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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】粘着テープの貼着装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/68 20060101AFI20240126BHJP
   H05K 3/32 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
H01L21/68 F
H05K3/32 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022134485
(22)【出願日】2022-08-25
(62)【分割の表示】P 2018063716の分割
【原出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2022176189
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菊池 一哉
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-210592(JP,A)
【文献】特開2011-007695(JP,A)
【文献】特開2013-250375(JP,A)
【文献】特開平10-260422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/68
H05K 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型テープに粘着テープが貼着されたテープ状部材を供給する供給部と、
貼着対象物に対して、前記粘着テープの前記離型テープとは反対側の貼着面を貼着する貼着部と、
前記テープ状部材を前記供給部から前記貼着部に送る搬送部と、
前記テープ状部材における前記粘着テープ側に配置され、前記貼着部に対して設定された貼着基準位置に位置づけられた前記テープ状部材を撮像する撮像部と、
前記撮像部により得られた前記テープ状部材の画像に基づいて、前記粘着テープにおける切れ目の状態の良否を判定する判定部と、
前記粘着テープの切れ目と前記貼着基準位置との距離を算出する搬送制御部と、
を備え、
前記判定部は、前記貼着基準位置の前後に、前記粘着テープの幅方向に沿って複数個設定した領域内において前記粘着テープの有無を判定し、この判定結果に基づいて、前記粘着テープの切れ目の状態の良否を判定し、
前記判定部により前記粘着テープの切れ目の位置が前記貼着基準位置を含む許容範囲から外れていると判定された場合に、前記搬送部は、前記搬送制御部により、前記撮像部により得られた前記テープ状部材の画像から算出された前記距離に基づいて、前記粘着テープの切れ目を前記貼着基準位置に位置付けるように、前記テープ状部材を送ること、
を特徴とする粘着テープの貼着装置。
【請求項2】
前記供給部と前記貼着部との間に設けられたカッターを有し、前記テープ状部材の前記粘着テープを切断して前記切れ目となるハーフカットラインを形成する切断部を備え、
前記搬送部は、前記ハーフカットラインが前記貼着基準位置に来るように前記テープ状部材を送り、
前記撮像部は、前記ハーフカットラインを含んで前記テープ状部材を撮像し、
前記判定部は、前記撮像部により得られた前記画像から前記ハーフカットラインを検知し、前記ハーフカットラインの切断面の形状の良否を判定すること、
を特徴とする請求項1記載の粘着テープの貼着装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記検知した前記ハーフカットラインが前記貼着基準位置を含む許容範囲にあるか否かを判定すること、
を特徴とする請求項記載の粘着テープの貼着装置。
【請求項4】
前記ハーフカットラインと前記貼着基準位置との距離を算出する搬送制御部を備え、
前記判定部により前記ハーフカットラインが前記許容範囲から外れていると判定された場合に、前記搬送部は、前記搬送制御部により算出された前記距離に基づいて、前記ハーフカットラインを前記貼着基準位置に位置付けるように、前記テープ状部材を送ること、
を特徴とする請求項記載の粘着テープの貼着装置。
【請求項5】
前記貼着部は、前記ハーフカットラインより下流側の前記粘着テープを前記貼着対象物に貼着し、
前記撮像部は、前記貼着部による貼着後の前記テープ状部材を撮影すること、
を特徴とする請求項の何れか記載の粘着テープの貼着装置。
【請求項6】
前記テープ状部材における前記粘着テープ側に配置され、光軸が、前記貼着基準位置に向けられるとともに前記貼着基準位置に位置する前記粘着テープの貼着面の垂線方向に対して、予め設定した角度で斜交して設けられている照明部を備えること、
を特徴とする請求項1記載の粘着テープの貼着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープの貼着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイの製造工程では、貼着対象物である基板に電子部品を実装する必要がある。この実装は、例えば、基板の周縁上面に設けられた端子部に、粘着テープを介して電子部品を仮圧着後、熱と圧力を加えて本圧着することにより行う。
【0003】
貼着される電子部品は、例えば、ICチップ、TCP(Tape Carrier Package)やCOF(Chip On Film)等である。TCPは、薄膜状のフィルム上にIC等のチップを搭載したパッケージである。粘着テープは、例えば、ACF(Anisotropic Conductive Film)を素材とし、幅が数ミリ、厚みが数10ミクロン程度のテープである。ACFは、金属粒子を含有する樹脂製の異方導電性を有するフィルムである。
【0004】
このように細い粘着テープは、離型テープに貼付されたテープ状部材として構成されている。テープ状部材は、リールから送り出されて、粘着テープが基板に圧着された後、離型テープのみが剥離されて排出される。
【0005】
