(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】情報処理装置、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
H04W 16/04 20090101AFI20240126BHJP
H04W 72/0457 20230101ALI20240126BHJP
H04W 24/02 20090101ALI20240126BHJP
H04W 24/08 20090101ALI20240126BHJP
【FI】
H04W16/04
H04W72/0457
H04W24/02
H04W24/08
(21)【出願番号】P 2023184396
(22)【出願日】2023-10-27
【審査請求日】2023-10-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397036309
【氏名又は名称】株式会社インターネットイニシアティブ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】柿島 純
【審査官】桑原 聡一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/162085(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/064858(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
G10L 15/14
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信ノードの各通信ノードとデータネットワークとの間の通信の頻度を計測し、前記各通信ノードについて、前記計測された頻度を表す2値時系列からなる観測データを生成する頻度計測部と、
機械学習により推定された最尤パラメータを持つ混合確率分布に基づいて、前記観測データを複数のクラスタのうち1つのクラスタに分類するクラスタリング部と、
分類された前記クラスタに対応付けられたポリシールールを、前記各通信ノードに割り当てるポリシー割り当て部と、
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記混合確率分布は、混合ベルヌーイ分布である、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記機械学習は、EM(Expectation Maximization)アルゴリズムによる最尤推定である、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記クラスタと、前記ポリシールールとの対応関係を定めるルックアップテーブルを格納するデータ格納部さらに備え、
前記ポリシー割り当て部は、前記ルックアップテーブルを参照して、前記各通信ノードに割り当てるポリシールールを決定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記ポリシールールは、前記各通信ノードに割り当てる通信速度を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
2値時系列からなる訓練データセットを用いて、混合確率分布に基づく機械学習を実行して前記混合確率分布の最尤パラメータを推定する機械学習部をさらに備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記訓練データセットの各訓練データには、予めポリシールールが対応付けされている、請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載の情報処理装置と、
割り当てられた前記ポリシールールを、前記各通信ノードに適用するユーザプレーン機能ノードをさらに備える、システム。
【請求項9】
プロセッサにより実行される方法であって、
複数の通信ノードの各通信ノードとデータネットワークとの間の通信の頻度を計測し、前記各通信ノードについて、前記計測された頻度を表す2値時系列からなる観測データを生成するステップと、
機械学習により推定された最尤パラメータを持つ混合確率分布に基づいて、前記観測データを複数のクラスタのうち1つのクラスタに分類するステップと、
分類された前記クラスタに対応付けられたポリシールールを、前記各通信ノードに割り当てるステップと、
を備える、方法。
【請求項10】
前記クラスタと、ポリシーとの対応関係を定めるルックアップテーブルを参照して、前記各通信ノードに割り当てるポリシールールを決定するステップをさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
