このようなCMUTセルの動作原理を示す。
図4】CMUTセルの1Dアレイを有する超音波システムの実施例を図示する。
図5】欠陥(短絡)が生じたCMUTセルの場合の状況を図示する。
図6】両方のCMUT電極が駆動回路に接続された駆動構成部の第1の実施例を図示する。
図7】両方のCMUT電極が駆動回路に接続された駆動構成部の第2の実施例を図示する。
図8】CMUTセルの2Dアレイを有する超音波システムの実施例を図示する。
図9】本発明の駆動装置構成部を利用し得る超音波診断撮像システムの例示的な実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図面は単なる概略であり、縮尺通りに描かれていないことが理解されるべきである。図面全体を通じて、同一の又は類似の部分を示すために同一の参照番号が使用されていることも理解されるべきである。
【0042】
本発明は、CMUT超音波トランスデューサデバイスのセットと、超音波トランスデューサデバイスを動作させるため及びAC駆動信号を送達するとともに反射された信号を受信するための駆動回路とを備える超音波システムを提供する。中間回路は、駆動回路と超音波デバイスのセットとの間に、結合回路のアレイの形態で存在し、各結合回路は、駆動回路と関連付けられた少なくとも1つの超音波トランスデューサデバイスとの間にある。各結合回路は、バイアス電圧とデバイス端子との間に接続されたバッファ要素(好ましくはレジスタ)と、直列キャパシタとを備え、例えば、受動集積された技術回路として形成される。中間回路は、CMUTトランスデューサ要素のセットと駆動/感知電子機器との間の接続リンクとして働く。バッファ要素は、CMUTセルドラム短絡の場合に、CMUTセルのバイアスノードと対向電極との間の低インピーダンス短絡を防止する。このようにして、個々のセルの欠陥が全体的なCMUTアレイの故障を引き起こすことも、駆動電子機器の故障を引き起こすこともない。
【0043】
図1は、超音波システムにおいて使用されるためのCMUTセル100の知られた設計と、知られた駆動構成部101とを図示する。CMUTセル100は、シリコン基板112の上に、ギャップ又は空洞118を間に有した状態で吊るされた可撓性メンブレン又はダイアフラム114を備える。本実施例において、第1の電極122は基板112の上側面上でセルの床に位置する。第2の電極120は、ダイアフラム114上に位置し、ダイアフラムとともに運動する。図示された実施例において、2つの電極は円形状である。
【0044】
誘電体(図示されず)が、基板112上と、上部(第2の)電極120の下方とに設けられる。これら2つの誘電体は組成及び厚さが等しいが、非対称(異なる材料及び厚さ)であってもよい。
【0045】
メンブレン層114は、基板層112の上部面に対して固定され、メンブレン層114と基板層112との間に球状又は円柱状の空洞118を画定するような構成及び寸法を有する。
【0046】
電極120がメンブレン114に埋め込まれるもの、又はメンブレン114の上に追加的な層として蒸着されるものなど、電極120の設計の他の実現例も想定され得る。本実施例においては、非限定的な例として、第1の電極122は円形状に構成され、基板層112に埋め込まれる。他の電極形状、第1の電極122の他の場所など、他の適切な構成も可能である。第1の電極は、ギャップ118に直接的に露出するか、又は第2の電極120と第1の電極122との間の短絡を防止するために電気的絶縁層又はフィルムによってギャップ118から離間される。
【0047】
図1において、非限定的な例として、第1の電極122は接地している。もちろん、他の構成、例えば、第2の電極120が接地しているもの、第2の電極120及び第1の電極122の両方が浮遊しているものなども同様に可能である。
【0048】
セル100及びそのギャップ118は、代替的な幾何学的形状を呈してよい。例えば、空洞118は、長方形状若しくは正方形状の断面、六角形状の断面、楕円形状の断面、又は不規則な断面を呈してもよい。本明細書において、CMUTセル100の直径への言及は、セルの最も大きな横方向寸法であるものとして理解されるべきである。図1において、円柱状の空洞118の直径は、円形状に構成された電極プレート122の直径よりも大きい。電極120は、円形状に構成された電極プレート122と同一の外側直径を有してよいが、このような一致は必須ではなく、図1は、より大きな電極プレート122を図示している。
【0049】
CMUTセル100の電極は、デバイスの容量性プレートを提供し、ギャップ118は、キャパシタのプレートの間の誘電体である。ダイアフラムが振動するとき、プレートの間で変化する誘電性ギャップの寸法が、受信された音響エコーに対するCMUTセル100の応答として感知される容量の変化を提供する。
【0050】
電極の間の空間は、電圧供給装置101によって、電極に静的電圧、例えば、DCバイアス電圧を印加することによって制御される。電圧供給装置101は、例えば送信モードにおいて、CMUTセル100の駆動電圧のDC成分、及びAC又は刺激成分をそれぞれ提供するために別個のステージ102、104を任意選択的に備える。第1のステージ102は、静的(DC)電圧成分を生成するように適合され、第2のステージ104は、設定交流周波数を有する交流の可変駆動又は刺激電圧成分を生成するように適合され、その信号は、典型的には、全体的な駆動電圧と前述されたその静的成分との間の差である。
