IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 合肥集新能源科技有限公司の特許一覧

<>
  • 特許-電池極板の調製方法 図1
  • 特許-電池極板の調製方法 図2
  • 特許-電池極板の調製方法 図3
  • 特許-電池極板の調製方法 図4
  • 特許-電池極板の調製方法 図5
  • 特許-電池極板の調製方法 図6a
  • 特許-電池極板の調製方法 図6b
  • 特許-電池極板の調製方法 図6c
  • 特許-電池極板の調製方法 図6d
  • 特許-電池極板の調製方法 図7
  • 特許-電池極板の調製方法 図8
  • 特許-電池極板の調製方法 図9
  • 特許-電池極板の調製方法 図10
  • 特許-電池極板の調製方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】電池極板の調製方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20240129BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240129BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240129BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20240129BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240129BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240129BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240129BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
H01M4/04 A
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/485
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/58
H01M4/62 B
H01M4/62 C
H01M4/62 Z
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021075132
(22)【出願日】2021-04-27
(62)【分割の表示】P 2018567664の分割
【原出願日】2017-05-05
(65)【公開番号】P2021120954
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】201610510525.9
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523458597
【氏名又は名称】合肥集新能源科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼雨虹
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-363087(JP,A)
【文献】国際公開第2010/008058(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105489392(CN,A)
【文献】米国特許第06887621(US,B1)
【文献】特開2013-073921(JP,A)
【文献】特開2004-124132(JP,A)
【文献】特開2016-025062(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102723211(CN,A)
【文献】特開2005-032584(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102629681(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103151183(CN,A)
【文献】特開2013-030694(JP,A)
【文献】特開平11-317222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 10/00-10/04
H01M 10/06-10/34
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