2値時系列からなる訓練データセットを用いて、混合確率分布に基づく機械学習を実行して前記混合確率分布の最尤パラメータを推定するステップをさらに備える、請求項9または10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、システムおよび方法に関する。より詳細には、本開示は、端末装置に通信リソースを割り当てるための情報処理装置、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固定通信システムや移動通信システム(たとえば第5世代移動通信システム)などの通信システムにおける通信品質の向上を図るために機械学習を用いた通信技術が提案されている。この種の通信技術は、たとえば特許文献1(特開2023-123991号公報)に開示されている。特許文献1には、移動通信システムにおいて無線通信の周波数帯域や時間などのリソースを割り当てるために、ニューラルネットワークなどの機械学習モデルを用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多数の通信ノードとの通信状況に応じて通信資源(通信リソース)を動的に割り当てる通信システムでは、各通信ノードに対して通信資源を効率的に割り当てることが好ましい。特に、不特定多数の通信ノード(たとえば、第5世代移動通信システムを利用する移動端末)との通信頻度が多大なものとなる可能性があるときには、各通信ノードに対する効率的な通信資源の割り当てが重要となる。
【0005】
しかしながら、通信システムが共通の通信資源を用いて通信を行う場合は、低い頻度で通信を行う通信ノードと、高い頻度で通信を行う通信ノードとに同じ量の通信資源を同時に割り当てることは、効率的ではなく、通信資源の有効活用の観点から無駄が多いという課題がある。
【0006】
上記に鑑みて本開示の目的は、複数の通信ノードとそれぞれ異なる頻度で通信する場合でも、通信資源を効率的に割り当てることを可能にする情報処理装置、システムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態による情報処理装置は、複数の通信ノードの各通信ノードとデータネットワークとの間の通信の頻度を計測し、前記各通信ノードについて、前記計測された頻度を表す2値時系列からなる観測データを生成する頻度計測部と、
機械学習により推定された最尤パラメータを持つ混合確率分布に基づいて、前記観測データを複数のクラスタのうち1つのクラスタに分類するクラスタリング部と、
分類された前記クラスタに対応付けられたポリシールールを、前記各通信ノードに割り当てるポリシー割り当て部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本開示の別の実施形態による方法は、プロセッサにより実行される方法であって、
複数の通信ノードの各通信ノードとデータネットワークとの間の通信の頻度を計測し、前記各通信ノードについて、前記計測された頻度を表す2値時系列からなる観測データを生成するステップと、
機械学習により推定された最尤パラメータを持つ混合確率分布に基づいて、前記観測データを複数のクラスタのうち1つのクラスタに分類するステップと、
分類された前記クラスタに対応付けられたポリシールールを、前記各通信ノードに割り当てるステップと、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態による、通信ネットワークシステムの構成例を概略的に示すブロック図である。
【
図2】本開示の一実施形態による、通信システムの構成要素を実現するハードウェア構成例の概略構成図である。
【
図3】本開示の一実施形態による、通信リソース割り当て処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】本開示の一実施形態による、ユーザ通信の頻度を説明するための概略図である。
【
図5】本開示の一実施形態による、パケット通信信号の計測された頻度を表す観測データを例示する図である。
【
図6】本開示の一実施形態による、パラメータ生成処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】本開示の一実施形態による、ポリシーテーブルの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。本開示の一実施形態は、以下のような構成を備える。
【0011】
〔構成1〕 上記目的を達成するための情報処理装置の特徴構成は、複数の通信ノードの各通信ノードとデータネットワークとの間の通信の頻度を計測し、前記各通信ノードについて、前記計測された頻度を表す2値時系列からなる観測データを生成する頻度計測部(42)と、機械学習により推定された最尤パラメータを持つ混合確率分布に基づいて、前記観測データを複数のクラスタのうち1つのクラスタに分類するクラスタリング部(43)と、分類された前記クラスタに対応付けられたポリシールールを、前記各通信ノードに割り当てるポリシー割り当て部(44)と、を備える、点にある。
【0012】
〔構成2〕 本開示に係る情報処理装置の別の特徴構成は、前記混合確率分布は、混合ベルヌーイ分布である、点にある。
【0013】
〔構成3〕 本開示に係る情報処理装置の別の特徴構成は、前記機械学習は、EM(ExpectationMaximization)アルゴリズムによる最尤推定である、点にある。
【0014】
