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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】壁の施工方法及び壁構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20240126BHJP
   E04B 1/26 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
E04B1/76 500H
E04B1/26 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023141048
(22)【出願日】2023-08-31
【審査請求日】2023-10-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】竹迫 利喜也
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-224470(JP,A)
【文献】特開2000-064500(JP,A)
【文献】特開2018-031219(JP,A)
【文献】特公昭63-033545(JP,B2)
【文献】特開2001-098657(JP,A)
【文献】実開平06-020617(JP,U)
【文献】実公平03-032161(JP,Y2)
【文献】特開平10-280578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/74 - 1/94
E04B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に設置される建物構造材と、前記建物構造材同士の間に設置される板状断熱材と、を備える壁の施工方法であって、
前記建物構造材を設置する構造材設置工程と、
前記板状断熱材を設置する断熱材設置工程と、を有しており、
前記構造材設置工程では、前記建物構造材同士の間隔が、第一間隔と、前記第一間隔とは異なる第二間隔と、前記第一間隔及び前記第二間隔とは異なる第三間隔と、のいずれかとなるように前記建物構造材を設置し、
前記断熱材設置工程では、
前記建物構造材同士の間隔が前記第一間隔である箇所に、前記板状断熱材として、第一板状断熱材を設置し、
前記建物構造材同士の間隔が前記第二間隔である箇所に、前記板状断熱材として、前記第一板状断熱材とは幅寸法が異なる第二板状断熱材を設置し、
前記建物構造材同士の間隔が前記第三間隔である箇所に、前記板状断熱材として、前記第一板状断熱材及び前記第二板状断熱材とは幅寸法が異なる第三板状断熱材を設置し、
前記建物構造材同士の間隔が前記第一間隔である箇所を、厚さ方向に、第一空間と、第二空間と、に分割した場合に、
前記構造材設置工程では、前記第一空間に、筋交いを配置し、
前記断熱材設置工程では、前記第一空間と、前記第二空間と、に別々の前記板状断熱材を配置し、
前記筋交いは、厚さ寸法が、前記建物構造材の厚さ寸法よりも短く、
前記第一空間に配置する板状断熱材は、厚さ寸法が、前記筋交いの厚さ寸法と同一であり、前記筋交いに沿って傾斜する傾斜面を有しており、
前記断熱材設置工程における前記第一空間に前記板状断熱材を配置するステップでは、
前記第一空間のうち前記筋交いを除く領域を、三角形状の領域と、台形状の領域と、長方形状の領域と、に分けて各領域に前記板状断熱材を配置し、
前記三角形状の領域及び前記台形状の領域には、長方形状の前記第一板状断熱材から作製された、三角形状の板状断熱材と、台形状の板状断熱材と、が配置され、
前記台形状の板状断熱材は、前記長方形状の第一板状断熱材を、前記筋交いに沿って斜めに切断することで作製され、
前記三角形状の板状断熱材は、前記長方形状の第一板状断熱材から前記台形状の板状断熱材を除いた三角形状のパーツを、前記三角形状の領域の高さ寸法に合わせて当該パーツの直角を挟む二辺のうちの一方に沿って切断することで作製されることを特徴とする壁の施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の壁の施工方法において、
前記板状断熱材は、発泡系断熱材であることを特徴とする壁の施工方法。
【請求項3】
請求項1に壁の施工方法において、
前記建物構造材同士の間に、配線器具を収容するための配線ボックスと、前記配線器具から延びるケーブルと、を設置する配線工程を有しており、
前記建物構造材同士の間の空間を、高さ方向に、第三空間と、第四空間と、第五空間と、に分割した場合に、
前記配線工程では、
前記第三空間と前記第五空間との間に位置する前記第四空間に、前記配線ボックスを配置し、
前記第五空間に、前記ケーブルを配置し、
前記断熱材設置工程では、前記第三空間と、前記第四空間と、前記第五空間と、に別々の前記板状断熱材を配置し、
前記第四空間に配置する板状断熱材は、前記配線ボックスと干渉する範囲に第一欠き込みを有し、
前記第五空間に配置する板状断熱材は、前記ケーブルと干渉する範囲に第二欠き込みを有することを特徴とする壁の施工方法。
【請求項4】
請求項1に記載の壁の施工方法において、
耐火面材を設置する耐火面材設置工程を有しており、
前記板状断熱材は、前記耐火面材との間に隙間が設けられた状態で、当該耐火面材によって被覆されていることを特徴とする壁の施工方法。
【請求項5】
鉛直方向に設置される建物構造材と、前記建物構造材同士の間に設置される板状断熱材と、を備える壁構造であって、
前記建物構造材は、前記建物構造材同士の間隔が、第一間隔と、前記第一間隔とは異なる第二間隔と、前記第一間隔及び前記第二間隔とは異なる第三間隔と、のいずれかとなるように設置されており、
前記建物構造材同士の間隔が前記第一間隔である箇所には、前記板状断熱材として、第一板状断熱材が設置されており、
前記建物構造材同士の間隔が前記第二間隔である箇所には、前記板状断熱材として、前記第一板状断熱材とは幅寸法が異なる第二板状断熱材が設置されており、
前記建物構造材同士の間隔が前記第三間隔である箇所には、前記板状断熱材として、前記第一板状断熱材及び前記第二板状断熱材とは幅寸法が異なる第三板状断熱材が設置されており、
前記建物構造材同士の間隔が前記第一間隔である箇所に筋交いが設けられる筋交い部においては、
前記建物構造材同士の間隔が前記第一間隔である箇所が、厚さ方向に、第一空間と、第二空間と、に分割されて、前記第一空間に前記筋交いが配置されているとともに、前記第一空間と前記第二空間とに別々の前記板状断熱材が配置されており、
前記筋交いは、厚さ寸法が、前記建物構造材の厚さ寸法よりも短く、
前記第一空間に配置される板状断熱材は、厚さ寸法が、前記筋交いの厚さ寸法と同一であり、前記筋交いに沿って傾斜する傾斜面を有しており、
前記第一空間のうち前記筋交いを除く領域は、三角形状の領域と、台形状の領域と、長方形状の領域と、に分かれていて各領域に前記板状断熱材が配置されており、
前記三角形状の領域及び前記台形状の領域には、長方形状の前記第一板状断熱材から作製された、三角形状の板状断熱材と、台形状の板状断熱材と、が配置され、
前記台形状の板状断熱材は、前記長方形状の第一板状断熱材を、前記筋交いに沿って斜めに切断することで作製されたものであり、
前記三角形状の板状断熱材は、前記長方形状の第一板状断熱材から前記台形状の板状断熱材を除いた三角形状のパーツを、前記三角形状の領域の高さ寸法に合わせて当該パーツの直角を挟む二辺のうちの一方に沿って切断することで作製されたものであることを特徴とする壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁の施工方法及び壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、壁の断熱施工方法として、発泡プラスチック製の板状断熱材を柱間に充填する技術が開示されている。このような板状断熱材は、壁を構成する隣り合う柱間(柱同士の間、柱と間柱の間、間柱同士の間)などに設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-078530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