【0051】
印加される駆動電圧の静的又はバイアス成分は、好ましくは、CMUTセル100を崩壊状態にする閾値電圧に一致するか又はそれを超える。このことは、第1のステージ102が、全体的な電圧の特に低ノイズの静的成分を生成するために比較的大きなキャパシタ、例えば平滑キャパシタを含み、全体的な電圧信号のノイズ特性がこの静的成分のノイズ特性によって支配されるように、この静的成分が典型的には全体的な電圧を支配する、という利点を有する。
【0052】
電圧源供給装置101の他の適切な実施形態は、例えば、電圧源供給装置101が、CMUT駆動電圧の静的DC成分を生成するための第1のステージと、駆動電圧の可変的であるが直流のDC成分を生成するための第2のステージと、信号の周波数変調又は刺激成分を生成するための第3のステージとを含む3つの個別のステージを含む実施形態、例えばパルス回路など、明らかである。要約すると、電圧源供給装置101は、任意の適切なやり方で実現されてよい。
【0053】
特定の閾値を超える静的電圧を印加することによって、CMUTセル100は、メンブレン114が基板112上に崩壊する崩壊状態となることが知られている。この閾値は、CMUTセル100の正確な設計に依存し、電極の間の電場に起因する力によってメンブレン114がセルの床に固着する(接触する)崩壊電圧として知られるDCバイアス電圧として定められる。メンブレン114と基板112との間の接触の量(面積)は、印加されるバイアス電圧に依存する。
【0054】
図2a及び図3aに補助されてより詳細に説明されるように、メンブレン114と基板112との間の接触面積を増加させると、メンブレン114の共鳴周波数が増加する。
【0055】
崩壊モードのCMUTセル100の周波数応答は、崩壊後にCMUT電極に印加されるDCバイアス電圧を調節することによって変化する。結果として、より高いDCバイアス電圧が電極に印加されるにつれて、CMUTセルの共鳴周波数は増加する。
【0056】
この現象の背後の原理が、図2a、図2b、図3a及び図3bにおいて示される。図2a及び図3aの断面図は、各図において、メンブレン114の外側支持体とメンブレンがキャビティ118の床への接触を開始するポイントとの間の距離D1及びD2によって、これを1次元的に示す。図2aにおける比較的低いバイアス電圧が印加されたときの距離D1は比較的長い距離であり、一方、図3aにおける距離D2は、より高いバイアス電圧が印加されていることに起因してより一層短い距離であることが分かる。これらの距離は、端部を保持され、つま弾かれる長短の弦に喩えられ得る。長く、弛緩した弦は、より短く、よりピンと張られた弦よりも、つま弾かれたときに一層低い周波数で振動するであろう。これと同じように、図2aにおけるCMUTセルの共鳴周波数は、より高いバイアス電圧を受ける図3aにおけるCMUTセルの共鳴周波数よりも低い。
【0057】
この現象は、図2b及び図3bの2次元的な図からも理解され得、これらは、CMUTメンブレンの有効動作面積に応じて変化する。図2aに図示されるようにメンブレン114がCMUTセルの床に接触したばかりのときには、セルのメンブレン114の非接触(自由振動)部分の有効振動エリアA1は、図2bに図示されるように大きい。中央における小さなエリア115は、メンブレンの中央接触領域を表す。大きな面積のメンブレンは、比較的低い周波数において振動する。このエリア115は、CMUTセルの床に対して崩壊したメンブレン114のエリアである。しかし、図3aにおけるように、より高いバイアス電圧によってメンブレンが引っ張られてより深く崩壊すると、図3bに図示されるように、中央接触エリア115’がより大きくなり、結果として、自由振動エリアA2がより小さくなる。このより小さなエリアA2は、より大きなA1エリアよりも高い周波数で振動する。故に、DCバイアス電圧が減少するにつれて、崩壊したCMUTセルの周波数応答は減少し、DCバイアス電圧が増加すると、崩壊したCMUTセルの周波数応答は増加する。
【0058】
図4は、本発明の実施例に従って修正された駆動構成部を有する超音波システム200の第1の実施例を図示する。
【0059】
システムは、超音波トランスデューサデバイス212のセット210を備え、各デバイスは、第1の端子214及び第2の端子216を各々が有する1つ又は複数の容量性微細加工超音波トランスデューサセル213を備える。
【0060】
駆動回路220、特にはASICは、超音波トランスデューサデバイスを動作させるためのものである。これは、AC駆動信号を送達するための送信器回路222のセットと、反射された信号を受信するための受信器回路224のセットとを備え、この反射された信号は、(組織エコー信号によって)反射された、メンブレン114の振動に影響を及ぼす信号を表す。信号の送信及び受信は、超音波トランスデューサデバイスのうちの少なくとも1つに関連付けられた駆動回路ポート226において行われる。
【0061】
中間回路230は、駆動回路220と超音波デバイスのセット210との間にある。中間回路は、結合回路232のアレイを備え、各結合回路は、駆動回路ポート226と関連付けられた少なくとも1つの超音波トランスデューサデバイス212との間にある。結合回路は、バイアス電圧VB(これは全体的バイアス信号VBIAS_CMUTに接続する)とデバイス212の第1の端子214との間に接続されたバッファ要素234を備える。
