(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 301/02 20060101AFI20240126BHJP
C07D 303/48 20060101ALI20240126BHJP
C07D 249/08 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
C07D301/02
C07D303/48
C07D249/08 522
(21)【出願番号】P 2022541750
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2021029343
(87)【国際公開番号】W WO2022030622
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2020134138
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】張替 僚
(72)【発明者】
【氏名】小島 千絵美
(72)【発明者】
【氏名】今野 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】山崎 徹
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/093522(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102491959(CN,A)
【文献】特表2012-530110(JP,A)
【文献】特表2012-530109(JP,A)
【文献】特開昭59-206375(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103059004(CN,A)
【文献】国際公開第2016/005211(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07C
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(IV)で表される化合物の製造方法であって、
【化1】
[式(IV)中、R
1は、C
1-C
6-アルキル基であり;
X
1は、ハロゲン基、C
1-C
4-ハロアルキル基又はC
1-C
4-ハロアルコキシ基であり;
X
2は、ハロゲン基、C
1-C
4-ハロアルキル基又はC
1-C
4-ハロアルコキシ基であり;
nは、1、2又は3である]
一般式(III)で表される化合物を一般式(II)で表される化合物に変換する工程を含み、
【化2】
[式(II)中、R
1
、X
1
、X
2
、及びnは、式(IV)中のR
1
、X
1
、X
2
、及びnと同一である]
【化3】
[式(III)中、X
1
、X
2
、及びnは、式(IV)中のX
1
、X
2
、及びnと同一である]
前記一般式(II)で表される化合物に変換する工程では、ジメチルスルホキシドを含む溶媒中、反応系を加熱しながら前記一般式(III)で表される化合物に臭素を作用させ、次いで、R
1
-OH(ここで、R
1
は、式(IV)中のR
1
と同一である)を作用させて、前記一般式(II)で表される化合物を生成し、
前記一般式(II)で表される化合物に変換する工程は、尿素、アジピン酸ジヒドラジド及びジブチルヒドロキシトルエンからなる群から選択される少なくとも1種の共存下にて行い、
さらに、無機塩基の共存下にて、
(a)ジメチルスルフィド及びジメチルスルホキシドの少なくとも一方、並びに
(b)メチル-LG(ここで、LGは求核的に置換可能な脱離基であり、ハロゲン基、アルコキシスルホニルオキシ基、アリールオキシスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、ハロアルキルスルホニルオキシ基、及びアリールスルホニルオキシ基から選ばれる)
を用いて、
前記一般式(II)で表される化合物を前記一般式(IV)で表される化合物に変換する工程を含むことを特徴とする、製造方
法。
【請求項2】
前記一般式(IV)で表される化合物に変換する工程では、前記(a)及び前記(b)の反応必要量を分割して添加することを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記(a)は、ジメチルスルフィド及びジメチルスルホキシドの両方である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(II)で表される化合物に変換する工程では、ジメチルスルホキシドを含む溶媒中、臭素を添加した反応系を加熱した後に、
前記一般式(III)で表される化合物を添加して
前記一般式(III)で表される化合物に臭素を作用させ、次いで、R
1-OH(ここで、R
1は、式(IV)中のR
1と同一である)を作用させて、前記一般式(II)で表される化合物を生成することを特徴とする、請求項
1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
一般式(I)で表される化合物の製造方法であって、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の一般式(IV)で表される化合物の製造方法を含み、