柱同士の間隔と、柱と間柱の間隔と、間柱同士の間隔と、はそれぞれ異なる。したがって、柱同士の間に設置する板状断熱材、柱と間柱の間に設置する板状断熱材、及び間柱同士の間に設置する板状断熱材として、幅寸法が異なる複数種類の板状断熱材を用意する必要がある。
また、間柱には、幅寸法が異なる複数種類の間柱があるので、使用する間柱によって、柱と間柱の間隔や、間柱同士の間隔が変わってくる。したがって、柱と間柱の間に設置する板状断熱材として、幅寸法が異なる複数種類の板状断熱材を用意する必要があるし、間柱同士の間に設置する板状断熱材として、幅寸法が異なる複数種類の板状断熱材を用意する必要がある。
【0005】
また、柱には、石膏ボード等の耐火面材を固定するための受材や、窓台を固定するための受材が取り付けられる場合がある。その場合には、受材の幅寸法の分だけ板状断熱材の幅寸法を短くする必要があるので、柱に受材を取り付けるか否かによって、柱同士の間隔や、柱と間柱の間隔が変わってくる。したがって、柱同士の間に設置する板状断熱材として、幅寸法が異なる複数種類の板状断熱材を用意する必要があるし、柱と間柱の間に設置する板状断熱材として、幅寸法が異なる複数種類の板状断熱材を用意する必要がある。さらに、受材には、幅寸法が異なる複数種類の受材があるので、その分、用意しなければならない板状断熱材の種類(幅寸法)も増える。
【0006】
板状断熱材は、工場で所望の幅寸法に切断することも可能であるし、施工現場で所望の幅寸法に切断することも可能である。
板状断熱材を工場で所望の幅寸法に切断する場合、施工現場では、工場から搬送されてきた幅寸法が異なる複数種類の板状断熱材の中から、当て嵌まる板状断熱材を選択する必要がある。したがって、板状断熱材の種類(幅寸法)が多くなるほど、施工現場で板状断熱材の選択に時間を要することとなるので、施工性が低下する。
また、板状断熱材を施工現場で所望の幅寸法に切断する場合、工場から搬送されてくる板状断熱材の種類は少ない(例えば一種類)であるので、施工現場で板状断熱材の選択に時間を要することはない。しかしながら、この場合、施工現場で板状断熱材の幅寸法を調整するために切断作業を行わなければならないので、やはり施工性が低下する。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、柱や間柱などの建物構造材と、建物構造材同士の間に設置される板状断熱材と、を備える壁の施工性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、例えば図1図9に示すように、鉛直方向に設置される建物構造材(柱11、間柱12、受材13など)と、前記建物構造材同士の間に設置される板状断熱材20と、を備える壁(外壁1)の施工方法であって、
前記建物構造材を設置する構造材設置工程と、
前記板状断熱材20を設置する断熱材設置工程と、を有しており、
前記構造材設置工程では、前記建物構造材同士の間隔が、第一間隔Xと、前記第一間隔Xとは異なる第二間隔Yと、前記第一間隔X及び前記第二間隔Yとは異なる第三間隔Zと、のいずれかとなるように前記建物構造材を設置し、
前記断熱材設置工程では、
前記建物構造材同士の間隔が前記第一間隔Xである箇所に、前記板状断熱材20として、第一板状断熱材21を設置し、
前記建物構造材同士の間隔が前記第二間隔Yである箇所に、前記板状断熱材20として、前記第一板状断熱材21とは幅寸法が異なる第二板状断熱材22を設置し、
前記建物構造材同士の間隔が前記第三間隔Zである箇所に、前記板状断熱材20として、前記第一板状断熱材21及び前記第二板状断熱材22とは幅寸法が異なる第三板状断熱材23を設置し、
前記建物構造材同士の間隔が前記第一間隔Xである箇所を、厚さ方向に、第一空間S1と、第二空間S2と、に分割した場合に、
前記構造材設置工程では、前記第一空間S1に、筋交い14を配置し、
前記断熱材設置工程では、前記第一空間S1と、前記第二空間S2と、に別々の前記板状断熱材20を配置し、
前記筋交い14は、厚さ寸法が、前記建物構造材の厚さ寸法よりも短く、
前記第一空間S1に配置する板状断熱材20は、厚さ寸法が、前記筋交い14の厚さ寸法と同一であり、前記筋交い14に沿って傾斜する傾斜面20aを有しており、
前記断熱材設置工程における前記第一空間S1に前記板状断熱材20を配置するステップでは、
前記第一空間S1のうち前記筋交い14を除く領域を、三角形状の領域と、台形状の領域と、長方形状の領域と、に分けて各領域に前記板状断熱材20を配置し、
前記三角形状の領域及び前記台形状の領域には、長方形状の前記第一板状断熱材21から作製された、三角形状の板状断熱材20と、台形状の板状断熱材20と、が配置され、
前記台形状の板状断熱材20は、前記長方形状の第一板状断熱材21を、前記筋交い14に沿って斜めに切断することで作製され、
前記三角形状の板状断熱材20は、前記長方形状の第一板状断熱材21から前記台形状の板状断熱材20を除いた三角形状のパーツを、前記三角形状の領域の高さ寸法に合わせて当該パーツの直角を挟む二辺のうちの一方に沿って切断することで作製されることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、建物構造材同士の間隔が第一間隔Xと第二間隔Yと第三間隔Zの三種類しかないので、用意しなければならない板状断熱材20の種類(幅寸法)も三種類でよい。したがって、施工現場で板状断熱材20の選択に時間を要することもないし、施工現場で板状断熱材20の幅寸法を調整するために切断作業を行う必要もないので、壁の施工性を向上させることができる。
また、壁の施工性を向上させることができるとともに、壁の断熱性を向上させることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、例えば図~図に示すように、請求項1に記載の壁の施工方法において、
前記板状断熱材20は、発泡系断熱材であることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、前記板状断熱材20として発泡系断熱材を用いることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、例えば図6図9に示すように、請求項1に壁の施工方法において、
前記建物構造材(柱11、間柱12、受材13など)同士の間に、配線器具を収容するための配線ボックス100と、前記配線器具から延びるケーブル110と、を設置する配線工程を有しており、
前記建物構造材同士の間の空間を、高さ方向に、第三空間S3と、第四空間S4と、第五空間S5と、に分割した場合に、
前記配線工程では、
前記第三空間S3と前記第五空間S5との間に位置する前記第四空間S4に、前記配線ボックス100を配置し、
前記第五空間S5に、前記ケーブル110を配置し、
前記断熱材設置工程では、前記第三空間S3と、前記第四空間S4と、前記第五空間S5と、に別々の前記板状断熱材20を配置し、
前記第四空間S4に配置する板状断熱材20は、前記配線ボックス100と干渉する範囲に第一欠き込み20bを有し、
前記第五空間S5に配置する板状断熱材20は、前記ケーブル110と干渉する範囲に第二欠き込み20cを有することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、壁の施工性を向上させることができるとともに、壁の断熱性を向上させることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、例えば図1図4に示すように、請求項1に記載の壁の施工方法において、
耐火面材3を設置する耐火面材設置工程を有しており、
前記板状断熱材20は、前記耐火面材3との間に隙間30が設けられた状態で、当該耐火面材3によって被覆されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、板状断熱材20と、当該板状断熱材20を被覆する耐火面材3と、の間に隙間30が設けられている。したがって、隙間30を電線や通信線の配線などに使用できる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、例えば図1図9に示すように、鉛直方向に設置される建物構造材(柱11、間柱12、受材13など)と、前記建物構造材同士の間に設置される板状断熱材20と、を備える壁構造であって、