【0062】
このシステムは、CMUTトランスデューサ要素のセット210と駆動/感知電子機器との間の接続リンクとして中間回路を使用する。バッファ要素234は、CMUTセルドラム短絡の場合に、CMUTセルのバイアスノード(バイアス電圧端子VB)と対向電極との間の低インピーダンス短絡を防止する。このようにして、個々のセルの欠陥が全体的なCMUTアレイの故障を引き起こすことも、駆動電子機器の故障を引き起こすこともない。
【0063】
バッファ要素234は、例えば、レジスタを備える。各結合回路232は、ポート226と第1の端子214との間で第1の端子214に直列に接続されたキャパシタ236も備える。バッファ要素は、高いインピーダンスを有する必要があり、好ましくは、低周波数及び高周波数において線形である。バッファ要素は、高電圧(正及び負)に適合する必要もある。
【0064】
理論的には、パワー効率を向上させるためにCMUTの容量性の挙動を補償するために誘導体を集積することは任意選択的であってよい。しかしながら、集積のためには、必要とされるインダクタンスはむしろ高い。駆動装置/受信器回路の供給を安定化させるために分離キャパシタを含むことも任意選択的であってよい。
【0065】
キャパシタとは、中間回路がCMUTセルの間のクロストークの低減を提供することを意味する。このようなクロストークは、例えば、CMUTバイアス電圧の安定化のために共通のキャパシタが使用されているときに起こる可能性がある。直列キャパシタ236のセットを設けることによって、単一の共通のキャパシタは、回路アレイにおける多くの、より小さなキャパシタによって置き換えられる。
【0066】
図4の実施態様は、バイアスTユニットのアレイを提供し、これは、受動集積技術を使用して実現される。コンポーネントは、集積された受動デバイス(IPD)又は集積された受動コンポーネント(IPC)として知られている。
【0067】
キャパシタ及びレジスタなどの多くのコンポーネント、並びに、実のところインピーダンス整合回路、高調波フィルタ、カプラ、並びに電力結合及び分配器などの機能ブロックが、受動集積技術によって実現され得る。デバイスは、一般的に、薄膜及びフォトリソグラフィ処理などの標準的なウェハー作成技術を使用して作成される。コンポーネントは、フリップチップ搭載可能又はワイヤボンディング可能なコンポーネントとして設計され得、基板は、通常、シリコン、アルミナ又はガラスなどの薄膜基板である。
【0068】
この技術は、例えば、ウェハーを100μm未満の厚さに研削する能力、多様なパッケージングオプション(マイクロバンプ、ワイヤボンディング、銅パッド)及び配送形態オプション(ウェハ配送、テープ&リール)のおかげで、システムインパッケージ(SiP)集積のために理想的なトレードオフを提供する。中間コンポーネントの1つの設計が、CMUTアレイの複数の異なる設計ともに使用される。
【0069】
故に、集積された受動デバイスは、個別の表面実装デバイス(SMD)のアレイを単一のユニットによって置き換えることを可能とする。受動集積技術の追加的な利点は、中間回路の製造をCMUT製造ワークフローと組み合わせるときの複雑さが低減されることであり、このことは、歩留まりの向上を可能とし、及び全体的な製造コストを低減するはずである。
【0070】
シリコンにおける3D受動集積は、集積された受動デバイスを製造するために使用される1つの好ましい技術であり、高密度のトレンチキャパシタ、MIMキャパシタ、レジスタ、高Qインダクタ、PINダイオード又はツェナーダイオードのシリコンにおける実装を可能とする。受動デバイスは、同一のパッケージにおいて能動デバイスとも組み合わされ得るが、この場合の中間回路は全体的に受動的である。
【0071】
このように、受動集積技術は、数十個から数百個の受動コンポーネントをシリコンダイにおいて集積する極めて効率的なやり方である。この技術から結果的にもたらされる性能は、従来の表面実装デバイスから得られる性能を上回る。例えば、アプリケーションボードのサイズは、10倍を超える規模で低減され得る。加えて、より高い信頼性及び著しいコスト低下が、外部SMDコンポーネントをカスタマイズされた受動集積技術ダイによって置き換えることによって達成され得る。集積された受動デバイスによるソリューションは、そのレイアウトがCMUTアレイのレイアウトに合致し得るということでも好ましい。このようにして、バイアスTネットワークをCMUT要素に接続するノードの(接地への)寄生容量が最小化され得るが、このことは、(送信及び受信モードにおいて)信号減衰を制限するために重要である。
【0072】
適切な技術の1つの例が、Murata Integrated Passive Solutions S.A.(登録商標)社によって提供されている。
【0073】
接続リンクは、寄生容量を最小化するためにCMUTアレイに物理的に接近して置かれる。この接続リンクは、1D CMUTアレイの多くの設計のために使用可能であるように設計され得る。
【0074】
図4の実施例において、全てのCMUT要素は、結合キャパシタ及び高値レジスタから成る固有のバイアスTユニットに接続され、これは共通の(共有される)バイアス電圧ノード「VBIAS_CMUT」に接続される。
【0075】