当該製造方法によって得られた前記一般式(IV)で表される化合物を、無機塩基の共存下にて、1,2,4-トリアゾールを用いて、前記一般式(I)で表される化合物に変換する工程を含むことを特徴とする製造方法:
【化4】
[式(I)中、R
1、X
1、X
2、及びnは、式(IV)中のR
1、X
1、X
2、及びnと同一である]。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高い防除効果を示す農園芸用薬剤として、アゾール誘導体が有用である。そして、アゾール誘導体を製造するために、アゾール誘導体の中間体の製造方法が検討されている。例えば、特許文献1には、アゾール誘導体の中間体である2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)-2-オキソ酢酸メチルを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたアゾール誘導体の中間体化合物の製造方法では、トリメチルスルホキソニウムブロマイド(TMSOB)を用いてオキシラン化を行う工程と、ヨウ素やヨードメタンを用いて、ケトン基をケトエステル基へと置換する工程と、が開示されている。しかし、TMSOB、ヨウ素、及びヨードメタンは高価であるため、アゾール誘導体の中間体の製造コストが嵩むという課題を有している。このため、より安価にアゾール誘導体の中間体を製造できる方法が求められている。
【0005】
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の一態様は、既存の製造方法よりも安価にアゾール誘導体の中間体を製造することができる方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る製造方法は、一般式(IV)で表される化合物の製造方法であって、
【化1】
[式(IV)中、R
1は、C
1-C
6-アルキル基であり;
X
1は、ハロゲン基、C
1-C
4-ハロアルキル基又はC
1-C
4-ハロアルコキシ基であり;
X
2は、ハロゲン基、C
1-C
4-ハロアルキル基又はC
1-C
4-ハロアルコキシ基であり;
nは、1、2又は3である]
無機塩基の共存下にて、
(a)ジメチルスルフィド及びジメチルスルホキシドの少なくとも一方、並びに
(b)メチル-LG(ここで、LGは求核的に置換可能な脱離基であり、ハロゲン基、アルコキシスルホニルオキシ基、アリールオキシスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、ハロアルキルスルホニルオキシ基、及びアリールスルホニルオキシ基から選ばれる)
を用いて、一般式(II)で表される化合物を前記一般式(IV)で表される化合物に変換する工程を含むことを特徴とする、製造方法:
【化2】
[式(II)中、R
1、X
1、X
2、及びnは、式(IV)中のR
1、X
1、X
2、及びnと同一である]。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、アゾール誘導体の中間体が既存の製造方法よりも安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】トリアゾール-1-イル体(A)のX線回折パターンを示す。intensityはX線回折強度、Angleは回折角(2θ)を示す。
【
図2】トリアゾール-4-イル体(B)のX線回折パターンを示す。intensityはX線回折強度、Angleは回折角(2θ)を示す。
【
図3】本実施例で合成したトリアゾール-1-イル:トリアゾール-4-イル=95:5混合物(C)のX線回折パターンを示す。intensityはX線回折強度、Angleは回折角(2θ)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。尚、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0010】
〔1.一般式(IV)で表される化合物の製造方法〕
本発明の一態様に係る一般式(IV)で表される化合物(以下、「オキシラン誘導体(IV)」と称する)の製造方法(以下「製造方法1」と称する)について説明する:
【化3】
[式(IV)中、R
1は、C
1-C
6-アルキル基であり;
X
1は、ハロゲン基、C
1-C
4-ハロアルキル基又はC
1-C
4-ハロアルコキシ基であり;
X
2は、ハロゲン基、C
1-C
4-ハロアルキル基又はC
1-C
4-ハロアルコキシ基であり;
nは、1、2又は3である]。
【0011】
C1-C6-アルキル基は、炭素原子数が1~6個である直鎖又は分岐鎖状アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、1-メチルエチル基、1,1-ジメチルエチル基、プロピル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、ブチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、ペンチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基又は4-メチルペンチル基が挙げられる。
【0012】
ハロゲン基としては、塩素基、臭素基、ヨウ素基又はフッ素基が挙げられる。
【0013】