テープ状部材は、貼着作業により粘着テープがなくなると、手動により新しいテープ状部材に交換されていた。具体的には、次の動作をオペレータが行っていた。まず、粘着テープの無くなったリールを未使用のリールに付け替える。付け替えた未使用のリールから新しいテープ状部材を引き出す。引き出したテープ状部材の先端から所定の長さ分の粘着テープを剥がし、貼着装置にセッティングする。このように先端部分の粘着テープを剥がすのは、貼着作業位置よりも搬送方向下流側でテープ状部材(離型テープ)を両面から挟んで搬送する搬送ローラ等に粘着テープが付着する等によりテープ状部材が搬送不良となるのを防止するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-186387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の通り、テープ状部材が交換されると、基板への貼着精度を担保するため、粘着テープの切れ目である先頭部分(以下、単に「先端」とも言う。)を所定位置に合わせる、頭出し作業を行っていた。この従来の頭出し作業は、オペレータが目視によりテープ状部材を送りながら所定位置、例えば、貼着作業位置に位置合わせする作業であり、装置の構成上、テープ状部材を粘着テープ側から視認しづらい場合もあり、テープ状部材の送り過ぎ等、所定位置に位置合わせすることが難しかった。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、粘着テープの頭出しを自動的に行うことのできる粘着テープの貼着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の粘着テープの貼着装置は、離型テープに粘着テープが貼着されたテープ状部材を供給する供給部と、貼着対象物に対して、前記粘着テープの前記離型テープとは反対側の貼着面を貼着する貼着部と、前記テープ状部材を前記供給部から前記貼着部に送る搬送部と、前記テープ状部材における前記粘着テープ側に配置され、前記貼着部に対して設定された貼着基準位置に位置づけられた前記テープ状部材を撮像する撮像部と、前記撮像部により得られた前記テープ状部材の画像に基づいて、前記粘着テープにおける切れ目の状態の良否を判定する判定部と、前記粘着テープの切れ目と前記貼着基準位置との距離を算出する搬送制御部と、を備え、前記判定部は、前記貼着基準位置の前後に、前記粘着テープの幅方向に沿って複数個設定した領域内において前記粘着テープの有無を判定し、この判定結果に基づいて、前記粘着テープの切れ目の状態の良否を判定し、前記判定部により前記粘着テープの切れ目の位置が前記貼着基準位置を含む許容範囲から外れていると判定された場合に、前記搬送部は、前記搬送制御部により、前記撮像部により得られた前記テープ状部材の画像から算出された前記距離に基づいて、前記粘着テープの切れ目を前記貼着基準位置に位置付けるように、前記テープ状部材を送ること、を特徴とする。

【0010】
前記供給部と前記貼着部との間に設けられたカッターを有し、前記テープ状部材の前記粘着テープを切断して前記切れ目となるハーフカットラインを形成する切断部を備え、前記搬送部は、前記ハーフカットラインが前記貼着基準位置に来るように前記テープ状部材を送り、前記撮像部は、前記ハーフカットラインを含んで前記テープ状部材を撮像し、前記判定部は、前記撮像部により得られた前記画像から前記ハーフカットラインを検知し、前記ハーフカットラインの切断面の形状の良否を判定しても良い。
【0011】
前記判定部は、前記検知した前記ハーフカットラインが前記貼着基準位置を含む許容範囲にあるか否かを判定しても良い。
【0012】
前記ハーフカットラインと前記貼着基準位置との距離を算出する搬送制御部を備え、前記判定部により前記ハーフカットラインが前記許容範囲から外れていると判定された場合に、前記搬送部は、前記搬送制御部により算出された前記距離に基づいて、前記ハーフカットラインが前記貼着基準位置に位置付けるように前記テープ状部材を送るようにしても良い。
【0013】
前記貼着部は、前記ハーフカットラインより下流側の前記粘着テープを前記貼着対象物に貼着し、前記撮像部は、前記貼着部による貼着後の前記テープ状部材を撮影し、前記判定部は、前記貼着基準位置の前後に、前記粘着テープの幅方向に沿って複数個設定した領域内において前記粘着テープの有無を判定し、この判定結果に基づいて、前記粘着テープの頭出しの良否を判定するようにしても良い。
【0014】
前記判定部は、前記画像をグレースケール化し、前記切れ目を検知しても良い。
【0015】
前記照明部は、前記光軸が前記貼着基準位置に位置する前記粘着テープの貼着面の垂線方向に対して60°~85°傾斜して設けられていても良い。
【0016】
前記照明部は、白色光又は緑色光を照射しても良い。
【0017】
前記粘着テープは、異方性導電フィルムとしても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、粘着テープの頭出しを自動的に行うことのできる粘着テープの貼着装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る貼着装置の概略構成図である。
図2】制御部の機能ブロック図である。
図3】実施形態に係る貼着装置の粘着テープの頭出し動作の一例を示すフローチャートである。
図4】(a)は、テープ状部材の送りを示す図である。(b)は、粘着テープの先頭部分を説明するための図である。(c)は、ハーフカットラインの形成を示す図である。(d)は、ハーフカットラインの位置の良否判定を説明するための図である。(e)は、粘着テープの捨打ちを説明するための図である。(f1)は、貼着基準位置より下流側に粘着テープありと判定され、不良と判定される態様を示す図である。(f2)は、貼着基準位置より上流側に粘着テープなしと判定され、不良と判定される態様を示す図である。(g)は、貼着基準位置より下流側で粘着テープがなく、貼着基準位置より上流側で粘着テープありと判定され、良と判定される態様を示す図である。
図5】(a)は、比較例の貼着装置におけるテープ状部材の撮影の様子を示す断面図である。(b)は、比較例の貼着装置で得られたテープ状部材の画像である。
図6】(a)は、実施形態の貼着装置におけるテープ状部材の撮影の様子を示す断面図である。(b)は、実施形態の貼着装置で得られたテープ状部材の画像である。
図7】照明部の光軸のテープ状部材の垂線に対する傾斜角度θと、当該角度における粘着テープの切れ目の検知結果を示す。
図8】(a)は、ハーフカットラインが貼着基準位置の手前にずれた場合のテープ状部材の送り補正を示す模式図である。(b)は、ハーフカットラインが貼着基準位置を越えてずれた場合のテープ状部材の送り補正を示す模式図である。
図9】貼着装置の、基板に対する粘着テープの貼着動作の一例を示すフローチャートである。
図10】実施形態に係る貼着装置の貼着動作を示す図である。(a)は、粘着テープの頭出しが完了し、基板がセットされている状態を示す。(b)は、ハーフカットされた状態を示す。(c)は、テープ状部材が送られた状態を示す。(d)は、粘着テープが基板に貼着され、離型テープが剥離された状態を示す。
図11】他の実施形態に係る貼着装置の照明部の配置態様を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施形態]
本発明の実施の形態(以下、実施形態と呼ぶ)の一例を、図面を参照して具体的に説明する。なお、図1に示すように、本実施形態において用いられるテープ状部材2は、例えば、粘着テープ21が離型テープ22に貼着されたものである。粘着テープ21は、例えば、異方性導電フィルム(ACF)である。離型テープ22は、粘着テープ21から剥離可能なテープであり、例えば、ポリイミド等の樹脂フィルムによって形成されている。一般的に使用されるテープ状部材2の幅は、0.5~3.5mm程度である。
