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特許7427074部品実装機の不調判定装置および不調判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】部品実装機の不調判定装置および不調判定方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20240126BHJP
【FI】
H05K13/04 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022502655
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2020007709
(87)【国際公開番号】W WO2021171416
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 有城
(72)【発明者】
【氏名】内藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】中井 健二
(72)【発明者】
【氏名】山中 大輔
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-186260(JP,A)
【文献】特開2013-080746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を採取する採取部材を有するヘッドと、
前記ヘッドを移動させる移動装置と、
前記ヘッドおよび前記移動装置の制御により実装動作を行なって実装の良否を検査する第1検査と、前記ヘッドのキャリブレーション測定を行なって測定の良否を検査する第2検査とを含む複数の検査を実行する検査部と、
前記複数の検査の結果の組み合わせに基づいて前記ヘッドと前記移動装置とを含む不調の有無と不調箇所とを判定する判定部と、
を備え
前記判定部は、前記第1検査の結果が不調ありの結果であった場合、前記第2検査の結果が不調なしの結果であれば前記移動装置が不調であると判定し、前記第2検査の結果が不調ありの結果であれば前記ヘッドが不調であると判定する、
部品実装機の不調判定装置。
【請求項2】
部品を採取する採取部材を有するヘッドと、
前記ヘッドを移動させる移動装置と、
前記ヘッドおよび前記移動装置の制御により実装動作を行なって実装の良否を検査する第1検査と、前記ヘッドに付されたマーク、又は、前記ヘッドに装着された治具のマークを撮像するキャリブレーション測定を行なって測定の良否を検査する第2検査とを含む複数の検査を実行する検査部と、
前記複数の検査の結果の組み合わせに基づいて前記ヘッドと前記移動装置とを含む不調の有無と不調箇所とを判定する判定部と、
を備える部品実装機の不調判定装置。
【請求項3】
部品を採取する採取部材を有するヘッドと、
前記ヘッドを移動させる移動装置と、
前記ヘッドおよび前記移動装置の制御により実装動作を行なって実装の良否を検査する第1検査と、前記ヘッドのキャリブレーション測定を行なって測定の良否を検査する第2検査とを含む複数の検査を実行する検査部と、
前記複数の検査の結果の組み合わせに基づいて前記移動装置が不調であるか、前記ヘッドが不調であるかのいずれかを判定する判定部と、
を備える部品実装機の不調判定装置。
【請求項4】
部品を採取するノズルを着脱可能に有するヘッドと、
前記ヘッドを移動させる移動装置と、
前記ヘッドおよび前記移動装置の制御により実装動作を行なって実装の良否を検査する第1検査と、前記ヘッドのキャリブレーション測定を行なって測定の良否を検査する第2検査とを含む複数の検査を実行する検査部と、
前記複数の検査の結果の組み合わせに基づいて前記ヘッドと前記移動装置とを含む不調の有無と不調箇所とを判定する判定部と、
を備える部品実装機の不調判定装置。
【請求項5】
請求項2ないし4いずれか1項に記載の部品実装機の不調判定装置であって、
前記判定部は、前記第1検査の結果が不調ありの結果であった場合、前記第2検査の結果が不調なしの結果であれば前記移動装置が不調であると判定し、前記第2検査の結果が不調ありの結果であれば前記ヘッドが不調であると判定する、
部品実装機の不調判定装置。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか1項に記載の部品実装機の不調判定装置であって、
前記検査部は、前記第1検査および前記第2検査が終了した後、前記部品実装機をシャットダウンする、
部品実装機の不調判定装置。
【請求項7】
請求項1ないしいずれか1項に記載の部品実装機の不調判定装置であって、
前記第1検査は、同一種類の複数の部品を前記採取部材に順次採取して検査用基板に順次実装し、実装した各部品の位置ずれを検出することにより実装の良否を判定する検査であり、
前記検査部は、前記検査用基板がセットされ、且つ、検査の開始が指示されたときに、前記第1検査を開始する、
部品実装機の不調判定装置。
【請求項8】
請求項1ないしいずれか1項に記載の部品実装機の不調判定装置であって、
前記検査部は、予め設定された時期が到来したとき、又は、検査の開始が指示されたときに、前記第2検査を開始する、
部品実装機の不調判定装置。
【請求項9】
請求項1ないしいずれか1項に記載の部品実装機の不調判定装置であって、
前記判定の結果を通知する通知部
を備える部品実装機の不調判定装置。
【請求項10】
部品を採取する採取部材を有するヘッドと、前記ヘッドを移動させる移動装置と、を備える部品実装機の不調を判定する部品実装機の不調判定方法であって、
