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特許7427078滞在領域の適応的設定に基づく道路交通における衝突を回避するための方法、運転支援システムおよび車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】滞在領域の適応的設定に基づく道路交通における衝突を回避するための方法、運転支援システムおよび車両
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240126BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022515559
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2020071959
(87)【国際公開番号】W WO2021047827
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】102019124118.9
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】ファビオ、アブブルッツェヒ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル、ブッティヒ
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102017103700(DE,A1)
【文献】特開2010-009232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転支援システムの制御ユニット(10)を用いて、移動車両(1)の、前記車両の周囲における他の道路利用者(2)との衝突を回避するための方法であって、
a)1つ以上のセンサ(12、13)によって、前記車両周囲とそこに位置する他の道路利用者(2)を検出する方法ステップと、
b)前記制御ユニット(10)の分割手段を用いて、前記車両周囲を複数の滞在領域(3)に分割する方法ステップと、
c)前記制御ユニット(10)の分類手段を用いて、方法ステップa)で検出された他の道路利用者(2)を分類する方法ステップであって、前記分類によって、他の道路利用者(2)の各々に少なくとも1つの道路利用者グループを割り当てる、方法ステップと、
d)前記制御ユニット(10)の優先順位付け手段を用いて、方法ステップc)で実行された分類と方法ステップb)で定義された前記滞在領域の両方を考慮して、方法ステップc)で分類された前記道路利用者(2)に優先順位を付ける方法ステップであって、1つ以上の予め定められた道路利用者グループからの道路利用者(2)に、特定の前記滞在領域において高い優先順位が与えられ、他の予め定められていない道路利用者グループからの前記道路利用者(2)に、特定の前記滞在領域において低い優先順位が与えられる、方法ステップと、
e)前記制御ユニット(10)の決定手段を用いて、他の前記道路利用者(2)の前記車両(1)との衝突確率を決定する方法ステップであって、衝突確率は方法ステップd)で実行された優先順位付けに従って決定され、高い優先順位を有する他の前記道路利用者(2)の衝突確率が最初に決定される、方法ステップと、
f)前記制御ユニット(10)の変更または維持手段を用いて、方法ステップe)で決定された衝突確率に基づいて、前記車両(1)の現在の運転挙動を変更または維持する方法ステップと、
を少なくとも備えた、方法。
【請求項2】
方法ステップb)における前記滞在領域(3)の分割は、前記車両(1)の現在の前記車両周囲の周囲マップを利用して行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
方法ステップb)における前記車両周囲の分割は、前記車両(1)の速度の関数として行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
方法ステップb)における前記車両周囲の分割は、少なくとも3つの異なる滞在領域(3)において前記車両移動方向に関して対称的に行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
方法ステップd)における他の前記道路利用者(2)の優先順位付けは、他の前記道路利用者(2)の現在の移動プロファイルを考慮しながら追加的に行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
