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特許7427137画像表示システム、画像表示方法、および画像表示プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】画像表示システム、画像表示方法、および画像表示プログラム
(51)【国際特許分類】
   G09G 5/10 20060101AFI20240126BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20240126BHJP
   G09G 5/14 20060101ALI20240126BHJP
   H04N 5/66 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
G09G5/10 B
G09G5/00 510V
G09G5/14 A
G09G5/00 550C
G09G5/14 E
H04N5/66 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023503668
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2022005109
(87)【国際公開番号】W WO2022185868
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2021033946
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391010116
【氏名又は名称】EIZO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】安田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】黒川 愛里
(72)【発明者】
【氏名】巣組 将広
【審査官】西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/246296(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103366694(CN,A)
【文献】特開平05-153531(JP,A)
【文献】特開2015-080075(JP,A)
【文献】特開2007-279405(JP,A)
【文献】特開2021-028689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 5/00 - 5/42
H04N 5/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域に画像を表示させる画像表示システムであって、
第1の表示領域と、
第2の表示領域と、
輝度決定部を備え、
前記輝度決定部は、前記第1の表示領域の輝度と、前記第1の表示領域と前記第2の表示領域とユーザーとの位置関係とに基づいて、前記ユーザーが前記第1の表示領域を視認している場合において前記ユーザーが前記第2の表示領域から感じる光の刺激についての指標値が、予め設定された指標値を実現するように前記第2の表示領域の輝度を決定し、当該輝度で前記第2の表示領域を表示させる、画像表示システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示システムであって、
データ取得部をさらに備え、
前記輝度決定部は、前記データ取得部が取得した照度にさらに基づいて、前記第2の表示領域の輝度を決定する、画像表示システム。
【請求項3】
請求項1に記載の画像表示システムであって、
前記光の刺激についての指標は、前記ユーザーが感じるまぶしさについての指標である、画像表示システム。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の画像表示システムであって、
前記輝度決定部は、前記第2の表示領域のサイズ、前記第1の表示領域と前記第2の表示領域の距離、前記ユーザーが前記第2の表示領域を見たときの立体角、および前記ユーザーと前記第1の表示領域の距離の少なくとも1つに基づいて、前記第2の表示領域の輝度を決定する、画像表示システム。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の画像表示システムであって、
前記第1の表示領域は医用画像を表示するモニターである、
画像表示システム。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の画像表示システムであって、
前記第2の表示領域の輝度の上限値および下限値が予め設定されている、画像表示システム。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の画像表示システムであって、