H01G 11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性電解液を用いた蓄電池用の電池極板を調製する方法であって、当該方法は、
a)電極活物質と導電剤を乳液状の高分子ポリマーと混合し、これらを均一に撹拌してペーストにする混合・ペースト化ステップと、
b)ステップa)で形成されたペーストを混練して精密圧延し、ペースト中の高分子ポリマーを繊維化させるステップと、
c)ステップb)で混練したペーストを押し出し、カットし、展延することにより、厚さの制御が可能で、かつ緻密で均一な活物質フィルムにするステップと、
d)ステップc)で得られた活物質フィルムを、電極板設計に必要な寸法に基づいて様々な大きさの電極フィルムに裁断するステップと、
e)2枚の電極フィルムの間にコレクタを投入し、これらを高温、高圧条件下でプレスして極板にするステップと、
を含んでなると共に、
前記電極活物質中に、酸化鉛、鉛、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、チタン酸リチウム、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、酸化タングステン、酸化モリブデン、および酸化バナジウムのうちの一種以上を含み、
前記高分子ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、フッ素ゴム、パーフルオロアルキルビニルエーテル・ポリテトラフルオロエチレン共重合体(PFA)からなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記高分子ポリマーの電極フィルム中での含有量が3~10wt%であり、
前記ステップb)でのペーストの混練回数が8~12回である、ことを特徴とする、電池極板の調製方法。
【請求項2】
前記乳液状の高分子ポリマーは、固体含有量が50%~60%の間、融点が120~320℃であることを特徴とする、請求項1に記載の電池極板の調製方法。
【請求項3】
前記混合・ペースト化ステップでは、ペースト機に所定の割合で電極活物質を添加して乾式混合し、その際の混合速度は分散速度300~1000rpm及び公転速度20~200rpmに分かれており、
混合後に高分子ポリマーを吹き込み、その際の前記高分子ポリマーの含有量はペーストの3~20wt%であり、
10~30分間撹拌した後、固体含有量が60~85wt%のペーストを押し出すことを特徴とする、請求項1に記載の電池極板の調製方法。
【請求項4】
ステップc)において、前記活物質フィルムの厚さ範囲が1~5mm、フィルム本体の固体含有量が70%~90%であることを特徴とする、請求項1に記載の電池極板の調製方法。
【請求項5】
当該方法は、ステップd)で裁断して得られた電極フィルムを焼成することをさらに含み、焼成後の電極フィルムの固体含有量が80%~95%、焼成温度範囲が50~200℃であることを特徴とする、請求項1に記載の電池極板の調製方法。
【請求項6】
前記コレクタが導電材料であることを特徴とする、請求項1に記載の電池極板の調製方法。
【請求項7】
前記ステップe)では、コレクタを挟んだ2枚の電極フィルムを、プレス機を使用して、フィルムの単位面積当たり30~60MPaの圧力強度で予圧し、予圧を5s~180s保持し、
予圧した極板をトンネル炉内に置いて加熱し、
極板温度が140~320℃に達した時に、極板を再度、フィルムの単位面積当たり70~120MPaの圧力強度でプレスし、圧力を10s~600s保持して、極板を成形することを含む、請求項1に記載の電池極板の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池極板の調製方法に関し、特に、高容量、高効率、及びサイクル寿命の長い厚型電極極板(厚さ>1mm)の調製方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
石油資源が徐々に枯渇し、環境問題が日増しに深刻化するにつれて、石油に代わるグリーン環境保護エネルギー関連産業が今後のスター産業となっていくが、中でもエネルギーを貯蔵する重要な媒体の一つ、電気化学的エネルギー貯蔵装置が、決定的な役割を果たすことになる。現在、よく見られる電気化学的エネルギー貯蔵装置には、鉛酸電池、ニッカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、電気化学的ウルトラキャパシタ(注:ウルトラキャパシタはスーパーキャパシタとも呼ばれ、これらは「電気二重層コンデンサ」を指す。)などがある。環境汚染(例えばニッカド電池中のカドミウムの高毒性)、サイクル寿命(鉛酸蓄電池の正極の軟化による構造崩壊の発生)、価格コスト(レアメタルの高値)、活物質負荷量の低さ(ウルトラキャパシタ及びリチウムイオン電池の電極の薄さ(約100-300μm)、及び安全信頼性(有機溶剤を用いる電解液から生じる隠れた危険性)などの多方面について総合的に考察すると、これらのエネルギー貯蔵デバイスの性能の鍵となる技術指標は、先進的な電極材料及び極板構造の採用にある。