方法ステップe)における衝突確率の決定は、より低い優先順位を有する他の道路利用者(2)に対して実行されない、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
方法ステップc)における前記道路利用者グループが、歩行者、電動スクータ、電動または非電動バイク、自動車およびトラックからなるグループから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
方法ステップa)のセンサ(11、12、13)は、光学センサ、ライダ、レーダ、GPSまたは少なくとも2種類のセンサの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
制御ユニット(10)と、フロントセンサ(13)と、サイドセンサ(12)と、を少なくとも備え、前記制御ユニット(10)が前記センサ(12、13)と電気的に接触しており、前記制御ユニット(10)が請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されている、運転支援システム。
【請求項10】
GPSモジュール(11)を更に備え、前記制御ユニット(10)は、前記GPSモジュール(11)と電気的に接触している、請求項9に記載の運転支援システム。
【請求項11】
請求項10に記載の運転支援システムを備えた車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動自動車両の、車両の周囲における他の道路利用者との衝突を回避するための方法であって、
a)1つ以上のセンサによって、車両周囲とそこに位置する他の道路利用者を検出する方法ステップと、
b)車両周囲を複数の滞在領域に分割する方法ステップと、
c)方法ステップa)で検出された他の道路利用者を分類する方法ステップであって、分類によって、他の道路利用者の各々に少なくとも1つの道路利用者グループを割り当てる、方法ステップと、
d)方法ステップc)で実行された分類と方法ステップb)で定義された滞在領域の両方を考慮して、方法ステップc)で分類された道路利用者に優先順位を付ける方法ステップであって、1つ以上の予め定められた道路利用者グループからの道路利用者に、特定の滞在領域において高い優先順位が与えられ、他の予め定められていない道路利用者グループからの道路利用者に、特定の滞在領域において低い優先順位が与えられ、
e)他の道路利用者と車両との衝突確率を決定する方法ステップであって、衝突確率は、方法ステップd)で実行された優先順位付けに従って決定され、高い優先順位を有する他の道路利用者の衝突確率が最初に決定される、方法ステップと、
f)方法ステップe)で決定された衝突確率に基づいて、車両の現在の運転挙動を変更または維持する方法ステップと、
を少なくとも備えている。本発明は更に、本発明による方法を実行するように構成された運転支援システム、およびそのように構成されたシステムを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の典型的な交通状況を簡素化するための1つのアプローチは、細心の注意を要する複雑な活動を車両または車両システム自体に押し付けることである。以前は、利用可能なセンサの技術的可能性が限られており、機能的な解決策が存在しないか、経済的にサポートされていなかったため、このような手順を実行することは非常に困難であった。近年、多くの種類のセンサで、これらの欠点は克服され、原則的に、経済的で高性能なセンサが利用できるようになり、複雑な交通状況においても適切なデジタル画像を準備できるようになっている。しかしながら、センサが提供するデータは少ないどころか多すぎるため、下流のデータ処理がますます重要になるという欠点がある。最後の記述は、異なる移動プロファイルと可能性を持つ多数の異なる交通グループが存在する交通モニタリングタスクに、より顕著に当てはまる。このように、利用可能なデータを極めて短時間に最も重要な特徴に絞り込み、構造化することは、関係するシステムから自律的または半自律的に正しく安全な判断を得るための基本的な前提条件の1つである。
【0003】
現在の交通状況をモニタリングするための様々なアプローチが特許文献に多数存在する。
【0004】