前記第1の表示領域と前記第2の表示領域は、1つのモニター内に並列に設けられている、画像表示システム。
【請求項8】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の画像表示システムであって、
前記第1の表示領域と前記第2の表示領域は、1つのモニター内に重なるように設けられている、画像表示システム。
【請求項9】
コンピューターを、表示領域に画像を表示させる画像表示システムとして機能させる方法であって、
度決定ステップを含み、
記輝度決定ステップでは、前記コンピューターが、1の表示領域の輝度と、前記第1の表示領域と2の表示領域とユーザーとの位置関係とに基づいて、前記ユーザーが前記第1の表示領域を視認している場合において前記ユーザーが前記第2の表示領域から感じる光の刺激についての指標値が、予め設定された指標値を実現するように前記第2の表示領域の輝度を決定し、当該輝度で前記第2の表示領域を表示させる、方法。
【請求項10】
コンピューターを、表示領域に画像を表示させる画像表示システムとして機能させるプログラムであって、
度決定ステップを前記コンピューターに実行させ、
記輝度決定ステップでは、前記コンピューターに、1の表示領域の輝度と、前記第1の表示領域と2の表示領域とユーザーとの位置関係とに基づいて、前記ユーザーが前記第1の表示領域を視認している場合において前記ユーザーが前記第2の表示領域から感じる光の刺激についての指標値が、予め設定された指標値を実現するように前記第2の表示領域の輝度を決定させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示システム、画像表示方法、および画像表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表示画面近傍の照度と、観視者の情報および視距離に基づいて、観視者がまぶしいと感じ始める前記表示画面の輝度を求める画像表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-279405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ユーザーが同時に複数の表示領域を使用する場合が想定される。このような場合においては、ユーザーが一方の表示領域を視認している状況で、一方の表示領域の輝度により、他方の表示領域における最適な輝度が変動することが、発明者の実験により分かった。
【0005】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、複数の表示領域を使用する場合においてユーザーが一方の表示領域を視認している状況で、一方の表示領域の輝度に基づき、他方の表示領域の適切な輝度制御を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、表示領域に画像を表示させる画像表示システムであって、第1の表示領域と、第2の表示領域と、輝度決定部を備え、前記輝度決定部は、前記第1の表示領域の輝度と、前記第1の表示領域と前記第2の表示領域とユーザーとの位置関係とに基づいて、第2の表示領域の輝度を決定し、当該輝度で前記第2の表示領域を表示させる、画像表示システムが提供される。
【0007】
このような構成とすることにより、一方の表示画面の輝度を考慮して他方の表示画面の輝度を制御することができる。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴が独立に発明を構成する。
【0009】
好ましくは、データ取得部をさらに備え、前記輝度決定部は、前記データ取得部が取得した照度にさらに基づいて、第2の表示領域の輝度を決定する。
好ましくは、前記輝度決定部は、ユーザーが感じる光の刺激についての指標に基づいて、第2の表示領域の輝度を決定する。
好ましくは、前記光の刺激についての指標は、ユーザーが感じるまぶしさについての指標である。
好ましくは、前記輝度決定部は、前記第2の表示領域のサイズ、第1の表示領域と2の表示領域の距離、前記ユーザーが前記第2の表示領域を見たときの立体角、および前記ユーザーと前記第1の表示領域の距離の少なくとも1つに基づいて、第2の表示領域の輝度を決定する。
好ましくは、前記第1の表示領域は医用画像を表示するモニターである。
好ましくは、前記第2の表示領域の輝度の上限値および下限値が予め設定されている。
好ましくは、前記第1の表示領域と前記第2の表示領域は、1つのモニター内に並列に設けられている。
好ましくは、前記第1の表示領域と前記第2の表示領域は、1つのモニター内に重なるように設けられている。
本発明の他の態様によると、コンピューターを、表示領域に画像を表示させる画像表示システムとして機能させる方法であって、データ取得ステップと、輝度決定ステップを含み、前記データ取得ステップでは、前記コンピューターが、前記画像表示システムが備える第1および第2の表示領域が設置されている環境における照度を取得し、前記輝度決定ステップでは、前記コンピューターが、前記データ取得ステップで取得した照度と、前記第1の表示領域の輝度と、前記第1の表示領域と前記第2の表示領域とユーザーとの位置関係とに基づいて、第2の表示領域の輝度を決定し、当該輝度で前記第2の表示領域を表示させる、方法が提供される。
