(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】浸漬ノズル
(51)【国際特許分類】
B22D 11/10 20060101AFI20240126BHJP
B22D 41/50 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
B22D11/10 330G
B22D41/50 520
(21)【出願番号】P 2023533008
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2021025890
(87)【国際公開番号】W WO2023281726
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-10-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001971
【氏名又は名称】品川リフラクトリーズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591263385
【氏名又は名称】ダニエリ・アンド・シー・オフィシネ・メカニシェ、エス・ピー・エー
【氏名又は名称原語表記】DANIELI AND C OFFICINE MECCANICHE SOCIETA PER AZIONI
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】西尾 奏恵
(72)【発明者】
【氏名】新妻 宏泰
(72)【発明者】
【氏名】コンテ リカルド
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-213785(JP,A)
【文献】特開2009-233717(JP,A)
【文献】特開2004-1057(JP,A)
【文献】特開2000-233262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/10
B22D 41/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路と開口部とを備え、基端側から順に、第一部分、接続部分、および第二部分が設けられている浸漬ノズルであって、
前記第一部分において、前記流路の横断面形状は円形であり、
前記第二部分において、前記流路の横断面形状は矩形であり、
前記接続部分において、前記流路の形状は、前記第一部分の前記流路と前記第二部分の前記流路とを連続的に接続する形状であり、
前記第二部分において、前記矩形の長辺の長さaと短辺の長さbとの比a/bは、3以上7以下であり、
前記第二部分における前記流路の断面積S
2は、前記第一部分における前記流路の断面積S
1より大きく、
前記開口部は、二つの第一開口部と、二つの第二開口部と、を含み、
前記第一開口部は、前記第二部分の二つの前記短辺にそれぞれ対応する二つの側面に一つずつ開口しており、
二つの前記第二開口部の一方は、二つの前記側面のうちの一方の側面と、前記第二部分の先端の面である底面と、にわたって開口しており、
二つの前記第二開口部の他方は、二つの前記側面のうちの他方の側面と、前記底面と、にわたって開口して
おり、
前記第一開口部の前記側面における開口面積S
3
、ならびに、前記第二開口部の前記側面における開口面積S
4
および前記底面における開口面積S
5
は、以下の式(1)および式(2)を満たす浸漬ノズル。
S
4
<S
5
(1)
(S
4
+S
5
)/S
3
≧1.5 (2)
【請求項2】
前記第一開口部の前記側面における開口面積S
3は、前記流路側における開口面積S
6より小さい請求項
1に記載の浸漬ノズル。
【請求項3】
最大幅は300mm以下である請求項
1または2に記載の浸漬ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄スラブを連続鋳造する場合に使用する浸漬ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造とそれにより得られたスラブの熱間圧延とを直接連結する、いわゆる直結化によるスラブ加熱工程の省略および省エネルギーの効果が注目され、それを実現するために連続鋳造側での薄スラブ化が指向されている。薄スラブ(たとえば厚さ200mm以下)を鋳造する際、モールドを扁平化する必要上、必然的に浸漬ノズルも扁平化する必要がある(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薄スラブの鋳造においては皮張りが特に問題になりやすい。これは、薄スラブにおいて、溶鋼表面面積の縦横比が大きいため表面温度の低下が一般的なスラブより起こりやすいことや、浸漬部のノズル断面積が広いほどノズルによる抜熱が発生するためより温度が低下しやすいことなどによる。
【0005】
特許文献1に記載された浸漬ノズルによれば、浸漬ノズルと鋳型壁との間に発生する地金付および広幅鋳型短辺近傍に発生する溶融金属表面の皮張りを防止でき、かつ、溶融金属の吸引現象や凝固シェルの再溶解などの発生を防止できる。しかし、特許文献1に記載された浸漬ノズルは、メニスカス部分における皮張りの抑制については、十分とはいえない。
【0006】
