(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】無人搬送車走行システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240126BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20240126BHJP
G01S 13/74 20060101ALI20240126BHJP
G01S 17/86 20200101ALI20240126BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G01S17/931
G01S13/74
G01S17/86
(21)【出願番号】P 2023565883
(86)(22)【出願日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 JP2023028080
【審査請求日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2022159547
(32)【優先日】2022-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514154813
【氏名又は名称】フィブイントラロジスティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】太田 晶也
(72)【発明者】
【氏名】福喜多 俊
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-163455(JP,A)
【文献】特開2008-009533(JP,A)
【文献】特開2019-128882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
G01S 17/931
G01S 13/74
G01S 17/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人搬送車と、無人搬送車が走行する走行路とを備える無人搬送車走行システムであって、走行路が棚及び/又は壁によって仕切られ、棚及び/又は壁にRFIDタグが配置され、無人
搬送車が、車体と、車体を走行させる駆動部と、駆動部を制御する制御部と、周囲の物体を検知する周囲検知部と、RFIDタグから位置情報を読み取るRFIDアンテナを有するRFIDリーダとを備え、無人搬送車が、走行路を走行しながら、周囲検知部の検知結果を用いて、SLAM技術により無人搬送車の車両位置及び方位角を推定するとともに、走行路の仕切られた棚及び/又は壁のRFIDタグから位置情報を読み取り、この位置情報により無人搬送車の車両位置及び方位角を推定し、SLAM技術によって推定された車両位置及び方位角をRFIDタグの位置情報により推定された車両位置及び方位角に修正するように構成されていることを特徴とする無人搬送車走行システム。
【請求項2】
周囲検知部の検知が、LiDAR技術により行なわれるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無人搬送車走行システム。
【請求項3】
走行路の両側にRFIDタグを配置された棚及び/又は壁が存在することを特徴とする請求項1に記載の無人搬送車走行システム。
【請求項4】
走行路が棚によって仕切られ、棚に複数の高さで棚板が設けられ、RFIDアンテナで読み取れる高さの棚板にRFIDタグが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の無人搬送車走行システム。
【請求項5】
RFIDアンテナが、無人搬送車の車体の両側方にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項3に記載の無人搬送車走行システム。
【請求項6】
RFIDアンテナが、車体の側方の一定範囲のみに指向性を有し、かつ読み取り距離が制限されて構成されていることを特徴とする請求項5に記載の無人搬送車走行システム。
【請求項7】
無人搬送車が、走行路を走行しながら、車体の両側方のRFIDアンテナによって走行路の左右の棚及び/又は壁に存在するRFIDタグの位置情報を読み取り、この位置情報により無人搬送車の車両位置及び方位角を推定し、この推定された車両位置及び方位角に、SLAM技術により推定された無人搬送車の車両位置及び方位角を修正するように構成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の無人搬送車走行システム。