【0021】
[構成]
図1は、実施形態に係る貼着装置1の概略構成図である。貼着装置1は、テープ状部材2の粘着テープ21を貼着対象物に貼着する装置である。貼着対象物は、例えば、後述する捨打ちプレート112、又は、フラットパネルディスプレイを構成する部材としての基板である。
【0022】
図1に示すように、貼着装置1は、貼着部11、供給部12、回収部13、搬送部14、剥離部15、切断部16、照明部17、撮像部18、及び制御部19を備える。
【0023】
[貼着部]
貼着部11は、貼着対象物に対して、テープ状部材2における粘着テープ21を貼着する。貼着部11は、加圧ヘッド110、ステージ部材111を有する。
【0024】
加圧ヘッド110は、図示しない昇降装置により上下に移動することにより、貼着対象物に対してテープ状部材2の加熱、加圧を行う。そのため、加圧ヘッド110には、図示しないヒータが設けられ、テープ状部材2との接触面が、所定の温度に加熱されている。さらに、加圧ヘッド110におけるテープ状部材2との接触面には、緩衝部材110aが設けられている。この緩衝部材110aは、例えば、弾性体により形成されたシートであり、加熱によって軟化した粘着テープ21が加圧ヘッド110に付着することを防止する。すなわち、テープ状部材2において、粘着テープ21の離型テープ22とは反対側の面が貼着対象物との貼着面となる。
【0025】
ステージ部材111は、加圧ヘッド110によって貼着対象物にテープ状部材2が加熱加圧されるとき、貼着対象物を下から支持する部材である。ステージ部材111は、その上面に、貼着対象物を支持する平坦面である支持面111aを有する。
【0026】
ステージ部材111に載置される貼着対象物は、上述したように、捨打ちプレート112や製品となる基板である。例えば、捨打ちプレート112は、粘着テープ21の先頭の不要な部分が貼着される。この捨打ちプレート112は、例えば、金属板であり、基板と同等の大きさを成し、ステージ部材111の支持面111a上に配置される。なお、捨打ちプレート112は、金属板に代えて布テープやプラスチック板等を用いても良い。又は、捨打ちプレート112上に布テープやプラスチック板等を貼着等により交換可能に設けても良い。
【0027】
貼着部11において粘着テープ21の貼着が行われる貼着作業位置に対してテープ状部材2が搬送される搬送経路上には、貼着基準位置10が設定されている。貼着基準位置10は、テープ状部材2における粘着テープ21の切れ目20が位置合わせされる基準位置であり、ここでは、テープ状部材2の搬送方向における、加圧ヘッド110の上流側端部の位置である。粘着テープ21の切れ目20は、例えば、テープ状部材2における粘着テープ21の先頭部分、切断部16により形成された後述するハーフカットライン20bである。
【0028】
[供給部]
供給部12は、貼着部11にテープ状部材2を供給する。供給部12は、供給リール120、テンション機構121、経路ローラ122を有する。供給リール120は、テープ状部材2を巻装し、回動によりテープ状部材2を送り出すリールである。
【0029】
テンション機構121は、テープ状部材2に張力を与える。テンション機構121は、供給リール120から引き出されるテープ状部材2の移動を案内するように、上下に距離を空けて配置された一対のローラである。一方のローラは上下動しない固定ローラ121aであり、他方のローラが上下動可能な可動ローラ121bである。可動ローラ121bは、図示しない昇降機構によって上下に移動する。つまり、図中、黒塗りの矢印方向に移動する。
【0030】
経路ローラ122は、テンション機構121からのテープ状部材2の搬送方向を変えて、切断部16に向けて送り出すローラである。
【0031】
[回収部]
回収部13は、貼着部11において、貼着対象物に貼着された粘着テープ21から剥離された離型テープ22を回収する。回収部13は、回収リール130、経路ローラ131を有する。
【0032】
回収リール130は、離型テープ22を巻き取って回収するリールである。経路ローラ131は、貼着部11側からの離型テープ22の搬送方向を変えて、回収リール130に向けて送り出すローラである。
【0033】
[搬送部]
搬送部14は、貼着部11と回収部13の間に配置され、テープ状部材2を供給部12から貼着部11を介して回収部13に送る。搬送部14は、一対の送りローラ140、図示しない送り用モータを有する。一対の送りローラ140は、離型テープ22を挟み、ローラの回動によってテープ状部材2を供給リール120側から回収リール130側へ移動させる。送り用モータは、送りローラ140を回動させる駆動源である。送り用モータは、その回転軸が送りローラ140と連結されており、当該モータの駆動により回転軸が当該軸周りに回転することにより、送りローラ140を回転軸周りに回動させる。
【0034】
なお、供給リール120から送り出されたテープ状部材2がテンション機構121の2つのローラ121a、121b、経路ローラ122、経路ローラ131を経て回収リール130に至る経路が、テープ状部材2の搬送経路である。また、各部の位置関係を説明するために、相対的に供給部12側をテープ状部材2の上流側といい、回収部13側をテープ状部材2の下流側ともいう。また、貼着基準位置10に対してテープ状部材2の下流側を前、テープ状部材2の上流側を後ろともいう。
【0035】
[剥離部]
剥離部15は、貼着対象物に貼着された粘着テープ21から離型テープ22を剥離する。剥離部15は、剥離棒150、151を有する。剥離棒150、151は、例えば丸棒であり、離型テープ22と接する部材である。剥離棒150は、離型テープ22の表面、すなわち、粘着テープ21側の面と接し、剥離棒151は、離型テープ22の裏面と接する。剥離棒150、151は、図示しない移動機構によって、図1に示すように、離型テープ22が接した状態で貼着部11の下流側から上流側(図1、点線の矢印方向)に水平移動することにより、貼着対象物に圧着された粘着テープ21から離型テープ22を剥離する。
【0036】
[切断部]
切断部16は、テープ状部材2における粘着テープ21を切断する。この切断部16は、更に離型テープ22を切断しない程度に離型テープ22に切込みを入れても良い。このように粘着テープ21を切断することを、以下、ハーフカットと呼び、切断部16により粘着テープ21に形成されたラインを、ハーフカットライン20bと呼ぶ。
【0037】
切断部16は、供給部12と貼着部11との間に設けられ、カッター160、バックアップ部材161を有する。カッター160は、粘着テープ21に接して切断する部材であり、供給部12と貼着部11との間に設けられている。カッター160は、図示しない昇降機構により、その先端の刃がバックアップ部材161に対して接離する。カッター160の先端の刃は、テープ状部材2の幅方向に延びている。バックアップ部材161は、直方体形状のブロックである。このバックアップ部材161は、ブロックの下面に、カッター160との間でテープ状部材2を挟み、水平方向で離型テープ22に接する平坦面161aを有する。なお、本実施形態では、カッター160と貼着基準位置10との距離が、基板に貼着される粘着テープ21の長さよりも短くなるように、切断部16の位置が設定されている。