そこで、薄スラブ連続鋳造においてメニスカス部分の皮張りを抑制しうる浸漬ノズルの実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る浸漬ノズルは、流路と開口部とを備え、基端側から順に、第一部分、接続部分、および第二部分が設けられている浸漬ノズルであって、前記第一部分において、前記流路の横断面形状は円形であり、前記第二部分において、前記流路の横断面形状は矩形であり、前記接続部分において、前記流路の形状は、前記第一部分の前記流路と前記第二部分の前記流路とを連続的に接続する形状であり、前記第二部分において、前記矩形の長辺の長さaと短辺の長さbとの比a/bは、3以上7以下であり、前記第二部分における前記流路の断面積S2は、前記第一部分における前記流路の断面積S1より大きく、前記開口部は、二つの第一開口部と、二つの第二開口部と、を含み、前記第一開口部は、前記第二部分の二つの前記短辺にそれぞれ対応する二つの側面に一つずつ開口しており、二つの前記第二開口部の一方は、二つの前記側面のうちの一方の側面と、前記第二部分の先端の面である底面と、にわたって開口しており、二つの前記第二開口部の他方は、二つの前記側面のうちの他方の側面と、前記底面と、にわたって開口しており、前記第一開口部の前記側面における開口面積S
3
、ならびに、前記第二開口部の前記側面における開口面積S
4
および前記底面における開口面積S
5
は、以下の式(1)および式(2)を満たすことを特徴とする。
S
4
<S
5
(1)
(S
4
+S
5
)/S
3
≧1.5 (2)
【0008】
薄スラブ連続鋳造において上記の構成の浸漬ノズルを用いると、メニスカス部分の皮張りを抑制しうる。ノズルから吐出される吐出流は、モールドの短辺に当たり上昇流と下降流に分離する。ここで、上昇流が過度に強い場合はパウダーの巻き込みなどが生じやすく、下降流が過度に強い場合は介在物や気泡などが浮上しにくい。上記の構成によれば、上昇流と下降流とのバランスが適正化され、過剰なメニスカス流動が抑制されうる。
【0009】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0012】
本発明に係る浸漬ノズルは、一態様として、前記第一開口部の前記側面における開口面積S3は、前記流路側における開口面積S6より小さいことが好ましい。
【0013】
この構成によれば、第一開口部における吸込み流の発生を抑制しうる。
【0014】
本発明に係る浸漬ノズルは、一態様として、最大幅は300mm以下であることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、迅速交換装置を用いて浸漬ノズルの交換作業を実施する際の作業性が向上する。これによって、鋳造中にノズルを迅速交換できるので、薄スラブ連続鋳造において鋳造条件の厳しい高級鋼種を鋳造するニーズの高まりに対応しうる。
【0016】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】実施形態に係るノズルの側面断面図(
図1のII-II線断面図)である。
【
図3】実施形態に係るノズルの第一部分の横断面図(
図1のIII-III線断面図)である。
【
図4】実施形態に係るノズルの第二部分の横断面図(
図1のIV-IV線断面図)である。
【
図5】実施形態に係るノズルの第二部分の側面図である。
【
図6】実施形態に係るノズルの第二部分の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る浸漬ノズルの実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る浸漬ノズルを、モールド厚さが200mm以下のスラブの連続鋳造に用いられる浸漬ノズル1(以下、単にノズル1と称する。)に適用した例について説明する。
【0019】
〔浸漬ノズルの全体構成〕
ノズル1は、耐火材料によって形成された筒状の部材である。内部には溶鋼を流通させるための流路が形成されており、先端部分には開口部5が設けられている。ノズル1には、基端側から順に第一部分2、接続部分3、および第二部分4が設けられており、各部分の形状が異なる(
図1、
図2)。ノズル1は、第一部分2において、上流側の設備(ストッパー、スライディングノズルなど。不図示。)と接合されており、上流側の設備から流入した溶鋼が流路を流通する。また、第二部分4には開口部5(第一開口部51および第二開口部52)が設けられており、開口部5からモールド(不図示)に溶鋼が流出する。
【0020】
ノズル1を構成する耐火材料の種類は特に限定されず、当分野において従来使用されている耐火材料を使用できる。かかる耐火材料としては、アルミナ-黒鉛質、マグネシア-黒鉛質、スピネル-黒鉛質、ジルコニア-黒鉛質、カルシウムジルコネート-黒鉛質、高アルミナ質、アルミナ-シリカ質、シリカ質、ジルコン質、スピネル質などが例示される。また、適宜ゾーンライニングを適用してもよい。
【0021】
以下の説明において方向について言及するときは、
図1に示す配置を基準とする。すなわち、上下方向について言及するときは、基端側(第一部分2側)を上(上部、上方、上側、上流など)と称し、先端側(第二部分4側)を下(下部、下方、下側、下流など)と称する。
【0022】
また、流路の断面について言及するときは、特記しない限り、上記に定義した上下方向と直交する方向(