前記ヘッドおよび前記移動装置の制御により実装動作を行なって実装の良否を検査する第1検査と、前記ヘッドに付されたマーク、又は、前記ヘッドに装着された治具のマークを撮像するキャリブレーション測定を行なって測定の良否を検査する第2検査とを含む複数の検査を実行し、
前記複数の検査の結果の組み合わせに基づいて前記ヘッドと前記移動装置とを含む不調の有無と不調箇所とを判定する、
部品実装機の不調判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、部品実装機の不調判定装置および不調判定方法について開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品実装ラインにおいて、実装基板を製造中にデバイスの不調を検知する不調検知システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このシステムは、データ収集部と判定部と通知処理部とを備える。データ収集部は、複数の部品実装機を含む部品実装ラインから稼働状況データを収集する。判定部は、データ収集部が収集した稼働状況データに含まれる1以上の特徴量データの傾向が正常時の特徴量データの傾向から外れているか否かを判定する。通知処理部は、判定部が特徴量データの傾向が正常時の傾向から外れていると判定すると、その特徴量データに対応するデバイスが不調であると表示部に通知させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-62163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、装置の不調を検査するものの一つとして、部品を採取して基板に実装する実装動作を行なった後、実装位置のずれを測定することで、実装精度の良否を検査する場合が考えられる。この場合、検査結果が不調ありの結果であっても、その不調箇所がどこにあるのか分からないと、作業者は、不調箇所の調査のために多くの作業時間を必要とし、作業負担が過大となってしまう。
【0005】
本開示は、ヘッドと移動装置とを備え、部品を基板に実装する部品実装機の不調を判定するものにおいて、その不調箇所を判定することが可能な不調判定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の部品実装機の不調判定装置は、
部品を採取する採取部材を有するヘッドと、
前記ヘッドを移動させる移動装置と、
前記ヘッドおよび前記移動装置の制御により実装動作を行なって実装の良否を検査する第1検査と、前記ヘッドのキャリブレーション測定を行なって測定の良否を検査する第2検査とを含む複数の検査を実行する検査部と、
前記複数の検査の結果の組み合わせに基づいて前記ヘッドと前記移動装置とを含む不調の有無と不調箇所とを判定する判定部と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
第1検査は、ヘッドを構成するパーツの動作と移動装置を構成するパーツの動作とに関連してデータの測定が行なわれる。一方、第2検査は、ヘッドを構成するパーツの動作に関連してデータの測定が行なわれる。したがって、本開示の部品実装機の不調判定装置によれば、第1検査の結果および第2検査の結果の組み合わせに基づいてヘッドと移動装置とを含む不調の有無と不調箇所とを適正に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】部品実装システムの概略構成図である。
図2】部品実装機の概略構成図である。
図3】実装ヘッドの概略構成図である。
図4】ZS軸駆動装置の概略構成図である。
図5】部品実装機の制御装置と管理装置との電気的な接続関係を示すブロック図である。
図6】検査処理の一例を示すフローチャートである。
図7】キャリアの外観斜視図である。
図8】実装精度データの一例を示す説明図である。
図9】治具ノズルの概略構成図である。
図10】キャリブレーションデータの一例を示す説明図である。
図11】不調判定処理の一例を示すフローチャートである。
図12】記憶装置に記憶される測定値の一例を示す説明図である。
図13】測定値の解析結果の一例を示す説明図である。
図14】不調判定結果の通知画面の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1は、部品実装システムの概略構成図である。図2は、部品実装機の上面図である。図3は、実装ヘッドの概略構成図である。図4は、ZS軸駆動装置の概略構成図である。図5は、部品実装機の制御装置と管理装置との電気的な接続関係を示すブロック図である。なお、図1,2中、左右方向をX軸方向とし、前後方向をY軸方向とし、上下方向をZ軸方向とする。
【0011】
部品実装システム1は、図1に示すように、印刷機2と、印刷検査装置3と、複数の部品実装機10と、実装検査装置(図示せず)と、システム全体を管理する管理装置100(図5参照)と、を備える。印刷機2は、基板S上にはんだを印刷する装置である。印刷検査装置4は、印刷機2で印刷されたはんだの状態を検査する装置である。部品実装機10は、部品を基板Sに実装する装置である。実装検査装置は、部品実装機10で実装された部品の実装状態を検査する装置である。印刷機2と印刷検査装置3と複数の部品実装機10と実装検査装置は、この順番で基板Sの搬送方向に並べて設置されて生産ラインを構成する。
【0012】