本発明の他の態様によると、コンピューターを、表示領域に画像を表示させる画像表示システムとして機能させるプログラムであって、データ取得ステップと、輝度決定ステップを前記コンピューターに実行させ、前記データ取得部ステップでは、前記コンピューターに、前記画像表示システムが備える第1および第2の表示領域が設置されている環境における照度を取得させ、前記輝度決定ステップでは、前記コンピューターに、前記データ取得ステップで取得した照度と、前記第1の表示領域の輝度と、前記第1の表示領域と前記第2の表示領域とユーザーとの位置関係とに基づいて、第2の表示領域の輝度を決定させる、プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る画像表示システム1のハードウェア構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係る画像表示システム1の機能構成を示すブロック図である。
図3】ユーザーと読影モニター3と参照モニター4との位置関係を示す図である。
図4】UGR値に対応する不快グレアの程度を示す図である。
図5図5Aは、目標UGR値を6とした場合の参照モニター4の発光輝度Ltを示すグラフである。図5Bは、目標UGR値を9とした場合の参照モニター4の発光輝度Ltを示すグラフである。
図6】第2実施形態に係る画像表示システム1の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<1.第1の実施の形態>(1.1.画像表示システム1のハードウェア構成)
図1を参照し、画像表示システム1のハードウェア構成を説明する。図1に示すように、画像表示システム1は、演算処理装置2と、第1の表示領域としての読影モニター3と、第2の表示領域としての参照モニター4を備える。読影モニター3の前面上部には、照度センサー5が取り付けられている。画像表示システム1は、例えば病院内の読影室に設置される。読影モニター3は、胸部X線画像やマンモグラフィー画像などの医用画像を表示する。参照モニター4は、カルテなどのテキスト及び/又は画像データ情報を表示する
【0012】
演算処理装置2と、読影モニター3および参照モニター4とは、映像信号ケーブル11と制御信号ケーブル12によって互いに通信可能に構成されている。演算処理装置2からの画像データは、映像信号ケーブル11を通じて読影モニター3および参照モニター4に送信される。
【0013】
演算処理装置2から送信された画像データに基づく画像は、読影モニター3の表示画面3aおよび参照モニター4の表示画面4aに表示される。演算処理装置2と、読影モニター3および参照モニター4との間における制御信号やデータの授受は、制御信号ケーブル12を通じて行われる。
【0014】
(1.2.画像表示システム1の機能構成)
図2を参照し、画像表示システム1の機能構成を説明する。上述したように、画像表示システム1は、演算処理装置2と、読影モニター3と、参照モニター4と、照度センサー5を備える。演算処理装置2は、データ取得部21と、輝度決定部22と、画像出力部23を含む。読影モニター3に取り付けられた照度センサー5は、環境における照度(環境照度)を検知し、読影モニター3は、検知した環境照度を演算処理装置2に出力する。
【0015】
データ取得部21は、照度センサー5が検知した環境照度を取得する。さらに、データ取得部21は、読影モニター3の情報および参照モニター4の情報を取得する。具体的には、読影モニター3の輝度、読影モニター3および参照モニター4のサイズに関する情報、読影モニター3および参照モニター4と、ユーザーとの位置に関する情報を含む。これらの情報は、演算処理装置2が内蔵する記憶部(メモリ、HDDまたはSSDなど)に格納しておき、必要に応じてデータ取得部21が取得する構成としてもよいし、ユーザーやメーカーがこれらの情報を設定することにより、取得する構成としてもよい。
【0016】
輝度決定部22は、ユーザーが感じる光の刺激についての指標に基づいて、参照モニター4の輝度を決定する。輝度決定部22の処理の詳細は後述する。参照モニター4の輝度制御部41は、輝度決定部22が決定した輝度で表示画面4aの表示を行う。
【0017】
画像出力部23は、読影モニター3および参照モニター4に表示する画像データを出力する。当該画像データは、たとえば赤色、緑色、青色の三原色で構成される色成分を含むカラー画像であってもよいし、レントゲン画像のようなモノクロ画像であってもよい。
【0018】
読影モニター3は、レントゲン画像などの医用画像データを表示するモニターであり、たとえば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、タッチパネルディスプレイ、電子ペーパーその他のディスプレイで構成される。