C1-C4-ハロアルキル基は、C1-C4-アルキル基の置換し得る位置に1又は2以上のハロゲン原子が置換されており、置換されるハロゲン基が2以上の場合は、ハロゲン基は同一又は異なってもよい。尚、C1-C4-アルキル基は、炭素原子数が1~4個である直鎖又は分岐鎖状アルキル基である。
【0014】
C1-C4-アルキル基は、炭素原子数が1~4個である直鎖又は分岐鎖状アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。ハロゲン基は前述したとおりである。C1-C4-ハロアルキル基としては、例えば、クロロメチル基、2-クロロエチル基、2,3-ジクロロプロピル基、ブロモメチル基、クロロジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、及び3,3,3-トリフルオロプロピル基が挙げられる。
【0015】
C1-C4-ハロアルコキシ基は、C1-C4-アルコキシ基の置換し得る位置に1又は2以上のハロゲン原子が置換されており、置換されるハロゲン基が2以上の場合は、ハロゲン基は同一又は異なってもよい。尚、C1-C4-アルコキシ基は、炭素原子数が1~4個の直鎖又は分岐鎖状のアルコキシ基である。
【0016】
C1-C4-アルコキシ基は、炭素原子数1~4個の直鎖又は分岐鎖状のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、1-メチルプロポキシ基、2-メチルプロポキシ基、ブトキシ基、1,1-ジメチルエトキシ基が挙げられる。
【0017】
本態様の製造方法1は、以下のスキーム1に従って、一般式(II)で表される化合物(以下、「ケトエステル誘導体(II)」と称する)をオキシラン誘導体(IV)に変換する工程(以下、「工程1」と称する)を含む。尚、下記スキーム1中のR1、X1、X2、及びnは、前記一般式(IV)中のR1、X1、X2、及びnに対応する。
【0018】
<スキーム1>
【化4】
(工程1)
本態様の製造方法1における、工程1は、
無機塩基の共存下にて、
(a)ジメチルスルフィド及びジメチルスルホキシドの少なくとも一方、並びに
(b)メチル-LG(ここで、LGは求核的に置換可能な脱離基であり、ハロゲン基、アルコキシスルホニルオキシ基、アリールオキシスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、ハロアルキルスルホニルオキシ基、及びアリールスルホニルオキシ基から選ばれる)
を用いて、ケトエステル誘導体(II)をオキシラン誘導体(IV)に変換する工程である。
【化5】
[式(II)中、R
1、X
1、X
2、及びnは、式(IV)中のR
1、X
1、X
2、及びnと同一である]。
【0019】
工程1では、ジメチルスルフィド及びジメチルスルホキシドの少なくとも一方とメチル-LGとを使用して、反応系内でスルホニウム塩を調製しながらオキシラン化を行う。つまり、スルホニウム塩の調製とオキシラン化反応を同時に行う。
【0020】
無機塩基は、工程1の反応を進行させる観点から添加される。工程1で用いる無機塩基としては、例えば、水素化ナトリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、及び炭酸カリウム等が挙げられ、好ましくは炭酸カリウムである。
【0021】
LGは、求核的に置換可能な脱離基、例えば、ハロゲン基、アルコキシスルホニルオキシ基、アリールオキシスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、ハロアルキルスルホニルオキシ基、及びアリールスルホニルオキシ基から選ばれる脱離基を示し、好ましくはアルコキシスルホニルオキシ基である。
【0022】
工程1において反応系に共存させる無機塩基の量は、工程1の反応を進行させる観点から、ケトエステル誘導体(II)1当量(eq.)に対して、1.0~10.0当量(eq.)であることが好ましい。
【0023】
工程1において反応系に添加する前記「(a)ジメチルスルフィド及びジメチルスルホキシドの少なくとも一方」の量(「反応必要量」という。)は、反応を過不足なく行う観点から、ケトエステル誘導体(II)1当量(eq.)に対して、1.0~10.0当量(eq.)であることが好ましい。
【0024】
工程1において反応系に添加する前記「(b)メチル-LG」の量(「反応必要量」という。)は、反応を過不足なく行う観点から、ケトエステル誘導体(II)1当量(eq.)に対して、1.0~10.0当量(eq.)であることが好ましい。
【0025】
工程1は有機溶媒中で進行する。前記有機溶媒としては、工程1の反応が進行する溶媒が適宜選択され、例えば、ジクロロエタン等が挙げられる。工程1の反応は、例えば、オイルバス中で加熱還流撹拌しながら行うことができる。この時、内温が80~90℃となるように、オイルバス温度を、例えば、85~100℃とすればよい。
【0026】
本態様の製造方法1において、工程1では、前記(a)及び(b)の反応必要量を分割して添加することが好ましい。工程1における分割添加とは、(a)及び(b)の反応必要量を1回以上分割して添加することである。2回目以降を添加するタイミング及び分割添加の回数は、当業者が反応条件等を考慮して適切なタイミング及び回数を適宜設定することができる。例えば、1回目に添加した試薬の活性が失われる前に2回目の分割添加を行えばよい。(a)及び(b)の分割添加により、(a)及び(b)を分割添加せずに一括で添加する場合と比較して、工程1の反応に必要な(a)及び(b)の試薬使用量を削減できるという効果を奏する。これは、(a)及び(b)の分割添加により、(a)及び(b)を一括で添加する場合と比較して、反応が効率的に行われるためであると考えられる。