【請求項8】
屋内に設けられることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の無人搬送車走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用環境に依存せずに簡易な方法で無人搬送車の自己位置を正確に把握することができる無人搬送車走行システムに関し、さらに詳しくは、SLAM技術によって推定された自己位置のずれをRFIDタグの位置情報に基づいて修正するようにした無人搬送車走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場や荷物の仕分け施設や倉庫等において、人の手に頼らずに正確に搬送するために、目標走行路を自動的に走行させ、荷物を積み降ろすことができる無人搬送車(AGV(Automatic Guided Vehicle))が従来から使用されている。
【0003】
無人搬送車の走行路の誘導方法としては、走行路の床に埋設された誘導ケーブルからの電波の検出や、走行路の床又は天井に貼られた誘導テープの磁気や反射光の検出や、走行路に設置された誘導標識のカメラ等による画像認識が一般的である。
【0004】
しかしながら、走行路の床に埋設する方法は、設置コストが高く、走行路が容易に変更できない問題がある。また、走行路の床又は天井に貼る方法は、誘導テープの損傷や床の汚れなどの環境要因により誘導テープからの情報の検出ができなくなる問題がある。特にフォークリフトや人が介在する使用環境では、誘導テープが劣化しやすく、その貼り替えが頻繁になる可能性が大きい。さらに、走行路の誘導標識の画像認識も、外乱光の入射や照度変化がある環境、フォークリフトや人等の往来のある環境では、一時的に不可能になる問題がある。
【0005】
そこで、周囲の障害物をLiDAR技術により検知し、この検知結果により無軌道式で無人搬送車を走行させる方法が採用されている。この方法では、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術により無人搬送車の自己位置の推定と環境地図の作成を同時に行う。
【0006】
しかしながら、SLAM技術を使用した場合、環境地図を作製した後、時間が経過すると環境の変化や人が介在することによって、作成した時の環境地図と、現在の環境を照合する際にSLAM技術のみでは位置の誤認識、もしくは位置検出の失敗が発生するため、環境に左右されない方法で位置情報を修正できる無人搬送車走行システムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2022-93887号公報
【文献】特開2020-205044号公報
【文献】特開2021-119440号公報
【文献】WO2021/111613
【文献】WO2020/137315
【文献】WO2013/045298
【文献】特開2021-107994号公報
【文献】特開2016-115207号公報
【文献】特開2021-101156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術の問題を解消するために創案されたものであり、その目的は、使用環境に左右されずに簡易な方法で無人搬送車の車両位置及び方位角を正確に把握することができる無人搬送車走行システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、無人搬送車の走行路を棚及び/又は壁によって仕切り、棚及び/又は壁にRFIDタグを配置し、無人搬送車が棚及び/又は壁が左右にある走行路を走行することにより、走行路の左右に存在するRFIDタグの位置情報を読み取り、この位置情報から無人搬送車の精度の高い位置情報を推定し、この推定された位置情報に基づいて、SLAM技術により推定された無人搬送車の車両位置及び/又は方位角のずれを適宜修正することにより、無人搬送車の自己位置情報を常に正確に推定できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
即ち、本発明は、上記の知見によって完成されたものであり、以下の(1)~(8)の構成を有するものである。