【0038】
[照明部]
照明部17は、貼着基準位置10の近傍において、テープ状部材2における粘着テープ21側に配置されている。具体的には、照明部17は、テープ状部材2の下方に配置され、粘着テープ21側からテープ状部材2を照らす。
【0039】
照明部17は、その光軸が、貼着基準位置10に向けられるとともにテープ状部材2の垂線に対して斜交して設けられている。この垂線は、テープ状部材2の面、より具体的には、貼着基準位置10に位置付けられているテープ状部材2において粘着テープ21の前述の貼着面に対して直交する直線である。テープ状部材2が貼着基準位置10に対して水平に搬送される場合、垂線は、水平方向に対する垂直線としても良い。照明部17の光軸は、貼着基準位置10に位置する粘着テープ21の貼着面の垂線方向に対して60°~85°傾斜させることが好ましい。照明部17は、テープ状部材2の上流側に設けても良いし、テープ状部材2の下流側に設けても良い。照明部17としては、例えば、可視光を照射するLEDを用いることができ、その中でも、白色光又は緑色光のLEDを用いると良い。なお、照明部17の光軸が貼着基準位置10に向けられるとは、照明部17が貼着基準位置10に向けて配置されていることを意味し、図1に示す位置において光軸が貼着基準位置10と完全に交差していなくても良い。
【0040】
[撮像部]
撮像部18は、貼着基準位置10においてテープ状部材2を撮像する。撮像部18は、例えば、カメラである。撮像部18は、光軸を貼着基準位置10に合わせて、テープ状部材2における粘着テープ21側に配置されており、照明部17により粘着テープ21側からテープ状部材2が照らされた状態で、テープ状部材2を撮像する。撮像部18は、具体的には、テープ状部材2の下方であって、貼着基準位置10の真下に配置されており、光軸がテープ状部材2に対して直交する。すなわち、撮像部18の撮像範囲に貼着基準位置10が含まれており、テープ状部材2の送りにより当該撮像範囲に粘着テープ21の切れ目20が入ると、撮像部18は、切れ目20を含めてテープ状部材2を撮像する。なお、撮像部18の光軸はテープ状部材2に対して直交していなくても良い。例えば、撮像部18の光軸がテープ状部材2の搬送方向から見てテープ状部材2の垂線に対して15°程度斜交していても良い。なお、撮像部18においても光軸が貼着基準位置10と完全に一致する必要はなく、貼着基準位置10に位置付けられたテープ状部材2の所望の部分が撮像範囲に入れば良い。
【0041】
[制御部]
制御部19は、貼着装置1の各部の制御を統括する制御装置である。制御部19は、例えば、専用の電子回路若しくは所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって構成できる。つまり、貼着部11、テンション機構121、搬送部14、剥離部15、切断部16、照明部17、撮像部18の制御などに関しては、その制御内容がプログラムされており、PLCやCPUなどの処理装置により実行されるものである。
【0042】
図2は、制御部19の機能ブロック図である。図2に示すように、制御部19は、貼着制御部190、テンション機構制御部191、剥離制御部192、切断制御部193、照明制御部194、撮像制御部195、判定部196、搬送制御部197を有する。
【0043】
貼着制御部190は、貼着部11に設けられたヒータ及び昇降装置を制御し、ヒータに加圧ヘッド110を加熱させ、昇降装置に加熱した加圧ヘッド110を昇降させる。テンション機構制御部191は、テンション機構121に設けられた昇降機構を制御し、可動ローラ121bを上下動させることでテープ状部材2に張力を与える。
【0044】
剥離制御部192は、剥離部15に設けられた移動機構を制御し、剥離棒150、151を水平移動させることで捨打ちプレート112に圧着された粘着テープ21を離型テープ22から剥離する。切断制御部193は、切断部16に設けられた昇降機構を制御し、カッター160を昇降させる。
【0045】
照明制御部194は、照明部17の点灯、消灯を制御する。撮像制御部195は、撮像部18の撮像を制御する。
【0046】
判定部196は、撮像部18により得られたテープ状部材2の画像に基づいて、粘着テープ21の切れ目20の位置の良否や切断面の良否等の状態の良否を判定する。判定部196は、テープ状部材2の画像をグレースケール化し、粘着テープ21の切れ目20の位置を検知する。そして、判定部196は、検知された切れ目20が貼着基準位置10の許容範囲内に位置するか否かを判定する。切れ目20が許容範囲内に含まれる場合は良と判定し、切れ目20が許容範囲外である場合は不良と判定する。なお、グレースケール化とは、例えば、画像の明るさを当該明るさに応じた多段階の画素値への変換をいい、典型的には、画素値0(黒)~画素値255(白)の256階調を用いた変換である。
【0047】
判定部196は、撮像部18により得られたテープ状部材2の画像に基づいて、切れ目20としてのハーフカットライン20bを検知し、その切断面の形状の良否を判定する。ハーフカットライン20bの切断面の形状は、テープ状部材2を粘着テープ21側から見たときのカッター160により形成された切込みの形状である。ハーフカットライン20bは、例えば、テープ状部材2の幅方向における画素値の大きい(明るい)一直線状で検出された場合に良と判定し、画素値の大きい部分が一直線状でなく斜めになっている場合や、蛇行や欠けなどの凸凹になっている場合は不良と判定する。
【0048】
また、判定部196は、貼着基準位置10の前後の領域の粘着テープ21の有無に基づいて、粘着テープ21の頭出しの良否を判定する。粘着テープ21の頭出しとは、新たな供給リール120がセットされ、製品となる基板に貼着可能な先頭の粘着テープ21の先端に形成されたハーフカットライン20bを、貼着基準位置10を含む所定範囲内に位置合わせすることをいい、当該所定範囲は、ハーフカットライン20bが貼着基準位置10に位置合わせされているとして許容される範囲である。判定部196は、粘着テープ21の有無を、貼着基準位置10の前後の各領域を、更に複数の小領域に分けて行っても良い。
【0049】
搬送制御部197は、判定部196により切れ目20の位置が不良と判定された場合に、粘着テープ21の切れ目20と貼着基準位置10との距離(ずれ)を算出する。すなわち、切れ目20の位置が不良の場合、切れ目20の位置が貼着基準位置10に対して許容範囲以上にずれているので、切れ目20の位置が許容範囲内となるようにテープ状部材2の位置を補正する必要がある。そこで、搬送制御部197は、撮像部18の撮像画像に基づいて貼着基準位置10と切れ目20の位置との距離を算出し、算出した距離に基づいて送り用モータを駆動させる制御信号を生成する。すなわち、この制御信号は、算出した距離分、ハーフカットライン20bが貼着基準位置10に来るようにテープ状部材2を送るための信号であり、送り用モータに出力される。