【0027】
前述した反応必要量を全て反応系に添加できればよいため、1度の添加ごとの添加量(「分割添加量」と称する。)は特に限定されない。分割添加量は分割添加の回数に応じて適宜調整することができる。また、各分割添加量(例えば、反応必要量を2回に分割して添加する場合の1回目と2回目との分割添加量)は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0028】
前記(a)は、ジメチルスルフィド及びジメチルスルホキシドの少なくとも一方であればよいが、ジメチルスルフィド及びジメチルスルホキシドの両方であることが好ましい。(a)において、ジメチルスルフィドとジメチルスルホキシドとを併用して添加することにより、ジメチルスルホキシドのみを添加する場合と比較して、試薬使用量が削減できるだけでなく、収率も向上するという効果を奏する。
【0029】
本態様の製造方法1では、TMSOBの代わりに、比較的入手しやすいジメチルスルフィド及びジメチルスルホキシドの少なくとも一方とメチル-LGとを使用してオキシラン化を行うので、別途TMSOBを調製する必要がなくなる。本態様の製造方法1を実施することにより、TMSOBの製造に必要となるプラントの建設費や製造時の人件費やユーティリティ費等が不要となり、本態様の製造方法1の実施者はTMSOBの製造にかかるバッチサイクルタイムも短縮される等の製造上のメリットを享受することができる。また、本態様の製造方法1の実施者は塩基性条件下でDMSOを扱うため、製造における安全性が高いというメリットを享受することができる。
【0030】
本態様の製造方法1で製造されるオキシラン誘導体(IV)は、後述する一般式(I)で示される化合物(以下、「アゾール誘導体(I)」と称する)の中間体の一つである。本態様の製造方法1によって、高価なTMSOB、ヨウ素、及びヨードメタンを用いずに、オキシラン誘導体(IV)を安価に製造できるため、アゾール誘導体(I)を安価に製造することができる。
【化6】
[式(I)中、R
1、X
1、X
2、及びnは、前記一般式(IV)中のR
1、X
1、X
2、及びnと同一である]。
【0031】
〔2.ケトエステル誘導体(II)の製造方法〕
本態様の製造方法1は、工程1の前に、本態様のケトエステル誘導体(II)の製造方法(以下、「製造方法2」と称する)を含んでもよい。
【0032】
以下に、本態様の製造方法2は、以下のスキーム2に従って、一般式(III)で表される化合物(以下、「メチルケトン誘導体(III)」と称する)をケトエステル誘導体(II)に変換する工程(以下、「工程2」と称する)を含む。尚、下記スキーム2中のR1、X1、X2、及びnは、前記一般式(IV)中のR1、X1、X2、及びnに対応する。
【0033】
<スキーム2>
【化7】
(工程2)
本態様の製造方法2において、工程2では、ジメチルスルホキシドを含む溶媒中、反応系を加熱しながらメチルケトン誘導体(III)に臭素を作用させ、次いで、R
1-OH(ここで、R
1は、前記一般式(IV)中のR
1と同一である)を作用させて、ケトエステル誘導体(II)を生成する。
【化8】
[式(III)中、X
1、X
2、及びnは、式(IV)中のX
1、X
2、及びnと同一である]。
【0034】
工程2では、臭素及びジメチルスルホキシドを用いたケトカルボン酸の合成と、R1-OHを用いたエステル化とを連続して行う。ケトカルボン酸の合成反応に臭素を用いることで、特許文献1のようにヨウ素を使用する場合と比較して、ケトエステル誘導体(II)を安価に製造でき、さらには収率も高い。また、エステル化反応に用いるエステル化試薬としてR1-OHを用いるので、特許文献1のようにヨードメタンを使用する場合と比較して、ケトエステル誘導体(II)を安価に製造できる。
【0035】
工程2において反応系に添加するジメチルスルホキシドの量は、反応を過不足なく行う観点から、メチルケトン誘導体(III)1当量(eq.)に対して、2.0~10.0当量(eq.)であることが好ましい。
【0036】
工程2において反応系に添加する臭素の量は、反応を過不足なく行う観点から、メチルケトン誘導体(III)1当量(eq.)に対して、0.5~3.0当量(eq.)であることが好ましい。
【0037】
工程2におけるケトカルボン酸の合成反応の反応温度は、反応を好適に行う観点から、内温が60~85℃であることが好ましく、70℃であることがより好ましい。例えば、工程2におけるケトカルボン酸の合成反応は、オイルバス中で内温が前記温度となるように撹拌加熱しながら行うことができる。また、工程2におけるエステル化反応は、例えば、オイルバス中で加熱還流しながら行うことができる。この時、内温が、好ましくは55~65℃、より好ましくは65℃となるように、オイルバス温度を60~80℃とすればよい。
【0038】
工程2は有機溶媒中で進行する。前記有機溶媒としては、工程2の反応が進行する溶媒が適宜選択され、例えば、ジクロロエタン等が挙げられる。
【0039】
本発明の別の一態様に係る製造方法2において、工程2では、ジメチルスルホキシドを含む溶媒中、臭素を添加した反応系を加熱後に、メチルケトン誘導体(III)を添加して、メチルケトン誘導体(III)に臭素を作用させ、次いで、R1-OH(ここで、R1は、前記一般式(IV)中のR1と同一である)を作用させて、ケトエステル誘導体(II)を生成してもよい。