【0003】
現在、世界のエネルギー分野における膨大な研究作業は、特殊構造を有する各種の新型のナノ材料を使用して、従来の塊状電極材料の代替とすることに焦点を合わせており、これらのナノ電極材料は、比表面積が大きく、電解液イオンが移行しやすい孔構造を有するとともに、電極材料の容量及び倍率性能を有効に向上させるといった優位性を持つ。しかし、ナノ材料の優れた性能の多くは、実験室レベルの、グラム、さらにはミリグラムレベルの生産能力にしか体現できず、工業化によりスムーズに生産できたとしても、その比表面積の大きさ、タップ密度の低さ、二次造粒の必要性といった要因により、既存の電池極板の製作に多くの工程問題がもたらされる。特に、厚めの極板(>1.0mm)の調製は一致性のコントロールが困難なことから、工業生産目標との深刻な食い違いが生じる。実際の電池への応用については、コレクタ、セパレータ、パッケージ材料などの不活性素子の厚さが略固定されており、それらが可視的質量及び体積分数を占拠しているものの、エネルギー貯蔵容量に貢献しているわけではないので、電池中の活性成分全体の質量と体積の貢献を向上させることでエネルギー密度を高めるためには、高性能の厚型電極の調製技術が非常に重要なのである。また、工業上の大部分の分散乳化工程には揮発性有機溶剤が採用されているので、環境汚染を引き起こし、性能指標に十分な利益空間をもたらす突出した進展がないことから、これらの材料には大規模化生産の見通しが備わっていない。そのため、安全で、低コストで、活物質負荷量が高い厚型極板の調製工程を開発することには重要な意義があり、特に、将来の大規模エネルギー貯蔵にも用いることができる。
【0004】
多くの電気化学的蓄電池の中で、リチウムイオン電池及びウルトラキャパシタ(スーパーキャパシタ)は、それぞれ高エネルギー密度と高電力密度により、現在の先進的電池の代表格となっている。有機電解液系に基づくリチウム電池及びウルトラキャパシタの電極の調製工程は比較的似ており、いずれも専門的な溶剤と結合剤をそれぞれ粉末状の正負極活物質と混合し、均一に撹拌してスラリー状の正負極物質を作り、さらに自動コーティング機によって正負極スラリーをそれぞれ金属箔表面に均一に塗布し、加熱乾燥させてから正負極の極片にカットするというものである。リチウム電池活物質は容量がやや高いが、単位体積当たりの負荷量はやや低く、充当するコレクタのアルミ箔及び銅箔の厚さは通常0.016mm及び0.01mmであり、撹拌後の塗料の厚さは一般に300μmを超えない。しかし、多くの先進的なナノ構造の電極材料は、その比表面積の大きさ、タップ密度の低さ、二次造粒の必要性といった要因により、厚型電池極板(>1mm)を調製することができない。それと同時に、分散乳化工程では揮発性有機溶剤を採用するので、環境に対しても危険が生じ、機械設備も比較的高価で、減価償却損も比較的大きく、リチウム電池の回収技術はまだ不完全であり、隠れた危険も存在している。
【0005】
水性電解液系に基づくエネルギー貯蔵システムでは、アルカリ性のニッケル水素、ニッケルクロム電池に較べて、酸性電解液系に適用される鉛酸電池や酸性燃料電池は、その信頼性の高さ、低コスト、高エネルギー密度により、特に重要な商業的価値を有している。従来の鉛酸電池を例に挙げると、鉛酸電池の極板は蓄電池の核心部分であり、その品質は蓄電池の各種の性能指標に直接影響を与える。現在、鉛酸電池の極板には主にコーティング式極板生産が採用されており、そのプロセスには以下のステップが含まれている。1)化学検査に合格した鉛粉末、希硫酸、添加物を、専用の設備で捏ねて鉛ペーストを作成するステップ、2)鉛ペーストをコーティング機または手作業で板格子上に塗り付けるステップ、3)塗り付けた極板を固化、乾燥させ、生極板を得るステップ。固化プロセスの全般において、最多で4種類が単独または同時に発生する複雑な化学反応が含まれている。即ち(I)金属鉛顆粒がα-PbOに変換され、同時に熱を放出する反応;(II)塩基性硫酸鉛塩結晶が引き続き成長する反応;(III)塩基性炭酸塩(即ち2PbCOPb(OH)-HC)が、特に極板活物質表面に生成する反応;(IV)板格子金属が腐蝕する反応。これらの反応が極板活物質の硬化を引き起こし、板格子と堅固に結着した安定した無機ネットワークを形成する。