部品実装機10は、図2に示すように、基台11上に設置された筐体12と、フィーダ21と、基板搬送装置22と、ヘッド移動装置30と、実装ヘッド40と、制御装置90(図5参照)と、を備える。また、部品実装機10は、これらの他に、パーツカメラ23やマークカメラ24、ノズルステーション25なども備えている。なお、パーツカメラ23は、フィーダ21と基板搬送装置22との間に設けられ、実装ヘッド40の吸着ノズル45に吸着された部品Pを下方から撮像するためのものである。また、マークカメラ24は、実装ヘッド40に設けられ、基板Sに付された基準マークを上方から撮像して読み取るためのものである。さらに、ノズルステーション25は、交換用の複数種の吸着ノズルが収容されると共に、後述する実装ヘッド40のキャリブレーション測定に用いられる治具ノズルINが収容される。
【0013】
フィーダ21は、図2に示すように、部品実装機10の前面部に、X軸方向(左右方向)に沿って配列される。フィーダ21は、図示しないが、テープが巻回されたテープリールと、テープリールからテープを引き出して部品供給位置へ送り出すテープ送り機構と、を備える。テープには、その長手方向に沿って所定間隔置きにキャビティが形成されている。キャビティには、部品Pが収容されている。フィーダ21は、フィーダ送り機構(モータ)によりテープを所定量ずつ送り出すことで、テープに収容された部品Pを順次、部品供給位置へと供給する。なお、テープに収容された部品Pは、テープの表面を覆うフィルムによって保護されており、部品供給位置の手前でフィルムが剥がされることで部品供給位置にて露出した状態となり、吸着ノズル45により吸着可能とされる。
【0014】
基板搬送装置22は、図1の前後に間隔を開けて設けられX軸方向(左右方向)に架け渡された1対のコンベアベルトを有している。基板Sは、基板搬送装置22のコンベアベルトにより図中左から右へと搬送される。
【0015】
ヘッド移動装置30は、実装ヘッド40をXY軸方向(前後左右の方向)に移動させるものであり、図2に示すように、X軸スライダ32と、Y軸スライダ34と、を備える。X軸スライダ32は、Y軸スライダ34の底面にX軸方向(左右方向)に延在するように設けられた上下一対のX軸ガイドレール31に支持され、X軸モータ36(図5参照)の駆動によってX軸方向に移動可能である。Y軸スライダ34は、筐体12の上段部にY軸方向(前後方向)に延在するように設けられた左右一対のY軸ガイドレール33に支持され、Y軸モータ38(図5参照)の駆動によってY軸方向に移動可能である。なお、X軸スライダ32は、X軸位置センサ37(図5参照)によりX軸方向の位置が検知され、Y軸スライダ34は、Y軸位置センサ39(図5参照)によりY軸方向の位置が検知される。X軸スライダ32には実装ヘッド40が取り付けられている。このため、実装ヘッド40は、ヘッド移動装置30(X軸モータ36およびY軸モータ38)を駆動制御することにより、XY平面(水平面)に沿って移動可能である。
【0016】
実装ヘッド40は、ロータリヘッドとして構成され、図3に示すように、ヘッド本体41と、回転体42と、複数(実施形態では、8個)のノズルホルダ44と、複数(実施形態では、8個)の吸着ノズル45と、R軸駆動装置50と、Q軸駆動装置60と、2つのZ軸駆動装置70と、ZS軸駆動装置80(図4参照)と、を備える。
【0017】
回転体42は、同軸に連結される回転軸43を介してヘッド本体41に回転可能に支持されている。回転体42の下面における軸中心には、カメラ(パーツカメラ23)によって検出される基準マーク(ヘッド基準マークHM)が形成されたマーク形成部材46が設けられている。
【0018】
ノズルホルダ44は、回転体42の軸中心を中心とした同一円周上において所定角度間隔(実施形態では、45度間隔)をおいて配列され、且つ、回転体42に昇降自在に支持されている。ノズルホルダ44の先端部には、吸着ノズル45が装着される。吸着ノズル45は、先端に吸着口を有し、図示しない負圧源から圧力調整弁47(図5参照)を介して吸着口に供給される負圧により部品Pを吸着する。なお、吸着ノズル45は、ノズルホルダ44に対して着脱可能であり、吸着する部品Pの種類に応じてその吸着に適したものに交換される。
【0019】
R軸駆動装置50は、回転体42を回転させて、複数のノズルホルダ44(複数の吸着ノズル45)を回転体42の中心軸回りに円周方向に旋回(公転)させるものである。R軸駆動装置50は、図3に示すように、R軸モータ51と、R軸モータ51の回転軸に設けられた駆動ギヤ52と、回転体42の外周面に同軸に設けられると共に駆動ギヤ52と噛合する外歯のR軸ギヤ53と、を備える。R軸駆動装置50は、R軸モータ51によりR軸ギヤ53を回転駆動することにより、回転体42を回転させる。各ノズルホルダ44は、回転体42の回転によって、吸着ノズル45と一体となって円周方向に旋回(公転)する。また、R軸駆動装置50は、この他に、R軸ギヤ53の回転位置、即ち各ノズルホルダ44(吸着ノズル45)の旋回位置を検知するためのR軸位置センサ55(図5参照)も備える。
【0020】
Q軸駆動装置60は、各ノズルホルダ44(各吸着ノズル45)をその中心軸回りに回転(自転)させるものである。Q軸駆動装置60は、図3に示すように、Q軸モータ61と、Q軸モータ61の回転軸に設けられた駆動ギヤ62と、各ノズルホルダ44に同軸に設けられたピニオンギヤ63と、駆動ギヤ62と噛合すると共に各ピニオンギヤ63と噛合するQ軸ギヤ64と、を備える。ピニオンギヤ63は、各ノズルホルダ44の上部に設けられ、Q軸ギヤ64とZ軸方向(上下方向)にスライド可能に噛合する。Q軸ギヤ64は、回転軸43と同軸かつ相対回転可能に挿通された円筒部材として構成される。Q軸駆動装置60は、Q軸モータ61によりQ軸ギヤ64を回転駆動することにより、Q軸ギヤ64と噛合する各ピニオンギヤ63を纏めて同方向に回転させる。各ノズルホルダ44は、ピニオンギヤ63の回転によって、吸着ノズル45と一体となってその中心軸回りに回転(自転)する。また、Q軸駆動装置60は、この他に、Q軸ギヤ64の回転位置、即ち各ノズルホルダ44(吸着ノズル45)の回転位置を検知するためのQ軸位置センサ65(図5参照)も備える。