【0019】
参照モニター4は、カルテなどのテキスト及び/又は画像データを表示するモニターで
あり、たとえば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、タッチパネルディスプレイ、電子ペーパーその他のディスプレイで構成される。
【0020】
上述した各構成要素は、ソフトウェアによって実現してもよく、ハードウェアによって実現してもよい。ソフトウェアによって実現する場合、CPUがプログラムを実行することによって各種機能を実現することができる。プログラムは、演算処理装置2が内蔵する記憶部に格納してもよく、コンピューターが読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納してもよい。
【0021】
また、外部の記憶部に格納されたプログラムを読み出し、いわゆるクラウドコンピューティングにより実現してもよい。ハードウェアによって実現する場合、ASIC、FPGA、またはDRPなどの種々の回路によって実現することができる。
【0022】
(1.3.輝度決定部22の処理)
図3を参照し、輝度決定部22の処理について説明する。なお、以下の説明で示す輝度決定部22の処理は一例であって、以下に述べる演算内容に限定されるものではない。
【0023】
上述したように、輝度決定部22は、ユーザーUが視野内の高輝度発光体(以下、単に発光体ともいう)からの光の刺激についての指標に基づいて、参照モニター4の輝度を制御する。なお、本実施形態では、参照モニター4を高輝度発光体と想定する。
【0024】
本実施形態では、光の刺激についての指標として、ユーザーUが感じるまぶしさの指標である不快グレアを算出する。ここで、不快グレアとは、視野内に高輝度発光体があることにより、視認対象物を見えにくくしたり、不快感を覚えたりする状態のことである。不快グレアを定量的に算出する算出式は様々なものが既に知られており、一例として、本実施形態では、UGRの指標(以下、UGR値ともいう)に基づいて不快グレアの算出を行う。UGRの指標は、以下の式(1)で規定される。
【0025】
【数1】
【0026】
式(1)において、Lbは背景輝度、ωは立体角、Pはポジションインデックス、Ltは発光輝度を表す。以下、順に説明する。
【0027】
背景輝度Lbは、不快グレアを発生させる発光体を除いた視野内における、ユーザーUの周囲の空間における均一輝度を表す。本実施形態では、背景輝度Lbは、読影モニター3による影響を考慮して、以下の式(2)および(3)で算出される。
【0028】
【数2】
【0029】
【数3】
【0030】
式(2)および(3)において、Ldは読影モニター3の設定輝度であり、Lambは環境輝度である。また、Iambは、照度センサー5が検知した環境照度であり、kcは輝度変換係数である。
【0031】
立体角ωは、発光部分である表示画面4aの面積と、ユーザーUから発光体までの距離によって規定される。本実施形態では、立体角ωは、以下の式(4)で算出される。
【0032】
【数4】
【0033】
式(4)において、Apは参照モニター4の表示画面4aの表示面積であり、rはユーザーUから参照モニター4の中心点P3までの長さである。また、Lhは表示画面4aの水平方向の長さであり、Lvは表示画面4aの鉛直方向の長さであり、DはユーザーUから参照モニター4までの垂直距離(すなわち、ユーザーUから参照モニター4への垂線の足P2までの長さ)である。
【0034】
ポジションインデックスPは、ユーザーUと発光体とユーザーUの注目点との位置関係によって規定される係数である。本実施形態では、ポジションインデックスPは、以下の式(5)によって算出される。
【0035】
【数5】
【0036】
式(5)において、Tは、読影モニター3の中心点P1から参照モニター4の中心点P3までの長さである。Rは、読影モニター3の中心点P1からユーザーUまでの長さである。ここで、中心点P1をユーザーUの注目点と仮定している。なお、ユーザーUの注目点は適宜変更可能で、例えば、ユーザーUが読影モニター3の左半分を注目している場合には、左半分画面の中心点をP1としてもよい。なお、読影モニター3と参照モニター4とが鉛直方向に離れている場合、その鉛直方向の長さを考慮してポジションインデックスを設定してもよい。
【0037】
発光輝度Ltは、視野内の発光体の発光輝度を表す。すなわち、本実施形態では、発光輝度Ltは参照モニター4の発光輝度に該当する。発光輝度Ltは、式(1)を基づいて、以下の式(6)として求めることができる。
【0038】
【数6】
【0039】
このように、背景輝度Lb、立体角ω、ポジションインデックスPを算出し、目標とするUGR値(以下、目標UGR値ともいう)を予め設定することにより、目標UGR値を実現するための参照モニター4の発光輝度Ltを求めることができる。
【0040】