図5は、バツ印250によって表される欠陥(短絡)が生じたCMUTセルの場合における状況を図示する。欠陥の生じたCMUTセルに印加されたバイアス電圧は崩壊する。しかしながら、CMUTセルに直列な高値レジスタ234の存在のおかげで、VBIAS_CMUTノードは隔離されたままであり、これは、残りのCMUTセルが動作可能なままであること意味する。
【0076】
VBIAS_CMUTノードから流れる電流を測定することによって、このような欠陥の生じたセルの存在を検知することができる。全てのCMUTセルをスクリーニングし、音響応答を測定することによって、欠陥の生じた要素を検知し、関連する送信及び受信回路を電源オフ又は他のやり方によって機能停止することができる。これは、エネルギーの節約のために使用され得る。
【0077】
バイアスTユニットのアレイは、好ましくは、「集積された受動デバイス」(IPD)技術において実現される。例えば、垂直キャパシタ表面積を効果的に増加させるためにディープトレンチエッチング及び補給を使用して高密度シリコンキャパシタが実現される。
【0078】
バイアスTユニットのアレイは、事実上全ての1D CMUTアレイの設計のために使用可能であるように設計される。
【0079】
例えば、結合キャパシタ236は、1nFの値(0.1nFと10nFとの間など)を有し、レジスタは、100kOhm(10kOhmから1MOhmなど)の値を有する。
【0080】
1nFキャパシタのサイズは、150Vの降伏電圧に対してキャパシタごとに0.1mm程度である。レジスタのサイズはより一層小さい。
【0081】
図4において図示された実施例において、CMUTセルの基準(第2の)端子216は、全体的なCMUTアレイに共通である。故に、第2の端子216は全て一緒に接続される。従って、駆動回路ポート226は単一の駆動回路端子を備える。図4において図示されるように、駆動回路は単一の駆動回路端子226に接続される送信器及び受信器を備える。送信器の出力はこのポートに接続し、受信器の入力はこのポートに接続する。
【0082】
代替例として、両方のCMUT電極の駆動回路220への接続がある。
【0083】
図6は第1の実施例を図示し、1つのトランスデューサ要素のための駆動回路電子機器を図示する。この場合、駆動回路ポート226は、第1及び第2の駆動回路端子226a、226bを備える。これは第1及び第2のデバイス端子214、216への接続を可能とする。CMUTセルのバイアス電圧は接続リンクによって駆動回路220から隠されており、そのため、両方の電極の制御は容易である。
【0084】
図6において、駆動回路220は、第1及び第2の駆動回路端子に接続された差動送信器240と、第1及び第2の駆動回路端子226a、226bに接続された差動受信器242とを備える。このことは、差動的な実施態様を提供する。中間回路によって達成されるバイアス電圧の分離は、差動的な実施態様のより単純な実現を可能とする。
【0085】
差動的なやり方でCMUTを駆動することは、駆動パルスの実効振幅が供給電圧の2倍になり得るという重要な利点を有する。実際上、これは、供給電圧がより低く(例えば、60Vの代わり30V)なり得ることを意味し、ASIC技術の電圧要件及びクリーページなどのトランスデューサシステムの電圧制限に関する要件を減少させる。
【0086】
差動駆動及び受信回路を使用することの他の利点としては、電子機器によってもたらされる2次高調波歪みの低減、共通モード干渉物へのより良好な抑圧に起因するより良好な電源除去比(PSRR)、及び良好に定められた電流ループ(バイアス端子を介して電流が流れない)などがある。
【0087】
図7は、2つの駆動回路端子226a、226bを利用する別の実施例を図示する。送信器250は第1の駆動回路端子226aに接続され、受信器252は第2の駆動回路端子226bに接続される。このことは、別個の駆動及び受信電子機器を可能とする。
【0088】
この場合、駆動装置はCMUTセルの第1の端子を刺激する一方、受信器は第2のCMUT端子に接続される。バイアス電圧の分離によって、送信器及び受信器のグランドリファレンスが同一になり得、これは、電子機器を単純化し、電源除去比を向上させる。更には、低電圧コンポーネントを使用して受信器の電子機器を実現することも可能であり、このことによってのみ受信器の性能は向上される。駆動装置によってもたらされる寄生容量は、受信器の性能にほとんど影響を与えない。最後に、よく知られた送信-受信スイッチは必要とされないか、又は単純なやり方で実現され得る。
【0089】
上記の全ての実施例において、超音波トランスデューサデバイスのセットはトランスデューサデバイスの1Dアレイとして図示され、各駆動回路ポート(単一の端子又は2つの端子であるかに関わらず)は、単一の超音波トランスデューサデバイスに接続する。
【0090】
しかしながら、実施例の別のセットは、トランスデューサデバイスの2Dアレイを利用する。故に、超音波トランスデューサデバイスのセットは、トランスデューサデバイスの行及び列のアレイである。
【0091】
図8は、行及び列の2Dアレイに配置された超音波トランスデューサデバイスのセット310を備える超音波システム300を図示する。
【0092】
従って、図4を参照して上述された駆動回路は第1の駆動回路320であり、関連する第1の中間回路322を有する。これらは、デバイスの行に接続する。
【0093】