しかし、大量の鉛酸電池を分析した結果、電池正極板が300回前後の深充放電サイクルを経て「砂泥化」し、充放電により生じる極板の内部体積の膨張収縮によってこのような無機ネットワーク構造が破壊され、最終的に蓄電池が失効してしまうという一方で、電池の負極板は、不完全な充電状態における硫酸塩化を避けるために、多孔質炭素材料を採用して従来の鉛酸電池の負極(鉛)材料の全部または一部と入れ替えることで(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4を参照)、鉛酸電池の電力及びサイクル寿命の大幅な向上を期待しているものの、低密度炭素成分の導入により鉛酸極板の調製工程にさらなる挑戦がもたらされていることがわかっている。つまり、鉛酸電池の活物質の化学成分及び結晶構造は極板調製プロセスに強く依存しており、この二つの特性は、蓄電池の使用過程における容量及び機械強度にとって重要な役割を果たしているのである。
【0006】
電極調製プロセスに用いられる一般的な結着剤材料(バインター材料)は線形の高分子化合物であり、常温下ではほとんどが高弾性状態にあるので、電極及びペースト成膜加工が極めて困難である。まず、各種の結着剤はペースト中では均一に分散しにくい。次に、加工処理が難しいので、理想的なミクロ構造及び形状を得て必要な性能を提供することが容易ではない。従来のゴム工業では、加工工程の要求を満たすために、生ゴムを強靱な弾性状態から、柔らかく、可塑性を持つ状態に変えることを行っており、この工程プロセスを可塑化と呼んでいる。その目的は、生ゴムを弾性状態から可塑性状態に転換させてその可塑性を増大させ、可塑性を向上させることで、実質的にゴムの長鎖分子を断裂させ、分子量の比較的小さい、鎖長の比較的短い分子構造に変えることで、混練時の結着剤の混入及び均一な分散をしやすくすること、ゴム材料の流動性を改善し、圧延操作をしやすくして、ゴム生地の形状及び寸法を安定させること、ゴム材料の粘着性を増し、成型操作をしやすくすること、及びゴム材料の溶剤中の溶解性を向上させてゴムスラリーの調製をしやすくするとともに、ゴムスラリーの粘度を下げて繊維の孔に入り込みやすくし、付着力を高めることにある。つまり、電極の調製工程に同様の混練プロセスを導入し、結着剤を高度に可塑化された状態にし、ペースト内に均一に分散させることで、粘着性と付着力が高まり、電極の構造の安定性及び電気化学性能を大幅に向上させるのである。
【0007】
本発明は、高容量で、高電力で、サイクル寿命の長い厚型電極極板(>1mm)を調製するための新型電極調製工程を提供し、かつそれを鉛酸電池、ウルトラキャパシタ(スーパーキャパシタ)、リチウムイオン電池及びニッケル水素電など様々な電気化学的エネルギー貯蔵装置に応用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】中国特許第101563741号
【文献】米国特許第7998616号
【文献】中国特許CN200910183503
【文献】韓国特許KR1020060084441A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、様々な電気化学的電池の活物質材料を主体として、それに対して制御可能な極板設計を行い、粘弾性を有する高導電性、高容量、高活物質負荷量の厚型電池極板を調製することにあり、該極板は柔軟性のある有機ネットワーク構造や高い機械強度を有し、数百回、或いは千回以上にものぼる深充放電サイクルの後でも、依然として各種の電解液中に安定して存在することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、これらの調製技術を同時に利用して、例えば鉛酸電池の正負極極板、鉛カーボン電池の極板、リチウムイオン電池の極板、ウルトラキャパシタ(スーパーキャパシタ)の極板及びニッケル水素電池の極板などに適用することができる各種の電池の厚型極板を提供する。また、特殊な酸化タングステン(WO)材料を主体として調製される極板も含まれている。これを基礎として、該材料と鉛酸負極材料の混合も、この新型調製工程技術を利用して実現することができる。この種の極板調製技術を上記の電池の正極または負極に応用すると、いずれも優れたエネルギー、電力及びサイクル安定性能を示す。
【0011】
本発明は、以下のステップを含む電池極板の調製方法を具体的に提供している。
a)電極活物質と導電剤を特定の高分子ポリマーと混合し、均一に撹拌してペーストにするペースト化プロセス;
b)ステップa)で形成されたペーストを混練して精密圧延し、ペースト中の高分子ポリマーを繊維化させるステップ;
c)ステップb)で混練したペーストを押し出し、カットし、展延することにより、厚さの制御が可能で、かつ緻密で均一な活物質フィルムにするステップ;
d)ステップc)で得られた活物質フィルムを、電極板設計に必要な寸法に基づいて様々な大きさの電極フィルムに裁断するステップ;
e)2枚の電極フィルムの間にコレクタを投入し、高温、高圧条件下でプレスして極板にするステップ。