【0040】
臭素を添加した反応系を加熱後にメチルケトン誘導体(III)を添加する場合、メチルケトン誘導体(III)を添加する前の反応系の加熱温度は、内温が60~75℃であることが好ましく、65℃であることがより好ましい。また、メチルケトン誘導体(III)添加後の反応系の反応温度は、内温が65~80℃であることが好ましく、70℃であることがより好ましい。臭素を添加した反応系を加熱後にメチルケトン誘導体(III)を添加することで、ケトカルボン酸の合成反応の際に生じる発熱を抑制することができるため、工程2をより安全に進行することができる。
【0041】
また、別の一態様に係る製造方法2において、工程2は、尿素、アジピン酸ジヒドラジド及びジブチルヒドロキシトルエンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物の共存下にて行うことが好ましく、尿素の共存下にて行うことがより好ましい。工程2では、臭素を用いることにより反応容器内に白色付着物が発生する。この白色付着物は工程2の最終産物中には含まれないが、反応容器を詰まらせる原因となるため、反応容器内の白色付着物を都度取り除く必要がある。しかし、前記化合物の共存下で工程2の反応を行うことで、工程2において反応容器内に付着する白色付着物の発生を抑制することができる。その結果、実施者は反応容器内の白色付着物を取り除く処理が不要となるため製造効率が向上するというメリットを享受することができる。白色付着物の発生を抑制する効果が高いことから、工程2において反応系に共存させる化合物は、尿素であることが好ましい。
【0042】
工程2において反応系に共存させる尿素、アジピン酸ジヒドラジド及びジブチルヒドロキシトルエンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物の量は、白色付着物の発生を抑制する観点から、メチルケトン誘導体(III)1当量(eq.)に対して、0.1~2.0当量(eq.)であることが好ましい。
【0043】
〔3.アゾール誘導体(I)の製造方法〕
本態様のアゾール誘導体(I)の製造方法(以下「製造方法3」と称する)について説明する。本態様の製造方法3は、アゾール誘導体(I)の中間体であるオキシラン誘導体(IV)を製造するために、前述した本態様のオキシラン誘導体(IV)の製造方法を含み、当該製造方法によって得られたオキシラン誘導体(IV)を、以下のスキーム3に従って、アゾール誘導体(I)に変換する工程(以下、「工程3」と称する)を含む。かかる構成により、オキシラン誘導体(IV)を安価に製造することができるため、アゾール誘導体(I)を安価に製造することができる。
【0044】
オキシラン誘導体(IV)の製造方法については、先に説明した通りであるため、ここでは、工程3についてのみ説明する。尚、下記スキーム3中のR1、X1、X2、及びnは、前記一般式(IV)中のR1、X1、X2、及びnに対応する。
【0045】
<スキーム3>
【化9】
本態様の製造方法3において、工程3では、製造方法1によって生成されたオキシラン誘導体(IV)を、無機塩基の共存下にて、1,2,4-トリアゾールを用いて、アゾール誘導体(I)に変換する。
【0046】
工程3では、1,2,4-トリアゾールと無機塩基とを使用して、反応系内で1,2,4-トリアゾールと無機塩基との塩(例えば、無機塩基として炭酸カリウムを用いた場合は、1,2,4-トリアゾールカリウム塩)を調製しながらアゾール化を行う。これにより、実施者は1,2,4-トリアゾールと無機塩基との塩を予め調製する必要が無いため、製造効率が向上するというメリットを享受することができる。
【0047】
工程3で用いる無機塩基については、工程1の説明で例示した通りである。工程3で用いる無機塩基は、工程1で用いた無機塩基と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0048】
工程3において反応系に共存させる無機塩基の量は、工程3の反応を進行させる観点から、オキシラン誘導体(IV)1当量(eq.)に対して、0.1~3.0当量(eq.)であることが好ましい。
【0049】
工程3において反応系に添加する1,2,4-トリアゾールの量は、工程3の反応を過不足なく行う観点から、オキシラン誘導体(IV)1当量(eq.)に対して、1.0~3.0当量(eq.)であることが好ましい。
【0050】
工程3は有機溶媒中で進行する。前記有機溶媒としては、工程3の反応が進行する溶媒が適宜選択され、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。工程3の反応は、例えば、室温で撹拌しながら、又は、オイルバス中で加熱撹拌しながら行うことができる。この時の反応温度は、例えば、内温が40~120℃である。
【0051】
オキシラン誘導体(IV)を、アゾール誘導体(I)に変換する方法は、前述の方法に限定されるものではなく、公知の方法(例えば、特許文献1に開示された方法)によって行うことも可能である。従って、本発明の別の一態様に係る製造方法3は、前述した本態様のオキシラン誘導体(IV)の製造方法を含み、当該製造方法によって得られたオキシラン誘導体(IV)を、公知の方法(例えば、特許文献1に開示された方法)に従ってアゾール誘導体(I)に変換する方法であってもよい。