【0021】
各Z軸駆動装置70は、ノズルホルダ44の旋回(公転)軌道上の2箇所においてノズルホルダ44を個別に昇降可能に構成されている。ノズルホルダ44に装着される吸着ノズル45は、ノズルホルダ44と共に昇降する。各Z軸駆動装置70は、いずれも、図3に示すように、Z軸スライダ71と、Z軸スライダ71を昇降させるZ軸モータ72と、を備える。また、各Z軸駆動装置70は、この他に、対応するZ軸スライダ71の昇降位置、即ち対応するノズルホルダ44(吸着ノズル45)の昇降位置を検知するためのZ軸位置センサ73(図5参照)も備える。各Z軸駆動装置70は、それぞれZ軸モータ72を駆動して対応するZ軸スライダ71を昇降させることにより、Z軸スライダ71の下方にあるノズルホルダ44と当接して、当該ノズルホルダ44を吸着ノズル45と一体的に昇降させる。なお、各Z軸駆動装置70は、リニアモータを用いて構成されてもよいし、回転モータと送りねじ機構とを用いて構成されてもよい。
【0022】
ZS軸駆動装置80は、実装ヘッド40(ヘッド本体41)を上下方向(ZS軸方向)に昇降させるものである。ZS軸駆動装置80は、図4に示すように、ZS軸方向に延在するガイドレール81と、ガイドレール81に沿ってヘッド本体41を昇降させるZS軸モータ82と、を備える。また、ZS軸駆動装置80は、この他にヘッド本体41の昇降位置を検知するためのZS軸位置センサ83(図5参照)も備える。なお、ZS軸駆動装置80は、リニアモータを用いて構成されてもよいし、回転モータと送りねじ機構とを用いて構成されてもよい。部品実装機10は、例えば、高さが低い部品Pを吸着して実装する場合には、実装ヘッド40を予め下降させておくことで、吸着ノズル45の昇降ストロークを短くすることができるため、動作時間を短縮させることが可能である。一方、部品実装機10は、高さが高い部品Pを吸着して実装する場合には、実装ヘッド40を予め上昇させておくことで、吸着動作を行なう際に吸着ノズル45が当該部品Pと干渉しないようにすることができる。これにより、部品実装機10は、実装ヘッド40を交換することなく、高さの異なる複数種の部品Pを取り扱うことができる。
【0023】
制御装置90は、図5に示すように、CPU91を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU91の他に、ROM92やHDD93、RAM94、入出力インタフェース(図示せず)などを備える。制御装置90には、X軸位置センサ37やY軸位置センサ39、R軸位置センサ55、Q軸位置センサ65、Z軸位置センサ73、ZS軸位置センサ83などからの各種検知信号が入出力インタフェースを介して入力されている。また、制御装置90には、パーツカメラ23やマークカメラ24からの画像信号なども入出力インタフェースを介して入力されている。一方、制御装置90からは、フィーダ21や基板搬送装置22、X軸モータ36、Y軸モータ38、R軸モータ51、Q軸モータ61、Z軸モータ72、ZS軸モータ82、圧力調整弁47、マークカメラ24、パーツカメラ23などへの各種制御信号が入出力インタフェースを介して出力されている。
【0024】
管理装置100は、図5に示すように、CPU101やROM102,HDD103(記憶装置),RAM104などを備える汎用のコンピュータである。管理装置100には、マウスやキーボードを含む入力デバイス105からの入力信号が入力されている。管理装置100からは、ディスプレイ106への表示信号が出力されている。
【0025】
次に、こうして構成された実施形態の部品実装機10の動作について説明する。制御装置90のCPU91は、まず、吸着対象の部品Pを供給するフィーダ21の部品供給位置の上方に吸着ノズル45が移動するようヘッド移動装置30を制御する。そして、CPU91は、吸着ノズル45が下降するよう対応するZ軸駆動装置70を制御すると共に吸着ノズル45の吸着口に負圧が供給されるよう圧力調整弁47を制御する。これにより、吸着ノズル45に部品Pが吸着される。
【0026】
CPU91は、吸着ノズル45に部品Pを吸着させると、実装ヘッド40がパーツカメラ23の上方へ移動するようヘッド移動装置30を制御し、パーツカメラ23により吸着ノズル45に吸着させた部品Pを下方から撮像する。続いて、CPU91は、撮像画像を処理して吸着ノズル45に吸着されている部品Pの吸着ずれ量(X軸方向およびY軸方向の各吸着ずれ量)を測定し(吸着検査)、測定した吸着ずれ量に基づいて基板Sの実装位置を補正する。次に、CPU91は、吸着ノズル45に吸着させた部品Pが補正した実装位置の上方へ位置するようヘッド移動装置30を制御する。そして、CPU91は、吸着ノズル45が下降するよう対応するZ軸駆動装置70を制御すると共に吸着ノズル45の吸着口への負圧の供給が解除されるよう圧力調整弁47を制御する。これにより、部品Pが基板Sの実装位置へ実装される。
【0027】
次に、部品実装機10を検査する検査処理と、検査結果に基づいて不調有無と不調箇所とを判定する不調判定処理とについて説明する。図6は、制御装置90のCPU91により実行される検査処理の一例を示すフローチャートである。