【0012】
ここで、前記高分子ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、フッ素ゴム、パーフルオロアルキルビニルエーテル・ポリテトラフルオロエチレン共重合体(PFA)の中の1種または数種から選択される。
【0013】
好適には、前記高分子ポリマーは乳液状(エマルジョン形態)であり、固体含有量は50%~60%の間、溶融指数(melt index)は3~10、融点は120~320℃、高分子ポリマーの粒子径寸法は5~100μmの間である。
【0014】
より好適には、前記高分子ポリマーの粒子径寸法は5~50μmの間である。
【0015】
好適には、前記高分子ポリマーの極板中の含有量は1~20wt%である。
【0016】
より好適には、前記高分子ポリマーの極板中の含有量は3~10wt%である。
【0017】
そのうち、前記電極活物質は、鉛酸電池、鉛酸ウルトラバッテリー、鉛タングステン質サブキャパシタ(鉛タングステン質プロトンキャパシタ)、グラフェン電池、リチウムイオン電池、ウルトラキャパシタ及びニッケル水素電池に使用される任意の正負極材料から選択される。
【0018】
好適には、前記電極活物質には、酸化鉛、鉛、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、三元または多元酸化物、リン酸鉄リチウム、チタン酸リチウム、グラファイト、グラフェン、活性炭、カーボンブラック、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、金属水素吸蔵合金、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化バナジウム及び/または酸化マンガンが含まれる。
【0019】
好適には、前記ペースト化プロセスは、所定の割合でペースト機に電極活物質を添加して乾燥混合することを含み、混合速度は分散速度300~1000rpm及び公転速度20~200rpmに分かれており、混合後に高分子ポリマーを吹き込み、前記高分子ポリマー含有量はペーストの3~20wt%であり、10~30分撹拌した後、ペーストを押し出す。ペーストの固体含有量は60~85wt%である。
【0020】
そのうち、前記分散速度は300~600rpm、前記公転速度は20~60rpm、前記高分子ポリマー含有量はペーストの3~10wt%である。
【0021】
そのうち、ステップb)のペーストの混練精密圧延回数は10回を下回り、速度範囲は1~18m/sである。
【0022】
好適には、前記ペーストの混練精密圧延回数は8回を下回り、速度範囲は1~10m/sである。
【0023】
そのうち、ステップc)において、前記活物質フィルムの厚さ範囲は1~5mm、フィルム本体の固体含有量は70%~90%である。
【0024】
好適には、前記活物質フィルムの厚さ範囲は1~3mmである。
【0025】
そのうち、前記電池極板の調製方法は、ステップd)でカットして得られた電極フィルムを焼成することをさらに含み、焼成後の電極フィルムの固体含有量は80%~95%、焼成温度範囲は50~200℃である。
【0026】
好適には、前記焼成温度範囲は50~100℃の間である。
【0027】
そのうち、ステップe)の前記コレクタは導電材料である。
【0028】
好適には、前記コレクタは、鉛グリッド、チタンメッシュ、銅メッシュ、アルミメッシュ、ステンレスメッシュ、カーボンフェルト及び/またはカーボンクロスから選択される。
【0029】
そのうち、ステップe)は具体的に、プレス機を使用してフィルムの単位面積当たり30~60MPaの圧力強度で予圧し、予圧を5s~180sの間で保持し、予圧した極板をトンネル炉内に載置して加熱し、極板温度が140~320℃に達した時に、極板を再度プレスし、フィルムの単位面積当たり70~120MPaの圧力強度でプレスし、圧力を10s~600s保持し、極板を成形することを含む。
【0030】
好適には、前記予圧圧力は、フィルムの単位面積当たり40~50MPaの圧力強度であり、前記極板温度は140~320℃であり、前記最終プレス圧力は、フィルムの単位面積当たり90~100MPaの圧力強度である。
【0031】
その一方で、本発明は蓄電池を提供しており、その中には、上記調製方法を利用して調製された極板である電極材料と、電解液が含まれている。
【0032】
そのうち、前記蓄電池は、鉛酸電池、鉛酸システムに基づくウルトラバッテリー、リチウムイオン電池、ウルトラキャパシタ(スーパーキャパシタ)、ニッケル水素電池を含むが、これらに限らない。
【0033】