前記建物構造材は、前記建物構造材同士の間隔が、第一間隔Xと、前記第一間隔Xとは異なる第二間隔Yと、前記第一間隔X及び前記第二間隔Yとは異なる第三間隔Zと、のいずれかとなるように設置されており、
前記建物構造材同士の間隔が前記第一間隔Xである箇所には、前記板状断熱材20として、第一板状断熱材21が設置されており、
前記建物構造材同士の間隔が前記第二間隔Yである箇所には、前記板状断熱材20として、前記第一板状断熱材21とは幅寸法が異なる第二板状断熱材22が設置されており、
前記建物構造材同士の間隔が前記第三間隔Zである箇所には、前記板状断熱材20として、前記第一板状断熱材21及び前記第二板状断熱材22とは幅寸法が異なる第三板状断熱材23が設置されており、
前記建物構造材同士の間隔が前記第一間隔Xである箇所に筋交い14が設けられる筋交い部においては、
前記建物構造材同士の間隔が前記第一間隔Xである箇所が、厚さ方向に、第一空間S1と、第二空間S2と、に分割されていて、前記第一空間S1に前記筋交い14が配置されているとともに、前記第一空間S1と前記第二空間S2とに別々の前記板状断熱材20が配置されており、
前記筋交い14は、厚さ寸法が、前記建物構造材の厚さ寸法よりも短く、
前記第一空間S1に配置される板状断熱材20は、厚さ寸法が、前記筋交い14の厚さ寸法と同一であり、前記筋交い14に沿って傾斜する傾斜面20aを有しており、
前記第一空間S1のうち前記筋交い14を除く領域は、三角形状の領域と、台形状の領域と、長方形状の領域と、に分かれていて各領域に前記板状断熱材20が配置されており、
前記三角形状の領域及び前記台形状の領域には、長方形状の前記第一板状断熱材21から作製された、三角形状の板状断熱材20と、台形状の板状断熱材20と、が配置され、
前記台形状の板状断熱材20は、前記長方形状の第一板状断熱材21を、前記筋交い14に沿って斜めに切断することで作製されたものであり、
前記三角形状の板状断熱材20は、前記長方形状の第一板状断熱材21から前記台形状の板状断熱材20を除いた三角形状のパーツを、前記三角形状の領域の高さ寸法に合わせて当該パーツの直角を挟む二辺のうちの一方に沿って切断することで作製されたものであることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、建物構造材同士の間隔が第一間隔Xと第二間隔Yと第三間隔Zの三種類しかないので、用意しなければならない板状断熱材20の種類(幅寸法)も三種類でよい。したがって、施工現場で板状断熱材20の選択に時間を要することもないし、施工現場で板状断熱材20の幅寸法を調整するために切断作業を行う必要もないので、壁の施工性を向上させることができる。
また、壁の施工性を向上させることができるとともに、壁の断熱性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、壁の施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】建物の外壁及び内壁を示す平断面図である。
図2】外壁における窓が設けられる部分を示す斜視図である。
図3】外壁における筋交いが設けられる部分を示す正面図である。
図4図3におけるIV-IV線断面図である。
図5】筋交いが設けられる部分における板状断熱材の配置を示す図である。
図6】外壁における配線ボックス及びケーブルが設けられる部分を示す正面図である。
図7図6におけるVII-VII線断面図である。
図8】(a)は図6におけるVIII-VIII線断面図、(b)は配線ボックスが設けられる部分における板状断熱材の配置を示す図である。
図9】(a)は図6におけるIX-IX線断面図、(b)はケーブルが設けられる部分における板状断熱材の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0021】
《建物》
図1は、建物の外壁1及び内壁2の一例を示す平断面図である。図2は、外壁1における窓が設けられる部分の一例を示す斜視図である。図2では、便宜上、耐火面材3、耐力面材4、板状断熱材20などの図示を省略する。
建物の躯体は、本実施形態においては在来工法(木造軸組構法)によって構築されている。軸組としては、柱11、間柱12、梁(図示省略)などを備えている。
【0022】
また、躯体を構成する軸組(柱11、間柱12、梁など)は、屋内側が耐火面材3によって被覆されており、屋外側が耐力面材4によって被覆されている。
なお、本実施形態では、耐火面材3として、厚さ寸法が12.5mmの石膏ボードを用いるが、これに限られるものではない。
また、本実施形態では、耐力面材4として、厚さ寸法が9mmの構造用合板を用いるが、これに限られるものではない。
【0023】
建物の躯体は、図1図2に示すように、例えば、基準寸法であるモジュールMに基づいて組み立てられている。ここで、モジュールとは、建物のあらゆる部分を一定の大きさの倍数関係に整えようとするときの基準となる寸法のことをいい、例えば1モジュールを基準寸法とすると、1M(モジュール)の長さとして、800mm、900mm、910mm、1000mmなどが使用される。
本実施形態においては、1M=910mmに設定されている。そして、建物の躯体においては、柱11と間柱12の中心線(柱芯)間の距離と、間柱12同士の中心線(柱芯)間の距離と、が0.5M(本実施形態においては455mm)となっている。
【0024】
《建物構造材》
建物の外壁1は、鉛直方向に設置される建物構造材(躯体構造材)として、柱11と、間柱12と、受材13と、を少なくとも備えて構成されている。
柱11は、複数の箇所に設置されている。柱11は、通し柱でもよいし、管柱でもよい。柱11は、幅寸法aと、厚さ寸法と、が同一に設定されている。すなわち、柱11は、平面視(又は平断面視)において正方形状の建物構造材である。
なお、本実施形態では、a=105mmに設定されているが、これに限られるものではない。
【0025】
柱11同士の間には、間柱12が設置されている。間柱12は、合板継目受材であってもよい。間柱12は、幅寸法bが、厚さ寸法よりも短く設定されている。すなわち、間柱12は、平面視(又は平断面視)において長方形状の建物構造材である。間柱12の厚さ寸法は、柱11の厚さ寸法と同一に設定されている。
なお、本実施形態では、b=45mmに設定されているが、これに限られるものではない。
【0026】
図1に示すように、建物の入隅部分に設置される柱11、すなわち、互いに交差する外壁1同士の交点に配置される柱11や、互いに交差する外壁1と内壁2の交点に配置される柱11には、受材13が取り付けられている。この受材13は、例えば、耐火面材3を固定する(留め付ける)ために設けられた入隅用受材である。
【0027】
また、図2に示すように、外壁1における窓が設けられる部分を構成する柱11にも、受材13が取り付けられている。この受材13は、例えば、窓台5を固定する(留め付ける)ために設けられた窓台受材である。
具体的には、外壁1における窓が設けられる部分は、一対の柱11と、当該一対の柱11間に架け渡された窓台5と、当該一対の柱11間に架け渡されたまぐさ6と、窓台5の端部を下方から支持する一対の受材13と、窓台5の下面側及びまぐさ6の上面側に設けられた間柱12と、を少なくとも備えて構成されている。
【0028】
受材13は、幅寸法cが、厚さ寸法よりも短く設定されている。すなわち、受材13は、平面視(又は平断面視)において長方形状の建物構造材である。受材13の厚さ寸法は、柱11の厚さ寸法と同一に設定されている。
なお、本実施形態では、c=45mmに設定されているが、これに限られるものではない。また、間柱12の幅寸法bと、受材13の幅寸法cと、は同一であってもよいし、異なってもよい。
【0029】
このように、本実施形態においては、外壁1を構成する柱11として、一種類の柱、すなわち幅寸法が「a」である柱のみを用いる。
また、本実施形態においては、外壁1を構成する間柱12として、一種類の間柱、すなわち幅寸法が「b」である間柱のみを用いる。
また、本実施形態においては、外壁1を構成する受材のうち、柱11に取り付けられる受材13として、一種類の受材、すなわち幅寸法が「c」である受材のみを用いる。
【0030】