図4に示すように、各UGR値に対して、観察者がどのように感じるかについては予め規定されている。輝度決定部22は、予め設定された目標UGR値を実現するように、参照モニター4の発光輝度Ltを制御する。
【0041】
発光輝度Ltは、例えば、液晶ディスプレイの場合はバックライトの輝度を制御することで制御されてもよいし、有機ELディスプレイの場合はLEDの電流値を制御することで制御されてもよい。発光輝度Ltは、モニターのゲイン、又は、映像信号を制御することで制御されてもよい。また、これらの組み合わせにより制御されてもよい。
【0042】
(1.4.実施例)
図5Aは、目標UGR値を10とした場合における読影モニター3の設定輝度Ldと、環境照度Iambと、発光輝度Ltとの関係を表したグラフである。図5Aから、環境照度Iambと、読影モニター3の設定輝度Ldに応じて、目標UGR値を10とする場合の参照モニター4の発光輝度Ltの値が変化するのを読み取ることができる。ここで、参照モニター4の発光輝度Ltには下限値を50(cd/m)とし、上限値を150(cd/m)として設定している。このように参照モニター4の発光輝度Ltの上限値および下限値を設定することで、発光輝度Ltが急激に変動することを抑制することが可能となる。
【0043】
図5Bは、目標UGR値を12とした場合における図5A相当図である。以下、図5A図5Bを比較して考察する。まず、一例として、目標UGR値が10で、環境照度Iambが100(lux)の場合を検証する。
【0044】
読影モニターの設定輝度Ldが35(cd/m)のとき、図5Aの点G2が示すように、参照モニター4の発光輝度Ltは、約125(cd/m)となる。一方、読影モニターの設定輝度Ldが0(cd/m)のとき、図5Aの点G1が示すように、参照モニター4の発光輝度Ltは、約90(cd/m)となる。
【0045】
このように、環境照度および目標UGR値が同じ条件においては、読影モニター3の設定輝度Ldが高いほど、参照モニター4の発光輝度Ltが高くなるように制御されることになる。
【0046】
次に、他の例として、環境照度Iambが100(lux)で、読影モニターの設定輝度Ldが35(cd/m)の場合を検証する。
【0047】
目標UGR値が10のときには、図5Aの点G2が示すように、参照モニター4の発光輝度Ltは、約125(cd/m)となる。一方、目標UGR値が12の場合には、図5Bの点G3が示すように、参照モニター4の発光輝度Ltは、上限値150(cd/m)となる。
【0048】
このように、環境照度Iambおよび読影モニターの設定輝度Ldが同じ場合には、目標UGR値が高いほど、発光輝度Ltが高くなるように制御することになる。
【0049】
このように、本実施形態における輝度決定部22は、照度センサー5が取得した環境照度と、読影モニター3と参照モニター4とユーザーUとの位置関係とに基づいて、参照モニター4の輝度を制御する。このようにすることで、一方の表示画面の輝度を考慮して他方の表示画面の輝度を制御することができる。
【0050】
また、本実施形態における画像表示システム1が設置されるような、レントゲン画像などを読影するの部屋は暗いため、グレアを感じやすく、本願の効果を享受しやすい。すなわち、優先度が低いカルテなどの参照用画像からのグレアを低減できるため、ユーザーは優先度が高い医用画像に集中できる。また、注目している医用画像が暗く、注目していない画像が明るい場合、コントラストが大きくなりグレアを感じやすくなるが、本願発明を適用することでグレアを低減することが可能となる。
【0051】
<2.第2実施形態>
図6を参照して、本願発明の第2実施形態について、上記実施形態との差異を中心に説明する。第2実施形態では、画像表示システム1が自動車内に搭載されている点が第1実施形態と異なる。
【0052】
具体的には、第2実施形態では、バックモニター13が第1の表示領域に相当し、デジタルミラー14が第2の表示領域に相当する。画像出力部23は、バックモニター13に対して後方画像データを出力し、デジタルミラー14に対してミラー画像データを出力する。なお、バックモニター13とは、自動車のバック時に後方を撮影するカメラの画像を表示するモニターであり、通常は運転席の前方中央部に設けられる。また、デジタルミラー14とは、自動車の運転時に後方を確認するためのカメラからの画像を表示するモニターであり、通常はフロントガラス上部の中央(いわゆるバックミラーの位置)、または自動車の両側面(いわゆるサイドミラーの位置)に設けられる。
【0053】
本実施形態では、輝度決定部22によるデジタルミラー14の輝度制御は、主に自動車のバック(後方運転)時に行われる。バック時において、運転手はバックモニター13に注目するため、デジタルミラー14からの発光が強いと、バックモニター13をみづらくなる。そこで、輝度決定部22は、照度センサー5が環境照度、バックモニターの輝度、および、バックモニター13とデジタルミラー14と運転手との位置関係に基づいて、デジタルミラー14の輝度を制御する。
【0054】
<3.他の実施の形態>