そのうち、前記電池の電解液は、硫酸、水酸化カリウム、硫酸ナトリウム溶液、またはリチウムイオン電池有機電解液もしくはイオン液から選択することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の技術的効果は以下の通りである。
1)電極極板の合成工程プロセスが簡単で、工業装置はすでに大量の化学工業製品の合成に幅広く応用されており、電極極板の大規模生産が容易である;
2)得られる電極極板の一致性が高く、安定した、粘弾性の高いフレキシブルなネットワーク構造を有しており、活物質と導電剤を相互に接触させて良好な界面を形成することに役立ち、材料作成プロセスにおける構造に変化が生じることがないので、正負極の体積変化により生じる応力を抑制し、安定した導電ネットワークを提供して、サイクル寿命を延ばす;
3)得られる電極極板は、高い粘弾性を持ち、繊維化構造ネットワークを有する形状特徴を有しており、イオンの高速伝送に役立つと同時に、高い導電性を持ち、電極(正極及び負極)の内部抵抗を有効に低下させることで、高い電力容量、充放電速度及び大電流充放電性能を実現している;
4)得られる電極極板は鉛酸電池の正負極に適しており、鉛酸電池の活物質の利用率を向上させるだけでなく、電池のエネルギー密度も向上させることができ、また高温高圧の採用は、極板の固化プロセスに役立つ。鉛酸正極については、正極の軟化を防止する;鉛酸負極については、その硫酸塩化を防止するその他の導電材料を導入することができる;
5)得られる電極極板は鉛タングステン質サブキャパシタ(鉛タングステン質プロトンキャパシタ)の負極に適しており、新しい製板工程を採用することで、従来の鉛酸負極コーティング方法とは完全に区別され、負極板の機械強度、導電性、耐充放電能力及びサイクル寿命を最大限に向上させている;
6a)得られる電極極板はグラフェン電池の正負極に適している;
6b)得られる電極極板はリチウムイオン電池の正負極に適している;
7)得られる電極極板はウルトラキャパシタ(スーパーキャパシタ)の正負極に適している;
8)得られる電極極板はニッケル水素電池の正負極に適している;
9)優れた高低温性能が、活物質の導電性及び多孔率を効果的に引き上げ、電解液の拡散に役立つ;高温により生じる板格子の腐蝕や正極の軟化も、導電率及び多孔率の向上により緩和され、各種の極端な条件における電池の使用寿命が延長されている;
10)得られる新型電池極板システムは、構造の設計を通して、低コスト、高エネルギー密度、高倍率性能、長寿命及び安全性を同時に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】鉛タングステン質サブキャパシタ(鉛タングステン質プロトンキャパシタ)負極ペーストを混練してフィルムにした写真。
図2】(a)鉛タングステン質サブキャパシタ負極フィルムを8回混練したSEM写真、(b)鉛タングステン質サブキャパシタ負極フィルムを10回混練したSEM写真、(c)鉛タングステン質サブキャパシタ負極フィルムを12回混練したSEM写真、(d)鉛タングステン質サブキャパシタ負極フィルムを14回混練したSEM写真。
図3】鉛タングステン質サブキャパシタを異なる回数混練した時のフィルム引張強度の関係及び14回混練した成膜写真。
図4】鉛タングステン質サブキャパシタの規格の異なる負極極板写真。
図5】(a)鉛タングステン質サブキャパシタ負極板表面とb断面のSEM写真、(b)鉛タングステン質サブキャパシタ負極板断面のSEM写真。
図6】(a),(b)及び(c)は、3種類の配合を採用したフィルムを、それぞれ高温高圧及び室温下で極板に圧延した板格子とフィルムとの間の界面写真、(d)は、室温下で極板をプレスした板格子とフィルムとの間の界面写真。
図7】(a)配合1を採用したフィルムの、異なる予圧圧力条件下での極板密度に対する影響の法則性を示すグラフ、(b)配合1を採用したフィルムの、異なる予圧圧力条件下での極板厚さに対する影響の法則性を示すグラフ、(c)配合1を採用したフィルムの、異なる予圧圧力条件下での極板グラム容量に対する影響の法則性を示すグラフ。
図8】固体含有量の異なるフィルムの、同一クランプ条件下での極板表面の写真。
図9】異なる配合を採用したフィルムの、同一クランプ条件下での交流抵抗。
図10】配合2を採用した極板を組み立てた電池の、異なる放電倍率下での性能曲線。
図11】鉛タングステン質サブキャパシタが配合1を採用した場合の、1時間倍率、0.5h倍率、0.2h倍率及び0.1h倍率におけるそれぞれのサイクル寿命。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下では、具体的実施例を通して本発明の利点をさらに説明するが、本発明の保護範囲は下記の実施例に限定されるものではない。本発明で用いる試薬及び原料は、いずれも市場で購入可能である。
【0037】