したがって、柱11と間柱12の間隔である第一間隔Xは、X=0.5М-0.5a-0.5bに統一されている。
また、間柱12同士の間隔である第二間隔Yは、Y=0.5М-0.5b-0.5bに統一されている。
また、受材13と間柱12の間隔である第三間隔Zは、Z=0.5М-0.5a-c-0.5bに統一されている。
【0031】
前述したように、本実施形態においては、1M=910mm、a=105mm、b=45mm、c=45mmに設定されている。
したがって、本実施形態においては、X=380mm(=455mm-52.5mm-22.5mm)、Y=410mm(=455mm-22.5mm-22.5mm)、Z=335mm(=455mm-52.5mm-45mm-22.5mm)である。
【0032】
《板状断熱材》
建物の外壁1は、図1に示すように、鉛直方向に設置される建物構造材(柱11、間柱12、受材13など)に加えて、当該建物構造材同士の間の空間に設置される板状断熱材20を備える。なお、本実施形態では、板状断熱材20として、発泡プラスチック断熱材(発泡系断熱材)を用いるが、これに限られるものではない。
本実施形態の外壁1は、板状断熱材20として、柱11と間柱12の間に設置される第一板状断熱材21と、間柱12同士の間に設置される第二板状断熱材22と、受材13と間柱12の間に設置される第三板状断熱材23と、を備えている。
【0033】
本実施形態においては、柱11と間柱12の間隔(第一間隔X)が一種類であるので、柱11と間柱12の間に設置される第一板状断熱材21の幅寸法も一種類でよい。すなわち、柱11と間柱12の間に設置する板状断熱材20として、複数種類の板状断熱材20を用意する必要がない。
第一板状断熱材21の幅寸法は、第一間隔Xと同一に設定されていてもよいし、第一間隔Xよりも若干短く設定されていてもよい。なお、本実施形態では、第一板状断熱材21の幅寸法が378mmに設定されているが、これに限られるものではない。
【0034】
また、本実施形態においては、間柱12同士の間隔(第二間隔Y)が一種類であるので、間柱12同士の間に設置される第二板状断熱材22の幅寸法も一種類でよい。すなわち、間柱12同士の間に設置する板状断熱材20として、複数種類の板状断熱材20を用意する必要がない。
第二板状断熱材22の幅寸法は、第二間隔Yと同一に設定されていてもよいし、第二間隔Yよりも若干短く設定されていてもよい。なお、本実施形態では、第二板状断熱材22の幅寸法が408mmに設定されているが、これに限られるものではない。
【0035】
また、本実施形態においては、受材13と間柱12の間隔(第三間隔Z)が一種類であるので、受材13と間柱12の間に設置される第三板状断熱材23の幅寸法も一種類でよい。すなわち、受材13と間柱12の間に設置する板状断熱材20として、複数種類の板状断熱材20を用意する必要がない。
第三板状断熱材23の幅寸法は、第三間隔Zと同一に設定されていてもよいし、第三間隔Zよりも若干短く設定されていてもよい。なお、本実施形態では、第三板状断熱材23の幅寸法が333mmに設定されているが、これに限られるものではない。
【0036】
〈筋交い部における板状断熱材〉
図3は、外壁1における筋交い14が設けられる部分の一例を示す正面図(屋内側から見た図)である。図4は、図3におけるIV-IV線断面図である。図5は、筋交い14が設けられる部分における板状断熱材20の配置例を示す図である。図3では、便宜上、耐火面材3などの図示を省略する。
鉛直方向に設置される建物構造材(柱11、間柱12、受材13など)同士の間の空間には、筋交い14が設けられる空間(図3図5参照)と、筋交い14が設けられない空間(図1図2、後述する図6図9参照)と、がある。
【0037】
図4に示すように、筋交い14が設けられる空間を、厚さ方向に、屋外側の空間(かつ、筋交い14の厚さ寸法と同一の厚さ寸法を有する空間)である第一空間S1と、屋内側の空間である第二空間S2と、に分割した場合、筋交い14は第一空間S1に配置される。すなわち、筋交い14は、屋外側に寄せた状態(耐力面材4に接した状態)で設置されている。
なお、本実施形態では、筋交い14の厚さ寸法が45mmに設定されているが、これに限られるものではない。
【0038】
第一空間S1に配置される板状断熱材20と、第二空間S2に配置される板状断熱材20と、は別体となっている。すなわち、筋交い14が設けられる空間には、一枚の板状断熱材20が第一空間S1と第二空間S2とに跨ることがないように、板状断熱材20が、二枚重ねた状態で設置されている。
【0039】
図5に示すように、第一空間S1には、鉛直方向に設置される建物構造材(柱11、間柱12、受材13など)と筋交い14との間の空間の形状に合わせて、三角形状の板状断熱材20や、台形状の板状断熱材20が配置される。すなわち、第一空間S1には、筋交い14に沿って傾斜する傾斜面20aを有する板状断熱材20が配置される。
一方、第二空間S2においては、筋交い14が位置していないので、筋交い14との干渉を考慮する必要がない。したがって、図3に示すように、第二空間S2には、鉛直方向に設置される建物構造材(柱11、間柱12、受材13など)同士の間の空間の形状に合わせて、長方形状の板状断熱材20が配置される。
【0040】
筋交い14が設けられる空間には、板状断熱材20が複数枚重ねた状態で設置されているのに対し、筋交い14が設けられない空間には、図1に示すように、筋交い14が設けられる空間に設置される板状断熱材20よりも厚い厚型の板状断熱材20が、重ねない状態で設置されている。
このように、本実施形態の外壁1は、板状断熱材20として、筋交い14が設けられる空間に設置される薄型の板状断熱材20(図4参照)と、筋交い14が設けられない空間に設置される厚型の板状断熱材20(図1、後述する図7図9参照)と、を備えている。
【0041】
薄型の板状断熱材20は、二枚重ねた状態で使用される。厚型の板状断熱材20は、重ねない状態で使用される。また、厚型の板状断熱材20における厚さ寸法は、薄型の板状断熱材20における厚さ寸法の二倍に設定されている。したがって、厚型の板状断熱材20における厚さ寸法と、薄型の板状断熱材20を二枚重ねた状態における厚さ寸法と、は同一である。
薄型の板状断熱材20は、厚さ寸法が、筋交い14の厚さ寸法(第一空間S1の厚さ寸法)と同一に設定されている。すなわち、本実施形態においては、薄型の板状断熱材20における厚さ寸法が、45mmに設定されている。
【0042】
厚型の板状断熱材20における厚さ寸法、及び薄型の板状断熱材20を二枚重ねた状態における厚さ寸法は、鉛直方向に設置される建物構造材(柱11、間柱12、受材13など)の厚さ寸法よりも短く設定されている。また、板状断熱材20は、図1図4に示すように、屋外側に寄せた状態(耐力面材4に接した状態)で設置されている。したがって、板状断熱材20と耐火面材3の間には、隙間30が形成されている。
【0043】
前述したように、本実施形態においては、柱11、間柱12及び受材13の厚さ寸法が105mmである。また、本実施形態においては、厚さ寸法が90mmの板状断熱材20(厚型の板状断熱材20)を重ねない状態で使用するか、あるいは、厚さ寸法が45mmの板状断熱材20(薄型の板状断熱材20)を二枚重ねた状態で使用する。したがって、本実施形態においては、隙間30の寸法(厚さ寸法)が15mmとされている。
【0044】
〈配線部における板状断熱材〉
図6は、外壁1における配線ボックス100及びケーブル110が設けられる部分の一例を示す正面図(屋内側から見た図)である。図7は、図6におけるVII-VII線断面図である。図8(a)は、図6におけるVIII-VIII線断面図であり、図8(b)は、配線ボックス100が設けられる部分における板状断熱材20の配置例を示す図である。図9(a)は、図6におけるIX-IX線断面図であり、図9(b)は、ケーブル110が設けられる部分における板状断熱材20の配置例を示す図である。図6図9では、便宜上、耐火面材3などの図示を省略する。
【0045】
鉛直方向に設置される建物構造材(柱11、間柱12、受材13など)同士の間の空間には、配線ボックス100やケーブル110などの電設資材が設けられる空間(図6図9参照)と、電設資材が設けられない空間(図1図5参照)と、がある。
配線ボックス100は、スイッチやコンセントなどの配線器具を収容するためのスイッチボックスである。