したがって、例えば、欧州特許第2528049号明細書には、ナビゲーション装置を利用して、車両における安全上重要なオブジェクトを取得する方法および装置が記載されており、安全上重要なオブジェクトとは、車両にとっての潜在的な障害物、または車両の運転にとっての重要な交通標識のことを表している。車両は、本発明の装置及び方法を備え、更に、ナビゲーション装置と画像取得装置とを備える。本発明の方法は、ナビゲーション装置から利用可能なナビゲーションデータと、画像取得装置によって取得される車両の周囲の画像とを用いて、車両の安全上重要なオブジェクトを取得する。本発明の方法は、更に、取得された安全上重要なオブジェクトに対する車両のドライバーの視覚的注意力を推定し、ドライバーの推定された視覚的注意力に応じて、ドライバーに対する適切な警告を生成する。
【0005】
欧州特許第2626268号明細書は、更に、車両の外側に配置されたオブジェクトを保護するための方法を開示しており、
a)適切なセンサシステムによって、車両の周囲の障害物、特に障害物の位置を検出するステップと、
b)車両の走行移動を確認するステップと、
c)車両の外側に配置されたオブジェクトの走行エンベロープを計算するステップと、
d)走行エンベロープと障害物の位置とを比較することにより、車両の外側に配置されたオブジェクトが障害物に衝突する可能性を確認するステップ、
によって特徴付けられる。
【0006】
独国特許出願公開第102014204383号明細書は、最終的に、車両のためのオブジェクト認識のための運転支援システムを開示している。運転支援システムは、プロセッサと、車両の周囲の個々の画像を取得するためのセンサと、を備えている。プロセッサは、シミュレートされた臨界マップから、臨界オブジェクトについて調査する関心領域として領域を選択するように構成されている。シミュレートされた臨界マップは、複数の領域を含み、臨界マップにおいて、これらの領域の各々にそれぞれの待ち時間が割り当てられる。待ち時間は、運転支援システムが臨界マップのそれぞれの領域を調査せずに放置しておくことができる最大期間の持続時間に対応する。プロセッサは、関連付けられた待ち時間に基づいて関心領域を選択するように構成されている。
【0007】
先行技術から知られているこの種の解決策は、特に、複雑で混同するデータの集合から現在の交通状況に関連するデータを迅速かつ再現可能にフィルタリングし、重要な道路利用者に還元することができる方法に関して、更なる改善の可能性を提供し得る。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、従来技術から知られている欠点を少なくとも部分的に克服することである。特に、本発明の目的は、より複雑な交通状況であっても、比較的少ないリソースで、リアルタイムにセンサデータのデータ処理を可能にする解決策を提供することである。
【0009】
この目的は、本発明による方法、本発明による運転支援システム、および本発明による車両に向けられた、それぞれの独立請求項の特徴によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項、記述または図面に記載されており、従属請求項または記述または図面に記載または示されている他の特徴は、明らかに反対の文脈でない限り、個別にまたは任意の組み合わせで本発明の主題を表すことが可能である。
【0010】
本発明によれば、移動車両の、車両の周囲における他の道路利用者との衝突を回避するための方法が提案される。この方法は、
a)1つ以上のセンサによって、車両周囲とそこに位置する他の道路利用者を検出する方法ステップと、
b)車両周囲を複数の滞在領域に分割する方法ステップと、
c)方法ステップa)で検出された他の道路利用者を分類する方法ステップであって、分類によって、他の道路利用者の各々に少なくとも1つの道路利用者グループを割り当てる、方法ステップと、
d)方法ステップc)で実行された分類と方法ステップb)で定義された滞在領域の両方を考慮して、方法ステップc)で分類された道路利用者に優先順位を付ける方法ステップであって、1つ以上の予め定められた道路利用者グループからの道路利用者に、特定の滞在領域において高い優先順位が与えられ、他の予め定められていない道路利用者グループからの道路利用者に、特定の滞在領域において低い優先順位が与えられる、方法ステップと、
e)他の道路利用者と車両との衝突確率を決定する方法ステップであって、衝突確率は、方法ステップd)で実行された優先順位付けに従って決定され、高い優先順位を有する他の道路利用者の衝突確率が最初に決定される、方法ステップと、
f)方法ステップe)で決定された衝突確率に基づいて、車両の現在の運転挙動を変更または維持する方法ステップと、
を少なくとも備えている。
【0011】