デバイスは、超音波トランスデューサデバイスのうちの少なくとも1つに関連付けられた駆動回路ポートにおいてAC駆動信号を送達するとともに反射された信号を受信するための第2の駆動回路330を更に備える。第2の中間回路332が、第2の駆動回路330と超音波デバイスのセット310との間にある。第2の中間回路は、結合回路のアレイを備え、各結合回路は、第2の駆動回路ポートと関連付けられた少なくとも1つの超音波トランスデューサデバイスとの間にあり、バイアス電圧と第2の端子との間に接続されたバッファ要素を備える。
【0094】
第2の駆動回路330及び関連付けられた第2の中間回路332は、デバイスの列に接続する。
【0095】
このようにして、二平面1Dアレイが形成される。行及び列は、同様のやり方によって制御され、同等の品質の画像が2つの平面において取得される。
【0096】
故に、図8は、2つ接続リンクを使用して二平面1Dアレイを駆動及び感知する方法を図示する。第1の接続リンクは、行電子機器をCMUTアレイから分離するために使用され、第2のリンクは、列電子機器をCMUTアレイから分離するために使用される。例えば、行リンクは第1のCMUT電極(例えば、上部電極)に接続し、列リンクは第2のCMUT電極(例えば、底部電極)に接続する。
【0097】
本発明は、崩壊モードにおいて動作するCMUTセルであって、DCバイアスが崩壊を制御するCMUTセルを備えるデバイスのために特に適している。これは、全てのCMUT撮像システムにおいて使用され、例えば大きなCMUTセルが存在するときなど、製品寿命が重要であり、周波数が低い場合に特に有益である。
【0098】
例えば、駆動電子機器は、入射した超音波刺激に対するセルの応答としてのセルの容量の変化を測定し、それによって超音波撮像を可能とするために使用される容量感知回路を備える。超音波システムは、例えば、撮像システムを備える。
【0099】
駆動電子機器を含むCMUTシステムの全体的な動作は標準的であってよく、詳細には説明されない。しかしながら、完璧を期すために、図9は、実施例によるアレイトランスデューサプローブ400を有する超音波診断撮像システムをブロック図の形態において図示する。
【0100】
図9において、超音波を送信し、エコー情報を受信するために、上述されたCMUTセルを使用する超音波システムが図示されている。
【0101】
システムは、超音波を送信し、エコー情報を受信するためのトランスデューサアレイ410を有するアレイトランスデューサプローブ400を備える。トランスデューサアレイ410は、上述されたCMUTトランスデューサを備える。この実施例において、トランスデューサアレイ410は、関心領域の2D平面又は3次元的ボリュームをスキャン可能なトランスデューサの2次元的アレイとして図示されている。別の実施例において、トランスデューサアレイは、上に述べられたような1Dアレイである。
【0102】
トランスデューサアレイ410は、トランスデューサ要素による信号の受信を制御するマイクロビーム形成器412に結合される。米国特許第5,997,479号(Savordら)、米国特許第6,013,032号(Savord)及び米国特許第6,623,432号(Powersら)において説明されているように、マイクロビーム形成器は、トランスデューサの、一般に「グループ」又は「パッチ」と称されるサブアレイによって受信された信号の少なくとも部分的なビーム形成を行うことができる。
【0103】
マイクロビーム形成器は全体的に任意選択的であることが留意されるべきである。更に、システムは、マイクロビーム形成器412が結合され得る送信/受信(T/R)スイッチ416を含み(しかし、上に論じられたように、これはいくつかの設計においては省略される)、これは、送信モードと受信モードとの間でアレイを切り換え、マイクロビーム形成器が使用されずにトランスデューサアレイが主システムビーム形成器によって直接的に動作される場合に、高エネルギー送信信号から主ビーム形成器420を保護する。トランスデューサアレイ410からの超音波ビームの送信は、T/Rスイッチ416によってマイクロビーム形成器に結合されたトランスデューサコントローラ418及び主送信ビーム形成器(図示されず)によって指示され、これらは、ユーザインタフェース又は制御パネル438のユーザ操作からの入力を受信し得る。コントローラ418は、送信モード中にアレイ410のトランスデューサ要素を(直接的に又はマイクロビーム形成器を介して)駆動するように構成された送信回路を含み得る。
【0104】
典型的なラインごとの撮像シーケンスにおいて、プローブ内のビーム形成システムは、以下のように動作する。送信中に、ビーム形成器(これは、実施態様に応じてマイクロビーム形成器であっても主システムビーム形成器であってもよい)は、トランスデューサアレイ又はトランスデューサアレイのサブ開口を作動させる。サブ開口は、より大きなアレイ内のトランスデューサの1次元的ライン又はトランスデューサの2次元的パッチである。送信モードにおいて、アレイ又はアレイのサブ開口によって生成された超音波ビームのフォーカシング及びステアリングは、以下に説明されるように制御される。
【0105】
対象者から後方散乱されたエコー信号を受信すると、受信された信号は、受信された信号を整列させるために、(以下に説明されるように)受信ビーム形成され、次いで、サブ開口が使用されている場合には、サブ開口が、例えば1つのトランスデューサ要素分だけシフトされる。次いで、シフトされたサブ開口が作動され、トランスデューサアレイのトランスデューサ要素の全てが作動されるまでプロセスが繰り返される。