〔構成4〕 本開示に係る情報処理装置の別の特徴構成は、前記クラスタと、前記ポリシールールとの対応関係を定めるルックアップテーブル(53)を格納するデータ格納部(50)さらに備え、前記ポリシー割り当て部は、前記ルックアップテーブルを参照して、前記各通信ノードに割り当てるポリシールールを決定する、点にある。
【0015】
〔構成5〕 本開示に係る情報処理装置の別の特徴構成は、前記ポリシールールは、前記各通信ノードに割り当てる通信速度を含む、点にある。
【0016】
〔構成6〕 本開示に係る情報処理装置の別の特徴構成は、2値時系列からなる訓練データセットを用いて、混合確率分布に基づく機械学習を実行して前記混合確率分布の最尤パラメータを推定する機械学習部(48)をさらに備える、点にある。
【0017】
〔構成7〕 本開示に係る情報処理装置の別の特徴構成は、前記訓練データセットの各訓練データには、予めポリシールールが対応付けされている、点にある。
【0018】
〔構成8〕 本開示に係るシステムの別の特徴構成は、請求項1に記載の情報処理装置と、割り当てられた前記ポリシールールを、前記各通信ノードに適用するユーザプレーン機能ノードとをさらに備える、点にある。
【0019】
〔構成9〕 上記目的を達成するための方法の特徴構成は、プロセッサにより実行される方法であって、複数の通信ノードの各通信ノードとデータネットワークとの間の通信の頻度を計測し、前記各通信ノードについて、前記計測された頻度を表す2値時系列からなる観測データを生成するステップ(S304)と、機械学習により推定された最尤パラメータを持つ混合確率分布に基づいて、前記観測データを複数のクラスタのうち1つのクラスタに分類するステップ(S306)と、分類された前記クラスタに対応付けられたポリシールールを、前記各通信ノードに割り当てるステップ(S308)と、を備える、点にある。
【0020】
〔構成10〕 本開示に係る方法の別の特徴構成は、前記クラスタと、ポリシーとの対応関係を定めるルックアップテーブル(53)を参照して、前記各通信ノードに割り当てるポリシールールを決定するステップをさらに備える、点にある。
【0021】
〔構成11〕 本開示に係る方法の別の特徴構成は、2値時系列からなる訓練データセットを用いて、混合確率分布に基づく機械学習を実行して前記混合確率分布の最尤パラメータを推定するステップをさらに備える、点にある。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明はあくまでも一例を示すものであって、本願発明の技術的範囲を以下の実施形態に限定する趣旨ではない。図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号が付され、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。しかし、本開示の実施形態は、必ずしもこのような態様に限定されない。本開示の実施形態が、特許請求の範囲において規定される範囲に含まれる様々な態様を取り得ることは、当業者にとって明らかであろう。
【0023】
図1は、本開示に係る一実施形態の通信ネットワークシステム100の構成例を概略的に示すブロック図である。
図1に示されるように、通信ネットワークシステム100は、通信ノードである端末装置(UE:User Equipment)11
1~11
Nと無線通信可能な基地局20
1~20
Nと、これら基地局20
1~20
Nに接続された通信システム21とを備えて構成されている。Nは、2以上の整数である。UE11
1~11
Nは、通信ネットワークシステム100のサービスの加入者が使用する移動端末である。UE11
n~11
Nとしては、たとえば、スマートフォン、携帯電話機、タブレット端末、ウェアラブル端末、及びラップトップコンピュータが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
通信ネットワークシステム100に示される各エンティティは、通信ネットワークシステム100で提供される主な機能、例えば、モビリティ管理機能、セッション管理機能、ポリシー制御機能、ユーザデータ管理機能、加入者プロファイル管理機能、ユーザプレーン機能を実装するネットワーク要素を含む。図示されるネットワーク要素の他に、他のネットワーク要素が、通信ネットワークシステム100の主要機能の一部または全部を実装するために使用されてもよい。また、図示されるネットワーク要素の他に、他のネットワーク要素を含んでもよい。
【0025】
本実施形態において、通信ネットワークシステム100は、第5世代(5th Generation, 5G)の規格に準拠したシステムとして構成されているが、この例に限定されない。通信ネットワークシステム100は、第4世代(4th Generation,4G)、第6世代(6th Generation,6G)などの他の通信規格に準拠することができる。以下、通信ネットワークシステム100が5Gの規格に準拠するものとして説明する。
【0026】
以下において、
図1に示す通信ネットワークシステム100を構成する各エンティティについて説明をする。5GC(5Gのコアネットワーク)では、ネットワークの様々な機能を役割ごとにNF(Network Function)として規定している。
【0027】