このような方法は、特に処理速度およびリソースの要件に関して、従来技術による解決策よりも大きな利点を有することができる。本発明による運転ガイダンスを通じて、道路利用者は異なるグループにグループ化または分類され、車両の周囲の異なる滞在領域はそのように評価されるのではなく、グループ分類に依存して評価される。このようにして、空間的な重み付け成分とタイプ的な重み付け成分が統合される。この結合により、現在の運転状況において衝突の危険性がある道路利用者に関するデータは、特に迅速にフィルタリングすることができる。他の道路利用者は、ROI(関心領域)とも呼ばれる検討中の滞在領域において優先順位付けされたグループ分けのいずれにも該当しないか、又は車両の周囲の無関係な滞在領域に位置するため、この方法によって低い優先順位で処理される。この優先順位付けの結果、車両の周囲にいる真に関連する道路利用者のデータは、より迅速に利用可能となる。本方法の結果として、車両、または車両の運転手は、したがって、潜在的な衝突の危険性に対してより迅速に反応し、それに応じて、そのような衝突の危険性を効果的に回避するための措置をより迅速にとることもできる。このようにして、最小限のリソースの使用で、事故を回避するための高効率の方法を作成することができる。従来技術と比較して、介入時間の短縮を実現し、拘束なデータ処理システムを使用することができる。
【0012】
本発明による方法は、移動車両と車両の周囲にいる他の道路利用者との衝突を回避するための方法である。本発明の意味において、衝突とは、例えば、2台の車両間の衝突や、車両と歩行者との衝突など、異なる道路利用者の間の望ましくない物理的接触である。この種の衝突は、通常、事故と呼ばれる。ここでいう車両とは、特に、例えば自動車、バス、トラックなどの原動機付き自動車を指す。ここで車両は、最低速度が0km/hでなければ、動いていることになる。他の道路利用者は、例えば、歩行者、自転車、または他の車両である。車両周囲は、例えば、使用するセンサの範囲内で車両の周囲に広がる周囲として定義することができる。車両周囲は、例えば、車両を取り囲む道路及び小道によって形成することができ、例えば家屋のような固定構造物と共に、車両の周囲に放射状に広がることができ、ここで、半径は、好ましくは500m、更に好ましくは300m、再び好ましくは250mとすることができる。
【0013】
方法ステップa)では、車両周囲とそこに位置する他の道路利用者の検出が、1つまたは複数のセンサによって行われる。車両周囲の現在の交通状況のデジタル画像は、1つまたは複数のセンサの使用によって取得され、少なくとも車両周囲の異なる道路利用者の位置と現在の移動方向が決定される。更に、車両周囲の道路レイアウトは、例えばGPSセンサによって決定することができ、その結果、その領域にいる他の道路利用者を含む道路のデジタル画像が得られるようになる。センサとしては、例えば、ライダ、超音波センサ、レーダセンサ、光学カメラなどが考えられ、これらを個別にまたは組み合わせて、交通の周囲をデジタルでマッピングすることができる。異なるセンサがそれぞれ車両周囲の異なるセグメントを監視するように、異なるセンサが車両上の異なる位置に取り付けられることが可能である。更に、センサは一定の時間間隔で車両周囲を監視し、他の道路利用者のその時点での位置だけでなく、時間の関数としての彼ら自身の動きや位置の変化も取得できるようにすることが可能である。
【0014】
方法ステップb)では、車両周囲を複数の滞在領域に分割する。センサによって取得され得る車両周囲は、このように異なる空間領域に分割され、それぞれの領域は、その位置座標において異なる。滞在領域は、例えば、車両移動の関数として、リア領域、フロント領域、及び2つのサイド領域に分割することができ、それぞれの領域は、対応する車両軸から延在する。しかし、滞在領域は、それぞれ存在するセンサの関数として定義することもでき、車両からセンサ空間へ多かれ少なかれ対称的に離れるように延びる。滞在領域の定義は、例えば、車両の速度の関数として、あるいは、一日の時間または照明状況の関数として、動的に行われることも可能である。好ましくは、2つ以上、更に好ましくは4つ以上、更に好ましくは6つ以上の異なる滞在領域が、1つの車両周囲に対して定義され得る。異なる滞在領域は、ここでは、同じサイズである必要はなく、また、車両の周囲に対称的に広がっている必要もない。更に、滞在領域は、センサの範囲の関数として、また現在の道路および周囲マップの関数として選択されることが可能である。図には、さまざまな滞在領域の例が示されている。
【0015】