【0106】
各ライン(又はサブ開口)に関して、最終的な超音波画像の関連付けられたラインを形成するために使用される総合的な受信された信号は、受信期間中に所与のサブ開口のトランスデューサ要素によって測定された電圧信号の和である。以下のビーム形成プロセスに従って結果的にもたらされるライン信号は、典型的には無線周波数(RF)データと称される。次いで、様々なサブ開口によって生成された各ライン信号(RFデータセット)は、最終的な超音波画像のラインを生成するために追加的に処理される。時間の経過に伴うライン信号の振幅における変化は、深度に伴う超音波画像の輝度における変化の一因となり、高振幅ピークは、最終的な画像における明るいピクセル(又はピクセルの集合)に対応する。ライン信号の開始付近に現れるピークは浅い構造からのエコーを表し、ライン信号において後になって漸次現れるピークは対象者内のより深くにある構造からのエコーを表す。
【0107】
トランスデューサコントローラ418によって制御される機能のうちの1つは、ビームがステアリング及びフォーカシングされる方向である。ビームは、トランスデューサアレイから真っ直ぐ前方に(トランスデューサアレイに直交するように)ステアリングされ、又は、より広い視野のために異なる角度にステアリングされる。送信ビームのステアリング及びフォーカシングは、トランスデューサ要素作動時間の関数として制御される。
【0108】
一般的な超音波データ取得においては、2つの方法が区別され得、これらは、平面波又は発散撮像、及びフォーカシング撮像である。これらの異なる方法は、送信モード(「ビームステアリング」撮像)及び/又は受信モード(平面波撮像及び「ビームステアリング」撮像)におけるビーム形成の存在によって区別され得る。
【0109】
最初にフォーカシング機能について見てみると、トランスデューサアレイは、対象者内を進行するにつれて発散する平面波を生成するように制御される。この場合、超音波のビームは、フォーカシングされないままである。位置に依存する時間遅延をトランスデューサの作動に導入することによって、焦点ゾーンと称される所望のポイントにビームの波頭を収斂させることができる。焦点ゾーンは、横方向ビーム幅が送信ビーム幅の半分未満となるポイントとして定義される。このようにして、最終的な超音波画像の横方向解像度が向上される。
【0110】
例えば、もしも時間遅延が、トランスデューサアレイの最も外側の要素から始まって中央の要素で終了するようにトランスデューサ要素を連続的に作動させるならば、焦点ゾーンは、中央の要素に沿ってプローブから離間した所与の距離において形成されよう。プローブからの焦点ゾーンの距離は、トランスデューサ要素の作動の各後続ラウンドの間の時間遅延に応じて変化する。ビームは、焦点ゾーンを通過した後、発散を開始し、遠距離場撮像領域を形成する。トランスデューサアレイに接近して位置する焦点ゾーンでは、超音波ビームは遠距離場において迅速に発散し、最終的な画像においてビーム幅アーチファクトをもたらすことが留意されるべきである。典型的には、トランスデューサアレイと焦点ゾーンとの間に位置する近距離場は、超音波ビームにおける重なりが大きいために詳細をほとんど表さない。故に、焦点ゾーンの場所を変化させることで、最終的な画像の品質において著しい変化をもたらし得る。
【0111】
送信モードにおいて、超音波画像が複数の焦点ゾーン(各々が異なる送信焦点を有する)に分割されない限り、ただ1つの焦点が定められることが留意されるべきである。
【0112】
加えて、対象者の内部からのエコー信号の受信の際には、受信フォーカシングを実施するために、上述されたプロセスの逆のプロセスを実施することができる。換言すれば、到来する信号は、トランスデューサ要素によって受信され、信号処理のためにシステム内に渡される前に電子的に時間遅延される。このことの最も単純な例は、遅延和ビーム形成と称される。トランスデューサアレイの受信フォーカシングは、時間の関数として動的に調節することができる。
【0113】
次にビームステアリングの機能を見てみると、トランスデューサ要素への時間遅延の正確な適用を通じて、超音波ビームがトランスデューサアレイを離れるにつれて超音波ビームに所望の角度を与えることができる。例えば、トランスデューサアレイの第1の側のトランスデューサを作動させ、これに続いてアレイの反対側においてシーケンスの終了時に残りのトランスデューサを作動させることによって、ビームの波頭には第2の側に向かう角度が付けられる。トランスデューサアレイの法線に対するステアリング角度の大きさは、後続のトランスデューサ要素の作動の合間の時間遅延の大きさに依存する。
【0114】
更に、ステアリングされたビームをフォーカシングさせることができ、各トランスデューサ要素に適用される総時間遅延は、フォーカシング時間遅延及びステアリング時間遅延の両方の和である。この場合、トランスデューサアレイは位相式アレイと称される。
【0115】
作動のためにDCバイアス電圧を必要とするCMUTトランスデューサの場合、トランスデューサコントローラ418が、トランスデューサアレイのためのDCバイアス制御器445を制御するために結合され得る。DCバイアス制御器445は、CMUTトランスデューサ要素に印加されるDCバイアス電圧を設定する。
【0116】