【0052】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0053】
〔まとめ〕
本態様1に係る製造方法は、一般式(IV)で表される化合物の製造方法であって、無機塩基の共存下にて、(a)ジメチルスルフィド及びジメチルスルホキシドの少なくとも一方、並びに(b)メチル-LG(ここで、LGは求核的に置換可能な脱離基であり、ハロゲン基、アルコキシスルホニルオキシ基、アリールオキシスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、ハロアルキルスルホニルオキシ基、及びアリールスルホニルオキシ基から選ばれる)を用いて、一般式(II)で表される化合物を前記一般式(IV)で表される化合物に変換する工程1を含む構成である。かかる構成により、コストのかかるTMSOBを用いずに、オキシラン誘導体(IV)を製造することができる。
【0054】
本態様2に係る製造方法は、本態様1において、前記一般式(IV)で表される化合物に変換する工程1では、前記(a)及び前記(b)の反応必要量を分割して添加することが好ましい。(a)及び(b)の分割添加により、反応が効率的に行われるため、(a)及び(b)の試薬使用量を削減できる。
【0055】
本態様3に係る製造方法は、本態様1又は2において、前記(a)は、ジメチルスルフィド及びジメチルスルホキシドの両方であることが好ましい。(a)において、ジメチルスルフィドを添加することにより、(a)の試薬使用量が削減できるという効果を奏する。
【0056】
本態様4に係る製造方法は、本態様1から3のいずれかにおいて、一般式(III)で表される化合物を前記一般式(II)で表される化合物に変換する工程2をさらに含み、当該工程2では、ジメチルスルホキシドを含む溶媒中、反応系を加熱しながら一般式(III)で表される化合物に臭素を作用させ、次いで、R1-OH(ここで、R1は、式(IV)中のR1と同一である)を作用させて、前記一般式(II)で表される化合物を生成する構成であってもよい。かかる構成により、コストのかかるヨウ素やヨードメタンを用いずに、ケトエステル誘導体(II)を製造することができる。
【0057】
本態様5に係る製造方法は、本態様4において、前記一般式(II)で表される化合物に変換する工程2では、ジメチルスルホキシドを含む溶媒中、臭素を添加した反応系を加熱後に、一般式(III)で表される化合物を添加して一般式(III)で表される化合物に臭素を作用させ、次いで、R1-OH(ここで、R1は、式(IV)中のR1と同一である)を作用させて、前記一般式(II)で表される化合物を生成することが好ましい。反応系の加熱後にメチルケトン誘導体(III)を添加することで、発熱を抑制することができるため、工程2を安全に進行することができる。
【0058】
本態様6に係る製造方法は、本態様4又は5において、前記一般式(II)で表される化合物に変換する工程2は、尿素、アジピン酸ジヒドラジド及びジブチルヒドロキシトルエンからなる群から選択される少なくとも1種の共存下にて行うことが好ましい。かかる構成により、工程2において反応容器内に付着する白色付着物の発生を抑制することができる。
【0059】
本態様7に係る製造方法は、一般式(I)で表される化合物の製造方法であって、本態様1から6のいずれかに記載の一般式(IV)で表される化合物の製造方法を含み、当該製造方法によって得られた前記一般式(IV)で表される化合物を、無機塩基の共存下にて、1,2,4-トリアゾールを用いて、前記一般式(I)で表される化合物に変換する工程3を含む構成である。かかる構成により、アゾール誘導体(I)の中間体の製造コストを低減することができるため、アゾール誘導体(I)の製造コストを低減することができる。
【実施例】
【0060】
以下、製造例を示し、本発明を具体的に説明する。尚、本発明はその要旨を越えない限り以下の製造例に限定されるものではない。
【0061】
<合成例1>
2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)-2-オキシランカルボン酸メチル
(合成例1-1)
2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)-2-オキソ酢酸メチル0.98g(3.0mmol)、ジクロロエタン4.5mLをフラスコに加えた後、炭酸カリウム2.24g(16.2mmol)、硫酸ジメチル1.54mL(16.2mmol)、及びジメチルスルホキシド0.58mL(8.1mmol)を加えて95℃のオイルバスで加熱還流撹拌した。反応開始から2時間後、水を加え、ジクロロエタンで2回抽出し、これを1回水洗した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、黄色液体粗製物1.06gを得た。
【0062】
この黄色液体粗製物中の標記化合物をNMRによって定量した。その結果、標記化合物のNMR定量収率は61%であった。
【0063】
(合成例1-2)