図1紙面と直交する方向)の断面をいうものとし、当該断面を横断面と称する。なお、ノズル1の使用時において、溶鋼は上記に定義した上側から下側に向けて流れるので、上記に定義した横断面は溶鋼の流れ方向に対する断面でもある。
【0023】
〔第一部分の構成〕
第一部分2は、ノズル1の基端側における主たる部分である。第一部分2において、流路21の横断面形状は円形である(
図1~
図3)。なお、ここで言う円形とは、数学的な意味における円形に限定されず、実質的に円形として取り扱いうる形状でありうる。したがって、工業製品として円形を実現する際に生じうる数学的な円形からの逸脱(公差など)があってもよい。本実施形態では、流路21の断面積S
1は、6000mm
2である。
【0024】
〔第二部分の構成〕
第二部分4は、ノズル1の先端側における主たる部分である。第二部分4において、流路41の横断面形状は矩形である(
図1、
図2、および
図4)。なお、ここで言う矩形とは、数学的な意味における矩形(長方形)に限定されず、実質的に矩形として取り扱いうる形状でありうる。したがって、工業製品として矩形を実現する際に通常適用される変形(面取りなど)が施されていてもよいし、数学的な矩形からの逸脱(公差など)があってもよい。
【0025】
本実施形態では、流路41の断面積S2は、10000mm2である。したがって、流路41の断面積S2は、流路21の断面積S1より大きい。このように、下流域(流路41)の断面積を上流域(流路21)の断面積より大きくすることによって、開口部5から吐出される溶鋼の流速が低減される。これによって、モールド内において上昇流が得られ、過剰なメニスカス流動が抑制される。
【0026】
本実施形態では、流路41の横断面形状において、矩形の長辺42の長さaは200mmであり、短辺43の長さbは50mmである(
図4)。したがって、両者の比a/bは、4.0である。なお、矩形の形状は上記の数値に限定されず、比a/bが3以上7以下である範囲で変更されうる。比a/bを変更する場合、矩形の長辺42の長さaおよび短辺43の長さの双方が変更されうるが、短辺43の長さbはモールドの短辺の長さによって規制されるため、長辺42の長さaの方が、一般的に自由度が高い。
【0027】
比a/bが3以上7以下であると、流路41の壁面から溶鋼流が剥離しにくく、適正な流れが得られる。一方、比a/bが3未満であると、長辺42の長さaが過小になり、鋳造に必要な内管断面積を確保しにくい。また、比a/bが7を超えると、長辺42の長さaが過大になってノズル1の重量が大きくなりやすく、ノズル1を取り扱う作業者および装置の負荷が大きくなりうる。また、比a/bが7を超える場合、接続部分3における長辺方向の流路31の変形が急峻になり、流路壁面からの溶鋼流の剥離を誘発しうる。
【0028】
流路41の横断面形状が矩形であることに対応して、第二部分4の実体部分(耐火材料部分)の横断面形状も矩形であり、したがって第二部分4は有底角柱状に形成されている。矩形の長辺42に対応する面の幅Wは270mmであり、この幅はノズル1の最大幅である。このように、ノズル1の最大幅Wが300mm未満であると、迅速交換装置を用いてノズル1の交換作業を実施する際の作業性が向上するので、好ましい。これは、ノズル1の最大幅Wが300mm未満であると、ノズル1とモールドとの寸法の関係上、モールドの内側でノズル1を交換する作業を行う余地を確保しやすいことによる。
【0029】
〔開口部の構成〕
第二部分4において、矩形の短辺43に対応する側面44には、第一開口部51が開口している(
図1、
図5)。第一開口部51は二つ設けられており、二つの第一開口部51(51A、51B)は、二つの短辺43(43A、43B)にそれぞれ対応する二つの側面44(44A、44B)に一つずつ開口している。第一開口部51が側面44に開口していることによって、溶鋼流をモールドの短辺側に向けて吐出できる。これによって、モールド内に上昇流を発生させて、メニスカスへの熱供給を促進しうる。
【0030】
また、側面44と、第二部分4の長手方向の先端の面である底面45と、にわたって、第二開口部52が二つ開口している(
図1、
図5、
図6)。二つの第二開口部52のうち、一方の第二開口部52Aは側面44A(一方の側面)と底面45にわたって開口しており、他方の第二開口部52Bは側面44B(他方の側面)と底面45にわたって開口している。第二開口部52が上記の態様で開口していることによって、溶鋼流をモールド下方に向けて吐出でき、モールド内の溶鋼流を適切に配分しうる。
【0031】
本実施形態では、第一開口部51の側面44における開口面積S
3(
図5に表される第一開口部51の面積)は2700mm
2である。また、第二開口部52の側面44における開口面積S
4(
図5に表される第二開口部52の面積)は2000mm
2であり、底面45における開口面積S
5(
図6に表される第二開口部52の面積)は5000mm
2である。以上の開口面積から、以下の式(1)および式(2)が成り立つ。
S
4<S
5 (1)
(S
4+S
5)/S
3≧1.5 (2)
【0032】
第一開口部51および第二開口部52を、式(1)および式(2)が満たされる開口面積で設けることによって、上昇流と下降流とのバランスが適正化され、過剰なメニスカス流動を抑制できる。なお、第一開口部51の開口面積S3ならびに第二開口部52の開口面積S4およびS5は上記の値に限定されず、式(1)および式(2)が満たされる限りにおいて変更可能である。
【0033】