【0050】
[動作]
上記の構成を有する粘着テープ21の貼着装置1の動作を説明する。
【0051】
[粘着テープの頭出し動作]
図3は、実施形態に係る貼着装置1の粘着テープ21の頭出し動作の一例を示すフローチャートである。
【0052】
なお、前提として、新しい供給リール120が供給部12にセットされ、テープ状部材2が供給リール120から引き出され、テンション機構121、経路ローラ122、剥離部15、送りローラ140、及び経路ローラ131を介して回収リール130に巻き掛けられている。また、このテープ状部材2における粘着テープ21は、巻き掛けられる前に下流側がオペレータにより剥離されており、粘着テープ21の切れ目20である先頭部分20aが撮像部18、つまり貼着基準位置10よりも上流側に位置しているものとする。すなわち、当該先頭部分20aより下流側では粘着テープ21が剥離され、離型テープ22の表面が露出している。粘着テープ21の先頭部分20aの形状は、オペレータにより剥離されるため、任意の形状である。例えば、テープ状部材2の幅方向と平行なラインであることもあれば、テープ状部材2の幅方向に対して傾斜したラインであったり、テープ状部材2の幅方向に対して山谷形状の蛇行したラインであったり凸凹のラインであったりすることもある。
【0053】
また、ステージ部材111の支持面111a上には、捨打ちプレート112が予め載置されているものとする。
【0054】
図3に示すように、照明制御部194により照明部17を点灯し、貼着基準位置10を含みテープ状部材2を照らす(ステップS01)。図4(a)に示すように、搬送部14によりテープ状部材2を所定ピッチずつ送り(ステップS02)、撮像部18及び判定部196により粘着テープ21の先頭部分20a(切れ目20)の位置の良否を判定する(ステップS03)。すなわち、撮像部18は、搬送部14によりテープ状部材2が送られると、貼着基準位置10を含む撮像範囲でテープ状部材2を撮影し、判定部196は撮像部18により得られた画像をグレースケール化し、図4(b)に示すように、その濃淡差から貼着基準位置10を含む所定範囲R1内に粘着テープ21の先頭部分20aが含まれているか否かを判定する。粘着テープ21がある部分は暗く、粘着テープ21がない部分は明るくなり、明暗の境界が先頭部分20aとなる。所定範囲R1は、例えば、撮像範囲内に設定された検査エリアである。
【0055】
搬送部14の送りのピッチは、所定範囲R1のテープ状部材2の搬送方向の長さと同じかそれより短い間隔である。判定部196により先頭部分20aが検知されなければ(ステップS03のNO)、ステップS02に戻り、先頭部分20aが検知されるまでステップS02及びS03を繰り返す。
【0056】
判定部196により先頭部分20aが検知されると(ステップS03のYES)、テープ状部材2を先頭部分20aが検知された位置に停止させた状態で、切断制御部193によりカッター160を上昇させ、テープ状部材2をハーフカットし(ステップS04)、図4(c)に示すように、粘着テープ21を切断して切れ目20としてのハーフカットライン20bを形成する。そして、搬送部14により切断部16(カッター160)と貼着基準位置10との距離分、テープ状部材2を送る(ステップS05)。次いで、撮像部18によりテープ状部材2を撮影し、判定部196によりハーフカットライン20bの有無を検知する(ステップS06)。ハーフカットライン20bを検知しなかった場合(ステップS06のNO)は、ステップS04に戻る。
【0057】
ハーフカットライン20bを検知した場合(ステップS06のYES)は、判定部196により、図4(d)に示すように、検知されたハーフカットライン20bが貼着基準位置10を含む許容範囲内にあるか否かを判定する(ステップS07)。ハーフカットライン20bが許容範囲内にない場合は(ステップS07のNO)、テープ状部材2の送り補正を行う。すなわち、搬送制御部197は、所定範囲R1内において認識されたハーフカットライン20bの位置と貼着基準位置10の位置とに基づいて、ハーフカットライン20bと貼着基準位置10との間の距離を算出し(ステップS08)、搬送部14により、ハーフカットライン20bが貼着基準位置10に来るように、算出された距離分、テープ状部材2を送り(ステップS09)、ステップS07に戻る。
【0058】
ハーフカットライン20bが許容範囲内にある場合(ステップS07のYES)、粘着テープ21の先頭部分20aからハーフカットライン20bまでの部分が加圧ヘッド110と捨打ちプレート112との間に位置している。この状態で、予め加熱した加圧ヘッド110でテープ状部材2を押し下げ、ハーフカットライン20bより下流側の不要な粘着テープ21を捨打ちプレート112に捨て打ちする(ステップS10、図4(e)参照)。すなわち、貼着制御部190により、予め加熱された加圧ヘッド110を下降させ、先頭部分20aからハーフカットライン20bまでの不要な粘着テープ21を捨打ちプレート112に貼着し、加圧ヘッド110を上昇させる。その後、剥離制御部192により、剥離棒150、151を貼着部11側に水平移動させて、捨打ちプレート112に圧着された粘着テープ21から離型テープ22を剥離させる(ステップS11)。
【0059】
離型テープ22が剥離されたら、撮像部18によりテープ状部材2を撮影する(ステップS12)。なお、このとき、テープ状部材2は送られていないので、貼着基準位置10の上流側に残った粘着テープ21の切れ目20の位置は貼着基準位置10に位置したまま変わらない。判定部196は、撮像部18により得られた画像をグレースケール化し、図4(f1)、(f2)に示すように、貼着基準位置10の前後にそれぞれ3箇所ずつ設定された合計6箇所の検査エリアとしての小領域R11~R16において、それぞれ粘着テープ21の有無を判定する(ステップS13)。前後の3箇所の小領域R11、R12、R13およびR14、R15、R16は、テープ状部材2の幅方向に並べて配置されるように予め設定されている。この粘着テープ21の有無の判定は、例えば、各小領域R11~R16内において、所定の画素値以上となるピクセルの割合が所定割合以上となる場合、換言すれば所定の画素値未満となるピクセルの割合が所定割合未満となる場合は、当該小領域R11~R16内に粘着テープ21がないと判定し、所定の画素値以上となるピクセルの割合が所定割合未満となる場合、換言すれば所定の画素値未満となるピクセルの割合が所定割合以上となる場合は、当該小領域R11~R16内に粘着テープ21があると判定する。これにより、判定部196は、不要な粘着テープ21が剥離された後で上流側に残った粘着テープ21の先端(ハーフカットライン20b)の状態(形状)の良否を判断することで頭出しの良否を判定する。