方法ステップc)では、方法ステップa)で検出された他の道路利用者の分類が行われ、分類によって、他の道路利用者の各々に少なくとも1つの道路利用者グループを割り当てる。道路形状に加えて、車両周囲における他の道路利用者の存在もまた、センサによって確立される。このステップでは、個々の道路利用者がそれぞれグループに割り当てられ、分類される。グループへの割り当ては、例えば、移動プロファイル、現在の速度、またはオブジェクトの大きさに基づいて行うことが可能である。分類は、好適には、移動プロファイルに基づいて行われ、例えば、歩行者、自転車、自動車、トラック、バス、電動スクータ、オートバイなどの道路利用者のグループを区別することができる。これらの道路利用者グループは、異なる移動性または速度によって特徴付けられ、それによって、それぞれ統一されたグループに集めることができる。
【0016】
方法ステップd)では、方法ステップc)で実行された分類と方法ステップb)で定義された滞在領域の両方を考慮して、方法ステップc)で分類された道路利用者の優先順位付けが行われ、1つ以上の予め定められた道路利用者グループからの道路利用者に、特定の滞在領域において高い優先順位が与えられ、他の予め定められていない道路利用者グループからの道路利用者に、特定の大罪領域においてより低い優先順位が与えられている。このように、個々の他の道路利用者の優先順位付けは、特定の滞在領域への局所的な割り当てと、以前に実行された分類を同時に考慮することの両方を併合して行われる。したがって、例えば、同じ滞在領域内の非常に近い道路利用者の優先順位付けは、それらが現在の運転状況に対して異なる値、すなわち異なる優先順位を有すると認識される結果となり得る。例えば、車両に近い共通領域内で、他の車両や二輪車など、特に速く移動している道路利用者は、好ましくは、特別に区別される。これらは、それぞれのクラスに割り当てられ、物理的な近さおよびそれらが属するクラスのために、本方法に対して高い優先順位を受ける。一方、他の自動車と比較して低い優先順位は、例えば、比較的遠い滞在領域における歩行者に割り当てることができる。
【0017】
方法ステップe)で、他の道路利用者と車両との衝突確率の決定が行われ、衝突確率は、方法ステップd)で実行された優先順位付けに従って決定され、高い優先順位を有する他の道路利用者の衝突確率が最初に決定される。検出された他の道路利用者の重要度の決定は、割り当てられた優先順位に応じて本発明による方法内で行われる。ある道路利用者が定義された滞在領域内に位置し、それが予め定義されたクラスに属する場合、それは、より低い優先順位を有する他の道路利用者よりも、方法によって早く扱われることになる。したがって、他のグループに属する道路利用者は、優先順位付けされたグループに属する道路利用者の処置が完了する時点まで考慮されない。したがって、例えば、遠く離れた滞在領域の歩行者は、これらの遠い歩行者に関連する衝突の危険性が無視できるので、この方法によって全く処理されないことが可能である。本発明による場合、優先順位付けは、処理における時間的なグラデーションおよび/またはこれらの道路利用者が方法の文脈で全く考慮されないかどうかの指定を可能にする。
【0018】
方法ステップf)では、方法ステップe)で決定された衝突確率に基づいて、車両の現在の運転挙動の変更または維持が行われる。現在の滞在領域と、そこで検出された道路利用者と、それらが属するクラスとに基づいて、衝突確率がこのように決定され、これは現在の運転挙動の変更を生じさせることができる。衝突確率が高い場合、例えば、車両のドライバーに警告を出力したり、加速を抑えたり、自律的なブレーキ動作を開始させたりすることができる。衝突確率が危険でない交通状況を示している場合は、例えば、現在の運転挙動を維持することができる。現在の運転挙動を変更するか保持するかの決定は、例えば、車両の点滅及び/又は操舵動作などの他の影響因子によって影響されることも可能である。このようにして、車両のドライバーによって誘発される車両の直近の運転状況の変化も考慮され得る。
【0019】
本方法の好ましい一実施形態では、方法ステップb)における滞在領域の分割は、車両の現在の車両周囲の周囲マップを利用して行われることが可能である。センサによってサポートされる滞在領域の選択に加えて、現在の周囲マップへの参照を含めることは、特に、状況に対してより適切な滞在領域の分割に寄与することができる。車両の周囲の道路レイアウトは、特に、例えば十字路またはジャンクションなどの特定の危険な場所を特定し、滞在領域の定義においてこれらの場所に特定の重みを与えることに貢献することができる。例えば、高速道路では、進行方向に位置する領域をより大いに分割し、サイド領域およびリア領域は比較的低く考慮される。これにより、滞在領域の分布が特に特定され、それによって危険性に適応することができる。