図1に示されるように通信ネットワークシステム100の通信システム12は、AMF(Access and Mobility Management Function)22、SMF(Session Management Function)24、PCF(Policy Control Function)26、UDM(Unified Data Management)28、UDR(Unified Data Repository)30、UPF(User Plane Function)60などのNF(Network Function)を含む。これらのNFは、論理通信バスに接続され、さらにUPF60、UDR30は収集分析装置40に接続される。
【0028】
本例において、AMF22はモビリティ管理ノードと称することがある。AMF22は、登録管理(Registration management)機能、接続管理(Connection management)機能、及び、端末装置111~11Nの移動性管理(Mobility management)機能等を有する。AMF122は複数あってもよい。
【0029】
本例において、SMF24はセッション管理ノードと称することがある。SMF24は、ユーザのデータセッションの管理や制御を行う。例えば、データセッションの確立、維持、解放などを行う。SMF24は、PCF26と、1以上のAMF22(図示例では1)と、1以上のUPF60(図示例では1)と接続することができる。
【0030】
本例において、PCF26は、ポリシー制御ノードと称することがある。PCF26は、ポリシー制御機能を提供し、例えば、ネットワークリソースの割り当て、品質の制御、セキュリティポリシーの適用など、ネットワーク上の各種ポリシーの管理を行う。
【0031】
本例において、UDM28は、ユーザデータ管理ノードと称することがある。UDM28は、ユーザコンテキストデータやアイデンティティ情報を管理し、ネットワークのサービス提供者に対してセキュリティとアクセス制御を提供する役割を果たす。
【0032】
本例において、UDR30は、加入者データ管理ノードと称することがある。UDR30は、通信事業者と契約する全ての加入者のデータベースや状態を登録する。
【0033】
本例において、UPF60は、ユーザプレーン機能ノードと称することがある。UPF60は、ユーザデータの送受信を行うコンポーネントである。UE111~11Nが送信または受信するデータの転送を処理し、低遅延および高帯域幅の通信をサポートする。UPF60はUE111~11Nから送信されたデータを受信し、適切な宛先に送信することができる。例えば、UPF60はUE111~11Nとインターネットなどのデータネットワーク(DN)70との接続を可能にすることができる。本開示において、UPF60はUE111~11NからDN70との間のパケット通信信号PSを観測し、観測したパケット通信信号PSを、収集分析装置40に送信することができる。
【0034】
また、UPF60は、収集分析装置40から送信されたポリシールールを加入者識別番号ごとに適用することができる。ポリシールールは、例えば、PCC(Policy and Charging Control)ルールである。ポリシールールは、データ使用量の制限、通信速度の制限、優先度の設定、セキュリティポリシーの適用などを含む。ポリシールールは、UPF60に設定されると、UE111~11Nへ提供する通信サービスの品質や通信速度等を制御するために使用される。
【0035】
収集分析装置40は、割り当て部41と、パラメータ生成部47と、データ格納部50とを備える。
【0036】
割り当て部41は、頻度計測部42と、クラスタリング部43と、ポリシー割り当て部44とを備える。割り当て部41の構成については後で詳述する。
【0037】
パラメータ生成部47は、訓練データセット51を用いて混合確率分布に基づく機械学習を実行して当該混合確率分布の最尤パラメータを推定する機械学習部48を備える。パラメータ生成部47の構成については後で詳述する。
【0038】
データ格納部50には、訓練データセット51と、訓練データセット51を用いて機械学習により推定された最尤パラメータをもつ混合確率分布のパラメータ群を示すパラメータデータ52と、ルックアップテーブル53と、ポリシールールと、加入者識別番号との対応関係を定めたポリシーテーブル54が格納される。訓練データセット51は、パラメータ生成部47用のパラメータデータ52の生成のために使用されるデータセットである。
【0039】
パラメータ生成部47は、適当なタイミングでパラメータデータ52をデータ格納部50に格納する。割り当て部41は、当該パラメータデータ52を読み出して、これを利用することができる。
【0040】
上記した通信システム21の構成要素(AMF22、SMF24、PCF26、UDM28、UDR30、収集分析装置40、およびUPF60)の全部または一部は、1つ以上のプロセッサを含む1台のコンピュータで実現されてもよいし、あるいは、通信路を介して相互接続された複数台のコンピュータで実現されてもよい。通信システム21の構成要素の全部または一部は、不揮発性メモリ(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)から読み出されたコンピュータプログラムのコード(命令群)による処理を実行する1つまたは複数の演算装置(Processing Units)を含む1つ以上のプロセッサで実現可能である。たとえば、演算装置としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)またはNPU(Neural Network Processing Unt)が使用できる。