本発明の適用は、上記実施形態に限定されない。たとえば、不快グレアの指標として、UGRの指標を採用しているが、この態様に限定されることはない。具体的には、DGI、GI、BGI、CGIなどの他の指標を採用してもよい。また、光の刺激についての指標又は眩しさの指標以外にも、実験的に決めた指標を用いてもよい。例えば、人種、年齢等の統計データに基づき、第2の表示領域の輝度を決定してもよい。
【0055】
また、第1実施形態において、画像表示システム1は、第1の表示領域としての読影モニター3と、第2の表示領域としての参照モニター4とを備えていたが、この態様に限定されることはない。例えば、画像表示システムは第1の表示領域および第2の表示領域それぞれを複数備えていてもよい。
【0056】
また、画像表示システム1は、1つのモニターにおいて、第1の表示領域と第2の表示領域を並列に設ける、いわゆるPbyP(Picture by Picture)の態様で実現してもよい。または、1つのモニターにおいて、第1の表示領域および第2の表示領域のいずれか一方の領域内に他方を含める、いわゆるPinP(Picture by Picture)の態様で実現してもよい。
【0057】
また、第1実施形態において、照度センサー5が読影モニター3に取り付けられていたが、この態様に限定されることはない。例えば、照度センサー5が参照モニター4に取り付けられてもよいし、照度センサー5及び読影モニター3の外部に、照度センサー5が設置されていてもよい。また、照度センサーを用いずに、ユーザーやメーカーが設定した環境照度を使用してもよい。
【0058】
また、環境照度を用いずに、第2の表示領域の輝度を決定してもよい。この場合、式(2)においては、背景輝度Lbのみが変数となり、その他定数等は適宜決定すればよい。これにより、照度センサーが無い環境においても、第2の表示領域のグレアを低減することができる。
【0059】
また、第1実施形態において、読影モニター3の輝度として用いた設定輝度は、例えば、設定されたブライトネス値(例えば、液晶ディスプレイの場合、バックライト出力値またはバックライトの最大出力値に対する割合)又は輝度値でもよい。また、用途についての情報に基づき読影モニター3の輝度を決定してもよい。具体的には、マンモグラフィー用、超音波用等の用途及び/又は画像データに応じて、読影モニター3の輝度を決定してもよい。例えば、用途に応じた輝度値、及び、画像データの画面の一部又は中心部の値、画像データから算出されたヒストグラムの最頻値、中央値、又は平均値等により、読影モニター3の輝度を決定してもよい。また、モニターの機種についての情報に基づき読影モニター3の輝度を決定してもよい。
【0060】
また、第1実施形態において、読影モニター3の輝度として設定輝度を用いたが、この態様に限定されることはない。例えば、読影モニター3の輝度は、画像データ及び画像データと輝度の関係に基づき決定されてもよく、輝度センサーにより表示画面又はバックライトの輝度を測定することで決定されてもよい。
【0061】
また、第1実施形態において、ユーザーUと読影モニター3及び参照モニター4との距離は、あらかじめ設定された値を使用してもよく、ユーザー又はメーカーにより入力された値を使用してもよく、距離センサーにより取得された値を使用してもよい。
【0062】
また、第2実施形態において、バックモニター13が第1の表示領域に相当し、デジタルミラー14が第2の表示領域に相当していたが、この態様に限定されることはない。例えば、フロントガラスに表示されるヘッドアップディスプレイを第1の表示領域とし、デジタルミラーを第2の表示領域とする態様であってもよい。
【0063】
または、ヘッドアップディスプレイの代わりに、車内TV、車内DVD、インターネット情報などを表示するモニターを第1の表示領域としてもよい。または、デジタルミラーの代わりに、カーナビのモニター、またはインストルメントパネル(スピードメータなどの計器表示パネル)を第2の表示領域としてもよい。
【0064】
さらに、本発明は、コンピューターを上述の画像表示システムとして機能させるプログラムとして実現することもできる。
【0065】
さらに、本発明は、上述のプログラムを格納する、コンピューター読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現することもできる。
【0066】
本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0067】
1 :画像表示システム
2 :演算処理装置
3 :読影モニター
3a :表示画面
4 :参照モニター
4a :表示画面
5 :照度センサー
11 :映像信号ケーブル
12 :制御信号ケーブル
13 :バックモニター
14 :デジタルミラー
21 :データ取得部
22 :輝度決定部
23 :画像出力部
41 :輝度制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6