【0020】
本方法の更に好ましい実施形態では、方法ステップb)における車両周囲の分割は、車両の速度の関数として行うことができる。異なる滞在領域の分割が、センサレンジの関数としてだけでなく、現在の車両速度の関数としても選択されることが特に有利であることが判明している。現在の車速を含めることにより、例えば、典型的な都市部、長距離道路、または高速道路での運転を区別することができ、異なる道路利用者グループの潜在的な危険性は、これらの状況に対応するものである。このようにして、特に高速で適応的な方法を実行することができる。
【0021】
本方法の好ましい一態様では、更に、方法ステップb)における車両周囲の分割は、少なくとも3つの異なる滞在領域において車両移動方向に関して対称に行われる。複雑な交通状況においても、滞在領域と他の道路利用者の適切な区別及び分配を可能にする最速のシステムを実現するために、3つの領域への分割が特に効率的であることが判明している。このように、方法の流れは特にうまく最適化され、同時に異なる道路利用者の確実な区別が確保される。
【0022】
本方法の他の設計の文脈では、方法ステップd)における他の道路利用者の優先順位付けは、他の道路利用者の現在の移動プロファイルを追加的に考慮しながら行われる。道路利用者の異なるクラスへの静的な分類に加えて、他の道路利用者の現在の移動パターンを含めることで、道路利用者の状況に応じて適切な優先順位付けとその後の危険性評価に更に貢献することができる。したがって、例えば、動いていない歩行者は、危険性評価において割り引かれるか、または低い優先順位を与えられる可能性がある。この方法ステップにおいて、後者は、滞在領域における異なる歩行者の区別を可能にするであろう。例えば、歩行者が車両に向かって移動しているのか、それとも車両から遠ざかっているのかも、優先順位付けに含めることができる。これらの他の要因の重み付けに応じて、滞在領域内の個々の歩行者は、より高いまたはより低い優先順位を受け取ることができる。このステップは、本発明による方法の文脈において、状況に応じて更に適切な差別化に寄与することができる。
【0023】
本方法の好ましい特徴として、優先順位の低い他の道路利用者については、方法ステップe)で衝突確率の決定を実行しないことが可能である。高い安全性で特に速い決定を可能にする方法を作成するために、低い優先順位を与えられた道路利用者が、方法の更なる発展において単に考慮されないことが有利であることが見出されている。これは、方法の処理を更に加速し、関連する他の道路利用者のために資源をより迅速に提供することができる。
【0024】
本方法の更なる好ましい実施形態では、方法ステップc)における道路利用者グループは、歩行者、電動スクータ、電動又は非電動バイク、自動車及びトラックからなる群から選択され得る。この他の道路利用者への分割は、異なる移動プロファイルの特に効率的な考察に寄与し、したがって、危険性の特に重要な考察に寄与し得る。この分類の数はそれほど多くないので、現在の交通状況をシンプルかつ有意なモデルで表現することができる。
【0025】
本方法の他の、好ましい実施形態において、方法ステップa)におけるセンサは、光学センサ、ライダ、レーダ、GPS、または少なくとも2種類のセンサの組み合わせからなる群から選択され得る。異なるセンサのこの選択は、本発明による方法の文脈における交通状況の特に効率的な監視に寄与することができる。時間分解能は、高速で移動するオブジェクトにも適しており、生成されるデータ量のために、本発明による方法は、特に高い効率性の上昇に寄与することができる。
【0026】
少なくとも制御ユニットと、フロントセンサと、サイドセンサとを備える運転支援システムは、更に、本発明に一致し、制御ユニットは、センサと電気的に接触しており、制御ユニットは、本発明による方法を実行するように構成される。特に、運転支援システムは、更に、GPSモジュールを含むことができ、そのとき、制御ユニットは、GPSモジュールと電気的に接触していることも可能である。本発明による方法は、特に、運転支援システムの文脈で実行されることに適している。本方法は、特に、交通区域内の移動がより安全になることに寄与し、望まれない衝突の危険性が著しく低減されることが可能である。特に、制御ユニットと組み合わせて上記に与えられたセンサの配置は、これに貢献する。本発明による運転支援システムの他の利点に関して、更に、本発明による方法の利点に明示的に言及される。
【0027】
本発明による運転支援システムを備えた車両は、更に、本発明に従っている。本発明による運転支援システムを備えた本発明による車両の利点に関して、特に、本発明による方法の利点に言及する。