【0041】
図2は、通信システム12の構成要素を実現するハードウェア構成例である情報処理装置(コンピュータ)200の概略構成図である。情報処理装置200は、複数個のプロセッサコアμC,…,μCを含むプロセッサ201と、ランダムアクセスメモリ(RAM:Random Access Memory)202と、不揮発性メモリ203と、大容量メモリ204と、入出力インターフェース205と、信号路206とを含んで構成されている。信号路206は、プロセッサ201、RAM202、不揮発性メモリ203、大容量メモリ204及び入出力インターフェース205を相互に接続するためのバスである。RAM202は、プロセッサ201がディジタル信号処理を実行する際に使用されるデータ記憶領域である。不揮発性メモリ203は、プロセッサ201により実行されるコンピュータプログラムのコード(命令群)が格納されているデータ記憶領域を有する。
【0042】
UE111~11Nは、携帯通信事業者の加入者であるユーザが使用する移動端末であり、ユーザによる各種入力操作を受け付けすることができる。UE111~11Nは、SIM(Subscriber Identity Module)を搭載しており、例えば、スマートフォンなどの携帯端末、PDA(Personal Digital Assistant)、ウェアラブル端末、タブレット型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータ(いわゆる、ノートパソコン)などとして実現される。
【0043】
各UE111~11Nに搭載されるSIMには、携帯通信事業者と契約するユーザの契約プロファイルが格納されている。SIMの契約プロファイルには、ユーザの加入者情報が格納され、各UE111~11Nの回線契約に割り当てられる加入者識別番号(IMSI:International Mobile Subscriber Identity)、加入者であるユーザの電話番号(MSISDN:Mobile Subscriber International Subscriber Directory Number)、SIMカード番号(ICCID:Integrated Circuit Card Identifier)といった個別の識別子情報が含まれる。
【0044】
次に、
図3~
図5を参照しつつ、収集分析装置40の割り当て部41について以下に詳細に説明する。
図3は、割り当て部41による通信リソースの割り当て処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0045】
ステップS302おいて、頻度計測部42(
図1)は、UPF60が監視した、通信ノードである各UE11
1~11
NとDN(データネットワーク)70のユーザ通信(たとえばパケット通信)の通信信号を収集し、所定期間(例えば1か月間)に亘る当該ユーザ通信の頻度を計測する。
【0046】
ステップS302において、頻度計測部42は、当該計測された頻度を表す2値時系列からなる観測データxnを生成する。
【0047】
図4は、ユーザ通信の頻度を説明するための概略図である。UE11
1~11
NとDN70との間のパケット通信信号PS
1~PS
Nは、UPF60によって観測される。
図4の例では、縦軸が、通信事業者と通信契約する全てのユーザの加入者識別番号に対応するUE11
1~11
Nの各パケット通信信号、横軸は時間を示す。
【0048】
図4は、所定時間間隔で観測されたパケット通信信号PS
a,…,PS
b,…,PS
c,…,PS
d,PS
e,…,PS
f,の例を表すタイムチャートである。ここで、添え字a,b,c,d,e,fは、1~Nの範囲内の互いに異なる整数である。
図4では、パケット通信信号が観測されたときは黒ドット、パケット通信が観測されないときは白ドットを表し、これらのドットが時間軸tに沿って配列されている。上方にいくほど高頻度で観測されたパケット通信信号が示され、下方にいくほど低頻度で観測されたパケット通信信号が示されている。
【0049】
図5は、パケット通信信号PS
fの計測された頻度を表す観測データx
nを例示する図である。
図5の例では、所定期間内の各時刻において、パケット通信信号PS
fが観測されたときの観測データ値は「1」となり、パケット通信信号PS
fが観測されないときの観測データ値は「0」の値となる。観測データx
nは、「0」または「1」の値をとる2値変数を要素とする2値ベクトルとして表現されている。
図5の例では、観測データx
nはビット列(1,1,0,1,1,0.1.1,1,1,0,1,1,・・・1,1,0,1)のベクトルとなる。
【0050】