実施例1:鉛タングステン質サブキャパシタ負極極板の調製:
1)配合及び原料
鉛タングステン質サブキャパシタ(鉛タングステン質プロトンキャパシタ)負極原料は三酸化タングステンであり、その調製方法は、タングステン酸ナトリウムをタングステン前駆体材料とし、脱イオン水中に溶かし、濃度5%の均一な溶液を形成し、適量の塩酸を加えて該溶液をpH値=1.5にし、その後、該溶液に5%の硫酸アンモニウムを加えて中間体を形成し、該混合溶液を反応釜に移して摂氏160度で72時間反応させ、最終的に三酸化タングステン材料を得る。
【0038】
その他の原料及び重量パーセントは表1の通りである。そのうち、アセチレンブラック、PTFE及びEFP乳液はいずれも商業ルートから購入することができ、PVDF溶液の調製については、200gのPVDF粉末を1.8kgのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液に溶かし、撹拌して固体含有量10wt%の溶液にする。
【0039】
【表1】
【0040】
2)方法ステップ
二重遊星ペースト機を使用し、割合に基づいて上記原料を加えて乾燥混合(乾式混合)させる。混合速度は分散速度と公転速度に分けられており(分散及び公転の速度はそれぞれ300rpm及び20rpm以内)、混合後にコロイド乳液または溶液の混合液を吹き込み、引き続き15分撹拌すると、ペーストの固体含有量が80%~85%になる;ペーストの混練回数6回、混練速度6m/sで再び混練精密圧延プロセスを行う;混練後のフィルムは、ダブルローラ圧延機により、厚さ範囲が1~2mm、フィルム本体の固体含有量が(81%~86%)の緻密で均一なフィルムに圧延される。成膜写真は図1に示す通りであり、フィルム全体が均一で緻密であることが観察され、その異なる位置の厚さの誤差は0.03mmを超えない。図2は、SEM走査電子顕微鏡を用いて観察したフィルム本体の内部構造であり、混練回数の増加に伴って、コロイド全体が繊維ネットワークにカットされ、活物質が内包されていることがはっきりわかるが、電極活物質間における電解液の拡散に影響するわけではない。混練回数が14回まで増加すると、この時、強度の高い剪断力が繊維を引き裂き、フィルム本体表面の均一な一致性が破壊され、図3a)左のような大きな空洞が出現する。この結果は、混練回数を優先することが、フィルムの均一な一致性に直接影響することを表している。
【0041】
混練回数の違いとフィルムの機械強度との間の関係をさらに検証するために、該フィルムを100mm×1.5mmの大きさにカットし、引張強度測定器(型番QJ210A)を使用して、両端を測定器の上下のクランプに固定し、運行速度を50mm/分に設定して、運行開始テストをクリックする。データ結果は図3b)右の通りであり、混練回数が増えるにつれて、フィルムの引張強度が増し、混練12回目以降はフィルム強度の増加傾向が緩やかになるので、混練回数の好適な範囲は8~12回以内である。
【0042】
好適に混練したフィルムを、コレクタの板格子と同じ大きさのフィルムにカットした後、電気オーブンでフィルムの固体含有量が85~100%になるまで焼成する。加熱温度の範囲は100~180℃とする。最後に、焼成したフィルムを板格子とともに研磨具内に積み重ね、マッフル炉を使用して140~320℃まで加熱し、その後、加硫プレス機を使用して30tで5分間プレスする。加硫プレス機の台面温度は250~300℃であり、図4は作成された様々な寸法の極板の写真である。
【0043】
活物質と高分子ポリマーコロイドとの間の界面結合力を観察するために、我々は、図5に示すように、走査電子顕微鏡を用いて極板の表面及び断面を観察した。活性物質の表面及び断面の全体に、ネットワーク状の繊維が分布していることがはっきりとわかる。このような安定した、粘弾性の高いフレキシブルなネットワーク構造は、活物質と導電剤を相互に接触させて良好な界面を形成し、また材料作成プロセスにおける構造に変化が生じることがないので、安定した導電ネットワークを提供して、サイクル寿命を延ばすことに役立つ。
【0044】
活物質とコロイドとの間の界面の他にも、負極フィルム全体と板格子との間の界面も同様に重要である。図6は、3種類の配合における板格子とフィルムの粘結性の写真a)~c)であり、フィルムが板格子表面にピッタリと貼り付き、活物質の導電性を大きく増強し、極板全体の倍率性能を引き上げ、耐充放電能力とサイクル寿命を増加させていることがわかる。つまり、結着をどのように実現するかということが、工程プロセス全体における重要なパラメータなのである。本発明で言及している高分子ポリマーは、高温加熱プロセスを必ず通らなければならないので、このプロセスを使用する特徴は、温度がポリマーのガラス転移温度を超えて粘弾性を実現しなければならないことにあり、内部に柔らかい三次元粘性が形成された有機繊維ネットワークをプレス成形すると、活物質が粘性を有する粘弾性体となりコレクタとぴったり接着され、極板の導電性及び機械強度を最大限に向上させる。