ケーブル110は、配線ボックス100に収容されている配線器具から延びる電線である。
【0046】
図6に示すように、電設資材が設けられる空間を、高さ方向に、下から順に、第三空間S3と、第四空間S4と、第五空間S5と、に分割した場合、配線ボックス100は、真ん中の第四空間S4に配置され、ケーブル110は、一番上の第五空間S5に配置される。
なお、電設資材が設けられる空間を、高さ方向に、上から順に、第三空間S3と、第四空間S4と、第五空間S5と、に分割することも可能であり、その場合、配線ボックス100は、真ん中の第四空間S4に配置され、ケーブル110は、一番下の第五空間S5に配置される。
すなわち、電設資材が設けられる空間は、電設資材が配置されない第三空間(一般部)S3と、配線ボックス100が配置される第四空間(スイッチボックス部)S4と、ケーブル110が配置される第五空間(電気配線部)S5と、にエリア分けできる。
【0047】
第三空間S3に配置される板状断熱材20と、第四空間S4に配置される板状断熱材20と、第五空間S5に配置される板状断熱材20と、は別体となっている。すなわち、電設資材が設けられる空間には、一枚の板状断熱材20が第三空間S3と第四空間S4とに跨ることがないように、かつ、一枚の板状断熱材20が第四空間S4と第五空間S5とに跨ることがないように、板状断熱材20が、三段積まれた状態で設置されている。
【0048】
図8(a)に示すように、第四空間S4には、第一欠き込み20bを有する厚型の板状断熱材20が配置される。第一欠き込み20bは、配線ボックス100(より詳細には、配線ボックス100に外付けされている気密カバー120)との干渉を回避するために設けられている。
第一欠き込み20bは、下端部(第三空間S3側の端部)と、上端部(第五空間S5側の端部)と、の両方が開放されている。したがって、図8(b)に示すように、第四空間S4に配置される板状断熱材20の第一欠き込み20b内に、ケーブル110が位置する状態で、当該板状断熱材20を上下にスライド移動させることが可能となっている。
【0049】
第四空間S4の高さ寸法は、配線ボックス100に外付けされている気密カバー120の高さ寸法と略同一に設定されている。すなわち、第四空間S4に配置される板状断熱材20の高さ寸法は、気密カバー120の高さ寸法と略同一に設定されている。
断熱材の欠損を最小限にする観点から、第一欠き込み20bの高さ寸法は短いほど好ましい。すなわち、第一欠き込み20bの高さ寸法は、気密カバー120の高さ寸法と略同一であることが好ましい。第四空間S4の高さ寸法を、気密カバー120の高さ寸法と略同一に設定することで、第一欠き込み20bの上下両端部が開放されていること、第一欠き込み20bの高さ寸法が気密カバー120の高さ寸法と略同一であること、の両方を満たすことが可能となる。
【0050】
図9(a)に示すように、第五空間S5には、第二欠き込み20cを有する厚型の板状断熱材20が配置される。第二欠き込み20cは、ケーブル110との干渉を回避するために設けられている。ケーブル(電線)110は、CD管などの電線管によって保護されている状態(電線管に挿入されている状態)でもよく、その場合には、第二欠き込み20cのサイズは、電線管との干渉を回避可能なサイズに設定される。第二欠き込み20cは、下端部(第四空間S4側の端部)と、上端部(天井側の端部)と、の両方が開放されている。
【0051】
一方、第三空間S3においては、電設資材が位置していないので、配線ボックス100やケーブル110などの電設資材との干渉を考慮する必要がない。したがって、図7に示すように、第三空間S3に配置されている板状断熱材20は、平面視(又は平断面視)において長方形状をなしている。すなわち、第三空間S3には、欠き込みなどが設けられていない厚型の板状断熱材20が配置されている。
【0052】
欠き込み20b,20cの平面視(又は平断面視)におけるサイズ(幅寸法、厚さ寸法)は、断熱材の欠損を最小限にする観点から、小さいほど好ましい。
なお、配線ボックス100は、通信用の配線器具を収容するためのものであってもよい。また、ケーブル110は、通信線であってもよい。
【0053】
《壁の施工方法》
次に、本実施形態における外壁1の施工方法の一例を説明する。ここでは、建物の一階における外壁1の施工方法について説明するが、二階以上における外壁1についても同様にして施工できる。
【0054】
〈搬送工程〉
まず、建物構造材(土台、梁、柱11、間柱12、受材13、筋交い14、窓台5、まぐさ6など)、板状断熱材20、耐火面材3、耐力面材4などを、工場から施工現場へ搬送する。
施工現場に搬入される柱11は、幅寸法及び厚さ寸法が「a(例えばa=105mm)」の木材である。
また、施工現場に搬入される間柱12は、幅寸法が「b(例えばb=45mm)」、厚さ寸法が「a」の木材である。
また、施工現場に搬入される受材13は、幅寸法が「c(例えばc=45mm)」、厚さ寸法が「a」の木材である。
【0055】
また、施工現場に搬入される板状断熱材20は、第一板状断熱材21と、第一板状断熱材21とは幅寸法が異なる第二板状断熱材22と、第一板状断熱材21及び第二板状断熱材22とは幅寸法が異なる第三板状断熱材23と、である。
施工現場には、厚型の第一板状断熱材21(例えば厚さ寸法が90mmの第一板状断熱材21)と、薄型の第一板状断熱材21(例えば厚さ寸法が45mmの第一板状断熱材21)と、が適宜搬入される。
また、施工現場には、厚型の第二板状断熱材22(例えば厚さ寸法が90mmの第二板状断熱材22)と、薄型の第二板状断熱材22(例えば厚さ寸法が45mmの第二板状断熱材22)と、が適宜搬入される。
また、施工現場には、厚型の第三板状断熱材23(例えば厚さ寸法が90mmの第三板状断熱材23)と、薄型の第三板状断熱材23(例えば厚さ寸法が45mmの第三板状断熱材23)と、が適宜搬入される。
【0056】
〈土台設置工程〉
次いで、基礎の上に、土台を設置する。
【0057】
〈構造材設置工程〉
次いで、鉛直方向に沿って設けられる建物構造材(柱11、間柱12、受材13など)を設置する。
具体的には、土台の上に、柱11を立設する。また、土台の上や、まぐさ6の上に、間柱12を立設する。また、建物の入隅部分に設置される柱11や、窓が設けられる部分を構成する柱11に、受材13を取り付ける。
【0058】
構造材設置工程では、鉛直方向に沿って設けられる建物構造材同士の間隔が、第一間隔Xと、第一間隔Xとは異なる第二間隔Yと、第一間隔X及び第二間隔Yとは異なる第三間隔Zと、のいずれかとなるように当該建物構造材を設置する。具体的には、柱11と間柱12の間隔が第一間隔X、間柱12同士の間隔が第二間隔Y、受材13(柱11に取り付けられている受材)と間柱12の間隔が第三間隔Zとなるように、柱11、間柱12、受材13などを設置する。
また、構造材設置工程では、その他の建物構造材(梁、筋交い14、窓台5、まぐさ6など)も設置する。
【0059】
〈耐力面材設置工程〉
次いで、耐力面材4を設置して、建物構造材の屋外側を耐力面材4で被覆する。
【0060】
〈配線工程〉
次いで、鉛直方向に設置されている建物構造材(柱11、間柱12、受材13など)同士の間の空間のうちの所定の空間に、配線ボックス100やケーブル110などの電設資材を設置する。
【0061】
〈断熱材設置工程〉
次いで、鉛直方向に設置されている建物構造材(柱11、間柱12、受材13など)同士の間の空間に、板状断熱材20を設置する。
具体的には、断熱材設置工程では、建物構造材同士の間隔が第一間隔Xである空間に、第一板状断熱材21を設置する。すなわち、第一板状断熱材21を、柱11と間柱12の間に配置して、接着剤などの固定手段によって耐力面材4などに固定する。
また、断熱材設置工程では、建物構造材同士の間隔が第二間隔Yである空間に、第二板状断熱材22を設置する。すなわち、第二板状断熱材22を、間柱12同士の間に配置して、接着剤などの固定手段によって耐力面材4などに固定する。
また、断熱材設置工程では、建物構造材同士の間隔が第三間隔Zである空間に、第三板状断熱材23を設置する。すなわち、第三板状断熱材23を、受材13と間柱12の間に配置して、接着剤などの固定手段によって耐力面材4などに固定する。
【0062】