上述したようにパラメータ生成部47は、機械学習により推定された最尤パラメータをもつ混合確率分布のパラメータ群を示すパラメータデータ52をデータ格納部50に格納する。割り当て部41は、データ格納部50からパラメータデータ52を読み出しし、当該パラメータデータ52を利用することができる。
【0051】
ステップS306において、クラスタリング部43(
図1)は、データ格納部50から読み出したパラメータデータ52を利用して、当該パラメータデータ52で示される混合確率分布のパラメータ群を用いたクラスタリング(クラスタ分類)を実行する。すなわち、クラスタリング部36は、当該パラメータデータ52で示される混合確率分布に基づいて、観測データx
nを複数のクラスタのうちの1つのクラスタに分類することができる。
【0052】
本実施形態では、観測データxnの要素である2値変数の各々は、ベルヌーイ分布に従うと考えることができることから、当該パラメータデータ52で示される混合確率分布として混合ベルヌーイ分布が使用できる。機械学習としては、EM(Expectation-Maximization)アルゴリズムによる尤度推定法が使用可能である。
【0053】
混合ベルヌーイ分布のEMアルゴリズムによる最尤推定法によれば、観測データxnがk番目のクラスタに所属する割合は、負担率γnkで計算可能である。負担率γnkは、次式(1)で表される。
【0054】
【0055】
ここで、πk,μkは、EMアルゴリズムによる最尤推定法により推定された最尤パラメータである。
【0056】
次に、ステップS306において、クラスタリング部43は、観測データxnを、負担率γn1,…,γnKのうちの最も高い負担率に対応するクラスタに分類することができる。観測データxnは、共通の特徴を有するクラスタに分類される。
【0057】
次に、ステップS308において、ポリシー割り当て部44(
図1)は、ルックアップテーブル53を参照して、観測データx
nが分類された当該クラスタに対応付けされているポリシールールを決定する。ポリシールールは、例えばPCCルールであり、モバイル通信ネットワークにおけるポリシー管理、トラフィック管理、セッション管理等を規定する。データ格納部50内のルックアップテーブル53には、クラスタとポリシールールとの対応関係が予め定められている。ポリシールールとしては、たとえば、各UE11
1~11
Nに割り当てる通信速度とすることができる。
【0058】
次に、ステップS310において、ポリシー割り当て部44は、クラスタごとに決定されたポリシールール(例えば通信速度)を加入者識別番号ごとに設定する。またポリシー割り当て部44は、設定されたポリシールールと、加入者識別番号との対応関係を定めたポリシーテーブル54を生成し、UDR30、UDM28、PCR26、SMF24を介して、UPF60へ送信する。ポリシー割り当て部44は、クラスタごとに決定されたポリシールールをUPF60へ指示する。
【0059】
図7は、本開示の一実施形態による、ポリシーテーブル54を例示する。ポリシーテーブル54には、クラスタごとのポリシールールと、加入者識別番号との対応関係が定められる。例えば、ポリシールールが、UE11
1~11
Nの通信速度を定めたものの場合、ポリシー1(通信速度10M)は、加入者識別番号xからxxxxに、ポリシー2(通信速度15M)は、加入者識別番号yからyyyyに、ポリシーN(通信速度50M)は、加入者識別番号zからzzzzに対応付けられる。
【0060】
UPF60は、加入者識別番号ごとに設定されたポリシールールを取得すると、決定さポリシールールを各UE111~11Nに適用することができる。
【0061】
以上に説明したとおり、UPF60の割り当て部41は、各UE111~11N(各通信ノード)について計測された頻度を表す2値時系列からなる観測データxnを用いて、機械学習により推定された最尤パラメータをもつ混合確率分布に基づくクラスタリング(クラスタ分類)を実行し、観測データxnが分類された当該クラスタに対応付けされたポリシールールを決定することができる。ポリシールールが各UE111~11Nに割り当てる通信速度の場合、通信頻度が高いクラスタに分類された端末装置には、通信頻度が平均的なクラスタに分類された端末装置よりも、通信速度を遅く設定することができる。これにより、通信頻度が高いヘビーユーザの通信速度を遅くすることでバーストトラフィックの発生を抑えることができる。複数のUE111~11Nがそれぞれ異なる頻度で通信(通信信号の送受信)を行う場合でも、通信資源を効率的に割り当てることができる。
【0062】
次に、
図6を参照しつつ、パラメータ生成部47(
図1)について以下に詳細に説明する。
図6は、パラメータ生成部47によるパラメータ生成処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0063】
訓練データセット51(
図1)は、
図5の観測データに相当する訓練データx
nの集合からなる。訓練データセット51は、0と1ランダムビット列を発生するアルゴリズムで生成することができる。訓練データセット51はUPF60が観測したパケット通信信号から作成してもよい。訓練データセット51は、複数加入者分、例えば全ての加入者識別番号に対応する数の数分の1を用意したものを訓練データセットとすることができる。
【0064】