(1)無人搬送車と、無人搬送車が走行する走行路とを備える無人搬送車走行システムであって、走行路が棚及び/又は壁によって仕切られ、棚及び/又は壁にRFIDタグが配置され、無人搬送車が、車体と、車体を走行させる駆動部と、駆動部を制御する制御部と、周囲の物体を検知する周囲検知部と、RFIDタグから位置情報を読み取るRFIDアンテナを有するRFIDリーダとを備え、無人搬送車が、走行路を走行しながら、周囲検知部の検知結果を用いて、SLAM技術により無人搬送車の車両位置及び方位角を推定するとともに、走行路の仕切られた棚及び/又は壁のRFIDタグから位置情報を読み取り、この位置情報により無人搬送車の車両位置及び方位角を推定し、SLAM技術によって推定された車両位置及び方位角をRFIDタグの位置情報により推定された車両位置及び方位角に修正するように構成されていることを特徴とする無人搬送車走行システム。
(2)周囲検知部の検知が、LiDAR技術により行なわれるように構成されていることを特徴とする(1)に記載の無人搬送車走行システム。
(3)走行路の両側にRFIDタグを配置された棚及び/又は壁が存在することを特徴とする(1)に記載の無人搬送車走行システム。
(4)走行路が棚によって仕切られ、棚に複数の高さで棚板が設けられ、RFIDアンテナで読み取れる高さの棚板にRFIDタグが設けられていることを特徴とする(3)に記載の無人搬送車走行システム。
(5)RFIDアンテナが、無人搬送車の車体の両側方にそれぞれ設けられていることを特徴とする(3)に記載の無人搬送車走行システム。
(6)RFIDアンテナが、車体の側方の一定範囲のみに指向性を有し、かつ読み取り距離が制限されて構成されていることを特徴とする(5)に記載の無人搬送車走行システム。
(7)無人搬送車が、走行路を走行しながら、車体の両側方のRFIDアンテナによって走行路の左右の棚及び/又は壁に存在するRFIDタグの位置情報を読み取り、この位置情報により無人搬送車の車両位置及び方位角を推定し、この推定された車両位置及び方位角に、SLAM技術により推定された無人搬送車の車両位置及び方位角を修正するように構成されていることを特徴とする(5)又は(6)に記載の無人搬送車走行システム。
(8)屋内に設けられることを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の無人搬送車走行システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明の無人搬送車走行システムは、床や天井ではなく走行路の両側の棚及び/又は壁に設けた各RFIDタグから精度の高い位置情報を入手しているため、誘導手段の汚損や照度変化などの環境要因に依存せずに無人搬送車の車両位置と方位角の正確な位置情報を推定することができ、これらの位置情報に基づいて、SLAM技術によって推定された自己位置と方位角のずれを適切に修正することができる。また、BLEやビーコンなどの屋内位置測位では、無人搬送車の位置情報を推定できるものの、無人搬送車が向いている方位角を算出することが困難であるのに対して、本発明の無人搬送車走行システムでは、無人搬送車の自己位置だけでなく、方位角についても正確な情報を常に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の無人搬送車走行システムの一例の概略的な平面図を示す。
【0013】
【
図2】
図2は、本発明の無人搬送車走行システムにおいて無人搬送車の走行路を仕切る棚の例の概略図を(a),(b)で示す。
【0014】
【
図3】
図3は、本発明の無人搬送車走行システムにおいて棚に配置されたRFIDタグの一例の概略図を示す。
【0015】
【
図4】
図4は、本発明の無人搬送車の一例の概略図を示す。
【0016】
【
図5】
図5は、本発明の無人搬送車のRFIDタグを読み取るための構成の一例を概略的に示す。
【0017】
【
図6】
図6は、本発明の無人搬送車が棚に配置されたRFIDタグから位置情報を読み取る様子の一例を概略的に示す。
【0018】
【
図7】
図7は、本発明の無人搬送車走行システムにおいてRFIDタグのデータ登録の処理手順の説明図を示す。
【0019】
【
図8】
図8は、本発明の無人搬送車走行システムにおいてRFIDタグの位置推定の処理手順の説明図を示す。
【0020】
【
図9】
図9は、本発明の無人搬送車走行システムにおいて左右のRFIDタグにより無人搬送車の車両位置及び方位角が決定される処理手順を(a),(b)で示す。
【0021】
【
図10】
図10は、本発明の無人搬送車走行システムにおいて無人搬送車の車両位置の推定の処理手順の説明図を示す。
【0022】
【
図11】