【0028】
検査処理では、制御装置90のCPU91は、まず、管理装置100から検査の実行指示を受信したか否かを判定する(S100)。検査の実行指示は、例えば、入力デバイス105を介してオペレータにより所定の操作がなされたときに管理装置100から各部品実装機10の制御装置90へ送信されてもよい。また、検査の実行指示は、例えば、オペレータの操作により予め登録された設定時刻になると、管理装置100から各部品実装機10の制御装置90へ送信されてもよい(タイマー設定)。
【0029】
CPU91は、実行指示を受信すると、次に、検査の一つである実装精度検査を行なうための検査用基板ISが基板搬送装置22にセットされているか否かを判定する(S110)。検査用基板ISは、例えば表面にカメラによって検出可能な識別マークを有する矩形かつ平板状の部材であり、検査用部品IPと共にキャリア200に保持される。図7は、キャリア200の外観斜視図である。図示するように、キャリア200は、表面中央部に検査用基板ISが配置される矩形状のキャリア本体201と、キャリア本体201の表面外周部に取り付けられる長尺の部品収容トレイ205と、を備える。検査用基板ISは、キャリア本体201の表面中央部に形成される矩形状の凹部に収容され、留め具202によってキャリア本体201に保持される。検査用部品IPは、部品収容トレイ205の表面に長手方向に並ぶように形成された複数の部品収容ポケット205aにそれぞれ複数個ずつ重ねられた状態で収容される。なお、S110の判定は、例えば、基板搬送装置22により検査用基板IS(キャリア200)を機内に搬入する動作を行ない、搬入位置をマークカメラ24で撮像し、撮像画像を処理して当該撮像画像中に検査用基板ISに付された識別マークを認識できるか否かを判定することにより行なわれる。
【0030】
CPU91は、検査用基板ISが基板搬送装置22にセットされていないと判定すると所定の警告信号を管理装置100へ送信して(S120)、S110に戻る。警告信号を受信した管理装置100は、オペレータに検査用基板ISのセットを促すメッセージをディスプレイ108に表示する。CPU91は、検査用基板ISが基板搬送装置22にセットされていると判定すると、実装精度検査を開始する(S130)。
【0031】
実装精度検査は、以下のようにして行なわれる。CPU91は、吸着ノズル45が部品収容ポケット205aに収容されている検査用部品IPの上方へ移動すると共に当該検査用部品IPが吸着ノズル45に吸着されるようヘッド移動装置30と実装ヘッド40とを制御する。続いて、CPU91は、吸着させた検査用部品IPが検査用基板ISの目標実装位置の上方に移動すると共に当該検査用部品IPが目標実装位置に実装されるようヘッド移動装置30と実装ヘッド40とを制御する。検査用基板ISに対する検査用部品IPの実装動作は、実装ヘッド40が備える各吸着ノズル45ごとに行なわれる。次に、CPU91は、マークカメラ24が検査用基板ISの上方に移動すると共にマークカメラ24で検査用基板ISに実装された検査用部品IPが撮像されるようヘッド移動装置30とマークカメラ24とを制御する。そして、CPU91は、撮像画像に画像処理を施すことにより、実装動作に使用した吸着ノズル45ごとの検査用基板ISの目標実装位置に対する検査用部品IPの実装ずれ量(X軸方向の実装ずれ量ΔXp、Y軸方向の実装ずれ量ΔYpおよび角度ずれ量Δθp)を測定する。CPU91は、測定が終了すると、吸着ノズル45が検査用基板ISに実装した検査用部品IPの上方に移動すると共に当該検査用部品IPが吸着ノズル45に吸着されるようヘッド移動装置30と実装ヘッド40とを制御する。次に、CPU91は、吸着ノズル45に吸着させた検査用部品IPが部品収容ポケット205aのうち空きのあるポケットへ収容(返却)されるようヘッド移動装置30と実装ヘッド40とを制御する。そして、CPU91は、検査用基板ISと検査用部品IPとを収容したキャリア200が下流の部品実装機10へ搬出されるよう基板搬送装置22を制御する。これにより、検査用基板ISと検査用部品IPとを収容したキャリア200は、次の部品実装機10に受け渡され、当該次の部品実装機10において同様の実装精度検査が実行されることになる。このように、生産ラインを構成する複数の部品実装機10が上流側から下流側にかけて実装精度検査を順次実行することで、全ての部品実装機10の実装精度検査を効率良く行なうことができる。
【0032】
図8は、実装精度データの一例を示す説明図である。図示するように、実装精度データには、測定値として、X軸方向の実装ずれ量ΔXpとY軸方向の実装ずれ量ΔYpと角度ずれ量Δθpとが含まれる。この実装精度データは、実装動作に使用した吸着ノズル45ごとに生成される。
【0033】
CPU91は、実装精度検査が終了したと判定すると、続いて、ヘッドキャリブレーション測定に用いる治具ノズルINがノズルステーション25に収容されているか否かを判定する(S150)。図9は、治具ノズルの概略構成図である。治具ノズルINは、吸着ノズル45と概ね同一の外形を有する。また、治具ノズルINの先端面には、カメラ(パーツカメラ23)によって検出される基準マーク(ノズル基準マークNM)が形成されている。S150の処理は、例えば、ノズルステーション25をマークカメラ24で撮像し、撮像画像を処理して当該撮像画像中に治具ノズルINに付された識別マークを認識できるか否かを判定することにより行なわれる。CPU91は、治具ノズルINがノズルステーション25に収容されていないと判定すると、所定の警告信号を管理装置100へ送信して(S160)、S150に戻る。警告信号を受信した管理装置100は、オペレータに治具ノズルINの収容を促すメッセージをディスプレイ108に表示する。CPU91は、治具ノズルINがノズルステーション25に収容されていると判定すると、ヘッドキャリブレーション測定を開始する(S170)。