トランスデューサアレイの各トランスデューサ要素に関して、典型的にはチャンネルデータと称されるアナログ超音波信号が、受信チャンネルを経由してシステムに入力される。受信チャンネルにおいて、部分的にビーム形成された信号が、チャンネルデータからマイクロビーム形成器412によって生み出され、次いで、主受信ビーム形成器420に渡され、そこで、トランスデューサの個々のパッチからの部分的にビーム形成された信号は、無線周波数(RF)データと称される完全にビーム形成された信号へと合成される。各ステージにおいて実施されるビーム形成は、上述されたように実施され、又は、追加的な機能を含む。例えば、ビーム形成器420は128個のチャンネルを有し、その各々がトランスデューサ要素の数ダース又は数百個のパッチから部分的にビーム形成された信号を受信する。このようにして、トランスデューサアレイの数千個のトランスデューサによって受信された信号は、単一のビーム形成された信号に効率的に寄与し得る。
【0117】
ビーム形成された受信信号は、信号プロセッサ422に結合される。信号プロセッサ422は、受信されたエコー信号を、帯域通過フィルタリング、デシメーション、I及びQ成分分離、組織及び微小気泡から戻ってきた非線的(基本周波数のより高い高調波)エコー信号の識別を可能とするように線的及び非線的信号を分離するように働く高調波信号分離など、様々なやり方において処理し得る。信号プロセッサは、スペックル低減、信号合成、及びノイズ除去等の追加的な信号増強も実施し得る。信号プロセッサにおける帯域通過フィルタは追跡フィルタであってよく、その通過帯域は、エコー信号がより深くから受信されるにつれて、より高い周波数帯域からより低い周波数帯域へとスライドし、それによって、典型的には解剖学的情報を欠いたより深い深度からのより高い周波数におけるノイズを拒絶する。
【0118】
送信及び受信のためのビーム形成器は、種々のハードウェアにおいて実現され、種々の機能を有し得る。もちろん、受信器ビーム形成器は送信ビーム形成器の特性を考慮して設計される。図1においては、簡略化のために受信器ビーム形成器412、420だけが図示されている。完全なシステムにおいては、送信マイクロビーム形成器及び主送信ビーム形成器を有する送信チェーンも存在するであろう。
【0119】
マイクロビーム形成器412の機能は、アナログ信号パスの数を低減するために信号の初期的な合成を提供することである。これは、典型的には、アナログドメインにおいて実施される。
【0120】
最終的なビーム形成は、主ビーム形成器420において、典型的には二値化の後になされる。
【0121】
送信及び受信チャンネルは、固定的な周波数帯域を有する同一のトランスデューサアレイ410を使用する。しかしながら、送信パルスが占める帯域幅は、使用される送信ビーム形成に応じて変化し得る。受信チャンネルは、全体的なトランスデューサ帯域幅を捕捉し得(これは古典的な手法である)、又は、帯域通過処理を使用することによって、所望の情報(例えば、主高調波の高調波)を含む帯域幅だけを抽出し得る。
【0122】
次いで、RF信号は、Bモード(すなわち、輝度モード又は2D撮像モード)プロセッサ426及びドップラプロセッサ428に結合される。Bモードプロセッサ426は、器官の組織及び血管などの身体における構造の撮像ために、受信された超音波信号に対して振幅検知を実施する。ラインごとの撮像の場合、各ライン(ビーム)は、関連するRF信号によって表され、その振幅はBモード画像におけるピクセルに割り当てられる輝度値を生成するために使用される。画像内のピクセルの正確な場所は、RF信号に沿った関連する振幅測定の場所及びRF信号のライン(ビーム)番号によって判定される。米国特許第6,283,919号(Roundhillら)及び米国特許第6,458,083号(Jagoら)において説明されるように、このような構造のBモード画像は、高調波又は基本波画像モードにおいて、又はこれら両方の組み合わせにおいて形成される。ドップラプロセッサ428は、画像野における血球の流動などの運動する物質の検知のために、組織運動及び血流から生じる時間的に異なる信号を処理する。ドップラプロセッサ428は、典型的には、身体における選択されたタイプの材質から戻ったエコーを通過又は拒絶するように設定されたパラメータを有する壁フィルタを含む。
【0123】
Bモード及びドップラプロセッサによって生み出された構造及び運動信号は、スキャンコンバータ432及び多平面リフォーマッタ444に結合される。スキャンコンバータ432は、エコー信号をそれらが受信された空間的関係に、所望の画像フォーマットにおいて配置する。換言すれば、スキャンコンバータは、円柱座標系から画像ディスプレイ440上での超音波画像の表示に適したデカルト座標系へとRFデータを変換するように働く。Bモード撮像の場合、所与の座標におけるピクセルの輝度は、その場所から受信されたRF信号の振幅に比例する。例えば、スキャンコンバータは、エコー信号を、2次元的な(2D)扇形状フォーマット又はピラミッド状の3次元的な(3D)画像に配置する。スキャンコンバータは、Bモード構造画像に画像野のポイントにおける運動に対応する色を重畳し得、ドップラ推定速度が所与の色を生む。合成されたBモード構造画像及びカラードップラ画像は、構造画像野内の組織の運動及び血流を表す。米国特許第6,443,896号(Detmer)において説明されているように、多平面リフォーマッタは、身体のボリュメトリック領域の共通の平面におけるポイントから受信されたエコーを、その平面の超音波画像へと変換する。米国特許第6,530,885号(Entrekinら)において説明されているように、ボリュームレンダラ442は、3Dデータセットのエコー信号を所与の基準ポイントから見た投影3D画像に変換する。