粗2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)-2-オキソ酢酸メチル12.90g(純度76%、30mmol)、炭酸カリウム14.95g(108mmol)、及びジクロロエタン60mLをフラスコに加えた後、ジメチルスルホキシド3.84mL(54mmol)、及び硫酸ジメチル10.26mL(108mmol)を分割して加えた。反応は95℃のオイルバスを用いて加熱還流下で行った。反応開始から7.5時間後、水を加えて分液し、水層をジクロロエタンで1回再抽出した後、有機層を合わせて2回水洗した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、橙色液体粗製物13.07gを得た。
【0064】
この橙色液体粗製物中の標記化合物をガスクロマトグラフィーによって定量(GC定量)した。その結果、標記化合物のGC定量収率は91%であった。
【0065】
(合成例1-3)
粗2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)-2-オキソ酢酸メチル17.18g(純度76%、40mmol)、炭酸カリウム13.27g(96mmol)、ジメチルスルフィド1.8mL(24mmol)、及びジクロロエタン60mLをフラスコに加えた後、ジメチルスルホキシド3.4mL(48mmol)、及び硫酸ジメチル7.1mL(96mmol)を分割して加えた。反応は95℃のオイルバスを用いて加熱還流下で行った。反応開始から5時間後、水を加えて分液し、有機層を2回水洗した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、橙色液体粗製物17.50gを得た。
【0066】
橙色液体粗製物中の標記化合物をガスクロマトグラフィーによって定量(GC定量)した。その結果、標記化合物のGC定量収率は97%であった。
【0067】
(合成例1-4)
2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)-2-オキソ酢酸メチル0.98g(3.0mmol)、リン酸カリウム3.82g(18.0mmol)、及びジクロロエタン6.0mLをフラスコに加えた後、硫酸ジメチル0.85mL(9.0mmol)、及びジメチルスルホキシド0.32mL(4.5mmol)を分割して加えた。反応は95℃のオイルバスで加熱還流下で行った。反応開始から7時間後、水を加え、ジクロロエタンで2回抽出し、これを1回水洗した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、黄色液体粗製物1.16gを得た。
【0068】
この黄色液体粗製物中の標記化合物をNMRによって定量した。その結果、標記化合物のNMR定量収率は76%であった。
【0069】
<合成例2>
2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)-2-オキソ酢酸メチルの合成
(合成例2-1)
2’-クロロ-4’-(4-クロロフェノキシ)アセトフェノン28.11g(0.10mol)、ジメチルスルホキシド50mL、及びジクロロエタン45mLをフラスコに加えて溶解し氷浴で冷却した後、臭素19.32g(0.12mol)を滴下ロートで加え、ジクロロエタン5mLで洗いこみ、内温が70℃になるようにオイルバスで加熱撹拌した。1時間後、低沸物を留去し、トルエン50mL、及びメタノール50mLを加えて加熱還流した。1時間後、トルエン50mLを加えて溶液の下層を分離し、下層をトルエンで1回再抽出した。上層と再抽出トルエンを合わせて飽和重層水で1回洗浄し、1回水洗し、飽和食塩水で1回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、橙色液体粗製物30.83gを得た。
【0070】
この橙色液体粗製物中の標記化合物をガスクロマトグラフィーによって定量(GC定量)した。その結果、標記化合物のGC定量収率は83%であった。
【0071】
(合成例2-2)
ジクロロエタン100mLをフラスコに加えた後、臭素38.36g(0.24mol)を滴下ロートで加えて撹拌した。反応容器を水浴で冷却した後、ジメチルスルホキシド28.4mLを滴下ロートで加えた。オイルバスで内温が70℃になるように加熱した後、2’-クロロ-4’-(4-クロロフェノキシ)アセトフェノン56.23g(0.20mol)のジメチルスルホキシド85.2mL溶液を滴下ロートで加えた。滴下終了から1時間後、ジメチルスルホキシド7.1mLを追加した。更に1時間後、低沸物を留去し、トルエン100mL、及びメタノール100mLを加えて加熱還流した。2時間後、トルエン100mLを加えて溶液の下層を分離し、下層をトルエンで1回再抽出した。上層と再抽出トルエンを合わせて飽和重層水で1回洗浄し、2回水洗した。溶媒を留去し、橙色液体粗製物59.29gを得た。
【0072】
この橙色液体粗製物中の標記化合物をガスクロマトグラフィーによって定量(GC定量)した。その結果、標記化合物のGC定量収率は77%であった。
【0073】
(合成例2-3)
尿素18.01g(0.30mol)、及びジクロロエタン468mLをフラスコに加えた後、臭素191.80g(1.20mol)を滴下ロートで加えて撹拌した。反応容器を水浴で冷却した後、ジメチルスルホキシド156.26g(2.00mol)及びジクロロエタン25mLの混合溶液を滴下ロートで加えた。オイルバスで内温が70℃になるまで内温を見ながら段階的に加熱した後、2’-クロロ-4’-(4-クロロフェノキシ)アセトフェノン283.11g(1.00mol)のジメチルスルホキシド468.77g(6.00mol)溶液を滴下ロートで加えた。滴下終了から1時間後、ジメチルスルホキシド39.07g(0.50mol)及びジクロロエタン6mLを追加した。更に1時間後、低沸物を留去し、トルエン500mL及びメタノール500mLを加えて加熱還流した。3時間後、トルエン500mLを追加して溶液の下層を分離し、下層をトルエンで1回再抽出した。上層と再抽出トルエンを合わせて水で1回、5%重層水で1回、水で1回洗浄した。目的物のトルエン溶液1671.78gを橙色液体として得た。