また、本実施形態では、第一開口部51の流路41側における開口面積S6は4000mm2である。したがって、第一開口部51の側面44における開口面積S3は、流路41側における開口面積S6より小さい。
【0034】
第一開口部51の流路41側における開口面積S6が、側面44における開口面積S3より大きい、または両者が等しい構成にすることで、溶鋼の流動方向出口に向けて流路の断面積が漸減するので、溶鋼流が整流される。これによって、第一開口部51の上部における吸込み流の発生が抑制され、第一開口部51の全体から溶鋼が滑らかに吐出されやすい。
【0035】
〔接続部分の構成〕
接続部分3は、第一部分2と第二部分4とを連続的に接続する部分である(
図1、
図2)。接続部分3では、断面形状が円形である第一部分2の流路21と、断面形状が矩形である第二部分4の流路41とを連続的に接続する形状の流路31が設けられている。したがって、流路31の断面形状は、上端32において円形であり、下端33において矩形である。
【0036】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る浸漬ノズルのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0037】
上記の実施形態では、開口部5(第一開口部51および第二開口部52)に係る開口面積S3、S4、S5、およびS6が、式(1)および式(2)を満たし、かつS3がS6より小さい構成を例として説明した。しかし、本発明に係る浸漬ノズルは、式(1)および式(2)の一方または双方を満たさなくてもよいし、S3がS6より大きくてもよい。
【0038】
上記の実施形態では、ノズル1の最大幅Wが270mmであり、300mm未満である構成を例として説明した。しかし、本発明に係る浸漬ノズルの最大幅は、300mm以上であってもよい。
【0039】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【実施例】
【0040】
以下では、実施例を示して本発明をさらに説明する。ただし、本発明は以下の実施例によって限定されない。
【0041】
〔試験方法〕
種々の寸法条件のノズルを設計し、CHAM-japan社製の流体解析ソフトウェア「PHOENICS」を使用して、吐出される溶鋼流の態様についての数値流体力学計算を行なった。実施例および比較例の各例の寸法条件は、後掲の表1~3に記載されているとおりである。計算結果に基づいて、流速コンター図を出力した。なお、計算にあたって以下の各パラメータを適用した。
・計算セル数: 約50万(モデルにより変動)
・流体: 溶鋼(1560℃、密度7.08g/cm3)
・鋳造速度: 毎分4t
・モールドサイズ: 1200mm×150mm
【0042】
〔メニスカス流速の評価〕
実施例および比較例の各例について、出力された流速コンター図に基づいてメニスカス流速を特定した。メニスカス流速の値に応じて、A~Cの三段階で評価した。
A:メニスカス流速が10cm/秒以上25cm/秒以下である。
B:メニスカス流速が25cm/秒を超え35cm/秒以下である。
C:メニスカス流速が10cm/秒未満または35cm/秒を超える。
【0043】
〔溶鋼流の剥離〕
実施例および比較例の各例について、出力された流速コンター図を目視で確認して、第二部分4における溶鋼流の剥離の有無を特定し、良否(AまたはC)を判断した。
A:第二部分4の全域において壁面に沿う溶鋼流が形成されている。
C:第二部分4において溶鋼流の剥離が見られる。
【0044】
〔第一開口部の吸込み流〕
実施例および比較例の各例について、出力された流速コンター図を目視で確認して、第一開口部51における吸込み流の有無および程度を特定した。観察された状態に応じて、A~Cの三段階で評価した。
A:第一開口部51から溶鋼流が淀みなく吐出されている。
B:第一開口部51の付近に溶鋼流の停滞が認められる。
C:第一開口部51に流入する吸込み流が認められる。
【0045】
〔結果〕
実施例および比較例の各例の寸法条件および評価結果を表1に示す。比a/bが3以上7以下の範囲にある実施例1~6は、溶鋼流の剥離の評価がAだった。一方、比a/bが8.0である比較例1は、溶鋼流の剥離の評価がCだった。また、S2がS1より大きい実施例1~6では、メニスカス流速が適正範囲(評価AまたはB)だった。一方、S2がS1より小さい比較例2では、メニスカス流速が好ましい範囲になかった(評価C)。
【0046】
なお、S3、S4およびS5が式(2)を満たす実施例3~6は、式(2)を満たさない実施例1および2に比べて、メニスカス流速がより好適な範囲にあった。また、S3がS6より小さい実施例5および6は、S3とS6とが等しい実施例1およびS3がS6より大きい実施例2~4に比べて、第一開口部の吸込み流に関してより好ましい結果を示した。
【0047】
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、たとえば薄スラブの連続鋳造用の浸漬ノズルに利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 :浸漬ノズル
2 :第一部分
21 :流路
3 :接続部分
31 :流路
32 :接続部分の上端
33 :接続部分の下端
4 :第二部分
41 :流路
42 :長辺
43 :短辺
44 :側面
45 :底面
5 :開口部
51 :第一開口部
52 :第二開口部