【0034】
ヘッドキャリブレーション測定には、ZS軸の傾きを測定するZS軸傾き測定や、各ノズルホルダ44ごとの吸着ノズル45の装着位置(ノズルホルダ44の曲がりなど)を測定するノズル装着位置測定などが含まれる。
【0035】
ZS軸傾き測定は、以下のようにして行なわれる。CPU91は、まず、実装ヘッド40がZS軸における上昇端まで上昇するようZS軸駆動装置80を制御する。続いて、CPU91は、実装ヘッド40のマーク形成部材46がパーツカメラ23の上方へ移動すると共に当該マーク形成部材46に形成されたヘッド基準マークHMが撮像されるようヘッド移動装置30とパーツカメラ23とを制御する。次に、CPU91は、実装ヘッド40がZS軸における下降端まで下降するようZS軸駆動装置80を制御した後、同様に、ヘッド基準マークHMが撮像されるようパーツカメラ23を制御する。すなわち、CPU91は、ZS軸における上昇端と下降端とのそれぞれの位置において、実装ヘッド40のヘッド基準マークHMを撮像する。そして、CPU91は、得られた2つの撮像画像に画像処理を施すことによりヘッド基準マークHMをそれぞれ認識し、認識したヘッド基準マークHM同士のX軸方向の位置ずれ量をX軸方向の傾き量ΔXzsとして測定すると共にY軸方向の位置ずれ量をY軸方向の傾き量ΔYzsとして測定する。
【0036】
ノズル装着位置測定は、以下のようにして行なわれる。CPU91は、まず、実装ヘッド40がノズルステーション25の上方へ移動すると共に当該実装ヘッド40の各ノズルホルダ44に治具ノズルINが装着されるようヘッド移動装置30と実装ヘッド40とを制御する。続いて、CPU91は、治具ノズルINがパーツカメラ23の上方へ移動すると共に当該治具ノズルINがZ軸方向における上昇端に位置した状態で当該治具ノズルINの先端に形成されたノズル基準マークNMが撮像されるようヘッド移動装置30とパーツカメラ23とを制御する。次に、CPU91は、治具ノズルINがZ軸における下降端まで下降するようZ軸駆動装置70を制御した後、同様に、ノズル基準マークNMが撮像されるようパーツカメラ23を制御する。すなわち、CPU91は、Z軸における上昇端と下降端のそれぞれの位置において、治具ノズルINのノズル基準マークNMを撮像する。そして、CPU91は、得られた2つの撮像画像に画像処理を施すことによりノズル基準マークNMをそれぞれ認識し、認識したノズル基準マークNM同士のX軸方向の位置ずれ量をX軸方向の傾き量ΔXnとして測定すると共にY軸方向の位置ずれ量をY軸方向の傾き量ΔYnとして測定する。
【0037】
図10は、キャリブレーションデータの一例を示す説明図である。図示するように、キャリブレーションデータには、測定値として、ZS軸傾きやノズルごとのノズル装着位置などが含まれる。ZS軸傾きには、X軸方向の傾き量ΔXzsとY軸方向の傾き量ΔYzsとが含まれる。また、ノズル装着位置には、X軸方向の傾き量ΔXnとY軸方向の傾き量ΔYnとが含まれる。
【0038】
CPU91は、ヘッドキャリブレーション測定が終了したと判定すると、得られた測定値(実装精度データおよびキャリブレーションデータ)を管理装置100へ送信する(S190)。そして、CPU91は、シャットダウンの指定があるか否かを判定する(S200)。CPU91は、シャットダウンの指定がないと判定すると、そのまま不調検査処理を終了し、シャットダウンの指定があると判定すると、シャットダウンして(S210)、不調検査処理を終了する。シャットダウンの指定は、オペレータが入力デバイス105を介して管理装置100に予め入力することにより行なわれる。オペレータは、一日の業務が終了した後に検査処理が実行されるように設定した場合、検査終了後のシャットダウンを予め指定しておくことで、検査の終了を待つことなく、持ち場を離れることが可能となる。
【0039】
次に、不調検査処理の結果を用いて行なわれる不調判定処理について説明する。図11は、管理装置100のCPU101により実行される不調判定処理の一例を示すフローチャートである。
【0040】
不調判定処理では、管理装置100のCPU101は、まず、部品実装機10から測定値を受信するのを待つ(S300)。CPU101は、測定値を受信すると、受信した測定値をHDD103(記憶装置)に記憶すると共に受信した測定値を解析する(S310)。図12は、記憶装置に記憶される測定値の一例を示す説明図である。図示するように、HDD103(記憶装置)には、測定値として実装精度データおよびキャリブレーションデータが検査の実行日と対応付けて記憶される。
【0041】
実装精度データの解析は、以下のようにして行なわれる。CPU101は、まず、実装ずれ量ΔXp,ΔYpおよび角度ずれ量Δθpのうちずれ量ごとに、此までに受信したずれ量の平均値μと標準偏差σとを求める。続いて、CPU101は、ずれ量ごとに、今回受信したずれ量が平均値μから3σを減じた下限値(μ-3σ)と平均値μに3σを加えた上限値(μ+3σ)とにより定まる範囲内に収まるか否かを判定する。なお、下限値および上限値は、それぞれ3σに代えて、2σを用いて定められた値であってもよいし、σを用いて定められた値であってもよいし、オペレータが選択した値であってもよい。そして、CPU101は、今回受信したずれ量のいずれもが下限値と上限値とにより定まる範囲内に収まると判定すると(例えば、図13(a)参照)、不調の兆候が現われていない(「不調なし」)と判定する。一方、CPU101は、今回受信したずれ量のいずれかが下限値と上限値とにより定まる範囲内に収まらないと判定すると(例えば、図13(b)参照)、不調の兆候が現われている(「不調あり」)と判定する。上述したように、実装精度検査は、フィーダ21から供給される部品Pではなく、検査用基板ISと共にキャリア200に保持されている検査用部品IPを用いて行なわれる。このため、実装精度データの解析結果には、フィーダ21の不調による影響を受けず、ヘッド移動装置30や実装ヘッド40の不調による影響が反映されるものとなる。