【0060】
判定部196は、図4(f1)に示すように、貼着基準位置10の前(下流側)にある小領域R14~R16の少なくとも何れかで粘着テープ21があると判定した場合は(ステップS14のNO)、頭出し不良としてステップS04へ戻る。なお、この場合、不要な粘着テープ21の剥離時に粘着テープ21の一部が剥離されずに離型テープ22に残り、剥離不良となっていることが考えられる。
【0061】
一方、図4(f2)に示すように、貼着基準位置10の前(下流側)にある小領域R14~R16の何れにおいても粘着テープ21がないと判定した場合で(ステップS14のYES)、貼着基準位置10の後ろ(上流側)にある小領域R11~13の少なくとも何れかで粘着テープ21がないと判定した場合(ステップS15のNO)、頭出し不良としてステップS04に戻る。この場合、不要な粘着テープ21の剥離時に、先頭の粘着テープ21である上流側の粘着テープ21の先端の一部が一緒に剥離されてしまったことが考えられる。この原因としては、カッター160によるハーフカットが不良で、ハーフカットライン20bにおいて不要な粘着テープ21と先頭の粘着テープ21の一部が繋がっていることが考えられる。
【0062】
また、図4(g)に示すように、貼着基準位置10の前(下流側)にある小領域R14~R16の何れにおいても粘着テープ21がないと判定した場合で(ステップS14のYES)、貼着基準位置10の後ろ(上流側)にある各小領域R11~13の何れにおいても粘着テープ21があると判定した場合(ステップS15のYES)、頭出しが出来ていると判定し、終了する。
【0063】
なお、ステップS06、ステップS14、又はステップS15のNO判定でステップS04に戻り、次のステップS06、ステップS14、又はステップS15で再度NO判定となることが繰り返されることも考えられる。このような場合、繰り返し回数を判定するステップを、ステップS06又はステップS14よりも前に設定しておき、設定回数の繰り返しが行われた場合、エラーとして頭出し動作を中断し、アラームなどでオペレータに異常を報知するようにしても良い。このような場合、前述のカッター160によるハーフカット不良が原因の一つとして考えられる。そこで、制御部19が、アラームにより、カッター160を清掃したり交換したりするメンテナンス作業の実行を促すようにしても良い。
【0064】
[作用]
実施形態の貼着装置1の作用を図5図8を用いて、比較例を示しつつ説明する。
【0065】
(照明部の傾斜)
図5(a)は、比較例の貼着装置におけるテープ状部材2の撮影の様子を示す断面図である。図5(b)は、比較例の貼着装置で得られたテープ状部材2の画像である。但し、当該画像の各位置に対する画素値のグラフを画像に重ねて記載している。画素値は、黒を0とし、255を白とする256階調で表されている。
【0066】
図5(a)に示すように、撮像部18の内部にはハーフミラーMが設けられており、照明Lは、その光軸がハーフミラーMに向けられ、照明Lの光がハーフミラーMで反射され、照明Lの光は、撮像部18の光軸と平行な同軸光として、テープ状部材2に対し垂直な方向から入射する。
【0067】
図5(b)に示すように、粘着テープ21と離型テープ22の画素値に殆ど差が得られなかった。そのため、粘着テープ21の切れ目20の検知が困難となった。
【0068】
このように、単に照明Lを設けただけでは、粘着テープ21の切れ目20の検知が困難であることが分かる。
【0069】
図6(a)は、実施形態の貼着装置1におけるテープ状部材2の撮影の様子を示す断面図である。図6(b)は、実施形態の貼着装置1で得られたテープ状部材2の画像である。但し、当該画像の各位置に対する画素値のグラフを画像に重ねて記載している。画素値は、黒を0とし、255を白とする256階調で表されている。
【0070】
図6(a)に示すように、照明部17の光軸がテープ状部材2の垂線に対して斜交し、撮像部18の光軸がテープ状部材2に対して直交している。このように構成することで、図6(b)に示すように、粘着テープ21と離型テープ22の画素値に大きな差が生じ、粘着テープ21のある箇所とない箇所のコントラストが明瞭となった。これは、離型テープ22の表面の微細な凹凸の形状と、粘着テープ21に含有する微細な金属微粒子の形状に起因すると推測する。すなわち、粘着テープ21の金属粒子はほぼ球形であり、照明部17からの入射光が同軸であろうと斜交していようと撮像部18に入る拡散光の量が大きく変わることが無い。これに対して、離型テープ22の表面の凹凸はランダムであり、そのため、照明部17からの入射光を斜交させたことによって撮像部18に入る拡散光の量が増大したものと推測する。例えば、図6は、照明部17の光軸がテープ状部材2の垂線に斜交する角度θを75°に設定したものであるが、粘着テープ21がある箇所の画素値が157程度となり、粘着テープ21がない箇所の画素値が97程度となった。このように濃淡差が50以上となり、粘着テープ21の切れ目20を安定的に検知することができる。
【0071】
そこで、発明者等は、照明部17の光軸の角度と撮像部18に入る光の量との関係を調べる実験を行った。図7は、照明部17の光軸のテープ状部材2の垂線に対する傾斜角度θと、当該角度における粘着テープ21の切れ目20の検知結果を示す。なお、検知結果は、照明部17として、清和光学製作所製の白色のLED(型式:SBR-15-50W)を用い、撮像部18として、オムロン社製のカメラ(型式:FZ-S)を用い、テープ状部材2と撮像部18との距離を100mmとして得られた結果である。また、撮影対象としたテープ状部材2は、粘着テープ21の切れ目20がテープ状部材2の幅方向に平行に設けられているものを用いた。
【0072】
図7に示すように、傾斜角度θを30°、45°、60°、75°、85°、90°に変えて切れ目20の検知を試みた。この結果、30°、45°、90°の場合、切れ目20の良好な検知ができなかった。一方、傾斜角度θが60°、75°、85°のときは、切れ目20の良好な検知ができた。すなわち、粘着テープ21がある箇所と、粘着テープ21がない箇所の画素値の差が50以上となり大きく、粘着テープ21の有無の検知の判定精度が向上した。
【0073】
このように、傾斜角度θは、60°~85°とすることにより、粘着テープ21の先頭部分の検知、粘着テープ21に形成されたハーフカットライン20bの検知、及び、貼着基準位置10の前後の粘着テープ21の有無の検知でも共通して粘着テープ21の有無の判定精度を向上させることができる。
【0074】
(テープ状部材の送り補正)
テープ状部材2の送り補正について説明する。上記の通り、切断部16と貼着基準位置10との間の距離は、予め決まっており、ハーフカットライン20bを形成した後、搬送部14及び搬送制御部197によって当該距離の分、テープ状部材2を送ることで、ハーフカットライン20bが貼着基準位置10に来る。
【0075】