訓練データxnには、それぞれ、予め各ポリシールールに関連付けられる割り当て内容が対応付けされている。以下、訓練データセット51に基づくパラメータデータ52の生成方法について説明する。
【0065】
ステップS602において、機械学習部48(
図1)は、データ格納部50から訓練データセット51を読み出しする。
【0066】
次に、ステップS604において、機械学習部48は、読み出した訓練データセット51を用いて、混合確率分布に基づく機械学習を実行して当該混合確率分布の最尤パラメータを推定する。
【0067】
次に、ステップS606において、機械学習部48は、推定された最尤パラメータをもつ混合確率分布のパラメータ群をパラメータデータ52としてデータ格納部50に格納する。
【0068】
ここで、ステップS604における、機械学習部48の実行する、混合ベルヌーイ分布のEMアルゴリズムによる最尤推定法の手順を以下に説明する。
【0069】
N個の2値ベクトルx1,x2,…,xNの集合すなわち2値データセットXが、K個のパラメータベクトルμ1,μ2,…,μKの集合すなわちパラメータデータセットMをもつ混合ベルヌーイ分布に従うものとする。2値データセットXとパラメータデータセットMとは、それぞれ次式のように表される(Tは転置記号である。)。
【0070】
【0071】
ここで、n番目の2値ベクトルxnとk番目のパラメータベクトルμkの各々は、以下のようにD個の要素をもつベクトルとして表される。
【0072】
【0073】
2値ベクトルxnの要素xn(i)(i=1,2,…,D)の各々は、0または1の値をとる2値変数である。各2値ベクトルxnは、次の混合ベルヌーイ分布によって独立に生成されるものとする。
【0074】
【0075】
ここで、πは、K個の混合比率からなるパラメータデータセットであり、次式で表され得る。
【0076】
【0077】
尤度関数P(X|M,π)は、次式で表される。
【0078】
【0079】
対数尤度関数P(X|M,π)は、次式で表される。
【0080】
【0081】
EMアルゴリズムは、尤度(上記の尤度関数(X|M,π)または対数尤度関数P(X|M,π))が極大となるように混合ベルヌーイ分布のパラメータデータセットM,πの最尤解を求める手法である。
【0082】
先ず、機械学習部48は初期ステップを実行する。すなわち、パラメータデータM={μ1,μ2,…,μK},π={π1,π2,…,πK}及び尤度を初期化する。
【0083】
次に、Eステップを実行する。すなわち、次式に従って、現在のパラメータセットM,πを用いて負担率(Responsibility)と呼ばれる値γnkを算出する。負担率γnkは、2値ベクトルxnがk番目のクラスタに所属する割合を表している。
【0084】
【0085】
次に、機械学習部48はMステップを実行する。すなわち、次式に従って、現在の負担率γnkを用いてパラメータセットM,πを更新する。
【0086】
【0087】
次に、機械学習部48は所定の収束条件を満たしているか否かを判定する。具体的には、尤度が所定の数値範囲内に収束しているか、パラメータセットM,πが収束しているか、あるいは、尤度とパラメータセットM,πがともに収束していれば、収束条件が満たされていると判定すればよい。収束条件が満たされていないと判定されたときは、Eステップに戻って繰り返し計算する。所定回数または一定時間繰り返し計算しても所定の収束条件が得られないときは、パラメータセットM,π及びクラスタ数Kのうちのいずれかまたは全部を変更して、初期ステップからの処理を実行すればよい。
【0088】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態及び変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲及び明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0089】
100…システム
111~11N…端末装置(UE)
201~20N…基地局
21:通信システム
22…AMF
24…SMF
26…PCF
28…UDM
30…UDR
40…収集分析装置
41…割り当て部
42…頻度計測部
43…クラスタリング部
44…ポリシー割り当て部
47…パラメータ生成部
48…機械学習部
50…データ格納部
51…訓練データ
52…パラメータデータ
53…ルックアップテーブル
54…ポリシーテーブル
60…UPF
70…データネットワーク
【要約】
【課題】複数の通信ノードとそれぞれ異なる頻度で通信する場合でも、通信資源を効率的に割り当てることを可能にする情報処理装置、システムおよび方法を提供する。
【解決手段】複数の通信ノードの各通信ノードとデータネットワークとの間の通信の頻度を計測し、各通信ノードについて、計測された頻度を表す2値時系列からなる観測データを生成する頻度計測部と、機械学習により推定された最尤パラメータを持つ混合確率分布に基づいて、観測データを複数のクラスタのうち1つのクラスタに分類するクラスタリング部と、分類されたクラスタに対応付けられたポリシールールを、各通信ノードに割り当てるポリシー割り当て部と、を備える、情報処理装置。
【選択図】
図3