断熱材設置工程は、設置空間の高さ寸法に合うように、板状断熱材20の高さ寸法を調整する高さ調整工程を含む。
また、断熱材設置工程は、設置空間に設けられている筋交い14との干渉を回避するために、板状断熱材20の形状を長方形状から三角形状や台形状へと加工する形状加工工程を含む。
また、断熱材設置工程は、設置空間に設けられている電設資材(配線ボックス100やケーブル110など)との干渉を回避するために、板状断熱材20に第一欠き込み20bや第二欠き込み20cなどを形成する欠込形成工程を含む。
【0063】
〈断熱材設置工程(窓まわり部)〉
窓まわり部における断熱材設置工程では、高さ調整工程が行われる。以下、窓まわり部における断熱材設置工程の一例を、図2を参照して説明する。
窓まわり部においては、窓台5を支持する受材13と間柱12の間と、窓台5を支持する間柱12同士の間と、まぐさ6を支持する柱11とまぐさ6の上に立設された間柱12の間と、まぐさ6の上に立設された間柱12同士の間と、に板状断熱材20が設置される。
【0064】
窓台5を支持する受材13と間柱12の間に設置する板状断熱材20については、厚型の第三板状断熱材23を用い、床から窓台5までの距離に合わせて切断(高さ寸法を調整)してから設置する。
また、窓台5を支持する間柱12同士の間に設置する板状断熱材20については、厚型の第二板状断熱材22を用い、床から窓台5までの距離に合わせて切断(高さ寸法を調整)してから設置する。
【0065】
まぐさ6を支持する柱11とまぐさ6の上に立設された間柱12の間に設置する板状断熱材20については、厚型の第一板状断熱材21を用い、まぐさ6から天井までの距離に合わせて切断(高さ寸法を調整)してから設置する。
また、まぐさ6の上に立設された間柱12同士の間に設置する板状断熱材20については、厚型の第二板状断熱材22を用い、まぐさ6から天井までの距離に合わせて切断(高さ寸法を調整)してから設置する。
【0066】
〈断熱材設置工程(筋交い部)〉
筋交い部における断熱材設置工程では、高さ調整工程と形状加工工程が行われる。以下、筋交い部における断熱材設置工程の一例を、図3図5を参照して説明する。
筋交い部における断熱材設置工程は、第一空間S1に板状断熱材20を配置する第一ステップと、第二空間S2に板状断熱材20を配置する第二ステップと、の二つのステップに分けることができ、本実施形態では、第一ステップを先に行う。第一ステップでは、高さ調整工程及び形状加工工程の両方が行われる。第二ステップでは、高さ調整工程及び形状加工工程のうち、高さ調整工程のみが行われる。
【0067】
第一ステップでは、第一空間S1のうち建物構造材(柱11、間柱12、受材13、筋交い14など)を除く領域を、図5に示すように、三角形状の領域[A][D]と、台形状の領域[B][E]と、長方形状の領域[C][F]と、に分けて各領域に板状断熱材20を配置する。
【0068】
三角形状の領域[A]及び台形状の領域[B]に配置する板状断熱材20については、薄型の第一板状断熱材21を用い、領域[A]に合う三角形状の板状断熱材20と、領域[B]に合う台形状の板状断熱材20と、を作製してから設置する。
領域[B]に合う台形状の板状断熱材20は、筋交い14の一端部14a(すなわち領域[B]の鋭角頂点部)に、第一板状断熱材21の端部を当て、筋交い14の斜線の位置をけがいた後、切断(形状を加工)することで作製できる。
また、領域[A]に合う三角形状の板状断熱材20は、残りのパーツ(三角形状のパーツ)を、領域[A]の高さ寸法に合わせて切断(高さ寸法を調整)することで作製できる。
【0069】
同様に、三角形状の領域[D]及び台形状の領域[E]に配置する板状断熱材20については、薄型の第一板状断熱材21を用い、領域[D]に合う三角形状の板状断熱材20と、領域[E]に合う台形状の板状断熱材20と、を作製してから設置する。
領域[E]に合う台形状の板状断熱材20は、筋交い14の他端部14b(すなわち領域[E]の鋭角頂点部)に、第一板状断熱材21の端部を当て、筋交い14の斜線の位置をけがいた後、切断(形状を加工)することで作製できる。
また、領域[D]に合う三角形状の板状断熱材20は、残りのパーツ(三角形状のパーツ)を、領域[D]の高さ寸法に合わせて切断(高さ寸法を調整)することで作製できる。
【0070】
長方形状の領域[C]に配置する板状断熱材20については、薄型の第一板状断熱材21を用い、領域[C]の高さ寸法に合わせて切断(高さ寸法を調整)してから設置する。
また、長方形状の領域[F]に配置する板状断熱材20については、薄型の第一板状断熱材21を用い、領域[F]の高さ寸法に合わせて切断(高さ寸法を調整)してから設置する。
【0071】
第二ステップでは、薄型の第一板状断熱材21を、床から天井までの距離に合わせて切断(高さ寸法を調整)してから設置する。
設置空間の高さ寸法(ここでは床から天井までの距離)が、板状断熱材20の高さ寸法よりも長い場合には、図3に示すように、複数枚の板状断熱材20を上下に並べて設置する。その際、当該複数枚の板状断熱材20の高さ寸法の合計が、設置空間の高さ寸法に合うように、高さ寸法を調整(当該複数枚の板状断熱材20のうちのいずれかを切断)する。
本実施形態では、施工性を向上(施工負荷を軽減)させる観点から、外壁1に筋交い部が極力発生しないように構造を検討する。
【0072】
〈断熱材設置工程(配線部)〉
配線部における断熱材設置工程では、高さ調整工程と欠込形成工程が行われる。以下、配線部における断熱材設置工程の一例を、図6図9を参照して説明する。
配線部における断熱材設置工程は、第三空間S3に板状断熱材20を配置する第三ステップと、第四空間S4に板状断熱材20を配置する第四ステップと、第五空間S5に板状断熱材20を配置する第五ステップと、の三つのステップに分けることができ、本実施形態では、第三ステップを最初に行い、第五ステップを最後に行う。第三ステップでは、高さ調整工程及び欠込形成工程のうち、高さ調整工程のみが行われる。第四ステップでは、高さ調整工程及び欠込形成工程の両方が行われる。第五ステップでは、高さ調整工程及び欠込形成工程の両方が行われる。
【0073】
第三ステップでは、厚型の第一板状断熱材21を、第三空間S3の高さ寸法に合わせて切断(高さ寸法を調整)してから設置する。
第四ステップでは、厚型の第一板状断熱材21を、第四空間S4の高さ寸法に合わせて切断(高さ寸法を調整)した後に、配線ボックス100(具体的には、配線ボックス100に外付けされている気密カバー120)と干渉する範囲に第一欠き込み20bを形成する。そして、図8(b)に示すように、第一欠き込み20b内にケーブル110が位置する状態で、第五空間S5から第四空間S4へとスライドさせて設置する。
【0074】
第五ステップでは、厚型の第一板状断熱材21を、第五空間S5の高さ寸法に合わせて切断(高さ寸法を調整)した後に、ケーブル110と干渉する範囲に第二欠き込み20cを形成する。さらに、当該厚型の第一板状断熱材21を、幅方向中央付近で高さ方向に沿って切断して、第二欠き込み20cがある第一パーツ211と、第二欠き込み20cがない第二パーツ212と、に分割する。そして、図9(b)の上図に示すように、第一パーツ211を、第二欠き込み20cにケーブル110が嵌る位置へと(すなわち柱11に当接する位置へと)スライドさせて設置し、その後、図9(b)の下図に示すように、第二パーツ212を、第一パーツ211と間柱12の間に設置する。
【0075】
〈断熱材設置工程(通常部)〉
窓まわり部、筋交い部、配線部のいずれでもない通常部における断熱材設置工程では、高さ調整工程が行われる。具体的には、厚型の板状断熱材20を、設置空間の高さ寸法に合わせて切断(高さ寸法を調整)してから設置する。
設置空間の高さ寸法が、板状断熱材20の高さ寸法よりも長い場合には、複数枚の板状断熱材20を上下に並べて設置する。その際、当該複数枚の板状断熱材20の高さ寸法の合計が、設置空間の高さ寸法に合うように、高さ寸法を調整(当該複数枚の板状断熱材20のうちのいずれかを切断)する。
【0076】
〈耐火面材設置工程〉
次いで、耐火面材3を設置して、建物構造材の屋内側を耐火面材3で被覆する。
外壁1の施工は、以上のような工程(手順)で行われる。
外壁1を施工する工程は、順番が変更可能なものであれば、必要に応じて適宜前後させてもよい。