【0042】
また、キャリブレーションデータ(ZS軸傾きやノズル装着位置)の解析は、以下のようにして行なわれる。ZS軸傾きを解析する場合、CPU101は、まず、傾き量ΔXzsおよびΔYzsのうち傾き量ごとに、此までに受信した傾き量の平均値μと標準偏差σとを求める。続いて、CPU101は、傾き量ごとに、今回受信した傾き量が平均値μから3σを減じた下限値(μ-3σ)と平均値μに3σを加えた上限値(μ+3σ)とにより定まる範囲内に収まるか否かを判定する。なお、下限値および上限値は、それぞれ3σに代えて、2σを用いて定められた値であってもよいし、σを用いて定められた値であってもよいし、オペレータが選択した値であってもよい。そして、CPU101は、今回受信した傾き量のいずれもが下限値と上限値とにより定まる範囲内に収まると判定すると、不調の兆候が現われていない(「不調なし」)と判定し、今回受信した傾き量のいずれかが下限値と上限値とにより定まる範囲内に収まらないと判定すると、不調の兆候が現われている(「不調あり」)と判定する。なお、CUP101は、ノズル装着位置(X軸方向の傾き量ΔXn,Y軸方向の傾き量ΔYn)を解析する場合についても、同様に行なうことができる。上述したように、ヘッドキャリブレーション測定は、実装ヘッド40を構成するパーツを動作させることにより行なわれる。このため、キャリブレーションデータの解析結果には、実装ヘッド40の不調による影響のみが反映されるものとなる。
【0043】
このように、本実施形態では、CPU101は、今回受信した測定値が、此までに受信した測定値の平均値μを中心とした分布の所定範囲(図13中、破線で囲まれた領域)内に収まるか否かを判定することにより測定値を解析する。そして、CPU101は、今回受信した測定値が上記所定範囲内に収まると判定すると(図13(a)参照)、不調なしと判定し、今回受信した測定値が上記所定範囲内に収まらないと判定すると(図13(b)参照)、不調ありと判定する。
【0044】
CPU101は、実装精度データを解析した結果、実装精度検査の結果が不調ありの結果であるか否かを判定する(S320)。CPU101は、実装精度検査の結果が不調なしの結果であると判定すると、ヘッド移動装置30および実装ヘッド40のいずれにも不調なしと判定する(S330)。
【0045】
一方、CPU101は、実装精度検査の結果が不調ありの結果であると判定すると、さらに、ヘッドキャリブレーション測定の結果が不調ありの結果であるか否かを判定する(S340)。CPU101は、ヘッドキャリブレーション測定の結果が不調なしの結果であると判定すると、ヘッド移動装置30に不調があると判定する(S350)。一方、CPU101は、ヘッドキャリブレーション測定の結果が不調ありの結果であると判定すると、実装ヘッド40に不調があると判定する(S360)。
【0046】
CPU101は、こうして不調有無と不調箇所とを判定すると、その判定結果をオペレータに通知するために、当該判定結果をディスプレイ108に表示して(S370)、不調判定処理を終了する。図14は、不調判定結果の通知画面の一例を示す説明図である。図の例は、実装ヘッド40に不調があった場合の通知画面の例である。
【0047】
ここで、実施形態の主要な要素と請求の範囲に記載した本開示の主要な要素との対応関係について説明する。即ち、実施形態の実装ヘッド40が本開示のヘッドに相当し、ヘッド移動装置30が移動装置に相当し、検査処理を実行する制御装置90のCPU91が検査部に相当し、不調判定処理を実行する管理装置100のCPU101が判定部に相当し、ディスプレイ106が通知部に相当する。
【0048】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0049】
例えば、上述した実施形態では、CPU101は、不調判定処理において、今回受信した測定値が、此までに受信した測定値の平均値μを中心とした分布の所定範囲内に収まるか否かを判定することにより不調の有無を判定するものとした。しかし、CPU101は、今回受信した測定値が、此までに受信した測定値の変化の傾向から定まる値を中心とした所定範囲内に収まるか否かを判定することにより不調の有無を判定するものとしてもよい。例えば、CPU101は、今回の測定値をX0とした場合、此まで受信した測定値の変化の傾向Xaに値1よりも小さい係数k1を乗じた下限値と傾向Xaに値1よりも大きい係数k2を乗じた上限値とにより定まる範囲内に収まるか否かにより不調の有無を判定する。但し、此までに受信した測定値の変化の傾向Xaは、X1を1回前に受信した測定値とし、X2を2回前に受信した測定値とし、Xiをi回前に受信した測定値とし、a1,a2,…,aiをそれぞれ重み付けパラメータとした場合に、次式(1)により定義される。なお、係数k1,k2は、予め定められた値が用いられてもよいし、オペレータにより指定された値が用いられてもよい。
【0050】