【0074】
この橙色液体中の標記化合物をガスクロマトグラフィーによって定量(GC定量)した。その結果、標記化合物のGC定量収率は79%であった。
【0075】
また、合成例2-3では、合成例2-1及び合成例2-2と比較して、反応容器内に付着する白色付着物の発生を95%以上抑制することができた。
【0076】
(合成例2-4)
ジクロロエタン500mL、及び臭素191.79g(1.20mol)をフラスコに加えた後、内温が65℃になるまでオイルバスで加熱撹拌した後、尿素18.02g(0.30mol)のジメチルスルホキシド156.28g(2.00mol)溶液を滴下ロートで加えた。その後、2’-クロロ-4’-(4-クロロフェノキシ)アセトフェノン283.68g(純度99.1%,1.00mol)のジメチルスルホキシド351.59g(4.50mol)溶液を滴下ロートで加えた。滴下終了から1時間後、ジメチルスルホキシド39.13g(0.50mol)を追加した。更に2時間後、低沸物を留去し、トルエン500mL及びメタノール500mLを加えて加熱還流した。7時間後、溶液の下層を分離し、下層をトルエンで1回再抽出した。上層と再抽出トルエンを合わせて3回水洗した。目的物のトルエン溶液1261.67gを橙色液体として得た。
【0077】
この橙色液体中の標記化合物をガスクロマトグラフィーによって定量(GC定量)した。その結果、標記化合物のGC定量収率は84%であった。
【0078】
<合成例3>
2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロピオン酸メチルの合成
粗2-(2-クロロ-4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)-2-オキシランカルボン酸メチル152.35g(純度74%、0.33mol)、及びN,N-ジメチルアセトアミド154.12gをフラスコに加えた後、1,2,4-トリアゾール34.64g(0.50mol)、及び炭酸カリウム23.09g(0.17mol)を加え、50℃のオイルバスで加熱撹拌した。0.75時間後、内温を60℃に昇温した。5時間後、室温まで冷却し、反応液363.71gの内、111.95g(0.10mol相当)を500mLの円筒型セパラブルフラスコに移し、トルエン50mL及び水40mLを加えた後、標記化合物の種晶30mgを加えた。30分後、水160mLを滴下して30分間室温で撹拌した後、6℃のシクロヘキサンバスを用いて30分かけてゆっくり冷却し、3時間撹拌を続けた。その後、粗液を吸引ろ過し、水50mL及びトルエン25mLを用いて洗浄した。ろ取物を真空検体乾燥機を用いて減圧乾燥し目的物の白色固体粗製物を39.09g得た。
【0079】
この白色固体粗製物中の標記化合物を高速液体クロマトグラフィーによって定量(HPLC定量)した。その結果、標記化合物のHPLC定量収率は78%であった。また、トリアゾール-1-イル:トリアゾール-4-イル=85:15であった。
【0080】
前記白色固体粗製物36.6gを、トルエン164.8gを適宜分割しながら用いて100℃で熱時ろ過した。ろ液189gをフラスコに加え、オイルバスで100℃に昇温し、内温が100℃に到達してから10分間加熱撹拌した。その後15℃/hの速度で92℃まで冷却した。92℃に到達後、標記化合物の種晶159mgを添加した後、92℃で30分撹拌を続けた。その後、75℃までは6℃/h、75℃から55℃までは10℃/h、55℃から5℃までは30℃/hで冷却を行い、5℃到達から2時間撹拌を続けた。粗液を吸引ろ過し、冷トルエン11.3gで洗浄した。ろ取物を、真空検体乾燥機を用いて減圧乾燥し目的物の白色固体を31.2g得た。
【0081】
この白色固体粗中の標記化合物を高速液体クロマトグラフィーによって定量(HPLC定量)した。その結果、標記化合物のHPLC定量回収率は94.6%であった。この時トリアゾール-1-イル:トリアゾール-4-イル=95:5であった。
【0082】
トリアゾール-1-イル体(A)、トリアゾール-4-イル体(B)、及び前記トリアゾール-1-イル:トリアゾール-4-イル=95:5混合物(C)の粉末X線回折データを、ゲルマニウム-CuKα1放射線照射(λ=1.5406Å)を使用して室温にて記録した。2θスキャンを、5°≦2θ≦35°(ステップ幅0.03°)の間で一次元位置感応型検出器を使用することで室温にて実施した。
【0083】
トリアゾール-1-イル体(A)、トリアゾール-4-イル体(B)及び前記トリアゾール-1-イル:トリアゾール-4-イル=95:5混合物(C)のそれぞれの粉末X線パターンを
図1~3に示す。また、それぞれの粉末X線回折パターンの2θ値を以下の表1に提示する。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は農薬として有用なアゾール誘導体を合成するための中間体の製造方法として利用することができる。