図11は、本発明の無人搬送車走行システムにおいて左右のRFIDタグにより無人搬送車の車両位置及び方位角が決定される処理手順を(a),(b),(c)で示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の無人搬送車走行システムの実施形態について図面を参照しながら以下説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明の無人搬送車走行システムを上方から見た概略的な平面図である。
図1中、1は、無人搬送車、2は、無人搬送車1が走行する走行路である。3は、棚、4は、壁であり、走行路2は、基本的に棚3及び/又は壁4によって左右を仕切られている。
【0025】
図2は、走行路2を仕切る棚3の例を概略的に示したものであり、(a)は、4枚の棚板5を配置した棚3を正面から見た概略図であり、(b)は、三方向に複数の棚板5を配置した棚3を斜め上方から見た概略図である。棚3は、棚板5を設ける場合、その枚数、幅、高さ、厚さに特に制限はなく、棚板5以外に引き出しや仕切りを適宜設けることができる。また、棚3は、
図1に示すように様々なタイプのものを連結して作成することもできる。但し、棚3の作成にあたっては、RFIDタグを設置する場所が無人搬送車1の走行路2に向くように配置することが好ましい。なお、壁4は、
図1以外に特に示されていないが、例えば仕切板、仕切壁、構造壁、構造柱などを採用することができ、これらにも棚3と同様にRFIDタグを配置することができる。
【0026】
図3は、
図2(a)の棚にRFIDタグを配置した例を概略的に示したものである。
図3では、棚3が設置された床から100mmの高さの棚板5にRFIDタグ6が複数(
図3では7個)配置されている。RFIDタグ6は、無人搬送車が側方を通過したときにRFIDアンテナの電波が届く限り、棚3のいずれの場所にも配置することができる。RFIDタグ6は棚に直接貼付してもよく、一部を埋め込んでもよい。棚3が金属製でRFIDタグ6の情報が読み取れない場合は、金属対応のRFIDタグ6を使用するか、又は影響を受けないように加工してRFIDタグ6を読み取れるようにすることが好ましい。
【0027】
図4は、本発明の無人搬送車走行システムで使用する無人搬送車の一例を概略的に示したものである。
図4に示すように、無人搬送車1は、車体7と、車体7を電気モーターなどで走行させる駆動部8及び走行車輪9と、駆動部8を制御する制御部(
図4に示さず)と、周囲の物体を検知する周囲検知部10と、RFIDタグ6から位置情報を読み取るRFIDアンテナ11及びRFIDリーダ(図示せず)とを備えて構成される。
【0028】
制御部は、駆動部8を制御するだけでなく、車体7を走行させながら、周囲検知部10から得られた周囲の検知結果を用いて、SLAM技術により周囲の環境地図の作成並びに無人搬送車の車両位置及び方位角の位置情報の推定を行うとともに、走行路2の左右に存在するRFIDタグ6の位置情報から推定された車両位置及び方位角の情報に基づいて、走行距離の増大に伴って蓄積するSLAM技術による位置情報のずれを修正するように構成される。
【0029】
周囲検知部10は、周囲の物体や障害物を検知することができるものであれば特に限定されず、従来公知のLiDAR又はカメラ等を使用したものを採用することができる。周囲検知部10は、検知精度の点でLiDAR技術により検知できるもので構成することが好ましい。また、周囲検知部10は、無人搬送車1の車体の先頭に設けられていることが好ましい。周囲検知部10の検知結果は、SLAM技術により周囲の環境地図の作成及び無人搬送車の車両位置及び方位角の推定に使用される。
【0030】
図5は、本発明の無人搬送車のRFIDタグを読み取るための構成を概略的に示す。
図5中、11は、RFIDタグを読み取るための電波を受信・送信するRFIDアンテナであり、RFIDアンテナ11は、走行路2の左右のRFIDタグを読み取るために、
図4に示すように無人搬送車の車体の左右に設けられることが好ましい。12は、RFIDアンテナ11が受信したRFIDタグの情報を読み取るRFIDリーダである。各RFIDタグには位置情報を保存したシリアルNo.が記録されており、RFIDリーダ12がこれらのシリアルNo.を読み取る。RFIDアンテナ11とRFIDリーダ12は、同軸ケーブル13で結ばれており、同軸ケーブル13により両者間の電波の送受信を行なう。16は制御部であり、RFIDリーダ12と制御部16の間でデータの通信を行なうために通信ポート14及び通信ケーブル15を使用する。RFIDリーダ12から得られたデータに基づいて、制御部16は、無人搬送車の車両位置及び方位角を推定する。