【0077】
《効果》
本実施形態によれば、以下のような優れた効果を奏する。
本実施形態の施工方法は、鉛直方向に設置される建物構造材(柱11、間柱12、受材13など)と、建物構造材同士の間に設置される板状断熱材20と、を備える壁(外壁1)の施工方法であって、建物構造材を設置する構造材設置工程と、板状断熱材20を設置する断熱材設置工程と、を有している。そして、構造材設置工程では、建物構造材同士の間隔が、第一間隔Xと、第一間隔Xとは異なる第二間隔Yと、第一間隔X及び第二間隔Yとは異なる第三間隔Zと、のいずれかとなるように建物構造材を設置する。また、断熱材設置工程では、建物構造材同士の間隔が第一間隔Xである箇所に、板状断熱材20として、第一板状断熱材21を設置し、建物構造材同士の間隔が第二間隔Yである箇所に、板状断熱材20として、第一板状断熱材21とは幅寸法が異なる第二板状断熱材22を設置し、建物構造材同士の間隔が第三間隔Zである箇所に、板状断熱材20として、第一板状断熱材21及び第二板状断熱材22とは幅寸法が異なる第三板状断熱材23を設置する。
【0078】
すなわち、建物構造材同士の間隔が第一間隔Xと第二間隔Yと第三間隔Zの三種類しかないので、用意しなければならない板状断熱材20の種類(幅寸法)も三種類でよい。したがって、施工現場で板状断熱材20の選択に時間を要することもないし、施工現場で板状断熱材20の幅寸法を調整するために切断作業を行う必要もないので、壁の施工性を向上させることができる。
また、板状断熱材を施工現場で所望の幅寸法に切断する場合、端材が多く出るので、施工現場での廃棄量が増える、廃棄コストがかかるというデメリットがある。これに対し、本実施形態では、施工現場で切断作業を行わないので、端材が出ない。よって、施工現場で切断作業を行う場合に比べて、施工現場での廃棄量や廃棄コストを低減できる。
【0079】
本実施形態では、施工性を向上(施工負荷を軽減)させる観点から、鉛直方向に設置される建物構造材(柱11、間柱12、受材13など)同士の間隔として、間隔X~Z(第一間隔X、第二間隔Y、第三間隔Z)以外の間隔が極力発生しないように構造を検討する。そして、0.5M間隔で柱11が連続する場合など、間隔X~Z以外の間隔が発生する場合にのみ、施工現場で板状断熱材20の幅寸法を調整するために切断作業を行う。例えば、本実施形態においては、0.5M間隔で柱11が連続する場合、柱11同士の間隔は350mm(=455mm-52.5mm-52.5mm)となる。よって、第一板状断熱材21(幅寸法が378mmの板状断熱材20)を、柱11同士の間隔に合わせて切断(幅寸法を調整)してから、当該柱11同士の間に設置する。
【0080】
また、本実施形態の施工方法においては、建物構造材(柱11、間柱12、受材13など)同士の間の空間を、厚さ方向に、第一空間S1と、第二空間S2と、に分割した場合に、構造材設置工程では、第一空間S1に、筋交い14を配置し、断熱材設置工程では、第一空間S1と、第二空間S2と、に別々の板状断熱材20を配置する。そして、筋交い14は、厚さ寸法が、建物構造材の厚さ寸法よりも短い。また、第一空間S1に配置する板状断熱材20は、厚さ寸法が、筋交い14の厚さ寸法と同一であり、筋交い14に沿って傾斜する傾斜面20aを有する。
【0081】
したがって、筋交い14が配置される空間、すなわち筋交い14の厚さ寸法と略同一の厚さ寸法を有する空間である第一空間S1を、筋交い14に沿って傾斜する傾斜面20aを有する板状断熱材20によって閉塞できるので、壁の断熱性を向上させることができる。
また、第一空間S1に配置する板状断熱材20を、斜めに切断(筋交い14に沿って傾斜する傾斜面20aが形成されるように切断)するだけでよいので、壁の施工性を向上させることができる。
【0082】
第一空間S1と第二空間S2とに別々の板状断熱材20を設置しないこと、すなわち一枚の板状断熱材20を第一空間S1と第二空間S2とに跨って設置することも可能である。しかしながら、その場合、筋交い14との干渉を回避するために、当該一枚の板状断熱材20を斜めに切断(筋交い14に沿って傾斜する傾斜面20aが形成されるように切断)するか、あるいは、当該一枚の板状断熱材20に筋交い14との干渉を回避するための溝を形成する必要がある。
当該一枚の板状断熱材20を斜めに切断する場合、断熱材によって筋交い14を被覆できない。したがって、断熱材によって筋交い14を被覆するためには、別の板状断熱材20を筋交い14と同一形状に加工して、傾斜面20a同士の間に嵌める必要があり、施工性が低下する。
また、当該一枚の板状断熱材20に溝を形成する場合、筋交い14と同一形状の溝を形成する必要があるので、施工性が低下する。
【0083】
これに対し、本実施形態では、第一空間S1と第二空間S2とに別々の板状断熱材20を設置するので、第一空間S1に配置する板状断熱材20によって、鉛直方向に設置される建物構造材と筋交い14との間の空間を閉塞できるとともに、第二空間S2に配置する板状断熱材20によって、鉛直方向に設置される建物構造材同士の間の空間を閉塞できる。すなわち、第二空間S2に配置する板状断熱材20によって、筋交い14を被覆できるので、断熱材によって筋交い14を被覆しない場合に比べて、壁の断熱性を向上させることができる。
また、本実施形態では、第一空間S1に配置する板状断熱材20と、第二空間S2に配置する板状断熱材20と、が別体であるので、施工現場で、第一空間S1に配置する板状断熱材20を斜めに切断(傾斜面20aが形成されるように切断)するだけで、筋交い14との干渉を回避できる。したがって、施工現場で板状断熱材20に筋交い14と同一形状の溝を形成する場合や、施工現場で別の板状断熱材20を筋交い14と同一形状に加工する場合に比べて、作業が容易であるので、壁の施工性を向上させることができる。
【0084】
また、本実施形態の施工方法においては、建物構造材(柱11、間柱12、受材13など)同士の間に、配線器具を収容するための配線ボックス100と、配線器具から延びるケーブル110と、を設置する配線工程を有しており、建物構造材同士の間の空間を、高さ方向に、第三空間S3と、第四空間S4と、第五空間S5と、に分割した場合に、配線工程では、第三空間S3と第五空間S5との間に位置する第四空間S4に、配線ボックス100を配置するとともに、第五空間S5に、ケーブル110を配置し、断熱材設置工程では、第三空間S3と、第四空間S4と、第五空間S5と、に別々の板状断熱材20を配置する。そして、第四空間S4に配置する板状断熱材20は、配線ボックス100と干渉する範囲に第一欠き込み20bを有する。また、第五空間S5に配置する板状断熱材20は、ケーブル110と干渉する範囲に第二欠き込み20cを有する。
【0085】
したがって、配線ボックス100が配置される空間、すなわち配線ボックス100(気密カバー120)の高さ寸法と略同一の高さ寸法を有する空間である第四空間S4を、配線ボックス100(気密カバー120)のサイズと略同一のサイズ(幅寸法、厚さ寸法)を有する第一欠き込み20bが設けられた板状断熱材20によって閉塞できるとともに、ケーブル110が配置される空間、すなわちケーブル110の高さ寸法(配線ボックス100(気密カバー120)から天井までの距離)と略同一の高さ寸法を有する空間である第五空間S5を、ケーブル110(あるいはケーブル110を保護する電線管)のサイズと略同一のサイズ(幅寸法、厚さ寸法)を有する第二欠き込み20cが設けられた板状断熱材20によって閉塞できるので、壁の断熱性を向上させることができる。
また、第四空間S4に配置する板状断熱材20に、第一欠き込み20bとして、配線ボックス100(気密カバー120)のサイズと略同一のサイズを有する欠き込みを形成するとともに、第五空間S5に配置する板状断熱材20に、第二欠き込み20cとして、ケーブル110(あるいはケーブル110を保護する電線管)のサイズと略同一のサイズを有する欠き込みを形成するだけでよいので、壁の施工性を向上させることができる。
【0086】
第三空間S3と第四空間S4とに別々の板状断熱材20を設置しないこと、すなわち一枚の板状断熱材20を第三空間S3と第四空間S4とに跨って設置することも可能である。しかしながら、その場合、当該一枚の板状断熱材20のうち、第四空間S4に位置する部分だけに第一欠き込み20bを設けるか、あるいは、第四空間S4に位置する部分だけでなく、第三空間S3に位置する部分にも第一欠き込み20bを設ける必要がある。