【0028】
本発明による対象の他の利点と有利な実施形態は、図面によって示され、以下の説明で説明される。ここで注意すべきは、図面は単に説明的な性格を有するに過ぎず、本発明を何ら制限することを意図していないことである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明による、異なる滞在領域における現在の交通状況の分割を示す模式図である。
図2図2は、本発明による、異なる滞在領域における現在の交通状況の分割を更に概略的に示す図である。
図3図3は、本発明による、異なる滞在領域における現在の交通状況の分割を示す模式図である。
図4図4は、本発明による、異なる滞在領域における現在の交通状況の分割を示す模式図である。
図5図5は、本発明による、異なる滞在領域における現在の交通状況の本発明による分割を示す模式図である。
図6図6は、本発明による方法のためのフローチャートを示す概略図である。
図7図7は、本発明による方法のためのフローチャートを示す概略図である。
図8図8は、本発明に係る運転支援システムを搭載した車両の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、車道上の移動車両1の滞在領域の分割の可能性を示している。他の道路利用者2は、移動車両1の近傍の周囲に位置している。道路レイアウトの分割、ひいては近接した車両周囲の、例えば3つの異なる滞在領域3への分割が図示されている。個々の滞在領域3は、それぞれの場合において、進行方向の車両軸に対して対称に延びている。1つの滞在領域3は、進行方向において実質的に前方に延びており、より遠い道路利用者2が位置している。滞在領域3は、クラブのような形状を有する。滞在領域3は、例えば、移動車両1の進行方向において175mまでの範囲に延びることができ、例えば、ライダ又はレーダセンサ12、13によって監視されることができる。第2の滞在領域3は、例えば、移動車両1から中間距離をカバーすることができ、そこでは、例えば、サイド領域に特に注意が払われる。この領域は、それに応じて、クラブの形状を有しておらず、むしろ、蝶に類似した形状を有している。第3の滞在領域3は、例えば、第2の滞在領域3、更に、移動車両1のサイド領域も含むことができる。この第3の領域3の横方向の範囲は、このため、前方向の範囲よりも大きい。この領域の横方向の範囲は、例えば、100mとすることができる。
【0031】
図2は、図1の近傍領域の抜粋を示す図である。これは、他の車両2が移動車両1に対して道路上にあることを示し、ここで、車両2は、1つまたは複数の滞在領域3に割り当てられることが可能である。
【0032】
図3は、図1および図2の抜粋を示す図である。移動車両1は、車両周囲の様子を抜粋して示しており、車両1は直線道路を走行している。移動車両1には、周囲を監視するためのセンサが装着されており、図示しないGPSセンサ11が装着されている。滞在領域3の状況に適応した分割は、移動車両1の現在の速度、GPS位置、およびそれによって現在の道路状況に基づいて行われることができる。移動車両1の現在の車速に基づいて、分類は、例えば、歩行者及び自転車を除くことができ、自動車、オートバイ又はトラックのグループのみを含むことができる。滞在領域3は、例えば、実線で示され、更に滞在領域は、破線で示される。車両6及び5は、2つの領域の外側に位置しており、その結果、これらの車両2には低い優先順位が割り当てられることができる。車両7は、滞在領域の1つの内部の半分に位置しており、車両7の現在の移動方向に基づいて、より高い優先順位を追加で割り当てることができる。車両4は、滞在領域2と3の両方に位置しており、そのため、この車両2に対して最も高い優先順位を割り当てることができる。
【0033】
図4は、移動車両1の、例えば都心部での交通状況における、異なる交通状況を示している。直線道路に左から道路が合流する道路レイアウトが示されている。この道路レイアウトに基づいて、移動車両1の進行方向のサイド領域が主にカバーされるように、滞在領域3を選択することができる。ある領域が近傍の領域をカバーし、別の領域が遠方の領域をカバーすることができる。本実施形態では、例えば車両2のみが高い優先順位を受け、歩行者や自転車に分類されるオブジェクトは、その優先順位が低いため、更なる考慮から省かれる。このような理由の車両2は、滞在領域3内にあり、かつ、車両のグループに属すると分類されたため、高い優先順位が与えられる。この分類に基づいて衝突確率が計算され、相対速度に基づいて、移動車両1に対して自律的に制動手順が開始され得る。