Xa=X1・a1+X2・a2+…+Xi・ai (1)
【0051】
また、上述した実施形態では、CPU101は、部品実装機10が備えるヘッド移動装置30および実装ヘッド40の不調を判定するものとしたが、これに加えて、フィーダ21の不調も判定してもよい。フィーダ21の不調の判定は、以下のようにして行なわれる。CPU101は、各部品実装機10において吸着動作を行なった後に実行される吸着検査において測定された上述した吸着ずれ量(X軸方向およびY軸方向の各吸着ずれ量)を制御装置90から受信し、受信した吸着ずれ量を解析する。吸着ずれ量の解析は、上述した実装精度データやキャリブレーションデータの解析と同様に行なうことができる。そして、CPU101は、実装精度検査の結果が不調なしの結果であり且つ吸着検査の結果が不調ありの結果であった場合に、フィーダ21に不調があると判定する。
【0052】
以上説明したように、本開示の部品実装機の不調判定装置は、部品を採取する採取部材を有するヘッドと、前記ヘッドを移動させる移動装置と、前記ヘッドおよび前記移動装置の制御により実装動作を行なって実装の良否を検査する第1検査と、前記ヘッドのキャリブレーション測定を行なって測定の良否を検査する第2検査とを含む複数の検査を実行する検査部と、前記複数の検査の結果の組み合わせに基づいて前記ヘッドと前記移動装置とを含む不調の有無と不調箇所とを判定する判定部と、を備えることを要旨とする。
【0053】
こうした本開示の部品実装機の不調判定装置において、前記判定部は、前記第1検査の結果が不調ありの結果であった場合、前記第2検査の結果が不調なしの結果であれば前記移動装置が不調であると判定し、前記第2検査の結果が不調ありの結果であれば前記ヘッドが不調であると判定するものとしてもよい。こうすれば、ヘッドと移動装置とのうちいずれに不調があるのかをより適正に判定することができる。
【0054】
また、本開示の部品実装機の不調判定装置において、前記検査部は、前記第1検査および前記第2検査が終了した後、前記部品実装機をシャットダウンするものとしてもよい。こうすれば、オペレータは、業務の終了後、部品実装機10が検査を終了するのを待つこと無く、持ち場を離れることができる。
【0055】
さらに、本開示の部品実装機の不調判定装置において、前記第1検査は、同一種類の複数の部品を前記採取部材に順次採取して検査用基板に順次実装し、実装した各部品の位置ずれを検出することにより実装の良否を判定する検査であり、前記検査部は、前記検査用基板がセットされ、且つ、検査の開始が指示されたときに、前記第1検査を開始するものとしてもよい。
【0056】
また、本開示の部品実装機の不調判定装置において、前記検査部は、予め設定された時期が到来したとき、又は、検査の開始が指示されたときに、前記第2検査を開始するものとしてもよい。
【0057】
また、本開示の部品実装機の不調判定装置において、前記判定の結果を通知する通知部を備えるものとしてもよい。
【0058】
なお、本開示は、部品実装機の不調判定装置の形態に限られず、部品実装機の不調判定方法の形態とすることもできる。
すなわち、本開示の部品実装機の不調判定方法は、部品を採取する採取部材を有するヘッドと、前記ヘッドを移動させる移動装置と、を備える部品実装機の不調を判定する部品実装機の不調判定方法であって、前記ヘッドおよび前記移動装置の制御により実装動作を行なって実装の良否を検査する第1検査と、前記ヘッドのキャリブレーション測定を行なって測定の良否を検査する第2検査とを含む複数の検査を実行し、前記複数の検査の結果の組み合わせに基づいて前記ヘッドと前記移動装置とを含む不調の有無と不調箇所とを判定することを要旨とする。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示は、部品実装機の不調判定装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 部品実装システム、2 印刷機、3 印刷検査装置、4 印刷検査装置、10 部品実装機、11 基台、12 筐体、21 フィーダ、22 基板搬送装置、23 パーツカメラ、24 マークカメラ、25 ノズルステーション、30 ヘッド移動装置、31 X軸ガイドレール、32 X軸スライダ、33 Y軸ガイドレール、34 Y軸スライダ、36 X軸モータ、37 X軸位置センサ、38 Y軸モータ、39 Y軸位置センサ、40 実装ヘッド、41 ヘッド本体、42 回転体、43 回転軸、44 ノズルホルダ、45 吸着ノズル、46 マーク形成部材、47 圧力調整弁、50 R軸駆動装置、51 R軸モータ、52 駆動ギヤ、53 R軸ギヤ、55 R軸位置センサ、60 Q軸駆動装置、61 Q軸モータ、62 駆動ギヤ、63 ピニオンギヤ、64 Q軸ギヤ、65 Q軸位置センサ、70 Z軸駆動装置、71 Z軸スライダ、72 Z軸モータ、73 Z軸位置センサ、80 ZS軸駆動装置、81 ガイドレール、82 ZS軸モータ、83 ZS軸位置センサ、90 制御装置、91 CPU、92 ROM、93 HDD、94 RAM、100 管理装置、101 CPU、102 ROM、103 HDD、104 RAM、105 入力デバイス、106 ディスプレイ、108 ディスプレイ、200 キャリア、201 キャリア本体、202 留め具、205 部品収容トレイ、205a 部品収容ポケット、HM ヘッド基準マーク、IN 治具ノズル、IP 検査用部品、IS 検査用基板、NM ノズル基準マーク、P 部品、S 基板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14