【0031】
図6は、本発明の無人搬送車1が走行路2の両側の棚3の棚板5に配置されたRFIDタグ6から位置情報を読み取る様子を概略的に示す。
図6に示すように、無人搬送車1は、走行路2を走行しながら、周囲検知部10により検知した周囲の情報に基づいてSLAM技術により無人搬送車1の周囲の環境地図の作成、及び車両位置及び方位角の推定を行うが、一方で、RFIDアンテナ11を有するRFIDリーダ12により、走行路2の左右にある棚3の棚板5に配置されているRFIDタグ6から位置情報を読み取り、その位置情報から無人搬送車1の車両位置及び方位角を推定する。前者のSLAM技術による推定位置情報は、走行を続けると実際位置との誤差が大きくなるため、後者のRFIDタグ6からの推定位置情報に置き換えて更新する。これにより、無人搬送車の正確な位置情報を常に取得することができる。
【0032】
図7は、本発明の無人搬送車走行システムにおいてRFIDタグのデータ登録の処理手順を説明した図である。
図7からわかるように、無人搬送車のRFIDリーダからの指示により左側RFIDアンテナと右側RFIDアンテナからそれぞれ側方の棚及び/又は壁に向けて電波が照射され、それにより走行路の左右に存在する各RFIDタグから情報が各RFIDアンテナに送信され、各RFIDアンテナは、RFIDリーダにそれらのRFIDタグ情報を送信する。RFIDリーダは、左側アンテナ及び右側アンテナから取得した各RFIDタグ情報を制御部にデータ送信する。制御部では、RFIDタグ情報から個別に割り当てられたシリアルNo.を抽出する。制御部は、無人搬送車の現在の位置情報を得るために、SLAM技術によって推定された位置情報を問い合わせ、無人搬送車の位置情報として車両位置(X,Y座標)及び方位角(車両が向いている角度)を取得する。そして、RFIDのシリアルNo.とSLAM技術によって推定された無人搬送車の位置情報とRFIDアンテナの位置を紐づけてデータベースに登録する。RFIDタグは、無人搬送車のRFIDアンテナが受信できる距離にある間は読み取り続けられるため、一つのRFIDタグに対して複数の無人搬送車の位置情報が得られ、これらの複数の位置情報により走行時の正確な車両位置及び方位角を知ることができる。
【0033】
図8は、本発明の無人搬送車走行システムにおいてRFIDタグの位置推定の処理手順を説明した図である。RFIDタグの位置推定では、制御部が、各RFIDタグのシリアルNo.ごとに保存した車両位置情報、RFIDアンテナ位置のリストを内部データベースから取得し、これらのデータからRFIDタグの位置情報を算出する。算出されたRFIDタグの位置情報は、内部データベースに登録される。
【0034】
図9は、本発明の無人搬送車走行システムにおいて無人搬送車(AGV)の左側及び右側のRFIDタグにより無人搬送車の車両位置及び方位角が決定される処理手順を示す。RFIDアンテナは一般に全方向に電波を発するが、本発明では、RFIDアンテナを金属などで覆う等の手段により車体の側方の一定範囲のみに電波の指向性を持たせることができる。また、RFIDアンテナの電波が届く距離を制限することにより、隣接するRFIDタグのみに読み取り距離を制限することができる。RFIDタグの読み取り範囲は走行中、一定の制限を受けるため、読み取ったRFIDタグが存在する範囲は、左側RFIDタグについては、
図9(a)の一次直線a,b,d,eの範囲内に限定され、右側RFIDタグについては、
図9(a)の一次直線a,c,d,eの範囲内に限定される。
【0035】
これらのa,b,c,d,eの直線をそれぞれ式に表わすと、以下のようになる。
Y=tanθ*X+y0-tanθ*x0……a
Y=tanθ*X+y0-tanθ*x0+r/sinθ……b
Y=tanθ*X+y0-tanθ*x0-r/sinθ……c
Y=tan(θ-90°)*X+y0-tan(θ-90°)*x0+(w/sinθ)……d
Y=tan(θ-90°)*X+y0-tan(θ-90°)*x0-(w/sinθ)……e
θ:AGVの方位角
x0:車両位置X
y0:車両位置Y
r:RFID電波距離
w:RFID電波幅
【0036】
上記のようにして得ることができるRFIDタグが存在する範囲を複数箇所で予測し、それらのRFIDタグの位置の予測を
図9(b)に示すように重ね合わせることでRFIDタグの正確な位置を推定することができる。
【0037】
図10は、本発明の無人搬送車走行システムにおいて無人搬送車の車両位置の推定の処理手順を説明した図である。