【0124】
2D又は3D画像は、画像ディスプレイ440上での表示のための更なる増強、バッファリング、及び一時的保存のために、スキャンコンバータ432、多平面リフォーマッタ444、及びボリュームレンダラ442から、画像プロセッサ430に結合される。撮像プロセッサは、例えば強い減衰器又は屈折に起因する音響陰影;例えば弱い減衰器に起因する後方増強;反射率の高い組織界面が極めて近接して位置する残響アーチファクトなどの特定の撮像アーチファクトを最終的な超音波画像から除去するように適合される。加えて、画像プロセッサは、最終的な超音波画像のコントラストを向上させるために、特定のスペックル低減機能を取り扱うように適合される。
【0125】
撮像のために使用されることに加えて、ドップラプロセッサ428によって生み出された血流値及びBモードプロセッサ426によって生み出された組織構造情報は、定量化プロセッサ434に結合される。定量化プロセッサは、器官のサイズ及び在胎齢などの構造測定値に加えて、血流のボリュームレートなどの種々の流動状況の測定を生む。定量化プロセッサは、ユーザ制御パネル438から、測定がなされるべき画像の解剖学的組織におけるポイントなどの入力を受信する。
【0126】
定量化プロセッサからの出力データは、ディスプレイ440上での画像による測定グラフィック及び値の再現のために、及びディスプレイデバイス440からの音響出力のために、グラフィックプロセッサ436に結合される。グラフィックプロセッサ436は、超音波画像とともに表示するためのグラフィック重畳も生成し得る。これらのグラフィック重畳は、患者名、画像の日付及び時間、撮像パラメータなどの標準的な識別情報を含み得る。これらの目的のために、グラフィックプロセッサは、患者名などの入力をユーザインタフェース438から受信する。ユーザインタフェースは、トランスデューサアレイ6からの超音波信号の生成を制御するために、従って、トランスデューサアレイ及び超音波システムによって生み出される画像を制御するために送信コントローラ418にも結合される。コントローラ418の送信制御機能は、実施される機能のうちの1つに過ぎない。コントローラ418は、動作のモード(ユーザによって与えられる)、対応して必要とされる送信器構成、及び受信器のアナログ-デジタルコンバータにおける帯域通過構成も考慮する。コントローラ418は、固定的な状態のステートマシンであってよい。
【0127】
ユーザインタフェースは、多平面リフォーマット(MPR)画像の画像野において定量化された測定を実施するために使用される複数のMPR画像の平面の選択及び制御のために多平面リフォーマッタ444にも結合される。
【0128】
当業者には理解されるであろうように、超音波診断撮像システムの上記の実施形態は、このような超音波診断撮像システムの非限定的な実施例を与えることを意図される。当業者は、本発明の教示から逸脱することなく超音波診断撮像システムのアーキテクチャにおけるいくつかの変形が可能であることを直ちに認識するであろう。例えば、上記の実施形態においても示されているように、マイクロビーム形成器412及び/又はドップラプロセッサ428は省略されてもよく、超音波プローブ410は、3D撮像機能を有さなくてもよい、などである。当業者には他の変形が明らかであろう。
【0129】
上記の説明は崩壊モードにおける動作に関するが、本発明は、セルが非崩壊モードにおいて動作するときにも同様に適用され得る。
【0130】
中間回路は、単一の受動集積された技術回路、例えば単一のフリップチップ又はワイヤボンディング回路として形成される。しかしながら、結合回路のより大きなアレイに関して、複数の受動集積された技術回路、例えば2つから5つのこのような回路があってよく、このような各回路は、10個から200個の個別の結合回路を有する。第1及び第2の中間回路が存在する場合、これらは、好ましくは、別個の受動集積された技術回路であるが、原理的にはこれらは単一のユニットとして統合されてもよい。
【0131】
上に述べられた実施形態は、本発明を限定するものではなく、むしろ例示するものであること、当業者は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく多くの代替的な実施形態を設計可能であることが留意されるべきである。特許請求の範囲において、括弧の間に置かれた任意の参照記号は、請求項を限定するものと解釈されるべきではない。「備える、含む、有する」という語は、請求項において列記されたもの以外の要素又はステップの存在を排除しない。単数形表現の語は、複数のこのような要素の存在を排除しない。本発明は、いくつかの別個の要素を備えるハードウェアによって実現され得る。いくつかの手段を列挙するデバイスの請求項において、これらの手段のうちのいくつかが、ハードウェアの1つの同一のアイテムによって具現化されてよい。特定の手段が互いに異なる従属請求項において記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示すものではない。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9