第四空間S4に位置する部分だけに第一欠き込み20bを設けて、第三空間S3に位置する部分に欠き込みを設けない場合、施工現場で、第一欠き込み20bとして、上下両端部のうちの一端部(第三空間S3側の端部)が閉塞された欠き込みを形成する必要があるので、施工性が低下する。
また、第四空間S4に位置する部分だけでなく、第三空間S3に位置する部分にも第一欠き込み20bを設ける場合、第三空間S3に位置する部分に欠き込みを設けない場合に比べて、断熱材の欠損が大きいので、断熱性が低下する。
【0087】
これに対し、本実施形態では、第三空間S3と第四空間S4とに別々の板状断熱材20を設置し、第四空間S4に配置する板状断熱材20だけに第一欠き込み20bを設けて、第三空間S3に配置する板状断熱材20に欠き込みを設けない。
したがって、第四空間S4に位置する部分だけでなく、第三空間S3に位置する部分にも欠き込みを設ける場合に比べて、断熱材の欠損を小さいので、壁の断熱性を向上させることができる。
また、第三空間S3に配置する板状断熱材20と、第四空間S4に配置する板状断熱材20と、が別体であるので、第一欠き込み20bとして、上下両端部が開放された欠き込みを形成することができる。したがって、上下両端部のうちの一端部が閉塞された欠き込みを形成する場合に比べて、作業が容易であるので、壁の施工性を向上させることができる。
【0088】
また、第四空間S4と第五空間S5とに別々の板状断熱材20を設置しないこと、すなわち一枚の板状断熱材20を第四空間S4と第五空間S5とに跨って設置することも可能である。しかしながら、その場合、当該一枚の板状断熱材20のうち、第四空間S4に位置する部分だけでなく、第五空間S5に位置する部分にも第一欠き込み20bを設けるか、あるいは、第四空間S4に位置する部分に第一欠き込み20bを設けて、第五空間S5に位置する部分に第二欠き込み20cを設ける必要がある。
第四空間S4に位置する部分だけでなく、第五空間S5に位置する部分にも第一欠き込み20bを設ける場合、第五空間S5に位置する部分に第二欠き込み20cを設ける場合に比べて、断熱材の欠損が大きいので、断熱性が低下する。
また、第四空間S4に位置する部分に第一欠き込み20bを設けて、第五空間S5に位置する部分に第二欠き込み20cを設ける場合、すなわち第一欠き込み20bと第二欠き込み20cを一体的に形成する場合、断熱材の欠損を最小限にできるが、施工現場で、サイズ(幅寸法、厚さ寸法)が異なる二つの直方体を上下に組み合わせた形状の欠き込みを形成する必要があるので、施工性が低下する。
【0089】
これに対し、本実施形態では、第四空間S4と第五空間S5とに別々の板状断熱材20を設置し、第四空間S4に配置する板状断熱材20に第一欠き込み20bを設けて、第五空間S5に配置する板状断熱材20に第二欠き込み20cを設ける。
したがって、第四空間S4に位置する部分だけでなく、第五空間S5に位置する部分にも第一欠き込み20bを設ける場合に比べて、断熱材の欠損を小さいので、壁の断熱性を向上させることができる。
また、第四空間S4に配置する板状断熱材20と、第五空間S5に配置する板状断熱材20と、が別体であるので、第一欠き込み20bと、第二欠き込み20cと、を別々に形成することができる。したがって、第一欠き込み20bと第二欠き込み20cを一体的に形成する場合に比べて、作業が容易であるので、壁の施工性を向上させることができる。
【0090】
また、本実施形態の施工方法においては、耐火面材3を設置する耐火面材設置工程を有している。そして、板状断熱材20は、耐火面材3との間に隙間30が設けられた状態で、当該耐火面材3によって被覆されている。
すなわち、板状断熱材20と、当該板状断熱材20を被覆する耐火面材3と、の間に隙間30が設けられている。したがって、隙間30を電線や通信線の配線などに使用できる。
【0091】
板状断熱材20と耐火面材3の間に隙間30を設けないこと、すなわち、厚型の板状断熱材20における厚さ寸法、及び薄型の板状断熱材20を二枚重ねた状態における厚さ寸法を、鉛直方向に設置される建物構造材(柱11、間柱12、受材13など)の厚さ寸法と同一に設定することも可能である。しかしながら、厚さ寸法が90mmの板状断熱材20によって十分な断熱性を発揮できるので、本実施形態では、厚さ寸法が90mmの板状断熱材20(厚型の板状断熱材20)を重ねない状態で使用するか、あるいは、厚さ寸法が45mmの板状断熱材20(薄型の板状断熱材20)を二枚重ねた状態で使用することとしている。
【0092】
また、本実施形態の壁構造は、鉛直方向に設置される建物構造材(柱11、間柱12、受材13など)と、建物構造材同士の間に設置される板状断熱材20と、を備える壁構造であって、建物構造材は、建物構造材同士の間隔が、第一間隔Xと、第一間隔Xとは異なる第二間隔Yと、第一間隔X及び第二間隔Yとは異なる第三間隔Zと、のいずれかとなるように設置されており、建物構造材同士の間隔が第一間隔Xである箇所には、板状断熱材20として、第一板状断熱材21が設置されており、建物構造材同士の間隔が第二間隔Yである箇所には、板状断熱材20として、第一板状断熱材21とは幅寸法が異なる第二板状断熱材22が設置されており、建物構造材同士の間隔が第三間隔Zである箇所には、板状断熱材20として、第一板状断熱材21及び第二板状断熱材22とは幅寸法が異なる第三板状断熱材23が設置されている。
【0093】
すなわち、建物構造材同士の間隔が第一間隔Xと第二間隔Yと第三間隔Zの三種類しかないので、用意しなければならない板状断熱材20の種類(幅寸法)も三種類でよい。したがって、施工現場で板状断熱材20の選択に時間を要することもないし、施工現場で板状断熱材20の幅寸法を調整するために切断作業を行う必要もないので、壁の施工性を向上させることができる。
【0094】
また、近年、二酸化炭素の排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの推進による脱炭素社会の実現や、SDGs(Sustainable Development Goals)の目標達成が求められており、建築業界においても、建物を二酸化炭素排出量の少ない木造とする取り組みが進められている。本実施形態の建物は、木製の建物構造材によって構成されているので、カーボンニュートラルの推進による脱炭素社会の実現や、SDGsの目標達成に貢献できる。
【符号の説明】
【0095】
1 外壁(壁)
3 耐火面材
11 柱(建物構造材)
12 間柱(建物構造材)
13 受材(建物構造材)
14 筋交い
20 板状断熱材
20a 傾斜面
20b 第一欠き込み
20c 第二欠き込み
21 第一板状断熱材
22 第二板状断熱材
23 第三板状断熱材
30 隙間
100 配線ボックス
110 ケーブル
S1 第一空間
S2 第二空間
S3 第三空間
S4 第四空間
S5 第五空間
X 第一間隔
Y 第二間隔
Z 第三間隔
【要約】
【課題】壁の施工性を向上させる。
【解決手段】鉛直方向に設置される建物構造材(柱11、間柱12、受材13など)と、建物構造材同士の間に設置される板状断熱材20と、を備える壁(外壁1)の施工方法であって、建物構造材を設置する構造材設置工程と、板状断熱材20を設置する断熱材設置工程と、を有する。構造材設置工程では、建物構造材同士の間隔が、第一間隔Xと、第一間隔Xとは異なる第二間隔Yと、第一間隔X及び第二間隔Yとは異なる第三間隔Zと、のいずれかとなるように建物構造材を設置する。断熱材設置工程では、建物構造材同士の間隔が第一間隔Xである箇所に、板状断熱材20として、第一板状断熱材21を設置し、建物構造材同士の間隔が第二間隔Yである箇所に、板状断熱材20として、第二板状断熱材22を設置し、建物構造材同士の間隔が第三間隔Zである箇所に、第三板状断熱材23を設置する。
【選択図】図1
図1
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図5
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図7
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図9