図10において無人搬送車のRFID機器によって各RFIDタグ情報を取得し、RFIDリーダが各RFIDタグ情報を制御部にデータ送信する部分は、
図7と同じである。制御部では、内部データベースから事前に算出した前述のRFIDタグの位置情報を取得し、RFIDタグの位置情報とアンテナ位置をバッファリングする。上記の操作は、一定時間ごとに繰り返される。その後、制御部は、バッファから一定時間内に読み取ったRFIDタグの位置情報を集計し、それらに基づいて車両の自己位置を算出する。この自己位置情報を、SLAM技術によって推定された位置情報に反映させる。具体的には、SLAM技術によって推定された位置情報が適切に得られなかった場合や上記のRFIDタグに基づいて得られた位置情報との差異がある場合にSLAM技術によって推定された無人搬送車の位置情報をRFIDタグから得られた位置情報に置き換えて更新する。あるいは、RFIDタグから得られた位置情報が得られ次第、これに置き換えて更新する。
【0038】
図11は、本発明の無人搬送車走行システムにおいて無人搬送車の左側及び右側のRFIDタグにより無人搬送車の車両位置及び方位角が決定される処理手順を示す。まず無人搬送車がRFIDアンテナで左側及び右側のRFIDタグを読み取る。無人搬送車の左側及び右側のRFIDアンテナで読み取ったRFIDタグの情報が検出されると、
図11(a)に示すように左側のRFIDアンテナで読み取った位置情報と右側のRFIDで読み取った位置情報を使用して、それらの位置同士で一次直線を作成する。次に、
図11(b)に示すように、作成された一次直線の交点を求め、この交点の平均点により無人搬送車の車両位置を算出する。また、
図11(c)に示すように交点の回帰直線を算出することにより、無人搬送車の方位角(無人搬送車が向いている向き)を算出する。以上の方法で算出された無人搬送車の車両位置及び方位角は、極めて精度が高く、走行に伴って新たなRFIDタグ情報が随時得られるため、無人搬送車の正確な位置情報を取得することができる。この位置情報にSLAM技術によって推定される位置情報を置き換えて更新することによって、常に正確な無人搬送車の位置情報が得られる。
【0039】
本発明の無人搬送車走行システムの典型例を上記で説明したが、走行路の両側に存在するRFIDタグ情報により無人搬送車の位置情報を推定し、この推定位置情報に、SLAM技術による無人搬送車の推定位置情報を修正するという本発明の技術思想を逸脱しない限り、従来公知の技術の追加、変更、削除が可能である。例えばRFIDタグによる無人搬送車の位置情報の推定方法、SLAM技術による無人搬送車の位置情報の推定方法、及びそれらの処理手順、処理構成は、上記で述べた方法に限定されない。また、無人搬送車の構成、走行路やその左右の棚及び/又は壁もまた、上記の方法に限定されない。本発明は、特許請求の範囲の記載にのみ限定されることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、使用環境に左右されずに簡易な方法で無人搬送車の車両位置及び/又は方位角に関する自己位置情報を正確に把握することができる無人搬送車走行システムを提供することができ、当業界において極めて有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 無人搬送車
2 走行路
3 棚
4 壁
5 棚板
6 RFIDタグ
7 車体
8 駆動部
9 走行車輪
10 周囲検知部
11 RFIDアンテナ
12 RFIDリーダ
13 同軸ケーブル
14 通信ポート
15 通信ケーブル
16 制御部
【要約】
使用環境に左右されずに簡易な方法で無人搬送車の車両位置及び方位角を正確に把握することができる無人搬送車走行システムを提供する。無人搬送車と、無人搬送車が走行する走行路とを備え、走行路が棚又は壁によって仕切られ、棚又は壁にRFIDタグが配置され、無人走行車が、車体と、駆動部と、駆動部を制御する制御部と、周囲の物体を検知する周囲検知部と、RFIDタグから位置情報を読み取るアンテナを有するRFIDリーダとを備え、無人搬送車が、走行路を走行しながら、周囲検知部の検知結果を用いて、SLAM技術により無人搬送車の車両位置及び方位角を推定するとともに、棚又は壁のRFIDタグから位置情報を読み取り、この位置情報により無人搬送車の車両位置及び方位角を推定し、SLAM技術によって推定された車両位置及び方位角をRFIDタグの位置情報により推定された車両位置及び方位角に修正する。