しかし、実際には、送り用モータ若しくは送りローラ140の回転誤差又はテープ状部材2の伸縮等の発生により、テープ状部材2の送り量に誤差が発生する場合がある。テープ状部材2の伸縮は、テープ状部材2の幅が細くなる程、一定の張力でも伸びやすく、また、各ローラ等での引っかかりが起きやすくなる。したがって、テープ状部材2は、品種毎に固有の伸びを生じることがある。このように、テープ状部材2の送り量に誤差が発生すると、粘着テープ21の送り方向の貼付誤差が大きくなる。
【0076】
そこで、本実施形態では、撮像部18及び判定部196により、ハーフカットライン20bが貼着基準位置10の許容範囲内に位置しているかを判定しており、ハーフカットライン20bが所定範囲から外れている場合には、搬送制御部197により、粘着テープ21のハーフカットライン20bと貼着基準位置10との距離を算出し、当該距離分ハーフカットライン20bが貼着基準位置10に来るように搬送部14によりテープ状部材2を送る補正量を設定する。後述の貼着動作の際には、当該補正量を加えた送り量でテープ状部材2を貼着基準位置10に送る。
【0077】
すなわち、図8(a)に示すように、テープ状部材2の送りによりハーフカットライン20bが貼着基準位置10の手前にずれた場合、ずれた距離D1分、テープ状部材2を貼着部11側に送る。一方、図8(b)に示すように、テープ状部材2の送りによりハーフカットライン20bが貼着基準位置10を越えてずれた場合、ずれた距離D2分、テープ状部材2を切断部16側に戻すよう送る。
【0078】
このように、ハーフカットライン20bと貼着基準位置10とのずれを検知し、当該ずれを解消するようにテープ状部材2の送りを補正するので、粘着テープ21の頭出しを正確に行うことができ、その結果、貼着部11に設けた基板に対して、正確に粘着テープ21を貼着することができる。
【0079】
[貼着動作]
図9は、貼着装置1の、基板に対する粘着テープ21の貼着動作の一例を示すフローチャートである。図10は、貼着装置1の貼着動作を示す図である。
【0080】
前提として、図10(a)に示すように、粘着テープ21の切れ目20(ハーフカットライン20b)が貼着基準位置10に位置しており、粘着テープ21の頭出しが完了しているものとする。つまり、カッター160は頭出し動作の過程で検査済みであり、切れ目20となるハーフカットライン20bが切断部16によりテープ状部材2の幅方向と平行になるように正常に形成されている。また、切れ目20より下流側には粘着テープ21が残存しておらず、送りローラ140等のテープ状部材2と接する部材に粘着テープ21が付着することなく、テープ状部材2が搬送不良となるのを防止することができる。
【0081】
また、ステージ部材111の支持面111a上には、捨打ちプレート112に代えて、例えばフラットパネルディスプレイを構成する部材としての製品用の基板300が載置されているものとする。なお、基板300には、所望の長さで粘着テープ21が貼着される。ここでは、便宜上、基板300の搬送方向の全体に粘着テープ21を貼着するものとし、切断部16と貼着基準位置10との間の距離が、基板300の長さ及び加圧ヘッド111の長さと等しいものとする。
【0082】
図10(b)に示すように、まず、切断部16により、テープ状部材2をハーフカットする(ステップS21)。そして、図10(c)に示すように、搬送部14により、カッター160と貼着基準位置10との距離分、テープ状部材2を送る(ステップS22)。この送りにより、ステップS21で形成したハーフカットライン20bが貼着基準位置10に合致する。その後、ステージ部材111を移動させて基板300における粘着テープ21が貼着される縁部をテープ状部材2の下に位置付ける。そして、予め加熱された加圧ヘッド110を降下させ、加圧ヘッド110とステージ部材111とで基板300とテープ状部材2を挟み込んで圧着し、テープ状部材2の粘着テープ21を基板300上に貼着する(ステップS23)。その後、加圧ヘッド110を上昇させ、剥離部15を貼着部11側に水平移動させることにより、図10(d)に示すように、基板300に貼着した粘着テープ21から離型テープ22を剥離し(ステップS24)、剥離部15を元の位置に戻す。
【0083】
その後、粘着テープ21が未貼着の基板300に粘着テープ21を貼着する場合は(ステップS25のYES)、ステージ部材111上の貼着済みの基板を、粘着テープ21が未貼着の新たな基板300に交換し、ステップS21に戻る。
【0084】
一方、粘着テープ21が未貼着の基板300に粘着テープ21を貼着しない場合は(ステップS25のNO)、終了する。なお、テープ状部材2を送るステップS22で、上述のステップS06~S09と同様のテープ状部材2の送り補正を行うようにしても良い。
【0085】
[効果]
実施形態の粘着テープ21の貼着装置1は、離型テープ22に粘着テープ21が貼着されたテープ状部材2を供給する供給部12と、貼着対象物に対して、粘着テープ21の離型テープ22とは反対側の貼着面を貼着する貼着部11と、テープ状部材2を供給部12から貼着部11に送る搬送部14と、テープ状部材2における粘着テープ21側に配置され、光軸が、貼着部11に対して設定された貼着基準位置10に向けられるとともに貼着基準位置10に位置する粘着テープ21の貼着面の垂線方向に対して、予め設定した角度で斜交して設けられている照明部17と、光軸を貼着基準位置10に合わせて、テープ状部材2における粘着テープ21側に配置され、貼着基準位置10に位置づけられたテープ状部材2を撮像する撮像部18と、撮像部18により得られたテープ状部材2の画像に基づいて、粘着テープにおける切れ目20の状態の良否を判定する判定部196と、を備えるようにした。
【0086】
これにより、粘着テープ21の切れ目20を自動的に認識できるので、手動で粘着テープ21の頭出しをすることなく、粘着テープ21の頭出しを自動的に行うことができる。すなわち、上記の比較例のように照明部Lを光軸がテープ状部材2に対して直交するように設けたのでは、テープ状部材2の画像が不鮮明となり、切れ目20の検知が困難であった。これに対し、本発明者等の鋭意研究により、照明部17をテープ状部材2の垂線に対して斜交して設けることで、テープ状部材2の画像のコントラストが明瞭になる知見を得た。この知見に基づく本実施形態によれば、粘着テープ21の頭出しを自動的に行うことができる。
【0087】
供給部12と貼着部11との間に設けられたカッター160を有し、テープ状部材2の粘着テープ21を切断して切れ目20となるハーフカットライン20bを形成する切断部16を備え、搬送部14は、ハーフカットライン20bが貼着基準位置10に来るようにテープ状部材2を送り、撮像部18は、ハーフカットライン20bを含んでテープ状部材2を撮像し、判定部196は、撮像部18により得られた画像からハーフカットライン20bを検知し、ハーフカットライン20bの切断面の形状の良否を判定するようにした。
【0088】