室温下でプレス成形を行うと、板格子と界面との間には粘性がないので、図6d)のようにフィルムが板格子からすべて剥がれてしまい、十分な強度を具備することができない。しかし、フィルムの熱伝導速度の加速を保証するためには、最終プレスプロセスの前に、予圧圧力パラメータの選択を導入しなければならず、このステップを導入するのは、前段階のフィルムが相対的に柔らかい時に、より容易に板格子に嵌め込み、熱伝導に不向きな空気の大部分を押し出すためであり、このプロセスが極板の密度及び導電性を最大限に向上させ、図7に示すように、電池容量をさらに増加させている。電池極板の調製方法における予圧圧力はフィルムの単位面積当たり40~50MPaの圧力強度、前記極板温度は140~320℃、前記最終プレス圧力はフィルムの単位面積当たり90~100MPaの圧力強度であり、いずれも好適な工程パラメータである。
【0045】
また、プレス前の負極フィルムの固体含有量も重要なパラメータのひとつであり、それによって高温高圧下で極板を調製する際の表面のひび割れの深刻さが決まる。図8は、固体含有量の異なるフィルムの、同一クランプ条件下での極板表面の写真であり、固体含有量が低くなるほど、フィルム内の水分が高温環境下で凝縮され、水分が急速に蒸発し、毛細管収縮作用による付加圧力によりフィルム本体の応力が増加し、極板表面のひび割れを加速させ、これらのひび割れが板格子の腐蝕や活物質の流出といった悪影響を生じさせることがわかる。さらに、混練によるペーストの水分流失を考慮すると、フィルムの固体含有の最適な範囲は85%~95%となる。
【0046】
3)電気化学性能の測定及び検証
図9は、配合1及び2を同じ製板条件で交流抵抗比較したものであり、図から、単独のコロイドを使用した場合及び異なるコロイド成分を混合した場合の、電池極板の電荷の伝達抵抗及び内部抵抗の拡散に対する影響がわかる。まず、配合1で採用している5%PTFEは、電荷伝達抵抗及び内部抵抗の拡散がいずれも配合2の5%PTFE+2%EFPの混合より小さい。しかし、配合2で調製される極板の機械強度は配合1より優れている。これは、コロイド含有量の増加によるものである一方で、異なる高分子ポリマーの極板中での作用が異なることによるものでもある。極板内部の繊維ネットワーク化構造全体は主としてPTFEの貢献によるものであるが、高度に対称な構造により融点が比較的高いので、分子鎖の低いEFPや構造が対称ではないPVDFを導入することで、極板の調製プロセス全体における高温パラメータが下がり、それにより工程プロセス全体の窓口が広がって、粘性を有する完全な三次元繊維ネットワーク構造を真に形成することができる。図10は、配合2を採用した極板を組み立てた電池の、異なる放電倍率下での性能曲線であり、表2のデータと結び付けると、単独のポリマーを結着剤として採用すると、内部抵抗は相対的に小さくなるが、他のタイプの高分子ポリマーを混合すると、極板の構造の堅固さがさらに高まり、依然として優れた倍率性能を示すことがわかる。従来の鉛酸電池と比較すると、この3種類の配合の極板は、電池に組み立てた後、高倍率下の容量保持率は鉛酸電池の略2~3倍になる。
【0047】
【表2】
【0048】
この種の製板工程の電池サイクル寿命に対する影響をさらに具体化するために、配合2の極板を2V 5Ahの電池4組に組み立て、1.18g/cmの硫酸電解液135mlを流し込み、異なる充放電電流によりそのサイクルの安定性を検査した。図11参照。
【0049】
図から、この4組の電池についてそれぞれ1h、0.5h、0.2h、0.1hの充放電速度率で100%の深充放電サイクル実験を行ったところ、400回以降も容量保持率は100%を保っているが、従来の鉛酸電池は5h率以下であり、100%深充放電が約300回になると、サイクル容量が80%に減衰していることがわかる。これらの結果はさらに、極板工程の変更が電池性能全体の向上にとって非常に重要な役割を果たしていることを表している。
【0050】
本発明の実施例は好適な実施例であり、かつ本発明に対して何らかの制限を加えるものではなく、当業者であれば、上記で開示している技術内容を利用して、同等の有効な実施例に変更し、または手直しすることが可能であるが、本発明の技術的解決手段の内容を逸脱せず、本発明の技術に基づいて実質的に上記の実施例に対して行われる修正または同等の変更並びに手直しは、すべて本発明の技術的解決手段の範囲(特許請求の範囲)内に属するということに注意しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図7
図8
図9
図10
図11