【0034】
また、図5は都心部の走行状況を示しており、移動車両1と車両2に分類される別のオブジェクトは、同等の速度で移動しているが、互いに十分な距離を置いている状態である。別の車両2は、別の滞在領域3から高速で左側から接近してくる。滞在領域3の定義、オブジェクトの分類、および個々のオブジェクトの相対的な移動に基づいて、結果的に左側の車両2に高い優先順位を割り当てることができ、このオブジェクトとの衝突確率の計算が優先的に実行される。計算された衝突確率に基づいて、移動車両1は、起こり得る衝突を回避するために、加速または制動され得る。
【0035】
図6は、都心部における他の交通状況を示しており、そこでは、移動車両1に対して旋回状況が生じようとしている。後者は、例えば、速度と方向指示器の作動の組み合わせから生じることがある。異なる滞在領域3への可能な分割は、異なる書式の線によって示されている。速度および点滅に基づき、歩行者2に分類されるオブジェクトのみが高い優先順位を与えられる。優先順位付けに加えて、移動方向と移動速度も、最終的な優先順位を決定するために使用することができる。移動車両1が直進している場合、歩行者2は、滞在領域内にあり、正しいクラスに属しているにもかかわらず、低い優先順位を与えることができる。もちろん、上述したように、移動車両1が旋回する場合には、状況は変化する。
【0036】
図7は、本発明による方法の可能なフローチャートを概略的に示している。様々なセンサ12、13とGPS位置11の決定とを用いて、周囲マップのデジタル画像が作成される。ここに挙げたセンサの種類12、13は、それぞれ、車両1の異なる周囲領域の監視を可能にする。センサ12、13としては、例えば、レーダセンサやライダセンサが考えられる。とりわけ、ここでの周囲マップは、移動車両1の現在位置、車両1の周囲にいる可能性のある道路利用者2、交差点、ジャンクション、自転車道、交通標識などを含む道路レイアウトに関する情報を含んでいる。現在の運転状況に適応した滞在領域ROI3は、周囲マップと、例えば速度や方向指示器若しくはステアリング動作によって示される移動車両1の方向転換の可能性などの利用可能な車両情報との関数として指定される。次に、他の道路利用者のそれぞれの滞在領域3への割り当てが、滞在領域3に基づいて行われる。割り当ては、他の道路利用者2の位置座標とそれぞれの滞在領域3の位置座標に基づいて行われる。個々の滞在領域3に分類された他の道路利用者2は、分類と考慮されている滞在領域3に基づいて分類されるとともに優先順位が付けられる。そして、他の道路利用者2について、滞在領域3および行われた優先順位付けの関数として衝突確率が計算され、優先順位付けに従って段階的に計算される。特定の滞在領域3およびこれらの道路利用者2の分類に基づいて、衝突の危険性がないため、優先順位が低い道路利用者2について、この方法内での衝突確率の計算が行われないことが可能である。更に、移動車両1の現在の運転挙動、または他の道路利用者2の現在の移動プロファイルなどの基準を用いて、優先順位付けの微調整を行うこともできる。その後、得られた衝突確率の関数として、警告を出力するか、または移動車両1の運転挙動を変更することができる。後者は、例えば、進行方向の変更またはブレーキ操作によって行うことができる。
【0037】
図8は、本発明による運転支援システムを搭載した本発明による車両1の本発明による実施形態を模式的に示す。フロントセンサ12とサイドセンサ13、および位置決定のためのGPSモジュール11を有する車両が例示されている。車両の現在位置の道路周囲を定義するロードマップ上の現在の分類は、例えば、GPSモジュール11を用いて行われることも可能である。したがって、例えば、道路のレイアウトと、ジャンクション、交差点または速度制限の存在とが、滞在領域の空間的範囲および位置の選択に影響を与えることができる。車両は、ECU(電子制御ユニット)10の形態の制御ユニット10を更に備え、システムの個々の構成要素は、少なくとも制御ユニット10を介して、互いに電気的に接続されている。ECU10は、本発明による方法の必要なステップを実行し、センサデータおよび現在の交通状況を用いて、異なる道路利用者2間の選択を行い、例えば、直ちに衝突の危険性がある利用者2だけが衝突監視システムによって扱われるように構成される。
【符号の説明】
【0038】
1 移動車両
2 他の道路利用者
3 滞在領域
10 ECU
11 GPSモジュール
12 サイドセンサ
13 フロントセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8