これにより、カッター160の消耗を管理することができる。すなわち、ハーフカットライン20bが不良と判定された場合には、カッター160の刃が消耗していると考えられる。この場合、例えば、制御部19に、ディスプレイ等の表示装置やスピーカ等の報知手段を接続しておき、画面上又は音声でオペレータにカッター160の交換を促すことができる。
【0089】
判定部196は、検知したハーフカットライン20bが貼着基準位置10の許容範囲にあるか否かを判定するようにした。
【0090】
これにより、ハーフカットラインの貼着基準位置10に対する位置合わせの精度を向上させることができる。
【0091】
ハーフカットライン20bと貼着基準位置10との距離を算出する搬送制御部197を備え、判定部196によりハーフカットライン20bが許容範囲から外れていると判定された場合に、搬送部14は、搬送制御部197により算出された距離に基づいて、ハーフカットライン20bが貼着基準位置10に位置付けるようにテープ状部材2を送るようにした。
【0092】
これにより、粘着テープ21の頭出しの精度を向上させることができ、テープ状部材2の走行方向における、貼着対象物となる基板への粘着テープ21の貼着位置精度を向上させることができる。
【0093】
貼着部11は、ハーフカットライン20bより下流側の粘着テープ21を貼着対象物、具体的には捨打ちプレート112に貼着し、撮像部18は、貼着部11による貼着後のテープ状部材2を撮影し、判定部196は、貼着基準位置10の前後に、粘着テープ21の幅方向に沿って複数個設定した領域内において粘着テープ21の有無を判定し、この判定結果に基づいて、粘着テープ21の頭出しの良否を判定するようにした。
【0094】
これにより、貼着基準位置10の前で粘着テープ21が残存せず、貼着基準位置10の後ろで粘着テープ21がある状態にすることができ、粘着テープ21の頭出しを正確に行うことができる。また、貼着部11より下流に位置する搬送部14等のローラに離型テープ22に残存した粘着テープ21が巻き込まれることによるテープ状部材2の搬送不良を防止することができる。
【0095】
判定部196は、画像をグレースケール化し、切れ目20を検知するようにした。これにより、切れ目20の有無のみならず、切れ目20の良否についても正確に検知することができる。例えば、切れ目20がハーフカットライン20bである場合、ハーフカットライン20bが、カッター160の刃先の汚れや刃こぼれ等により実際には粘着テープ21が切断しきれず粘着テープ21が本来の厚みよりも薄い厚みで部分的に残り点線状に見えることが考えられる。この画像を二値化処理するとハーフカットライン20bが正常に形成されていると誤検知することがある。すなわち、残った粘着テープ21の厚みが薄いために、この粘着テープ21部分の画素値が二値化しきい値に対して粘着テープ21無し側である場合、ハーフカットライン20bが良と検知される。このような状況でも、画像をグレースケール化することで、ハーフカットライン20b上の粘着テープ21が画像中から消えずに残っており、ハーフカットライン20bが不良であると検知することができる。
【0096】
照明部17は、光軸がテープ状部材2の垂線に対して60°~85°傾斜して設けるようにした。これにより、撮像部18及び判定部196により得られたテープ状部材2の画像のコントラストをより明瞭にすることができ、正確に切れ目20を検知することができる。
【0097】
照明部17は、白色光又は緑色光を照射するようにした。これにより、撮像部18及び判定部196により得られたテープ状部材2の画像のコントラストをより明瞭にすることができ、正確に切れ目20を検知することができる。特に、白色光又は緑色光の照明部17と粘着テープ21が異方性導電フィルムである場合に、コントラストがより明瞭になり、切れ目20の検知精度が向上し、結果的に頭出しの精度を向上させることができる。
【0098】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、下記に示す他の実施形態も包含する。また、本発明は、上記実施形態及び下記の他の実施形態を全て又はいずれかを組み合わせた形態も包含する。さらに、これらの実施形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も本発明に含まれる。
【0099】
上記実施形態では、照明部17は、貼着基準位置10に対してテープ状部材2の上流側に設けたが、図11に示すように、テープ状部材2の下流側に設けても良い。この場合、粘着テープ21の捨打ち後、粘着テープ21の切れ目20bの断面が照明部17側に露出することで、その断面が直接照らされ、テープ状部材2の画像のコントラストが明瞭になる。以下のメカニズムに限定されるものではないが、切れ目20bの端面や粘着テープ21内の金属粒子で反射した光が、切れ目20bより下流側の離型テープ22でも反射して撮像部18に入光し、切れ目20b付近で反射した受光量が増大するからと考えられる。
【0100】
また、上記実施形態では、テープ状部材2の送り量の補正を搬送部14により行ったが、貼着部11を移動させる移動機構を別途設け、当該移動機構により貼着部11を移動させることによって、貼着基準位置10をハーフカットライン20bに位置合わせするようにしても良い。
【0101】
上記実施形態では、貼着基準位置10を、加圧ヘッド110の上流側の端部と一致する位置に設定したが、別の位置、例えば、加圧ヘッド110の上流側の端部よりも上流側の位置に設定しても良い。
【0102】
上記実施形態では、新たなテープ状部材2を貼着装置1にセッティングした時点で、粘着テープ21の先頭部分となる切れ目20は、オペレータにより形成された任意の形状としたが、セッティング時点で切れ目20がテープ状部材2の幅方向に平行に形成されていても良い。この場合、粘着テープ21の頭出し動作は、上記のステップS01~S03で足りる。
【符号の説明】
【0103】
1 粘着テープの貼着装置
10 貼着基準位置
11 貼着部
110 加圧ヘッド
111 ステージ部材
111a 支持面
112 捨打ちプレート
12 供給部
120 供給リール
121 テンション機構
121a 固定ローラ
121b 可動ローラ
122 経路ローラ
13 回収部
130 回収リール
131 経路ローラ
14 搬送部
140 送りローラ
15 剥離部
150、151 剥離棒
16 切断部
160 カッター
161 バックアップ部材
161a 平坦面
17 照明部
18 撮像部
19 制御部
190 貼着制御部
191 テンション機構制御部
192 剥離制御部
193 切断制御部
194 照明制御部
195 撮像制御部
196 判定部
197 搬送制御部
2 テープ状部材
20 粘着テープの切れ目
20a 粘着テープの先頭部分
20b ハーフカットライン
21 粘着テープ
22 離型テープ
300 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11